13人の愛好家+1人の外部有識者による、どこよりも濃い独ブンデスリーガ2015-16回顧録・中編
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13人の愛好家+1人の外部有識者による、どこよりも濃い独ブンデスリーガ2015-16回顧録・中編

2016-08-17 22:00

    【注意】

    ※↓の続きです※

    http://ch.nicovideo.jp/football-kyo-no-utage/blomaga/ar1079708?zeromypage_nicorepo

    ※↑の続きです※



    第3章 愛好家が選ぶ2015-16シーズンのMVP&最優秀監督

    優勝や残留の立役者、チームを降格から救おうと孤軍奮闘した偉丈夫、あるいは巧みな采配で勝利へと導いた指揮官――。2015-16シーズンの記憶を鮮やかに彩り、観る者を惹き付けた選手や監督を9人の執筆者達に挙げてもらった。その上で、より多くの執筆者達が選んだ1人を「ベスト」として表彰する。なお、選手は「GK」、「SB」、「CB」、「守備的MF」、「攻撃的MF」、「サイドアタッカー」、「ストライカー」の7ポジションに分けた。




    GKは、マインツのカリウスが5票を獲得。とんとんは「抜群の反応速度と長い体躯でビッグセーブを連発した」と語り、Fusshaltは「チームを救うファインセーブが非常に多かった上、安定感が加わり、時折やらかしていたポカが減少した」と成長を評価した。


    派手なタトゥーでも知られるカリウス


    SBは、バイエルンのアラバが4票を得た。「複数のポジションをこなすポリバレント性と戦術理解度は、バイエルン、グアルディオラにとって欠かせないものであった」(とんとん)。



    最終ラインと中盤であれば、どこでもプレーできるアラバ

    CBは、ドルトムントのフンメルスが4票を手にした。「左足での鋭い縦パスで幾度となくチャンスを演出。後方から攻撃陣を支えられる貴重な存在であった」(とんとん)。



    復調し、攻守に輝いたフンメルス

    守備的MFは、ボルシアMGのジャカが4票を集めた。「カードコレクターの一面は改善されなかったが、左足での正確な配球と体を張ったディフェンスで攻守にチームを支えた」(とんとん)。



    抜群の存在感を放ったジャカ。課題は時折、顔を覗かせる荒いプレーだ

    攻撃的MFは票が割れ、最多は3票のミキタリヤン(ドルトムント)。とんとんは「攻撃に関しての万能性はリーグナンバーワン。選択肢の幅の広さを見せ付けた」と絶賛する。



    日本語と英語で検索しても、裸体が見付からなかったミキタリヤン。脱ぐのは嫌?!

    サイドアタッカーは、5人がバイエルンのコスタを挙げた。「『暴力的』と表現したくなるほどの突破で対峙する者を恐怖のどん底へと叩き込んだ。その瞬発力と加速力はリーグでトップだろう」(暁空也)、「サイドを突破してからの鋭いクロスで9アシストをマーク。スピード、テクニック、共に圧倒的で、故障の多いロベリーの穴を完全に埋めきった」(とんとん)と、突破力が支持された。


    圧巻の突破力を示したコスタ。研究されつつあるが、来季はそれを上回れるか

    ストライカーも、5人がレバンドフスキ(バイエルン)に票を投じた。29年ぶりに30点の大台を捉えたが、「ポストプレーもこなす素晴らしい働き。最前線でチームを牽引した」(とんとん)と、得点力以外でも傑出していた。



    30得点はリーグで29年ぶりの大台だ

    監督は、ドルトムントのトゥヘルに4票が入った。とんとんは「1つのパターンに縛られず複数のオプションを駆使できる監督。1年目の今季は複数のオプション、選手起用を試しながらも確実に2位に就ける素晴らしい采配」と賛辞を贈る。



    ドルトムントに新たな風を吹き込んだトゥヘル

    GKと守備的MFを除くと、全てバイエルンとドルトムントからノミネートされた。優勝や準優勝は、やはり「個の力」に裏打ちされているのである。

    以下、執筆者達から寄せられた選考に関する意見を紹介する。

    ■衝撃的だった7人の選手と1人の指揮官

    文・暁空也

    私のセレクションはGKがフラデツキ(フランクフルト)、SBがヘクター(ケルン)、CBがスル(ダルムシュタット)、守備的MFがダフート(ボルシアMG)、攻撃的MFがディダビ(シュトゥットガルト)、サイドアタッカーがコスタ(バイエルン)、ストライカーがワーグナー(ダルムシュタット)、監督がシューベルト(ボルシアMG)で、コスタとシューベルトを除くと、奇をてらっただけに映るかもしれない。しかし、明確な基準がある。それは「衝撃度」。今季、私が最も驚かされた選手と監督の名前を挙げた。

    GKのフラデツキは、まさに守護神だった。驚異的な反応と俊敏性、守備範囲の広さ、確かな判断。彼がいなければ、フランクフルトは残留できなかったと断言できる。

    SBのヘクターは、突出した何かがあるわけではないが、攻守にハイアベレージ。攻撃志向、守備志向、どちらの監督の要望にも応えられる稀有な存在だ。安定感もグッと増した。

