シンセ音色運用所感 「べき論」から離れよう
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

シンセ音色運用所感 「べき論」から離れよう

2015-02-17 03:16

    今日、某人のニコ生で「シンセの音を1から作れない」という話題がありました。
    それについて私の意見を書いておきます。

    ■べき論を捨てよう

    「べき論」とは「こうするべきである」「こうあるべきである」というある種の理想論です。
    音楽、DTM界隈においては、
    ・理論は全て覚えるべき
    ・楽器を弾けるべき
    ・DAWの使い方は熟知するべき
    ・ミックスをやるなら完璧なモニター環境を整えるべき
    ・プロ音楽家は人格者であるべき
    などの考え方です。
    もちろんそうであるに越したことはありません。
    しかし、決してそうではなくても構わないです。

    ・楽譜が読めないプロ音楽家いる
    ・楽器が弾けないプロ音楽家いる
    ・DAWをマルチトラックレコーダーとしてしか使っていないプロいる
    ・ミックスはラフまででも十分(一流のプロであれば、ミックスは専業の人に任せるのは当然)
    ・プロ音楽家に人格者がいる(そもそもプロ音楽家なんて社会不適合者の方が多いだろうに)

    ただし、決して勘違いしてはいけないのは論理の誤りです。
    1、◯◯ができないプロもいる
    2、自分も◯◯ができない
    3、つまり自分はプロと同等である。
    という間違った論理展開です。

    言葉の解釈は正しく行いましょう。「◯◯ができないプロいる」ということです。
    プロである条件が「◯◯をできないこと」ではないです。
    できるに越したことはないですが、できなくても良いことは多いです。

    そもそも「べき論」は非常に美しい理想論ではありますが、相手を非難し咎める際に多く使われる論法です。右手に美しい理想を掲げ、左手であなたを指さし「あなたはこうするべきだ」という調子で使われるものであって、非の打ち所のない美しい理想像と今のあなたを比較し「こうあるべきだ」と突きつけるわけです。そりゃそうなった方が良いに決まってる。

    目指していてもそう簡単に辿りつけないのが理想像です。その理想像と今の状態を比較し「今のあなたはダメだ」という事実を必要以上に浮き彫りにする、非難のための論法です。
    多くの場合それは「どうせできないんだろう」または「できるわけない」を含んでいます。
    責任をもって教えてくれる相手でない限り、べき論は無視するべきです。

    継続的に師事する師匠か、自分の担当責任者でもない人が言う「べき論」は無視して良いです。

    もしべき論を言われたら、
    「べき論を押し付けるべきではない。」
    「そう思うならあなたがそれを体現し多くの人の目標になるべき
    と言い返してあげれば良いでしょう。

    それでもごちゃごちゃ言われたら、
    「先にべき論を始めたのはあなたです。」
    と言って、こじれた原因を突きつければOKです。

    まー面倒くさいことになるので基本無視するか、「アッハイ」とか適当な返事しておけばOKです。べき論してくる人と付き合っても得にならないですから。
    そういう面倒くさい人に対しても(というか第三者に対して)八方美人でい続けたい人はストレスで死なない程度にどうぞ。


    ということを踏まえた上で、以下が本編。シンセの話です。


    ■シンセの熟知はなくて良い

    現代のシンセは十分な数のプリセットが備わっています。
    昔のシンセはプリセットがありませんでした。あるいはプリセットがまったく使い物になりませんでした。だから昔からシンセを触っている人はシンセを熟知しなければならなかったということです。
    ピアノやギターを練習したり作編曲やミックス、マスタリングの練習をして一人前と言えるレベルになるのと同じように、シンセの扱いについて一人前になるためには、楽器ひとつを(人前で(お金を貰って)演奏できるレベルまで)マスターするのと同等の訓練が必要です。

    現代におけるシンセ運用は、すでに備わっているプリセットを探し、そこに少しの加工をするだけで十分な戦力になります。
    具体的には、
    ・曲に合わせてADSRを変更する
    ・役割に合わせて各種パラメタや内蔵エフェクトを増減する
    という使い方で十分です。

    ■ADSRの変更

    ADSRとはエンベロープパラメータです。
    アタック、ディケイ、サスティン、リリースの頭文字を並べてADSRと呼ばれています。
    A、柔らかい雰囲気の曲に対してアタックが硬すぎる音色を入れると違和感があるので、アタックだけを柔らかくしましょう。
    D、テンポ感に合わせてディケイ、リリースを変更しましょう。
    S、フレーズの雰囲気や他の楽器とのアンサンブルに合わせてリリース減衰を行いましょう。
    R、フレーズの細かさやテンポに応じてリリースを伸縮しましょう。

    ■各種パラメタの変更

    役割に応じてカットオフ/レゾナンス、ユニゾン(デチューン)、ステレオ感、ビブラートを増減しましょう。
    カットオフ(ハイカット、ローカット)が強いと目立たない地味な音色になります。
    ただし、レゾナンスが強いと弱くてもクセの強い音色になります。
    ユニゾン(デチューン)が強いとワイドな音色になります。ユニゾン前の基本音色の状態にもよりますが、目立つようになる場合と、他に馴染むようになる場合があります。
    ステレオ感も同様で、目立つようになる場合と馴染む場合があります。
    ビブラートも同様です。ビブラートはシンセパラメータで自動化する場合と、CC1で手動制御する2つの運用方法があります。ケースバイケースで使い分けましょう。

    それらと同時に、常にボリュームに気を配りましょう。
    エッジの立つ音色(目立つ音色)は小さく鳴らしてもヌケ感があります。
    馴染みの良い地味な音色は音量を大きくしても目立ちません。音圧感があっても耳障りのよいサウンドに貢献できる音色です。

