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<菊地成孔の日記 2022年6月30日 午前4時記す>
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<菊地成孔の日記 2022年6月30日 午前4時記す>

2022-07-01 10:00
  • 10

 「コレで最後のタバコかあ、死刑囚みたいだな」とか思いながらベランダでキャメルを吸っていたら、矢野沙織さんの事務所から久しぶりの新譜が届き、コメントを求められた。

 

 天才サックス少女上がりで、僕が査定する数少ない本物のビバッパー(ビバップは学究的に扱われやすい。矢野さんはビバップを快楽主義&血肉化の一点張りで愛し、実行しているので、要するにかなり本物だと思う)であり、まだまだフェミニズムが旧態然たる音楽界に於いて(僕は、単体SSWはともかく「バンドのヴォーカルだけが女性」「バンドのキーボードだけが女性」といった、「伝統的=歴史的」な構図は、20世紀の遺物としての側面が強い限りにおいて、フレッシュさがないと思う。もう随分探しているのだが、「バンドのドラムがおばあさん」というのは終生トライし続けるし、トーキングヘッズのファンとして、バンドのベースだけが女性、というのはイカしているなあ、と思っていたら、小西さんと知り合った。小西さんは最初、スタイルズに入っていただく予定だったが、ACCジャズ要員に着任させて大成功だった。まだ才能は開花しきっていないけれども)、「女性サックスプレイヤー」ということが些かの特別感がある世界の中で、ややもすると「アルバム単位で何をするか?」という交通整理が難しくなっていた矢野さんの最高傑作ではないかと思う。ドスが効いて、筋が通っている。気がつけば天才少女も35歳である。

 

<今風のバンドで、ファンク、ドラムンベース、ヒップホップ、アフロビーツを。ラッパーやシンガーも大量投入>というのは、文字で書けば凡庸だが、とにかく一音残らずパーカーフレーズなので、途中からおもわず笑ってしまった。もちろん、ヤラれた時の笑いである。「すげえな矢野さん。本当にバップしか吹かないのね笑」。ジャズをあまり知らないリスナーの方に。僕はモーダルプレイヤーでビバッパーではない(それこそ学究的に、ペン大でパーカー研究クラスを持っているが)。ジャズマニアの方に。「人工的なバップ&エレクトリックトラックwithストリングス」の傑作、清水靖晃さんの「北京の秋」のストリングス抜き、マジバップの側面があります(北京の秋のソロフレーズは予め書かれている公算が強く、そこがポストモダニストとしてすごいのだけれども)。

 
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ホン・サンス、「正しい日 間違えた日」とか「それから」が好きです。

No.1 21ヶ月前

菊池さんのサックスを、来年楽しみにしています。すぐだと思います。
身体のことは、意識的にコントロールできない自然なことがあるので、思いもよらないことが起きますよね。
以前、菊池さんが話していたように、還暦近くなってくるとあちこち弱ってくると。
菊池さんより三つ下の私もそれを実感しています。
昨年膝の靭帯を痛めました。元のように歩けなくなりそうでしが、一年後の今日はまたランニングを再開できています。
身体への負担を減らすために楽な走り方へ変えましたが、再び走れるようになって大満足です。
今日も、ただ走っているだけなのに、嬉しくて喜びの感情がじわって湧いてくるのです。
ではでは、おやすみなさい。

No.2 21ヶ月前

コメントお断り、有難うございます。喇叭のラッパー、ラップ現象界の風呂イディアんにしてラカン派、ラッピングとかドレッシングで、NOカフェ・オ・レ、@千疋屋京橋にて。

No.3 21ヶ月前

お痛が過ぎて、歯が抜けてインプラントしたことがあります。口内で凄い事が起きてるなぁって部分麻酔で朦朧としながら考えていました。今はすこぶる快適です。「リコリスピザ」どこかで鑑賞する時間作りたいと思ってます。「plan75」も「ベイビー・ブローカー」も必須かな。還暦で調子が整うというのも有りですね。メルロウのTwitterにちらりと菊地さんの事言及していたので、ああ繋がってるんだなぁと感心しております。快く引き受けてくれそう!

No.4 21ヶ月前
userPhoto 菊地成孔(著者)

>>1

「3人のアンヌ」「次の朝は、他人」は必ず見ましょう!笑

No.5 21ヶ月前

菊地さんの比ではないですが私も来週インプラントのための抜歯です。
これで上下4本がインプラントになります。69年で4本、多いのか少ないのか。
私はもちろんサックスを吹くわけではなくご飯をおいしく食べたいだけですが。

ラジオデイズでは無意識と精神分析の質問に大変丁重に答えていただきありがとうございました。
大いに勉強になり刺激を受けました。
菊地さんのアドバイスどおりマンガの入門書を探していたら片岡一竹という若い人が書いた本がありました。
表紙がマンガで著者本人が精神分析を受けていたというので購入しました。

菊地さんに訪れつつある変容にいちファンとして私もワクワクしています。
日本は猛暑らしいですがどうぞご自愛くださいませ。

No.6 21ヶ月前
userPhoto 菊地成孔(著者)

>>2

 いやあ本当にそうですよね。まあこれで、内科系、脳外科系、形成外科系、歯科系、耳鼻科系と一揃えやったんで、とにかくこの1年はメンテとリメイクの年にします。とまれ、サックスもタバコも強制終了、つうのは、ラジオもレーベルも強制終了よりも笑、はるかに過酷なので笑、なんかに火がついて、とんでもねえことになる予感もしますが笑

 人体治られて良かったですね。お互い身体に気をつけて、生きる喜びを、どうだや運動の中に見出しましょう!

No.7 21ヶ月前
userPhoto 菊地成孔(著者)

>>3

 皆さん、こうちゃんはペットロスで(ワンチャン)ダメージを受けています!応援のメッセージを送ってください!!

No.8 21ヶ月前
userPhoto 菊地成孔(著者)

>>4

<が過ぎて、歯が抜けてインプラントしたことがあります。

すんげーなソレ笑

<メルロウのTwitterにちらりと菊地さんの事言及していたので、ああ繋がってるんだなぁと感心しております。快く引き受けてくれそう!

あいつ本当に頼めばやってくれそうなんで笑、本当にやるかもしれないです。一回ぐらい笑。ソレ、めちゃくちゃ面白いですよねえ笑。

No.9 21ヶ月前
userPhoto 菊地成孔(著者)

>>6

 うっわ4本ですか!でもまあ、なんか、壮年期に入るとそのぐらいの方も多いみたいですね。

 一竹さんのは面白いですよ。羅漢もフロイドも、日本人の学者のサブテキストで有効なのいっぱいあるんですが、まずは、ある程度インスタントでも、もう、ムッチャクチャ簡単なやつを読んで、興味を上げて、どんどん負荷を増やして、次、次、と進んでゆき、理想的には原著(つっても和訳ですが、フランス語で読んだら、改めてスタートからやり直しなので笑)にたどり着く、というのが理想ですね。

No.10 21ヶ月前
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