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アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第95号(2016/8/12号/月2回発行)
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アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第95号(2016/8/12号/月2回発行)

2016-08-14 01:13

     NETFLIXに加えてHuluに加入。さらにAmazonプライムビデオをTVで見られるようにしました。地上派アニメもいろいろ見なくちゃならないんですが、古い特撮(昭和ゴジラの後期とか)とか、気になってた邦画(『探偵はBARにいる』とか)とか『帰ってきたウルトラマンと』全話とか『フラーハウス』とかを見ていると、おもしろすぎて……。
     そんな今日この頃ですが、さて今回もいってみましょうか。

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    1.最近のお仕事紹介
    2.Q&A
    3.前回のアニメの門チャンネル
    4.アニメレビュー勉強会in大阪 トップ原稿
    5.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
    6.不定期アニメ日記


    最近のお仕事紹介

    1.朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」(東京)
     8/20『花とアリス殺人事件』
     9/17『交響詩篇エウレカセブン』

    2.NHK文化センター青山教室「アニメを読む」(東京)
     8月20日13:30から、『新海誠作品』を取り上げます。最新作『君の名は。』の予習にどうぞ。
     →https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1088222.html


    Q&A

    「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。文面にハンドル(名前)も入れてください。
    あるいは、アニメの門チャンネルの有料会員は、アニメの門チャンネルページの掲示板サービスが使えますので、そこに質問をしていただいてもよいです。メルマガの下にあるコメント欄でも結構ですよー。


    前回のアニメの門チャンネル

     前回のアニメの門チャンネルは、アニメ!アニメ!の元編集長、数土直志さんをゲストに、「数土さんがどうしてアニメ!アニメ!を立ち上げたのか」というお話と、「これからアニメビジネスはどうなるか」というお話の2本立てでうかがいました。
     今回、数土さんにお願いしたのは、ご自身のセル画コレクションを持ってきてほしいということ。数土さんて、アニメビジネスには詳しいことは知られているけれど、どれぐらいアニメが好きなのかあまり知られていないように思ったので、そういう部分をちょっと知ってもらえたらなぁと思ったのでした。数土さん曰く、ご両親が厳しくあまり自由がなかったので大人になったら、その反動でいろいろセルを買うようになったとか。白黒アニメ(『W3』)から『AKIRA』『カウボーイビバップ』までお持ちのセルを見せていただきました。
     数土さん、今後はフリーで活動されるということで、折に触れてゲストとして出ていただこうと思っています。


    アニメレビュー勉強会in大阪トップ原稿

     7月3日に大阪で行ったアニメレビュー勉強会in大阪でトップの得点を集めた原稿を載せます。この勉強会in大阪は、大阪在住の三好悠太さんが主宰となって開いてくださったものです。お題は『こころが叫びたがってるんだ。』、トップはこうたろうさんでした。

    『心が叫びたがってるんだ。』―廃墟のラブホの一室で、あなたに言いたいことがある―

    こうたろう
    想定媒体:『映画秘宝』別冊/EX「青春のアニメ映画読本」

    青春って痛恥ずかしい

     「こいつはどう見たって、ラブホの1つや2つ行ってそうな……ラブホ顔じゃねえか!」
     TVアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(以降『あの花』)第6話において飛び出した、センセーショナルな台詞である。主人公の引きこもり高校生・宿海仁太(通称:じんたん)が、援交を疑われた幼馴染の同級生・安城鳴子(通称:あなる)をかばうために、彼女を指して発したものだ。しかも、彼は久々に出席した授業中の教室で突然立ち上がり、教師とクラスメイトの注目を一身に浴びながら、震える大声でこれを叫ぶ。あまりにも痛々しく、恥ずかしいシチュエーションである。
     “大人も泣けるアニメ”として社会現象になった『あの花』だが、「ラブホ顔」は多くの視聴者に強烈なインパクトを与えたに違いない。しかし、「とある出来事がきっかけで疎遠になってしまったあなるら幼馴染たちと、高校生になった今、当時の気持ちを思い出しながら再び向かい合う引きこもりのじんたん」という、作品の根幹となる“痛恥ずかしさ”を痛烈に意識させてくれたのもまた、この台詞であったはずだ。
     と、そんな『あの花』の製作陣が再び一堂に会したのが、表題のアニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』(以降『ここさけ』)である。

