ファンがつづる独ブンデスリーガ2014-15シーズンレビュー・下編
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ファンがつづる独ブンデスリーガ2014-15シーズンレビュー・下編

2015-07-18 22:30

    ※上編、中編の続きです。上編と中編のアドレスは、以下の通り。

    上編

    http://ch.nicovideo.jp/football-kyo-no-utage/blomaga/ar827507

    中編

    http://ch.nicovideo.jp/football-kyo-no-utage/blomaga/ar828761



    第6章 応援するクラブの軌跡

    執筆者達には、応援するクラブがある。その14-15シーズンの軌跡を、ファンならではの目線で振り返った。


    ■原点回帰で6季連続の残留

    文・暁空也

    原点回帰で活路を切り拓いた――。2014-15シーズンを11位で終えたマインツだが、第9節から第17節まで9試合連続で勝ち星を逃すなど、一時は14位まで下降。降格圏にあたる17位との勝ち点差は僅かに1で、6季連続の残留に“黄信号”が灯った。しかし、カスパー・ヒュルマンドからマーティン・シュミットへの“政権交代”が奏功。ヒュルマンド監督の下で新たに取り組んだ、ボールの保持を基軸とするスタイルに見切りを付け、従来の縦に速くダイナミックなそれへ戻すと、チームは息を吹き返した。勝率は19%(4勝10分7敗)から38%(5勝3分5敗)に倍増。1試合を残して安全圏に飛び込んだ。“余所行き”を脱ぎ捨て、慣れ親しんだ“普段着”をまとう。その勇断が、窮地を救った。








    速攻型からポゼッション型への転換

    マインツは14-15シーズン、進化を目指した。受動的な速攻型から、能動的なポゼッション型への転換だ。13-14シーズンの閉幕後に退任したトーマス・トゥヘルの後継として、カスパー・ヒュルマンドを招聘。デンマーク1部・ノアシェランをリーグ優勝に導き、チャンピオンズリーグではホームでユベントスと引き分けてインパクトを残した指揮官に、その舵を託した。

    ただ、早くから暗雲は垂れ込めていた。予選3回戦から出場したヨーロッパリーグは、ギリシャ1部・アステラス・トリポリスに2戦合計2-3で敗退。DFBポカールは3部のケムニッツに5-5からPKで屈し、1回戦で姿を消した。公式戦3試合で7得点8失点と攻撃力の底上げは示したが、守備は脆弱さを露呈。緩慢でバラバラなプレスは簡単に外され、ピンチを量産した。

    ところが、リーグ戦は上々のスタート。岡崎をはじめとする攻撃陣が好調で、GKカリウスら守備陣も集中力を保って粘り強く対応すると、第8節を終えた時点でバイエルン、ボルシアMGに次ぐ3位に名を連ねた。3勝5分の無敗、12得点7失点。数字は眩(まばゆ)い未来を予感させたが、そこから“奈落”に沈む。

    第9節でウォルフスブルクに初黒星を喫し、ブレーメンにも及ばず連敗。第11節はレバークーゼンに敵地で引き分け、再び上昇気流を掴みかけたが、格上を慌てさせた勢い――安定したポゼッション、素早い攻守の切り替え、90分余に亘る激しいプレッシングの融合――は持続しない。

    フライブルクと分け、シャルケとHSVに白星を献上。シュツットガルトやケルンには勝ち切れず、ホームでバイエルンに苦杯を舐めると、未勝利は9試合にのぼった。パーダーボルンに5-0で大勝して久々の美酒を堪能したものの、酔いは直ぐに醒める。ハノーファーとのドローを挟んでヘルタ・ベルリンとドルトムントの軍門に相次ぎ下り、13試合で僅か1勝。この惨状では、ヒュルマンド監督の更迭も当然だった。

    救世主は自動車整備の学士

    後任には、マーティン・シュミットが就いた。


    セカンドチームから昇格したシュミット

    トーマス・トゥヘル元監督の推薦によって2010年1月からセカンドチーム(U-23)を任されており、クラブの特長を熟知する人物だ。進化を棚上げし、原点に回帰。クラブは残留に向けて現実路線を選択した。

    すると、チームは甦る。全体が連動してボールを奪い、手数をかけずに最短でゴールを狙う“勝手知ったる戦術”の採用で攻守がスムーズになり、選手も勇躍。それぞれの役割が整理され、個性を存分に発揮した。センターバックを中心に怪我人が続出するなど逆風も吹いたが、巧みにやり繰りして13試合を5勝3分5敗の五分で走破。残留を達成した。

    シュミット監督は、初日の練習で声を嗄らした熱血漢でありながら、自動車整備に関する学士号を持ち、10年間をレーシングカー専門の整備士として過ごしたり、車のチューニング会社や服飾会社を設立したり、知性を兼ね備える。フットボール界の異才は、文字通り「救世主」となった。

    選手も奮闘。岡崎はリーグ8位の12得点を記録し、守護神のカリウスは好セーブを連発、司令塔のMFガイスは精確なキックでチャンスメイクに加えてゴールネットも射抜いた。マインツはフリーキックとコーナーキックからリーグ3位の18得点を挙げたが、その多くはガイスの右足が生んだ。伸び悩んでいたMFマリも31試合6得点と結果を出し、優れた資質を開花させつつある。32試合に出場したDFブロジンスキ、20試合1得点のMFデ・ブラシス、22試合2得点のMFハイロら新戦力がすんなりとフィットし、大黒柱であるMFバウムガルトリンガーが怪我から完全復活したのも大きい。


    ガイスの精確なキックはチームを何度も救った

    個人技で相手を圧倒できる選手はいないが、誰もが実直にタスクをこなし、身体を張る。その勤勉さで、後半戦はシャルケに勝ち、ボルシアMGやヴォルフスブルクと引き分けるなど、上位を苦しめた。

    支柱を失い再構築へ

    来季への課題は“生産性”だ。45得点、47失点は、いずれもリーグ9位ながら、勝ち点では11位に終わった。リーグ最多の13を数えた引き分けを、どれだけ勝利に結び付けられるか。マインツで11年間を過ごしたキャプテンのDFノベスキが退団し、司令塔のガイスはシャルケに移籍。2季連続の2桁得点、チームの総得点の約3分の1を稼いできた岡崎も、英プレミアリーグのレスター・シティへ旅立った。複数の支柱を失い、再構築を余儀なくされる中、シュミット監督、そして補強の責任者であるクリスティアン・ハイデルGM(ゼネラルマネジャー)の手腕が問われる。


    岡崎はレスターへ移籍


    ハイデルGMの手腕が来季の浮沈を決める



    ■ホームで無敗、さらにクラブ史上2つめのタイトルを獲得

    文・脚魂

    ヴォルフスブルクは、ヘキンク監督&アロフス体制が3季目を迎えた。後半戦から指揮を執った1季目は11位、2季目は5位。上昇曲線を描き続けるのか、注目を集めた。

    まずは、夏と冬の移籍市場で獲得した選手達のパフォーマンスを振り返る。

    夏の移籍市場では、DFユンク、MFギラボギ、同クリヒ、同ハント、FWベントナーらを補強。振り返ると、個人的に1番期待していたのはユンクだった。しかし、22試合に出場したものの、本職ではないにもかかわらずサイドバックとしての適正能力の高さを見せたヴィエイリーニャ、契約延長を勝ち取る復調を見せたトレーシュと比べると、印象が薄かった。ギラボギは、MFルイス・グスタボとのコンビでレギュラーに定着。クリヒはトップでの出番がないままカイザースラウテルンに移籍し、ハントは怪我に泣いた。

    アーセナルを退団後、無所属だったベントナーは「デンマーク代表のオルセン監督が現役時代にチームメイトだったアロフスSDに頼んで…」という報道もあり、「コネ」で入団。入団前の奇行――ピザの代金を踏み倒すなど――は影を潜めたが(遅刻して罰金と第29節のシャルケ戦でメンバー外の処分があったぐらい)、本来の能力を発揮できず、1得点に終わった。

    冬の移籍市場では、GKカステールス、MFチャン・シージャー、FWシュールレが加入。カステールスは獲得後、すぐにブレーメンに期限付き移籍して経験を積んだ。復帰予定の来季は常時ベンチ入りが目標か。クラブ史上初の中国人選手となったチャンは、終盤にベンチ入りするも出番は無かった。「単なる『チャイナマネー』目当てで獲ったのか?」と陰口を叩かれたりもしたが、それを見返す力を来季は見せて欲しい。チェルシーから約45億円の違約金で加入したシュールレは、クラブで1番層が厚い2列目のレギュラー争いに敗れた。スタメンを張ったのは、今季最も成長し、イタリア代表候補にまで選ばれたカリジューリだった。

    次に、ヨーロッパリーグとリーグ戦を回顧する。2009-10シーズン以来の出場となったヨーロッパリーグは、ベスト8まで勝ち進んだものの、ナポリに敗れた。「死の組」と呼ばれたグループステージでは、イングランドのエバートンを相手に2試合で1点しか取れなかったのが記憶に残る。

    リーグ戦は2位で“前半”を折り返したが、ウインターブレイクの間にMFマランダが交通事故で死亡し、クラブ得点王のFWオリッチがHSVに電撃移籍するという2つのショッキングな出来事に襲われる。

    しかし、ウインターブレイクが明けて最初の公式戦となるホームでのバイエルン戦。オリッチに替わる新エース候補のFWドストと、マランダとは兄弟のように仲が良かったMFデ・ブルイネが2得点ずつを挙げ、4-1でバイエルンに勝利した。この試合は今季のヴォルフスブルクのベストゲームと言っても過言ではないだろう。

    これ以降、ドストはエースとして得点を重ねていき、デ・ブルイネはクラブのみならず独ブンデスリーガでMVP級の活躍を見せた。

    最終的にはバイエルンを抜くことは叶わず、3連覇を許したが、2位でフィニッシュ。ホームの「フォルクスワーゲン・アレーナ」では無敗(17試合13勝4分け)という快挙だった。

    しかし、ヴォルフスブルクはこの後にさらなる快挙を果たす。

    DFBポカールの決勝でドルトムントを3-1で下し、2008-09シーズンのマイスターシャーレ初戴冠以来、クラブ史上2つ目のタイトルを獲得した。




    ■怪我人の続出で苦しく厳しいシーズンに

    文・Siebenendenweg

    開幕前の展望では、各ポジションに充実した補強を行い、昨季のような失速はないだろうと考えていた。しかし、怪我人が多く出たことを差し引いても、ファンにとっては満足できないシーズンとなった。



    上のデータを見ると、昨季に比べてボール支配率、パス数が減り、パス成功率も大きく低下した。「守備に追われ、出し所は限られ、組み立てができず、散発的な攻撃」という悪循環に陥った今季を、端的に示す数値と言えるのではないだろうか。

    さて、今季を振り返る上で、「開幕から第9節まで」、「第10節から第19節」、ルフカイからダルダイに監督が代わった「20節以降」の3つに分けて見ていきたい。


    試合数

    勝ち

    分け

    負け

    勝点

    得点

    失点

    勝点/試合

    得点/試合

    失点/試合

    9

    3

    2

    4

    11

    14

    16

    1.22

    1.56

    1.78

    10

    2

    1

    7

    7

    10

    22

    0.70

    1.00

    2.20

    ①+②

    19

    5

    3

    11

    18

    24

    38

    0.95

    1.26

    2.00

    15

    4

    5

    6

    17

    12

    14

    1.13

    0.80

    0.93

    シーズン

    34

    9

    8

    17

    35

    36

    52

    1.03

    1.06

    1.53

    ① 開幕から9節まで
    ② 10節から19節まで(①と②はルフカイ監督)
    ③ 20節以降(ダルダイ監督)

    開幕からリズムをつかめないチーム

    昨季の開幕戦は、フランクフルトにショートカウンターでことごとく得点を重ね、6-1で快勝した。しかし、今季の開幕戦は対照的。2点をリードしながらあっさりと2失点し、引き分けに終わった。開幕戦は34分の1に過ぎないが、ここを勝てていれば、シーズンの入り方は良い方向に変わったのかもしれない。

    第2節のレバークーゼン戦は、相手に合わせて3バックで臨み、必死に耐えるも、運動量に勝るレバークーゼンが後半に力を見せて2-4で完敗。以降、第9節までは3勝2分け4敗という成績で推移する。

    シーズンが始まってすぐの時期、チームが安定せず、試行錯誤しながら進んでいくことはよくある。実際、ルフカイ監督は特に安定感を欠く左サイドバックと、ラングカンプが欠場していたセンターバックの起用に頭を悩ませていたようだ。例えば、右サイドバックにヌジェンクを起用し、本来は右サイドバックのペカリークを左サイドバックへ入れる。センターバックも、ハイティンハのパフォーマンスが不安定なこともあり、MFのヘゲラーを起用するなど試行錯誤を続けた。左サイドバックについては、開幕前に不安視していたことが当たってしまった格好だ。

    第3節のマインツ戦と第4節のフライブルク戦を現地で観戦したが、守備は昨季のような「前線からプレスをかけてカウンター」という狙いが今一つ見えず、厳しさもない。攻撃は、形が全くつくれずにパスミスのオンパレード。連動性も乏しく、今季が厳しいものになることを予感した。


    筆者がフライブルク対ヘルタで撮影


    ビーレフェルト戦からの迷走

    第9節のHSV戦に勝利し、迎えたDFBポカール2回戦。アウェイとはいえ、格下のビーレフェルトにしっかり勝ちたい試合だったが、ヘルタは主導権を握られ、チャンスらしいチャンスもつくれないまま、PKの末によもやの敗退を喫した。