    CBのスルは、183cmと小柄ながら堂々たる立ち回りでカルディローラと共に中央に鍵をかけた。何より、7得点が光る。セットプレーで相手に脅威を与え続けた。

    守備的MFのダフートは、シャビ(元スペイン代表)がデビューした頃と重なる。ボールの扱い方は天才的で、パスからは創造性や閃きが迸(ほとばし)る。

    攻撃的MFのディダビは、降格を余儀なくされたシュトゥットガルトで13得点5アシストと気を吐いた。怪我に泣かされてきたが、ついに本領を発揮した。

    サイドアタッカーのコスタは、「暴力的」と表現したくなるほどの突破で対峙する者を恐怖のどん底へと叩き込んだ。その瞬発力と加速力はリーグでトップだろう。

    ストライカーのワーグナーは、リーグで6位の14得点。長身が生きる空中戦だけでなく、地上戦でも柔軟な足捌きでゴールネットを揺らした。もっとも、早くから将来を嘱望されてきた男。「驚き」よりも「ようやく」がしっくりくる。

    監督のシューベルトは、開幕5連敗のチームを引き継ぐと、10戦負けなしで勝ち点を荒稼ぎし、最終的には4位でチャンピオンズリーグの出場権を手中に収めた。彼のチームが見せる、流れるようにゴールへと迫る様からは、同名の作曲家さながらの美しいハーモニーが聞こえる。


    ■レスターより速かったダルムシュタット

    文・s04_bhoy

    最優秀監督はダルムシュタットのシュスター。縦に極端に速いサッカースタイルは、数値にも表れている。アタッキングスピードは、英プレミアリーグで優勝したレスターを上回る速さをマーク(https://deepxg.com/2015/11/06/europes-most-direct-teams/)。また1試合におけロングボールの率も欧州でトップだ(https://twitter.com/teiteteemaer/status/727513066859036672/photo/1)。2015-16のダルムシュタットは、3部時代から他にはない独特のサッカーを展開してきたシュスター監督の、集大成のようなチームだった。


    ■シーズンMVPはトーマス・ミュラー

    文・昴

    唯一の不満は、ミュラー(バイエルン)を当てはめるポジションが見当たらないところ。適当なポジションはないが、シーズンMVPにはミュラーを推す。監督は悩んだ末に2人を選出。共に難しいシーズンだったはずだが、質と結果を両立させた。総じてバイエルンに偏ってしまったが、2位に10ポイント差をつけた王者からの選出が増えるのは仕方あるまい。


    ■攻撃での万能性はミキタリヤンがナンバーワン

    文・とんとん

    GKのカリウスは、マインツの躍進を支えた23歳。抜群の反応速度と長い体躯でビッグセーブを連発した。

    CBのフンメルスは、左足での鋭い縦パスで幾度となくチャンスを演出。後方から攻撃陣を支えられる貴重な存在であった。

    SBのアラバは、複数のポジションをこなすポリバレント性と戦術理解度はバイエルン、グアルディオラにとって欠かせないものであった。

    守備的MFのジャカは、カードコレクターの一面は改善されなかったが、左足での正確な配球と体を張ったディフェンスで攻守にチームを支えた。

    攻撃的MFのミキタリヤンは、11得点15アシスト。攻撃に関しての万能性はリーグナンバーワン。選択肢の幅の広さを見せ付けた。

    サイドアタッカーのコスタは、サイドを突破してからの鋭いクロスで9アシストをマーク。スピード、テクニック共に圧倒的で、故障の多いロベリーの穴を完全に埋めきった。

    ストライカーのレバンドフスキは、30得点という数字だけでなくポストプレーもこなす素晴らしい働き。最前線でチームを牽引した。

    監督のトゥヘルは、1つのパターンに縛られず複数のオプションを駆使できる監督。1年目の今季は複数のオプション、選手起用を試しながらも確実に2位につける素晴らしい采配。


    ■その価値を国内外に見せ付けたチチャリート

    文・Fusshalt

    最優秀監督候補として自身が挙げたのは、ヘルタのダルダイ監督、HSVのラッバディア監督、インゴルシュタットのハーゼンヒュットル監督、ダルムシュタットのシュスター監督、そしてホッフェンハイムのナーゲルスマン監督である。この中からダルダイ監督を選んだ理由は、昨シーズンに低迷したヘルタを立て直した上、少ない補強から最大限の結果を生み出したその手腕を買ってのことである。

    GK部門で候補に挙げたのは、ドイツ代表不動の正GKであるバイエルンのノイアーを筆頭に、マインツのカリウス、ケルンのホルン、HSVのアードラーの4人である。その中からカリウスを選んだのは、チームを救うファインセーブが非常に多かった点に加えて安定感が加わったことで時折やらかしていたポカが減少した点を考慮してのことだ。彼の活躍があればこそ、マインツの守備が安定し、今シーズンの躍進につながったと考えている。

    CBはバイエルンのボアテング、レーバークーゼンのターの二人が候補となったが、若いにもかかわらずチームの守備の要として活躍し、常に安定したプレーを続けたターを選出した。

