13人の愛好家+1人の外部有識者による、どこよりも濃い独ブンデスリーガ2015-16回顧録・下編
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13人の愛好家+1人の外部有識者による、どこよりも濃い独ブンデスリーガ2015-16回顧録・下編

2016-08-20 22:00
  • 1

【注意】

※↓の続きです※

上編
http://ch.nicovideo.jp/football-kyo-no-utage/blomaga/ar1079708

中編
http://ch.nicovideo.jp/football-kyo-no-utage/blomaga/ar1087595

※↑の続きです※



□ドイツ発・新しいサッカーの見方――ライナーツの挑戦

文・s04_bhoy

フランクフルトのライナーツは、2015-16シーズン限りでプロサッカー選手のキャリアを終える選択をした。怪我に泣かされたとはいえ、27歳という若さで引退を決意したことは、多くのブンデスリーガファンにショックを与えた。しかしライナーツはサッカーから離れたわけでなかった。むしろ蓄積された経験を元に、サッカー分析の分野で新たなチャレンジを開始したのである。

ライナーツが、レーバークーゼン時代のチームメイトであるヘーゲラーと共に開発した、Packing&Impectという新しいメトリックスが話題となっている。ユーロ2016で、第一ドイツテレビ(ARD)がこの方法を中継に採用したことで、一気に一般化した。従来のシュート数、ポゼッション率、パス成功率などでは表せない、「質」の部分を定量化する新たな方法として注目を集めている。今後、ブンデスリーガを見る上で、スタッツ表記の主流となっていく可能性も秘めているかもしれない。

計算はÜberspielte Gegner(Packing Rate)とÜberspielte Verteidiger(Impect)の2つから成り立っている。単純に言うと、Packingは対戦相手を抜き去った(越えた)回数であり、Impectはその中でも、特に相手ディフェンダーを抜いた回数になる。縦パス、ダイアゴナルパス、ドリブル、すべてがカウントの対象となる。Impectは味方へのバックパスの際に、相手ディフェンダーを通過したものは数に入れない。つまり、どれだけ効率よく攻撃につながっているかが鍵となる。従来のパス成功率からは、後ろ方向へのパスという事実は読み取れないが、Packing&Impectには加味されていることになる。

英語ではあるが、Packing社の説明している動画がわかりやすい。

https://www.youtube.com/watch?v=fk8yAQU9U1E

何をもって「抜き去った」とするか、シャルケの試合を元に見てみたい。こちらは2015-16シーズンの第34節・ホッフェンハイム対シャルケ。フンテラールから右手前にいるサネにパスが出ようとしている場面だ。



フンテラールの出したパスは、対戦相手4人を越えてサネに渡った。これでフンテラールのPacking Rateは4と換算される。パスが渡るまで、ボールが越えた全ての相手選手をカウントするからだ。

同じパスを縦方向から見てみる。2と3と4の選手はディフェンダーなため、Impectは3である。



パスを受けたサネは、手前の選手をドリブルでかわしてゴールを決めた。効果的なパスを通したフンテラールのプレーは、Packing Rateが4、Impectが3と表記される。

https://www.youtube.com/watch?v=-sEhjsrqBDg

Impect社が2016ユーロで提供した数字を、従来のスタッツとの比較で見てみよう。


上から3番目のウェールズ対スロバキアの試合がわかりやすい。右側のシュート数(Torschüsse)は11-13、ポゼッション率(Ballbesitz)は44%対56%、1対1の勝率(Zweikämpfe)は47%対53%と、全てスロバキアの数字がウェールズを上回っている。

では、左側のPacking&Impectを見てみよう。Packing Rateは200対198とほぼ同数ながら、相手ディフェンダーを抜き去ったImpectは、32対16とウェールズの方が良いことが分かる。結果は2対1でウェールズの勝利だ。

※画像ソース:https://twitter.com/impect_official/status/743054774866575360

グループステージの第2戦となったドイツ対ポーランドでは、Packing Rateが選手別に集計されている。



ドイツはクロースが94と飛びぬけて高いが、相手ディフェンダーを抜く動きでは、クロースに並んでエジルが6と高い数字を記録している。一方のポーランドは、グロシツキが合計では12ながらも、Impectが8と、ドイツにとって危険な存在だったことがわかるだろう。

※画像ソース:https://twitter.com/impect_official/status/743716148538015744

今やサッカーの数値には、多くの計算方法が紹介されているが、さらに一般化するには、複雑すぎてハードルの高いものが多い。その点においても、Packing Rateは比較的理解しやすく、結果との相関性も従来通りのスタッツより高くなっている。効果的なパスの出し手だけではなく、受ける側の効率性、パスを出すエリア、パスのタイプ、またチームのプレースタイルなど、Packingは様々な点で新たな見方をもたらすことになりそうだ。



第5章 マイクラブの轍

独ブンデスリーガの2015-16シーズンは、バイエルンが史上初の4連覇を果たしたほか、ドルトムント、レーバークーゼン、ボルシアMGがチャンピオンズリーグの出場権を獲得し、シャルケ、マインツ、ヘルタ・ベルリンはヨーロッパリーグへの切符を掴んだ。8位~15位は残留に安堵し、フランクフルトは2部の3位とのプレーオフを勝ち抜いて残留。シュツットガルトとハノーファーは奮闘むなしく降格した。各クラブは、開幕前の目標を達成できたのか。執筆者達が総括する。




■集大成に相応しい、クラブ史上2番目の好成績

文・暁空也



~マインツの成績~

6位 勝ち点50 得点46 失点42


集大成だった。2015年2月17日にマーティン・シュミットが監督に就いてから、約半年を経て開幕した2016-16シーズン。独ブンデスリーガで最も走るチームとなったマインツは、強烈なプレスと鋭い速攻で白星を積み上げ、6位でヨーロッパリーグの出場権を掴んだ。磨き上げてきた戦術が機能し、クリスティアン・ハイデルSD(スポーツディレクター)が連れて来た武藤嘉紀やジョン・コルドバら新顔が輝き、ゲームキャプテンのユリアン・バウムガルトリンガーや守護神のロリス・カリウスといった既存の選手達も躍動。岡崎慎司やヨハネス・ガイスを失い、再編を強いられた「Die Nullfünfer」(ディー・ヌルフュンファー、マインツの愛称)だが、新旧の戦力が相乗効果を発揮し、クラブ史上2番目の好成績で駆け抜けた。





前半戦の布陣


後半戦の布陣

補強と戦術の相乗

補強と戦術がガッチリと噛み合った1年間だった。





補強では、ニーダーレヒナーこそフィットせずに冬にフライブルクへ期限付き移籍させたが、武藤は前半戦だけで7得点を挙げ、コルドバも独ブンデスリーガのリズムになじんだ後半戦は卓越したスピードとパワーを武器に5得点。武藤やコルドバとともに夏に加入したバログンやビュスマン、ラッツァもウインターブレイクが明けると定位置を掴み、冬に獲得したドナーティやオニシウォも徐々にピッチに立つ時間を増やした。

怪我で長期の離脱を余儀なくされ、18試合の出場にとどまったフライも含め、全員が走力に長けており、シュミット監督が志向するスタイルとの親和性は高い。監督が求める人材を揃えるハイデルSDの慧眼が、補強を完璧に近付けた。

最終ラインを高く上げ、全体をコンパクトに保って敵陣からボールを追い、組織的に囲い込んで奪い取り、縦に速く運んで攻め切る戦術は、耐久性と精度が上昇。互角以上の相手には、後方から丁寧にパスを繋ぐポゼッションスタイルも披露した。

特に今季は、“幅”が広がった印象だ。その象徴が、第25節のバイエルン戦。シュミット監督は通常の4-2-3-1でなく、最後尾に高さと強さに優れるバログン、ブンガート、ハックを並べ、両サイドバックも低い位置に構える5バック、トップ下タイプのマリを最前線に置く「ゼロトップ」を採用した。



3人のセンターバックと2人のセントラルミッドフィルダーで中央を閉じ、バイエルンのストロンポイントである両翼(この試合は右がコマン、左がリベリだった)は2人のサイドバックを3人のセンターバックと2人のセントラルミッドフィルダーがフォローして封じ込める狙いだ。

初めての5バックだったが、マリがバイエルンのビルドアップにプレッシャーを与え続け、ハイロとクレメンスも守備に奔走すると、前半26分にハイロがクロスに合わせて先制。後半19分にロッベンのミドルシュートで追い付かれたが、同41分にコルドバがペナルティエリア外から決めて2-1で勝利した。

依然として、1トップや両サイドアタッカーを抑え込まれると攻め手がなくなり、タイトなプレスを受ける側に回ると脆さを露呈する。格上のバイエルンやレーバークーゼン、ボルシアMG、シャルケから白星を挙げる一方で、昇格組のインゴルシュタットには“肉弾戦”に持ち込まれ、ホームでもアウェイでも屈した。しかし、徐々に“引き出し”は増えつつあり、いずれは克服できるはずだ。

