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アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第124号(2017/10/27号/月2回発行)
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アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第124号(2017/10/27号/月2回発行)

2017-11-02 19:52

     このところ自分としてはちょっと長めの原稿を描いています。長さもそうなんですが、そのために家においてあるさまざまな資料をひっくり返していて、それが勉強になる感じです。一度読んだきりの資料、積ん読だった資料、それぞれつなぎ合わせて、初学者を想定した解説にまとめあげているのです。
     この成果、原稿だけに留めるのではなく、講座などでフィードバックできればなと考えています。
     では、いってみましょう。

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    1.最近のお仕事紹介
    2.Q&A
    3.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
    4.お蔵出し原稿
    5.連載一覧


    最近のお仕事紹介

    1.朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」(東京)
     11月18日 作画を体験しよう(特別講師:アニメーター・演出、数井浩子さん)
          【受講申込】
          ※パラパラまんがキット(無料配布)簡単な作画に挑戦してみます。
           上手い下手というより、動きを体感してみたい方に経験してもらい
           たい講座です。プロ志望者ではなく大人のファンがプロのアドバイ
           スを受けて体感できるのはあまりない機会かと。
     12月16日『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(髙山文彦監督)
          【受講申込】

    2.11月のSBS学苑
     11月26日の「アニメを読む」は『シン・ゴジラ』を取り上げます。予約はこれからです。【受講申込】


    Q&A

    Q:アニメ作品の冒頭で「アニメを観るときは部屋を明るくして離れてみてください」とでるのは、ポケモンショック以降だと思います。「この作品はフィクションであり、──」とアニメで出るようになったのは、いつ頃なのか、何が議論されてこうなったのか、ご存じでしたら教えてください。(ハンドル名:匿名希望)

    A:これちょっと調べてみてもわかりませんでした。1989年秋のTV『機動警察パトレイバー』に「この物語はフィクションである
    ……が、10年後においては定かではない。」(記憶で書いています)というテロップがありましたが、あのころはまだアニメでそういうテロップが入ることは珍しかった印象で、「ドラマのテロップのパロディ」と思った記憶があります。ただその時点ですべてのアニメを見てるわけではないので、勘違いの可能性もありますが。おそらくはここ10数年のうちに、実景などを参考にしたアニメが増えたため、現実のものとの関連を否定するために入るようになったのかな……と想像しています。

    「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。


    連載「理想のアニメ原画集を求めて」

    文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)

    第52回『森智子修正原画集 うしおととら 西村聡・編』

     この本は、2016年冬のコミックマーケットC91で頒布された原画集です。自分はコミケの会場では手に入れることができず、その後再販されたものを通販で購入しました。
     アニメーターの原画集というと、アニメーターが自主的にその活動をまとめた同人誌が多い中、この本の編集は『うしおととら』監督の西村聡さんが、キャラクターデザインを担当した森さんの絵を見せたいと自ら行っています。編集には、西村聡さん以外にもプロデューサーの菊川幸夫さんの名前も並んでおり、アニメーターではなく演出・製作側の監督やプロデューサーが自主的に作った同人誌という珍しいものになっています。アニメーターがコミックマーケット等で頒布する同人誌の多くがグレーゾーンの存在である事を考えると、異例の事だといえます。

     大手少年マンガ雑誌のアニメ化作品の資料を同人誌で見られるのも、珍しいことだと思います。こうして、1冊のまとまった本として見られるとは思いませんでした。コミケ会場のサークルでも、監督ご本人が手ずから頒布されていて、驚いたものです。その後、原作者の藤田和日郎さんのTwitterでは、西村監督が同人誌を持参して藤田先生の仕事場をたずねた様子なども呟かれていて、本当に珍しい事例だなと思いました。  逆に考えてみると、原作者サイドの理解が深ければ、特例中の特例とはいえこうして同人誌として形に残せるものなんですね。もちろん、その点に関しては、同人誌巻末に、あくまで西村監督、菊川プロデューサーの個人的に頒布した同人誌であるという注釈がありました。

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     掲載されている森さんの修正原画は、3種類あるOPのレイアウト修正、原画修正です。OP修正集という内容も珍しい原画集ですね。
     最近のアニメ作品は1クールの短期シリーズが多い中で、『うしおととら』のTVシリーズは原作の長大なストーリーを分割してはいるものの、3クール全39話という長期的な話数で制作されました。森さんは総作画監督として本編にも参加されていますが、より森さんの絵の純度が高いOPでの作画監督修正が、掲載される資料として選ばれたのだと思います。
     『うしおととら』のアニメのビジュアルを見た時に驚いたのが、その原作の再現度の高さです。キャラクターデザインをされているのが若手の女性アニメーターということも驚きでした。原作は20年以上前に連載の始まった作品なので、今のアニメの流行とは間逆ともいえるタイプの絵柄です。アニメ化の話題を耳にした時は、今風にあっさりした絵になるのかと思いましたが、実際の作品は原作の絵柄を忠実に再現した絵、そして線でした。
     同人誌を見てみると、その熱のこもった太い線、描きこまれて真っ黒になった原画は、実に迫力があります。原画集が数多く出はじめてから、色々な絵を見てきましたが、こういうタイプの絵はあまり見たことがありませんでした。近年のアニメの絵柄としては、なかなか見る機会のない絵だと思います。『うしおととら』原作の藤田和日郎さん本人の絵も、ガシガシとペンで描きこんだ絵の印象が強いですが、それに勝るとも劣らない描きこみです。
     レイアウト時の修正は特に線が奔っていて、こんなに線だけで真っ黒になっている絵を原画集で見たのは初めてかも、と思いました。

