ラグビー雑記 準々決勝 オーストラリア対スコットランドの『誤審』について
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ラグビー雑記 準々決勝 オーストラリア対スコットランドの『誤審』について

2015-10-22 12:00
  • 6
お久しぶりです。
準決勝が終わって、どれも面白い試合でした!と言いたいところですがタイトルの件が物議を醸していますね。
地上波でも放送されたので、試合をご覧になった方もいるんじゃないでしょうか?
逆転に次ぐ逆転、優勝候補オーストラリアに対し、古豪と呼ばれて久しいスコットランドの健闘が光った熱い試合だったのですが・・・。
前半は『誤審』の内容について、後半はレフェリングについてちょっと自論を語ります(笑)

<今回問題になった判定>
問題のシーンは29:00~のラインアウトの直後です。


一瞬のことなので、何が起こったか説明します。
①ラインアウトからのこぼれ球をスコットランド(以下S)の選手がノックオン、オーストラリア(以下A)にアドバンテージ
②後ろから来たSの選手がボールを肩で弾く(Aのアドバンテージ中)
前にいた(=オフサイドの位置にいた)Sの選手がボールを拾ったためSにオフサイドの反則(こういうケースはノックオンオフサイドとも言います)
オーストラリア(以下A)がペナルティーゴール成功、逆転
⑤そのまま試合終了

ちょっと言葉だけでは分かりにくいかもしれないので図解します。
青がS、黄色がA、®はレフェリーです。

<レフェリーの『誤った』判断>
①ラインアウトのこぼれ球をSの選手が取り損ねる(Sのノックオン、Aにアドバンテージ)
この時、ノックオンをした選手より前にいるSの選手は全てオフサイド(×)です。



②Sの別の選手の肩あたりにボールが当たる(Aへのアドバンテージ中)

まだAに有利にも不利にもなっていないため、ノックオンのアドバンテージは継続中です。
ノックオンとは「手、腕にボールが当たって前にこぼれる」ことなので、これはノックオンではありません。

③Sの選手(オフサイドの位置)がボールを確保

Aにとって不利になりました。さらにSがオフサイドの反則を犯したので、ハンドリングエラーがペナルティーで上書きされ、Aにペナルティーキックが与えられました。

④AのPG成功、⑤試合終了については特に説明することはありませんね。

上記の流れがレフェリーの判断なのですが、この判断が後のビデオ解析により「誤審」とされました。では、何が問題になったのか改めて説明します。

<正しい判断>
①こぼれ球をSの選手が取り損ねる(Sのノックオン、Aにアドバンテージ)

ここは変わりません。問題は次です。

’Aの選手がボールに故意に触る(取り損ねる)

①の直後、動画をよく見るとAの選手の左腕に当たっています。
ちなみにAの選手は前にボールを落としたわけではないので、Aのノックオンではありません。

何が問題かというと、「Aの選手がボールを故意に触った(取り損ねた)」ことにより、Sのオフサイドラインが解消されるということです
http://ch.nicovideo.jp/enjoy-rugby/blomaga/ar886849の記事でキックに関するオフサイドの説明をしています。
<敵の行動によりオフサイドが解消される条件>
①相手のレシーバーがパスかキックをする
②相手のレシーバーがボールを持ったまま5m走る
③相手のレシーバーがボールをファンブルする

ここでは「相手のレシーバー」が「相手の選手」に置き換わっただけです。

Aの選手がボールをファンブルしたことで、Sのオフサイドが解消された訳です。
これにより・・・

③’Sの選手が肩でボールを弾いた後・・・


④’ Sの選手(オンサイドの位置)がボールを確保

ここでAにとって不利な展開となったため、Sのノックオンが適用されます。
するとAのPKではなく、Aボールのスクラムでゲーム再開となります。

誤審がなかった場合、SがAの攻撃をしのぎ切って勝者となっていたのかもしれませんし、Aがトライを取って文句なしの勝利だったかもしれません。

今大会ではTMO(Television Match Official:ビデオ判定)が頻繁に使われていますが、なぜこの重要な場面でレフェリーがTMOを使わなかったかというと、TMOの使用はトライもしくは危険なプレーの判定の場面に限られているからです。
原則を無視してレフェリーの裁量でTMOを要請していれば、たとえTMO側から要請が棄却されていたとしてもここまで問題にはならなかったでしょうね。