既存の選手達の成長

補強が当たり、戦術面での伸び代を示すだけでなく、カリウスやバウムガルトリンガー、マリ、ハイロ、クレメンス、デ・ブラシスら既存の選手達の成長も目覚ましかった。

カリウスは傑出した反応の速さで数え切れないほどの決定的なシュートを防ぎ、俊敏なフットワークと精確な予測でディフェンスラインの背後をケア。巧みなフィードで攻撃も支援した。

バウムガルトリンガーは典型的な「ダイナモ」で、昨季までは90分間をタフに戦い抜ける反面、技術の凡庸さも目立ったが、今季は一変。パスやドリブル、ゴールで何度となく魅せた。今季のMVPを選ぶとすれば、彼だろう。

マリは新たにまとった「10番」が眠れる力を開花させたのか、テクニシャンに特有の持ち過ぎや判断の遅れといった悪癖は鳴りを潜め、自らも周りも生きるプレーを習得。34試合で11得点4アシストの“大暴れ”だった。

ハイロ、クレメンス、デ・ブラシスらは、サイドからの攻撃を軸とするマインツにとって生命線。ハイロが31試合で7得点5アシスト、クレメンスが28試合で5得点3アシスト、デ・ブラシスが26試合で4得点4アシストと、彼らが目に見える数字を残したのも、上位への足掛かりとなった。

待ち受ける過渡期

昨季から5つも順位を上げたマインツだが、待ち受けるのは黄金期でなく過渡期だ。24年間に亘りマインツを支えてきたハイデルSDが「もう一度、何か違うことがしたい」と語り、シャルケに籍を移した。多くの「ダイヤの原石」を発掘し、ユルゲン・クロップ(現リバプール監督)やトーマス・トゥヘル(現ドルトムント)の才気を見抜いた慧眼の持ち主は、もういない。

後任にはブレーメンのルーヴェン・シュレーダーSDを招聘したが、すでにカリウスがリバプールを、バウムガルトリンガーがレーバークーゼンを新天地に選ぶなど、前途は多難だ。ヨーロッパリーグとの“二足の草鞋”を履きこなすためには選手の数も質も足りず、シュレーダーSDには重責がのしかかる。



重責がのしかかるシュレーダーSD(マインツの公式サイトより)

15-16シーズンを、飛躍への分岐点にできるか。マインツは16-17シーズン、正念場を迎える。


昨シーズンの躍進から一転、不安定なシーズンに

文・脚魂


~ウォルフスブルクの成績~

8位 勝ち点45 得点47 失点49


昨シーズンのウォルフスブルクはリーグ戦2位、クラブ史上初のDFBポカール優勝、UEFAヨーロッパリーグはベスト8という上々の成績。今シーズンは2009-10シーズン以来のUEFAチャンピオンズリーグ出場、DFBポカール連覇、そして念願の2度目のマイスターシャーレ獲得という期待が高まっていた。

その期待は、開幕前に行われたDFLスーパーカップでPK戦の末にバイエルンを下したことにより――大げさではあるが――最高潮に達していた。


スーパーカップを制し、優勝カップを掲げるナルド

しかし、リーグ戦の開幕直後に昨シーズンの躍進の原動力だったケビン・デブロイネがマンチェスター・シティに移籍。代役にシャルケからドイツ代表MFのユリアン・ドラクスラーを獲得し、さらにバイエルンからCBのダンテを獲得した。

第5節終了時点で3勝2分けの3位で迎えたアウェイのバイエルン戦。途中出場のレバンドフスキひとりに僅か9分間で5失点を許し、当然ながらウォルフスブルクは敗退してしまう。

※動画・"High Five! Lewandowski's Remarkable Record Show"

https://www.youtube.com/watch?v=bm_KXRjJIF8

この敗戦を機に、ウォルフスブルクの国内でのパフォーマンスが低下していくのである。第9~第11節の3連勝とラスト2節の連勝を除けば不安定な戦いに終始。第15節のホーム、ドルトムント戦ではフォルクスワーゲン・アレーナでの無敗記録が29でストップした。

怪我人の多さも目立った。GKディエゴ・べナーリオ、DFリカルド・ロドリゲス、DFカルロス・アスクエス、MFルイス・グスタボ、ドラクスラー、FWバス・ドスト…。中でもドストの離脱は痛かった、彼に次ぐ立場のベントナーはリーグ戦開幕戦後の時期は期待が持てたが、結局素行不良は治らず戦力外に。


怪我が治り、ランニングするドスト(左から2番目)

※フォルクスワーゲンが親会社のクラブに所属しながらメルセデス・ベンツとの2ショット画像をインスタグラムにUPするベントナー↓

https://www.instagram.com/p/BB3Kelmg_re/?taken-by=bendtner3

対象的だったのはチャンピオンズリーグでの活躍。グループステージを首位で通過。レアル・マドリーとの決勝トーナメント準々決勝第1戦では2-0で勝利し、欧州のサッカーファンにサプライズを提供した。

リーグ戦は8位で終了。昨シーズンからの課題であるアウェーゲームでの勝率の悪さは克服出来なかった。欧州カップ戦の出場権も得られないクラブは主力選手の流出を阻止するという苦行に挑む。


■終盤に失速も、成長を感じた素晴らしいシーズン

文・siebenendenweg


~ヘルタ・ベルリンの成績~

7位 勝ち点50 得点42 失点42


シーズン前、ヘルタにとって嵐のような航海となると予想したが、チャンピオンズリーグ出場という夢は夢のまま終わってしまったものの、15-16シーズンは14勝8分け12敗、勝ち点50での7位。これは、ヘルタにとって上出来のシーズンだったと言える。まず、ヘルタの1ファンとして選手、スタッフには感謝したい。

前半戦については、ウィンターブレイクの総括を見ていただきたいと思うが、ベルリンのサッカー紙FuWo(Fußball-Woche)の見出し「ヘルタ、もはや止められない」の通りで、快進撃を見せ3位で折り返すという素晴らしい前半戦だった。



ざっと、後半戦を振り返ろうと思う。後半戦のスタートは、ゴールが遠かったアウクスブルク戦、逆にリードしながらあっさり追いつかれたブレーメン戦という180度違う形での引き分け、その次のドルトムント戦では強敵相手に臆することなく戦ったが、スコアレスドローと3試合3引き分けというスタートとなった。

続くリーグ戦の合間に行われたDFBポカール準々決勝、ハイデンハイム戦は、2部チームを相手に先制されるも、きっちり3:2で勝利したが、その週末に行われたシュトゥットガルト戦は、カップ戦から中2日。疲労もあってか精彩を欠き、ミスも目立ち、残留に必死な相手に圧倒され敗れてしまった。

少し嫌な負け方だったが、ここで一気に崩れることはなく、逆にここからの6試合は、苦手とするシャルケに勝つなど、4勝1分け1敗と結果を残しチャンピオンズリーグ出場圏内に踏みとどまっていた。




ところが、流れが一気に悪くなったのは、敵地でのボルシアMG戦だった。前半戦での対戦では完敗した相手だったが、ヘルタはまたもや仔馬達に完膚なきまでに翻弄され、0-5と痛すぎる敗戦を喫してしまった。その次のホームでのハノーファー戦は、降格寸前の相手によもやの2-2と引き分けてしまう。

その後は、久々に勝ち残っていたDFBポカールの準決勝でドルトムントに0-3と敗れ、リーグ戦も最後まで勝つことなくシーズンを終えた。第33節を終えた時点でのFuWoの見出しは、「終わりは、たった7位?」だったが、最終節のマインツ戦もゴールが遠く、ヨーロッパリーグ予選出場権となる7位でシーズンが終わった。




シーズン終盤、勝てずに終わり、CL出場はおろかELストレートインすら逃したことは確かに残念だった。ただ、降格におびえた昨シーズンを考えると、ダルダイ監督の2年目は成長を本当に感じた素晴らしいシーズンだった(ここ数シーズン続く後半戦の成績が悪くなることは、残念ながら続いてしまったが…)。

また、何よりも毎年早々に敗退していたDFBポカールで準決勝まで勝ち残ったことは嬉しかった。決勝の夢はドルトムントの前に儚く散ったが、準決勝のチケットの一般販売分は僅か10秒で完売し、地元放送局のRBB(Rundfunk Berlin-Brandenburg、ベルリン=ブランデンブルク放送)も“Traum vom Finale“(夢の決勝)というドキュメンタリー映画を放送するなど、本当に盛り上がった。決勝がベルリン開催の間に一度でも良いのでヘルタが決勝に進むことを願っている。

話がシーズンを総括した形になったが、今シーズンをデータで簡単に過去2シーズンと比較し見てみようと思う。



データで顕著なのは、パス数とパス成功率が上昇したことだ。ポゼッションし、短いパスワークから相手を崩すシーンは増え、攻撃面での進歩は見られた。だが、最終ラインからの組み立てに関しては、出しどころに困り、取られ結果ピンチを招く場面が後半戦は多々見られ、工夫や改善が必要だ。また、チャンスの数(=シュート数)は、リーグ最少だった。これは、ある意味効率的に得点しているともいえるが、最後のところの精度を上がれば、当然チャンスの回数は増えるはずだ。



