劇場版アイドルマスター感想 輝きの向こう側には何があったか
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劇場版アイドルマスター感想 輝きの向こう側には何があったか

2014-01-28 04:14
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僕もアイマス劇場版を公開二日目の日曜日に見てきました。
あんまり事前情報は仕入れてなくて、何となくライブに向けて合宿するらしいとか、グリマスの子が出るらしいとか、その程度の噂を聞きかじったくらいの状態で見てきましたとも。

結論として、率直な感想を最初に申し上げますと、良かったです。
完璧ではなかった。
でもわざわざ事前にチケット予約して、お金払って劇場まで足を運んで見てよかったと心から思うし、BDなんかが発売されれば僕はきっと喜んで買うでしょう。
そんな風に思える映画でした。

ここから先は、具体的な内容について触れていくので、ネタバレを避けたい方はご注意ください。


今回の劇場版、僕は初めてアイドルの彼女たちを、そして天海春香を、全幅の信頼を寄せて見守ることができたように思います。
劇場版はTVシリーズが終わって彼女たちがアイドルとしてSランクとかAランクの地位を獲得した状況から始まっているわけで、プロデューサーとして彼女たちを導くフェーズはもう終わっているわけですよ。
映画の春香さんは、もう僕と背中を合わせて一緒に戦うレベルに到達しているわけです。
もちろんそれは春香さんだけじゃなくて、千早も美希も雪歩も真もみんなそうなわけですが、ともかくそれはまるでアケマスから今まで、8年とか9年ループし続けていた一年というプロデュース期間のその先を、夢の続きを見ているようで、頼もしく成長した「戦友」たちの姿を見る僕の想いは、ある種親が成長した子を見るのにも似た感慨があったのです。

今まではずっと、プロデューサーとして傍に寄り添い、時に背中を押し、時に手を引いて、導いていかなくてはならなかった彼女たちが、あのスクリーンのなかで何と頼もしいことか。
それを見れただけで、もう僕は幸せでした。
僕は映画を見ても殆ど泣いたりしない人間なんですが、もう最初から何でもないシーンでも胸がいっぱいで、嬉し泣きしそうでしたね。

劇中ではグリマスのアイドルが登場し、特に矢吹可奈が話の中心にいるわけですが、ぶっちゃけ僕はグリマスの知識が皆無なので、彼女たちの名前すらろくに知らない状況でした。
なので彼女たちの描かれ方がどうだったのかという点についてはよくわかりません。
一応序盤を見て大体それぞれの個性はわかりましたし、そういえばあのうどんが好きな子出てないな! とか途中で思いましたし、志保ちゃんに罵られたいなあ!! とか色々思索に耽りもしましたし、こうして世代交代していくのかもなあと思うとなんかまた嬉し泣きしそうで大変でしたし、全然知らない新キャラがいても抵抗感はなかったです。
ただ、彼女たちのプロデューサーではなく765プロの先輩アイドル達に導かれるその構図は、一つの物語としては美しくてもアイドルマスターとして考えた時にどうなんだろう……と思わなくもなかったです。
グリマスはそういうコンセプトなのかもしれないけど。

で、その可奈が劇場版の肝となるトラブルを起こすわけですね。
正直、最初は劇場版でやるにはありがちというか、パンチに欠けるトラブルだなあとちょっと思いました。
でも見ていくうちに、これでよかったんだ、と考えが変わりました。

自分が周囲の足を引っ張ってしまって、申し訳なくて、一人で努力して、それでも上手く行かなくて、出来ない自分が悔しくて、仲間や先輩に嫌われると思うと悲しくて、もう諦めようかと考えてしまう自分が情けなくて。
どうしようもない精神的重圧と、どうにもならないダメな自分に対する焦燥感。
ストレスで甘いものばかり食べちゃって、気がついたら衣装も入らないほど太ってしまって。
いつもは大声で思いっきり歌うんだと言う土手に、雨の中傘に隠れるようにしゃがみこんで、歌うんですよね、彼女が。

「輝いた ステージに立てば」

呟くような歌声と、ぽつんと映された彼女の背中。(実際は傘に隠れて見えないんですが)
あのシーンを見た時、僕は思いました。
この話が、ドラマチックに可奈が不治の病にかかったり、突然暴走トラックが現れて事故に遭い入院したりするのではなく、ただ単に可奈が弱くてダメな女の子であることを淡々と描くのは、そうでなければアイドルマスターが成立しないからなのだと。
不治の病や不幸な事故でアイドルを諦めるのなら、可奈はその理不尽を呪うだけで終わってしまう。
自分の人生がうまく行かないことを、世界のせいにして生きられるでしょう。
だって可奈は悪くないから。しかたないよね。って言えてしまう。
そうではなくて、可奈が悪いんですよ。可奈が弱いんです。
その自分の悪さや弱さを乗り越えながら、それでも「キラキラする」ために悪あがきをする少女達の物語こそがアイドルマスターなのであり、そんな不可抗力な悲劇の運命で楽にアイドル諦めさせるほどやさしくないのが、アイドルマスターなのです。
そして、彼女たちがやがてはトップアイドルに成り果せることを本人よりも先に信じてみせるのがプロデューサーだと僕は思うわけです。