     掲載されている原画を、西村監督、OPの絵コンテを描いた江口勉さんが解説しているのですが、冷静な西村監督と楽しげな江口さんの語り口の対比も読んでいて面白いです。  以前、西村監督の絵コンテ解説講座を受講したことがあるのですが、その際も終始、聞いている相手に伝わりやすい言葉を探しながら話している姿が印象的で、その印象が同人誌の解説からも伝わってきます。
     個人的に、西村監督は今のアニメの画面演出的な技術を色々と発明した演出家だと考えているので、こうして西村監督の考えを読んだり、聞いたりする機会が他にも沢山あるといいなと思います。
     余談に、なりますが西村監督が様々な演出を生み出したのが『はじめの一歩』のアニメシリーズです。ここで生み出されたアクションシーンを効果的に演出するアイデアが、今のアニメのアクション演出の原点の一つとなっています。例えば、汗をスライドで動かすスローモーション的な映像や、今では当たり前に近い表現となっていますが、打撃が当たった後に衝撃波のエフェクトが突き抜ける作画などです。
     原画集はアニメーター主導の分野という印象が強いですが、今回のように演出家主導で作られた物があると、演出家の思想を読むことができる内容となって、原画集ながら作画だけでなく演出に興味のある人にとっても興味深い読み物になるのだなと思いました。

     森さんは、スタジオライブに所属されているアニメーターです。同人誌に掲載されている絵を見ていると、そこはかとなくスタジオライブ創始者の芦田豊雄さんの絵の面影があります。特に、主人公のうしおの顔には、強い影響を感じます。
     うしおの顔は、原作の藤田和日郎さんの特殊なデフォルメが強く、特に鼻の描き方が独特なんですが、アニメで描かれたうしおの顔は、立体と漫画的嘘のどちらともいえない絶妙なバランスで両立していて、線の状態で見るとまた印象が違いますね。
     うしおがうつむいている所から、振り返るカットの原画を見ていると、角度が変わりながら鼻の描き方が一枚一枚リアルな人間の鼻の形だったり、ディフォルメの効いた台形のような形だったり、バラバラな描き方で描かれていて、こういう嘘が映像として見ると、一つの動きの中で成立してしまうのがアニメの絵としての醍醐味ですね。
     100ページの同人誌ですが、シンプルに森さんの迫力のある絵を見せたいという意思が徹底されていて、良い原画集でした。表紙の絵を見ると、できればフルカラーで見たかったなあという気持ちが湧きますね。
     森さんが描く絵は、今のアニメの中では特殊なものになりつつありますが、これからアニメ業界の中で、どんなお仕事をされていくのか、原画集を見ていると、楽しみになってきます。

    (『森智子修正原画集 うしおととら 西村聡・編』/WESTMUM/1500円)


    お蔵出し原稿

    2009年ごろにWEBアニメージュで連載していた『24GIRLS』の第1回です。初回に、「月イチ連載で2年は続けたいので24GIRLSである」と書いてますが、この連載は全12回で終わったのでした。確かサイトがリニューアルしてコラム企画がなくなったはずです。

    24GIRLS アクビ娘の場合

     前回までの「実は・スゴイ・このアニメ」は、そろそろネタ切れになってきたので終了としました。裏の基本コンセプトが、『ユンカース・カム・ヒア』よりも(いろんな意味で)知られてなさそうな作品を取り上げる、というものだったんで、取り上げる作品を選ぶのがどんどん苦しくなってきた結果です。いつの間にか、DVD化されていない作品をメインに取り上げるようになったのも、自分で自分の首を絞める流れだったなぁと改めて思ったりして。
     で、今回からは企画を一新して『24GIRLS』となります。こちらはタイトルの通り、女性キャラを題材にアレコレ書いていこうという企画。「24」とついてるのは月イチ連載で、とりあえず2年は続けたいなぁと思ったから。もし途中でアレになったら『伝説巨神イデオン』とか『新機動戦記ガンダムX』とか『宇宙戦士バルディオス』とか、そんな大人の事情があったと思ってほしい。
     まあ、前置きはこれぐらいにして。

     
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