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  • アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第111号(2017/4/14号/月2回発行)

    2017-04-18 06:06
    86pt

    電子書籍の機能を使用するには、記事を購入してください

     仕事で読まなくてはならない本を優先していたので、途中で止まっていた土居伸彰さんの著作『個人的なハーモニー』がようやく終わりに近づいてきました。『話の話』を入り口にしながら、アニメーションという器の形と中身について考察する一冊です。すごく柄の大きな本なので、同書の射程の中に、日本のメジャー流通系アニメの表現論もちゃんと含まれうるところも興味深く読めた理由でした。
     ご興味ある方は是非。買って損なしの一冊だと思います。

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    1.最近のお仕事紹介
    2.Q&A
    3.前回のアニメの門
    4.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
    5.連載一覧


    最近のお仕事紹介

    1.朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」(東京)
     5月20日 『源氏物語』『源氏物語千年紀 Genji』【5月予約】
     6月17日 『おそ松さん』【6月予約】

    2.6月の中日文化センター講座『誰でもアニメ監督になれる!』
     6月10日、1day講座「誰でもアニメ監督になれる!」好評受付中! 大ヒット作『コードギアス』の谷口悟朗監督とアニメ評論家の藤津亮太さんによる特別対談。作品制作の裏側も語ります。【受講申込】

    3.5月のNHKカルチャー青山教室
     5月20日13:30より「湯浅政明監督の世界」と題して長編監督デビュー作『マインド・ゲーム』を中心に、『夜よ短し恋せよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』が連続公開される湯浅監督の世界を考えます。【受講申込】

    4.5月のSBS学苑パルシェ校
     5月28日10:30より、「片渕須直作品の魅力」のテーマで行います。まだWEB予約はできないようなので、予約可能になりましたらよろしくお願い致します。【受講申込】


    Q&A

    Q)アニメの円盤が売れないと言われる昨今において、テレビシリーズの映画館での一挙上映で人を集めたり、人気を持続する方法が流行る可能性はあると思いますか? 映画館での上映が流行れば、グッズやイベントでの売上への依存度を減らし、本編の質に対するモチベーションも高まるかと思いますかどうでしょうか。(匿名希望)

    A)単純に計算すればわかることですが、映画館の一挙上映で想定される利益はパッケージソフトの売上に遠く及びません。
     仮に通常のイベント上映のケースを考えて見ましょう。シネコンの座席数は150~250席が多いというので、200席で想定。
     200席×1800円×1日6回×座席平均稼働率20%=43万2000円(1日の売上)。2週間興行で604万8000円の売上。これを60館(『亡国のアキト』と同規模)で上映すると、全体で3億6288万円の売り上げ。
     映画館がおよそ半分、配給会社がさらにその半分(1/4)をもっていくので製作委員会に入るのは9072万円。
     60分作品の制作費が数千万円~1億円程度と想定すると、順調にお客が入ればなんとか興行だけでペイできる水準に達しますが、スクリーンはもっと狭くなるだろうし、2週間フルに6回上映するとも考えにくいし、60館もブッキングできるかどうかもあやしいわけで、これを順調に下回る数字になると予想されます。
     これがTVシリーズの一挙上映となると、制作費はだいたい2~3億円。値段をあげても6000円とかにはできないし、館数も1館だけのことが多いですし、興行回数も1回だけになるわけで、むしろパッケージの販促というふうに考えないと、割が合わない企画ではないかと思います。
     ま、単純な算数の問題ですね。以上、配信でもお答えした質問でした。

    「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。


    前回のアニメの門チャンネル

     前回のアニメの門チャンネルは、編集者・両角織江さんをゲストに『昭和元禄落語心中 ふたたび編』と題して、同作の第2期を振り返りました。2人で全話の見どころを振り返りました。

    【両角さんが選んだポイント】
     第1話 導入部(アバン)の語り
     第2話 ゲームボーイetcの背景描写
     第3話 花火の効果。※第3話はきりどころも難しい!!
     第4話 EDが……(羽織)。※小夏の落語の見せ方
     第5話 反魂香の煙
     第6話 寄席の情景描写。※第6話は切り方がうまい
     第7話 芝浜のフィルム(菊比古と助六の差)
     第8話 キャラクターにお芝居をさせるおもしろさ。※萬月師匠おかえりなさい!
     第9話 死神の描写。現実orファンタジー?
     第10話 “のざらし”のシーンで描かれる時の移り変わり
     第11話 三途の寄席での、コマのカット・インとゆびきり
     第12話 死神(第8話との重ね合わせ)

    【藤津が選んだポイント】
     第1話 「これだって立派な情だ」のところでのイマジナリーライン越え
     第2話 すべる助六
     第3話 『落語心中』といえば縁側(親分とのくだり)。助六の『居残り佐平次』をやる八雲
     第4話 子守唄の『寿限無』
     第5話 仕上がった刺青(原作とは位置を少しだけ変えている)
     第6話 大旦那の語る「寄席」の歴史
     第7話 転がる包丁
     第8話 八雲の語りと街灯をとらえる特別なカメラワーク
     第9話 親分との会話→逮捕。誰もが未練を残していく。
     第10話 やはりここでも縁側(八雲の最期)
     第11話 走馬灯のような風景
     第12話 (いろいろあるので特定のシーンは挙げず)