その他、データ上で気になったのは、チームのスプリント回数の少なさだ。ずっとスピーディなサイドプレーヤーが必要であることは監督自身が述べていたが、そもそもスピードタイプの選手が原口、ヴァイザーと限られている。ここはオフシーズンのプレーツ氏の腕の見せ所だ(現在、アウクスブルクのエスヴァインの獲得に動いているようだが…)。

最後に、個人的に気になったのは、今シーズン通してダルダイ監督の起用策や交代策がほぼ同じだったことだ。例えば、ベーレンス、シュトッカー、バウムヨハンあたりはもう少し出場機会や出場時間を与えても良かったのではないかと思う。もちろん練習での出来やコンディションが関係するので、一概には言えない部分もあるが。


■内外の逆風に苦しめられたブライテンライター

文・s04_bhoy




~シャルケの成績~

5位 勝ち点52 得点51 失点49


ブライテンライターとシャルケは不思議な縁がある。2000-2001シーズン最終節、先に試合を終え、優勝をほぼ手中にしたシャルケは、4分後にバイエルンの逆転優勝でどん底へ落とされた。その試合、ブライテンライターは対戦相手のウンターハヒンクでゴールを決めている。敗戦し、降格したにもかかわらず、シャルケサポーターの悲劇の前には、それすらも小さなことのように感じたと語っている。

一昨シーズンのシャルケ・ホーム最終戦。当時の監督だったディ・マッテオは、試合後、観客から凄まじいブーイングを突きつけられた。奇しくもその試合で、対戦チームの監督をしていたブライテンライターには、大きな拍手が送られた。その時、自分はここで監督をするべきだと、ブライテンライターが確信したのも理解できないことではない。

シーズン終了後に解任されたディ・マッテオの後任として、ブライテンライターは候補の3番手ながら、監督の座を手にした。就任にあたりマネージャーのヘルトは、順位のノルマは課さないと明言した。しかし、テーニース会長はこの選択を100%支持していなかったと、一部の報道関係者がリークしている。

シーズン開幕から前半折り返しまでは、予想以上に素晴らしい結果となった。第7節終了時点で、勝ち点16、首位から5ポイント差の3位というのは、この20年(勝ち点3方式になった1995-96シーズン以降)で最高のスタートだった。

にもかかわらず、ブライテンライターを取り巻く環境は厳しかった。シャルケに彼を連れてきたヘルトは、シーズン限りでクラブを去ることが決まり、後任としてマインツのハイデルの名前が取りざたされた。

後半戦が始まった1月には、独「スカイ」が、匿名のクラブ関係者の取材を元に、監督の資質について疑問を投げかける番組を放送している。放送は戦術や練習内容への疑問に加え、監督への人格批判も含んでいた。フェアマンを筆頭に、選手は監督を支持し、報道そのものはすぐに霧消したが、この時の内容が最後まで足を引っ張ったことは否めない。

独「ビルト」とスカイはその後もネガティブキャンペーンを繰り返し、第30節バイエルン戦の試合直前には、スカイのレポーターが、その時点では憶測に過ぎなかった後任監督決定について、ブライテンライターにカメラの前でコメントを迫っている。

数字だけを見ると前半は8勝6敗3分。後半は7勝6敗4分。前後半どちらも負けた相手はバイエルンのみである。ヨーロッパリーグも無敗で決勝トーナメントに進出した。ベストとは言わないまでも、悪い結果ではない。にもかかわらず、クラブとメディアからはここ数年で最も酷い扱いを受けた。

守備では、多くの解決できない問題が山積していたのは事実だ。ナスタシッチの怪我による早期離脱、ヘーベデス不在の間は、マティプとノイシュテッターがセンターバックに起用された。ガイスが二人の間に下りてくる形で、当初はビルドアップの起点になることも期待されたが、外へのロングボールが多く、想定したほどには機能しなかった。

マティプの安定感はともかく、コンビを組むノイシュテッターは、シーズンが深まるにつれ、裏と表の両方に一人で対応しなければならない局面を、何度も利用されるようになった。連動して守りたいサイドバックのカイサラは、守備に問題があるだけでなく、不用意なパスで決定的な場面を作られていた。

中盤や前からのプレスは、試合の前半には見られたが、途中から消滅することが多かった。シーズンを通して、ナスタシッチ、ヘーベデス、内田の三人が起用できなかったことが、チームに与えた影響は大きい。

トップレベルのクラブで監督を務めるには、ブライテンライターに経験不足の部分があったことは、確かに否めない。パーダーボルンでは、1試合を通じて、選手がゲームプランを忠実に遂行したが、シャルケではうまくいく時とそうでない時の差が大きかった。

象徴的なのは第31節、レーバークーゼンとの試合だ。前半はビルドアップとプレスが機能したが、後半に入ると、レーバークーゼンの修正に対応できず、失点を重ねた。シャルケは1試合の中で、また、シーズンを通じて波のある試合を繰り返したが、これが指導力の欠如なのか、メンタルも含めた選手の資質と傾向なのか、このチームを長年見ていても判断のつきかねるところがある。

攻撃においては、縦に素早くボールを動かした時は見事なゴールにつながったが、相手に守備を固められると、崩しのパターンは正確さを欠いた。それでも、環境のサポートがあれば、最終順位がチャンピオンズリーグに届いてもおかしくはなかった。マックス・マイヤーやゴレツカ、サネのような若手の能力を引き出した功績も大きい。ドルトムント戦やバイエルン戦のように、フォーメーションを替えて、選手に役割を徹底させ、チーム戦術の土台も導入した。後を継ぐワインツィアルにとっては有益な下地となるだろう。


■限られた戦力で、快挙と呼べる残留劇

文・昴



~ダルムシュタットの成績~

14位 勝ち点38 得点38 失点53


特定の応援クラブを持たない中、今シーズン追いかけたのはダルムシュタット。降格の最有力候補と見られていたが、開幕前の補強を見て嵌まれば残留出来るかもしれないと思ったのがきっかけ。資質的には十分だが、何らかの形で居場所を失った選手達の逆襲に期待した。

崖っぷちの選手達、そしてもう一つの昇格組であるインゴルシュタットと違い潤沢な資金があるわけでもないチーム。バックスタンドまで立ち見席が広がる牧歌的なスタジアム。しかし彼等はそこで団結する。ゴール前に青い壁を築き、好機と見るやエースがボールを収め数枚が飛び込んでいく。

序盤のサッカーは、まさにバスを停めていた。押し込まれ、山のように飛んでくるシュートを青い壁が跳ね返し続けた。

第5節でバイエルンに敗れるまで無敗。特に4節のレーバークーゼン戦(1-0で勝利)は、まさにこの時期のダルムシュタットの意図が嵌まった試合だった。

しかし、第10節を過ぎた頃には対策が進んできた。崩す力が低く、先制を許して相手に引かれると、打つ手がなくなった。そこからシュスターは柔軟に少しずつ戦い方を変化させていく。

前にかける人数が明らかにシーズン序盤より増えていった。もちろん、裏目に出た試合もある。前半のベストゲームを演じたレーバークーゼンとのリターンマッチでは、先制したもののセットプレーで追い付かれた後、前に出るリスクを犯し、結果的にカウンターに沈んだ。

ただ、この変化はポジティブなものだと自分は捉えている。リスクを捨てれば勝ち点1は持ち帰ったかもしれないが、この姿勢の変化は確実にそれ以外での勝ち点3を生みだした。崩して得点するシーンが増えていき、引かれても得点を奪えるチームへと変貌を遂げた。

折り返し後、スコアレスで終わったのは3試合のみだ(前半は6試合)。

春先に勝ち切れない時期が続いたものの、第33節のヘルタ戦での逆転勝ちによって残留を決めた。限られた戦力を、団結と監督の采配によって十二分に使い切ったチームは、まさに快挙と呼べる結果を得た。

正直、来シーズンは厳しい。ようやく出場機会を得て才能に見合ったプレーを見せた選手達、そして監督も新天地へと散らばった。それでも確かに今季、彼等はここで団結し、居場所を作り上げた。


■新たな時代への航海へ繰り出した1年

文・月峰総一朗




~ドルトムントの成績~

2位 勝ち点78 得点82 失点34


ユルゲン・クロップ監督が築いた偉大な時代が終わりを迎え、新たな時代への航海へ繰り出した1年であった。全体的に見れば成功と言って良いだろう。誰にとってもクロップ監督の後任は困難なタスクであるが、トーマス・トゥヘル監督は就任後、細心の注意を払ってチームをチューニング。再びドルトムントとファンは勝利に酔いしれた。

前半戦は「ファンタスティック4」(オバメヤン、ミキタリヤン、ロイス、香川)が躍動。色鮮やかで美しいポゼッションフットボールを披露し、チームは圧倒的な破壊力で得点を量産していった。しかしシーズン後半、トゥヘル監督はリアリスティックなフットボールへと舵を切り、そのプレースタイルと選手起用は賛否両論だったことは記憶に新しい。ただ、結果として格下からの取りこぼしは大幅に減り、2位ながらもドルトムントは歴代最高ポイントを稼いでいる。

