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アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第89号(2016/5/13号/月2回発行)
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アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第89号(2016/5/13号/月2回発行)

2016-05-14 22:43

     5月から6月にかけては講座、イベントが続くことになりました。  6月は4日にサンキュータツオさんと『昭和元禄落語心中』のお話をするイベント、12日は「超人ロック生誕50周年/プレ・イヤーSPECIAL NIGHT 2016」に登壇します。  ご興味ある方は是非、よろしくお願いします。

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    1.最近のお仕事紹介
    2.アニメレビュー勉強会トップ原稿
    3.Q&A
    4.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
    5.前回のアニメの門チャンネル


    最近のお仕事紹介

    1.朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」(東京)
     5/21:『ジョバンニの島』
     6/18:『心が叫びたがってるんだ。』

    2.NHK青山文化センター「アニメを読む」
     5月21日(土)13:30~「ロボットアニメの歴史」。『鉄腕アトム』『鉄人28号』から『新世紀エヴァンゲリヲン』まで、ロボットアニメは日本のアニメ史の中でも独特の地位を占めてきたサブジャンルです。このサブジャンルがいかに成立し、変化してきたかを、ビジネスとクリエイティブの両面から追っていきます。
     https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1088222.html

    3.SBS学苑パルシェ校「アニメを読む」(静岡)
     5月29日(日)10:30~「女子向けアニメの歴史~魔法使いサリーからプリキュアまで~」
     TVアニメ史上初という女の子向けアニメ『魔法使いサリー』からおよそ半世紀。女児・女性向けのアニメはどのような歴史をたどってきたのか。『セーラームーン』や『うたプリ』といったタイトルまで含め、視聴者の嗜好や年齢の多様化を追いかけます。
     http://www.sbsgakuen.com/gak0130.asp?gakuno=2&kikanno=174048

    4.最近のレギュラー仕事
     ブログに最近のレギュラー仕事をまとめました。
     http://blog.livedoor.jp/personap21/archives/65804547.html

    5.「昭和元禄落語心中 サンキュータツオ×藤津亮太トークイベント」
     6月4日18:00から東京・中野の古民家カフェ・モモガルテンにて。先着25名。  参加申込URL→http://kokucheese.com/event/index/398117/

    6.「超人ロック生誕50周年/プレ・イヤーSPECIAL NIGHT 2016」
     来年生誕50周年を迎える『超人ロック』のイベントです。ライター小林治さんと一緒に進行を務めます。ゲストはアニメーター・監督の黄瀬和哉さんほかです。
     http://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/44623


    アニメレビュー勉強会トップ原稿

     4月30日にオタクの学校で久々に開いた『アニメレビュー勉強会』で互いの投票の結果、最多得票を得た原稿です。アニメレビューマイスターですね。
     お題は『ラブライブ!The School Idol Movie』でした。執筆者は磯部正義さん。おめでとうございます!

    期間限定上演のミュージカル (想定媒体:映画雑誌)

     とつぜん降ってわいた廃校の危機から母校・音ノ木坂学院を救うため「スクールアイドル」としての活動を開始した穂乃果たちμ'sの面々。奮闘のかいあって学校は存続することになり、3年生たちの卒業にともなうμ'sの終わりも近づきつつあった。そんななか、第3回「ラブライブ!」が巨大会場・アキバドームでの開催を検討しているという報が舞い込んでくる……。
     『ラブライブ! The School Idol Movie』(2015年6月13日公開 監督:京極尚彦 制作:サンライズ)は、TVシリーズ『ラブライブ! School idol project』(1期:2013年1月~3月、2期:2014年4月~6月)の後日譚を描いた劇場作品である。大会場での開催を実現させるために協力してほしいとの打診を受けたμ'sメンバーは、「スクールアイドル」キャンペーンのライヴを行うため一路海外へ。言葉も通じない不案内な地に降り立った彼女たちだったが、初めての海外体験はじつにテンポよく推移していく。とりわけその足どりを軽快なものにしているのが、歌唱シーンへの自在な転換が生み出すリズムだろう。
     雨を理由に外出を諦めようとした一同のなかから凛が飛び出すことで始まる"Hello,星を数えて"。みんなで白米を食べに出た帰りに独りはぐれてしまった穂乃果が途方にくれていると流れてくる、女性シンガー(CV.高山みなみ)の歌う"As Time Goes By"。キャンペーンのライヴ映像のおかげで、帰国したらすっかり顔バレしていて身動きがとれなくなった最中、にこたち3年生トリオがノリノリで歌い出す"?←HEARTBEAT"……。大小とりまぜたハプニングやトラブルがそのまま音楽の始まる契機になることで、出来事の継ぎ目がなめらかに溶接されていて、それがこの映画の、びっくりするほどトントン拍子に進んでいくリズム感の、ひとつの源になっている。