    SBはフィリップ・ラーム以上に安定した活躍をした選手を見出せなかったため、文句なしの選出である。

    守備的MFの候補は6名いた。ドルトムントのワイグル、レーバークーゼンのカンプル、ボルシアMGのジャカ、ヘルタのダリダ、HSVのホルトビー、そしてフランクフルトの長谷部である。この中から、カンプルを選出した。チームの苦境を救う活躍でチームを3位に導いた功績、そして出場すれば必ずチームに活力を吹き込むそのパワーが決め手である。

    攻撃的MFはサネを選出した。他の候補にはク・ジャチョルと清武を挙げたが、彼らに共通しているのはチームの軸であるという点である。その中でもシャルケにおいて、まさに無くてはならない存在であるザネが一番であると判断した。

    サイドアタッカーは、もう文句なしにミキタリヤンだろう。リーグで11ゴール20アシストを決めており、文句のつけようが無いシーズンだった。個人的には原口も評価しているものの、ベストというのは物足りない成績であった。前線が守備をしない部分をカバーしていたのは彼であり、そこを差し引いてももう少し出来たはずである、と自分は信じている。

    ストライカーではチチャリートを選出したが、候補としてはHSVのラソッガとブレーメンのピサロも挙げた。この3人は欲しい時に得点を獲ってくれるストライカーであるが、チチャリートを選出した理由はブンデスリーガ初挑戦ながら自身の価値をその活躍で国内外に見せ付けた、その得点力だ。



    □独ブンデスリーガ2015-16、知ってるつもり?!~FINAL~出題編

    文・暁空也

    前回、筆者の思い付きで初めて実施したクイズが意外と(?)と好評だったため、調子に乗って継続です。今回は執筆者達からも問題を募りつつ、独ブンデスリーガ2015-16シーズンの後半戦のトピックスを中心にまとめました。奇問や難問も含めて全10問。さて、アナタは何点取れるでしょうか。

    第1問(10点)

    15-16シーズン中に発表された、17-18シーズンからの大きな変更点は、以下のa~cのどれでしょう。

    a:追加副審の導入
    b:これまでは2部までだった女性主審の登用
    c:月曜日の試合開催


    第2問(5点)

    下の写真の怪しげな(失礼)おじさんは誰でしょう。


    a:DFB(ドイツフットボール連盟)の会長
    b:2015-16シーズンの最優秀主審
    c:ドイツで人気の辛口コメンテーター


    第3問(20点)

    DFBポカールの準々決勝、シュトゥットガルト対ドルトムントでは、ドルトムントのサポーターが試合中に数百個ものテニスボールを投げ込み、一時中断しました。彼らはなぜ、このような行為に出たのでしょうか。記述して下さい。





    第4問(5点)

    今年1月にウォルフスブルクが期限付き移籍で獲得した、David“DaveBtw”Bytheway。と言っても、彼はフットボーラーではありません。では、何者でしょうか。



    a:ピッチの管理の天才
    b:テレビゲームの達人
    c:IQ180のアナリスト


    第5問(5点)

    以下の画像には、おかしい点があります。それを説明して下さい。





    第6問(5点)

    今年2月21日に開催された第22節、レーバークーゼン対ドルトムントでは前代未聞の中断がありました。その理由は以下のどれ。

    a:退席を命じた監督が従わないため、審判団が引き上げた。
    b:マスコット同士が殴り合いを始めた。
    c:蛾が大量発生した。


    第7問(20点)

    以下の3つの画像から想像されるクラブ名を答えて下さい。









    ヒント:ダジャレです


    第8問(10点)

    出題者=Siebenendenweg(ヘルタ・ベルリン担当)

    DFBポカール1回戦のビーレフェルト戦の際、ヘルタ・ベルリンのチームバスに起きたアクシデントは何だったでしょう。

    a:チームバスのナビで試合地のビーレフェルトが検索できなくなった。
    b:向かってきたオートバイからバスへの発砲があった。
    c:試合後ヴァイザーとベン=ハティラが口論となり取っ組み合いになった。
    d:バスが急遽故障したため、現地のクフノツアーという会社のバスを急遽レンタルして事なきを得た。


    第9問(10点)

    出題者=Siebenendenweg(ヘルタ・ベルリン担当)

    ヘルタ・ベルリンのの公式ツィッターアカウントが、今シーズンのアウェイ戦でスタジアムの電光掲示板に描かれているロゴの間違いを対戦相手に訴えたのは何回あったでしょう。

    a:1回
    b:2回
    c:3回

    第10問(10点)

    出題者=YAMADA

    2016年2月、28歳という若さでユリアン・ナーゲルスマン監督が独ブンデスリーガでデビューを果たしました。そのホッフェンハイムの監督に対して、南ドイツ新聞マガジン(Sueddeutsche Zeitung Magazin)がシーズン中にインタビューを行っており、出題はその際の写真からです。

    ナーゲルスマン監督が以下の写真の表情をしたのは、a~cのどの質問の時?



    a:ホッフェンハイムを1部残留に導く自信はある?
    b:ペップ・グアルディオラは世界最高の監督だと思う?
    c:28歳だし、やっぱりビールは好き?


    回答編は、後ほど!