<レフェリングに対する個人的な意見>
先に書いたように、ここからはちょっと語ります(笑)
文字ばっかりなので読みにくいと思います。
気が向いた方はお暇なときにどうぞ。


この件に関しては、私の意見としてはレフェリーを擁護する側です。
人間である以上、ミスはどうしても起こります。
問題のシーンは時間にしてほんの1~2秒程度の極めて短い時間です。
30人が入り乱れるフィールド上で、全てを把握することは不可能に近いです。
かと言って、レフェリーの数を増やしては船頭多くして・・・という事態になりかねません。
やはり絶対的な1人の決定者が必要なのだと思います。


今回のW杯はTMOが公式採用になって初めてのW杯です。
これまでラグビーの試合を見たことがない方がどう感じているかは分かりませんが、私としては本大会のTMOの階数は多いと感じます。
厳格な判定が下されるというメリットもありますが、ゲーム自体が間延びしてしまうことやレフェリーの存在が軽くなるというデメリットもあります
自国の誇りを背負って戦うW杯では、審判の笛の重みは通常のテストマッチの比ではありません。
TMOは、レフェリーを今回のような事態から守るためのものでもあるのかもしれません。
とはいえTMOを行うかどうかも含め、全ての判断はレフェリーに委ねられるべきだと思うし、レフェリーの判断には従うべきだと思います。
(もちろん、レフェリーが公正なレフェリングを行うようゲームの内外でベストを尽くすという前提はありますが)

いっそ全ての反則、ハンドリングエラーをTMOで確認しては?という意見もあるようですが、それではレフェリーは「TMOの判定を選手に伝えるだけの人」に、ラグビーは「ボールを前に投げられないアメフト」になってしまいます。
アメフトと違ってラグビーはごちゃごちゃした分かりにくい部分は多いですが、そこに魅力があるのだと私は思います。
どこの試合かは忘れましたが、レフェリーがトライと判定したのを、TMOから物言いがあり取り消された試合がありました。
あれにはかなり違和感を覚えました。


レフェリーのCraig Joubertさんは極めて公正な、素晴らしいレフェリングをしていたと思います。
Aのトライ取消になったノックオン(上の動画の17:00~)なんて全然気づきませんでした。
ペットボトルが投げられていたり、異様な雰囲気だったとはいえピッチから逃げるように去ったのが印象を悪くしましたね。
Aの選手が故意に触ったのならSのノックオンだが、私にはAの選手が触ったようには見えなかった」と堂々と言えばよかったのではないかと思います。

Sのレイドロー主将もインタビュアーから聞かれたからレフェリングへの不満を漏らしましたが、聞かれなければいう事はなかったのではと思います。
とはいえ試合が終わればノーサイドですし、そもそもスポーツの結果にたらればはナンセンスです。
そんな事を言い出したらサモアvsスコットランド戦の笛にだってTMOをしてほしい場面もありましたし・・・。
あれがノックオンでトライ取消になってサモアが勝ってたら日本が決勝トーナメント進出できてたかもしれないし・・・。




<レフェリー・選手間のリスペクト>
賛否あるかもしれませんが、レフェリーに不服を言わないことはラグビーの守るべき文化の1つだと思っています
ラグビーの試合では、選手がレフェリーの判定に物申すことは許されていません
何かレフェリングに対し不満や疑問がある場合は、キャプテンのみレフェリーに質問することを許されます(だから国際大会のキャプテンは英語ができることが必須になる訳です)
もちろん質問により判定が覆ることはありません。


レフェリーと選手の立場について、ラグビー好きには有名なエピソードがあります。
1905年にニュージーランド代表が初めてイングランド遠征を行い、31連勝した(この時の快進撃がもとで、All Blacksという異名が定着しました)次の試合のことです。
ウェールズとの試合でオールブラックスのフルバック、Bob Deansという選手のトライがインゴールノックオンと判定され、0-3で敗れました
「明らかな誤審だった」そうですが(映像がないので分かりませんが)、Deansを含め、誰もその判定に不服は言わなかったそうです。
Deansはその数年後に24歳の若さで戦死するのですが、よほど悔しかったのでしょう、今わの際に「あれはトライだった」と戦友に漏らして息を引き取ったそうです。
それぐらい不服な判定であっても、ラグビーではレフェリーの判定に従うことが美徳とされてきたのです。