     そんなこの映画の軽快なリズムにいったんぐっとブレーキをかける出来事が、「μ'sを続けてほしい」という声の高まりだ。(学院を)「終わらせない」ために活動を開始した彼女たちは、今度は(μ'sを)「終わらせる」ことへの決意で心をひとつにする。そこに共通しているのは、彼女たちがこだわり通したものが「学校/スクール」だったという点だ。「学校」という場所にこだわるからこそ"廃校"させまいと奮闘し、「スクール」アイドルとしての自分たちにこだわるからこそ、彼女たちはμ'sをここで、きっぱりと終わらせようとする。
     「そこにとどまったままではいられない、期間限定の人生の一時期」としての「学校/スクール」。こう書くとまるで「青春」の定義そのもののような、この「期間限定」の時間への情熱によって、この劇場版は、はちきれそうなほどに《青春映画》である。そしてその情熱は、活動終了を伝えた穂乃果たちへのエールを胸に、街を埋め尽くさんばかりに集ったスクールアイドルたちとともに、μ'sが"SUNNY DAY SONG"を歌いはじめるシーンで爆発する。
     「アイドルものだから」というジャンルの約束ごととして歌っているんじゃない、そういうイベントだから段取りとして歌っているのでもない、感極まって思わず歌わずにおれないような気持ちのたかぶりのままに、μ'sも、スクールアイドルたちも、一緒になって踊る家族や街の人たちも歌っている……そう信じることのできる理由が物語にしっかり根をおろしているという点で、この映画はこれ以上なくストレートな《ミュージカル映画》である。

     むせかえるほど《青春映画》で、多幸感に酔いそうなくらい《ミュージカル映画》。「期間限定」にこだわり通したことで、『ラブライブ! The School Idol Movie』はそんな映画になった。


    Q&A

     「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。文面にハンドル(名前)も入れてください。
    あるいは、アニメの門チャンネルの有料会員は、アニメの門チャンネルページの掲示板サービスが使えますので、そこに質問をしていただいてもよいです。メルマガの下にあるコメント欄でも結構ですよー。
     今回は『アニメの門チャンネル』に寄せられた2つの質問を掲載します。

    Q:実写映画やドラマでは、特定ブランドの製品名などが、そのままの状態で登場しますが、アニメでは多くの場合、ブランドロゴや店名を変更して描いています。
     実写映画では、製品をそのまま登場させる方がコストも安く、提供する方も楽で宣伝にもなること、アニメでは全てを描かなければいけないので手間がかかり、製品名を明記しない方が安全パイだというのもわかります。
    しかし、ネガティブな扱いをするのでもないかぎり、ロゴをいくらかでも登場させたほうが、アニメ製作にとっても収入に繋げやすいような気がします。
     しかしそういう例が大変少ないのは、どうしてなのでしょう。過去に、何かあったのでしょうか。
     私がある製品ブランドのロゴを納品して、それが日本の映画に登場した際は、ロゴが画面に表示されたものの、エンドロールのクレジットに「協力企業」や「小道具提供」として名前が載りませんでした。なぜそうなったのかを納品先にそれとなく訊いてみたら、微妙に言葉を濁されました。(匿名希望)