    開幕ラブホがキーワードに

     『ここさけ』は開始30秒で前作を想起させてくる。冒頭から「お山の上にあるお城」、つまりラブホが登場するのである。直球すぎる。が、『あの花』ファンへのつかみとしてはこれ以上の演出はないだろう。だがもちろん、いきなりのラブホはネタだけでは終わらない。ファンタジー要素が主軸になっている『あの花』に比べ、滑り出しからよりリアルに暗い内面を描いた作品であることを予感させ、かつラブホが本筋に関わる重要な場所であることを明示してくる。
     その「お山の上にあるお城」を眺める幼い女の子が、主人公の成瀬順(以降「順」)である。順はそこから父親が出てくるところを目撃し、それが不義の告げ口になるとは思いもせずに、持ち前のお喋りで母親に話してしまう。結果、両親は離婚。順はお喋りが現状をもたらしたというトラウマから失声症に陥り、“玉子”に閉じこもってしまう。これらが冒頭のラブホからの流れで示されるのである。これには一見はもちろん、「まさかラブホが原因でこんなことになるとは。これからどうなるの」と、『あの花』ファンも身構える。

    “青春チョイス”を揺さぶる廃城

     物語は、失声症を抱え“玉子”に閉じこもったまま高校2年生となった順が、「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命されたところから動き始める。同じく任命された、無気力な若者・坂上拓実(以降「拓実」)、夢破れてやさぐれた球児・田崎大樹(以降「大樹」)、まとめ役の優等生女子・仁藤菜月(以降「菜月」)らとともに、出し物のミュージカルに臨む顛末が本作のメインストーリーとなる。その過程で順・拓実・大樹・菜月それぞれが変化していき、そして彼らの人間関係がどうなっていくのかが本作の見どころとなるわけだが、既に廃墟と化した「お山の上にあるお城」は定期的にその影をちらつかせ、彼らを揺さぶる。
     失声症で無口な順だが、その感情は挙動で逐一伝わってくる。表情の動きが、手足の動きが、感情に変化があるたびに大きくなるのだ。そしてそれにいち早く気づき、“玉子”の中から言葉を発する順を知り始めていた拓実は、彼女のトラウマの原因を知る。「山の上にあった……ラブホ?」。
     強面の外見で当たりの強い大樹は、序盤では誰とも相容れず、実行委員にも参加しない。だが、野球部でも居場所を失いつつあると知った帰り道に菜月と交わした会話が、彼が変わっていく起点となる。そのネタ振りに使うのが、既に廃墟となった“山の上の城”なのだ。菜月も、その会話でラブホ=男女関係を意識したことで、中学時代に距離が近づいたことがある拓実への意識を再び強めていく。
     “健全な青春劇”ながら、主要な登場人物はもちろん視聴者に至るまで、心の片隅にラブホの存在を意識させつつ話が進行するのは、恐らく『ここさけ』だけだろう。やましいことは何もないのに、この痛恥ずかしさは何事だろうか。

    ベットルームで交わされるのは肉欲だけじゃない

     本作のヤマは「地域ふれあい交流会」……ではなく、やはりというべきか、ラブホで迎えることになる。廃墟のラブホで展開される青春劇。元・愛欲のダブルベットを背景に繰り広げられる会話。痛々しくても、見ているこちらが恥ずかしくなってきても、どうか目を逸らさずに直視してほしい。最後にはきっと、涙が頬を伝っていくはずだ。


    連載「理想のアニメ原画集を求めて」

    文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)