だから可奈が土手で一人呟くように歌うシーンを見て、なんとも愛おしい気分になりまして。
なんかね、トップアイドルにしてあげたくなりますよね。


一方我らが春香さんは、今回赤羽根Pから明確にリーダーという役割を与えられました。
TVシリーズでもなんか普通にリーダーシップを発揮していたようにも思えますが、あれは765プロは私が引っ張る!! とか気合入ってたわけではなくて、春香さんのみんなで一緒にライブを成功させたいという自然な気持ちの発露からのこと。
だから春香さんは自分が765プロのアイドルを率いるリーダーを務めるなんて夢にも思ったことはなかったでしょうし、自分がその器だとも思っていなかったことでしょう。
それがプロデューサー直々の指名でリーダーという肩書を得たことで、春香さんもまた一つ成長していくわけですね。
この感想を書く前にチラホラと他の方が書かれたレビューを拝見しましたが、中には春香さんの優柔不断さというか、いつもとはちょっと様子の違う春香さんに戸惑いを覚えた方もいらっしゃるようです。
まあ千早に向かって「ほっとかないよ!!」とか言い放つくらいには自分の気持ちに真っ直ぐで、頑固で、感情が昂ると手がつけられない(公式設定)春香さんですから、いつもなら速攻で可奈の家に行ってピンポン連打しそうなものです。
それがみんなの顔色伺って、美希や千早に弱音を吐いてみたり、志保ちゃんに食って掛かられたらもにょっちゃったり、全然春香さんらしくないじゃないですか。
一体どうしちゃったの。あのTVシリーズのがむしゃらな春香さんはどこへ行ってしまったの。
まあ僕もそう思わなかったと言えば、嘘になります。

でも考えてみればそれも当然で、今までは赤羽根Pとりっちゃんのプロデューサー勢と、同じ765プロの仲間であるアイドル達とライバルとして競い合いながらも支えあってやってきてたわけで、そこで突然「春香リーダーな! みんなをまとめてきっちりライブ成功させてくれな!」と言われたら、そりゃ挙動不審にもなりますよ。
リーダーという役割をこなすために、その機能を果たすことに精一杯で、天海春香であることを見失ってしまっても仕方ないと思います。
私はリーダーだから、と言い聞かせて、その責任を全うしようと躍起になって、自分がリーダーに選ばれた意味を理解できていなかったのです。

ただロジカルに最高効率を叩き出し、リスクを管理し与えられたミッションを達成するだけのリーダーなんて、そんなのは誰がやっても同じなんですよ。
その意思決定プロセスをシステム化して実行するだけでいいんですよ。
でもそうではなく、春香さんが選ばれた。
それは、リーダーには「天海春香」が必要だったからです。
春香さんは天海春香であることをやめてはいけなかった。
リーダーとしてみんなを率いるために一番重要なのは、春香さんが「春香さんらしさ」を失わないことなのです。
ところが、春香さんは初めての環境にどうして良いかわからず、自分らしさを見失ってしまうわけですね。
それが中盤辺りの春香さんらしくない春香さんの理由だと思います。

そして、だからこそ、あのアリーナのステージ上で、満を持して言うのです。

「私は、天海春香だから」

この言葉の意味は、志保ちゃんの「あなたがどうしてリーダーになったのかわからない」という言葉に対する答えでもあると思います。
私は天海春香だから、私が私だからこそ選ぶ選択こそが、私がリーダーである理由なのだと、春香さんは気付いたんですね。

その選択は、結果オーライではありましたけど、正しかったのかどうかはわかりません。
常識的に考えれば志保ちゃんの意見が正しいのかもしれません。
もしあれでライブが失敗していたら、そりゃリーダーである春香さんは責任を問われることになるでしょう。
でもね、世界には正しいことよりも重要なことがあるのです。
間違えたほうがより正しいことだってあるのです。

春香さんが全員の前でこの台詞を言った時、「そうだ、よく言った!」と心のなかで親指を立てましたね。
これで失敗したら一緒に土下座するから存分にやれ!! みたいな。
そんな風に、春香さんを本当に信頼して安心して見ていられる映画でしたねえ。
まあ春香さんなら大丈夫だよ、っていう。

最後に映像面。
総集編ではなく完全新作で120分。
120分って言ったら1500カットとか余裕でありますよ。
それを完璧ではないにせよ、あのクオリティにしてきたのは素直にすごいと思います。
正直、普通にTVアニメの劇場版としては十分なレベルじゃないでしょうか。
それにどんな面倒なカットでも超簡単なカットでも、動画1枚300円とかの歩合制でやってる人たちにクオリティ優先の仕事をお願いするのは本当に難しいことです。
ましてやあんな常時大人数がわらわら画面内に出てくるような、L/O難しそうな(実際もう少しなんとかならんかったのかと思うカットもありましたけど)アイマスで、映像で仕事してる人間にあんまりその辺のこと気にさせないっていうのはすごいなっていう。
まあ3Dがーとか作画の崩れがーとか目につきやすいところはあーだこーだ言われても仕方がないのかなと思いますが、僕が実際あれを撮るとしたらかなり工数重いよなって想像できちゃうのでよくやってくれたなあと素直にうれしくなるわけです。