    ブンデスリーガのスタジアムで思う、日本のこと

    文・Fusshalt

    今シーズンも何度かアウェイ遠征へ足を運んだ。数多くのスタジアムを見てきて思うのは、Jリーグの基準があまりにも厳しいのでないか、ということだ。特に今シーズンはそれを強く感じた。

    シグナル・イドゥナ・パルクやアリアンツ・アレーナばかりがクローズアップされ、ドイツのスタジアムは大きい、広いというイメージがあるかもしれないが、実情はさにあらず。大きいのは1部に所属しているチームばかりで、2部では収容人数1万人という小さいスタジアムをホームに持つところもあるのだ。

    そんなブンデスリーガだが、今シーズン昇格してきた2チームは非常に対照的なチームだった。アウディマネーをベースに近代的なチームを作り上げてきたインゴルシュタットと、2部、3部のプレーオフを勝ち抜いた勢いそのままに2部も駆け抜けて一気に1部昇格を勝ち取った野武士のような荒々しいダルムシュタット。特にダルムシュタットは金が無い。金がないからスタも非常に古い。

    特に自分が行った日は雨だったから印象は最悪だ。スタジアムに行くまでは泥だらけの山道。収容人数1万7000人とはいうものの、メインスタンドの一部以外は屋根なし、座席なし。スタの内部も古く、幾つかの施設は故障している。

    1部に昇格した際の映像では、天井の配管が壊れて水漏れしており、今シーズンになってもシャワー室のボイラーは壊れたままであったので、水しか出ない。チームバスを入れる駐車場も無いので、スタジアム内のピッチギリギリまでチームバスが入ってくるなど、日本なら2部のライセンスすら許可されないのではないかと思う(苦笑)。

    だが、同時に思うのは、フットボールに必要なものは情熱なのだ、ということだ。ダルムシュタットのサポーターは雨の日でも大勢がスタジアムを訪れ、大声でチームを後押ししていた。スタジアムがどうこうは全く関係ない。

    Jリーグは、その1番基本的な部分を忘れているのではないだろうか?無借金経営は基本としても、ライセンスの条件にスタジアム整備まで入れるのはどうなのだろう?フットボールにおいて重要なのは選手であり、チームであり、それらを後押しするサポーターなのだ。彼らにとって重石にしかならない条件をライセンスに科すのは、逆効果にしかならないのではないだろうか。



    第4章 脳裏に刻み込まれた「マイヒーロー」

    1試合、45分、いやワンプレーでも、強烈な印象を残す。胸を打つ。魅了する。それが、フットボーラーだ。2015-16シーズンも、1人ひとりに「マイヒーロー」が生まれたに違いない。さて、執筆者達の脳裏に深く刻み込まれたのは、誰だろうか――。


    ■悲劇の天才、ディダビの鮮烈な復活劇

    文・暁空也

    鮮烈な、不撓不屈の復活劇だった。シュトゥットガルトのダニエル・ディダビ(26)。これまで度重なる怪我に苦しんできた“悲劇の天才”は2015-16シーズン、31試合で13得点5アシストを挙げ、ついに表舞台に返り咲いた。


    過去3シーズンで僅か21試合

    21。ディダビが過去3シーズンで出場した試合の数だ。監督に信頼されず、出番を与えられなかったわけではない。怪我との長く、苦しい闘いだった。

    まずは11-12シーズン、左半月板の断裂で80日間の離脱を強いられると、復帰後の12年5月に親善試合で同じ左膝の軟骨を損傷。手術を余儀なくされ、約7カ月間に亘りピッチから遠ざかる。

    悪夢は続く。13年1月、またもや左膝を傷め、2度目の手術を受ける。今度は1年以上もの忍耐が必要だった。さらに14年12月、左膝に3度目のメスが入る。完治までは約4カ月間も待たなければならなかった。

    リハビリに費やした時間は、約2年にものぼる。21歳~25歳というフットボーラーの“伸び盛り”の大半を医療施設で過ごし、心が折れてもおかしくない。

    11-12シーズンに期限付き移籍で所属したニュルンベルク(当時は1部、現在は2部)で攻撃陣を牽引し、23試合9得点3アシストの好成績を残して将来を嘱望された彼だが、意気揚々と帰還したシュツットガルトで12-13シーズンは3試合、13-14シーズンは7試合、14-15シーズンは11試合の出場にとどまり、苦心惨憺の日々を送った。

    不死鳥のごとく甦る

    しかし、まさに「枯木竜吟」(こぼくりょうぎん、「苦境を脱して再び脚光を浴びる」の意)。15-16シーズン、彼は不死鳥のごとく甦った。31試合に出場して13得点5アシスト。欠場は僅か3試合で、降格したチームにあって獅子奮迅の活躍を見せた。

    圧巻の打開力だった。ボールを持てば、力強いドリブルで前進。スキルとスピード、パワーを兼備しており、スペースを突くだけでなく、密集地帯も単騎でこじ開ける。

    何より、ペナルティエリア付近では精確かつパンチ力に長けた左足が生きる。昨年12月20日のヴォルフスブルク戦(ホーム)で炸裂したミドルシュートは、その象徴だ。ペナルティアークのやや右から左足に押し出されたボールは、驚異的な速さとドライブでゴールへ飛び込んだ。

    https://www.youtube.com/watch?v=roLcnFEm5oE

    体幹が強く、不自由な体勢でもシュートは枠内を捉える。昨年9月24日のレバークーゼン戦(アウェイ)。後ろ向きにボールを受けた彼は、マーカーの圧力を交わすために反転すると、窮屈なフォームになりながら腰の回転で左足を振り抜き、ゴールの右隅を射抜いた。