私のレフェリングに対する考えはこの2つのコラム記事に基づいています。
スポーツライターで、Jスポーツでも時々解説している藤島大さんのコラム「友情と尊敬」の記事です。(一応断っておきますが私ではないですw)
http://www.suzukirugby.com/column/no_02.html 「リスペクト」
http://www.suzukirugby.com/column/no_06.html 「想像力とユーモアの笛を」
読み物としても面白い記事があるので、興味がある方は他の記事も呼んでみてください。
最近コラムのネタ切れのようなので、今回の誤審の件も記事にしそうな気がしますw


<要するに何が言いたいかというと>
・選手はレフェリーに、レフェリーは選手に、そしてラグビーに対しリスペクトを持つべき。
・選手はプレーに、レフェリーはレフェリングにベストを尽くすべきだが、それでもプレーや判断のミスは起こるし、誤審も起こる。

・レフェリーを神聖視するのはは不健全だが、レフェリングにクレームをつけるのはラグビー的(紳士的)ではない。
ということです。

今回の件は決勝トーナメントのベスト4を決める試合であり、結果としてあの誤審により得点が動き、勝敗が決定しましたが、正しく判定されたからと言って絶対にSが勝ったかというと、それは分かりません。
もちろん試合後に疑わしいレフェリングのレビューはされるべきですし、誤審を繰り返したり、明らかにどちらかのチームに偏ったレフェリングをするレフェリーは格を下げられて然るべきです。

とはいえ、World Rugby(FIFAみたいなものです)がレフェリングの誤審を公式に発表したのは異例ですし、統括団体のお墨付きがあるからとはいえ、ノーサイドの後にレフェリングに対して非難の声を大々的に上げるのはいかがなものかと私は思います。
何も不満を墓場まで持っていけとは思いませんし、第三者がレフェリングへの不満を酒の肴にするのは問題ないでしょう。
ですが、少なくとも関係者がSNSで発信して世間を煽るのは紳士的ではないと思います。

ラグビーは勝敗や体の強さだけではなく、精神性の高さを競うものでもあります。(言うまでもなく、W杯では勝利こそが何よりも尊重されますが)
WRが掲げるラグビー憲章でも、ルールよりも先にプレイヤーが備えるべき精神的資質(誠実(Integrity)・情熱(Passion)・連帯(Solidarity)・規律(Discipline)・尊重(Respect)の5つ)を掲げています。
それだけに、イングランドのラグビー専門誌”Rugby Paper”で今回の日本代表が「最もクリーンで規律が取れたチーム」と評価されたのも誇らしいことです。

こうした精神性は選手やレフェリーだけでなく、観客も問われているのだと思います。
南アフリカに日本が勝った時、すぐ近くにいた南アのサポーターが私たち日本サポーターを祝福してくれたのは本当に素晴らしい経験でした。
PGの時に相手チームのサポーターまで静かになるのも見ていて気持ちのいい光景です。
こうしたラグビー文化はこれからも守られてほしいと切に願います。


幸か不幸か、Craig Joubertさんは準決勝の笛は吹かないようです。
今後彼が大きな試合でレフェリーをする際に、選手や関係者からのクレーム、観客からのブーイング、ましてや報復行為などが起こらないよう祈っています。
ラグビーの試合でそんなものは見たくありません。


さて話は変わりますが、今週末は準決勝の2試合が行われます。
長かったW杯もいよいよ大詰め、残るは準決勝、3位決定戦、決勝の4試合だけです。
いい試合を期待しましょう!

