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アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第86号(2016/3/25号/月2回発行)
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アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第86号(2016/3/25号/月2回発行)

2016-03-26 08:01

     AnimeJapanは27日(日)の正午過ぎから、アニメ!アニメ!のブースにて、ライターの前田久さんと一緒に配信に出演します。タイトルは「ドキッ!男だらけの2015年度アニメニュース総ざらえ!」です。僕と前田さんで、2015年の気になるアニメの話題をピックアップする感じです。
    (僕たちの前のブロックが、アニメ業界女子トークみたいな内容なんで、こんなタイトルにしました)。当日見かけた方はよろしくお願いします。

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     素敵なキャラと過ごす特別な日……
     人気キャラが華麗に描かれた
     キャラクターケーキ絶賛販売中!
     キャラクターケーキ専門店 あにしゅが
     http://animesugar.jp/
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    1.最近のお仕事紹介
    2.Q&A
    3.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
    4.お蔵出し原稿



    最近のお仕事紹介

    1.朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」(東京)
     4月~6月は以下の通り。
      4/16:特別講義「シナリオができるまで」ゲスト講師:大河内一楼
         ワークショップ形式で行います。筆記用具をご持参ください。
      5/21:『ジョバンニの島』
      6/18:『心が叫びたがってるんだ。』
      https://www.asahiculture.jp/shinjuku/course/d83d4be1-7b88-a896-fe82-56a05863ebdb

    2.NHK青山文化センター「アニメを読む」
     5月21日(土)13:30~「ロボットアニメの歴史」。『鉄腕アトム』『鉄人28号』から『新世紀エヴァンゲリヲン』まで、ロボットアニメは日本のアニメ史の中でも独特の地位を占めてきたサブジャンルです。このサブジャンルがいかに成立し、変化してきたかを、ビジネスとクリエイティブの両面から追っていきます。
     https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1088222.html

    3.SBS学苑パルシェ校「アニメを読む」(静岡)
     5月29日(日)10:30~「女子向けアニメの歴史~魔法使いサリーからプリキュアまで~」
     TVアニメ史上初という女の子向けアニメ『魔法使いサリー』からおよそ半世紀。女児・女性向けのアニメはどのような歴史をたどってきたのか。『セーラームーン』や『うたプリ』といったタイトルまで含め、視聴者の嗜好や年齢の多様化を追いかけます。
     http://www.sbsgakuen.com/gak0130.asp?gakuno=2&kikanno=174048

    4.栄・中日文化センター「アニメを読む」(名古屋)
     『るろうに剣心』『進撃の巨人』『ちはやふる』などなど、現在、アニメ・マンガを原作とした実写作品が数多く作られています。2次元のアニメ・マンガを3次元化する時に、なにが起こるのか。『ハレンチ学園』『ルパン三世』といった過去の作品から、分水嶺となった『ピンポン』まで多彩な実写化作品を振り返りつつ、「実写化」がキャラクターに及ぼす影響について考えます。
     http://www.chunichi-culture.com/programs/program_166148.html


    Q&A

     「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。文面にハンドル(名前)も入れてください。
    あるいは、アニメの門チャンネルの有料会員は、アニメの門チャンネルページの掲示板サービスが使えますので、そこに質問をしていただいてもよいです。メルマガの下にあるコメント欄でも結構ですよー。


    連載「理想のアニメ原画集を求めて」

    文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)

    第14回『アニメ風来坊2013年冬』~『同2015年冬』

    「アニメ風来坊」は、アニメーターの藤井慎吾さんが2013年の冬から頒布しはじめた同人誌で、現在までに5冊出ている。
    2013年冬:約50p、2014年夏:約80p、2014年冬:約60p、2015年夏:約90p、2015年冬:約80pとそれぞれページ数はまちまちだが、どれを買っても内容は満足度が高いと思う。

    収録作品は、最初の2013年冬が『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's』、『スタードライバー THE MOVIE』。
    その後の同人誌は、藤井さんがプリキュアシリーズを中心に活躍することになっていったので、収録作品も2014年夏が『ハピネスチャージプリキュア!』、2014年冬が『ハピネスチャージプリキュア!人形の国のバレリーナ』、2015年の夏冬では『Go!プリンセスプリキュア』が中心となっている。
    個人原画集でここまで定期的にまとまった量の原画が掲載された同人誌が出ることは、かなり稀だと思う。また、そこに載っているのが、プリキュアという一年を通して放送される作品なだけに、藤井慎吾さんという一人のアニメーターの仕事を原画集という形を通して、リアルタイムに感じられる貴重な機会となっている。

