第一次偶像戦争 【288】 [サイネリア]
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

第一次偶像戦争 【288】 [サイネリア]

2018-06-14 22:11

    陽は夕の色を少しだけ持ちはじめているけれども、まだまだ強く
    出た時よりも気温が上がったのか、少し蒸し暑かった。
    アタシ達は陽の光から逃げるようにコテージに入り
    涼しさをかみしめた後、各々がすごしたい場所へと散っていって。
     「飲み物出しますけど何がいいっスか?」
    テーブルに着いたアタシと律クンにヒナちゃんが声をかけてくる。
     「アタシは適当なジュースで。」
     「俺もジュースをお願いしたいかな。出来れば炭酸じゃないやつを。」
     「了解っす。」
    アタシは一息ついて、部屋を見回してみる。
    ここを出る前はもっと賑やかだった。
    そしてそれは、一緒にあった緊張と共に去ってしまった。
    ……少し寂しくて、大分安心してるかな……。
     「晩ご飯どころか、おやつの時間に帰って来ちゃったね。」
    向かいの席に座る背もたれに体を預けた律君が部屋を眺めながら話しかけてくる。
     「練習だってのもありそうデスが
      ガチってモ大して変わってなかったでしょうネ。」
    最初に決めるか、一定時間耐えられるか、そうでないか。
    まぁ、律クンはグダグダになる可能性もありマスけど。
     「状況的に最初に冬馬君を落とさないと面倒が起こるかもしれなかったし
      やった事に後悔も無いんだけど
      いかんせん俺は得られた物が冬馬君の情報しかないんだよね。
      それも、相当無防備な時の。」
     「……冬馬クンのあの油断は何だったんデスかね。」
    スペルでの防御は無理だったとはいえ、反射的な防御も無かった様に見えた。
    というか、無かったからあんなダメージを喰らってた。
     「肉体と魂、意識を強く結びつけすぎちゃってたっぽいね。」
     「冬馬クンっぽくないミスですネ。
      戦い方的に、一番肉体が必要無いト思うんですけど。」
    むしろ枷になるぐらい。
    相性的な面で考えると
    律クンは広範囲の攻撃が得意だし、被ダメが上がる事を嫌ったのかな。
     「冬馬君も冬馬君で思い詰めてた様だし
      気持ちがだけが空回りしちゃったのかもね。
      あとは……やっぱり冬馬君の中で
      まだ【黒】系スペルに対する嫌悪みたいなのがあるんじゃないかな。」
     「反応して防御するよりも、抑制する方が出た感じデス?」
     「【黒】に適正のある自分の魔力自体を毛嫌いしてる節がある様に感じるんだよね。
      だからこそ、自分の意思に反して展開するみたいなのは
      死んでもしたくないって思っているのかも。
      自然な反射や、反応以上に。」
     「それが正解なら、重傷デスね。」
    練習だったからよかったのもの、ガチの戦闘だったら瞬殺されてたし
    この戦争以外だと、あそこから消滅まで有り得る事になる。
     「だけども律子さんの力になりたいし、守りたいから
      即死系やパーマネント破壊は開放してる感じかな。
      元から結構なジレンマがあって
      そこに舞さんとの勝負に負けたってのが入り込んできて
      余計ねじくれてるんだと思う。」
     「冬馬クンだって今マデ結構な数のプレインズウォーカーと戦ってきたと思うんデスけど
      精神攻撃系は全部封印して勝ってきたんでしょうか……。」
     「俺が言うのも何だけど、中々に酷い初見殺し持ちだから
      十分有り得るんじゃないかな。」
     「今回は周りが冬馬クンの能力を知ってる上に、知り合いデスからね……。」
    殺すのは仕方がない。魔力を減らして捕縛しないといけないし。
    でも、意思を、心をねじ曲げるのは、いつも以上に禍根が残る可能性がある。
     「優しすぎる……っていうのは甘いかな。」
     「他の【黒】使いが容赦なさ過ぎるってのもアルと思いマスが。」
     「言えてる。」
    実際、冬馬クン以外は容赦なく精神攻撃系スペルを使ってくるンでしょうね。
    ていうか、必要以上に潜り込んだりしなけりゃいいだけだから
    やっぱ冬馬クンの拒絶っぷりは明らかに過剰なんデスよね。
    相手の意思を残しつつ、心を折る、消滅させるっていうのが
    高尚な勝ち方な訳は無いデスし。
    むしろ、出来る事をせずに戦うっていうのは失礼と取られても……。
     「まぁ、今日あんな結果になったんだから
      次も同じと考えない方がいいかも。
      本人も懲りただろうし、律子さんが何か言うかもしれないしね。」
     「次はアタシが当たる事になるんデスかね。」
     「どうだろ?冬馬君がリベンジしたいっていうのなら、また俺かな。」
     「そうなると、アタシはまた律子の相手ですカ……。」
    ずんと心にのし掛かってくる重さに、思わずため息が出る。
     「立場的に強い選択肢はこちらにあるんだから
      嫌なら拒否するっていう手もあるんじゃないかな。」
    律クンはそんな私を見て笑いながらそう言って。
     「……あと何回出来るかによりマスね。」
     「次はまぁあるとして、その次はちょっと不透明だね。
      状況が動いてる可能性も有るし。」
     「じゃあ、次でどれだけ情報を引き出せるかナンですね……。」
    律子の本気はあんなもんじゃないだろうし
    二つ目の能力がどちらなのかも確定してない。
     「……次が終わった辺りから、俺らも動こうか。」
    律クンの発言に、部屋の中から音が消える。
    ……動くとして、勝ちに繋げられるような強さが今のアタシにあるんだろうか。
    ……色々と仕上げるには、ちょっと時間が厳しいかもデスね……。

    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。