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  • アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第110号(2017/3/24号/月2回発行)

    2017-03-26 00:35
    86pt

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     神山健治監督の『映画は撮ったことがない ディレクターズ・カット版』が発売中になりました。旧版から中島哲也監督と押井守監督との2対談をカットし、新たに庵野秀明監督との対談を新規追加しました。この対談の進行と構成を藤津が担当しました。
     同書はさらに、ダ・ヴィンチ連載コラム「映画を生む本棚」を収録し、そして現在の心境をつづったあとがきが書き下ろされています。
     映画はどのようにできているかを考えるのに最適の一冊なので、是非お求めください。

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    1.最近のお仕事紹介
    2.Q&A
    3.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
    4.不定期アニメ日記
    5.連載一覧


    最近のお仕事紹介

    1.3月の朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」(東京)
     3月18日は第二期が放送中の『昭和元禄落語心中』です。第一期を中心に、作品の魅力に迫ります。【3月予約】
     4月期は以下の通りです。
      4月15日 特別講義「シナリオのできるまで」ゲスト講師:大河内一楼
           シナリオ作りを体験するワークショップです。【4月期予約】
      5月20日 『源氏物語』『源氏物語千年紀 Genji』
      6月17日 『おそ松さん』

    2.6月の中日文化センター講座『誰でもアニメ監督になれる!』
     6月10日、1day講座「誰でもアニメ監督になれる!」好評受付中! 大ヒット作『コードギアス』の谷口悟朗監督とアニメ評論家の藤津亮太さんによる特別対談。作品制作の裏側も語ります。【受講申込】

    3.5月のNHKカルチャー青山教室
     5月20日13:30より「湯浅政明監督の世界」と題して長編監督デビュー作『マインド・ゲーム』を中心に、『夜よ短し恋せよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』が連続公開される湯浅監督の世界を考えます。【受講申込】

    4.5月のSBS学苑パルシェ校
     5月28日10:30より、「片渕須直作品の魅力」のテーマで行います。まだWEB予約はできないようなので、予約可能になりましたらよろしくお願い致します。


    Q&A

    「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。


    連載「理想のアニメ原画集を求めて」

    文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)

    第38回『エヴァンゲリオン展 図録』

     『エヴァンゲリオン展』は2013年夏から、会場を変えつつ現在も続いている展示会です。
    その内容は、アニメの原画展示がメインというわけではなく、TV版の『新世紀エヴァンゲリオン』から、現在進行形の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』に関する資料や貞本義行さんの描いていた漫画版の原稿を一度に見ることができる大々的な原画展です。
     展示資料は新劇場版のもの中心。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』と『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』はそれぞれ全記録全集や原画集が出ていますが、そこに掲載されていた資料を実際に目にすることができました。

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     アニメの資料展や原画展の開催される頻度は年々高くなっています。特に近年は間を置かずに継続して原画展を開催している「ササユリカフェ」のような特別な場所もできたことで、原画を見ることが、アニメファンにとって身近なことになってきているかもしれません。自分としても大変喜ばしいことで、原画を見られる機会があれば喜々として足を運ぶことも多いです。

     実際に紙に描かれた線画を見ると、まず最初に感じることの一つが、絵の大きさだと思います。
     紙媒体などに原画が掲載される場合、実際の紙の大きさはよく分かりませんし、1ページに何枚も掲載される場合が多くて、1枚の絵をじっくり見るという感覚はなかなか味わえません。
     アニメの原画の大きさは、差異はあれどカメラワークが関係しなければだいたい決まった大きさではありますが、劇場作品や一部の作品では紙が大きめなものもあります。

     新劇場版の原画も大きめのサイズの紙で描かれています。これは実際に原画展に行って初めて知りました。紙が大きいと、単純に大きな絵を描くことになるわけで、それだけ絵を描く為に長い線を引かなければいけなくなる。実際の原画を見ると、そうした絵の向こう側にある、それを描いている人の肉体を想像できるようで面白いんですよね。
     新劇場版の場合は、こんなに大きな絵を何十枚、何百枚も描いて作られているという、アニメの肉体労働的な側面が感じられる原画展でした。

