管楽器、吹奏楽の練習について。音階練習の重要性。
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

管楽器、吹奏楽の練習について。音階練習の重要性。

2016-08-05 22:06

    主に一般的な学校吹奏楽部向けのお話です。

    以前の放送中に吹奏楽の練習の話になったので、大事な点を書いておきます。

    ここで言う「大事な点」の定義は、普通の吹奏楽顧問や講師が見落としている話です。
    普通の先生はロングトーンと音程の話しかできません。
    「音色の悪さ」と「音程の悪さ」は音を聞けば誰にでも分かるからです。
    誰にでも分かる欠点を指摘したり、理想の話ばかりをしていて、どうすれば上達できるのかを知らないからです。



    結論だけまとめると、ここに書いてある話は、

    1,音階練習で指を回るようにして、曲練習の時間を減らす!
    2,曲練習の時間を減らせば、基礎練習の時間が増える!

    そんだけです。


    プレゼン的に説明していきます。


    下手な人に「ロングトーンをやれ」と言っても、正しいロングトーンのやり方や、ロングトーンによって得られる能力の価値がわかりません。楽器を操る楽しさを手っ取り早く知りたいなら、とにかくパラパラと吹ける状態になることです。
    音程とか音色の熟練度とか、知ったこっちゃないです。そんなものは割りとどうでも良いんです。一生かかって身に着けていくものですから。
    プロの人だって音程が悪かったり、音色がイマイチだったりもします。

    でも、プロでもアマでも1年目の初心者でも、曲を演奏するなら「音符の並びだけは絶対正確でなければ曲にならない」ということです。

    つまり、曲にとって最低限必要なのは音符が並ぶことです。
    何年も練習した成果としての音程や音色が洗練されるわけで、じゃあ1年目の初心者はロングトーン不足で音色が洗練されていないから曲を演奏するなってことですか?完璧な音程を身につけていない人は曲を演奏する段階に無いですか?それは違いますよね?って話。



    ロングトーンは究極の練習ですが、ロングトーンをやっていても曲を演奏できるスキルは身につきません!


    じゃあ曲を演奏するために必要な能力って何でしょう?

    曲を演奏するためには、楽譜を見て演奏できる能力が必要です。

    よくある勘違いは、「暗記するまで練習しろ!」というものです。じゃあプロのオーケストラ奏者も指揮者も音楽をやる資格が無いってことになります。

    というか、プロ奏者の仕事としてアニメやドラマ、映画などのBGMを録音する仕事があります。これは渡された楽譜をその場で演奏し、最小限の打ち合わせだけやってすぐに録音開始です。どんなに長くても数日の練習時間しかありません。もちろん数日の時間があったとしても、プロの奏者の人たちは他の仕事があるので、一日中その曲の練習だけしているわけではありません。
    それで録音された内容が日本中とか世界中で聞かれるわけです。後で「もっと良く練習したバージョンを録音したから、そこのBGMを入れ替えてください!」なんてことはありません。

    じゃあどうしてプロの奏者は数日とか数時間後に演奏できるんでしょう?
    それはプロ奏者は初見に強いからです。

    よく回る指だけではなく、目の前にある楽譜を見て演奏する能力が高いという証拠ですね。

    「難しい曲に挑戦する」要素と、「上級レッスンを受ける」話は、ちょっと後でまた説明します。

    とにかく勘違いしてはいけないのは「暗記しなくてもステージに上って良いよ」ということです。プロ奏者がすべての曲を暗記しているわけではありません!



    じゃあ逆に、学生によくあるパターンがどうかというと、

    とにかく1つの曲の練習をしている時間が長過ぎるんです。

    何ヶ月も練習してようやく数曲を人前で演奏する部活を何年もやっているわけですから、初見力はまったく鍛えられません。初見力を鍛えるためには、初めて見た楽譜をパッと見てすぐに演奏する以外に無いんです。
    鍛えていない初見力が、ある日のロングトーンの最中に楽譜を読むのがうまくなる。そんなことは絶対にありえないのは誰でも分かることですよね。


    非常に乱暴な極論ではありますが、吹奏楽コンクールが本番1週間前に楽譜を渡されるものだったら、それは本当に実力を試されるすばらしいコンクールになると思うんです。1日前とか会場についてからステージ上で初めて楽譜を渡されて、1時間後に演奏させるコンクールとか最高だと思います。(世の中ではそれをオーディションと呼びますが……)

    もしそうだったら、日本中の吹奏楽部は初見練習のためにせっせと未知の曲の楽譜を買いまくってくれることになるので、私みたいな三流作曲家の書いたスコアでもバンバン売れるので、そういう世界になってほしいです。