    ※下の動画の3分45秒~

    http://www.dailymotion.com/video/x3azuik_baylevstu_sport

    レフティーでありながら、右足も器用に使う。今年4月9日のバイエルン戦(ホーム)では、こぼれてきたボールを倒れた状態から右足ですくい、浮かせて決めた。豊かな創造性と、それを実現する技術がある。

    https://www.youtube.com/watch?v=2giE8SMcgqQ


    総得点の4割に絡む

    シュツットガルトは15-16シーズン、リーグ5位の50得点を記録した。13得点5アシストのディダビは、その4割近くに絡んだ。攻撃陣の中心に、彼は君臨した。

    リーグ最下位の75失点に引きずられ、17位で降格したシュツットガルト。彼のセンセーショナルな再起は、徒花(あだばな)に過ぎないのかもしれない。それでも、怪我に祟られてきた悲劇の天才が咲かせた“色”は、まるで蓄積してきた生命力を解き放ったかのように濃く、鮮やかで、見る者を惹き付けた。

    ~ダニエル・ディダビの略歴~

    ダニエル・ディダビは1990年2月21日、ドイツの南西部のバーデン・ヴュルテンベルク州ニュルティンゲン市に生を受けた。父はアフリカ西部のダホメ共和国(現在のベナン共和国)の出身で、母はドイツ人。地元のSPVニュルティンゲンでフットボールを始めると、7歳の時にシュツットガルトへ移籍する。「父と自分の観戦チケットをくれたから」という理由は、今では笑い話だ。学業が疎かになり、父親に連れ戻された期間もある。2003年に復帰して以降は、順調にステップアップ。U-19を経て、2008年8月30日にセカンドチーム(3部)でプロデビューすると、2得点で衆目を驚かせた。10-11シーズンにトップチームへ昇格。7月29日に開催されたモルデFK(ノルウェー)とのヨーロッパリーグの予選で初出場、独ブンデスリーガでは8月29日のドルトムント戦の後半にピッチに立った。179cm、73kg、26歳。16-17シーズンからヴォルフスブルクでプレーする。


    ■古巣を見返し、代表への道筋も切り拓いたワーグナー

    文・Siebenendenweg



    ノイアー、ヘヴェデス、ボアテンク、ケディラ、エジル、フンメルス…これらの錚々たる選手達は、先日行われた欧州選手権のドイツ代表メンバーだが、そんな彼らと共に2009年のU-21欧州選手権で優勝したのがサンドロ・ワーグナー(ダルムシュタット)だ。

    しかし、その盟友達とは異なり、彼のこれまでのキャリアは決して右肩上がりではなかった。例えば、ブレーメンからレンタル移籍したカイザースラウテルン(以下、FCK)では、僅か1ゴールにとどまり、クラブは降格、サポーターにとって嫌悪対象となった(ヘルタ時代のFCKでのアウェイゲームでは、サポーターからの罵声が飛んだほどだ)。

    その後、やってきたヘルタでも、頑張る姿は印象的だったが、決定力という点で大きく劣っており、スタメン出場は稀で、ベンチから途中出場するのが定番。ファンには、こんなシーズンハイライト動画を作られてしまうくらいだった。

    https://www.youtube.com/watch?v=MXt65eFPi48

    迎えた今シーズンの準備期間。ダルダイ監督の下で構想外となると、チーム練習からも外され、チームメートが練習するのを横目に、無人のゴールにシュート練習を行うまでに。

    https://twitter.com/BILD_HerthaBSC/status/629219620721979392

    ダルムシュタットに半ば拾われる形で移籍したが、そこでは水を得た魚のごとくゴールを量産し、人々を驚かせた。

    第33節、相手はヨーロッパカップ戦への出場権争い真っただ中の古巣ヘルタ。逆転ゴールを決めると、ヘルタサポーターが陣取る「オストクルバ」へ向かって走り、「どうだ。みたことか」と言わんばかりのゴールセレブレーションを見せた。ヘルタサポーターを怒らせ、ヘルタを沈め、そして気合の入ったレイトチャージと共に退場し、去っていった。

    彼のこれまでのキャリアは、決して満足いくものではなかったが、まだ28歳。代表で活躍する盟友達に後れは取ったが、来季、そして――可能性は低いかもしれないが――代表へと繋がる大きな1年となったのではないかと思う。


    ■縦に速いチームに「間」を生み出すカンプル

    文・昴

    ブレーメンのヴィートヴァルト、バイエルンのコスタ、レーバークーゼンのカンプルが印象に残った。

    ヴィートヴァルトは、ヴィーゼがチームを去って以来、見当たらなかった守護神と呼べるGK。チーム事情もあり、失点数は多いものの、幾度となく決定機からチームを救った。彼の働き無くして残留はなかったと言っても過言ではない。

    コスタは「ロッベリー」の欠場を補って余りある活躍を見せた。特に序盤に与えた衝撃はデビューシーズンのリベリークラス。徐々に対応される面が増え、違いを作る意味では前任の2人に及ばないが、今後が楽しみな選手の1人だ。