     その『エヴァンゲリオン展』の図録なんですが、この本はそうした原画の迫力を実感できる良い本だと思います。実に大きめの本で、今までここで紹介した本の中で一番大きな本だと思うのですが、実はこれがその原画の実寸の大きさなんです。
     本来の図録というものは、展示されている大量の絵の目録的な役割としての比重が大きいと思うんですが、この本はそこが大きく違っているのが面白いところです。
     横開きになっていて、全体的に1ページに1枚大きく絵が掲載されているページが多く、それが原寸大であることから、原画の実物としての大きさや、迫力が分かるようになっています。
     また、片面1枚にだけ絵が印刷されているページがあるんですが、これはアニメーターが使う紙を再現しているページなんです。

     実際にアニメの制作現場で使われている紙は、原画や動画、レイアウトや修正用紙などそれぞれ少しずつ違うものではあるんですが、この本で使われている印刷用紙はアニメの現場で使われている紙に近い質感になっています。
     実際は、下の絵を透かして見るために、もう少し薄い感覚ですが、かなり再現度の高い触り心地です。絵の大きさ、紙の質感、フルカラーでの掲載ということで、この本は物体としての原画を再現しようとしている、原画を触れる原画集だと思います。

     完成した映像の画面からは、実際に絵を描いている人たちの感覚というものは想像しづらいところがあると思うんですが、アニメに興味のある人は、この本を見て、触ってみて、試しに同じ大きさの紙にちょっと線を引いてみると、絵を描くという肉体的な行為に実感が持てるんじゃないかと思います。
     作画に熱心な興味がある人にとっても良い本だと思いますし、展示を見て、図録を手に取って見てみれば、絵を描くってなかなか体を動かす肉体労働なんだなということが分かってもらえると思います。
     実物と同じ大きさで原画の画としての迫力を感じることができて、展示では額に入っていて触ることができない絵を触ることができる、見て楽しい、触って楽しいという、なかなか貴重な原画集が『エヴァンゲリオン展 図録』です。

    『エヴァンゲリオン展 図録』/朝日新聞社/3000円)


    不定期アニメ日記

     『モアナと伝説の海』を見てきました。
     挑戦的な要素(非白人ヒロイン、男性サブキャラが嫌われやすい性格)を、よくできた楽曲と定形のエピソードでぐいっと押さえ込んだような内容でした。

     
  • アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第109号(2017/3/10号/月2回発行)

    2017-03-14 08:10
    86pt

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    【アニメの門メルマガ109】

     東京アニメアワードフェスティバル2017で長編コンペに参加した『ズッキーニと呼ばれて』『手を失くした少女』を見ました。2月のアニメの門チャンネルの「海外長編アニメーションの世界」でも紹介した2作品。
     『ズッキーニと呼ばれて』は、孤児院を舞台に、親元にいられなくなった子どもたちの喜怒哀楽を繊細に描く人形アニメーション。表情演技がすごく繊細でした。
     『手を失くした少女』は、グリム童話が原作。ただ、もっと「人間の一生」というところに比重がかかっていて、とても“リアル”な作品に仕上がっていました。筆書きであろうラフな描線とも相まって、『かぐや姫の物語』とも近いものを感じました。しかし、ヒロインの排泄(大小ともに)を描いた作品というのはなかなか珍しいのではないか。そのあたりがこの映画の考える「人間」なのだと感じました。
     では、いってみましょう。

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  • アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第108号(2017/2/24号/月2回発行)

    2017-03-01 02:12
    86pt

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     2月20日に『声優語』出版を記念して、ジュンク堂書店池袋本店で音響監督・斯波重治さんを招いてのトークを行いました。満員のご来場どうもありがとうございました。
     2月25日には朝日カルチャーセンター新宿教室で幾原邦彦監督を招いた『僕はこんな作品を見てきた。1995年とメディアの変遷』を開きました。こちらは上智大学講師の上田麻由子さんと一緒に聞き手を勤めました。こちらも満員で、ご来場どうもありがとうございました。
     どちらも非常に貴重なお話がうかがえたと思います。楽しんでいただけたのならなによりです。
     2月は通常の講座も含め毎週何かありましたが、それもこれで一段落です。