    ついでに、もうちょっと悪い話を。

    1曲を長く練習していると、長く練習しないとホンバンな感じがしなくなってしまうんです。

    まー普通の学校の吹奏楽部でも、本番直前になって突然「主催者が◯◯って曲を生吹奏楽のカラオケで歌いたいって言っていので『北国の春』やってくれませんか!?できればメロディ抜きで!」って話になって、大急ぎで1曲仕上げた、という経験はあるんじゃないでしょうか。

    そういう場面をなんども乗り越えて、本当に必要な能力は初見力だということと、音楽の醍醐味はその場一発の演奏をどうやりきるか?どう楽しむか?っていうことに気がついていくんだと思います。

    本番慣れしていない結果、ステージでアガってしまって大失敗ってのも良くある話ですね。
    特にこれが数少ない本番での失敗だと心の傷は大きなものになってしまうんじゃないでしょうか。
    もし年間の本番回数が多ければ、「次は失敗しないぞ!」という前向きな気持ちも引き出せます。まぁ、あまりにも本番回数が多すぎると毎回適当な演奏をするダメな楽団になってしまう恐れもありますが、そういう悩みは死ぬほど本番回数が多い状況になった時に考えれば良いことです。「女にモテて困る」みたいに非常に高度な領域での悩みなので。

    で、話を戻して「少ない本番でミスった原因」をどう特定するか?
    これも難しい問題なのですが、その場では意外なほど「基礎練習の不足でした……これからはちゃんと基礎練習をして間違わないようにします……」と答える部員が多いんです。
    でも、その場では分かっていても、しばらくして平常営業の部活の状態に戻ると、やっぱり基礎練習の時間が取れないいつもの流れになってしまっていて、毎年同じミスを繰り返す。習慣を変えるというのは大変なことです。しかもそれが集団の行動パターンだとすると、まず変えることはできません。

    最悪の場合は、コンクール本番でミスった1年生に責任を押し付けるかのような空気になってしまいます。そりゃあ1年生が下手なのは当たり前です。4月に初めて楽器を持ったり落っことしたりしていて、8月にノーミス演奏できるようになっている1年生はもともと天才的な素養があっただけです。

    1年生がミスしないようにするために必要なのは、ミスを減らす練習。
    つまり、上の最初の方に書いた文章をコピペして持ってくると、

    でも、プロでもアマでも1年目の初心者でも、曲を演奏するなら「音符の並びだけは絶対正確でなければ曲にならない」ということです。

    つまり、曲にとって最低限必要なのは音符が並ぶことです。
    何年も練習した成果としての音程や音色が洗練されるわけで、じゃあ1年目の初心者はロングトーン不足で音色が洗練されていないから曲を演奏するなってことですか?完璧な音程を身につけていない人は曲を演奏する段階に無いですか?それは違いますよね?って話。

    ということです。

    1年生には音階練習を重点的にやらせておいて、とにかく音符を並べてノーミス演奏ができることを最低レベルにしないと、本番で必ず誰かがミスって、来年もミスって、永遠にミスを無くせない低レベルな楽団のままです。

    それを変えるためには基礎練習の内容を具体的に変える必要があります。
    具体的には「ロングトーンより高速音階練習を増やす」ということです。
    間違っても「もっと基礎練習をします!」「基礎練習=ロングトーンの時間を増やす!」という根性論じみた考え方はしないように。
    ロングトーンは大事ですが、ロングトーンをやっても曲はうまくなりません。

    ちょっと脱線しますが、合奏でミスを指摘していちいち指揮棒を止める顧問指揮者や、ひとりずつ演奏させてミスチェックをする顧問指揮者はどうかしてると思います。
    合奏の練習は「合わせの練習」であって、少々のミスはどうでも良いんです。
    どうでも良い些細なミスを見つけるためにひとりずつ演奏させて、他の人は黙って聞いていて、それじゃあ50人いるうちの1人が1分演奏している間に、他の49人は1分間=49分を無駄に消費していることになります。しかもつかまっている1人は凹みます。
    悪いのはミスった人じゃなくて、49分を無駄に消費させる棒を振っている人でしょ?と私は思います。それはとても効率の悪い練習方法……いや、練習とは言えないんじゃないかと思いますがどうでしょうか。


    ■究極の練習1、ロングトーン


    で、音階練習によって、曲練習の時間を減らすことができて、一人ひとりがノーミスで音符を並べることが余裕になって、その結果、合奏練習が個人公開処刑ではなく「合わせの練習」になった時、何ができるのか?というと、