    これで自信を失ったのか、直後のパーダーボルン戦、ハノーファー戦は、内容的にも完敗。チームは危機的な状況に陥った。バイエルン、ボルシアMGといった上位相手の試合では、超守備的に臨み、善戦はするものの、力の差は明らか。勝ち点を獲得できない。第10節から第15節にかけては2勝を収めているが、ケルン戦はFWベーレンスの個人技とラッキーなFKから、ドルトムント戦は相手のミスからの得点で、決して内容を伴っての勝利とは言えないものだった。

    この頃のヘルタは、守備でボールを奪っても、パスの出し所が少なく、サポートも遅く、前線にとりあえず蹴る、それが繋がればMFシュトッカーやFWカルーなどの技量に委ねるという攻撃。チームとしてどこで奪うかという決まり事は見られず、選手間の距離感が悪く、後手に回り、最後はファールでしか止められない…と、攻守両面においてチームは悪循環に陥った。

    第16節のフランクフルト戦。セットプレーなどから4得点を挙げるも、終盤に守備陣が踏ん張り切れず、ドローに持ち込まれると、次のホッフェンハイム戦に至っては守備が崩壊して0-5の惨敗を喫し、最悪の形で前半戦を終えた。

    個人的には、ここで打開策を見出せないルフカイ監督を更迭し、ウインターブレイクで立て直す選択肢もあったと思う。しかし、首脳陣は続投を選択。また、不振のMFロニーに代わるゲームメーカーの獲得など新戦力の補強についても、「馴染む時間が少ない」ことを理由に動かず、後半戦へと突入する。

    だが、状況は改善されなかった。ブレーメンとレバークーゼンに屈し、中断前を含めて3連敗。しかも、全てが完封負けだった。このタイミングで、ようやく首脳陣はルフカイ監督の解任を決断する。

    ダルダイ新監督に残留を託す

    降格の危機から救うべく、首脳陣はヘルタの元選手でU-15の監督を務めていたダルダイにチームを託した。

    ダルダイ新監督は就任後、フィジカルの改善と守備の立て直しを図り、守備時は4枚のDFと4枚のMFがしっかりブロックを形成することを徹底。この指導に加え、ラングカンプが復帰したこともあり、ルフカイ政権時で壊滅的だった守備は安定感を増し、失点数は1試合あたり2.0から0.93に激減した。

    また、懸案だった左サイドバックには、ルフカイ監督にほとんど起用されていなかったものの、質の高いボールを蹴ることができるプラッテンハルトを抜擢。攻撃面は、守備のブロックが非常に低い位置であるため、前線の選手の“個の力”に依存する点ではルフカイ政権時から変わらず、得点数だけを見れば改善されたとは言えない。ただ、守備でリズムがつくれてくると、攻撃でもリズムが生まれ、複数の選手が絡むシーンはルフカイ政権の末期に比べて増えた。

    最終的に、残留を争うチームとの直接対決で勝利や引き分けたことがものを言い、最終節は1-2で敗戦を喫したものの、なんとか残留を達成した。

    簡単に振り返ったが、今季もやはり怪我人が多かった。攻撃でアクセントを付けられるMFバウムヨハンは開幕直後に長期離脱し、MFチゲルチは復帰もすぐに再故障。ラングカンプは前半戦を怪我でほぼ欠場し、FWシーバーは後半戦に離脱した。DFルステンベルガーは故障がちで、ベーレンスも前半戦の終盤で負傷した後はパフォーマンスが低下。細貝は後半戦に怪我で入院した。

    さらに、監督の解任劇があり、残留争いも最後の最後までもつれ、ファンとしては非常に苦しく、厳しいシーズンだった。

    来季に向けては、中盤で攻撃の起点となり、得点力もあるセンターハーフが1枚欲しいところ。本来であれば、今季移籍してきたヘゲラーがその役を担うはずだった。FWも、後半戦はカルーしかいない体制――ヴァグナーは、ほぼ構想外のようだった――だったため、もう1枚は獲っておきたい。経済的な余裕はないクラブで、その他のポジションについては、選手が抜ければ埋める形になるのではないか。



    ■不調と別れ。苦しみと悲しみ。ほのかな明かり

    文・月峰総一朗

    色々と難しいシーズンで、語ることが多すぎるため、印象的な出来事に対して一言ずつ書いていく。

    まずは、香川の復帰。とにかく嬉しかったし、あの「いつ来るか」という盛り上がりは久々だった。「やはり、この街では英雄なんだな」と再確認した。

    次に、リーグ戦の不調。本当に見ていて苦しかった。バイエルンに移籍したレバンドフスキの穴は、あまりに大きい。その穴を埋めるべき新戦力は、ほとんどフィットしなかった。

    守備の崩壊も相次いだ。DFフンメルスが不調で、同スボティッチは怪我から復帰後もコンディションが整わず。チームとしてもバラバラで、見ていられなかった。

    一方、チャンピオンズリーグのグループステージは快勝。「CLでは別の仮面を被っている」と皮肉を書かれた。他国のクラブには対策されていなかった面もあった。

    明るいトピックスとしては、負債の完済が挙げられる。約10年を費やしたが、フロント陣の卓越した手腕を賞賛すべきだろう。

    ピッチ上の話に戻すと、リーグ戦では最下位への転落を経験した。非常に厳しかったが、「後は上がるだけだ」と楽観的な人も多かった。

    吉報は、ロイスの契約延長だ。なぜ契約を延長したのか分からないが、バイアウト条項(注:必要な金額を支払うクラブが現れた場合、本人が希望すれば移籍できるという特約)を破棄した上での新契約。苦しい日々が続く中で、唯一の光明だった。

    「レヴィアダービー」(注:シャルケとの試合。「ルールダービー」とも呼ぶが、ドイツではレヴィアダービーが一般的とされる)での勝利も大きかった。FWオーバメヤンと同ロイスの「バットマンパフォーマンス」が話題になった。そして2点目のMFムヒタリアンが身体ごと突っ込んだゴール。苦難の象徴とも言うべきムヒタリアンのゴールに、感極まったファンも多かっただろう。


    ロイス(右)とオーバメヤンの「バットマンパフォーマンス」

    リーグ戦の最下位からは、意地のカムバックを果たした。オーバメヤンがとにかく得点を奪い、内容は褒められたものではなかったが、最終的に7位まで上昇。MF香川やムヒタリアンの復調も良いニュースだった。

    しかし、クロップ監督の辞任という悲報もあった。我がドルトムント人生において、最も悲しい1日だった。結果が出ず、クロップ監督も苦しかったのだろう。ただ、最後の「もう1度『ボルジグプラッツ』でパレードしたいね」の一言はさすが。モチベーターは最後までモチベーターだった。

    優勝してパレードを行うためには、DFBポカールで優勝するしかなかった。その最大の障壁となったのが、準決勝のバイエルン戦。120分に渡る死闘はPKで決着したが、バイエルンはまさかの4本連続失敗。3本目のMFゲッツェのシュートを、GKランゲラクが完璧にセーブしたシーンが、この試合のハイライトだった。

    クロップ監督以外との辛い別れもあった。キャプテン、MFセバスティアン・ケールだ。クラブの経営が危機に陥った時も変わらぬ忠誠を見せ、背中でチームを引っ張ってきたケールの引退は、本当に悲しい出来事だった。34歳だが、今季は30試合以上に出場。低迷するドルトムントを支え続け、最後のホームゲームは感動的なクライマックスだった。

    バイエルンを破って決勝に進出したDFBポカールは、オーバメヤンのゴールで先制。完璧な形でスタートを切ったものの、その後はドルトムントの悪癖が全て出てしまい、逆転負け。終わってみれば、今季を象徴するような試合だった。悲しい結末に、しばらくは立ち上がることも、声を発することもできなかった。

    一方、ドルトムントのU-17はドイツ選手権を2連覇。とにかく強かった。決勝戦ではシュツットガルトに4-0で快勝。MFパスラックを筆頭に、ドイツU-17代表のFWセーラも後半から大暴れ。チームとしても、相手のミスを無慈悲に突く冷静さが光った。この世代の未来は明るい。


    ■崩しの形が増え、取りこぼしが大幅に減少

    文・とんとん

    各コンペティションの結果を振り返ると、リーグ戦は19勝9分6敗53得点26失点で3位。チャンピオンズリーグの出場権を獲得した。ヨーロッパリーグは決勝トーナメント1回戦で敗退。DFBポカールはベスト8だった。DFBポカールは3部のビーレフェルトにPKの末に屈し、ELでは再三の決定機をフイにして王者・セビージャに圧倒的な勝負強さを見せ付けられた。

    どちらのカップ戦も不完全燃焼に終わったが、リーグ戦では堂々の3位。起用した選手の数は最少の19(うち1人は1分間の出場のため、実質的には18人)。良く言えば少数精鋭、悪く言えばペラペラの選手層の中、選手に複数のポジションをこなさせることで戦い抜いた。

    3位に躍進した要因は、取りこぼしの減少にある。今季の勝ち点は66で、昨季の55から11増加した。7位以上のチームとの戦績を見ると、今季も昨季も同じ5勝2分5敗(勝ち点17)、8位以下のチームとの戦績は今季が14勝7分1敗(同49)で昨季が11勝5分6敗(同38)。8位以下のチームから得た勝ち点が11も増加している。つまり、減らした取りこぼし分が、そのまま今季の勝ち点に上積みされた格好だ。

    取りこぼしが減った背景には、カウンターという大きな武器に加えて、引いて守る相手に対する崩しのパターンが確立された点が挙げられる。



    その中心は、プレーエリアが広いFWクルーゼ。そして、なんといっても昨季からの成長が著しいMFジャカだ。彼が左後方に落ちてボールを持つと、左サイドハーフのジョンソンが絞り、FWラファエルとともに中央で顔を出し、左サイドバックのヴェントは高い位置を取る。敵の右SBが引っ張り出されたところへ、クルーゼが走りこむ。さらに、左サイドの崩しから最後は右で仕留める。この形がパターン化し、崩しの質が飛躍的に高まった。

    しかし、課題として露呈したのは決定力不足。創ったチャンスの割に、得点数が伸びなかった。

    チームだけでなく、選手も評価していきたい。バーゼルから加入したGKのゾマーは183cmと小柄だが、類い稀なる反射神経で15回のクリーンシート(注:完封)を記録。足元の技術も高く、テア・シュテーゲンの抜けた穴を見事に埋め、チームのプレイヤー・オブ・ザ・シーズンに輝いた。

    センターバックは4人。基本はヤンチュケとシュトランツルで、ヤンチュケは小柄だがスピードとパス精度に長け、ビルドアップの起点を担った。右SBのセカンドチョイスでもあり、ポリバレント性を備えた欠かせない存在だった。シュトランツルは対人に優れ、ヤンチュケは無い高さを補った。シュトランツルの怪我で出番を得たブラウウェルスは予想外の活躍。効果的な持ち出しと配球で、パス成功率は90%を超えた。左SBのセカンドチョイスでもあるドミンゲスは、守備での不安定なプレーが少なくなかった。

    SBは左がヴェント、右がコルプ。ヴェントはチームで唯一、攻撃面で計算が立つSBで、効果的なオーバーラップで攻撃を活性化させた。コルプは伸び悩んだ様子。安定感はあったが、無難な選択を取ることが多かった。

    センターハーフは3人。クラマーは豊富な運動量で中盤を支え、ドルトムント戦ではハーフライン付近から豪快なオウンゴールをたたきこんだ(笑)。ジャカは攻撃の中心として大車輪の活躍。ノルトヴァイトは“名コンビ”の陰に隠れて出番が少なかったが、今後はCBでの起用も増えていきそうだ。

    サイドハーフは右にヘアマン、左にジョンソン。ヘアマンはカウンターで絶大な力を発揮するとともに、効果的な動き出しや狭いスペースでのプレーもできるようになり、スピード任せだったプレースタイルが改善され、一皮剥けた印象だ。ジョンソンが左SHで定位置を確保したのはサプライズで、周囲との連係に長け、左SBヴェントとの相性は抜群だった。期待のトルガン・アザールは、少ない出場時間にもかかわらず、7つのアシストを記録。守備が改善すれば、定位置確保も見えてくるはずだ。トラオレは“ジョーカー”として定着。カットインに磨きがかかり、今後は得点に関わるプレーが増えていく予感がする。ハーンは怪我もあり、大したインパクトを残せず。センターフォワードへのコンバートも検討されている。

    フォワードは3人。クルーゼは広範囲に動けるプレイヤーで、敵SBの裏に入り込んでのクロスの精度が非常に高く、9つのアシストを記録。ラファエルは個人で打開できるドリブラーで、攻撃にアクセントを加えた。フルゴタはELで結果を出し、ようやく覚醒の予感がしてきたが、クルーゼとラファエルを脅かすには至らなかった。

    監督の手腕にも言及したい。ファブレ監督はブロックを形成してのカウンターだけでなく、手数をかけた崩しもできるチームを築き上げた。この点は満足のいくものだったが、若手の起用など少しでもリスクを負うような采配はせず、選手交代で流れを変えることは少なかったように思う。

    最後に個人的なMVPを挙げると、ジャカ。次点はゾマーとクルーゼだ。


    ■コンスタントだったマイヤーが得点王に輝く

    文・なかがわ しんや

    ブレーメン一筋だったシャーフが新監督に就任し、少しの期待とかなりの不安が入り混じったスタートだったが、第7節終了時には5位に浮上。最古株・FWマイヤーと新戦力・同セフェロビッチの2トップがチームを牽引する。しかし、その後は第8節~第11節にかけて4連敗。ここでシャーフは長谷部と若手のMFシュテンデラをボランチで組ませるシステムに変更する。これが奏功し、そこから3連勝。一気に順位を上げた。