率直に言えば後半戦のドルトムントは面白くはなかったが、毎試合興味深い選手起用であったし、トゥヘル監督の「実験」を自分なりに解釈しようと試みた。

シーズンが始まる前にルールナハリテン紙の番記者、マティアス・デルシュ記者は次のように述べている。

「クラブにとってトゥヘルは論理的な選択であるにもかかわらず、その選択に『真実の愛』は存在しない。プロフェッショナルな関係は冷めたくもあるが、純粋に分析的見方を持つ機会でもある」

前半戦の戦い方は確かに見ているだけで興奮するようなフットボールであったが、その一方、守備面で脆さを感じていたのも事実だった。必要のない失点でポイントを落とした試合も多く、リードしている際のリスクマネージメントは問題になっていた。

加えて前半戦の終わり際には、すでにドルトムントのやり方は研究されており、簡単に勝利を掴める状況ではなかった。特に12月のケルン戦では攻撃陣が沈黙。ケルンは完璧にプランを遂行し、ドルトムントから3ポイントを奪い取っている。

後半戦で良かったのは、やはりローテーションが一定の効果を得たということである。ヨーロッパリーグから中2日でリーグ戦を行うため、選手の入れ替えが必要であったが、トゥヘル監督は選手を半分以上入れ替え、相手チームによって布陣や戦術を変更。何よりもクロップ時代にはなかった「健全な競争」がチームにもたらされた。途中起用やオバメヤンの代役という難しい立場に置かれたラモスが結果を残し、一度はベンチ外も味わった香川真司もシーズンの最終盤にはきっちりと結果を残してチームのアクセルを踏み続けた。

ローテーションの中、17歳のプリシッチ、パスラックがブンデスリーガデビューを果たした。特にプリシッチは最大のサプライズであり、デビュー戦ではワンタッチ目から相手選手2人を抜き去り鮮烈な印象を与えた。高速ドリブル、そして度胸の良さ。粗削りであるがチームに新鮮な風を吹き込んだ。

ユルゲン・クロップとの再会も大きなトピックスだろう。クラブの英雄であり、ドルトムント復活の象徴といえる存在であるが、あまりにも再会が早過ぎた。ドルトムントは歓迎ムードであったが、ヴァッケ社長はファンの動きに対し「そのような雰囲気では駄目だ」と釘を刺していた。

悪い予感は的中。アンフィールドで早々とリードを奪ったドルトムントであったが、ロスタイムにリバプールに逆転負けを喫している。その1つ前のシャルケとの「レヴィア・ダービー」では、ダービーにもかかわらず主力を温存。控え選手中心に戦っていたため、トゥヘル監督への批判は最高潮へ達した。結果が出なかった以上、批判は妥当なものである。

冷静に考えれば、大一番に向けて選手を入れ替えることは正しい。しかし絶対勝利が義務であるレヴィア・ダービーに”ドルトムントB”と皮肉られたチームを起用。試合は引き分けに終わったが、ファンの感情は簡単に割り切れるものではない。トゥヘル監督は冷静な判断を下していったが、結果的にそれは全て裏目に出てしまった。もし全てに勝利していれば、監督のマネージメントは大いに賞賛されていただろう。紙一重ですべてが入れ替わってしまう。

DFBポカール決勝でも、トゥヘル監督の選手起用はいくつかの議論を生んだ。圧倒的な強さを誇るバイエルンに対して、フンメルス、ソクラティス、ベンダーの3バックを起用。ポゼッションを放棄し、一撃必殺の高速カウンター狙いへと舵を切った。「守備的だ」と批判するのは簡単だろう。しかし相手は、ドルトムントが歴代最高ポイントを積み重ねても届かなかったバイエルンである。極めて論理的な選択であり、結果として120分間を無失点に抑えている。

PKでドルトムントは敗北を喫したが、死闘の果ての終焉である。チームは美しい戦いをしたわけではないが、情熱的で魂が揺さぶられるよう試合だった。シーズンを締めくくる試合に相応しかったと思っている。

またしてもタイトルを逃したドルトムントであるが、十分良いシーズンであったし、忘れてはならないのは、まだトゥヘル体制の1年目であること。今後のドルトムント、そしてトーマス・トゥヘル監督の成長が楽しみである。


「Match of the Season」

2015年12月5日 ブンデスリーガ第15節

ウォルフスブルク-ドルトムント(1-2)

ドルトムントの偉大なチームスピリット。まるで映画のような劇的なクライマックスに叫んだ方も多かったに違いない。先制したものの、後半にウォルフスブルクの猛攻で窮地に立たされると、試合終了寸前のロスタイムに痛恨のPK献上。このまま試合はドローで終わると誰もが思っていただろう。

その僅か118秒後に「ジョーカー」、香川真司の劇的ゴールで勝利。一瞬で地獄から天国へドルトムントは上り詰めた。フットボールの全ての魅力が凝縮された試合である。

https://twitter.com/ballball_JP/status/673265253786910720?ref_src=twsrc%5Etfw


「New Season resolutions should be」

・多数の新加入選手を、いち早くチームに統合しなければならない。

・ミキタリヤン、フンメルス、ギュンドアンとキープレーヤーの穴をどう埋めていくのか、プレースタイルなど新たな解決案の模索。

・チャンピオンズリーグという大きな舞台での飛躍。

・リーグ戦はまずは2位を固め、背後からバイエルンにプレッシャーを掛け続けること。

・香川真司はチームのリーダーの1人として、若手選手の先頭に立って引っ張っていかなくてはならない。

・若手選手たちは貪欲に、トゥヘル監督の下でさらなるレベルアップを。

・トゥヘル監督自身にもさらなる成長を求める。チームマネージメントの向上、対外的なイメージの構築など。


■一貫性が育んだ戦術的柔軟性

文・とんとん




~ボルシアMGの成績~

4位 勝ち点55 得点67 失点50


膨大な文量となってしまうため前半戦総括は前回記したものをご覧いただくとして、今回は主に後半戦を軸に今季のボルシアを振り返ろうと思う。

リーグ戦:4位 17勝4分13敗 67得点50失点 勝ち点55

DFBポカール:3回戦敗退

CL:GL4位敗退 1勝2分3敗8得点12失点   

ブロック守備の導入に挑戦

シューベルトは「戦術的柔軟性」をモットーにダフートの起用、バイエルン戦で初めて見せた3バックなど、様々な試みを行うタイプの監督である。そんな彼が冬季キャンプから試みていたのが4+4の守備ブロックの形成である。前半戦はどの相手に対しても前からプレッシャーをかける守備方法を採っていた。そのため、相手の特徴に合わせて柔軟に対応できるよう、撤退のオプションを増やそうと考えたのだ。

しかし、この試みで臨んだ6戦は2勝のみと失敗に終わった。形ばかりの守備ブロックは奪いどころを定めることができず、選手の積極性を押し殺すだけの結果となった。

その後は3バックと4バックを併用しながらバランスをとるという方針に切り替えた。導入が失敗に終わり後半も低調なスタートとなった。しかし、きちんと課題と今後を見据えて導入に挑戦し、チームの現状と特性を考慮し方針切り替えの判断を下したシューベルトに、不満のあるファンは少ないはずだ。

アウェイでの脆さ



今季のボルシアMGはアウェイ戦に弱かった。後半戦のアウェイでの戦績は1勝2分6敗。通年でも4勝3分10敗であり、リーグ12位である。

この原因は、チームのスタイルに関連しているように感じる。今季のボルシアMGはショートカウンターと最終ラインから始まる遅攻を武器に戦ってきた。しかし、ホームではアグレッシブに前からプレスをかけるチームが多い。そのためボルシアとしては、押し込まれた時点で早くもプランが狂う。さらにプレスを受けると無理に繋いでピンチを招くシーンが多々発生した。また前線にテクニカルな選手を置く弊害として、プレスを空転させるためのロングボールを拾う術を確保できていなかった。

これらの原因が相まって、アウェイ戦は内容・結果ともボロボロ。しかし改善策として終盤起用されたハーンとトラオレという身体能力に長けたコンビには希望が持てそうであった。

課題は練度




今季は開幕5連敗によるファブレの辞任、負傷者の続出など、苦しいシーズンであった。年を跨ぐことなくDFBポカールとCLでの敗退が決定し、リーグに集中できる後半戦はアウェイでの脆さを露呈。それでも4位に食い込むことができたのだから上出来だろう。

今季、この順位につけることができた要因はやはり「戦術的柔軟性」だろう。これはシューベルトのモットーであるが、選手一人ひとりのポリバレント性も高く、エベールSD(スポーツディレクター)もそんな選手を好んで獲得する。フロント・監督・選手と、クラブ全体の一貫性が導いた結果だろう。功労者であるファブレが辞任してもチームがバラバラにならなかったのも、皆がなすべきことを理解し実行できたからであるはずだ。

課題として挙げられるのは「練度」だ。シューベルトは指揮をとり始めたばかり(第6節から)。軌道修正こそうまくいったものの、3バック・4バックともに細部を詰めるまでには至っていない。逆に細部を詰めていないからこそ3バック・4バックを併用して欠点を覆い隠していたとも言える。この部分を改善できればさらに戦い方の幅を広げることができるだろう。

「今季での退団が決定した選手」





ブラウヴェルス  ➔ローダJC

シュトランツル  ➔引退

ノルトヴェイト  ➔ウエストハム

フルゴタ     ➔フランクフルト

ヒンテレッガー  ➔ザルツブルク(ローンバック)

ジャカ      ➔アーセナル

どの選手もボルシアにとって非常に貴重な存在であった。感謝と共に、次なる舞台での活躍に期待!