<放送日程>
準決勝① 10/24(土) 南アフリカ vs ニュージーランド
Jスポーツ 24(土) PM 11:40~(LIVE)、NHK-BS
PM 11:50~(LIVE) (日テレは放送なし)

準決勝② 10/26(月) アルゼンチン vs オーストラリア
Jスポーツ AM 0:40~(LIVE)、日テレ AM 0:45~(LIVE)、
NHK-BS PM 8:00~(録画)

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公式に認めてしまったのは驚きましたね。
本当におっしゃる通りだと思います。
TMOへの依存で誤審は減るでしょうが、主審の存在意義が薄れる。
難しい所ですね。
終わった時に何をもってナイスゲームだったと言えるのか。
誤審は無い方が良いに越したことはないですが、Lockさんの言う通り、毎回毎回TMOで確認していては試合の流れに大きく影響しますし、それこそ結果的に勝敗そのものに関わるような気がしますね。
よりスピーディな展開を望んで行くのであれば尚更。

今回は強い雨も降っていましたし角度含め視界も決して良好では無かったと思います。
堂々としていればよかったんですけどね。
その後の対応がマズかったのかなと。

まぁ、そもそもフォーリーのキックがもう少し調子良ければもう少しオーストラリアは楽に勝てたのでは…なんて思ったりしますが。笑

個人的にはアイルランドを応援していたので残念でならないですね( ;´Д`)
出来ればベスメンで見たかったです。。
それにしてもアルゼンチンは強いですね!
もしかしたらもしかするのでは?笑なんて期待してしまいますねw

南ア対NZも非常に楽しみですね。
事実上決勝戦と言ってもいいくらいじゃないでしょうか。笑
サベアが何トライ取るかも楽しみですね(*´艸`*)

大会終わって落ち着いたらでもいいので、現地行った時のエピソードなんかあれば是非教えてくださいm(__)m
38ヶ月前
×
lockさんのラグビー布教への情熱にはただただ感服します
ブライトンのアレを(生で!)みたら、そりゃ人生観も変わっちゃうでしょうねw

藤島さんの友情と尊敬は自分も大好きです。
2019年の成功にむけて我々草の根も闘いましょう!
38ヶ月前
×
>>1
ラグビーの試合は自チーム・相手チーム・レフェリーで創り上げていくものなのかなーと思いました。
だからこそレフェリーとのコミュニケーションが重要なんですよね。
2チームの力量がある程度近くないとゲームになりませんが。

フォーリーはキック外しまくってましたね!
相手がスコットランド以外だったら危なかったかもしれません。

アイルランドは本当に怪我に泣かされたW杯でしたね。
アルゼンチンは爆発力あるし、サモア程は反則しないですし(笑)、オーストラリアは意外に危ないかもしれないですね。

NZは本当に強いですね!
フランスが最後完全に心を折られてましたからね(^^;)

現地エピソードですね、忘れないうちにやりましょうか。
こんなことならもっと写真撮って来ればよかった(;_;)
38ヶ月前
×
>>2
いやーお恥ずかしい、周りの人にあまり熱く語り過ぎると引かれそうなのでここでぶちまけてます(笑)
あれは本当に人生観変わった気がします。
そしてラグビー愛がハンパない事になってます(笑)

藤島さんのポエミィな文章好きなんですよねー
日本一ラグビーに詳しい詩人だと思ってます(笑)
草の根活動、頑張りましょう!
38ヶ月前
×
解説ありがとうございます。私も疑問に思うシーンでした!

ところで、③'で、Sの肩にボールが当たった時点で、Sには一般プレーのオフサイドラインは形成されないのですか?
ノックオンやキックでさえなければ、ボールが前方に落ちた後、その前にいた選手は自由にボールにアプローチできるのですか?
37ヶ月前
×
>>5
遅くなってすみません!忙しかったもので。
③’でSにボールが当たったのは「プレーとみなさない」という判断だと思います。
なのでオフサイドラインは形成されません。

「手を伸ばしたけど触れずに肩に当たった」のならばプレーと言えるかもしれませんが、背中を向いた状態でたまたま肩に当たっただけなので、少なくともボールに働きかける意思はないと思われます。

とはいえこういうのは動画として何回も再生していれば簡単にわかりますが、目の前で起こった一瞬ですべてを完璧に判断するのははっきり言って不可能です。

そして上でも話題にした藤島大さんですが思った通り、コラムでこの件について書いていました。
http://www.suzukirugby.com/column/index.html 第121回「ノッコン・オフサイド」
私は全く以て同意見です。
37ヶ月前
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