    だが、戦術が前掛かりになったことで、不安定だった守備はさらに悪化。特にアウェイでの戦いは酷く、36失点でリーグワースト。後半戦では敵地で1勝も挙げることができず、年間を通しても2勝に終わった。この辺の戦い方に関しては、シャーフの采配にも責任があるかと思う。

    選手1人ひとりに目を向けていくと、特に素晴らしかったのがマイヤー。開幕前は新主将の座をトラップに奪われ、開幕戦はベンチスタートだったが、第4節で初ゴールを記録すると、不安定な戦いを続けるチームとは対照的にコンスタントにゴールを積み重ねる。最終的には19ゴールを挙げ、得点王に輝いた。



    また、そのマイヤーと2トップを組んだセフェロビッチの活躍も大きかった。終盤戦は少し調子を下げたが、独ブンデスリーガ1年目で10ゴール・5アシストは立派な数字だ。


    ■心の髄まで惚れ込んだ、シュミット監督の“超攻撃的”スタイル

    文・Fusshalt

    今季は、何よりもシュミット監督の手腕が本物であったことがチームの成功へ繋がったと言える。昨季までのチームは堅守速攻でカウンターがメインだったが、それをサイドから繰り出す「ハーフカウンター」やテンポの速いゲームを武器とする“超攻撃的”につくり替えた。昨季の終盤から、レバンドフスキ前監督がドルトムント式のハイプレスと速いパス回しをメインに据えた攻撃的なチームづくりを進めていたものの、ここまで劇的に変化するとは思わなかった。シュミット監督のフットボールに、すでに心の髄まで惚れてしまっている。

    不満な点を挙げるとすれば、冬の移籍市場で補強を行わなかったことだろうか。そこが終盤での勝ち切れなさ、カンプルの獲得失敗(ドルトムントに移籍)に繋がったと言えるだけに、シュミット監督と首脳陣の判断ミスが大きかった。

    ただ、それは同時に、チームの若手にスポットライトが当たることになった。特にローマから加入したDFイェドバイは、期待に違わぬ活躍を見せた。ローマが、よく完全移籍を了承したと思うほどだ。MFチャルハノールも、HSVでの活躍そのままに、その実力を示してくれた。しかしながら、得点力という意味では期待を裏切った部分もあるだけに、シュートの正確さを上げなければならない。それを達成できれば、来季はさらなるブレイクを遂げられるだろう。

    今季は、非常に楽しめた。来季はこれ以上の歓喜を味わえるかもしれないと思うと、今から開幕が待ち遠しい。


    ■勇気ある戦い方を貫いた、美しき“敗軍”

    文・Holli

    最終節までパーダーボルンに残留(あるいは2部3位との入れ替え戦)の可能性があったことは、長く応援してきたファンの一人として誇りに思う。最下位で自動降格したことは確かに残念だが、シーズンを通して勇気ある戦い方を存分に見せた。2部では試合後に全員で円陣を組むチームは珍しくないが、独ブンデスリーガの舞台で、負けた後でもチーム全体で円陣を組む姿は、パーダーボルンというチームを象徴し、多くのフットボールファンの共感を得たと信じている。


    負けた後でも円陣を組む(筆者撮影)

    シーズン前のトレーニングキャンプは、基礎体力づくりに時間を費やし、テストマッチの結果も芳(かんば)しくなかった。それでも開幕を迎える直前には、乳酸値テストの数字も飛躍的に上がり、エバートンとのテストマッチは3-1で勝利した。仕上がりを逆算して段階的なトレーニングプランをこなすチームに期待は膨らんだ。

    個人的には、昨季のブラウンシュバイクのように独ブンデスリーガのペースに慣れた後半戦からが勝負だと思っていた。ところが、開幕からパーダーボルンは独ブンデスリーガでも通用するところを見せる。第1節のマインツ戦は引き分けだったが、記念すべき初勝利をあげる寸前までいった。さらに第2節のHSV戦では、アウェイながら3-0で歴史的な初勝利。序盤こそ押しこまれるシーンがあったものの、カチュンガ、ヴランチッチ、シュトッペルカンプのゴールで、ほぼ完勝と言っていい内容だった。

    昇格チーム同士の対戦となった第3節はケルンと引き分ける。しかし第4節では、ホーム初勝利をファンと共に祝った。ハノーファーはロスタイムにGKのツィーラーを上げてセットプレーに臨んだが、ゴール前でこぼれたボールをシュトッペルカンプが思い切り蹴ると、ボールは82.3メートルの記録をつくり、無人のハノーファーゴールへ吸い込まれていった。

    https://www.youtube.com/watch?v=xme73rY0TpI

    この時点で、パーダーボルンは首位に立つ。10年前にクラブ史上初めて2部に昇格したチームが、10年後にはドイツ最高峰のリーグで首位になるなど、誰が想像しただろうか。

    バイエルンには大敗したが、レバークーゼン、ドルトムント、ヴォルフスブルクと、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグで戦うチームからも勝ち点を1ずつ取り、前半戦を勝ち点19の10位で折り返した。

    ウインターブレイク明けの失速は予期していた。昇格チームがシーズンを通して調子を維持するのは難しい。未勝利の後半戦を覚悟したが、ハノーファーに競り勝ち、前半戦では完敗だったアウクスブルクを下し、フライブルクにはリードされながら逆転勝利した。

    第33節のシャルケとの対戦は、内容で勝っていたが、勝ち点を取れなかった。そこに、このチームの限界を感じた。そして、最終節はプレッシャーのある難しい試合となった。残念ながらシュツットガルトに敗れて降格が決まったが、パーダーボルンのサポーターは選手、監督へ惜しみない拍手を送った。

    ブライテンライター監督は、対戦相手に応じて綿密なゲームプランを準備し、フォーメーションも変更する。基本は4-4-2あるいは4-1-4-1。強豪相手には5バックという現実的な対応も採る。全体をコンパクトに保ち、パスコースを限定してからのインターセプトが多い(リーグ2位)。奪った後のボール運びには幾つか明確なルートがあり、チーム全体で共有されている。

    2部時代から互いを熟知しているケルンのシュテーガー監督は「パーダーボルンがどう来るか誰もがわかっているが、対処法が見つからない」と評した。タッチライン際を多用し、そこからダイアゴナルのパスや縦へのドリブルで一気に前へ運ぶ。その後はニアゾーンへの侵入からの折り返し、あるいはDFの間を通すパスで中央から突破を図るなど、様々だ。

    セットプレーも武器の1つと位置付け、ドリブルを用いて上手くファールをもらいにいく。被ファール数547回はホッフェンハイム、フランクフルトに次いでリーグで3番目に多い。

    選手はコンパクトに距離を保ちながら連動して動くため、ボールを持った瞬間にはどこに味方がいるか全員が理解している。ブライテンライター監督がよく言及する「トランジション(Umschaltspiel)」は、この“連動した動き”をいかに自動化できるかがカギとなる。

    カウンターからのゴールは7。全ゴールの22.6%という割合はレバークーゼンと同じだ。ポゼッションにはこだわらず、前半戦のレバークーゼンとの試合でブライテンライター監督は「意図的に相手に持たせて、カウンターを封じた」と発言している。

    相手がボールを保持すると深追いはせず、後退してブロックをつくる。このあたりはシャルケと似ているが、奪ってから全員が一気に加速し、あっという間にゴール際まで到達する迫力は、今季のシャルケではあまり見られなかったものだ。果たして来季、ブライテンライター監督のやり方がどこまでシャルケに浸透するか非常に興味深い。

    奮闘した選手には、センターバックのヒューネマイヤーとGKのクルーゼを挙げたい。2人の存在があったから、他の選手は勇気を持って前に出ることができたと思う。


    ■進まぬカウンター対策。グアルディオラ監督の手腕に疑問

    文・まっつー

    応援しているバイエルンは、3連覇を成し遂げた。終盤を除き、安定して勝ち続けており、妥当な結果と言えるだろう。しかし、奮闘した選手と言うと思い浮かばない。今季は怪我人の多さにも悩まされ、シーズンを通して活躍した選手がいないのではないだろうか。強いて言うならFWミュラー、DFボアテングあたりだろうか。恐らく、バイエルンのファン以外はピンとこないだろう。

    そして、依然としてグアルディオラ監督の手腕には疑問が残る。ハインケス時代のフットボールから、ここまで劇的に変えたのは衝撃に近く、見事であった。しかし、就任2季目になっても弱点であるカウンター対策は進まなかった。国内ではヴォルフスブルク、ボルシアMG、CLではバルセロナの餌食となった。そろそろこの問題に着手しなければ、首脳陣とファンの我慢の限界は近い。


    ■奇跡的な残留劇と進む健常化

    文・まるよし

    16位(勝ち点34、得点 25、失点 50)のHSVは2季連続で入れ替え戦に回り、辛くも残留を果たした。独ブンデスリーガで、最もスリリングなシーズンを送ったHSV。その軌跡を、指揮を執った4人の監督別に振り返り、今季の総括とする。

    妥当な解任だったスロムカ監督


    第3節後に解任されたスロムカ

    結論から書くと、スロムカ監督の解任は妥当な判断だったと言える。周囲からは、第3節での決断はあまりにも早いように映ったかもしれないが、なにも3試合だけが判断材料になったわけではない。スロムカ監督がHSVに来たのは、昨季の第22節。結果的に残留へ導いたが、終盤には5連敗を喫し、入れ替え戦はアウェイゴールの差で辛うじての残留だった。その間の試合内容も振るわず、大きな不安を残したままだったが、それでも経験ある監督の手腕に託し、キャンプでの立て直しと、補強選手のチームへの組み込みを期待して新シーズンを迎えた。

    だが、DFBポカール1回戦でコットブスに大苦戦(PKで勝ち上がり。つまり、記録上は引き分け)。開幕戦では、ケルンを相手にスコアレスドローで勝ち点を持ち帰ったが、続く第2節のパーダーボルン戦は、ホームでの初戦にも関わらず、0-3の惨敗を喫した。

    にわかに騒がしくなった周囲の声に焦りを感じたのか、第3節のハノーファー戦では、前節から一気に7人ものスタメンを入れ替えた。しかし、付け焼刃的な起用が機能するはずもなく、0-2の完敗。この時点で、シーズンを跨(また)いで公式戦11試合未勝利。さらに今季は開幕から無得点で、スロムカ監督のHSVでの時間は終わった。

    セカンドチームからツィンバウアーを引き上げる

    新たにチームを率いたのは、セカンドチームの監督であったツィンバウアー。


    第4節から率いたツィンバウアー

    まずは暫定での指揮となったが、バイヤースドルファーCEOは、彼に対して厚い信頼を置いており、特に期間は設けずに監督を任せることになった。

    就任直後の相手は、バイエルン・ミュンヘン。いきなり対峙した最強の絶対王者に、新生・HSVはホームのサポーターの前でドラスティックな変化と勇気ある戦いを見せる。「ハードワーク」、「球際でのファイト」。ツィンバウアーがチームにもたらしたのは、この2つだ。ボールを支配される展開ながらも必死に食らい付き、運動量で勝り続け、決定機を与えない。結果は0-0。1週間前の状況からは考えられない程にチームは生まれ変わった。

    そして、待望の初勝利が生まれたのは、第7節のドルトムント戦。不振に喘いでいたFWラソッガにゴールが生まれると、全員でその1点を守り切り、敵地で強豪相手に完封勝ちを収めた。評価を高めたツィンバウアーは10月27日、正式にトップチームの監督として契約を交わした。

    その後、依然として得点力不足という課題は残ったものの、ホームでは強さを発揮。第10節のレバークーゼン戦、第12節のブレーメン戦、第14節のマインツ戦で勝利し、ホーム3連勝を達成した。さらに、スタイルの形成と同時に、自身が指導していたセカンドチームから若手選手を抜擢。MFグアイダ、同ゲッツ、DFマルコスはトップチームで貴重な経験を積み、成長した。開幕からの出遅れを考慮すれば、前半戦を14位で折り返せたのは上々の結果と言える。

    ところが、時間をかけて戦術を浸透させるはずだったウインターブレイク中のキャンプで怪我人が大量発生。特に鎖骨を折ったMFホルトビーの長期離脱は大きな痛手だった。後半戦に入り第19、第20節で約2年ぶりのリーグ戦連勝を果たすも、再び攻撃面でのアイディアの乏しさが顔を出すようになってくる。FW陣の不振よりも深刻なのは、ビルドアップの拙さ。冬の移籍市場でバーゼルから獲得したMFディアスは、その問題を解決でき得る存在だったが、やはり負傷で離脱してしまう。本来は、その役割をこなすはずのファンデルファールトも、全盛期の頃には遥か遠く及ばないパフォーマンスに終始。苦しいチームを救えない。

    攻撃の組み立てができない結果、ボールが全く前に運べず、押し込まれる時間帯が増える。重心がみるみるうちに後ろへと下がっていき、必然とチャンスが減っていく悪循環。ラソッガ、ルドニェフスが負傷離脱するFW陣の中で、ヴォルフスブルクから復帰したオリッチが孤軍奮闘するも、守備に奔走する時間がほとんどで、結果を残すのは困難な状況だった。

    そして、大きなターニングポントとなったのが第26節のヘルタ戦。珍しく主導権を握り、比較的多くのチャンスも創れており、勝ち切らなければいけない試合展開だったが、時間の経過とともに攻めあぐねるようになると、終盤のセットプレー一発に沈み、痛恨の敗北。3試合連続の完封負けに加え、残留を争うライバルとの直接対決を落とし、降格圏に転落した。