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    1.最近のお仕事紹介
    2.Q&A
    3.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
    4.お蔵出し原稿
    5.連載一覧


    最近のお仕事紹介

    1.1月期の朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」(東京)
     3月18日は第二期が放送中の『昭和元禄落語心中』です。第一期を中心に、作品の魅力に迫ります。【3月予約】
     4月期は以下の通りです。
     4月15日 特別講義「シナリオのできるまで」ゲスト講師:大河内一楼
          シナリオ作りを体験するワークショップです
          【4月期予約】
     5月20日 『源氏物語』『源氏物語千年紀 Genji』
     6月17日 『おそ松さん』

    2.3月のSBS学苑パルシェ校&遠鉄校「アニメを読む」
     3月12日10:30よりがパルシェ校で、13:30より遠鉄校で講座を行います。お題はともに『新海誠作品の魅力』です。CREA3月号で取材した時のお話など交えつつ解説できれば。
     【パルシェ校予約】 【遠鉄校予約】

    3.3月のNHK文化センター青山教室(東京)
     3月18日13:30からNHKカルチャー青山教室で開催の「アニメを読む」は『アイアン・ジャイアント』です。ブラッド・バード監督の初監督作品、『アイアン・ジャイアント』の魅力をいろいろな角度から考えます。
     https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1088222.html


    Q&A

    「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。文面にハンドル(名前)も入れてください。


    連載「理想のアニメ原画集を求めて」

    文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)

    第36回『柴田勝紀2016』①~③

     『柴田勝紀2016』は、その名の通り、アニメーターの柴田さんの2016年のお仕事をまとめた原画集同人誌です。1冊約80ページの本に、2作品の資料を収録。3冊セットで、計6作品分のお仕事が掲載されていました。
     2016年の柴田さんのお仕事は、単価で引き受けるかたちだったそうです。アニメ作業における「単価」は、動画の場合は1枚いくら、原画の場合は1カットいくらと、仕事内容によってお金が発生する単位が違うのですが、会社や作品によって、それぞれ決められた金額があります。もちろん、単価で受けるお仕事以外にもお金が発生する状況はあるのですが、アニメ業界では基本的に単価という条件の元に仕事をしている場合が多いと思います。『柴田勝紀2016』では、そうした1カットいくらという単価で引き受けたお仕事が掲載されているようです。

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     では、単価とは一体いくらなのでしょうか?
     TVアニメの原画1カットの作業料金は、おおむね4000円前後になると思います(この本には3800~4500円と書いてあります)。先ほども触れたように、単価の概念は作業内容によって変動しますが、原画作業の場合は基本的に1カット単位で発生します。しかし、ここからさらに単価が分割されるのが現在のアニメの制作状況です。
     この連載でも何度か触れていますが、原画の作業は、現在はレイアウトと第二原画の二つに分かれています。そして、レイアウトの作業にはレイアウト、ラフ原画(または第一原画)などが含まれます。一方、第二原画は、演出や作画監督のチェックや修正を経て、返ってきたラフ原画を清書する作業です。1カット4000円は、この二つの作業全てを終えた場合の労働単価となります。ですので、レイアウト、ラフ原画だけを担当した場合、もらえるお金は単価の半額。第二原画だけを担当した場合も、もらえるお金は単価の半額となります。
     この本に掲載されているのは、主にレイアウト、ラフ原画段階でのお仕事のみですので、単価2000円前後でされたお仕事ということになります。全てが全てというわけではないようですが、それがTVアニメの制作現場での作業の相場だということです。もちろん、実際の現場では、単価で受ける作業をしている方が全てではありませんので、それだけは誤解しないでください。

