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『想いのすべて 0611』 ~ 館山で観た『WE ARE X』、そして幸せに過ごした時間について(3)
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『想いのすべて 0611』 ~ 館山で観た『WE ARE X』、そして幸せに過ごした時間について(3)

2017-06-11 23:40


    闘うことの意味・・・。

    闘いの向こうにあるもの・・・。

    闘いの果てに待っていた、とてつもなく大きなもの・・・。

    26才だった僕が、大切な旅をしている間に知ったこと。

    それは『自分と闘うことの素晴らしさ』だった。

    そしてそれは『絶対に嘘をつかない』ことで、結実するのだった。



    小山さんの車は、ほどなく海の見える道路に入った。

    館山の海は、とても広かった。

    海岸線がずっと続くからだろう。

    駐車場に車を止めて外へ出ると、5月の柔らかい風と目の前に広がる海、そしてどこまでも青い空が僕達を包んだ。



    「ああ、海だー。 気持いいーー!!」

    海が大好きな僕は、あっという間に子どもになっていた。

    砂浜を歩き、空を仰ぎ、波打ち際に向かう。

    透明になった心に、小さな頃遊んだ海からL.Aの海まで、あらゆる海の幸せな記憶が浮かんでいく。

    「桟橋、行ってみましょうか」

    小山さんの声で我に返ると、「ああ、そうしましょう、ぜひ!」

    と答え、僕達は映画『WE ARE X』でYOSHIKIが歩いていた桟橋へ向かった。

    晴れた5月の穏やかな空気に包まれた桟橋は、映画のシーンとは雰囲気が若干違い、とてものどかで、先端には何人か釣り人が見えた。

    映画の中のYOSHIKIを想い出しながら、記念に写真を撮ってもらう。

    海を背にして桟橋に立つと、館山の町が見渡せる。

    大好きだった僕のおじいちゃんの町、小浜とよく似た、のどかな町並みだった。

    (豊かな自然に囲まれた、こんなに優しい町でYOSHIKIとTOSHIは育ったんだ・・・)

    心の中に『優しさ』が溢れた。

    そしてあの頃の僕が、いつもメンバーを『優しさ』で包んでいたことを想い出し、同時にYOSHIKIを始めメンバー全員が、ひたすら毎日『自分との闘い』を続けていたことを想い出した。




    僕は5人の意思を尊重していた。

    その人間性と限りない可能性を深く信じていた。

    だから、5人がそれまで築いてきたバンドとしての人間関係を、そのまま丸ごと理解し、包むようにしていた。

    僕はステージに立つわけではなかったからだ。

    そして、5人が立つステージは・・・。

    凄まじい闘いの連続だった。

    毎回、その闘いに満ちたステージが終わると、そのステージの先に見える『大きなX』と『輝く未来』をイメージして、僕はメンバーと話し合った。

    未来を共にイメージしながら『大丈夫、大丈夫。どんどん大きくなるから。必ず勝つから・・・』

    そんな言葉を繰り返しながら、僕はメンバーを優しさで包んでいた。

    僕が優しさで包んでいる限り、メンバーは安心して自分と闘うことができる・・・このことだけは、誰に何を言われようが、ゆるぎのない自信があった。

    僕が、そんな自分のやり方が間違っていない、と思う瞬間は沢山あった。

    メンバー同士が前進するために正しいけんかをして、それが明らかによい結果を生んだとき・・・
    それぞれが己の演奏の至らなさを悔やみ練習をひたすら続け、明らかに腕をあげたとき・・・
    僕が提案した細かいアレンジの変更や音の出し方をメンバーが取り入れ、整理された演奏で素晴らしいライブになったとき・・・

    でも、一番嬉しかったのは、メンバーの笑顔を見るときだった。

    HIDE、PATA、TAIJI、TOSHI、YOSHIKI・・・。

    それぞれが、心から喜んでいるときの笑顔。

    それを見るのが嬉しかった。

    笑顔を見ながら、5人のメンバーを、本当に好きなんだ、と僕は感じていた。

    僕がメンバーを好きだったのは、5人が嘘をつかないからだった。

    僕が彼らを安心して『優しさ』で包んでいたのは、そんな5人だったからだ・・・。




    穏やかな気候に恵まれた、のどかな館山に『優しさ』を感じた僕は、30年前、館山を後にした時のYOSHIKIとTOSHIの気持に想いを馳せた。

    2人は『闘う』ために館山を出たのだろう。

    東京という場所へ『闘い』を挑んでいったのだろう。

    そして、東京の先に広がる日本全国、さらにその向こうに見える世界という舞台へ羽ばたくために、2人が選んだ道。

    それは、その『闘い』を成功させるために、何よりまず『自分と闘うこと』だったのだろう。

    その道は正しかった。

    ひたすら『自分と闘うこと』を選んだ結果、2人は共に闘う仲間、PATA、TAIJI、HIDEと出会うことができた。

    その仲間もまた、自分と闘う男達だったから、そのバンドは『自らと闘う』バンドになった。

    自らと闘うことで、人として美しいオーラを放ち始めたバンドはどんどんファンを増やし続け、途中でその美しさに気づいた僕とも出会い、ひたすら前進するための闘いを続けた。

    そう。YOSHIKIとTOSHIの2人は『闘う』ために『優しい館山』を出る必要があったのだ。





    闘うことの意味・・・。

     確かに、初めは周りが敵だらけだったから、5人は夢をかなえるため、周りのあらゆるものと闘っていたかも知れない。

    でも、闘いを支えていたものは、実は5人の『自分との闘い』そのものだった。

    闘いの向こうにあるもの・・・。

     それは夢であり、輝く未来だった。5人が真剣に『自分との闘い』を続けた結果、闘い始めてわずか4年のうちに、闘いは一度、終わりを告げていた。

    闘いの果てに待っていた、とてつもなく大きなもの・・・。

     5人が壮絶な『自分との闘い』に没頭しているうちに、もう闘う必要がなくなった日本では、奇蹟が起きていた。

     闘いは愛に変わっていた。

     それはファンがメンバーから受けとった愛を、愛で返し続けた結果だった。



     


    YOSHIKIとTOSHIが育った優しい町、館山の明るく柔らかい空気の中で、僕は4つの言葉を心に浮かべながらタイムスリップをしていた。

    『優しさ』『闘い』『自分との闘い』そして『愛』・・・

    それらがみな、『絶対に嘘をつかない』ことで力を持つこと。

    そして今もなお、いや、むしろ今こそ、それらを大きな力として、世界という舞台で頑張っているYOSHIKIを想い、YOSHIKI自身がXになったことの意味を考えた。

    そうして僕は、映画の中でYOSHIKIが歩いていた桟橋をもう一度見つめた。

    (つづく)

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