「今季の選手を採点する」




独「キッカー」の採点方式に倣って(100%筆者の主観)。出場時間200分以下の選手は除く。

GK

ゾマー 3

失点こそ嵩んだがミスはほとんどなく、信頼のおける足元の技術で攻撃の出発点に。

DF

ブラウウェルス 4

出場機会が少なかったものの高さ対策のワンポイントとして重宝。

ドミンゲス 3.5

背中の怪我で長期離脱も、スピードを生かした守備で貢献。

クリステンセン 2

的確な判断力と巧みな持ち出しにより攻守両面でチームを支えた。最も安定していた選手。

ノルトヴェイト 2.5

スピードを活かした守備でピンチの芽を摘む。ミドルシュートも冴え今季4得点。

ヤンチュケ 4.5

怪我もありSB、CBどちらで出ても低調なパフォーマンス。

ヒンテレッガー 4

鋭い縦パスを見せることもあったが冬季加入という事もありチームにフィットしきれず。

エルヴェディ 3.5

球際に弱さがあるものの足下の技術が徐々に向上し、終盤は安定したパフォーマンス。

ヴェント 3

絶妙なタイミングでの攻撃参加で持ち味を発揮。前半戦はチーム最優秀選手に選ばれた。

コルプ 3.5

前半戦は攻撃面で開花。後半戦は出場機会が激減したが原因は不明。

MF

M.シュルツ 4

派手さはないがリスク管理が上手く、バランサーとして淡々と、堅実なプレーを見せた。

ジャカ 2.5

体を張った守備と正確無比な配球でチームの心臓としての役割を果たした。

ダフート 2.5

豊富な運動量で至る所に顔を出し、巧みな足元のスキルでパスの流れを作り続けた。

トラオレ 3

アジリティを活かし独力で打開できる貴重な存在。WBとしての新境地も開拓。

ジョンソン 2.5

黒子役からスコアラーまで、左右攻守を幅広くこなしたチームの柔軟性のキーマン。

ヘアマン 4

怪我から復帰したがキレはまだ戻らず。しかしWBの位置でも攻撃性を発揮。

ホフマン 4

出場機会に恵まれなかったが、出場した際はリンクマンとしての輝きを見せた。

FW

アザール 3.5

徐々にプレーの質が向上。球離れが良くなり連携して崩すシーンが増えた。

ハーン 3

フィジカルに長けた貴重な存在。連携に難はあるが得点力が高くラスト4戦で6ゴール。

ドルミッチ 5

戦術理解度に乏しく、以前のキレも見られず全くフィットしなかった。

ラファエル 2.5

13G10A。狭いエリアでもテクニックで打開し、決定的な仕事を幾度となくこなした。

シュティンドル 2.5

とにかく動いてボールを呼び込むリンクマンとしての働きはチームの大きな助けに。


■フロントの安易な人選が招いた低迷と来季への期待感

文・なかがわ



~フランクフルトの成績~

16位 勝ち点36 得点34 失点52


今シーズン低迷したそもそもの原因はフロント。内部闘争の末にトーマス・シャーフを辞任に追い込み、後任に選んだのは2シーズン前まで指揮を執っていたアルミン・フェー。「クラブをよく知る人物だから―」みたいなのが理由だったと思うが、あまりにも安易な人選だった。

シーズンを振り返ると、チームはプレシーズンマッチや序盤では悪くない戦いを見せていた。しかし、徐々に成績が降下。ポイントの1つになったのが、昨季の得点王でキャプテンのA.マイヤーの復帰ではないかと個人的には思う。

復帰以前は新戦力のカスタイニョスとセフェロビッチが2トップを組む4-4-2の形で戦っていたが、「神様」とも呼ばれるキャプテンの復帰に伴い彼をトップ下に配置する4-3-1-2にシステムを変更。復帰初戦の第4節・ケルン戦こそ6-2と大勝したが、バランスを無視したそのシステムでチームはリズムを崩す。

「迷将」と謳われる指揮官に修正能力は備わっておらず、冬に5人もの新戦力を加えるも一向に事態は改善すること無く9試合を残してクラブは解任を決断。新たに指揮を託したのは、これまでクラブチームを率いた経験が無い前クロアチア代表監督のニコ・コバチ。厳しい残留争いを戦い抜く中でクラブチームを率いたことがない監督をチョイスするいわば博打だ。言葉が悪いが、私は「このクラブ、ついに頭がおかしくなったな」、「今シーズン、もう捨てたな」と、その時は正直そう思った。

ところが青年監督の下、チームは9試合で4勝5敗、勝ち点12を積み上げ、16位に滑り込む。2部3位との入れ替え戦ではニュルンベルクを退け、見事1部に残留。ニコ・コバチは、トム・クルーズばりのミッション:インポッシブルを演じてみせた。

コバチが最も手を付けたのは守備の部分だろう。それまで25試合40失点(1試合平均1.6失点)だったのが、9試合で12失点(1試合平均1.33失点)と改善された。攻撃に関してはそこまでテコ入れする時間や余裕が無かったのか、個人の能力に任せ、とりあえずは守備を第一に失点を防いでセットプレーなどのワンチャンスを生かす。そんな形の試合が多かったように思う。

フェーの解任に話を戻すと、今シーズンはホームで本当に勝てず、それがサポーターの不信感を募らせ解任劇に拍車を掛けたと言える。ただ、彼を擁護できる点もいくつかある。1つは怪我人。エースのA.マイヤーや中盤の軸として期待されたライナルツも怪我で離脱を繰り返し、納得いくメンバーで臨めた試合は少なかった。そして、2点目は補強。シドニー・サムやS.ユンクなど自身が要望した補強は叶わず、乾貴士の穴埋めで加入してきたのもガチノビッチと、フロント主導で獲得した選手。フロントからの協力は得られなかった。

こう見ると、選手よりもフロントや監督が悪い意味で目立つ1年だったが、その中で1部残留を果たせたことは非常に大きい。来シーズン、真っ新(さら)な状態からコバチがどのようなチームを作り上げるのか非常に楽しみである。それと同時に大きな期待も。フランクフルトは大きな転換点を迎える。


■苦戦を招いた3つの要因

文・Fusshult




~レーバークーゼンの成績~

3位 勝ち点60 得点56 失点40


前半戦を5位で折り返したレーバークーゼンだったが、最終的にはシーズンを3位で終えることが出来た。これは僥倖というほか無い結果だったと言える。

以下が今シーズンのレーバークーゼンの成績である。




成績的には、昨シーズンとほとんど差が無かった(2014-15シーズンは勝点61で4位)。それを考えると、今シーズンの結果は3位以降の集団が自滅した中で、なんとか立ち位置を修正できたことで滑り込んだと言って良いだろう。

というのも、終盤の9試合を8勝1敗という驚異的なラストスパートに成功した結果、3位の座を手に入れたのである。第26節の時点で8位。しかも、対戦するのは残留争いがかかり死に物狂いで勝点を奪いにくるだろうHSVやシュトゥットガルト、フランクフルト、ライン・ダービーでの連勝を狙うケルン、CLのストレートインを目指して鎬を削るシャルケにヘルタ、ボルシアMGと、曲者ばかり。その中でのこの成績は、まさに快挙といっていいと思うのだ。

だが、本来ならばここまで苦戦するシーズンでは無かったのではないか、というのが自分の考えである。これより、自分がそう感じた理由を挙げていきたい。

①多発した負傷者

開幕直前のプレシーズンマッチでトプラクが負傷したのを皮切りに、シーズン中も負傷者が続出したことがチームの勢いに水を指す要因の1つだったと考えている。特に主将であるベンダーと副主将のトプラクをはじめ、昨シーズン躍動したパパドプーロス、チームのダイナモのカンプルといった守備陣に負傷者が続出した結果、シーズン後半はチーム崩壊の危機に晒されている。1年間を通して負傷者が絶えなかったシーズンとなったことは、明らかにチームの安定性を欠いた要因の一つだと言える。

②得点力の低下

マンチェスター・ユナイテッドから鳴り物入りでチチャリートを獲得し、昨シーズン以上の得点を期待していたが、得点に関しては少々期待はずれの感が否めない。昨シーズンの成績と照らし合わせた結果、判明したのは得点力が大幅に低下していることである。