     このほか原作のラストのタイミングと、アニメの放送のタイミングを合わせることについてと、小夏が産んだ信之介の父親問題についてもアレコレお話しました。


    連載「理想のアニメ原画集を求めて」

    文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)

    第39回『LOST IN ANIME ロマン・トマ DESIGN WORKS』

     ロマン・トマさんはフランス出身の方で、現在は日本に拠点を置いて活動されています。
    自分がその名前を意識したのは、『バスカッシュ!』という作品でした。その時は、原作にも名前が載っていますが、本編では設定や背景美術に関するお仕事をされているのかなと思っていました。『バスカッシュ!』は日本の作品ながら、他の国産アニメとは一風変わった美術が目を引き、そこに名前のあるロマン・トマさんのお仕事には興味を惹かれる魅力がありました。
     ロマン・トマさんは、その後もサテライト作品を中心として、様々な作品に設定や美術を中心に参加されていきます。この本では『オーバン・スターレーサーズ』から始まり、ロマン・トマさんの日本でのアニメ作品でのお仕事を一望することができます。

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     自分は、この画集を見るまでは、ロマン・トマさんは単純にメカやプロップ、美術などの設定を担当されているのかと思っていたのですが、そのお仕事は想像より多岐にわたるものでした。
     『オーバン・スターレーサーズ』では、イメージボードや美術ボード、こちらは原作を兼ねた世界観やストーリーの創作そのものを担っているようなお仕事でした。続いて掲載されている『ARIA The NATURAL』では、プロップやゲストキャラクターデザインの設定、それから大量のレイアウトが掲載されていました。
     以前の『ARIA』シリーズでは、荒川真嗣さんが「レイアウト監修」という役職で、作中に登場するヴェネチアの風景を監修されていました。その役割をこの作品ではロマン・トマさんが担当されていたようです。キャラクターの修正までは担当されていないようですが、アニメーターが描いたレイアウトを監修するという、どちらかというと美術より、アニメーターの仕事に寄ったお仕事のように思えます。以前、ここで取り上げた『METHODS ~押井守「パトレイバー2」演出ノート』に掲載されていたレイアウトに近いものだと言えば分かりやすいでしょうか。

     
  • アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第110号(2017/3/24号/月2回発行)

    2017-03-26 00:35
    86pt

    電子書籍の機能を使用するには、記事を購入してください

     神山健治監督の『映画は撮ったことがない ディレクターズ・カット版』が発売中になりました。旧版から中島哲也監督と押井守監督との2対談をカットし、新たに庵野秀明監督との対談を新規追加しました。この対談の進行と構成を藤津が担当しました。
     同書はさらに、ダ・ヴィンチ連載コラム「映画を生む本棚」を収録し、そして現在の心境をつづったあとがきが書き下ろされています。
     映画はどのようにできているかを考えるのに最適の一冊なので、是非お求めください。

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    1.最近のお仕事紹介
    2.Q&A
    3.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
    4.不定期アニメ日記
    5.連載一覧


    最近のお仕事紹介

    1.3月の朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」(東京)
     3月18日は第二期が放送中の『昭和元禄落語心中』です。第一期を中心に、作品の魅力に迫ります。【3月予約】
     4月期は以下の通りです。
      4月15日 特別講義「シナリオのできるまで」ゲスト講師:大河内一楼
           シナリオ作りを体験するワークショップです。【4月期予約】
      5月20日 『源氏物語』『源氏物語千年紀 Genji』
      6月17日 『おそ松さん』

    2.6月の中日文化センター講座『誰でもアニメ監督になれる!』
     6月10日、1day講座「誰でもアニメ監督になれる!」好評受付中! 大ヒット作『コードギアス』の谷口悟朗監督とアニメ評論家の藤津亮太さんによる特別対談。作品制作の裏側も語ります。【受講申込】

    3.5月のNHKカルチャー青山教室
     5月20日13:30より「湯浅政明監督の世界」と題して長編監督デビュー作『マインド・ゲーム』を中心に、『夜よ短し恋せよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』が連続公開される湯浅監督の世界を考えます。【受講申込】

    4.5月のSBS学苑パルシェ校
     5月28日10:30より、「片渕須直作品の魅力」のテーマで行います。まだWEB予約はできないようなので、予約可能になりましたらよろしくお願い致します。


    Q&A

    「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。


    連載「理想のアニメ原画集を求めて」

    文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)

    第38回『エヴァンゲリオン展 図録』

     『エヴァンゲリオン展』は2013年夏から、会場を変えつつ現在も続いている展示会です。
    その内容は、アニメの原画展示がメインというわけではなく、TV版の『新世紀エヴァンゲリオン』から、現在進行形の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』に関する資料や貞本義行さんの描いていた漫画版の原稿を一度に見ることができる大々的な原画展です。
     展示資料は新劇場版のもの中心。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』と『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』はそれぞれ全記録全集や原画集が出ていますが、そこに掲載されていた資料を実際に目にすることができました。

