• このエントリーをはてなブックマークに追加
諦めるなよ!省エネを! 省エネ界の松岡修造。 エクセルギーをしゃぶり尽くせ(2)
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

諦めるなよ!省エネを! 省エネ界の松岡修造。 エクセルギーをしゃぶり尽くせ(2)

2013-01-07 07:00
  • 1

エクセルギーをしゃぶり尽くせシリーズ(2)です。前回は、無駄にエネルギーが使われている部分をあぶり出すエクセルギーという考え方を紹介しました。

 今回は、エクセルギーの黒魔術っぷりを紹介します。黒魔術故に実証まではなかなか受け入れられませんでした。言われてみれば、エクセルギー (exergy) ってエネルギー (energy) の一時違いなのに、なんだか禍々しい響きです。

 まずは、エクセルギーをしゃぶり尽くすことで、加熱が必要な工程で加熱がいらなくなってしまう、その魔術の原理から紹介します。その効果は絶大で、去年行われた実証試験では、必要なエネルギーが従来の6分の1以下にもなりました。

 材料を熱してなにか反応させ化合物を作る工程を想定します。

1. 原始的な方法

 古典的にはまず暖めて、反応させ、冷却します。

b4624925210c2053483e69b233e7e07308643ffc

 このとき加熱に使われたエネルギーはすべて冷却水に棄てられます。そのため莫大な燃料費がかかってしまいます。

2. 従来の省エネ法

 そこで、熱交換器を使って材料を予熱することで省エネすることができます。

79bc8b44500a0bef8239ad0899d33b260288a76e


 反応炉から出てきた熱い生成物を使って材料を暖めることで熱を回収しています。ただし、できるのは予熱までで、反応に必要な温度までは上げられないので、なお少し加熱する必要があります。その分まだ燃料費がかかります。しかし、この加熱は長い間必要なエネルギーとして捉えられていました。

3. 新しい省エネ方法

 しかし新しい方法は次のように行われます。自己熱再生と呼ばれる手法です。

05cbd4a088ac2a1cef910702301329f360667b16


 反応炉から出てきた生成物の圧力を圧縮機であげてやります。すると温度がさらに上がるので、熱交換で材料を充分に加熱することができます。従って、加熱が不要になるのです。

 しかも圧縮機を動かす動力の一部を、熱交換器から出てきた高い圧力の生成物でタービンを回して得られるエネルギーでまかなうことでさらに省エネができます。この新しい省エネ方法をつかうことで、従来の省エネ方法に対しエネルギー消費がさらに1/5〜1/20になるのです。

バイオエタノール生成効率をあげる核心技術

 この自己熱再生法は、2012年2月バイオエタノールの蒸留プロセスで初めて実証されました。

2012年2月6日「自己熱再生理論でバイオエタノールの省エネ生産実証」 サイエンスポータル

 この手法は蒸留プロセスだけでなくバイオエタノール生成過程の全てに応用可能とのことです。従来のプロセスでは加熱に燃料、つまり化石燃料を使います。バイオエタノールという燃料を作るのに化石燃料を使っていてはなにをやっているのかよく分かりませんから、燃料が不要になるのは大きな意義を持つ成果といえます。もちろん意義だけでなくコスト削減にもなり、1Lを40円で作るという目標に向かって大きく前進する成果です。

 これでさらにバイオエタノールが普及すれば化石燃料が節約されますから、この成果は今後雪だるま式に省エネを進める原動力になります。様々なプロセスに応用できると言われている自己熱再生技術を、まずバイオエタノールプラントから実証するのというのは、なんと戦略的なことでしょう。今後の加速度的な普及が期待できそうです。

しかし、「常識」が実証を拒んでいた

 このように新しい省エネの時代を開いた自己熱再生技術、ただ、言われてみれば「どうして今まで気付かなかった?」みたいなコロンブスの卵的あっけなさすらあります。

 しかし、実証試験を行った新日鉄エンジニアリング(現新日鉄住金エンジニアリング)がNHKのインタビューにこう答えています。

「最初、半信半疑なところも自分にもあったし、会社もそう考えていたところもありますので、理論の世界から実証の世界へ持って行けたので、非常に良かったというふうに考えています。」

 私も5年程前つまり実証前にこの理論を講演で聴いたとき、何分の1なんて虫のいい話本当にできるなら、なぜいままでできなかったのだろう??と思いました。

 それくらい省エネはやりつくされていると考えられていました。だからみなそんなにうまく行く訳がないと思い込んでしまうのです。あまりにも効果がありすぎて、かえってひいてしまうのです。

 しかし、それでも諦めずにエクセルギーという目を背けられない数値を見せ続け、技術者をけしかけ続けたのが、エクセルギーの第一人者 東京大学 生産技術研究所 堤敦司教授 だったのです。 

 諦めるなよ!!諦めるなお前!! 

 どうしてやめるんだ!!そこで!!省エネを!! 

 もう少し頑張ってみろよ!!駄目駄目駄目駄目諦めたら!! 

 失われてるエクセルギー分のこと思えよ!!

 使ってくれって言ってるエクセルギーのこと思ってみろって!!! 

 ずっとやってみろ!!必ずエクセルギー使いきれる!!だからこそ!! 

 Never Give Up!!!

 エネルギー界の松岡修造、堤教授。彼がいなければ、社会が古い常識から抜け出すのはずっと先だったでしょう。

 前回参考資料で紹介した堤教授へのインタビュー

従来の蒸気タービン方式ではエネルギーが無駄に消費される 

は2009年の記事でした。登録しないと全文読めないかもしれませんが、記者による締めの言葉はつぎのようなものです。

―熱を加え続けるというのではなく、一度加えたらそれを使い続けていくというやり方ですね。 まさに工場の未来形かもしれませんね。

「工場の未来形」という言葉あたりに、じわーっと「まだまだ先」感が出ています。新日鉄エンジニアリングも半信半疑だったり、ほとんどの人がそんな風に感じてたのです。

 それでも堤教授は「今できること」として実証までやりとげました。今後この技術は一気に広まることでしょう。効果は絶大です。まさにブレークスルーの瞬間です。

 熱い! 熱いぞ! 省エネ!

 そんなわけで、次回シリーズ最終回は省エネから省エクについて紹介します。

・併せてどうぞ
夏を雪で冷やそう!雪冷熱】 ローテクゆえに実用化されたクールな技術。雪だけに。

コメント コメントを書く

すげぇ・・・

No.1 137ヶ月前
コメントを書く
コメントをするにはログインして下さい。