• 人口知能の進展と化学分野における可能性

    2018-04-08 22:00


     第121回触媒討論会の特別講演にて、松尾豊氏による特別講演を聴きました。教授およびシンポジウム運営に携わった方々には感謝の思いです。
     じつは本業の工学研究と同等か、もしくはそれ以上に人工知能に興味を持っていました。そんな折にこのような機会に巡り合わせたということは、役得を超えて、運命的なものを感じた時間でした。



     人工知能は日進月歩の世界で、書籍『人工知能は人間を超えるか』の中ではまだまだ時間がかかると予想されていた囲碁AIですが、あっという間に人間より強くなり、さらに先日には囲碁AI「DeepZenGO」は引退しました。”引退”というのは人に対して用いる言葉であって、コンピュータプログラムの場合には退役や停止という表現の方がふさわしいと思いますが、それほどAIが擬人化しつつある証拠ともいえます。

    「DeepZenGO」引退へ “最強の囲碁AI”目指すプロジェクト、ドワンゴ
    http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1803/16/news108.html

     AI(Artificial Intelligence)について、自分は専門家でもありませんし、仮にそうであってもAIの全貌を説明するのは難しいようです。ただフィクションの世界では、高度コンピュータやAIが昔から登場していて、その描かれ方も様々なので、ゆえに多数のイメージは存在するかと思います。鉄腕アトム、ドラえもん、R2-D2、HAL9000、スカイネット、サマンサ、サミィ、エヴァ、Siri、Alexa、誰でも(どれでも)いいですが、問題なのはどのように向き合ってゆくか、ということです。



     講演では、画像認識のディープラーニングによってコンピュータは「眼」を獲得し、それによって様々な物事を適切に処理できるようになった、と説明されていました。少し疑問だったのは、眼の獲得による情報処理精度が向上した原因が、単に新たな変数が増えたからなのか、さらにその先の「身体性」を獲得したからなのか、という部分です。誤解を恐れずにいうと、身体性とは人間が様々な情報を環境と照らし合わせる機能のことです。これを有していると、頭で考えていたことを実際に行動に移しやすくなったり、現実の出来事を適切に認識できるようになるらしいです。
     どちらにせよ、研究・技術開発者の立場からすると、様々な情報を1人ないしはチームで処理しているところを、AIが介入してきて、問題が解決したりしなかったりするようです。問題が解決しないのは困りますし、あらゆる問題が解決しすぎると人間の仕事がなくなってしまいます。なので、もっとも困難な問題だけAIで解決するか、問題を人間とAIが融合して解決する、ということが都合として求められているようです。例えば、光を利用して水素を作る光触媒では、その材料選びに苦労しているようです。ゆえに光触媒の基本設計はAIが担当し、その実際の作り方、装置構造、運用方法などは人間が考える、という住み分けをした方がいいのかもしれません。また、ある新素材を人工知能で作ろうにもデータを入れることができません。なので、十分なデータを揃えるために人間が試験する、あるいはAIが論文や特許で学習するためにその情報提供をする、ということを人間は成すべきかもしれません。つまり上流か下流か、大枠か細部かという差こそあれど、今後も人間には似たような責務があるようです。




     挙げるのが遅くなりましたが、自分が持つAIのイメージは小説『BEATLESS』に登場する超高度AIです。その作中の研究員のセリフが印象に残っています。紋切りの表現ですが、SFの世界が現実となり、そして自身が乗り越えなければならない時期は、そう遠くはないのかもしれません。

    「かつて人類にとって、探求とは、世界と向き合って未踏の謎に挑む、すべてを賭けるに足る冒険だった。だが今や、超高度AIの背中を突き放されないよう必死で追いかける、終わらせてもらえないマラソンにすぎない」
    (中略)
    「だが、その程度の理由でやめられるなら、諦めてしまえばいい。それでも成功を求めるから、あらゆることを機械のほうがうまくやるようになってなお、人間が生きる意味がある」
    (長谷敏司・小説『BEATLESS』より引用)