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     アニメの資料展や原画展の開催される頻度は年々高くなっています。特に近年は間を置かずに継続して原画展を開催している「ササユリカフェ」のような特別な場所もできたことで、原画を見ることが、アニメファンにとって身近なことになってきているかもしれません。自分としても大変喜ばしいことで、原画を見られる機会があれば喜々として足を運ぶことも多いです。

     実際に紙に描かれた線画を見ると、まず最初に感じることの一つが、絵の大きさだと思います。
     紙媒体などに原画が掲載される場合、実際の紙の大きさはよく分かりませんし、1ページに何枚も掲載される場合が多くて、1枚の絵をじっくり見るという感覚はなかなか味わえません。
     アニメの原画の大きさは、差異はあれどカメラワークが関係しなければだいたい決まった大きさではありますが、劇場作品や一部の作品では紙が大きめなものもあります。

     新劇場版の原画も大きめのサイズの紙で描かれています。これは実際に原画展に行って初めて知りました。紙が大きいと、単純に大きな絵を描くことになるわけで、それだけ絵を描く為に長い線を引かなければいけなくなる。実際の原画を見ると、そうした絵の向こう側にある、それを描いている人の肉体を想像できるようで面白いんですよね。
     新劇場版の場合は、こんなに大きな絵を何十枚、何百枚も描いて作られているという、アニメの肉体労働的な側面が感じられる原画展でした。

     その『エヴァンゲリオン展』の図録なんですが、この本はそうした原画の迫力を実感できる良い本だと思います。実に大きめの本で、今までここで紹介した本の中で一番大きな本だと思うのですが、実はこれがその原画の実寸の大きさなんです。
     本来の図録というものは、展示されている大量の絵の目録的な役割としての比重が大きいと思うんですが、この本はそこが大きく違っているのが面白いところです。
     横開きになっていて、全体的に1ページに1枚大きく絵が掲載されているページが多く、それが原寸大であることから、原画の実物としての大きさや、迫力が分かるようになっています。
     また、片面1枚にだけ絵が印刷されているページがあるんですが、これはアニメーターが使う紙を再現しているページなんです。

     実際にアニメの制作現場で使われている紙は、原画や動画、レイアウトや修正用紙などそれぞれ少しずつ違うものではあるんですが、この本で使われている印刷用紙はアニメの現場で使われている紙に近い質感になっています。
     実際は、下の絵を透かして見るために、もう少し薄い感覚ですが、かなり再現度の高い触り心地です。絵の大きさ、紙の質感、フルカラーでの掲載ということで、この本は物体としての原画を再現しようとしている、原画を触れる原画集だと思います。

     完成した映像の画面からは、実際に絵を描いている人たちの感覚というものは想像しづらいところがあると思うんですが、アニメに興味のある人は、この本を見て、触ってみて、試しに同じ大きさの紙にちょっと線を引いてみると、絵を描くという肉体的な行為に実感が持てるんじゃないかと思います。
     作画に熱心な興味がある人にとっても良い本だと思いますし、展示を見て、図録を手に取って見てみれば、絵を描くってなかなか体を動かす肉体労働なんだなということが分かってもらえると思います。
     実物と同じ大きさで原画の画としての迫力を感じることができて、展示では額に入っていて触ることができない絵を触ることができる、見て楽しい、触って楽しいという、なかなか貴重な原画集が『エヴァンゲリオン展 図録』です。

    『エヴァンゲリオン展 図録』/朝日新聞社/3000円)


    不定期アニメ日記

     『モアナと伝説の海』を見てきました。
     挑戦的な要素(非白人ヒロイン、男性サブキャラが嫌われやすい性格)を、よくできた楽曲と定形のエピソードでぐいっと押さえ込んだような内容でした。

     
  • アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第109号(2017/3/10号/月2回発行)

    2017-03-14 08:10
    86pt

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    【アニメの門メルマガ109】

     東京アニメアワードフェスティバル2017で長編コンペに参加した『ズッキーニと呼ばれて』『手を失くした少女』を見ました。2月のアニメの門チャンネルの「海外長編アニメーションの世界」でも紹介した2作品。
     『ズッキーニと呼ばれて』は、孤児院を舞台に、親元にいられなくなった子どもたちの喜怒哀楽を繊細に描く人形アニメーション。表情演技がすごく繊細でした。
     『手を失くした少女』は、グリム童話が原作。ただ、もっと「人間の一生」というところに比重がかかっていて、とても“リアル”な作品に仕上がっていました。筆書きであろうラフな描線とも相まって、『かぐや姫の物語』とも近いものを感じました。しかし、ヒロインの排泄(大小ともに)を描いた作品というのはなかなか珍しいのではないか。そのあたりがこの映画の考える「人間」なのだと感じました。
     では、いってみましょう。

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