    計り知れないダメージを負った結果を受け、フロントは再び決断する。

    2度目の“政権交代”

    今季、2度目の監督交代。後任には、それまでSDを務めていたクネーベルをシーズン終了までの暫定として指名した。


    SDから監督に転身したクネーベル

    マネージャー色が強く、15年もの間、現場での指導から離れていたクネーベルに対し、不安視する声は当然多かった。それを見越してバイヤースドルファーCEOがアシスタントコーチに招聘したのは、かつてHSVでプレーし、引退後はバイエルンやシャルケなどでアシスタントコーチを勤めてきたペーター・ヘアマン。実際には、練習の指導の大部分をヘアマンが仕切り、試合での最終決定権はクネーベルが持つという、いわば二頭体制で臨むことになった。

    だが、代表戦明けのレバークーゼン戦を0-4の大差で落とすと、第28節のヴォルフスブルク戦も0-2で敗れ、とうとう最下位に転落。重要な終盤戦で5試合連続無得点と窮地に追い込まれた。

    どん底だった昨季を想起させる試合内容に、サポーターの怒りが爆発する。そして、事態はまたもや急速に変化していく。

    ラッバディアが5年ぶりに復帰

    「もう1度チームに刺激を与える必要があった。それに、以前から彼を再び迎え入れるプランを考えていた」。3度目の監督交代に際し、会見でバイヤースドルファーCEOの口から出たコメントである。白羽の矢が立ったのは、2009-2010シーズン以来、5年ぶりの復帰となるラッバディアだった。


    5年ぶりの復帰となるラッバディア

    就任直後、早速新指揮官は現状を打破するために行動を起こす。週末のブレーメン戦に向けて、急遽試合前日のギリギリまで市内でキャンプを実施。密にコミュニケーションを取り、少しでも多くの時間で選手達と考えを共有するのが狙いだった。

    その効果が、試合で表れる。それまで見られなかったスムーズなビルドアップで、アウェイでブレーメンとの“ダービー”ながら試合を優位に進め、チャンスの数で上回る。シンプルなロングボールをラソッガに当てて時間を創り、2、3列目から選手が飛び出していく人数のかかった迫力ある攻撃は、大いにライバルを苦しめた。

    勝負所でPKを与え、結果的に敗れはしたが、復活を予感させる内容に選手達は確かな手応えを得た。

    残り5試合となり、後がない状況でホームに迎えたのはアウクスブルク。この試合では、今までの沈黙が嘘のようにFW陣が爆発する。開始早々にオリッチが復帰後初ゴールを決めて口火を切ると、ここまでリーグ戦で僅か2得点だったラソッガが2つの豪快なゴールを叩き込み勝利に貢献。実に10試合ぶりの複数得点で連敗を脱した。

    続くマインツ戦でも、終了間際の劇的な勝ち越しゴールが飛び出し、連勝を達成。さらには、この時期からラッキーボーイ的な存在が現れるようになる。

    ボランチのポジションに怪我人や出場停止が重なり、巡ってきたチャンスを生かしたのは、ここまで先発出場が僅か3試合だったMFカチャル。第32節・フライブルク戦で後半のアディショナルタイムにゴールを決め、2試合連続でチームのピンチを救った。14位をキープし、トンネルの出口が見えてきた中で第33節に対峙したのは、最下位のシュツットガルト。絶対に敗戦だけは避けないといけない試合だったが、負ければ降格が決まるシュツットガルトの気迫に押し込まれて逆転負け。再び自動降格圏である17位への後退を余儀なくされた。

    後がない状況に追い込まれた指揮官は、最終節を前にして再び合宿を敢行。場所はハンブルクから100キロ離れた北東に位置する町・マレンテにある「ウーベ・ゼーラー‐フットボールプラッツ」。落ち着いた環境の中で試合に備えると同時に、偉大なるレジェンドの魂をチームに注入していった。

    そして、運命の最終節・シャルケ戦。勝利できなければ降格が決まるという状況の中で、選手たちは躍動した。ホームの後押しを力に変え、想像を絶するようなプレッシャーを感じさせないシーズンベストのパフォーマンスを見せる。シャルケを圧倒し、2-0の完勝。敗れたフライブルクを抜き、入れ替え戦枠の16位に滑り込んだ。

    2季連続の入れ替え戦の相手はカールスルーエ。昨季の経験がある分、ホームでのファーストレグは落ち着いた試合運びが求められた。それにも関わらず、開始4分にいきなりアウェイゴールを奪われてしまう。失点の動揺が隠せないチームは、その後もあわや追加点というようなピンチを連続して迎える。終盤にMFイリチェビッチのシーズン初ゴールが生まれて追い付いたが、引き分けるのがやっとの内容だった。

    ラッバディア就任以降は6試合で9得点を挙げ、オフェンスに改善の兆しが見られたが、そこはリーグ戦での総得点がたった25に終わったチーム。強固な守備を誇るカールスーエから、有効なチャンスは数えるほどしか創れずに終わった。

    この構図はセカンドレグでも変わらない。ボールを保持するも前進できないHSVに対して、カールスルーエは鋭いカウンターで追加点を狙う。戦況が変わらないまま、ジリジリとした我慢の展開が続き、刻々と時計の針が進んでいった。そして78分、均衡を破ったのはカールスルーエ。MFヤボのゴールで、トータルスコアでも上回る。

    絶体絶命の状況に陥ったHSVは、前線に本来CBであるクレーベルを投入し、パワープレイに出る。なりふり構わず強引にボールを放り込み続け、90分にはゴール前の絶好の位置でフリーキックを得る。キッカーはディアス。美しい放物線を描いたボールが壁を越えると、GKは一歩も動けなかった。起死回生の同点ゴールで、トータルスコアは2-2。延長戦に突入する。

    延長戦では、明確に運動量に差が出る。守勢に周り揺さぶられ続けたカールスルーエは、体力的にも、精神的にも余力が残っていなかった。HSVに待望の瞬間が訪れたのは115分。ミュラーが勝負を決定付ける逆転ゴールを挙げ、奇跡的な残留劇でクラブの歴史を守り抜いた。

    バイヤースドルファーを中心に一枚岩に

    ドイツ有数の大都市であるハンブルクは「メディアの町」とも言われ、今季もHSVは常に厳しい視線に晒されてきた。そんな雑音の多い環境でも、バイヤースドルファーCEOを中心にクラブは一枚岩になり、残留を成し遂げた。


    クラブを支えるバイヤースドルファーCEO

    クラブ史に残る大改革(注:詳しくは、右のアドレスからまるよし氏の記事を参照して欲しい。http://ch.nicovideo.jp/football-kyo-no-utage/blomaga/ar606337)を行った今季。それを実証するためにも絶対に降格だけは許されず、昨季とはまた違ったプレッシャーと戦う1年間だった。

    まず、待望のHSV凱旋を果たしたバイヤースドルファー(当初はSD職も兼務)は、開幕前から大きな変化が必要だと感じていた。監督の交代も含むプランを練っていたが、ただでさえ出遅れている選手の補強に加え、株式会社化への手続き、コーチングスタッフやSDの選定などの人事面までもほぼ1人でこなさなければならず、100%の準備を行うには時間が足りなかった。

    開幕から多少の時間は要したが、スロムカからツィンバウアーに監督が代わり、多くの新加入たちがフィット始めると、ようやく軌道に乗り始める。そして、ツィンバウアーが何もなかった更地にしっかりとした土台を造り上げる。数年来、全く感じられなかったチームとしてのまとまりや闘争心に溢れるフットボールを展開し、HSVは戦える集団と化した。第4節から第26節まで、ツィンバウアーがチームを率いたこの時間がなければ、残留は困難だっただろう。志半ばで彼のチャレンジは終わってしまったが、今後もその手腕がクラブの未来にとって必要と判断され、来シーズンからはセカンドチームへの監督復帰が決定している。

    問題は、その後の人事だ。果たしてクネーベルを後任に据えた判断は正しかったのか、疑問が残る。ドイツ国内でも屈指の豊富な経験を持つペーター・ヘアマンが、僅か19日間でクラブを離れる事態になってしまったのも非常に残念だった。

    しかし、ネガティブな反応が多かったラバディアの招聘は、終わってみれば大成功。独ブンデスリーガを知り尽くす指揮官は、長期間に亘って悩まされ続けた攻撃面の課題解消に着手すると、短期間で結果を残してみせた。

    この激動のシーズンを振り返りつつ、改めて強調しておきたいのは、クラブの現状だ。それまで内部での争いが絶えなかった旧上層陣を一掃したことによって、間違いなくクラブは健常化された。外部からの視点では、順位と監督交代の回数を判断材料にされてしまいがちだが、今のHSVは改革により、諸悪の根源であった過去の体質から脱却を果たしたと断言できる。

    実際に、在籍年数が長い選手からもそういった声が出ているのだから、間違いは無いだろう。そのためにも、来季は結果で示す必要がある。後に振り返った時に、クラブとして産みの苦しみを味わい、戦い抜いたこの1年間が決して無駄ではなかったと言えるように――。


    ■ELの出場権に迫る、間違いなく良いシーズン

    文・ゆんゆん

    間違いなく良いシーズンだった。順位だけを見ても、12-13シーズンが14位、13-14シーズンが12位、そして今季は10位と上向きだ。ヨーロッパリーグの出場権まであと一歩のところまで迫ったのだから、十分に合格点を与えられるだろう。

    まずは、夏の移籍市場で加わった選手達について簡単に触れておく。DFアレハンドロ・ガルベス(ラージョ・バジェカーノ/スペイン)、MFフィン・バルテルス(2部のザンクト・パウリ)、MFイゼト・ハイロヴィッチ(ガラタサライ/トルコ)の3人は、フリーで獲得。バルテルスは昨季の途中で公式発表されていた。U-20ドイツ代表のGKライフ・フシッチ(バイエルン・ミュンヘン)は10万ユーロの違約金で獲得。違約金の最高値はDFサンティアゴ・ガルシア(CSDレンジャース/チリ)で、150万ユーロだった。


    ザンクトパウリから加入したバルテルス

    支出の極端な少なさから、クラブの財政は相当キツいのだろうと察することができた。それもそのはず、チャンピオンズリーグに出られなくなってから収入が激減した上、毎シーズンのように多くの主力選手をタダで放出。バイエルンやヴォルフスブルクのように巨大企業がバックについているわけでもないのに、こんなことを繰り返しているのだから、どんどん貧乏になっていく。元手がないのだから、当然買えない。まさに、無い袖は振れないのである。

    そんな苦しい台所事情の中、ガラタサライとの契約を解除したボスニア代表MFハイロヴィッチの獲得には胸が躍った。23歳の若者にアーロン・ハントの14番を託したクラブからの期待の高さも窺えた。結果的に今季は期待外れに終わったのだが、彼についてはまた後ほど語る。

    今季の序盤は、本当に苦しい戦いだった。開幕から公式戦10試合勝ち無し。13試合連続未勝利に終わった2012-13シーズンの後半戦を思い起こさせる極度の不振だった。今になって思い返せば、シーズンが終わって10位にいるのが信じられないくらいだ。

    まず、DFBポカール。ブレーメンは過去3季連続でドリッテリーガ(3部)のクラブ(ハイデンハイム、ミュンスター、ザールブリュッケン)に敗れ、1回戦で姿を消してきた。サポーターもトラウマになっており、すっかりドリッテ勢に対する苦手意識が付いてしまった。早々に敗退し、他のクラブがミッドウィークにDFBポカールを戦っているのを傍観する悲しみと悔しさは、言葉では表せない。

    さて、今季の相手はイラーティッセンで、レギオナル(4部)のクラブ。ファンは「ドリッテ勢を回避できた」と喜び合った。選手達も「今季こそは同じ失敗を繰り返すまい」と気を引き締めていたし、正直に言えば、さすがに4部が相手ならば楽勝だと思っていた。結果として悲願の2回戦進出を決めたが、延長戦までもつれ込んで何とか逃げ切るという、薄氷を踏む勝利。余裕など、とてもではないが無かった。観ていてどちらが1部のクラブか分からないような、トホホな内容だったが、ここでは何より勝ち上がることが大事。結果が全てだ。

    ポジティブな点を挙げるなら、そう、決勝点となる3点目を挙げたFWダヴィー・ゼルケ。直前にハンガリーで行われたU-19欧州選手権で6得点を記録し、得点王に輝く大活躍でドイツを優勝に導き、帰ってきたところだった。大ブレイクの狼煙である。低迷するチームの新たな希望の星として、サポーターの期待もここでさらに高まった。この時は、まさかあんなことになるなんて夢にも思わなかった…。


    U-19欧州選手権で得点王に輝いたゼルケ

    リーグ戦は開幕から3試合、いずれもリードされながら追い付いてドローに持ち込んだものの、その後も白星が遠い。ドゥット監督は試合の度に選手やシステムを入れ替え、戦いぶりは一向に安定しなかった。


    苦闘が続いたドゥット

    特にアンカーのポジションは第1節こそMFフェリックス・クロースに任せたものの、第2節以降はCBが本職のガルヴェスを起用。この形はプレシーズンマッチでも試していたのだが、お世辞にも上手くいっていたとは言えないものだった。案の定、中盤の選手としては視野の広さや機動力に欠けるガルヴェス1人ではフィルターの役割を果たすことはできず、チームはスカスカの中央から崩れていった。その後はMFマキアディや同ユヌゾヴィッチと組ませてダブルボランチにするなど、なんとか安定させようとする意図は感じられたが、最後まで組織的な守備を完成させることはできなかった。