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  • アラサー

    2018-04-06 22:00

     プロフィールを"20代"から"アラサー"(around thirty)に変えてみました。
     自身は声が低い方なので、ゲーム音声チャットなどで遊んでいると"おっさん"呼ばわりされることが多々あります。そしてその返しとして"アラサー"を用いると、ギャップが少ないでしょうし、言い訳がましさが会話を広げるきっかけにもなるなど、都合がよかったからです。根底の「アラサーはイコールでおっさんなのか?」ということに関しては感覚的なものなので検討はしません。

     やがて疑問に思ったことがあります。それは自らが「アラサーらしい言葉を扱えていないのではないか?」ということです。年齢を経てアラサーになることは比較的簡単ですが、それに言葉が伴ってゆくことはなかなか難しいです。新たに言葉を獲得する状況が少なくなってゆくためだと思います。
     そもそも、"アラサーらしい言葉"とはどういうものなのか、わかりません。「アラサー 言葉遣い」の検索で上位ヒットしたページによると、以下のようでした。

    (前略)
    心惹かれる、女性の言葉遣い

    では逆に、男性が心惹かれる女性の言葉遣いには、どんなものがあるのでしょうか?

    敬語の使い方が上手
    尊敬語、謙譲語、丁寧語。これらの敬語を使いこなすのは、それこそ年配の方でも至難の業。それを苦も無くやってのける女性には、育ちの良さしか感じられません。目上の人の受けもよく、そこから縁談が舞い込む、なんてことはあまりないかも知れませんが、可能性はゼロではありません。

    女性を感じさせる言葉
    どんな場面でも、女性らしさを感じさせる言葉遣いは、男性たちの「萌え」ポイント。柔らかさや品を感じさせる言葉遣いを常に心がけていれば、モテ女性になること間違いなしです。

    守りたいと思わせる言葉
    「あのね」「うん」「だって」など、プライベートな場面でここぞというときに使えば、男性はメロメロ。これらの言葉には「自分が守ってあげなくちゃ」という男性の保護欲を刺激する効果があるのです。

    素直な言葉
    「こめんなさい」「ありがとう」など、素直な気持ちを伝える言葉に男性は弱いのです。

    (「やっぱり必須!最低限の言葉遣い」より引用)
    http://www.yoimarriage.com/arasa/wording/

     男性の言葉遣いに関する言及はほとんどないですが、どうやら敬語・語彙力・適時表現がカギになるようです。
     1つ見解を述べておきたいのは、各々の世代言葉を直す必要はないと考えています。先のように、言葉は往々にして10~20代で獲得し、それらを30代以降も使用すると、他の世代との間でギャップが生じてしまいます。しかしながら、地域のアイデンティティである方言が尊重されているように、ある意味で年齢のアイデンティティを形成している世代言葉は、大切にしてゆくべきです。一方、ただそればかりを用いるのではなくて、社会的な立場や状況に合わせた言葉を補強材のように足し合わせてゆくことがもっとも望ましいと思います。

     そして「どうしたらアラサーらしい言葉を扱えるのか」について、総括的には「言葉を意識する」というのに帰着します。そこから、敬語の勉強をする、本を読む、表現を行う、という個々のトレーニングに移ってゆくと思います。またアラサー以降はいわゆる"諦め"や"失う"という場面が多くなるようですが、言葉というのは特殊な存在です。所有量が無限で、維持費は不要で、正しく扱うことで新しい関係や知識やロジックを得られます。もう義務教育の期間はずいぶん前に終わり、テストがない代わりに誰も叱咤激励や添削作業をしてくれない険しい道のりとなっています。それでも地道に言葉を重ねようと決めたこの頃でした。




  • 冬に見た旧作映画

    2018-04-04 22:00

     マイナーかもしれませんけど、お気に入りなのでぜひとも見てほしいです。


    帰ってきたヒトラー

     ナチス・ドイツを率いて世界を震撼(しんかん)させた独裁者アドルフ・ヒトラー(オリヴァー・マスッチ)が、現代によみがえる。非常識なものまね芸人かコスプレ男だと人々に勘違いされる中、クビになった局への復帰をもくろむテレビマンにスカウトされてテレビに出演する。何かに取りつかれたような気迫に満ちた演説を繰り出す彼を、視聴者はヒトラー芸人としてもてはやす。戦争を体験した一人の老女が本物のヒトラーだと気付くが……。
    (シネマトゥデイ・あらすじより引用)
    https://www.cinematoday.jp/movie/T0020912

