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オンリー☆ローリー!〈2〉 Vol.9
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オンリー☆ローリー!〈2〉 Vol.9

2014-03-03 18:00
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     ……それより、自分たちの用事はこれでおおむね済んだはずだ。
     さっさと帰りたい、と言いたいところだが、できれば崇城とふたりきりで話をしたい。ダメもとで持ちかけてみようか。そう思っていると。
    「余計なリソースを割いている余裕はないと言ったけど、難題でも抱えているのかい?」
     また何かたくらんでる。メルティの楽しそうな表情を見て、零次はすぐさま理解してしまった。
    「我々が難題を抱えぬときはない」
    「だろうね。だからさ、私たちが力になってあげるよ」
    「先生……私たちって、僕も入ってるんですか?」
    「当たり前だよ。私と君は運命をともにするパートナーなんだから。それともバディのほうがいいかい?」
    「どうでもいいです!」
    「この上まだ引っかき回そうっていうの? もう帰りなさいよ!」
    「まあまあ嬢ちゃん、話だけでも聞こうじゃねえか。メルティがIMPOに協力するなんて、かつて聞いたことがないからな」
     五十年以上の付き合いという一本杉の言葉には重みがあった。崇城は不愉快な表情を隠そうともしないが口をつぐむ。
    「私の目的は、この零次に魔法の世界をあますところなく見せて楽しませること。シンプルにいうと、バトルだよ。で、そろそろ次の舞台を用意してあげたいんだけど、そうそう都合のいい物件は見つからないわけだ」
    「物件って……」
    「でも君らなら、日頃から犯罪者と戦っている。情報網も桁違いだ。私に依頼してみない? きっといい仕事をしてみせるよ」
     以前、メルティは世界を放浪する中でIMPOの真似事をしたことがあると言っていた。それこそただの気まぐれで。
     しかしこれは……仕事として請け負う、正式に協力関係を結ぼうということだ。自分から危険に飛び込もうということだ。あまりにも性急な、そして自分の意向など尊重してくれないであろう提案に、零次は声も出ない。
    「じょ、冗談じゃないわ! 誰があなたたちの力なんか借りるもんですか!」
    「君には聞いちゃいないよ。神楽、どうだい?」
     断る――と、即座に答えが返ってくると思っていた。
     だが雪街は目をつむり、まるでその案を吟味するかのように押し黙り、やがて口にした。
    「大五郎殿はどう思います」
    「んん? そりゃあ、願ったり叶ったりじゃねえか。IMPO全部を見渡したって、メルティに勝てるやつなんざ、そう思いつかねえ。なんの交換条件もなく協力してくれるって? 受けない理由がねえぜ」
    「ええ、異論の余地はない」
     再び雪街は思案する。零次はたまらなく嫌な予感がした。
    「メルティ、他意はないのだな?」
    「うん」
    「そうか」
    「神楽さん、まさか……!」
     嫌な予感は確信に変わる。もはやアクセルは踏み込まれた。
    「IMPO日本支部はメルティ・メイシャ・メンデルと契約を結ぶ。本部とも話をつけなければならぬから、手続きに少々時間をもらうが」
    「りょーかい! えへへ、やったあ」
     喜色満面で零次に抱きつくメルティ。同時に崇城が声を荒らげた。
    「どうしてですか、神楽さん! 私は納得できません!」
    「IMPOに求められるのはただひとつ、犯罪を制圧できる強さ。必要ならば外部の者とも連携する。よくあることだ」
    「別に味方とか同志とか、そういう意識を持てとは言わねえよ。わかりやすく言やあ、持ちつ持たれつだ」
     崇城はすぐに言葉に詰まる。メルティの決定を零次が覆すことができないように、彼女もまた上司の決定を覆すことなどできるはずもない……。
    「で、でも……深見くんは絶対に嫌でしょう? いくらエターナルガードの守りがあるからって、危ない戦場に駆り出されるのは」
    「……僕を心配してくれているの?」
    「そ、そうよ! エターナルガードが本当に完璧な守りである保証はないでしょ。あなたにもしものことがあったら、寝覚めが悪いし」
     本心ではない。この話をなかったことにしたいがために、そんな理屈をつけているにすぎないと零次は読み取った。自分はまだ、彼女とそこまでの仲になっていないのだから。
     だが、口だけだとしても嬉しかった。皮肉なことに、その彼女の言葉が零次に決意をさせた。
    「朱美。これは日本支部としての決定だ。それ以上口を挟むな」
    「……っ! わかり、ました」
     崇城はついに諦め、部下として上司の決定を受け入れた。
     それにしても雪街は、零次に何ひとつ意向を聞かなかった。主体はあくまでもメルティであり、付属品である零次の了解を得る必要などないのだろう。
     だから、ちょっとくらいは自分も主張したくなった。
    「雪街さん、お願いがあるんですけど」
    「なんだ」
     我ながら素っ頓狂な考え。しかし状況に流されるだけの自分ではいたくない。この恋を成就させるために。
    「僕と崇城さんでコンビを組ませてください」
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