    カンプルは、ドルトムント時代とは全く違う起用法ながら、プレーの幅と技術の高さを見せ付けた。ボルシアMGにおけるジャカと同様に、縦に速いチームに「間」を生み出し、変化を付けることが出来る貴重な選手。春先に怪我で離脱したが、シーズン中になんとか復帰。復帰戦でも出色の活躍を見せた。


    ■怖い存在であり続けたギュンドアン

    文・とんとん

    ヘルタ・ベルリンのダリダ、レーバークーゼンのター、ブラント、ドルトムントのギュンドアンを挙げたい。

    ダリダは、1試合平均の走行距離でリーグナンバーワン。豊富な運動量と的確なポジション取りでヘルタの攻撃の潤滑油となった。

    ターは20歳にして欧州選手権に召集され、飛躍のシーズンとなった。足下の技術には改善の余地があるが、スピードとパワーを生かした力強いディフェンスで貢献する。

    ギュンドアンはポジション取りが非常に上手く、どの経路でどこを狙えば前進できるのかを俯瞰できるクレバーさが非常に印象的。怖い存在であり続けた。

    ブラントは、今季急激に成長を遂げた若手。サイドに敵を引き付けた状態からスピードを生かして中に切り込みゴールを奪う得意パターンで、終盤には6戦連続ゴールを記録した。


    ■エースストライカーの座を奪取したチチャリート

    文・なかがわ

    マンチェスター・ユナイテッドから移籍期限ギリギリでレーバークーゼンに加入したメキシコ人FW、チチャリート。レアル・マドリーから復帰したイングランドの地でも自身の居場所を確保できず、半ば追い出される形でレーバークーゼンにやってきたが、よほどチームに合ったのだろう。リーグ戦で17得点を挙げ、チームの象徴でもあるキースリンクから“エースストライカー”の座を奪い取り、存在感を十分に示した。


    ■ドルトムントの成功の立役者、ワイグル

    文・Fusshalt

    ワイグル(ドルトムント)のプレイを最初に見たのは、2014-15シーズンの2部と3部の入れ替え戦であった。彼は1860ミュンヘンのベンチメンバーで、右サイドバックとの交代で試合終盤に途中出場してきた。

    データ上では彼を知っていたが、実際に見たのはその時が初めて。彼のプレーに注視したが、無難にボールを捌きつつ、その動きには光るものの片鱗が見え隠れしていた。翌シーズン、彼が主力としてプレーできるようなチャンスを得たならば、「レーヴェン」(1860ミュンヘンの愛称)は低迷から脱出できるかもしれない。そう思った。

    だが、現実はそう上手くはいかなかった。ドルトムントの監督に就任したトゥヘルが、彼をルール地方へと呼び寄せたのである。リーグ開幕戦、トゥヘル監督は今シーズン加入したばかりの20歳の若者をスタメンで起用した。そしてその起用は見事にハマった。まだ育ちきっていない、ひょろっとした立ち姿から繰り出される長短のパスで、前線へ好パスを配給。中盤の底からゲームを組み立てた。シーズン前半戦のチームの快走の主原因の1つは、彼の活躍であろう。

    後半戦になると、彼の活躍に多少陰りも見えた。弱点である競り合いの弱さ、1対1での守備の弱さから窮地に陥るシーンも度々見られたのだ。しかし、まだ20歳である。成長の余地がまだまだある証左でもある。彼の成長は、ドルトムントの成功の査定と言ってもいいと思っている。今後の彼の成長に大いに注目している。


    ■“ワールドクラスの愛くるしさ”が炸裂したヒッツ

    文・YAMADA

    マービン・ヒッツは、アウクスブルクという比較的規模の小さいクラブのゴールマウスを守り、2015-16シーズンはヨーロッパリーグにも参戦した。残念ながらチームはリバプールとの試合に1点差で敗れたが、クラブ史上初のEL参加でベスト32まで駒を進めることが出来たのも、この守護神の活躍が大きかった。

    独「キッカー」のヒッツに対する採点は、シーズン平均2.67でGK18人中の2位タイ(kicker採点は1.0が神、6.0が不合格)。




    スイス人としては先ごろの欧州選手権の代表に選ばれ、背番号12を付けた。優秀なGKだがワールドクラスと呼ばれるにはまだ少し早い28歳は、これからが楽しみなところ。

    そしてさらに、彼が振り撒く“ワールドクラスの愛くるしさ”が炸裂したのが今シーズンだった。

    緩くウェーブがかかった黒髪の長髪をヘアバンドで止め、どこかあどけない表情のまま、ゴール前で獅子奮迅の働きをする。審判に叱責される場面があっても、「てへぺろ」と吹き出しをつけたくなるような小悪魔的表情で相手を丸め込む。それでいて地声は太く渋いのだから、ギャップ萌の要素すら持ち合せている。

    いいじゃないか、凄く!