    第23回『日本アニメ(ーター)見本市資料集Vol.1 「西荻窪駅徒歩20分2LDK敷礼2ヶ月ペット不可のいろいろ詰まった本」』

    『日本アニメ(ーター)見本市』は2014年11月から2015年10月までに週1本のペースで配信され、10分前後の短編として35本制作されました。
    作品内容は様々で、手描き作画のアニメだけでなく3DCG作品も多く、一風変わったものとしては以前紹介した『安彦良和アニメーション原画集「機動戦士ガンダム」』の映像版とも言える、『安彦良和・板野一郎原撮集』という変わり種もありました。
    その中でも、特に注目の作品だったのが本田雄・前田真宏監督作の『西荻窪駅徒歩20分2LDK敷礼2ヶ月ペット不可』です。

    この作品は、今までアニメーター業に専念してきた本田さんの初めての監督作で、原案から作品に参加されています。
    キャラクターデザインは本田さんが手がけられていますが、作画監督という役職はなく、原画集を見ても作監修正などをされている様子も見えません。
    演出チェックの段階でどのように指示されていたかは分かりませんが、完成画面自体がアニメーターの原画を線から、その個性を残した形で作られています。

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    原画集の中身は白黒ページがメインですが、鉛筆のラフなタッチの線画を楽しむことができます。 白黒で描かれてはいますが、カラーページでは大平晋也さんの原画の抜粋を掲載、微妙な濃淡の質感を見ることもできるようになっています。
    アニメーターの個性を強調したような完成品になっている作品ですが、原画集でもレイアウトや原画を担当したアニメーターを明記しているので、アニメーターの名前に詳しくない人にでも、どこを誰が担当したのか分かりやすい内容となっています。

    原画やレイアウトにもカットナンバー、担当者などの細かい記述があり、カットによっては複数のセル、またはBG(背景原図)を合成して掲載しています。カットの内容が分かりやすいのはもちろん、原画の掲載枚数をできるだけ増やそうとしている姿勢には、たいへん好感が持てる編集です。
    トリミングされているカットも多く、こちらも原画の掲載枚数をできる限り1枚でも増やそうという一貫した姿勢を感じます。
    タップ穴などもトリミングされており、カットによっては原画も抜粋となるなど、原画の内容を吟味した上で編集が考えられている様子が伺えます。
    A4の大きめの判型のページの中で、誌面を無駄にしないよう、ページ全体にぎっしりと原画が掲載されており、200pの厚さの中に作品の魅力が凝縮された構成です。

    登場人物が全裸で動き回る大胆な映像の原画集のため、描かれている肉体から、アニメーターの方たちの高い画力を感じられるので、アニメーター志望者のみならず、絵を描く人たちにとって参考になりうる内容となっています。
    様々なアングルで動き回る肉体の描写も注目なのですが、アニメでは省略されることの多い裸足の足の描写など、末端部分の描写にも凄みを感じさせてくれます。
    『いろいろ詰まった本』ではレイアウトのみの掲載となっている、背景動画でブラインドを走る見せ場のカットの原画が、別売りの『西荻窪駅徒歩20分2LDK敷礼2ヶ月ペット不可のぱらぱら本』では、パラパラと見れるようになっています。合わせて買うと約5000円となかなかのお値段となっていますが、セットで買われるのをおすすめしたいところです。
    収録されている原画はどれも個性的で、編集に関してもこだわりを感じる原画集です。『アニメ(ーター)見本市』では今後も原画集の発行が予定されていますので、そちらも発売されるのが楽しみですね。

    (『日本アニメ(ーター)見本市資料集Vol.1「西荻窪駅徒歩20分2LDK敷礼2ヶ月ペット不可のいろいろ詰まった本」』」監修:本田雄・前田真宏/グラウンドワークス/¥3780)


    不定期アニメ日記

     全然アニメの話題じゃありませんが、夏になると必ず出る読書感想文談義。僕も読書感想文についてはいろいろ思うところがあって、ついツイートしてしまうのです。なのでここにちょっと持論を書いてみようかと。

     
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