まず、これが今シーズンのチーム内得点ランキングである。




そしてこちらが2014-15シーズンのデータである。




これを見ると一目瞭然である。今シーズンは「チチャリート」というゴールマシーンが入ったことで得点の形が出来上がった。しかし、彼へ繋ぐ意識が強くなったのか、昨シーズンは2人居た2桁得点者が、チチャリートのみと寂しい結果に終わってしまっている。

そして、得点機をモノにするという点においても昨シーズンを下回っている(14-15シーズンが29.0%だったのに対し、今シーズンは27.5%)のも不満である。キースリングやチャルハノールの不振もあったとはいえ、得点力の低下がチームの苦戦を招いた一つの要因に違いない。

③失点の増加と早い時間帯での失点

守備陣の負傷者が続出したことで、守備の安定性を失った結果、昨シーズン以上の失点を招く結果になった。そして、安定性の欠如がチーム自体の安定性も失わせたと考えられる。時間帯別の得失点を昨シーズンと今シーズンとでまとめたのが以下のグラフである。






60分までの失点が、いずれも昨シーズンを上回っているのが分かる。そして何より顕著なのが開始15分までの失点数が激増していることである。また得点に関しても、ほぼ全域で昨シーズンのデータを下回る結果に終わっている。守備の要であったトプラクやベンダーの負傷の影響は少なくないと言えるだろう。若手が頑張らざるを得ない状況になってしまったことが、安定性を失わせてしまった感がある。

以上の3つがチームの苦戦を招いた要因と感じた点である。

しかし、逆に考えれば苦しい中でも戦術を曲げることなくシーズンを完遂し、負傷者の増加を逆手に取り、若手を使うことで経験を積ませてヘンリヒスの覚醒に繋げるなど、育成とチームの底上げを両立させたロジャー・シュミット監督が評価を上げたシーズンになったと、自分は前向きに捉えようと思っている。

序破急の「破」のシーズンと位置付ければ、来シーズンこそがシュミット監督の集大成を見れる、我らが求めたシーズンになるはずだ。そのための苦しみであったのだ、と来シーズンが終わった際に言いたいものである。


■長年欠けていた“継続”の成果と上昇への予感

文・まるよし

~HSVの成績~

10位 勝ち点 41 得点 40 失点46


ラバディア体制2シーズン目。残留争いからの脱却、中位を目標に戦ったシーズンだったが、結論から先に言うとその目標は充分に達成されたという認識だ。前半戦で積み上げた勝ち点が22。後半戦は19。長いシーズン、多少の浮き沈みはあるものだが、その中でも今シーズンは好不調の波が少なくコンスタントに勝ち点を積み上げる事が出来た。

残留争いを繰り返したチームが、大きな補強もせずに何故安定した成績を残せるようになったのか。その要因として挙げられるのは、1点のみ。ずばり、このクラブに長年欠けていた“継続”という当たり前のロジカルだった。

シンプルに監督人事だけを見てもそれが分かるだろう。同一の監督がシーズンを通して指揮を執ったのは実に3シーズンぶりの事だったのだ(2シーズン前は2回、昨シーズンは3回もの監督解任が行われた)。

選手も大幅な入れ替えは行わず、昨シーズンからの主力を軸に戦った結果、監督の志向する戦術が浸透。狙いのあるしっかり繋いで崩すサッカーは、シーズンが進むにつれ完成度が高まり、最終的な総得点は昨シーズンに比べて15も増加した。

1年間を通して本格的な残留争いとは無縁のシーズンを送り、周囲からは中位らしい地味な印象だったかもしれないが、HSVにとっては基盤を固める重要な時間となった。これで、ここ3年間で勝ち点は27→35→41と着実に右肩上がり。今シーズンの安定した戦いぶりは、さらに上のステージへの躍進を期待させた。


■順調な新陳代謝への満足感

文・YAMADA




~バイエルンの成績~

1位 勝ち点88 得点80 失点17


今シーズンのバイエルンに関しては、終わり良ければ全て良し。シーズン中は不満も多々あったが、閉幕、引き続いてのユーロ2016を、バイエルン好きとして微笑みを持って迎えられた。

国内リーグ4連覇、DFBポカール優勝、CLベスト4というチームの最終成績は当然、こちらが笑顔になる理由ではある。だがそれ以上に、チームの新陳代謝が緩やかながら順調に進んでいる手応えに満足感を覚えたシーズンだった。

万能CFWレバンドフスキと新爆撃機ミュラーのコンビによるゴール量産。ロッベン&リベリという強悪だが年齢による稼働時間の低下が気になるに両ウィングに代わりうるコマン&コスタの躍動。若いドイツ人MFキミッヒのCBとしての開花。これらを、喜びをもって迎えない理由は無い。中でもキミッヒをCBとして仕上げてしまったペップ・グアルディオラ監督の人材発見能力と育成力には、感謝の言葉しかない。ドイツ代表好きとしても実に嬉しい成果だ。



ペップといえば、彼の言動には何度もイライラさせられ、そのことは思い出すだに不愉快なのでここでは触れない。それ以外でのシーズンの不満点としては、なかなか活躍できないゲッツェ、目処が立たないラームの後継者SB、育ってこない下部組織の選手、故障者が軒並み長期離脱する、といったところ。とはいえ、何もかもが一気に上手くいくわけではないのだし、これらの課題は来シーズン以降の解決を待ちたい。


■幸運な、奇跡的な残留

文・ゆんゆん




~ブレーメンの成績~

13位 勝ち点38 得点50 失点65

こうして残留できたのは正直なところ幸運だったと感じている。失礼ながら、ブレーメンよりもさらに酷い出来のチームがいたお陰で助かった。もちろん、単に運が良かっただけではない。日程も大きく味方したと思う。貴重な3ポイントを獲得したウォルフスブルクやシュトゥットガルトとは、正直なところ対戦したタイミングに恵まれた。

16位からスタートしたシーズン後半は、初戦のシャルケに快勝、続くヘルタ戦は2点差を追いついてドローに持ち込み、V字回復した昨季と同様に波に乗るかと期待を抱かせた。

しかし、早々にバルクフレーデのシーズンアウトが決まって暗雲が垂れ込める。3試合目のボルシアMG戦であえなく惨敗。続く残留を争うライバルとの連戦をことごとく落とし、上昇気運は一瞬にして雲散霧消。昇格組には1度も勝てなかった。

昨季は救世主となったスクリプニク監督の手腕にも大いに疑問符が付いた。拮抗した場面で主力を下げ、トップチームでの経験が殆ど無い若手を送り出すなど、流れを自ら手離す不可解な采配は低迷に一役買った。一度歯車が狂うとそこから状況を好転させる術を持ち合わせていないようだ。

崩壊状態の守備を改善するために試行錯誤を繰り返した末、ヴェスターゴーアをアンカーに据える奇策にも打って出たが、唯一絶対のディフェンスリーダーが抜け落ちた最終ラインはさらに不安定化した。

ほとんどの試合で複数失点を喫し、失点数の65はワースト2位。早い段階で降格が決まったハノーファーよりも悪い数字だ。このようなチームが結果として残留出来たのは奇跡的。無失点で終えた試合は、なんと最後の2試合のみ。数字、内容においても降格するには十分過ぎる程だった。




逆転残留を引き寄せた転機は、グリリッチュのコンバートの成功。これがバルクフレーデ離脱のダメージを最小限に食いとどめた。ポジションを下げたことで前を向ける場面が増え、決定機に繋がる数多くのパスを長短織り交ぜ前線に供給。課題の守備にも一定の改善が見られた。コンビを組んだフリッツの献身的なサポートあってこそだが、これまで前線の選手と目されてきた彼がボランチとしてブレイクしつつあるのは、嬉しいサプライズだった。




グリリッチュの転向で最も好影響を受けたのがユヌゾヴィッチ。守備の負担が大幅に軽減され、ゴールにより近い位置でプレー出来るようになったことで、ブンデスリーガ有数の攻撃的MFが前線で数多くの決定機を生み出す。トップ下に移ったダルムシュタット戦で早速アシストを記録したのを皮切りに、そこからリーグ11試合で2得点7アシスト。効果は目に見えて表れた。




最大の功労者は、フリッツとピサーロという2人のベテランだろう。キャプテンにして精神的主柱でもあるフリッツは年齢を感じさせないキレでピッチを駆け回り、痛々しいほど体を張り続けてチームの屋台骨を支えた。カードの多さ(イエローカード13枚はリーグ最多)は組織的な欠陥のツケを彼がファールで止めて払っていたから。ピサーロはシーズン後半だけで12得点という数字が全てを物語っている。

2人の活躍は嬉しいが、肉体的にはとうに最盛期を過ぎている選手。にもかかわらず、彼らに頼りきったシーズンを送ったことは情けなく感じたし、ここ数年の停滞を象徴しているようでもあった。フリッツは「こんなシーズンで終われない」と4月末に引退を撤回。もう1年プレーを見られる喜びと反面、彼を安心させてあげられない不甲斐なさでサポーターとしても複雑な思いがした。