    GKの技術というのはGK経験者以外にはなかなか分かりづらいとされており、素人としてはスーパーセーブを連発するGKにワクワクするのが一般的だ。だが、あえてプレーは二の次で見た目から入ろうじゃないか。マヌエル・ノイアー(バイエルン)の飛び出しを楽しむように、童顔GKマービン・ヒッツの笑顔を愛でるのも、独ブンデスリーガの楽しみ方の1つなのだから。



    □独ブンデスリーガ2015-16、知ってるつもり?!~FINAL~回答編

    文・暁空也

    では、採点の時間です。

    第1問の答えは、c。テレビ放映権料や広告料などの増加に繋がるためで、少なくとも5試合が予定されています。

    第2問の答えは、 a。ラインハルト・グリンデル氏で、今年4月に就任しました。

    第3問の答えは、「近年の入場料の高騰に抗議するためです」。このままでは「貴族のスポーツ」とも言われ、入場料がフットボールよりも遥かに高いテニスのようになってしまうという意味で、テニスボールが使われました。

    第4問の答えは、b。「FIFA」シリーズの世界大会で準優勝の経験があります。ウォルフスブルクは「E-Sports」界に進出しており、アロフスSD(スポーツディレクター)は「この分野で独ブンデスリーガのリーダーになりたい」と語っています。

    第5問の答えは、「2人の選手がスローイングを試みようとしている」。もちろん、やり直しになりました。

    第6問の答えは、a。



    cの蛾の大量発生と言えば、J3の長野が思い出されます。昨年、キックオフ時間の変更を余儀なくされました。

    第7問の答えは、ドルトムント。画像は上からオジャパメン(=オバメヤン)、カストロ議長(=カストロ)、香川県(=香川真司)です(笑)。

    第8問の答えは、b。



    aに関しては、ビーレフェルトは存在しない街としてネタにされます(ビーレフェルトの陰謀)。Cは、ウィンターブレイク前、ハノファー戦後の出来事です。この一件でベン=ハティラはチームでの信用を失いフランクフルトに移籍しました。dの「クフノツアー」はヘルタのアスレチックトレーナー・クフノ氏の厳しいフィジカルトレーニングのことです。

    第9問の答えは、b。ブレーメン戦とダルムシュタット戦です。



    ヘルタのロゴは旗だけのもので、2012年のクラブ総会以降に使用されています。

    第10問の答えは、b。なお、同じインタビューでナーゲルスマン監督は「他の28歳と違って自分は呑みには興味ない」と答えています。

    ※出典=http://sz-magazin.sueddeutsche.de/texte/anzeigen/44385/Sagen-Sie-jetzt-nichts-Julian-Nagelsmann


    皆さん、何点でしたか?

    前回と同様にランクを分けると…

    0点→あえなく全滅した勇者 ※ドラゴンクエストシリーズより

    おお、回答者よ!0点とは、あわれなり!

    現実で幸運に恵まれますように…。

    5点~40点未満→初心者

    まだまだ独ブンデスリーガを学び始めたばかりのアナタ。少しずつ、知識を蓄えていきましょう。

    40点以上~60点未満→中級者

    幅広く情報を収集しているアナタ。60点近く取れたならば、上級者への扉は目の前にあります。

    60点以上~95点→上級者

    基礎から流行、ディープまで対応できるアナタは、独ブンデスリーガにどっぷりと浸かっています。大切な友人やパートナー、家族などに呆れられたり怒られたりしないように気を付けましょう。

    100点→超常現象

    まさに、フェノーメノ。もはや、鈴木良平氏のボルシアMG以外に関する怪しい知識を鼻で笑えるレベルです(やめろ)。三顧の礼で執筆者に迎え入れたいので、連絡をお願い致します。




    □ドイツの戦術家が英プレミアリーグに持ち込む「空白」という概念

    文・結城康平

    ドイツのブンデスリーガは、多くの若き指導者が先進的なアイディアを試す「フットボール界のシリコンバレー」になりつつある。先進的なアイディアを持ち、将来のビッグリーグ挑戦を目指す「名指導者の卵」達にとって、ブンデスリーガは魅力的な場所なのだろう。英プレミアリーグ(以下、プレミアリーグ)における指導者の平均年齢が53.5歳だった一方で、ブンデスリーガは45歳。ホッフェンハイムで指揮を任されるユリアン・ナーゲルスマンは、弱冠29歳だ。

    プレイヤーとしての実績は、ドイツの指導者学校では大きな価値を持たない。様々なバックグラウンドを持つ指導者達が自由に意見を交換することが、全体の利益にも繋がる。そういった価値観によって、ドイツは指導者全体の質を底上げすることを目指してきた。ドイツに現れた新世代の指導者達の一角に、ロジャー・シュミット(レバークーゼン)やユルゲン・クロップ(リバプール)がいる。

    参考→http://dearfootball.net/article/236

    本稿では、指導者ユルゲン・クロップが英プレミアリーグ(以下、プレミアリーグ)に与えた影響を考察しつつ、ドイツのフットボールが世界に与えた「変化」を語ろう。

    「攻撃と守備の境目」を意識する

    世界一の資金力を武器に、多くの指導者を魅了するリーグとなったプレミアリーグ。ペップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ)やアントニオ・コンテ(チェルシー)、ジョゼ・モウリーニョ(マンチェスター・ユナイテッド)といった名だたる指揮官が辿り着いた地は、トッププレイヤーを魅了する地にもなっている。ズラタン・イブラヒモビッチ(マンチェスター・ユナイテッド)の上陸も、驚くべきことではないだろう。世界的なブランドとなった強豪クラブは、湯水の様に移籍金を投下出来る。

