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  • 甘利氏口利き疑惑/黙っていてもやり過ごせない

    2016-04-01 10:53

    主張

    甘利氏口利き疑惑

    黙っていてもやり過ごせない

     甘利明・前経済再生担当相が、千葉県内の建設会社と都市再生機構(UR)の道路建設などをめぐるトラブルを「口利き」し、自分や秘書が金品を受け取っていた問題で、1月末に閣僚を辞任してから2カ月たちます。辞任の際、甘利氏は疑惑に応えることを約束したのに、辞任後は「入院」などを理由に、一切国民の前に説明しようとしていません。甘利氏は黙っていればやがて国民も忘れ、やり過ごせるとでも考えているのか。甘利氏にかかわる疑惑は、あっせん利得処罰法に違反する重大犯罪であり、あいまいに済ますことは絶対許されないものです。

    安倍首相の責任は重大

     甘利氏は安倍晋三首相とも親しく、安倍政権で経済産業相や経済財政担当相などの重要閣僚を歴任していました。「口利き」疑惑で追及を受けるようになる甘利氏を重要閣僚に起用し続けたうえ、疑惑が発覚してからももっぱら甘利氏に説明責任を押し付け、閣僚の任命権者でありながら一切疑惑解明の責任を果たさなかった、安倍首相の責任は重大です。甘利氏が閣僚を辞任した後のこの2カ月間も、安倍首相は、首相としても自民党の総裁としても、何ら責任を果たそうとはしてきませんでした。

     甘利氏が閣僚を辞任し、国民の前に姿を現さなくなってからも、週刊誌などメディアの報道や国会での野党の追及で、甘利氏の疑惑の重大性はいよいよ明らかになっています。甘利氏の地元事務所が「口利き」した建設会社とURの道路建設をめぐるトラブルでは、2億円を超す賠償金が支払われ、秘書にわたった500万円だけでなく、甘利氏が大臣室で受け取った50万円も、そこからねん出されたとみられます。その後再燃した産業廃棄物処理などをめぐるトラブルでは、甘利氏自身が地元事務所で詳しい話を聞き、新たに50万円の献金を受け取り、秘書にトラブル処理を指示して、秘書はURとの間で解決金などを釣り上げる交渉をしていた疑惑が濃厚です。

     あっせん利得処罰法は国会議員や秘書が、国や国が出資する団体の職員に請託を受けて働き掛け、影響力を行使して報酬を受け取れば、議員は3年以下、秘書は2年以下の懲役などの重罪に問われます。甘利氏が閣僚を辞任しただけで口を拭って済まそうとし、安倍首相や自民党も疑惑を不問にするなどというのは許されません。

     甘利氏らに対しては東京の弁護士グループが、あっせん利得処罰法に違反すると東京地方検察庁に告発し、東京地検特捜部が甘利氏らに資金提供していたという建設会社の元担当者から事情聴取したとも伝えられています。司法が捜査に着手するのは当然ですが、甘利氏が現職の国会議員であり最近まで重要閣僚の一人だった以上、捜査結果を待たず疑惑の全容を自ら解明するのが当然です。

    TPPの審議にも関わる

     国会は2016年度予算の成立が強行された後、環太平洋連携協定(TPP)の承認案件とその関連法案の審議が焦点ですが、TPPの交渉担当者だった甘利氏には、疑惑の解明とともに交渉の説明責任が求められます。

     自らの疑惑を解明しない甘利氏が、国会や国民の前でTPPについて語れるのか。TPPの交渉経過は不明で、甘利氏が説明できないなら審議は進みません。

  • 南スーダン宿営地に着弾/PKO原則成り立たない 参院委 井上議員追及

    2016-04-01 10:49
    日本共産党の井上哲士議員は31日の参院外交防衛委員会で、南スーダンでの国連平和維持活動(写真)質問する井上哲士議員=31日、参院外防委(PKO)に派遣された陸上自衛隊5次隊の宿営地に着弾した銃弾が陸自福知山駐屯地(京都府福知山市)に展示された問題を追及し、安保法制=戦争法による自衛隊のPKO任務拡大の現実の危険性が極めて鮮明となりました。