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    この原画集がいつまで続くものなのかは分からないけれど、夏と冬という季節の区切りで、こんな仕事をされていたんだなあと見返せる、そのこと自体が楽しくもあります。そんな時事的な楽しみも、商業的な原画集にはない、同人誌ならではの楽しみの一つです。
    原画集としても、掲載されている原画には注目すべきところが多いです。藤井さんの作業がデジタル作画に移行しているので、日本ではまだまだ珍しいデジタル作画の原画集でもありますし、破片やビームなどのエフェクトにページを割いて掲載しているところも嬉しいところです。

    そして、藤井さんの作画の大きな特徴が「カメラワーク」。藤井さんの描く作画は、カメラの動き自体にも個性が強く有ります。そのカメラワーク自体を見ているだけでも楽しいです。
    ところで、手描きアニメの中でカメラの動きというものは、どのように描かれているのでしょうか?
    実写の撮影ではカメラの首を振ったり、レールを敷いたり、クレーンで吊ったり、カメラ自体を空間の中で物理的に動かして撮影しています。画面が横にPANするとなれば、カメラの首を横に振って撮影することになります。

    しかし、手描きアニメの場合はそうではありません。アニメでカメラを横にPANした映像を作る場合、カメラが動いた分だけ余分な背景の絵が必要となる。つまり、カメラが動く分、通常より大きな絵を描いてそれを撮影することでカメラが動いたように見せているわけですね。単純に考えるなら、横にPANする時、画面の2倍の距離を移動するとなれば、2倍の大きさの絵が必要となります。カメラの動きによって倍々で絵が大きくなる。もちろん大きくなればなるほど制作作業として大変になっていくわけですが、原画集としては変則的な形だったり、大きすぎたりするためにそうしたカメラワークの付いた画面のレイアウトは、なかなか掲載されない傾向にあります。

    しかし、カメラワークにこだわる藤井さんの原画集だけあって、掲載される画像としては小さくなってしまってはいますが、この一連の原画集ではカメラに動きのあるレイアウトも数多く掲載されています。レイアウトには、カメラの動きを指示する目盛りが描かれているのが確認できますし、原画集としては珍しくタイムシートを大きく掲載するなどして、「撮影指示」の項目と照らしあわせて見ることができるようになっています。

    アニメを見ていて、画面の中心で動くキャラクター等の物の動きを意識することはもちろん多いと思います。しかし、それを映すカメラの動きまで意識することは少ないと思います。
    原画集という形になることで、こうした素材を見ることができるようになり、手描きアニメ独特の映像の作り方を知ることで、制作の大変さや、映像としての新たな面白さを見つけることができるようになるのではないでしょうか。

    (『アニメ風来坊2015年冬』 /アニメ風来坊/¥2000)


    お蔵出し原稿

    新潮社の個性的な季刊文芸誌(?)『考える人』の家族特集のために書いた原稿です。2014年秋の掲載です。こういうお題をもらうと、大きな流れについていろいろ考えたり調べたりできるので、とてもよいですね。

    「日本のアニメは家族をどう描いてきたか」

    アニメに登場する最も有名な家族は、おそらく『サザエさん』に登場する「磯野家(とフグ田家)」だろう。
     『サザエさん』の放送開始は1969年10月5日。以来、45年にわたって磯野家は激動の日本社会とともに併走してきた。長谷川町子の原作は1974年以降発表されていないから、高度成長の終わりからバブル経済を経て平成の世に至る約40年をともに過ごしてきた隣人はアニメの『サザエさん』ということができる。
     放送45周年を記念した「サザエさん展」の公式サイトでは「21世紀に入って十余年が過ぎた現在でも、『サザエさん』は温かみのある良き日本の家族を描いたアニメ作品として、今なお高い人気を集めています。」と紹介している。
     とはいえ、設定だけ見れば『サザエさん』一家はかなり特殊な一家だ。特に「長女一家が実家に同居する」という設定は、原作が発表された時期を考えても決して「平均的な日本の家族」のものではない。ただ、サザエが嫁ではなく娘であったことは、作品の方向性に大きな影響を及ぼしたと考えられる。
     サザエが嫁でなく娘のポジションにいるため「、家制度に抑圧される嫁」という現実の日本の家族が孕んできた問題と『サザエさん』一家はまったく無関係となった。波平が体現する家父長制の厳しさはもっぱら、いたずらっ子である長男カツオに向けられている。この結果、両親と同居しつつも、サザエとマスオの夫婦はニューファミリー的な色合いを帯びることになった。これが作品の間口を広げ、長期放送によって生じた視聴者との家族観の距離を調整したのだ。伝統的価値観とニューファミリーの巧みな折衷こそが『サザエさん』を屈託なく「良き日本の家族」と呼べる存在にしているのだ。
     もちろんアニメにおいて『サザエさん』だけが家族を描いたアニメではない。むしろそのほかの作品のほうが積極的に時代を反映した家族の姿を描いてきたといえる。

     
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