期限付き移籍組の貢献も見逃せない。エズトゥナリは独力で敵陣を切り崩せるアタッカーに成長、右サイドに定着しチャンスを量産。強靭なフィジカルが備わったことで強引な突破も可能となった。才能を開花させた直後に保有元のレーバークーゼンに戻ることになったのが惜しい。



ジロボジは前任者達が信頼を勝ち取れなかったCBに定着。短期間でヴェスターゴーアの相棒として地位を確立した。前評判通りの高さと強さ、左足の正確なフィード。最終節には値千金の決勝ゴールを挙げるなど攻守に渡って重要な役割を果たした。ジェスチャーによる出場停止があったが、終盤戦の大活躍はその減点を帳消しにして余りある。

12-13シーズンのデブライネに続きチェルシーから期限付きで加入した選手が、またしてもブレーメンを救った。移籍前は全く出番が無かったようだが、ここでの彼のプレーこそチェルシーの求めた姿だったのかもしれない。



その他主だった選手についても触れておく。全34試合でゴールを守ったヴィートヴァルトはシーズン通して安定したセービングを見せた。ヴィーゼが退団して以降、起用に特段批判も無く広く信頼の置かれたGKは彼が初めてだ。

サンティアゴ・ガルシアとヴェスターゴーアはビルドアップやカウンター、セットプレーなど攻撃面においても代えの利かない存在。彼らに大きな怪我が無かったことも残留達成に不可欠なものだった。

バルテルスもユヌゾヴィッチと同じく後半戦で大きく調子を上げた1人。今季も攻撃のマルチロールとして駒不足に陥ったチームを救った。決定機をモノに出来ずに苦しんできたが、終わってみれば8得点。エースとして君臨した前半戦から一転、ベンチを温めることも多かったウジャーは、最後の最後で大仕事をやってのけた。記録上はジロボジの名が残ったが、彼が生み出したゴールと言って差し支えないだろう。中国への移籍が決まり僅か1年での別れとなったが、サポーターは彼の名を生涯忘れまい。



4強まで躍進したDFBポカールでの戦いぶりは素晴らしかったが、1部残留に比べればそれほど重要ではない。ただレーバークーゼンやボルシアMGを撃ち合いの末に破ったことで、このチームにそれなりのポテンシャルがあったことは示せたはずだ。



最も称えるべきはサポーターだ。2部行きが眼前に迫る中でも怒りや不満をぶつけるのではなく、終始温かい声援を送り続けた。最後まで選手達を信じ続けるサポーターの姿勢があの劇的な決勝ゴールを呼び込んだ、筆者にはそのように思える。






来季は残留争いの主役にならないことを願うばかり。同じく長らく低迷してきたシュトゥットガルトがついに降格した。このままの調子なら次こそブレーメンの番だ。



第6章 マイクラブの立役者

各クラブには、独ブンデスリーガの2015-16シーズンを振り返る上で欠かせない“ヒーロー”がいる。数字だけでは貢献度を計り知れないMVPを、執筆者達が選出する。


■カステールス、代役から守護神へ

文・脚魂

ウォルフスブルクでは、GKのクーン・カステールスにMVPをあげたい。



長年クラブの守護神であり主将を務めたべナーリオだが、今シーズンは何度か怪我で離脱することがあった。カステールスは、代役としてリーグ戦13試合に出場。べナーリオと謙遜のないプレーぶりを見せた。DFLスーパーカップではPK戦で好セーブを見せて優勝に貢献し、チャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦では母国ベルギーのゲント相手に2試合ともフル出場。連勝したリーグ戦のラスト2試合ではべナーリオを控えに追いやった。来シーズンはさらに出番を増やすかもしれない。

※動画・"Koen Casteels |Best Saves| VfL Wolfsburg - 2015/2016 Review HD"

https://www.youtube.com/watch?v=mYNRzG-Wx98


■「ナンバー1」を手中に収めたヤルシュタイン

文・Siebenendenweg

ヘルタ・ベルリンでは、ダリダやヴァイザーなど貢献した選手は他にもいるが、個人的にはノルウェー代表GKのルネ・ヤルシュタインをMVPとしたい。




加入後、クラフトに次ぐ2番手としてベンチを温めていたが、第5節のウォルフスブルク戦の試合中にクラフトの怪我で出番を得ると、いきなりの登場にも関わらず安定したセーブを見せ、その後の試合でも好パフォーマンスを続け、自らのポジションをがっちり手中に収めた。

この活躍ぶりに、ことあるごとに「ナンバー1はクラフトだ」とコメントしていたダルダイ監督も、クラフトの復帰後もGKのポジションに手を付けなかった。

後半戦は苦しい試合が続き、ピンチとなるシーンも増えたが、彼が幾度となくチームを救い、チームは勝ち点を拾うことができた。決して派手なタイプのGKではないが、安定した仕事ぶりは、MVPに相応しい。

クラブに活躍が認められ、契約も2019年まで延長。来季以降もクラフトとのポジション争いは続くが、期待したい。

なお、原口選手の奥様のブログ(http://ameblo.jp/kayarurico/entry-12132191667.html)を読むと、ヤルシュタイン夫妻は大変気配り上手なようで、原口夫妻を気にかけ、フレンドリーに接しているようだ。


■技術の高さとセンスの良さが磨かれたマティプ

文・s04_bhoy

シャルケの今季のMVPは何と言ってもセンターバックのジョエル・マティプだろう。34試合全てにフル出場。守備だけでなく、3ゴール5アシストと、攻撃においても活躍した。第34節・ホッフェンハイム戦でのスルーパスや、第33節・ハノーファー戦で見せたドリブルなど、技術の高さとセンスの良さも磨かれた。ヘーベデスやナスタシッチが長期離脱したことで、自分が中心となる意識がより強くなったことも、好結果に繋がったのだろう。来季、シャルケにとってマティプが抜けることは、大きな損失であることは間違いない。


■戦術の核でありゴールゲッター、ワーグナー

文・昴

ダルムシュタットのMVPは、文句なしにサンドロ・ワーグナーだ。今季のダルムシュタットの戦術の核であった、ボールが収まるゴールゲッター。得点以外でも縦に速いカウンターの重要な基準点であり続けた。積み上げた14ゴールはどれも重要で、とりわけ残留を決めたヘルタ戦の逆転弾は、その後の退場劇も含めて今季のブンデスリーガの1つのハイライトだろう。


■歓喜の象徴となった鉄人、ミキタリヤン

文・月峰総一朗

ヘンリク・ミキタリヤンは昨季、「ドルトムントの悲劇の象徴」と大バッシングを浴びたが、2015-16シーズンは23ゴール32アシストという卓越した結果を叩き出し、一転して「歓喜の象徴」となった。優れた決定力、ドリブル、チャンスメイク、アシスト。今シーズンの背番号10は、まさしくワールドクラスの選手であった。そして最もトゥヘル体制で重用された選手であり、連戦の中でもチームを牽引し続けた。4379分間のプレー時間は、はっきり言って異常である。優れたパフォーマンスを最後まで維持し続けた「鉄人」なくては、今シーズンのドルトムントの躍進は無かったはずだ。

一方で、マルセル・シュメルツァーには「カムバック賞」を与えたい。監督交代の恩恵を最も受けたのが「シュメレ」ことシュメルツァーである。トゥヘル監督のポゼッションフットボールにおいて、彼の戦術的でクレバーな動きが大きな役割を果たした。

タッチライン上の絶え間ない上下動もさることながら、パスゲームに参加しながら左サイドで数的優位を生み出すことに成功。そのことがミキタリヤンやロイスのタスクを軽減し、ドルトムントの圧倒的な攻撃力を支えた。トゥヘル監督の下で成長を遂げ、新たな境地を見出している。何故、ヨアヒム・レーブ監督は彼をドイツ代表に選出しなかったのだろうか。


■20歳とは思えない冷静な判断力が光るクリステンセン

文・とんとん

アンドレアス・クリステンセンがボルシアMGのMVPだ。



シューベルト就任初戦で定位置を掴んでからは皆勤賞。攻撃に多くの人数を割くボルシアスタイルではチームとしてのリスク管理が甘く、カウンター時に後ろに2枚しか残っていない状況が幾度も生じたが、20歳とは思えない冷静な判断力と広い守備範囲で何度もチームの危機を救った。また足下のスキルが高く、ドリブルによる持ち出しで攻撃陣の助けとなった。

ローン元のチェルシーは、早期のローンバックを画策。またバルセロナなどの興味を惹くなどビッククラブからも注目される存在となった。しかし「CLのプレーオフに向けた調整に支障をきたすため」という理由でダフートと共に今夏のリオ五輪を辞退。たった2年間のローン先にもかかわらず、ボルシアMGを第一に思う彼に惹かれないファンなどいるはずがない。