     実際に、この本を読んでみると、各現場で予算的な状況や制作的な状況などが違う事が分かります。作品ごとにコメントが付いており、前回の記事で少し触れた作画的なコストについて、更に踏み込んだ本となっています。
     掲載されているのは、基本的に演出・作画監督がチェックする以前のラフ原画です。完成した本編とは違うものなので、柴田さんのコメントによると、参考になるものではないとのことです。とは言え、全部で240ページものボリュームを使って、1年間という長いスパンでのアニメーターの仕事を俯瞰した内容で、興味深い本となっていると思います。
     商業出版の原画集に掲載されている絵と違って、ラフに見える絵かもしれませんが、巧い人が描いているのは見れば分かりますし、自分にとっては参考になる本でした。
    様々な傾向の作品の原画を見ることができ、レイアウト、カメラワーク、ラフ原画、タイムシートも掲載されていて、原画集としても充実した内容だと思います。

     作品によって写真レイアウトや3DCGレイアウトで作業をしていることが分かったり、ラフ原画とはいえ1カットで原画30枚や70枚と言った、大量の原画が掲載されている同人誌は、なかなか見たことがありません。
     そして、原画の単価が1カット単位であることを念頭において見ると、原画を1枚描いた場合も、原画のないBGオンリーのレイアウトだけを描いた場合も、100枚描いた場合も、「1カット」と数えれば、単価は同じかもしれない状況が見えてきます。
     時間的なことについては、この同人誌の中では言及されていませんが、どんな仕事でも経費、掛かる時間、作業自体の難易度の違いは存在しています。単価という条件で仕事をしている限り、アニメ制作者にとってそれらは無視できない要素だといえます。
     アニメーターという仕事を意識させられる同人誌でした。

    (『柴田勝紀2016』①~③/柴田勝紀/各1200円)


    お蔵出し原稿

    ユリイカの2.5次元特集に書いた原稿です。おそらく6月の朝カル『おそ松さん』は、ここから延長線上でいろいろ考察するかもしれません。

     マンガやアニメを原作とする舞台/ミュージカルを指す時に使われる「2・5次元」という言葉を煎じ詰めていくと、「キャラクター」とは何か、という問いが浮かび上がってくる。ここでは筆者の専門領域であるアニメにおいて、キャラクターとはどういう存在かを考えることから「2・5次元」というテーマを浮かび上がらせてみたい。
     スクウェア・エニックスのマンガ雑誌のCMを見たことがあるだろうか。深夜に放送されることが多い同社のCMは、アニメ化作品の主人公が、そのキャラクターとしてCMのナレーションを担当している。
     このナレーションでは、キャラクターを特徴付ける言い回しや決めぜりふはそのまま登場するが、キャラクターが自己紹介をすることはほとんどない。また、当該のキャラクターのイラスト(たとえばコミックスの表紙)などが画面に写ることはあるが、声の主がそのキャラクターであるとわかるような図像との関連づけ(口パクなどのセリフとの同期)もほとんど見かけない。同社原作のアニメの間に流れるCMだから、たいがいの視聴者はそれがどのキャラクターなのかすぐわかる、ということなのだろう。
     ここでおもしろいのは、「声(セリフ)」だけで、そのキャラクターがそれと視聴者に認識されているところにある。
     アニメのキャラクターは「図像」と「セリフ」から成立している。だがこの事例を見てもわかる通り、図像がなくても「アニメのあのキャラクターである」という認識は成立する。実は「図像」も「セリフ」もアニメのキャラクターにおいては絶対的なものでないのだ。
     押井守監督による実写映画『トーキング・ヘッド』は、監督が失踪し迷走するアニメ映画の制作現場を舞台にしている。物語の要所要所にスタッフが、自らの仕事の持論と歴史的根拠を語るシーンが織り込まれた本作は、押井流の映画論映画、アニメ論映画なのだが、劇中のキャラクターデザイナーは「遺言」の中で次のような言葉を残している。
    「これで複数のアニメーターによって描かれた似ても似つかぬキャラクターが/ただ同一の音声によって演じられるだけで/いや時には声優の交代という非常事態をも受け入れつつ/疑いもなくその存在を同定される摩訶不思議」
     このセリフの通り、かなり作画が荒れたとしても視聴者はキャラクターを別人と見間違えることはない。
    なぜならアニメのキャラクターの一貫性は、絵柄ではなく、「色」(視聴者はアップ時の画面占有面積の多い髪の色を手がかりにキャラクターを把握していることが多い)に代表される記号性と「声」が補い合って保証しているからである。