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Vol.255 結城浩/再発見の発想法/本を読むとき/図版作成/
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Vol.255 結城浩/再発見の発想法/本を読むとき/図版作成/

2017-02-14 07:00
    Vol.255 結城浩/再発見の発想法/本を読むとき/図版作成/

    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年2月14日 Vol.255

    はじめに

    おはようございます。結城浩です。

    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

    今週は後半に家庭の用事が入ってしまったため、 一週間の仕事を前半で終わらせるというスケジュールになりました。

    「一週間の仕事を前半で終わらせられるなら、 いつもそうすればいいのでは?」 と、自分のどこかで声が響きます。

    でも、そういうものじゃないんですよ。

    ね?

     * * *

    情景を想像する話。

    ある方が「物語を読むときに情景を思い浮かべられない」 という話題をツイートしていました。

    結城の場合、物語を読むときの情景は「自分で作る」感があります。 作者が情景描写で書いている情報を参考にしつつ、 過去に自分が経験した情景を記憶から借りて使います。

    それはちょうど、演劇で大道具を準備するのに似ています。 自分の経験と記憶を使って舞台を作るのですね。その結果、 シャーロックホームズが自分の居間でパイプをくわえていることも。

    それはまた、夢を描くことにも似ています。 ほら、夢の世界って現実にはありえない構造になっていますよね。 都会の交差点を右に曲がったら自分の実家の裏通りになってたり。 自宅の階段をのぼったら、学校の屋上に出たり。 ちょうどあれと似ていることが読書中にも起きるのです。

    私がこのような「読書中の情景は自分の経験を組み立てて作る」 ことを意識したのは、小学校低学年のころだったように思います。 たくさんの物語を読んでいたころですね。

    と、いまこれを書いていて気付いたのですが、 このような情景の組み立てというのは実は「雑な読書」 なんじゃないでしょうか。 ほんとうは、作者が描いている場面をひとつひとつ味わって、 その文章に従って想像するべきなのでは?

    当時の私は、細かいニュアンスはすっとばして、 対応物・類似物をてっとりばやく思い浮かべていたようです。 「階段」と書かれていたら知っている階段を、 「居間」と書かれていたら知っている居間を、 さっと想像して先に読み進める。 当時の私はものすごくたくさん本を読んだのですが、 それは、こういう「雑な読書」だったからできたのかもしれませんね。

    あなたは、物語を読むとき、どんなふうに情景を想像しますか?

     * * *

    後悔の話。

    先日、こんなアンケートを実施しました。 Twitterはアンケートが気軽にできて楽しいですね。

     ◆あなたが「後悔」するのはどちらが多い?(スクリーンショット)

    2017-02-06_koukai.png

    選択肢は、

     ・あっ、やってしまった!
     ・ああ、やればよかった!

    の二つですが、 801票のうち両者はほぼ半々となりました。 なかなか緊迫した状況ですね。 こんなに二つが拮抗するとは思っていませんでした。

    ちなみに、結城自身はどちらのパターン「後悔」も嫌いです。 とてもとても嫌い。ほんとに嫌いです。 ですから、できるだけ早く気持ちを切り換えようとします。

    「あっ、やってしまった!」に対しては、

     ・キャンセルはできるか?
     ・対策はあるか?

    を大急ぎで考えます。対策を考えているあいだは、 後悔の感情に襲われずに済むからです。

    そしてどうしても駄目ならば、

     ・時間は戻せない!
     ・現状で最善の次ステップは何か?

    のように発想を切り換えます。 「時間は戻せない!」は真実なので、心を納得させやすく、 次ステップを考えることで、 後悔の感情が湧き上がるのを防ぐのです。

    「ああ、やればよかった!」に対しても似たように振る舞います。

     ・そもそも「やる」という選択肢を過去の自分は持っていたか?
     ・そのとき「やらない」を最善手として選んだか?

    そのように考えます。 それによって後悔という感情が大きく育たないように、 小さいうちにつぶしておこうと試みているようですね。

    そもそも、後悔の感情は、 受け入れたくない現実にぶつかるときに生じます。 ですから、受け入れてしまうと後悔の感情は育ちません。

    私、後悔しないように、必死ですね!(苦笑)

     * * *

    スーパーの話。

    あるスーパーでは、お客様クーポン券(紙)をレジでときどき配ります。 決まった日にそのクーポン券をレジに出すと、割引してくれるのです。 当然のことですが、その日以外では、あるいは紙を忘れたら、 割引にはなりません。まあ、よくある話です。

    結城は毎日のようにスーパーに行きますが、 そのクーポン券をよく忘れます。まあ、これもよくある話(かな)。 そして、私はそのことがおもしろくありません。

    結城はそのスーパーで買い物をするとき、クレジットカードを使います。 支払いに使うのは、そのスーパーの関連会社と提携しているカード。 そのカードだと、ポイントが付くという特典があります。 それはぜんぜん悪い話じゃありません。 疑問なのは「だとしたら、なぜクーポン券を紙で配る必要があるのか」 という点。

    買い物ごとに自動的にポイントがたまるということは、 スーパーは私を顧客として把握している。 だったら、そこから一歩進めば、 クーポン券の割引も自動的に行えそうだ。 なぜわざわざクーポン券を紙で配って、 その紙を特定の日に提示する必要があるのか。 顧客にわざわざ手間を掛けさせるのはなぜ。 そんなふうに不思議に思いました。