     宿営地で銃弾が発見されたのは、2013年12月16日の大統領派と副大統領派との武力衝突が始まった翌日。ところが、派遣部隊隊長に報告されたのは6カ月後で、隊長は「後進の隊員教育・啓発用のため」として持ち帰り、福知山駐屯地での展示に及んだとされます。

     井上氏は、14年1月5日に宿営地近くで発砲があり、同月8日には隊長が緊急撤収計画を決済していたことなども指摘。「宿営地に着弾していた事実は、政府の『南スーダンはおおむね平穏であり、停戦合意などのPKO5原則は守られている』という言い分は成り立たないことを示している」と追及しました。

     中谷元・防衛相は宿営地で弾丸が発見されたことを認め、防衛省に報告されていなかったことは「適切さを欠く行為だった」と述べました。一方で、「PKO5原則が崩れたものではなかったと(隊長が)判断したと思うが、これは適切な判断だったと思う」と支離滅裂な答弁を行いました。

     井上氏は「宿営地に着弾が発見されるという事態が起きながら深刻でないと判断し、報告もしなかった。こういうPKOに新しい任務を付与し、隊員の安全の確保ができるのか。現地の人を殺傷するという場合もありうるために極めて重大だ」と強調しました。
  • 何が秘密か政府次第/情報監視審査会が報告書

    2016-04-01 10:48

    限界が浮き彫りに

     政府の特定秘密保護法の運用を監視するとして衆参両院に設けられた情報監視審査会は3月30日、初の報告書をそれぞれの院の議長に提出しました。両報告書の記述から、審査会が秘密の提出や説明を政府に求めても、提出するか、どう説明するかは政府の判断次第という実態が浮き彫りになりました。同時に、“チェック機関”というには程遠い審査会の限界も明らかになりました。

     報告書には、政府が2014年に指定した特定秘密382件(約18万9000点)の運用に関する調査の経過や結果などが記載されています。

     質疑の概要を掲載した衆院審査会の報告書によると、国家安全保障会議(NSC)4大臣会合の結論について、委員が「特定秘密とならないものがあるのではないか」と議事録の開示を求めたのに対し、政府は「同会合は総理の下、率直な意見交換が目的。非公開が前提」と答えるなど、自分たちの都合の悪い情報の提供をかたくなに拒む政府の姿勢が垣間見えます。

     「周辺有事」に関する「外国の政府との協議の内容」などとする特定秘密の「外国」の国名について、政府は「答えは差し控える」などと答弁。自衛隊の部隊行動基準(ROE)の取り扱いについての質問には、特定秘密ではないが「公開は差し控えている」と答弁。秘密保護制度のもとで秘密のベールが何重にも張り巡らされている実態の一端が明らかになりました。

     報告書も「特定秘密ではない事項にも答弁を差し控えることが多かった」などと記述しています。しかし、衆院審査会は運用改善を求める「意見」を報告書に記載しただけで、審査会がもつ「勧告」権の行使に踏み込みませんでした。政府に特定秘密の内容の提示を求めたのも1件のみでした。

     参院審査会の報告書からは、法務省が秘密事項のリストで特定秘密を取り扱う職員の範囲を黒塗りにして提出したり、防衛省の10件の特定秘密の名称が同じだったことがわかります。外務省が秘密を取り扱う職員の範囲の一部を部局の名称とするなど、政府側が何でも秘密としようとしている実態が明らかになりました。これらは、委員の指摘で一定の改善がなされました。

     同審査会では15年12月、民主の委員が国家安全保障会議と警視庁の特定秘密計2件の提示を求める動議を提出しましたが、自民公明の委員が反対して否決。委員への提示は計4件にとどまりました。