    ■内蔵エフェクト

    内蔵エフェクトに頼ったほうが良い場合と、外部エフェクト(DAWのミキサー部で行うエフェクト)に任せた方が良い場合があります。
    シンセ内蔵エフェクトは往々にして負荷が高いです。理由は適当に実装しているからです。よく設計されているシンセの場合は軽量に使えることもあります。
    多くのプリセットはそのシンセを格好良く見せるためにエフェクトが掛かっています。
    シンセのエフェクト部分は必ずチェックし、外しても良いかどうかを判断しましょう。

    また、エフェクト部をチェックするクセを付けて過ごしていると、非常にチープな音を過剰にエフェクトすることでこんな音になるのか!というマジックを身につける近道になります。

    ついでに書いておくとシンセ運用の半分くらいはオシレータやLFOやマトリクスをいじることよりもエフェクトの組み合わせによるものです。これについて言及してる人が意外なほど少ないので明記しておきます。

    ■ユーザープリセット保存

    これは私がいつもやっている方法の紹介です。
    良いプリセットを見つけたら、見つけた時点でユーザープリセットとして別名保存します。
    暇な時にはシンセのファクトリープリセット(メーカープリセット)を全てチェックするようにしています。これはシンセを買った直後はもちろん、今後控えている制作に向けて準備期間がある時には何度も行っています。

    ユーザープリセットとして別名保存する時には自分の名前やイニシャルを付けます。
    例えば「FantasyPad1」というファクトリープリセットが気に入ったら「eki_FantasyPad1」という感じで命名します。
    これのメリットは検索時に「eki_」を入れるだけで、過去の自分が「気に入った!」「自分の音楽性に合っている!」「いつか使ってみたい!」と感じた経歴のある音色だけが検索ヒットするからです。
    命名の時にあまり雑な名前を付けるとこの検索メリットが起きなくなってしまうので注意してください。悪い例は「aFantasyPad1」などです。タイピングは楽かもしれませんが、検索で的確にヒットさせることができない無意味な名前です。
    恥ずかしからずに日本語を添えるのも良いです。「俺_宇宙っぽい_FantasyPad1」「俺_メイン_P5Lead1」などにしておくと、その使用目的もメモすることができます。

    元の名前を残しておく理由は以下に。

    ■ユーザープリセットの第二段階

    かんたん検索が可能になった音色は曲を作る時にはADSRやエフェクトなどが加工されます。
    曲にジャストフィットする状態になったら、つまり1曲終わったら俺_メイン_P5Lead1」に保存しておきましょう。

    かなりパラメータを変更し、二度と作れないレベルの奇跡的な音色が出来上がった時には曲名も付けても良いですね。ADSRや空間系エフェクト程度なら似たような再現は可能ですが、リングモジュレータや特殊エフェクト、複雑なマトリクスによって作られた音色は、フェクトリープリセットから再現することは困難です。そういう音色はわかりやすいように名前を付けておきましょう。「俺_edit_P5Lead1」のようにエディット済みを示す命名ルールを決めておくと半年一年後などに非常に役立ちます。
    割り当てたパラメタがある時は名前にCC2とか書いておくと、midiコントロール2番に何かがアサインされていることを未来の自分に伝えることができます。

    ■オリジナリティ信仰を捨てる

    上のような運用をしていると、1からシンセをいじってオリジナル音色を作るスキルが無くても十分なオリジナリティのある音色をストックすることができます。
    オリジナリティというのはフルスクラッチすることではなく、エディットパラメータの組み合わせでもあります。1から作ることに固執しなくても十分なオリジナリティのある音色を獲得することが可能になります。

    ■コラボレーション

    シンセ部分だけシンセが得意な人に丸投げしてしまう方法です。
    歌カラオケや、生ギター差し替え用のマイナスワンを作るのと同じ要領で以下を準備しましょう。
    1、仮シンセ入りのフル演奏。ラフミックス済み
    2、シンセ無しのマイナスワン
    3、仮シンセのみのソロ演奏
    シンセソロの音色が何度か変わる場合は1トラックとして扱います。
    シンセバッキングとソロ、パッドが別トラックの方が良い場合にはさらに多くのファイルを準備しましょう。
    それらをzip圧縮して1ファイルでアップローダーを使って相手に渡します。
    アップローダは
    http://firestorage.jp/
    http://gigafile.nu/
    などの大容量対応のものがおすすめです。
    https://www.dropbox.com/ja/
    を用意しておくと後々必ず役立ちます。

    オーダー内容やその他の連絡内容もテキストファイルで入れておくと丁寧でしょう。
    相手にできるだけストレスを与えない心遣いは大事です。

    もちろんこの方法だと緻密なミックス工程と並行することができないので理想の曲ができないとも言えます。が、ここで最初の言葉を思い出してください。
    つまり、「べき論」を捨てて、コラボレーションであることを再優先すれば良いだけです。
    なんでもかんでもひとりでやるべきという考え方にはまりすぎる弊害について一度考えてみてほしいです。音楽の構成要素すべてをひとりで賄える人など皆無なのは自明です。

    ■まとめ

    「べき論」で手の届かない理想を掲げるか、今すぐ可能なプリセット全チェックをするか。
    理想より大事なのは「やるか、やらないか」。ただそれだけです。

    何が言いたいかというと、フルスクラッチの音色を作る能力が無くても良いけど、最低限プリセットの全チェックや、気に入った音色のマーキングくらいしてから口を開こうね、ということです。
    1から音色を作ることができないならファクトリープリセットからの改造手法くらい自分なりに確立しておこうね、ということです。

    それもしないでシンセがどうのこうの言ってる人はいかがなものかと思います。たとえどんなにたくさんシンセを持っていたとしても、それは音楽家ではなく収集家なのではないかと。



    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。