     基本的にはコメディーだけど、ヒトラーが国民と対話したり討論番組に出たりして人の心を掴んでゆき、ブレない姿勢で皆を引っ張ってゆくのは恐ろしくも感動さえ覚える場面がある。作中にはいわゆる「総統閣下シリーズ」をパロディするシーンもあり、もうすでにナチ系の映画を見ていても楽しめる工夫もされている。本筋から少し逸れるかもしれないが、昨今流行の「ヴァーチャルYouTuber」が、ヒトラーではなくてもそれに似た歴史上の人物を演じきることができたら、この映画と同じ物語が起きるかもしれない。


    ダンケルク

     1940年、連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍によってドーバー海峡に面したフランス北端の港町ダンケルクに追い詰められる。ドイツ軍の猛攻にさらされる中、トミー(フィオン・ホワイトヘッド)ら若い兵士たちは生き延びようとさまざまな策を講じる。一方のイギリスでは民間船も動員した救出作戦が始動し、民間船の船長ミスター・ドーソン(マーク・ライランス)は息子らと一緒にダンケルクへ向かうことを決意。さらにイギリス空軍パイロットのファリア(トム・ハーディ)が、数的に不利ながらも出撃する。
    (シネマトゥデイ・あらすじより引用)
    https://www.cinematoday.jp/movie/T0021330

     言葉少なげに陸・海・空それぞれのシーンが順繰りに描かれて、普通なら退屈しそうなところなのに圧倒的な映像美で心を奪われる。世界大戦の物語で、確かに人が死んだり船が沈んだりする極限状況下なのだが、カメラは一歩引いていて、緊張感というよりも臨場感を描いている希有な内容。監督のクリストファー・ノーランは過去に『インセプション』や『インター・ステラー』といったやや複雑なSFを撮っているが、『ダンケルク』はとてもシンプルで、もっと同系統の映画も見てみたい。


    冷たい熱帯魚

     熱帯魚店を営んでいる社本(吹越満)と妻の関係はすでに冷え切っており、家庭は不協和音を奏でていた。ある日、彼は人当たりが良く面倒見のいい同業者の村田と知り合い、やがて親しく付き合うようになる。だが、実は村田こそが周りの人間の命を奪う連続殺人犯だと社本が気付いたときはすでに遅く、取り返しのつかない状況に陥っていた。
    (シネマトゥデイ・あらすじより引用)
    https://www.cinematoday.jp/movie/T0009264

     グロテスクさに加えて、選択を突き付けるストーリーのせいで映画5本分くらい見たような疲労感を覚えた。主人公は冴えない中年男性だけど、殺人鬼の言いなりに手伝いをしてゆくうちに彼自身が主犯になってゆく、そんな悪意の伝搬が本当に恐ろしい。やや似たようなテーマで『コラテラル』を思い出したけど、『冷たい熱帯魚』にはほとんど救いがなくて対になっているともいえる。映画について調べると埼玉愛犬家連続殺人事件というベースが出てきて、さらに驚く。


    エクス・マキナ

     検索エンジン世界最大手のブルーブック社に勤めるプログラマーのケイレブ(ドーナル・グリーソン)は、ほとんど人前に姿を見せない社長のネイサン(オスカー・アイザック)が所有する山荘に招かれる。人里離れた山間の別荘を訪ねると、女性型ロボットのエヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)が姿を現す。そこでケイレブは、エヴァに搭載された世界初の実用レベルとなる人工知能の実験に手を貸すことになるが……。
    (シネマトゥデイ・あらすじより引用)
    https://www.cinematoday.jp/movie/T0017371

     人間は2人しか登場せず、内容も「ロボットのチューリングテストを行う」という一点集中型の"小さな物語"。アクションがまったくなく、人工知能のとても専門的な部分を扱うことから、これまでに映画や書籍などでSFの知識を得ていないとストーリーに入りづらいのが難点。エヴァは最初、言動や行動、そしてカメラの映し方からしても人間らしくないような部分が残っているが、ストーリーが進むにつれてそれは洗練され、最後には1人の女性としか言いようのない姿になってゆく。人間とロボットの境界はどこにあるのか、またどういったタイミングでロボットは人間になるのかをよく考えさせられた。