■絶体絶命の状況を救ったフラデツキ

文・なかがわ

フランクフルトで1年間を通して突出したパフォーマンスを魅せた選手は1人もいなかったように思うが、強いてあげるならGKのウカシュ・フラデツキ。PSGに移籍したケビン・トラップの後釜としての期待も決して小さくはなかったが、前守護神が抜けた穴を感じさせずリーグ戦34試合にフル出場した。

特に印象に残った試合が、第32節・ダルムシュタット戦。絶対に負けられない試合であるにもかかわらず、チームは前半早々に失点し、その後も立て続けにチャンスを作られてPKを与えてしまう。そんな絶体絶命の状況を救ったのが新守護神。ピンチを乗り越えたチームは、その後に長谷部のミドルシュートなどで逆転勝ちを納め、勝ち点3を獲得した。この勝ち点は、残留争いを勝ち抜く中で非常に価値のあるものであった。


■「獅子奮迅」の言葉が似合うカンプル

文・Fusshalt

今シーズンのレーバークーゼンを支えた男は、ケビン・カンプルを置いて他にいないだろう。夏の移籍市場が閉まる寸前でドルトムントから恩師の下へ、そして古巣へと舞い戻ったこの男は、ドルトムント時代とは見違えるほどの働きを見せた。「獅子奮迅」という言葉がここまで似合う働きもなかっただろう。

スペースを埋めつつ、機を見て前線へ一気に駆け上がりチャンスを演出する。何よりも自身を知る男の下で、その力を存分に発揮した。この男が居なければ、レーバークーゼンはヨーロッパへの切符を得ることはおろか、空中分解を起こした可能性すらあった。今シーズン、彼がどのようにチームを支えたのか。その働きをいくつか挙げていきたい。

昨シーズン、中盤の底でチームを支えたベンダーとカストロ。その片翼のカストロがドルトムントへ移籍し、そこを埋めるのを期待されたのはボルシアMGへのローンから復帰したクラマーだった。しかし、クラマーとベンダーの組み合わせは機能不全を起こし、鳴り物入りで入団したアランギスはアキレス腱断裂で戦線を離脱。チームは窮地に立たされていた。

そこに、カンプルが投入されたのである。ザルツブルグ時代では攻撃的な位置での起用で頭角を現した彼であったが、その戦術的な柔軟性は想像を大きく超えるものだった。底無しのスタミナに支えられたランニングとスペースに走りこんでのチャンスメイク、そしてプレッシング。中盤のリンクマンという新しい役割を十二分にこなして見せたのだ。




元々、頭の良い選手であったが、セントラルを任されることによって視野が広がったのか、ゲームコントロール能力が身に付いたように思える。チームのギアを上げられる存在に成長したのである。

ドルトムントとのホーム戦で彼が負傷して以降、チームは下降線を辿っていった(もちろん、理由はこれだけではないにせよ、だ)。既にチームに欠かせないピースの一つとなってきているだけに、彼が負傷に強いのはありがたい。また、相方に合わせてプレーを変えられる柔軟性も、チームをローテーションで回していた今季の苦しい台所事情を救ってくれた。




クラマー、アランギス、ベンダー、フライ、トプラクと負傷者が続出した中で相方も変わったが、相手の出方に合わせたプレーでチームのバランスを取ることを学んだのは大きい。カストロのようなどこのポジションをこなせる器用さはないが、彼の持つ柔軟性はそれに勝るとも劣らない長所である。

そして、彼がチームに持ち込んだ最も大きいものは、どんな状況でも諦めない闘志だろう。




レーバークーゼンは窮地に陥ると簡単に諦めてしまう、悪く言えば打たれ弱いメンタルな部分があった。そこをハンマーで打ち壊したのがカンプルであった。CLのグループステージ、ローマをホームに迎えた試合では、2点差をひっくり返され、逆に2点差をつけられて頭を下げ始めたチームを鼓舞する起死回生、反撃の狼煙となるゴールを挙げた。持ち前の闘志でチームに喝を入れた試合は、数えればキリが無い。チームに足りなかったものを植えつけたという意味でも、彼の存在は不可欠なものとなっている。

来季も今季以上に大車輪の活躍が求められるだろう。しかし、彼ならば問題なくやってのける。今からそれを確信している。


■数字以上のハイパフォーマンスを披露したGKコンビ

文・まるよし

HSVのMVPにはレネ・アドラー(写真上)とヤロスラフ・ドロブニーの2人を推したい。






チームの失点数だけを見れば、リーグの中で特別少ないわけでもなく平凡だが、この2人のGKは数字以上のハイパフォーマンスが印象的だった。

アドラーは中間考査でも触れたが、レギュラーポジションを失いかけた状況から見事に完全復活を印象付けるシーズンとなった。独「キッカー」の年間ベストイレブンに選出されるなど、周囲からの評価も高まり、かつての地位を再び築いた格好だ。

2014-2015シーズンでは、チーム内でGKとして最多出場を果たしたドロブニーだが、今シーズンは第2GKとして控えに回る時間がほとんどだった。それでも、チーム最古参のベテランGKは準備を怠らず、アドラーが負傷欠場した際にはいつもと変わらない安定感に満ち溢れたプレーでチームに貢献した。

圧巻だったのは、ノルト・ダービーとなった第31節のブレーメン戦だ。試合の流れが変わり、相手にペースを握られつつある時間帯に会心のPKストップ。残留を決定付ける大きな勝ち点3をチームにもたらした。

ファンから絶大な人気を誇っているドロブニーだが、若返りを図りたいチームの意向もあり、今シーズン限りでの退団が決定。アドラーとの絶対的な2枚看板が見れなくなるのは残念だが、一番苦しい時期を支え続けた彼の功績は、ハンブルクにおいてこの先も決して消える事はないだろう。


■生ける伝説、ピサーロ

文・ゆんゆん

クラウディオ・ピサーロがブレーメンのMVPだ。




リーグ戦は28試合に出場して14得点。中断期間中に食事改善に取り組むなどコンディションを上げ、37歳とは思えないパフォーマンスを披露した。

後半戦のチーム総得点は33。そのうちの12得点は、彼が挙げたものだ。総得点が僅か17だった前半戦からの倍増は、彼無しには有り得なかったろう。得点源として期待されたが、負傷からついに戻らなかったヨハンソン、めっきり調子を落としたウジャーに代わって攻撃陣を牽引。懐深いポストプレーは厚みのある攻撃をもたらした。



ブレーメンでの通算103得点はマルコー・ボーデ(現・相談役会会長)を上回るクラブ史上最多、ブンデスリーガ通算190得点は外国人選手の歴代最多得点記録。後世に語り継がれる金字塔を打ち立てた大ベテランはまさに生ける伝説だ。MVPはこの男を置いて他にいない。





<編集後記>

上編の冒頭で「情報の深さ」へのこだわりを強調しましたが、「多様性」も重要です。独ブンデスリーガに興味を持ち始めた方と長く観続けている方では、時に欲する記事が異なります。どちらにも満足してもらうには、どうすべきか。最も簡単なのは、執筆者の拡充です。視点が増えれば、バリエーションも豊かになります。今回は独ブンデスリーガのファンから2人、外部から1人を執筆者に迎えましたが、記事にはそれぞれの魅力的な個性が表れ、多様性の向上に繋がったと確信しています。

もちろん、まだまだ改善の余地はあります。記事を「硬」と「軟」に分けると、軟が非常に少ないです。やや、ハードルが高い。良い意味で「ゆる~い」記事が、もっともっと在っていいと思います。例えば、何人かの女性に「イケメン」を選んでもらう記事があれば、ベタでもそれなりに“引き”は強いのではないでしょうか。過去にも書きましたが、1人の選手を追い続ける方のコラムなども、愛情に裏打ちされた特別な空気感が出るはずです。

あるいは、幸いにしてドイツに住む執筆者もいるので、クラブごとのスタジアムへの行き方や中の雰囲気、周辺の様子などを写真付きで伝えてもらうと、現地観戦を志した際に役立ちそうです。これは以前から温めており、遠くないうちに依頼したいと考えています。

ただ、プロジェクトの理想や発展を実現するためのハードルの高さも実感しています。正直に明かせば、オファーを断られる、スルーされる(笑)は日常茶飯事です。「書く」という行為は決して楽ではないですし、手間暇がかかりますからね。仕事や学業などを犠牲にもできません。既存の執筆者にも「実生活が最優先」と繰り返しており、参加・不参加の判断は任せています。

そもそも、我々が「協力し合おう」と集ったのは、あくまで「大好きな独ブンデスリーガの人気が少しでも上がるように、ファン同士の交流が増えるように、何かしたい」という願望、意欲からです。利益目的ではありません。

それでも、少しずつ新たな執筆者が加わり、既存の執筆者は文章力に磨きがかかり、私が用意した質問以外のコラムも届くようになりました。回を重ねるごとに、内容はブラッシュアップされていると言い切れます。

執筆者の多大な貢献に感謝するとともに、そのモチベーションの源泉である読者にも心から御礼を申し上げ、結びの言葉とさせて頂きます。

2016年8月20日 発起人・暁空也


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