【ゲームの保存】立命館大学のゲーム研究センターについて
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【ゲームの保存】立命館大学のゲーム研究センターについて

2013-11-25 22:19
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◆はじめに

先日から一部の2chまとめブログに以下の記事が掲載され話題になっています。

ゲーム資料現物寄付 要領 ~ 立命館大学ゲーム研究センター: http://www.rcgs.jp/p/n.html

コメント欄に誘導されてやってきた閲覧者が流れこんでなんか荒れてますが、いつもの如く色んな点を恣意的に誇張、尾ひれをつけて纏められたようで、様々な誤解を生んでいます。

上記のページに補記されたように、「ゲーム資料の現物寄付の募集を実施いたします。」というのは、近年になり増加してきた個人からの寄付について規定を成文化しただけのことです。事前連絡無しに送られてくるケースに対処せざるを得ないことが多くなり、トラブルが生じつことを避ける意味でもあったようです。

これは以前から公式のtwitterアカウントなどで(上記ページへの誘導リンクを添えて)説明されてきたことですが、記事そのものにはその旨がなく、これも誤解を生んだ一因ではあるようです。

そもそも立命館大学で行われてきたゲーム保存活動は任天堂やセガなどと連携してファミコンの全ソフトウェアを寄付して貰ったり、公式のエミュレータを開発したりといった産学連携のものであり、個人からの寄付のみに頼っているものではありません

(例)

<立命館で任天堂の許可を得て作られたエミュレータ
ファミコンソフトエミュレーションボックス

ハードをエミュレートするのではなく、カセット内に仕込まれたハードウェアの動作も含め、ファミコンソフトを再現することを目的に作られたもの。(2003年12月完成)

たぶん10年を経た今ではもっと開発が進んでいるのでしょうが、これ以降の資料が見つかりませんでした・・・


立命館大学「ゲーム資料現物寄付」のページは、なぜ炎上してしまったか(井上 明人) - 個人 - Yahoo!ニュース http://bylines.news.yahoo.co.jp/inoueakito/20131125-00030100/

◆保存活動の意義などについて

この活動自体は15年前から行われているもので、研究センターは2011年に設立されたもの。背景には文化庁が行っている漫画やアニメ、ゲームなどの史料が散逸、劣化することを防ぎ、データベース、アーカイブ化を行うメディア芸術アーカイブ事業があり、その一環でもあったようです。

言うなればやっとこ国の支援がついて来たといった感じでしょうか。日本は他国に比してゲーム研究で遅れを取っているというのが実情で、逆に海外では以前から多くの美術館が収蔵を行ったり、国の支援でゲームの保存が行われているところもあります。日本でも福井市がゲーム図書館を期間限定で開館したりしましたが、職員からの寄付を募り行われたものでしかなく、アーカイブ化や網羅的な研究を目的にしている立命館の活動は貴重なものです。

言うまでもありませんが、研究において資料の収集は不可避のものであり、市井に散逸した状態から始めるのは大変な労力が必要です。そのような状態では何時どのような天災や事故で貴重な資料が失われてもおかしくなく、適切な設備の揃った施設で保存することは急務です。

ゲームに関する書籍などを作る際にあちこちのコレクターに協力を募って制作されている話をよく聞くのですが、もしそのコレクションが何事かで失われたらどうするのかと不謹慎ながら心配してしまいます・・・。)

そして勿論、アーカイブ化は円滑、活発な研究活動を支援します。

ゲーム研究センター長でありファミコン開発者でもある上村雅之氏が関わった書籍「ファミコンとその時代」が先ごろ発売されました。私も読んだのですが玩具業界の新聞記事など多くの資料を元にした記述は非常に濃く、このアーカイブはやはり今後の豊かな研究活動において不可欠になるのではと感じられるものでした。

まぁ一部任天堂史観に寄ってたり資料の間違いに引っ張られたりしてた感じはありましたけど。

◆現在の問題点は?