    開幕から9試合で4分5敗、10得点、23失点。当然ながら最下位。さすがに今季こそ2部に落ちるなと腹を括(くく)った。

    0-1で敗れたケルン戦後、ようやくドゥット監督の解任が決定。ちなみに、この試合で決勝点を挙げてドゥット監督に引導を渡したウジャーは、来季からブレーメンの一員となる。

    パスフットボールを掲げたドゥット監督だったが、ある程度割り切った戦い方をしていた1季目に比べ、2季目は見ていて何がしたいのか分からない迷走ぶり。連敗から抜け出せずに解任されたレバークーゼン時代もだが、一度歯車が狂うと立て直せない指揮官なのかもしれない。

    ただ、シャーフ前監督が退いた後のチームを引き継ぎ、昨季は最終節を待たずして残留を決めた功績は消えない。過渡期を任せるリリーフという位置付けだったと思うし、クラブ側もまさか彼に長期政権を任せることは想定していなかっただろう。そう考えると、ここまで傷が深くなる前に、もう少し早く交代に踏み切れなかったか。残念な別れとなってしまった。

    かくして、リーグ戦では1勝もできないまま11月に突入。現場のみならず、経営側にも変化があった。ヴィリ・レムケに代わり、マルコ・ボーデが相談役兼会長に就任。中長期的なビジョンでチームを強化し、CLへの復帰を目指すというボーデの方針が、これからどのように反映されていくのか注目していきたい。

    最下位に沈み、資金も乏しい中、クラブが後任監督に選んだのはU-23の監督を務めていたヴィクトル・スクリプニク。アシスタントコーチには、引退して間もないレジェンド、トルステン・フリンクスが就いた。シャーフ監督時代に独ブンデスリーガとDFBポカールの優勝を経験した2人を内部昇格させた形だが、トップレベルで指揮した経験がない彼らに託すのは、大いに不安だった。


    ドゥットの後任はスクリプニク

    いざ始まってみると、その不安感は良い意味で大きく裏切られた。それまで試合中に足が止まり、下を向く場面が目立った選手達は、見違えるようにアグレッシブな姿勢でプレーし始める。

    まず、初陣のDFBポカール2回戦でケムニッツァーに2-0と快勝。続く第9節のマインツ戦でリーグ初勝利を飾り、勢いそのままにシュツットガルトにも快勝して2連勝を飾る。

    スクリプニク監督は「アンカー」の脇にインサイドハーフを2枚配した4-3-1-2のシステムを基本布陣に据えた。ちょうど怪我から復帰したDFテオドール・ゲブラ・セラシエをマインツ戦から右SBで先発起用。MFクレメンス・フリッツをセンターハーフに、そしてガルヴェスを本来のCBに戻した。余談だが、ゲブラ・セラシエはドゥット監督時代、サイドハーフで起用されるのがあまり好きではなかったようだ。

    スクリプニク監督は、自身が指導してきたU-23からMFレヴェント・アイチチェク、FWメルヴィン・ロレンツェン、MFマクシミリアン・エッゲシュタイン、DFヤネク・シュテルンベルクら若手を多数抜擢し、トップチームの選手達の競争意識を刺激。活力をもたらす。終盤にはMFルーカス・フレーデもトップデビューを飾った。

    FWフランコ・ディ・サントは、開幕10試合で6ゴールを記録してエースの地位を確立した。だが、シュツットガルト戦の後練習中に膝を負傷してしまう。得点王争いに名乗りを上げた矢先に年内全休となり、本人はもちろん、得点源を失ったチームにとっても痛い離脱だった。

    直後に行われたHSVとのダービーマッチでは、2トップにFWハイロヴィッチと同ニルス・ペーターゼンが起用された。特に昨季のダービーで2得点していたペーターゼンには期待が集まったが、低調なパフォーマンスに終始。両名共に途中交代で退いた。ハイロヴィッチはその後もさしたるインパクトを残せないままシーズンを終え、ペーターゼンに至ってはベンチ入りもままならず、出場機会を求めて冬のマーケットでフライブルクへ期限付き移籍した。

    そうした中でチームが勢いを失わなかったのは、ゼルケを筆頭とした若手選手達、そしてバルテルスの活躍によるところが大きい。ゼルケはこのタイミングで完全に独り立ちしたと思う。ディ・サントが離脱して以降の前半戦6試合で3ゴールの活躍。その存在感は数字以上に絶大で、一気にブレーメンの主力に定着し、サポーターも彼がチームを牽引して躍進する近未来の姿を、夢見心地で思い描いたのだった(過去形)。

    バルテルスはインサイドやセンターでの起用が基本だったが、怪我などで前線の主力を欠いた時はトップ下や2トップの一角もカバー。そのユーティリティー性でチームを助けた。攻守において貢献度が高く、アタッカーとしてもチャンスメーカーとしても非常に優秀。そんな彼をフリーで獲得できたのは、お買い得だった。地元ホルシュタイン・キールから、ハンザ・ロストック、ザンクト・パウリと徐々に階段を上り、初の1部挑戦となった今季は4ゴール5アシスト。故障気味だった終盤戦は尻すぼみに終わったものの、期待以上のパフォーマンスと言える。

    U-23が主戦場だったアイチチェクは、スクリプニク監督に抜擢されて徐々に出場機会を得ていった。そして、契約に盛り込まれていた規定出場時間を満たし、2018年6月まで契約を延長した。長短共に正確なキックと豊富なアイディアを兼ね備えるチャンスメーカーだが、身長169㎝と小柄な上、突出したスピードもなく、ロングボールが中心となる展開では試合から消えがち。ハントが自身の後継者として指名した才能を開花させることができるか、来季が勝負のシーズンとなるだろう。

    もう1人のゼルケ(勝手にそう呼んでいる)ことロレンツェンは、浅黒い肌に側頭部を刈り上げたヘアスタイルも、ゼルケにそっくり。188㎝と大柄な割に足が速く、どこからでも狙えるパワフルなフィニッシュが持ち味。昨年12月のハノーファー戦、左サイドから鋭く内側に切り込み、右足を振り抜いたゴールは、貴重な勝ち点をもたらしたことはもちろん、彼の良さが詰まった内容の濃いものだったと思う。ポストワークを磨いて周囲を活かす術を身に付け、基準点の役割も果たせるようになれば、プレーの幅も大きく広がるだろう。大怪我で後半戦をほぼ棒に振ってしまったが、最終節に戻ってきて元気な姿が見られ、安心した。来季は、ロレンツェンのシーズンになる。そんな予感がしている。


    期待が大きいロレンツェン

    シュテルンベルクも、スクリプニク監督の就任後、すぐにトップチームに引き上げられた。豊富な運動量と高精度の左足のクロスを武器に、サンティアゴ・ガルシアと激しいポジション争いを繰り広げた。ただ、守備の軽さが目立ち、セットプレーで簡単にマークを外してしまうなど全幅の信頼を寄せられるまでには至らず。終盤戦はガルシアが怪我で脱落したが、CBが本職のプレードルに先発の座を譲った。来季はこの屈辱をバネに奮起して欲しい。

    アイチチェク、ロレンツェンがそれぞれ得点を記録した第13節のパーダーボルン戦(4-0)、第15節のハノーファー戦(3-3)、そして最下位で迎えた前半戦最後のドルトムント戦(2-1)は、彼らの活躍が結果に表れた象徴的な試合だったと思う。

    特にドルトムント戦は、開始早々にゼルケのゴールで先制パンチ。そして、カウンターが綺麗に決まる。フンメルスを軽々と抜き去ったゼルケのクロスに合わせたのはバルテルス。観ていてスカッとする、気持ちの良い試合だった。今思えば、ゼルケとロレンツェンが2トップを組んだの、これが最初で最後だった。もっと先が見たかった。

    一巡となる17試合を消化した時点で、勝ち点は17を獲得。16位で折り返したが、10位までは僅か2ポイント。序盤戦の絶望的な状況を思えば、大満足の結果だった。

    冬のマーケットでは、積極的に動いた。まずは、放出した選手。DFオリベル・ヒュージンク(→ハンザ・ロストック)とGKリヒャルト・シュトレビンガー(→レーゲンスブルク)は、期限付き移籍で武者修行。MFリュドヴィク・オブラニアク(→リゼスポル/トルコ)、MFエライロ・エリア(→サウサンプトン/イングランド)、FWニルス・ペーターゼン(→フライブルク)の3人も期限付き移籍だが、いずれも構想外。戻ってくることはないだろう。

    昨季の冬に加入したオブラニアクは、デビュー2戦目で劇的な同点弾となるFKを決めて鮮烈なインパクトを残したが、チームのスタイルに馴染めず、徐々に出場機会を減らしていった。スクリプニク監督も就任直後こそトップ下で起用したが、すぐに失格の烙印を押してしまった。実力は誰もが認めるところだったが…未だにドゥット前監督が、どういう意図で獲得にゴーサインを出したのか、謎のままだ。ブレーメンで“冷や飯”を食っている間に、ポーランド代表にも呼ばれなくなってしまい、何だか申し訳ない。加入時は「ボルドーの司令塔がやってくる」と随分と話題を集めたが、本人にとってもサポーターにとっても「こんなはずではなかった」という結果になった。ただ、行き先のトルコでは十分に出場機会を得ているようで、安心している。

    ウインガーであるエリアは、4-3-1-2のシステム下では居場所がない。最後は2トップの5番手という位置付けだった。パフォーマンスの波が激しく計算しづらく、およそ妻子持ちとは思えない精神的に未熟な言動もマイナス。12-13シーズンの終盤には、トゥエンテ時代からの同僚であるFWマルコ・アルナウトヴィッチと共にレバークーゼン戦の2日前、しかも午前3時に車でスピード違反を犯し、挙句の果てには警察官に対して悪態をつくなどという大問題を引き起こし、シーズンの終了までチームから追放されたことは記憶に新しい。陽気と言われた性格も、次第に幼稚と捉えられるようになった。2010年のワールドカップのオランダ代表という肩書きは、看板倒れに終わった。

    そして、アルナウトヴィッチを追う形で今季途中にイングランドへ。ナイトライフにも比較的寛容なプレミアリーグに行くことができて、結果的に良かったのではないか。シーズン終了後、英メディアに対してサウサンプトン残留を希望するとともに「ブレーメンには戻りたくない」と話していた。違約金を残して完全移籍することが、両者にとってハッピーであろう。冷たい言い方になったが、彼はそれだけクラブやサポーターの失望を買った。ブレーメンでは残念な結果に終わったが、同胞のロナルド・クーマン監督の指導の下で輝きを取り戻せるといい。そう思う。

    ペーターゼンは加入初年度の前半戦をピークに、チームの成績と同じく下降線を辿った。2季目は負傷もあったが、ディ・サントとの相性が悪く、連携に苦しんだ。3季目の先発出場はたったの2試合にとどまり、あとは前述の通り。ノッたら止まらなくなる爆発力があり、バイエルンに見出された才能の片鱗を感じさせたが、確固たる地位を築くことはできなかった。出番が限られていても不貞腐れることなく、誰よりもストイックな姿勢で練習に取り組む彼には好感が持てたし、それはどのクラブに行っても変わらないだろう。

    期限付き移籍先のフライブルクでは、デビュー戦でいきなりハットトリックを達成。直後に負傷離脱する不運に見舞われるが、復帰後は再び得点を量産。チームを残留に導くことはできなかったが、12試合で9ゴールを記録し、その実力を証明した。これを書いているタイミングで、フライブルクへの完全移籍が正式に発表された。1年で1部に戻ってきて欲しい。また会おう。ノルトダービーでの“ドッペルパック(注:2得点)”は一生忘れない。

    一方、新しく加わったのは合わせて4人。19歳のGKミヒャエル・ツェッテラー(ウンターハヒンク)は先行投資で、GKコーエン・カステールス(ヴォルフスブルク)、MFレヴィン・エズツナリ(レバークーゼン)の2人は期限付きで加入した。


    正GKを奪取したカステールス

    カステールスは僅か5カ月の在籍期間でラファエル・ヴォルフから正GKの座を奪取。高いセービング能力、状況判断も適切で、これといった欠点がない。フィードも上手く、彼が攻撃の起点になることもあった。

    エズツナリは合流すると瞬く間にスクリプニク監督の信頼を得て、後半戦のほぼ全ての試合に出場した。柔らかいボールタッチと独特のリズムで攻撃に変化を付け、多くの決定機を生み出した。単独で仕掛けられる上、クロスの精度も高く、サイドで起用しても十分に能力を発揮するが、最も適性があるのはトップ下だろう。来夏に保有権を持つレバークーゼンへ戻ることになっているが、それでも貴重な戦力には違いない。来季は攻撃陣で中心的な役割を果たすことを期待したい(レバークーゼンよ、売ってくれ)。

    ヤニク・ヴェスターゴーアの獲得は、今季のマーケットで最大のヒットだろう。


    ホッフェンハイムから獲得したヴェスターゴーア

    ホッフェンハイムから完全移籍でやってきた彼が加わり、最終ラインの安定感は格段に向上した(堅くなったとは言っていない)。セバスティアン・プレードル、アッサニ・ルキミヤなどの既存戦力は、競り合いや空中戦には強いが、横の揺さぶりに弱い。彼らのさらに上をいく199cmの長身でありながら、機動性も高く、幅広い範囲をカバーできる、まさしく理想的な人材だ。