    A:実写では、「街の中の風景」「世の中の風景」として実在のブランドロゴが映り込む場合はあると思います。これは「風景」なので、映ってしまうのも自然なこととです。匿名希望さんが納品したロゴはおそらくそういう風景として使われたのかな、と思いました。あまりに大きく映る場合は許諾はとっていると思います。
     アニメの場合、わざわざ描くので、「わざわざブランドを登場させた意味」が強く出てしまいます。うので、気にしてほしくないところは架空ブランドになっていると思います。「ただの風景」を描くために許諾をとる手間をかけるわけにはいかないというのもあると思います。
     あとロゴをちょっと使ったぐらいで、宣伝料的なものをとれるわけではないので、収入にはなりません。

    Q:今回、キングレコードの組織改変に伴うスターチャイルドレコードの終了が今後のアニメ・特撮業界に対しどのよう影響を与えるか一消費者として疑問を感じ質問させていただきました。組織改変の発表がキングレコードがリリースしているPプロ作品のBDBOXの仕様・価格・発売スケジュールの変更の発表と時期が重なったこと、またそれについてのメーカー側の説明が不十分なことからアニメ・特撮ファンとしては不安を強く感じざる終えません(今後リリースされる商品の価格の上昇、仕様や特典の低下は起こりえるのでしょうか?)(会員:サトウさん)

    A:取材したわけではないので詳細はわかりませんが、組織変更そのものが仕様などに影響を与えることはないのではないか、と思います。
     配信の時はちょっと事情を把握してませんでしたが、これは『スペクトルマン』の値上げのことを聞いていたのですね。映画秘宝のtwitterアカウントがこれについてポストしていましたが、それによるとあれは「DVDデータのアップコン」の予定で作業をしたら、終わってからフィルムが発見されたため「全話フィルムからのHDリマスター」(当然こちらのほうがきれいだし、後世によいクオリティのものが残る)に切り替えたためとのことのようです。説明がなかったので心配になる人もいたとは思いますが、とりあえず組織変更とは関係ないお話のようです。


    連載「理想のアニメ原画集を求めて」

    文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)

    第17回『ジョバンニの島 アートワークス -設定・美術・原画-』

    『ジョバンニの島 アートワークス -設定・美術・原画-』は、主に『ジョバンニの島』上映館の売店で売られていた本でした。設定資料集をグッズとして売店で売る劇場作品はたまに見かけることがあったけれども、原画集のようなものが並んでいるのを見たのは初めてだったので、かなり珍しく感じた本でした。 Production I.G制作の劇場作品としては、当時は初めての原画集的な本でもあり、貴重な1冊でした。史実を元にした重い内容の作品ということもあり、とても原画集が出るようなタイプの作品ではないので、その点でも驚いたものです。 掲載内容は全160ページ程の三分の一が資料集、残り三分の二が原画となっていて、原画に比重を置いた誌面になっていることが分かると思います。

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    設定パートにはキャラクター原案、キャラクター設定、小物設定、車両設定、美術設定を掲載。海島千本さんが描かれた小物設定は、設定というよりも1枚1枚が単独のイラストに見えるフルカラーの絵になっていて、キャラクターの絵柄も本編とは全く違う海島さんの絵柄で描かかれています。
    自画像らしきトビウオペンギン等が描いてあったり、余白に色を塗ったり模様を描いたり、アニメの設定としてはかなり珍しいものとなっています。
    荒川眞嗣さんが描かれた車両設定は白黒で、線のタッチや黒い塗りが印象的な劇画タッチで描かれており、海島さんのファンシーな絵と荒川さんの劇画タッチの絵が対照的で、見ていて面白い設定となっています。
    美術パートには、サンティアゴ・モンティエルさん独特の画風で描かれた美術が、数多く掲載されています。サンティアゴさんの美術は、キャラクターの絵とはまた違った、この作品のもう一つの顔と言っても良いもので、歪んだフォルムや、コントラストの強い色調に実線や筆のかすれを質感として入れた独特のものとなっています。これはゴッホのタッチや日本の川瀬巴水、吉田博等の木版画家の影響を受けているそうです。美術1枚を単体で見ても、見応えのあるものとなっており、この本の見どころの一つだと思います。

     
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