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ニコニコ生放送におけるdockerの活用事例
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ニコニコ生放送におけるdockerの活用事例

2017-10-23 13:16

    はじめに

    はじめまして。ニコニコ生放送でマイクロサービスチームのグループリーダーを務めています、 ビビる(@vivil@friends.nico) です。以前歌舞伎座.techニコニコ生放送フロント レガシーシステムの改善の発表をさせていただきました。

    ニコニコ生放送(以下「生放送」)ではバックエンド・フロントエンドのサーバーを建てる環境として、2016年からDocker Swarmを採用し始めています。ここではその際に得た知見等を書いていきます。 ご意見・ご質問等あればコメント・トゥート等でお声をおかけ下さい。

    何故docker化を始めたの?

    マイクロサービス化の機運

    生放送は肥大化したモノリシックなサービスが2つ並列運用されており、それぞれロジックを保有する見通しの悪い状態になっていました。 そこで、各種のロジックをマイクロサービスとして切り出すことで、サービス全体の見通しを良くする為にマイクロサービス化を進めることになりました。

    ポータビリティ

    生放送は機材の関係で色々な環境で動くのが要求されるため、フロントエンド/バックエンドともにポータビリティ性の高いコンテナ化が求められ、技術的にはDockerが妥当であろうという結論に達しました。

    フロントエンドの分離

    フロントエンドサービスをScalaから脱却する / バックエンドサービスはScalaを引き続き使う

    従来、フロントエンドエンジニアはサーバーサイドも触る必要があったため、Scala/TypeScript/SCSS/Rakeを理解している必要がありました。(一部PHPが必要なこともありました)   フロントエンドエンジニアが複数言語を覚える負荷を下げるため・Scalaのコンパイル時間を減らす為に、サーバーサイドをTypeScriptで書きたい要望が出ました。
    一方、バックエンドサービスに関しては利便性等を考慮して、引き続きScalaを利用していく方針の為、それぞれ独立した環境で実行できるDockerを利用することになりました。

    スケーラビリティの向上

    超会議や人気アニメ一挙放送など、多数の来場者が予想される際にはインスタンスを増やして、たくさんの方に視聴していただけるようにし、人が少ない時間帯はスケールダウンさせて、別用途に利用する等、柔軟に対応出来るようにしたい意図がありました。

    なんでSwarmなの?

    2016年当時、Dockerのクラスタリング技術としてはKubernetes or Swarmの二択であり、

    • Docker公式のSwarmのほうが後々廃れにくいだろう
    • 知見が社内にほぼない状態だったので、挑戦していきたい

    と考えたため、Swarmを選定しました

    サービス構成

    マシン数

    現状70台以上のサーバーでクラスタを組んで運用されています。

    構成

    Blue-Green Deploy

    フロントエンドサービスについて、 Blue-Greenの2系統準備しています。 Coldインスタンスにデプロイして動作確認後、Hotとスワップすることで無停止で新バージョンの動作確認/デプロイを行うことが出来ます。

    また、問題が発覚した際、従来のScalaベースのシステムでは数十分デプロイに時間がかかっていたのが、Blue-Greenデプロイを実装した現在では3分程度でロールバックできるようになりました。

    監視

    コンテナについてはcAdvisor -> Prometheus -> Alertmanager -> Slack の流れでアラートを飛ばすようにしています。

    Web上でも、Grafanaを使ってPrometheusの情報をリアルタイム監視できるように整えています。

    ホスト単位での監視はインフラチームが構築したZabbixで行っています。

    Swarmについての知見

    以下に、半年以上Swarmを本番運用して得られた知見を紹介します。

    未解決

    Dockerのバージョンアップで不具合が出ることがある

    無停止で更新すると、Ingressネットワークが不通になったり、jobが不安定になったりと不具合が出ることがあったため、Dockerのバージョンアップは一度サービスを止めてメンテナンスを行っています。

    vip/ingress network周りが不安定になることがある

    現在進行系で不安定になることがあります。ネットワークが極稀に数秒詰まったりします。安定稼働に向けて引き続き改善を進めています。

    解決済み

    アクセス元IPの取得ができない

    Swarmの仕様上、アクセス元IPがSwarmのvipになっていた問題がありました。ネットワーク設定をhostmodeにすることで、解決しました。

    カーネルパラメータ

    Docker機材にはカーネルパラメータのチューニングが必要でした。(未だに試行錯誤はしています)

    具体的に一部事例を紹介させていただくと、コンテナを多数建てるとホストマシンのARPキャッシュが溢れる事があったため、GCの閾値を上げています。

      "net.ipv4.neigh.default.gc_thresh1": 4096
      "net.ipv4.neigh.default.gc_thresh2": 8192
      "net.ipv4.neigh.default.gc_thresh3": 8192
    

    個人的な感想

    以下は個人的な感想です。

    Docker / Swarm 使ってみてどうだった?

    色々アプリケーションを追加する必要なく、Dockerさえ入れられれば立ち上げられるので、とても便利でした。

    アプリケーション開発者も、サーバー側の心配をせずにアプリケーション実装に集中できるので楽になったと思います。(特に、この変更によってフロントエンドエンジニアはTypeScript/SCSSに集中できるようになり、効率が上がったと言われています)

    今まで1つのモノリシックサービスのデプロイを週に3回やる、と言うかたちから、毎日特定のサービスのみ複数回更新できる、というかたちになったので、更新頻度をあげられるようになったのは良かったと思っています。

    今後はどうする?

    マイクロサービスをどんどん増やす方針なので、より使いやすいプラットフォームになるよう、改善を進めていきたいと考えています。

    10月16日から開催されているDockercon EU 17で、Kubernetesの公式サポートが発表されました。
    今後、KubernetesとSwarmがどうなっていくのか、ますます目が離せないとても刺激的な状況です。

    エンジニア募集中です

    コンテナ技術は技術の進歩が速い刺激的な分野です。ドワンゴでは、最新の技術を使ってニコニコ生放送というサービスをよりよくしていくことに興味のあるエンジニアを募集しています。この記事を読んで興味を持った方は、ぜひこちらよりご応募ください。生放送チームのエンジニアがお待ちしています!
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