    こうして脆弱なポジションにピンポイントで補強を施して臨んだ後半戦は、ヘルタ・ベルリン、ホッフェンハイム、レバークーゼン、アウクスブルクと上位チームをものともせずに怒涛の4連勝。続くシャルケ戦も、ラストワンプレーからプレードルのゴールが決まり、引き分けに持ち込んだ。ロケットスタートで一気に順位を上げ、ヨーロッパリーグの出場権を十分に狙える位置につけた。慢性的な膝の負傷を抱え、手術と長期離脱を繰り返していたMFフィリップ・バルクフレーデが調子を上げてきたことも、チームを勢い付かせたと思う。

    さらにチームを活気付けたのは、今年2月13日に攻守の要であるズラトコ・ユヌゾヴィッチが、2018年までの契約にサインしたこと。これが今季一番嬉しいニュースだった。


    2018年までの契約にサインしたユヌゾヴィッチ

    彼がいるといないとでは、まるで別のチームになるからだ。今季決めた6つのゴールのうち、5つが直接FK。今や独ブンデスリーガで屈指のキッカーに成長した。数多くのクラブから届いた誘いを断り、契約延長を決断。昨夏から返事を保留し続けてきたため、他の選手達と同じくフリーで出ていくものと思っていたが、まさかの残留。「ビッグクラブでプレーするべき器だから仕方ない」と、別れを受け入れる心の準備までしていたのだが(笑)。

    トーマス・アイヒンGMと一緒に「2018」とプリントされたユニフォームを持った彼の写真を見た時の感激と言ったら、もう…。サポーターにとって、これ以上の贈り物はない。フリッツの次にキャプテンを任されるのは、彼しかいないだろう。

    離脱していたディ・サントも後半戦の頭から復帰し、ヘルタ・ベルリン戦でいきなり2得点。この段階でディ・サント、ゼルケ、ユヌゾヴィッチ、バルテルスが健康体で揃った。「これなら、どのクラブの守備でも打ち砕ける」と、久しぶりにブレーメンの攻撃陣に誇りを感じた。

    第23節のヴォルフスブルク戦は5失点を喫して敗れたものの、勢いそのままに果敢に攻めて前半で3点を奪った積極的な姿勢は、ポジティブに受け止められた。この試合は、攻め抜いた結果の力負け。今季対戦した中でバイエルン、ヴォルフスブルク、ボルシアMGの3クラブだけは「敵わないな」と思った。個の能力はもちろん、戦術的なレベルも段違いだった。特にヴォルフスブルクに対しては、選手を引き抜かれるなども含めて苦手意識がある(おのれ、アロフスSDめ…)。

    印象に残っているのは、第33節のホームでのボルシアMG戦。ELの出場権を得るためには勝つしかない中で、公式戦12試合負けなしの相手に前半から敢えてオープンな撃ち合いを選択した戦いぶりは、負けはしたが誇りに思えた。「前半はとにかく無失点で」などという消極的な“楽隊(注:ブレーメンの愛称)”の姿は見たくなかったし、どこまでも攻撃的にというチームスピリットが、今も生きていることが確認できたのも嬉しかった。

    逆にがっかりしたのは、まずビーレフェルトに完敗したDFBポカールの3回戦。ほぼベストメンバーを揃えながら、内容も散々。ちなみに、この試合でカステールスがデビューした。

    DFBポカールはともかく、終盤戦で下位に立て続けに勝点を取りこぼしたのはいただけない。第27節のマインツ戦は0-0、第28節のシュトゥットガルト戦は2-3、第30節のパーダーボルン戦は2-2、第32節のハノーファー戦は1-1。アウクスブルクがミュンヘンでバイエルンに勝つサプライズはあったが、ブレーメンは取りこぼした試合の半分でもモノにしていれば、他クラブに関係なくELの出場権を確保できていたはずだ。本当に、もったいないことをした。

    とりわけ、当時は最下位だったシュツットガルトとの第28節で負けてはいけなかった。そして、この試合で致命的なポカを犯したヴォルフはカステールスにポジションを奪われ、その後は全く出番を与えられなかった。飛び出しの判断ミスといい、丸っきりミエレ(セバスティアン・ミーリッツ)のデジャヴ。以後、6試合でゴールマウスを任されたカステールスは、最後方からチームに安心感をもたらした。

    カステールスは非常に完成度の高いGKで、このまま残って長くゴールを守ってもらいたかったが、保有権を持つヴォルフスブルクに予定通り復帰。彼なら、ディエゴ・ベナーリオを引きずり下ろすことも可能だ。

    終盤戦で失速した要因として、まず1つは主砲のディ・サントが鳴りを潜めてしまったことが挙げられる。4月以降は8試合で僅か1ゴールと大ブレーキ。細かい怪我を繰り返したこともあるが、熱望していたコパ・アメリカに出場するアルゼンチン代表に選出される可能性がほぼ無くなったことも、少なからずモチベーションに影響したように思う。

    そして、何より好調だったチームに水を差したのが、4月1日に発表された衝撃的なゼルケの移籍発表だ。クラブの公式声明文を目にしても、私はしばらくその意味が理解できなかった。「自分の目を疑う」とは言葉で知っていたが、「こういうことか…」と体感した。他の多くのサポーターも、事態を呑み込むのに時間を要したのではないか。

    というのも、ゼルケは前年9月に2018年までの新契約にサインしたばかりだったからだ。



    年代別のドイツ代表でエースを務め、いずれはドイツを代表するストライカーになると将来を嘱望される超逸材を2部のクラブに売却するとは誰もが夢にも思わなかっただろう。売却するならば、契約が残り1年となったディ・サントというのが大方の予想だった。移籍金は800万ユーロ+ボーナス。あまりにも安過ぎる。20歳の若手に対しては妥当な金額という意見もあるが、彼の価値はすぐにその倍以上に跳ね上がるだろう。多くの人材を掘り当て、その手腕を高く評価されているアイヒンGMだが、今回ばかりは誤った決断をした。少なくともディ・サントの去就が不透明な段階で、先にゼルケを動かすべきではなかった。

    この商談は急に持ち掛けられた話ではなく、実は前年の暮れから交渉が始まっていたというのだから驚きだ。ホッフェンハイム時代の恩師、ラルフ・ラングニックSDの存在、そしてレッドブル社のバックアップを受けて資金が豊富なライプツィヒのプロジェクトに魅力を感じ、最後はゼルケ自身が移籍を希望したという。本人が望んだというのもショックだったが、クラブで一番有望な若手を2部に売ってしまうクラブのメンタリティの方が私は心配になった。

    サポーターも荒れに荒れ、ネットだけにとどまらず、練習場まで押しかけて裏切者と激しく批難。ゼルケにはボディーガードが張り付く騒ぎにまでなった。移籍を発表した直後のマインツ戦では、ゼルケに対して容赦のないブーイングが浴びせられた。私自身も彼を冷たい目で見ていたというのが正直なところだ。裏切られたという思いから、憎らしく思う気持ちがあったし、数日経っても彼が今季限りでいなくなるという現実を受け入れることができずにいた。

    しかし、彼はそんなことでめげるほどヤワな男ではなかった。今まで以上に前線から激しくボールを追い、誰よりも献身的にプレー。移籍発表後も3得点をマークし、貴重な勝ち点をもたらした。

    次第に、彼に対するブーイングは聞こえなくなった。勝利に貢献することで、罵声を浴びせる人々を黙らせた。チームのために全力で戦い、溌剌とした笑顔で同僚のゴールを祝福する姿に、私自身も気が付けば元通りに彼を応援していた。自分のプレーで人を応援したい気にさせる。それも彼の才能であり、魅力の1つなのだと思った。

    近い将来、彼は必ずビッグになる。「夢をありがとう」という言葉は個人的に嫌いなのだが、夢を見させてもらったことは確かだ。ほんの一時だったが、他クラブのサポーターに自慢できるような攻撃陣が見られたし、何度もチームを救ってくれたことに感謝している。

    さようならダヴィー・ゼルケ。ツヴァイテ(2部)でプレーするのは1季だけにして欲しい。

    そんな終盤戦だったが、もちろん良い出来事もあった。まずはHSVとの「ノルトダービー」での勝利だ。やはり、この試合だけは特別だ。勝つと、バイエルンに勝つよりも気持ちがいい。HSVに1シーズンに2敗は絶対に嫌だった。試合終了後、ゴール裏に全員集合した写真は、今季のベストショットだ。



    皆、とても良い笑顔で、永久保存版だろう。公式ファンショップも、早速プリントシャツを販売。さすが、商魂が逞しい(買うぞ)。

    この試合では、長く戦列を離れていたMFエズカン・イルディリムが復帰。膝の怪我が当初の想定よりも悪く、一時は引退説まで囁かれたが、長く苦しいリハビリを乗り越えて戻ってきてくれた。本当に嬉しいし、決して復帰を諦めなかったことにも賛辞を送りたい。あまり見せ場はなく、これが今季の最初で最後の出場機会だったが、まだ22歳。これからだ。

    昨季、プロ契約を結んだ直後に大怪我を負い、イルディリムと一緒にリハビリしていたMFユリアン・フォン・ハーッケもシーズンをほぼ棒に振ったが、4月に戻ってきてU-23で何試合かプレーした。

    共に来季の復活に期待したい。

    そして、そのU-23も頑張った。プレーオフでボルシアMGを下し、見事に3部へ昇格。これはチームの強化の上で、とてつもなく大きい。単純にリーグのレベルが上がるだけでなく、これで若手選手を多く抱えたまま経験を積ませることが可能になった。例えば、出場機会の少なかったヒュージンクを、今季の途中でハンザ・ロストック(3部)に貸し出すようなことはしなくて済むということだ。でかしたぞ!

    5月に入ると、我らがキャプテン、フリッツが引退を先延ばしにして契約を1年間延長することが決まった。もうシーズンを通して怪我なくフル稼働できる身体ではないが、彼が来季もチームを支えてくれるというだけで、どれだけ心強いことか。

    そして、フリッツより一足先に(と言っても3年前だが)引退したティム・ボロウスキが、U-23のスポーツディレクターに就任することになった。契約は2018年6月までの3年間。フリンクスに続き、こうしてかつての仲間がクラブに戻ってきて働いてくれるとは、なんて素敵なのだろう。来年には、フリッツもこの道へ進むかもしれない。

    その直後には、別れ話も。ユヌゾヴィッチはめでたく残留したが、もう1人のオーストリア代表・プレードルはクラブを去る決断を下した。2008年にグラーツから加入してから7年間、数少ない古株だ。チャンピオンズリーグに出られるチームに移籍してきたつもりが、その年から2ケタ順位の常連に。既に去っていった多くのスター選手達のように、さっさと見切りをつけていれば、もっと華やかなキャリアになっていたかもしれない。08-09シーズンのDFBポカール優勝、たった1つではあるが、タイトルを得たのは救いだろうか。

    今のブレーメンがあるのは、過渡期のチームを見捨てず、ここまで支えてきてくれた彼のお陰だ。契約を延長するか、最後まで悩んでくれた。新たに加わったガルヴェスとヴェスターゴーアが当たったことで、クラブ側としてはどうしても引き留めなければならない存在ではなくなっていたことも事実。そうした温度の変化を、彼も感じ取ったのかもしれない。最後のホームゲーム、ボルシアMG戦を前にした5月12日に公式発表。試合前のセレモニーは、涙なしには見られなかった。

    移籍先はイングランドのワトフォードだ。現在28歳、比較的選手寿命の長いCBでは、ベテランと呼ぶにはまだ早いだろう。プレミアリーグで成功し、一時代を築くような活躍を期待している。彼には「さようなら」というより「またね」という言葉がいい。そのうち戻ってくる予感がするからだ。どうせ、ミクーやナウド、クラスニッチ達のようにイベントの度に呼ばれるに決まっている(笑)。またすぐに、ブレーメンで会う日が来る。またね!(移籍金は残していけ)

    最終節は、フリッツ、ゼルケ、バルクフレーデ、ガルヴェス、ガルシアを欠く中、ドルトムントとの直接対決に敗れ、惜しくもELへの出場はならなかった。それでも、最初に言った通り、今季は本当に良いシーズンだったと思う。後半戦は、残留争いとは無縁に過ごすことができたからだ。

    順位表を見ると、失点数は65で降格したパダーボルンと並んでリーグワースト。よく、中位で終われた(苦笑)。得点は50でリーグ6位。アウクスブルク、ホッフェンハイム、ドルトムントを上回った。まあまあ…だろうか。やはり、楽隊は点を取ってなんぼだ。ディ・サントとゼルケの強力2トップは1季で解体されたが、来季もこうありたいものだ(失点は減らそう)。

    代表関連の話題も少ししたい。U-21欧州選手権では、ヴェスターゴーアを擁するデンマーク代表が、見事にグループリーグを突破。2016年に開催されるリオデジャネイロ五輪への出場権を獲得した。これで、五輪におけるフットボールを観るモチベーションが俄然高まったというものだ。

    今年1月~2月に開催されたアフリカ選手権では、マキアディが率いるDRコンゴ代表が3位に輝き、銅メダルを獲得。マキアディはドゥット前監督がフライブルクから連れてきた選手だが、ドゥットが解任されてからはめっきり出番が減ってしまった。それでも文句1つ言わず(少なくとも表立っては)、主に守備固めで起用された僅かな時間を全力でプレーしていた尊敬すべき選手だ。



    2人とも、おめでとう!

