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  • ■久瀬太一/8月19日/24時10分

    2014-08-20 00:10  



     電波が切れた。
     オレは最後に、滑り込むように届いたメールを確認する。
     またきぐるみに対する質問だ。
    「なあ、お前が傷ついているのは、バッヂの状態と関係があるのか?」
    「どうかな?」
     と、きぐるみが首を傾げる。
    「別に、バッヂがどうなったかで、オレがどうこうなるわけじゃねぇよ。でもまあ、まったく関係がないとも言えない」
    「相変わらず、お前の答えはよくわからないな」
    「よくわからない方がいいんだよ」
     ずきん、と顔が痛む。
     ――きぐるみと、バッヂの状態。
    「バッヂも、お前と同じように、傷ついているのか?」
     そう口に出したとたん、痛みが増した。
     痛みは顔から、全身に広がっていた。身体から体温が抜け落ちていくように感じた。
     ――なんだ?
     一瞬、なにかを。
     半月の夜のなにかの風景を、みたような気がした。
     なんだ? オレは、走っていて、そして――
    「バッヂの状態は、まだ決ま

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  • ■久瀬太一/8月19日/23時50分

    2014-08-19 23:50  



     そのメールを目にしたとたん、また。
     顔の左半分が、ずきんと痛んだ。
           ※
     ヒーローバッヂを自分で持っておきたい?
           ※
     さすがに、なんとなくわかっていた。
     ヒーローバッヂに関する情報に近づいたとき、オレの身体は異変をきたすようだった。
     ――いや。 
     ふと、思い出す。
     ひとつ、例外に思い当る。
     ――この停留所に初めて来たときも、同じ痛みがあった。
     もうあまりよく覚えていないけれど、たしか、そうだったように思う。
    「なあ、きぐるみ」
     顔を押さえて、オレは尋ねる。
    「あのヒーローバッヂとこの停留所は、なにか関係があるのか?」
     きぐるみは首を傾げる。
    「どうかな。その辺りは、べらべらと喋れないんだ」
    「どうして?」
    「いろいろと都合があるんだよ。簡単には決められないんだ」
    「決めるって、なにを?」
     きぐるみはもう答えなかった。
     ただ、ぼんや

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  • ■久瀬太一/8月19日/23時35分

    2014-08-19 23:35  



     ソルからのメールの中にきぐるみへの質問に関するものが混じっていた。
     オレはそれを、そのまま尋ねる。
    「おいきぐるみ。お前の傷って、いつからあるんだ?」
    「傷?」
     きぐるみはなんだかむかつく笑顔で首を傾げる。
    「傷ってなんだよ?」
    「お前についてる傷だよ。わかるだろ」
    「え、傷とかついてるの?」
    「一目瞭然だろ。自覚ないのかよ」
    「いやお前、きぐるみに痛覚はないよ」
     そんな正論で返されても困るが。
    「なにか思いあたることはないのか?」
    「もしオレが傷ついているんだとしたら、それは決まってる」
     きぐるみはベンチから、丸っこい手で空を指す。
    「こんな月の夜だろ」
     ――どういうことだ?
    「半月が、どうしたっていうんだ?」
     きぐるみは首を傾げる。
    「本当にわからないのか?」
     わからない。こいつが、なにを言っているのか。
     きぐるみは言う。
    「わからないのが正しいのか、わかってる

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  • ■久瀬太一/8月19日/23時15分

    2014-08-19 23:15  



     ポケットの中で、スマートフォンが震えた。
    「お」
     ときぐるみが、嬉しげな声を出す。
    「電波?」
     この瞬間は、なかなかなれない。いつも胸がどきりとする。
     オレはスマートフォンを引っ張り出す。
     ――彼らからのメールだ。
     オレは慌てて、メールを開く。
    「どんなメール?」
     と隣のきぐるみが言ってくるが、かまってはいられなかった。
     オレは必死に返信する。
           ※
     まずは知り合いに尋ねて欲しい、といった内容のメールが続く。
     父には、みさきの祖父は謎が好きだったのか、と、彼がいなくなった正確な時期。それから少年ロケットのキーホルダーの入手元と、聖夜協会に入るむ方法について調べて欲しい、とのことだった。
     宮野さん宛ての質問も、いくつかある。主に宮野さんとあの広告主――雪に関する質問だ。水曜日の噂のときの調査は、どこまで雪に指示されていたのか? 雪から今、どんな指示を受

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  • ■久瀬太一/8月19日/23時

    2014-08-19 23:00  



     時間の感覚がなかった。
     オレはベンチに腰を下ろして、半月を見上げていた。
     あの、バスの停留所だ。でもバスはやってこない。
     ここは夢の中なのだろう。オレは目を覚まさなければいけない。時間はもうない。なのにここから、出られない。
     ――目を開け!
     とオレは叫ぶ。
     こんなところで、のんびりしているわけにはいなかない。
     なのに、オレの周りのすべてが停滞していた。月も動かず、虫も鳴かない。
     ただ顔の左半分が、ずきん、ずきんと痛む。
     その時。
     ふいに、背後から、「よう」と呑気な声がきこえた。
           ※
     あのきぐるみがのっそりと、ベンチの隣に腰を下ろす。
    「いつまで寝てんだよ、情けないな」
     ときぐるみは言った。
     まったくだ。8月24日まで、もう時間がない。
     オレは平和にうたた寝している場合じゃない。
     でも、どうしたらいい? ヒーローバッヂは結局手に入らなかった

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