    そんなプレミアリーグに昨年加入したのが、ユルゲン・クロップだ。若武者揃いのドルトムントを率いてバイエルンのペップ・グアルディオラを苦しめた後、名門リバプールに加入した彼は「世界中から注目を浴びる監督」の1人となった。

    ドイツのフットボールにおける先鋭的な思想は、ユルゲン・クロップのフットボールにも根付いた「攻守の一体化」だろう。ペップ・グアルディオラとバルセロナが目指したトータルフットボールにおける「ボール狩り」の延長線上にあり、さらに細分化・緻密化されている。

    「自分達がボールを保有する時」、と「相手がボールを保有する時」の合間にある瞬間こそ、ユルゲン・クロップを筆頭としたドイツの指導者が重要視した「空白」だ。

    攻撃と守備が入れ替わる瞬間は、相手も味方も不安定だ。攻撃側のポジションは崩れており、守備側も相手に対応することでバランスを崩している。そんな「不秩序」な状態で、どのように守備を機能させるのか。そこに、大きなポイントはあった。グアルディオラの「4秒ルール」は、思考速度の最適化によってボールを回収する仕組みだった。ボールを奪われてから4秒間、全力でプレスをかける。

    密集を作り出す細かなパス回しと、そこからの4秒ルール。ペップ・グアルディオラは攻撃と守備の「空白」を、そのように理解することで埋めていた。圧倒的なボール保持能力を持つチームにとって、「回収」は二次攻撃の重要な起点となる。

    再確認と再定義

    グアルディオラのフットボールが、「空白の重要性」を再確認させた一方、ドイツの指揮官達は「空白」を自分達で作り出すというアイディアを発見した。ボールを縦に送り込んで「相手DFが奪い切れない中途半端な状態」を作り出し、そのまま回収を狙うのである。ドルトムントでは、レバンドフスキを起点にこういった戦術が機能した。レバンドフスキにボールを当て、相手の守備陣に生まれた中途半端な「空白」を突く。準備がしっかり出来ているドルトムントは相手よりも先にセカンドボールを拾い、そのまま二次攻撃を可能にしてしまう。相手もセカンドボールを拾いに前に出てくるので、一瞬背後にスペースが生まれるのだ。

    ロジャー・シュミットが「ロングボールを有効活用し、セカンドボールを拾うことで優位に立つ」と語るのも、非常に近い概念だ。前からのプレスは、相手にとっての「空白」を作り出すからこそ機能する。相手が万全の状態で飛び込んでも、あっさりと回避されてしまうだろう。「どちらの支配下にもないボール」こそ、相手守備陣を動かす鍵なのだ。自分達が完全に保有していれば、相手も無茶はしない。「取れそう」だと思うからこそ、前に出てきてしまうのである。

    PSVやポルトでも活躍し、現在はユルゲン・クロップの右腕としてリバプールのユースチームを指導しているPep Lijndersは「パスを繋いでいて相手に奪われた瞬間、多くの選手がボールの周辺に残っている。その瞬間に激しいプレッシャーをかければ、迅速にボールを奪い返すことが出来る。だからこそ、攻撃している時に守備的な思考もしていかなければならない」と説明した。

    「攻撃している時に、守備的な思考をする」。ユルゲン・クロップのプレッシングは、この点において先鋭的だった。彼らは攻めの中で、次のボール回収を意識したポジショニングを取っている。そして、速攻を狙う相手を「中央へと誘い込んでボールを奪い取る」のだ。ボールを奪われた瞬間の切り換え速度に依存するグアルディオラの思考に比べて、システマチックな要素が加わったものとなっている。

    それは、グアルディオラにとって埋めるべき隙間であった「空白」が、ユルゲン・クロップにとって「最大の武器」となっていたからだろう。香川真司(ドルトムント)の的確で精緻な動き出しも、「空白」を作り出しているからこそ効果的なものとなった。「相手の守備が完全な状態でない」時にこそ、彼のフリーランが威力を増す。フットボールにおいて最も点が入りやすい「速攻」を生み出すために、「空白を意図的に作り出した」とも言える。

    補強との連動

    非常に試合の強度が高く、スピード感も桁違いなプレミアリーグ。その中でもリバプールは、プレッシングで狙うスペースを巧みに変えながら戦っている。レスター・シティとの試合では、相手の起点となるマフレズやヴァーディーを見事に抑え込んだ。

    参考→https://qoly.jp/2016/01/01/column-yuuki-liverpool-v-leicester-city

    「空白」への拘りは、補強からも見て取れる。ザルツブルクでロジャー・シュミットの薫陶を受けたサディオ・マネ、密集地でボールを運ぶ技術に優れたジョルジュ・ワイナルダムを獲得。攻守の間に存在するスペースでボールを奪えば、一気に単騎特攻も可能な面子を揃える。チーム全体のハードワーク意識も強く、プレシーズンでは容赦なく選手達を鍛え上げることだろう。

    ドイツのフットボール全体における、「空白」の重視は世界のフットボールに大きな影響を与えている。攻撃と守備だけではないフェーズの存在を認識することで、コントロールが不可能だと思われていた連続的な領域にまで「指揮官の手」が入り込んでいるのだ。ドイツから先進的な思想が生まれる流れは、今後も続いていきそうだ。



    以下、後編に続く

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