    DRコンゴ代表の話題が出た以上、ヤツに触れないわけにもいくまい。アッサニ・ルキミヤは、この大会を前にDRコンゴ代表を引退した。やはり、アフリカ大陸の移動は相当キツいそうだ。クラブに専念してくれるのはありがたいが…。今季、ルキミヤは第21節で「キッカー」のベストイレブンに選出(何かの間違いではないかという説が根強い)されるなど、随分と活躍した。大事なところでゴールも決めた。そして、しっかり(?)とチョンボも犯し、評価を程よく落とすことも忘れない。他のクラブから欲しがられない程度の評価にとどめる匙加減、絶妙である。

    定期的にやらかすが、なんだかんだで皆が頼りにする存在だ。何より、愛されている。失点に繋がるようなミスをしても、サポーターは怒るよりも「またやりやがった(苦笑)」という反応だ。「なに、ディフェンダーに怪我人だと?案ずるな、俺たちにはヤツがいる。困った時のルキミヤ!」という“お約束”もある。ただ、年々ミスは少なくなっている気がする(相手FWにパスするのだけはやめてくれ…)。

    振るわなかった選手についても、少し述べたい。ルカ・カルディローラは、昨季ディフェンスリーダーとして活躍したが、今季はほとんど出番がなかった。スクリプニク監督の就任以降は、プレードルが怪我した時に貰ったチャンスを活かせず、今年に入ってからは一切出場がなかった。もっとも、スクリプニク監督にとって、彼は構想から外れているわけではなく、状態が良ければ使う意向だという。イタリア復帰の噂が絶えないが、SBもこなせる彼の存在は貴重。残ってくれるなら、ありがたい。残留するかは半々といったところか。

    ハイロヴィッチも失望の大きいシーズンとなった。開幕からスタメンに抜擢されるも、焦りからか何度も決定機を逸するなど、空回りする場面が目立った。その後もトップ下、右サイド、2トップの一角とポジションを変えて試されたが、最後までフィットできず。印象に残っているのは、第31節のフランクフルト戦。右サイドから鋭く内側に切り込んで左足で振り抜いた突破は、光るものがあった、やはり彼の適性はサイドだろう。評判通り、キックの質は高い。

    幸い、フリートランスファーで加入したため、それほど批難は浴びていない。第30節のパーダーボルン戦では、途中出場から同点ゴールを決めた。来季に向け、期待を抱かせるだけのものは見せてくれた。彼が2季目から本領を発揮し、スタメンに定着できれば、右のユヌゾヴィッチ、左のハイロヴィッチとセットプレーでも大きな武器になりそうだ。

    オフシーズンには、沢山の「おめでた」が!ユヌゾヴィッチ、ゲブラ・セラシエ、ルキミヤ、カルディローラ、シュトレビンガーと結婚が相次いだ。昨年に結婚したバルクフレーデも6月に挙式。生涯のパートナーを得た選手達の、これからの活躍に期待したい。






    最後に、12-13シーズンから「鍼灸トレーナー」として在籍した鈴木友規さんが3年契約を終えてクラブを離れることになった。鈴木さんは、こういった形で海外のクラブと関わっていくこともできるのだということを示した。何より、3年間裏方から選手達をサポートしてくれたことに、心から感謝申し上げたい。3年間、ありがとうございました。次の挑戦も応援させて下さい。

    もう、15-16シーズンの開幕まで1カ月。あっという間だ。これを書いている時点で、GKフェリックス・ヴィートヴァルト、DFウリセス・ガルシア、FWアンソニー・ウジャーの獲得が決まっている。マーケットが閉まるまでに、他にどんな仲間が加わっているのか楽しみだ。新シーズンが待ちきれない!



    ★独ブンデスリーガの珍景☆

    ◆メェ~惑なゴールパフォーマンス

    文・暁空也

    独ブンデスリーガ史上、最もメェ~惑なゴールパフォーマンスが披露された。

    第24節のケルン対フランクフルト。81分にゴールを決めたケルンのFWウジャーは、ピッチサイドに佇むチームのマスコット「ヘンネス8世」に駆け寄ると、その角を引っ張って喜びを分かち合った。

    しかし、ケルンのマスコットは着ぐるみではない。

    “本物”のヤギだ。



    「こら、やメェ~ろ~!」

    「だメェ~!」

    とヘンネス8世が悲メェ~を上げたかどうかは定かではないが、試合の翌日にウジャーはインスタグラムに写真付きで「乱暴な祝福を謝るよ」と投稿。反省を示した。

    ヘンネス8世に怪我はなかったが、危うく動物愛護団体から睨まれかけたウジャー。来季からプレーするブレーメンのマスコットは着ぐるみだが、無理は禁物だ。


    ブレーメンのマスコット(写真はグッズ)



    第7章 応援するクラブの来季への“隠し球”

    独ブンデスリーガのクラブには、虎視眈々とブレイクスルーを狙う未完の大器がいる。15-16シーズンに大輪の花を咲かせるのは誰か。執筆者達が、応援するクラブの“隠し球”を明かす。


    ■僅か9分間で目に焼き付いた才気の燐光

    文・暁空也

    才気の燐光(りんこう)は、たった9分間でも目に焼き付いた。昨年12月20日に開催された第17節、マインツ対バイエルン。81分に投入されたマインツの背番号30は、バイエルンの圧力に怯まず、果敢に仕掛ける。ドリブルにはスピードとキレがあり、巧みにリズムを変えながら、マーカーを翻弄。ペナルティエリア付近で怖さを漂わせる。1-1の硬直したスコアを動かすための“起爆剤”は、その役割を全(まっと)うしようと意気軒昂だった。

    しかし、左利きの18歳からゴールやアシストなどの決定打は生まれない。逆にバイエルンは90分、中央から左に展開すると、折り返しにロッベンが詰めて決勝弾。ワールドクラスに“違い”を見せ付けられた。マインツは、先制しながら逆転負け。自身がピッチに立ってから試合をひっくり返され、パトリック・プフリュッケは悔しさとともにデビューを終えた。

    そしてそれが、2014-15シーズンで唯一の出番となった。9分間でボールに7回触り、パスの成功率は50%、1対1の勝率は46%。数字からは、大器の“縁取り”すら判然としない。

    さらに、得意とするトップ下や2列目のサイドはチーム内でも屈指の激戦区。既存のマリやク・ジャチョル、デ・ブラシス、ハイロ、クレメンス、ネデレフらに加え、バイスターや武藤嘉紀など来季への新戦力ともポジションを争わなければならない。

    もっとも、“王者”に挑んだ9分間で振るった技術や胆力は、18歳のそれを遥かに凌駕していた。若さとは、可能性だ。トップチームで最年少のプフリュッケが来季、実績ある“先輩”を一気に追い越し、才華を煌(きら)めかせても何ら不思議ではない。

    トップチームで最年少のプフリュッケ


    ■レーヴ監督が熱視線を注ぐクノヘ

    文・脚魂

    センターバックのロビン・クノヘだ。



    U-21ドイツ代表の常連で、A代表のレーヴ監督もチェックを忘れない逸材は、昨季に続いてナウドとのコンビでレギュラーの座をキープしていたが、リーグ戦の終盤はクローゼと入れ替わるようにベンチを温めた。リーグ戦、DFBポカール、チャンピオンズリーグと「3足の草鞋」を履く来季のヴォルフスブルクにとって、CBは補強ポイントの1つ。新たなるライバルとのレギュラー争いに勝ち残れるか、注目である。


    ■堅守と魅惑の攻撃参加。成長を続けるブルックス

    文・Siebenendenweg

    センターバックのジョン・アントニー・ブルックスを推奨したい。


    ブルックスの練習風景(筆者撮影)

    ベルリン生まれのアメリカ代表は、2部時代の2012-13シーズンに起用されて以来、試合ごとに成長を続けている。守備面はもちろん、左足からのロングフィードや時折見せる攻撃参加も魅力。まだ、試合で失点に直結する決定的なミスをしてしまうシーンは見られるが、経験を積むにつれ、安定感を増してきている。かつてヘルタに所属していたボアテング(バイエルン)のようなトッププレーヤーになることを期待する。


    ■次代のゲッツェと呼ばれるパスラック

    文・月峰総一朗

    17歳のフェリックス・パスラックを挙げる。ドルトムントU-17とドイツU-17代表でキャプテンを務める卓越したキャプテンシーの持ち主は、U-17ドイツ選手権2連覇の最大の立役者。番記者からは「ネクスト・ゲッツェ」と呼ばれているスーパータレントだ。



    視野の広さ、運動性、ボール扱いの巧みさ、シュート技術の高さに加え、サイドバックからサイドハーフ、トップ下まで幅広いポジションでのプレーが可能。首脳陣は彼を慎重に育てたい方針で、すぐにはトップチームに上げないらしいが、チャンスがあれば間違いなく一気に飛躍するタレントである。

    今はドルトムントのファンしか知らない選手だが、近い未来、必ず表舞台に立つ。覚えておいて損はない。



    ■ボルシアMGの“心臓”を担うジャカ

    文・とんとん

    MFのグラニト・ジャカだ。




    今や、バイエルンやアトレティコ・マドリーなどからも注目されるタレントで、非常に正確な左足のキックを持っており、長短のパスを織り交ぜてボルシアMGの攻撃を司る。いわば、チームの“心臓”だ。それを示すのが、成功したパスの本数。今季は、シャビ・アロンソに次いでリーグ2位を記録した。

    短所は、キレやすい性格。今季のリーグ戦ではイエローカードを10枚(リーグ3位)、レッドカードを1枚、それぞれもらうという「カードコレクター」だった。最終節、2年間に亘りコンビを組んだドイツ代表MFクラマーとの最後の試合(クラマーは来季、保有権を持つレバークーゼンに戻る)では、早い段階で警告を受けると、その後も何故か怒り狂い、前半40分過ぎに交代を命じられている。


    ■恐れを抱くほどの技術を持つシュテンデラ

    文・なかがわ しんや

    フランクフルトで最も推奨できる若手は、ズバリ、MFシュテンデラだ。



    元々はトップ下の選手だが、シーズン途中から長谷部とボランチのコンビ(横というよりは、主に縦関係)を組み、ブレイク。守備で物足りない部分はあるが、まだ19歳。むしろ、その年齢であの技術の高さには、恐れを抱くほどだ。

    年代別のドイツ代表にも定期的に選ばれており、先日のU-20ワールドカップにも参加。将来のA代表の主軸候補であり、若手マニアのフットボールオタクならば覚えておいて損はない。


    ■荒削りながら、能力の高さを漂わせるイェドバイとブラント

    文・Fusshalt

    DFイェドバイとMFブラントだ。


    イェドバイ


    ブラント

    イェドバイは右サイドバックもこなせるポリバレント性と運動能力、ブラントは若手らしからぬ落ち着いたプレーぶりとドリブル突破、そして何よりもボールの受け手の場所を予想したパス能力が武器。どちらもまだ粗削りながら、その能力の高さはプレーぶりからもビンビンに感じられるだけに、ぜひ注目して欲しい。


    ■将来有望なストライカー、ブラスニッチ

    文・Holli

    パーダーボルンは、レバークーゼンU-19からマルク・ブラスニッチを2年間の期限付き移籍で獲得した。U-19ブンデスリーガでは26試合で27得点。UEFAユースリーグでも5試合で5得点と、将来有望なストライカーだ。



    ■バラックを想起させるホイベルク

    文・まっつー

    注目する若手は、迷わずホイベルクだ。今季はアウクスブルクに貸し出され、主力としてヨーロッパリーグ出場に貢献した。来季はバイエルンに戻ってくることが決まっており、シーズン終了後にはU-20ワールドカップでも活躍した。



    バイエルンではサイドをはじめ様々なポジションで使われていたが、本職はボランチか、その一列前の攻撃的MF。イメージとしては、「小皇帝」こと元ドイツ代表のミヒャエル・バラックのようなスケールが大きいMFである。強烈なミドルシュートには、どこか彼を思い出させるものがある。バイエルンで多くの出番を得るのは難しいが、ペップのお気に入りという噂もあり、来季の活躍を楽しみにしたい。


    ■柔軟な“ポジションレス”に才気が漂うグアイダ

    文・まるよし

    チュニジア国籍の22歳、2列目であればどこでもこなせる左利きのMF、グアイダを紹介したい。



    チュニジア生まれ、フランス育ちのグアイダは、フライブルクでの3年間のプレーを経て2014-2015シーズンにHSVへ移籍。今年3月にはチュニジア代表として来日し、A代表でのデビューを飾った期待の若手だ。当初はセカンドチームの選手として契約したが、ホームで行われた第12節、ブレーメンとの「ノルトダービー」で、いきなりツィンバウアー監督にスタメンで抜擢され、フル出場を果たした。

    持ち味は、緩急がある独特なリズムのドリブル。まだ調子に波があり、試合によっては消える時間もあるが、好調時は次々と単騎で敵の守備陣を切り裂いていく。ドリブルだけでなく、時折見せる、下がってボールを受ける柔軟な“ポジションレス”の動きには、プレーの幅の広さも感じられる。クラブは、そのポテンシャルを高く評価。今年4月29日にトップチームの選手として2018年までの契約を結んだ。


    ■来季はロレンツェンのシーズンになる

    文・ゆんゆん

    ※第7章から抜粋・編集

    FWのメルヴィン・ロレンツェンだ。



    浅黒い肌に側頭部を刈り上げたヘアスタイルは、今季にブレイクしたゼルケにそっくり。188㎝と大柄な割に足が速く、どこからでも狙えるパワフルなフィニッシュが持ち味だ。昨年12月のハノーファー戦、左サイドから鋭く内側に切り込み、右足を振り抜いたゴールは、貴重な勝ち点をもたらしたことはもちろん、彼の良さが詰まった内容の濃いものだったと思う。ポストワークを磨いて周囲を活かす術を身に付け、基準点の役割も果たせるようになれば、プレーの幅も大きく広がるだろう。大怪我で後半戦をほぼ棒に振ってしまったが、最終節に戻ってきて元気な姿が見られ、安心した。来季は、ロレンツェンのシーズンになる。そんな予感がしている。