    ロングトーンというのは究極の練習なんです。

    プロの奏者の先生たちが口をそろえて「ロングトーンは大事」「毎日何時間もやっている」と言うのはですね、彼らプロ奏者もロングトーンをやる時間を捻出するために努力をしているからなんです。
    忙しい中でどうにかして時間を作って、静かな場所で、自分の音をチェックしながら、丁寧なプロのロングトーン練習をやりたがっているんです。プロ奏者という生き物はそういうシビアな練習をやらないと不安で死ぬんです。

    あと、彼らは音階練習もやりたがっています。
    これも3日やらないでいると彼らは死ぬんです。
    不安になって、本番でミスったらどうしようという恐怖で死ぬんです。
    だからどうにかして時間を作って音階練習をやるんです。基礎力さえ維持できていれば、日頃からいろんな生徒のレッスンで見たこともない曲をその場一発で「お手本」として演奏しているので、初見力は自然と鍛えられているから、楽譜と基礎力さえあればプロとしての演奏ができるわけです。


    上の画像をもう一度貼ります。

    下のほうの話。

    ■「究極の練習2,音楽理論」

    「音楽理論」は大きく分けて4つあります。

    1. 演奏のために必要な音楽知識
    2. もっと深く聞くために必要な音楽知識
    3. 作曲・編曲のために必要な音楽知識
    4. 研究と雑学のための音楽知識

    演奏家に必要なのは主に1の「演奏のために必要な音楽知識」だけです。
    和声やコードの知識で、パート譜を見て、周りの音を聞けば、今演奏されている曲の流れから自分が担当している音が和音の中で何度音程なのかを理解できます。それが分かって入れば、どう音程を合わせるべきかが分かるどころか、和声の動きから先読みすることさえできます。

    音楽の様式(構成)や音楽史について詳しくなっておけば、指揮者に言われなくても演奏スタイルを決めることができます。

    楽語やフルスコアの読み方に強ければ、作曲家の意図を正しく読み取ることができるようになります。一般的にクラシック曲ではイタリア語が多く書かれていますが、ドイツ語、フランス語、ロシア語で書かれた部分を自力で読めるようにしておくと良いでしょう。私は学生時代にそういうのを全然読めない人が多いということを知った時、それを「そんなのも読めないの?」とバカにするのではなく、曲を渡された時点ですべての用語を日本語に訳してコピーして全員に配ったこともあります。誰かがそういうことをできれば、楽団全体のレベルが上がったのと同じですね。


    2は料理をおいしく食べるための知識と同じです。

    3と4は中途半端に知っていても演奏にとっては邪魔になることの方が多いです。


    2、3、4は演奏オンリーの人であれば必要ありません。


    2,3,4は普通に音楽をやっているだけなら役に立たないオタク知識です。
    同類のオタクと出会った時にだけ語り合うようにしましょう。じゃないと演奏がうまくてモテるはずが、変な知識があってキモいオタク扱いをされます。私みたいに。
    なお私は大学進学直後にOBの理論オタおっさんに捕まって、論争になって、周りの部員から(以下省略)

    プロの音楽家の人でも音楽理論については全然知らない人の方が多いです。自分の音楽活動にとって必要のないことには興味が無いんです。料理人は野菜や魚、肉を扱いますが、その育て方まで熟知しているわけではないのと同じです。
    指揮者や作曲家がすべての楽器を熟知しているとか、全ての楽器を演奏できるわけでもありません。
    もし音楽理論を全部知っているという人がいたら、よほどの天才か、キモオタか、身の程知らずだと思ってOKです。




    もう一度同じ画像出しますね。

    で、個人的にものすごく重視して欲しいんだけど、実際問題として非常に鍛えにくい部分だと思うのはこれなんです。

    初見力は本当に最強スキルだと思います。

    これがあればアホみたいに難しい曲に挑戦できるようになるので、参考音源の無いエチュードや、それぞれの楽器のソロ曲で歴史的傑作と呼ばれている名曲の練習にも着手できるんです。

    そういうのに挑戦してみると、その楽器の演奏で本当に求められるスキルがどういうものなのかを知ることができます。そういう難曲でソロのコンクールに挑戦できるくらいのスキルがあれば、普通の学校部活の顧問の先生でも「おっ、こいつはなかなか上手いぞ」と思って近隣のプロ級奏者によるレッスンを紹介してくれることもあります。
    もちろんコンクールでそれなりの結果を出せば、少なくとも地域ではそれなりに名前が知られるようになるので、いろいろな交流が発生してきます。
    そういう交流の中から「うちの楽団でやってみない?」という話が出てきたりもして、さらに上達できる機会に恵まれる可能性もあります。