    いや、まあ、細かい話といえば細かい話ですし、 そんなのスーパーの勝手でしょうと言われればその通りです。 でも、その理由がわからないのでモヤモヤしています。

    自分の財布がクーポン券でごしゃごしゃするのが好きな人って、 そんなにいませんよね。いちいちクーポン券を持ち歩きたくはない。 でもその一方で、

     「クーポン券があれば割引になります」

    とレジで言われて、

     「あちゃー捨てちゃったよ」

    みたいなのは何だか損した気分になる。うーん……

    結果的に、紙のクーポン券が配られると、 「ああ、またこれ、捨てたり忘れたりして、損した気分になるんだろうな」 という印象を受けてしまう。 せっかくの割引サービスなのに、 損した気分の予感があるってサービスとしてどうなんだろう、 なーんて思うのです。

    オンラインで顧客の購買状況は把握しているんはずですから、 それに応じて自動的に割引して、 レジで「今回はXXX円分オトクになりました!」 と宣言してくれるだけでいいのになあ…… 毎日のことだから、気になるなあ……

    と、ここまで考えてきたところで、結城はふと思いました。

     果たして私の感覚はほんとうに一般的なんだろうか?

    そこで、さっそくTwitterでアンケート取ってみました。 質問はこうです。

     --------
     スーパーなどの日常系買い物に関して、
     ポイントやクーポンの割引適用を、
     お店側にはどうしてほしい?
     A) 適用できる割引は尋ねることなく毎回適用してほしい。
     レジでいちいち聞くな。
     B) 適用するかどうかを顧客の私に選ばせてほしい。
     レジで勝手に決めないで。
     https://twitter.com/hyuki/status/830328902643904512
     --------

    さて、結果はどうだったでしょう。

     ◆アンケート結果(スクリーンショット)

    2017-02-11_market.png

    このように350票でA)とB)はほぼ同じ結果となりました。 結城は当然A)が大多数になると思ったのですが、 そんなことはまったくありませんでした。

    ちなみに今回のアンケートでは「クーポン券が紙かどうか」 についての要素は排除し、割引適用の選択に限定して尋ねました。 今回のようなアンケートでは、経験的に、状況をできるだけ限定し、 二つの選択肢から選んでもらったほうがわかりやすい結果になるようです (アンケート形式でクイズをするときには、選択肢を四つフルに使います)。

    ともあれ、自分の感覚だけで考えちゃいけませんね。 考え方は人ごとにさまざま。

    クーポン券の話を結城がツイートしたときの自分の心、 それを振り返ると、私は、個人的な気持ちを吐露しているふりをしつつも、

     「そうだよね、結城さん、私もそう思うよ」

    という声を期待していたようです。

    アンケートを取ってみて、 自分の感覚を一般化して考えるのは危険だなと改めて思いました。

     * * *

    イミテーション・ゲームの話。

    アマゾンプライムビデオに映画『イミテーション・ゲーム』が来ていました。 現在は無料で観れるようです(こういうとき、可能を表す「ら抜き言葉」は便利)。

    『イミテーション・ゲーム』は、 ベネディクト・カンバーバッチ扮するアラン・チューリングが、 ドイツの暗号機「エニグマ」の暗号を解読する計算機を作る物語です。

    ドイツ軍が通信に使っている暗号を解読すれば同胞の命が助かり、 戦争終結を早めることができるのだが…というストーリーですが、 これは、現実の歴史をもとにしています。

    数学と暗号とコンピュータが絡み合う物語ということで、 結城がこれまで書いてきたほとんどすべての本に関わりますね。

     ◆『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(アマゾンビデオ)
     https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B015SAFOBG/hyam-22/

     * * *

    亜人(デミ)ちゃんの話。

    毎週日曜日の夜、 アマゾンプライムビデオで「亜人(デミ)ちゃんは語りたい」を観ています。

    先週の第6話「小鳥遊姉妹は争えない」もおもしろかった!

    毎回、登場人物ひとりひとりを注目するのですが、 今回は小鳥遊姉妹にスポットが当たったようです。

    双子の姉妹だけれど、人間と亜人の姉妹で、 性格も振る舞いもまったく違う。 しょっちゅうケンカばかりしているけれど、 お互いに深いところでは思いやりにあふれている。 そんな姉妹のあり方が描かれていました。

    毎週「亜人ちゃんと語りたい」のことを書いていますが、 結城がこの物語を気に入っているひとつの理由は、 「悪人やいじわるな人がほとんど出てこない」 からです。基調として素直な流れで物語は進みます。 けれど、決して単調にならず、また予定調和になるわけでもない。 その微妙なところが気に入っているのです。

    登場人物に毎回スポットが当たると書きましたが、 第5話でスポットが当たったのは雪女の雪ちゃんでした。 すると!今週の第6話オープニングでは、 雪ちゃんの登場シーンが変わったのです。 物語の進行に合わせてオープニングが変化するって、 楽しいですね。

    来週も楽しみです!

     ◆『亜人ちゃんは語りたい』(アマゾンビデオ)
     https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01N4KENHZ/hyam-22/

     * * *

    それでは、今回の結城メルマガを始めましょう。

    どうぞ、ごゆっくりお読みください!

    目次

    • はじめに
    • 再発見の発想法 - アイコン
    • 本を読むときのあれこれ
    • 本の図版はどのようにして作りますか - Q&A
    • おわりに
     
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