アニメ会社なんて基本的に薄利多売でクオリティ低くても数を作って回す世界なのに、きっちり時間かけてお金使ってあそこまで拘ってくれた、スタッフの意地と愛情が嬉しいのです。

誰かがこれをクソアニメだと言うかもしれない。
確かにそうかもしれないです。
ミスもちらほら目立ったし、映像的に気になった部分を指摘しだしたらキリがない。
でもこれは、良いクソアニメですよ。

スタッフの皆さんが本当に良い作品をつくろうと必死になったことがよく分かる、素晴らしいクソアニメです。

クソアニメ大好きな僕に言わせると、「本当に優れたクソアニメは名作と区別がつかない」のです。
だから僕は、劇場版アイドルマスターが好きなのです。

さて、まだまだ消化しきれてないので最低でももう一回は劇場に行かなきゃ!
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一緒に土下座してやるから! って、いいセリフですね! いいレビューありがとうございました。
39ヶ月前
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>アケマスから今まで、8年とか9年ループし続けていた一年というプロデュース期間のその先を、夢の続きを見ているようで、
冒頭のタイトルバックで、アケマスの象徴とも言える"主題歌"『THE iDOLM@STER』に合わせて彼女らの活躍シーンが流れた際、「ああ、あのアケ版からよくぞここまで・・・」と早くも感無量だった私ですw
そして春香さんの「みんなのお陰で私は今ここにいる」のセリフでもう涙腺決壊ですよ(´;ω;`)

残念ながら1回しか見られなかった私の中で少しばかり消化不良だった点を、色々と明確にしていただいた良レビューでした。ありがとうございます。
39ヶ月前
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自分が言いたいことが全部書いてあった。モヤモヤしたのが全部吹っ飛びましたよ。ありがとうございます。
39ヶ月前
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最初から最後までニヤニヤしっぱなしでしの2時間でした。十人十色の見方、考え方があり、確かに粗は探せばたくさん出るでしょうが、そんなのどうでもいいぐらいのアイマス愛があふれていました。客観的な解説や検証ではなく、愛のある感想、思いの吐露が聞きたかった。ありがとう。
39ヶ月前
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ホントにね、ただ表面を観ただけで、面白くないとか、グリマスが出てるからとか、そういうところだけで感想を言って、終わりにしないで欲しい。今までのゲームやアニメの一つ一つを思い出しながら、二回目を観て欲しいんだよなぁ。全然違った見え方になると思うし、最初の嫌悪感はなくなると思う。伊織やミキ、他のみんなの表情を見て欲しい。もう見ないって思った人も騙されたと思って二回目をどうか観て貰いたい。
39ヶ月前
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「そうではなくて、可奈が悪いんですよ。可奈が弱いんです。」の一文にしびれました。
そうですよね、だからこそのアイマスですよね。

今回のリーダーが春香という役割に関して、一番自分が気になったのが伊織です。春香が選ばれた瞬間、
伊織だけが「この子で大丈夫なのかしら?」って表情を一瞬するんですが、その次のカットでは既に笑顔で
見守ってるんですよね。きっと、任せてみよう!って思ったんだなと思ってw その後、伊織邸で美希や志保達と
しゃべってるシーンでも、伊織は志保に「春香はなんだかんだで答えを持ってくるわよ」って言ってるんですが、
その直後に不安そうにウサちゃんを抱いてます。この、不安も心配もあるんだけど、それでも信じて、期待して、
リーダーを任せようとする伊織の心情がとても好きでしたw
39ヶ月前
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伊織が色々口出ししてたのって竜宮で一年以上リーダーを務めたからこそ、厳しく、ちゃんと裏では支えるリーダーの先輩として役割は発揮出来てたね。たぶんあまりこの辺を伊織の出番が多かった!マジいおりん!で終わらせてるやついるんだろうなw
39ヶ月前
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映像がどうのじゃなくてストーリーがゴミ
恵まれた環境で周りにチヤホヤされてる連中が集まって仲良しこよしやってるだけ
やること全て上手くいく勝ち組しかいない世界
綺麗事しか言わない薄っぺらいヒロイン
中身の全くない糞アニメ、糞映画だった
38ヶ月前
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>>9
>恵まれた環境で周りにチヤホヤされてる連中が集まって仲良しこよしやってるだけ
>やること全て上手くいく勝ち組しかいない世界
>綺麗事しか言わない薄っぺらいヒロイン

本当に観たんかなぁ、とか思ったけどそれはどうでもいいや。
自分がTV版に抱いていた違和感ってこれに近かったのかなーなんて考えてしまった。
で、劇場版はそれに対するアンサーをガツンとやってくれたように感じる。
大筋だけ抜き出せばしょうもない話かもしれない。
そこに肉付けされた愛と技術で「このストーリーでよかったんだ」と思える物になってるような気がするな。
代わりの無い傑作アニメ、傑作映画だった。
37ヶ月前
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