    ◇魅惑の“イケメン”コレクション◇

    文・暁空也

    イケメン、それは美。

    イケメン、それは華。

    イケメン、それは正義。

    イケメン、それは集客装置。

    女性の心を撃ち抜く、独ブンデスリーガの“精鋭”を集めた。

    なお、日本人は除外した。また、モーニング娘。では保田圭派だった筆者の審美眼がアテになるかは定かではない…。

    1)ナディム・アミリ(ホッフェンハイム)


    2)ロマン・ビュルキ(フライブルク。来季からドルトムント)


    3)ブラディミール・ダリダ(フライブルク)


    4)ルイス・ホルトビー(HSV)



    5)マッツ・フンメルス(ドルトムント)



    6)ティン・イェドバイ(レバークーゼン)



    7)ロリス・カリウス(マインツ)


    8)セバスティアン・ラングカンプ(ヘルタ・ベルリン)


    9)メンスール・ムイジャ(フライブルク)



    10)マルビン・プラッテンハルト(ヘルタ・ベルリン)



    11)マルコ・ロイス(ドルトムント)



    12)アルトゥル・ソビエフ(ハノーファー)



    13)ヤン・ゾマー(ボルシアMG)



    14)マッティ・スタインマン(HSV)


    15)アダム・サライ(ホッフェンハイム)


    16)ケビン・トラップ(フランクフルト。来季からPSG)


    17)マリオ・ヴランチッチ(パーダーボルン)


    18)ブラドレン・ユルチェンコ(レバークーゼン)


    19)カルロス・サンブラーノ(フランクフルト)


    眼を奪われたイケメンは、いるだろうか。

    18人の中から発見した“マイ・アイドル”を追うと、来季の独ブンデスリーガの新しい楽しみ方になるかもしれない。

    ※可能であれば、女性の読者はコメント欄を使って“推しメン”を投票して下さい。「その他」の名前でも構いません。分母によっては、参考にも新しい記事にもなります。くれぐれも、男性は投票しないように(笑)。



    終章 その他

    最後は、自由に書いてもらった。


    ■推奨銘柄が“高配当”

    文・暁空也

    開幕前のプレビュー(http://ch.nicovideo.jp/football-kyo-no-utage/blomaga/ar606337)で、執筆者達は23歳以下の「イチオシの若手」を推奨した。私が挙げたのは、マランダ(ヴォルフスブルク)、ルーカス・ピアソン(フランクフルト)、ゼルケ(ブレーメン)の3人だ。

    マランダはバイエルンとの開幕戦で途中出場し、その後も少しずつプレー時間を伸ばしていったが、今年1月10日に交通事故で急死。未来は閉ざされた。謹んで哀悼の意を表する。ルーカス・ピアソンは期待したほどの戦果を残せなかったが、ゼルケは底知れぬ偉才が開花。ブレーメンを担当するゆんゆん氏が上述したように、良くも悪くも特大のインパクトを与えた。

    また、同プレビューでは年齢に関係なく各クラブから1ずつ、“推奨銘柄”を供した。レバークーゼンのベララビ、ホッフェンハイムのフォラント、バイエルンのガウディーノ、ハノーファーのビッテンコート、フランクフルトのシュテンデラ、ヘルタ・ベルリンのプラッテンハルト、マインツのネデレフ、パーダーボルンのカチュンガ、ブレーメンのハイロヴィッチ、ボルシアMGのハーン、シュツットガルトのディダヴィ、HSV(当時)のター、ケルンのツォラー、シャルケのギーファー、ヴォルフスブルクのクノヘ、フライブルクのケンプフ、アウクスブルクのパーカー、ドルトムントのヨイッチだ。

    マインツのネデレフは1試合も出なかったが、ベララビとクノヘはドイツ代表に名を連ねるほどになり、フォラントはチームの得点王。シュテンデラやケンプフも成長が著しい。まずまず、優良株を推奨できたのではないだろうか。

    来季は誰が覚醒するのか。機会があれば、また“予言”したい。


    ■ヘルチーニョに注目を

    文・Siebenendenweg

    プレビュー(http://ch.nicovideo.jp/football-kyo-no-utage/blomaga/ar606337)の「ブサカワから“ナマモノ”まで多彩なマスコット」では紹介されなかったが、ヘルタ・ベルリンの「ヘルチーニョ」は、ハーフタイムなどでのパフォーマンスが人気を集めている。かつては練習試合にも出場。“動けるマスコット”として、注目して欲しい。



    ■ラングニックの現場復帰でライプツィヒに昇格の予感

    文・昴

    来季を少し展望しておきたい。個人的に残念なのはシャーフ監督の退任だ。マイアーが得点王を獲るなど、彼の功績は今後のフランクフルトに残ると思うが、後任が“あの”アルミン・フェーとなると…。

    それから、今季は2部で足踏みしたライプツィヒ。ラングニックSD(スポーツディレクター)の現場復帰は非常に大きい。4年ぶりに監督業を再開する。順当であれば、2016-2017シーズンにはライプツィヒを1部で見られるのではないか。

    来季は、シュツットガルト(DFリュディガーは移籍していない可能性が高いが…)とブレーメン(FWゼルケはいないが…)に、ちょっと注目したい。

    夏のマーケットが進み、各チームの陣容が見えてきた頃に、また書ければと思っている。それでは、また新シーズンで!


    ■試練に打ち勝ち、新たな時代へ

    文・月峰総一朗

    「今季のドルトムントファンは試されている」と、私は何度も発言してきた。「近年の成功しか見ていない我々が、チームが苦難に陥った時に、どんな反応を見せるのか」と。けれども、ほとんどのファンがこの試練に打ち勝ったと思うし、それは今後も応援していく上で、大きな財産になるのではないだろうか。全体的には、最後まで楽しませてくれたというのが素直な感想だ。

    いよいよ、ドルトムントは新しい時代を迎える。各自、色々と思うところはあるだろうが、まず我々がトゥヘル監督を信頼しなくては。彼に時間を与える必要があるし、チームを中長期的に強化してもらえればそれで良いと思っている。あまり期待のハードルを上げないことをお勧めする。

    最後は、クラブを去ることになったクロップ監督が残した言葉で、私がいつも心の中にとどめている言葉で締めくくりたい。

    「常にチャレンジし、壁を乗り越えようとするのが人生だ。すべてが完璧に運ぶだけでは、すぐに物足りなくなってしまうだろう」


    ■私選ベストイレブン

    文・とんとん

    私が思う、今季のベストイレブンを発表したい。




    …“普通”になってしまったため、チャンピオンズリーグおよびヨーロッパリーグに参戦したクラブの選手を除き、ベストイレブンを選んでみる。




    これなら、どうだろうか。



    ■偉大なるキャプテン“ヤロ”

    文・まるよし

    かつてHSVでスター選手として活躍したダビド・ヤロリムの引退試合が3月28日、イムテック・アレーナで行われた。


    引退試合の告知


    引退試合記念ユニフォーム

    ヤロリムは2003年にニュルンベルクから加入。退団した2012年まで9シーズンに亘り、HSVでプレーした。その間、出場した公式戦の数は342。そのほとんどの試合でキャプテンマークを巻き、チームを牽引し続けた。


    試合を提案したバイヤースドルファーCEOと抱擁を交わすヤロリム

    この日の試合は、往年の名選手達が「HSVオールスターズ」と「ヤロリム・ドリームチーム」に分かれて行われ、現役当時と変わらない華麗なプレーで集まった3万2000人のファンを沸かせた。(出場選手一覧http://www.sport1.de/fussball/bundesliga/2015/03/abschiedsspiel-fuer-david-jarolim-hsv-all-stars-vs-jaros-dream-team )



    かつて元日本代表の高原とプレーしたバルバレスの姿も



    ヤロリム・ドリームチーム



    HSV・オールスターズ



    エスコートキッズたちも全員14番のユニフォームを身に着けた

    ヤロリムは、前半はヤロリム・ドリームチームで、後半はHSVオールスターズで、それぞれプレー。引退試合ながらも、彼らしく前日までしっかりとトレーニングを重ね、代名詞でもあった中盤での激しいプレーやボール奪取を披露した。

    試合後は、長女のエラちゃんを抱えスタジアムを一周。スタンドからは惜しみない万雷の拍手が注がれ、そして、9シーズンを共に戦ったレジェンドへファンは愛を込めて“ヤロ”コールを送り続けた。


    3万2千人ものファンがスタジアムへ駆けつけた


    娘を抱えてスタジアムを一周


    試合の収益は小児ガン支援団体に全額寄付された

    現在、母国・チェコでライセンスの取得を目指すヤロリム。間もなく監督職に必要とされるA級ライセンスのプログラムが始まるそうだ。引退試合から数日後、メディアから今後のキャリアについて問われると、ヤロリムは古巣への愛を口にした。

    「指導者としてのキャリアはHSVでスタートしたい。そして、いつの日か監督に…」

    偉大なるキャプテンが再びハンブルクの地へと戻ってくる日は、そう遠くないだろう。

    注)写真は最後の2枚を除き、筆者が撮影。貴重な写真の数々に感謝を。



    ★独ブンデスリーガの珍景☆

    ◆ふろん太、ドイツに立つ

    まさか、Jリーグのクラブのマスコットがドイツに降り立つとは――。

    今年7月7日に開催された、川崎フロンターレ対ドルトムント。ドルトムントが6-0で川崎を一蹴し、日本のフットボールファンに衝撃を与えたのは記憶に新しいが、当日までの“物語”も刺激的だった。

    まず、ドルトムントのマスコット「エマ」から、川崎フロンターレのマスコット「ふろん太」へ招待状が届く。


    https://www.youtube.com/watch?v=VasBOtjoGR0

    そして、ふろん太が渡独。エマと対面する。





    かつて、異国の地を踏んだJクラブのマスコットがいただろうか。親善試合を“単発”にせず、それまでの過程をエンターテインメントで彩り、盛り上げる。他に類を見ないアプローチは、多くのメディアに取り上げられ、SNSで拡散され、フットボールファン以外からの関心も集めた。

    7月7日、等々力陸上競技場は2万4650人の大観衆だった。キックオフの前には、飲食物やグッズが飛ぶように売れた。仮に、エマとふろん太の“交流”がなくても、同様に盛況だったかもしれない。しかし、集客効果がゼロだったとは言えないだろう。

    Jリーグと独ブンデスリーガの新しい関係性、新しいビジネスモデルを、川崎フロンターレとドルトムントが示した。

    いつか、そう振り返られる日が来るはずだ。


    筆者撮影


    筆者撮影


    筆者撮影


    筆者撮影


    筆者撮影


    筆者撮影


    筆者撮影



    <あとがき>

    上編、中編、下編の3回におよぶ「ファンがつづる独ブンデスリーガ2014-15シーズンレビュー」、いかがだったでしょうか?

    ご覧頂き、ありがとうございました。

    また、プライベートの貴重な時間を割いて原稿を寄せて頂いた11人にも、心からの感謝を。



    執筆者の数はプレビューが7、レビューが12で、大幅に増えました。それにより、内容は多様化し、かつ濃くなりました。ファンならではの深い知識に裏打ちされたレビューは、“奥行き”の面でメディアを凌駕しています。うち何人かは現地で自ら撮った写真を提供してくれましたから、稀少性も高いです。

    一方で、プレビューからの変更点として、各章の合間に“箸休め”としてバカバカしい記事を挟みました。これは「面白い事件も扱ってもらえると嬉しい。最初から最後まで真面目なレビューだと、どこかで読み飛ばしてしまう人が必ずいる」という、私のフォロワーのツイートを参考にしています。

    そもそも、日本はフットボールを「観る文化」こそ発展していますが、「読む文化」は停滞しているように感じます。実際、昨年から今年にかけて、週刊の専門誌が相次いで発行のペースを落としました。「サッカーマガジン」と「フットボリスタ」は月刊に、「サッカーダイジェスト」は隔週に、それぞれ転換。明らかに、購読者の減少に伴う構造改革です。

    依然として、読んで学んでフットボールの深淵を覗こうとするヒトは、一握りなのかもしれません。だからこそ、重視したのは「取っ付きやすさ」。マニア向けでありながら、これから独ブンデスリーガを知ろうとするヒトも楽しめる。そんな内容を目指しました。

    上編、中編、下編の合計で約7万2000字。恐らく、独ブンデスリーガのレビューとしては日本一のボリュームで、本にして「コミケ」などに出展できるレベルです(夢の1つとして、ある執筆者と話しましたが)。12人の渾身が、皆様の心のどこかに響けば幸いです。

    今後は、現時点で決まっていません。15-16シーズンのプレビューであれば、もう動き出さないと8月15日の開幕に間に合わない恐れがあります。「継続は力なり」と言いますし、できればプレビュー、レビューというサイクルを確立したいですが…。そしていつか、独ブンデスリーガのファンが集まる会を開けたらいいなとも妄想(笑)しています。月峰氏が手掛けている「ドルトムントファンによるシーズンエンドパーティー」のように。

    ただ、まずは独ブンデスリーガのファンを少しでも増やすための努力です。想いに共感してくれる執筆者は、いつでも待っております。既存の執筆者と応援するクラブが同じでも構いませんし、文章の巧拙も問いません。気軽に参加して下さい。他薦も、歓迎です。「○○さんのプレビューやレビューなどが読みたい」という希望があれば、必ずオファーします。断られたら、すみません(笑)。

    それでは、また。感想は随時、お待ちしております。貴方の一声が、このプロジェクトを支えています。


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