    プロ級の人からレッスンを受けられれば、同じ先生の弟子どうしでの交流も生まれるので、非常に良い経験を得ることにもつながります。

    これは自分一人のためではなく、そうしたつながりを持った人たちを自分の楽団に関わらせるきっかけにもなるので、楽団全体のレベルアップにも繋がるかもしれません。



    ■井の中の蛙、大海のロングトーンを知る

    ここでようやくロングトーンの重要性の話です。

    「楽団の外のサウンドとの交流」があって、初めて音色の差、ロングトーンによる音色の熟成こそが大事だ、ということを実感できるようになるんです。

    楽団内の音色だけをモノサシにして「ロングトーンで音色を良くする」なんてことを1年生に命令しても、本当の良い音色の良さが分からないんです。
    そもそも教えているセンパイや顧問の先生ですら、ちゃんとしたサウンドを知らない状態で、闇雲にロングトーンばかりやらせているんです。目標が無かったり、目標が低い状態で努力をしても効率が悪いということです。

    目標と成功が明確な練習ということが理由で、最初のうちは高速で音階を並べられるという誰にでも分かるスキルを向上させる方が分かりやすいんです。間違ったら誰でも分かるので。

    プロの音はCDやコンサートホールで聞くことができますが、それはホールの残響音によって加工された音です。普段の自分たちが練習している場所で、プロ級の音がどう聞こえるのかを体験したことがあるのか、CDでしか聞いたことがないのか。その差は圧倒的な違いがあります。



    ■この話をどう運用するべきか?

    ここに書かれている方法でいきなり部活全体を変えようとしても絶対無理です。
    まずは自分が実践して、パート内や仲の良い友達と実践して、「◯◯ちゃんうまくなったよね」という評価を得るしかないです。

    そうしないと机上の空論だと言われるだけです。

    人は現状維持を好む生き物で、変化しなきゃと分かっていても、変化することを嫌がる生き物です。
    まずは自分ひとりを変えて、発言内容の説得力を強くするしかないです。
    まずあなたがうまくなるしかありません。

    こんなページで知った程度の話を「これが真実だ!従え!」なんて語る人は、客観的に見たらイタい人だということは分かってもらえると思います。誰もついてきませんよね。

    一人の力で周りを変えるのって、とても大変なことです。

    普通に吹奏楽コンクールでやる曲のパート譜だったら、その曲の「楽譜を家で見る時間+演奏で練習する時間」を合わせて5時間くらいで「楽譜を見れば音符の並びをノーミス演奏できる」くらいになれれば上出来だと思います。


    言いたいことは以上で終わりです。
    以下はおまけ。蛇足発言。


    ■おまけ。

    せっかくなので音程の話も。

    えーと、非常に書きにくいことなのですが、音程というのは楽団の底力です。
    音程が良い楽団にいれば、どんな人でもそれなりに正しい音程で演奏できます。
    周りに巻き込まれるからです。

    逆に言うと、周りに巻き込まれて音程が悪くなっているだけです。
    音程を正しく組み立てて、それを他人と合わせる練習を普段からやっていない楽団だから音程が悪いんです。それを急に「コンクールの曲だから音程がー」と言われても合うわけがありません。で、それを無理して「コンクールだからー」と考えて1曲2曲だけ音程練習をするから時間の無駄なんです。
    普段から個人レベルで正しい音程を身につけるようにすることはもちろん、誰かの音程に合わせたり、和音の音程を見極めることを習慣づける環境づくりをしないと、何年たってもその楽団には音程という文化が根付きません。

    結論だけ言うと、全日本吹奏楽コンクールが「音程コンクール」と揶揄され続けて久しいのは事実ではありますが、それほど音程に固執しない演奏スタイルでも全国1位を取れるのもまた事実です。音程の悪さを覆すアマチュアらしい思い切りの良い演奏をすれば良いだけのことです。劣化プロではなく、アマチュアのコンクールなのでそれで良いんです。消極的な方法で音程合わせ練習なんかやってるから審査員も「音程はちょっと悪かったけど、他の点がすばらしかったから高得点にしよう!」ってならないだけなんですよ。



    ■おまけ2、なんで楽器をメンテしないんだろうね。

    今時の楽器ってちゃんと鳴らしきればそれなりに音程は出せますし、慣らしきらない消極的な演奏をしているからおかしな方法で音程を合わせる練習が必要になっているだけとも言えます。
    この点については楽器の構造とメンテ・リペアの視点からも言いたいことがあるのですが、全楽器メンテは莫大なお金がかかるのでなんとも言えない部分があります。



    他にもいろいろ書きたいことがありますが、またの機会に。
    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。