・・・と大見得切ってしまいましたが、立命館のアーカイブ活動についてまず疑問なのが、「きちんとした保存・管理が行われているのか?」ということです。

例えば国会図書館では徹底した室温、湿度管理、防塵対策が行われており、火災時には消化ガスが噴霧され、人が死のうが資料は守られるようになっています。またNPO法人のゲーム保存協会(こちらはPCゲームの保存を行っているところ)ではモニタ等のハードウェアを含め考えうるだけのゲーム環境の保存を行っており、カビの清掃などにかなりの労力と費用が注がれています。

そこまでしろ!という訳ではないんですが、個人からの寄贈を公式に募るのであれば、管理体制などをきちんと公開し、安心して寄贈できるようにして欲しいところです。各メディアに露出する写真を見た限り普通のプラスチック製の棚に保存しているような様子が見受けられ、ただ「文化庁のお墨付き」というだけでは(いや十分凄いんですが)安心しきれないかなぁと・・・。所蔵品リストなどのデータベース検索などがまだ用意されていないのも、寄贈する側にとっては確認の手間が増えるのでちょっと不便かなという感じがします。

この活動でどのような成果が挙げられたのか、寄贈する側にどのようなメリットがあるのかなどもきちんと明示した方がいいのではないでしょうか。お金を出して買った一般の方から送料を負担してもらって寄贈を募るわけですから。活動理念には賛同して応援したいと思っているだけに、本当に打てるだけの手を打ってるのかな?とか思っちゃいます私。

また現在は著作権の問題などが整備されていないため気軽に閲覧を行うことが出来ず、ごく限られた人しか閲覧することが出来ないようです。

これはどこまで保存を行い、閲覧できるようにするのかという問題も絡むのですが、例えば国会図書館では一部例外を除き本のカバーは外されてしまいます。利用者が持ち去ったりするのを防ぐ意味もあるそうですが、国会図書館はあくまで「中身の保存に徹する」スタンスだそうで、そのような規定をいかに作るのかも今後の活動において重要になってくるでしょう。

ちなみに以前、大阪で立命館がコレクションの一部を展示提供する機会があったので行ってみたのですが、現在のテレビに昔のハードを接続するのはいろいろ困難らしく、様々な出力変換を通しているからか表示遅延がかなり酷いものでした。企画展主催側の不手際だったのかもしれませんが、プレイ体験の保存としてこのような問題も何とか乗り越えて欲しいです。

自分の周りにあるものが歴史的に勝手に記録され、数十年後にその情報が正しく伝わっているというのは危うい幻想です。身の回りの家が建て替えられると前の景色がもう分からなくなるように、誰かが記録し保管しなければあっという間に消えてしまうのですから。

◆Before It's Too Late

これは2009年にNPO法人「国際ゲーム開発者協会(IGDA)」のゲーム保存に関する専門部会が取りまとめた白書の表題です。

ゲームに限らず、デジタルメディアは現在の文化においてとても華やかな存在ですが、再生装置と保存メディアの寿命や旧式化によってあまりにも早く失われてしまう宿命を背負っており、保存、伝承方法を確立することは急務となっています。

本に書かれたことは死んだ知識であり、それを生かさなければいつまでも死んだままです。それを救い上げ、保存、伝承する存在として図書館があるのです。ゲームに関しても同じような整備がなされ、この世から一つでも多く死蔵が減ることを祈っています。

一刻も早く、手遅れになる前に、です。


【参考】

立命館大学の細井浩一教授によって語られる「日本におけるゲーム保存活動の現状」 | インサイド http://www.inside-games.jp/article/2013/01/23/63166.html

立命館大学ゲーム研究センターのゲームアーカイブの取り組みが、文化庁の「メディア芸術デジタルアーカイブ事業」に採択 | カレントアウェアネス・ポータル http://current.ndl.go.jp/node/20654

CA1719 - 動向レビュー:デジタルゲームのアーカイブについて―国際的な動向とその本質的な課題― / 細井浩一 | カレントアウェアネス・ポータル http://current.ndl.go.jp/ca1719

ニューヨーク近代美術館(MoMA)がビデオゲームの収蔵を開始 | カレントアウェアネス・ポータル http://current.ndl.go.jp/node/22428

米国シカゴ大学図書館でビデオゲームのコレクションが誕生 | カレントアウェアネス・ポータル http://current.ndl.go.jp/node/20961


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ほえー! そうだったのか。勉強になる
47ヶ月前
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2chまとめブログだけじゃなくて、普通に2chのスレッド立てた人が煽ったのが最初の始まりっぽいね
47ヶ月前
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なかなか興味深い記事でした。
ファミコンソフトなんて実質剥き身の金属だし、放っといたら劣化しますもんね。
47ヶ月前
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