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R&Bフリーク以外は置き去りにするR&B評 第12編 『Brian McKnight』
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R&Bフリーク以外は置き去りにするR&B評 第12編 『Brian McKnight』

2015-08-23 21:19

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    「Brian McKnight」(ブライアン・マックナイト)

    アメリカニューヨーク州バッファロー出身、5人兄弟の末っ子として音楽一家に育つ。兄のひとりであるクロード・マックナイトはTake 6のメンバーでもある。
    歌手・作曲家・音楽プロデューサーであり、ピアノ・ギター・ベース・ドラム・パーカッション・トロンボーン・トランペットなど楽器の演奏もする。


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    <TSUYOSHI評>

    まだグラミー賞を地上波で見ることができた頃。1989年に新人ながら、しかもアカペラグループでありながらグラミー賞の「ベスト・ソウル・ゴスペル」「ベスト・ジャズ・パフォーマンス」の2部門を獲得したTake 6。その年のグラミーでの彼ら6人のパフォーマンスを見た途端、そのあまりの歌の凄さに私はブラウン管に釘付けになった。会場の前列真ん中あたりにいたスティーヴィー・ワンダーは、彼らが一声歌い出したその途端に周りの誰よりも早く立ち上がり、あの独特な首を振る動きを、頭が飛んでいってしまうんじゃないかくらいに超ノリノリで行いながら、大いに手拍子をして盛り上がっていた。ゴスペル、Jazz、R&Bなどをミックスしたアカペラのスタイル。言ってしまえば、今までにはなかったジャンルを彼らは作り出してしまった。世界中のブラックミュージック好きが放って置くわけがなかった。それほど彼らのシーンへの登場は衝撃的なものだった。

    その後、このジャンル観をある意味ひとりでやってのける人物が現れる。ブライアン・マックナイトである。とはいえ基本はコンテンポラリーなR&Bであるし、歌詞の内容はゴスペルとは違うし、端からピアノを基調とした伴奏ありきではある。でもジャンル観は似てる。何故か。Take 6の一番高いパートを歌っているのはクロード・マックナイトという方。ブライアンのお兄さんである。影響受けてないわけがないであろう。何よりTake 6を真似しようとしても、声は似ているにせよ、それ相応の音楽の素養や才能がなければそう簡単に寄せれるものでもない。Jazz寄りのコード進行やコードヴォイシングに沿ったコーラスワークとか。後々Take 6は伴奏ありきのスタジオ録音作品が増えたが、逆にそのサウンドの雰囲気はブライアンとさほど変わりない。卵が先か鶏が先か。ブライアン・マックナイト、やはり凄いのである。

    ブライアン・マックナイトはピアノ弾きとしても超絶で饒舌だが、歌うたいの私からすると、やはりシンガーとしての印象が強くなる。歌自体が単純に素晴らしいのだが、何よりフェイクが凄いという印象を持っている人も多いのではないか。オーバーグラウンドのシーンにおいてあの手のフェイクをする人は、それまでスティーヴィー・ワンダーくらいしかいなかったように思う。ゴスペルのスタイルだけではなく、Jazzのアドリブやスキャットなどのスケール(音階)を取り入れたあの感じ。リズム感やタイム感のセンスは言わずもがな。最近ではレイラ・ハサウェイがその線では一番素晴らしい気がする。かのミレニアム騒ぎの頃、六本木にあったライヴハウスで歌っていた黒人シンガーがこんな感じのフェイクを使い歌い倒していた場面に遭遇したことがある。どうすればそんな事ができるのかと質問したところ、「メソッドがあるんだよ、ブラザー」と言われた。お前もやればいいと言われたが、どうすればそのメソッドを学ぶことができるのかを教えてもらえないまま今に至っている。

    かつての私もそうだったが、こと若手R&Bシンガーは高いキーで歌うという行為にある種の憧れを抱いているものだったりする。その点において、ブライアン・マックナイトは我々のアイドル的存在の一人であった。ブライアンがデビューの年にヴァネッサ・ウィリアムスと歌った『Love Is』(http://youtu.be/Pz9gpxsgaj0)は、どことなくジェヴェッタ・スティールの超名曲『Calling You』ありきの、とはいえ黒さ薄めな良質ポップスの感があるが、ともあれブライアンの存在感がほどよく出たナイスなテイクが印象的。声、高い高い。あまりに綺麗な高い声だったので、初めて聴いた時は女性が歌っていると思ったほど。若い頃の彼の艶のあるハイトーンは、改めて聴き直しても本当に美しい。


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    <西崎信太郎 評>

    いつの日だったか、ビルボードライブさんにお邪魔したブライアン・マックナイトの日本公演。定期的にパフォーマンスをしているブライアンだけに、同ヴェニューの人気公演の1つだと思いますが、僕が見た時の公演は全編ピアノの弾き語りという構成。バンドもコーラスも無しの、ブライアンのソロ・パフォーマンス。公演開始直後は拍子抜けしたっていうのがその時の本音だったかも知れないけど、味付けの濃い料理が必ずしも美味いという訳ではないように、とは言え決して薄味にはなってはいない上品な仕立てっぷりが今でも記憶に残っています。ある意味、貴重なライブだったのかな、と。

    ブライアン・マックナイトの存在を初めて知ったのが、"Hold Me"という曲。'97年作『Anytime』に収録されたシングル曲で、アルバム・バージョンがブラック・ファンにはお馴染みの2パック"I Get Around"使いという話題性があり、リリース当時は話題になった曲。私事ですが、正に'97年頃にブラック・ミュージックの世界にのめり込み、ヴァイナルに夢中になり始めた時期。ただ、正規盤やらプロモ盤やらの差異が認識出来ない時期だったので、2パック使いのバージョンがプロモ盤にしか収録されておらず、正規盤を買ってしまい落胆したホロ苦い思い出が。

    ブライアンと言えば、一言で"安定感"でしょうか。何かの既述で「毎日1曲のペースで曲作りをする」的な事を述べていた事が印象的でしたが、天性のシンガー/ソングライター。悪く言ってしまえば"地味"なのかもしれないけど、最新曲"Uh Oh Feeling"を一聴して感じる安堵感。普遍的な"ブライアン・マックナイト"というスタイルそのものが真骨頂ですね。普遍的という意味合いでは、それこそブライアンの音色や曲そのものは、時代を選ばずに繰り返し聴き継がれていきやすいのかなと思うのですが、近年ブライアンのようなタイプの新人ってあまりいないですよね。そう考えると希代なのかな。

    話が飛んじゃいますが、デビュー・アルバムに"One Last Cry"なんていう名バラードが収録されてしまっているものだから、必然的に周囲からの注目度や期待値が高まっていたであろう中、後に"Back At One"というブライアン自身のNo.1ヒットと言えるバラードを生み出せるのだから、ジョー、R・ケリー、キース・スウェットらと並んで今でもしっかりと名前がシーンに残っている。ニュー・アルバムも2016年に出るとの事、また楽しみが増えますね。

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