「漫画家は、普通の人であれ」藤子・F・不二雄先生のことば
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

「漫画家は、普通の人であれ」藤子・F・不二雄先生のことば

2013-10-22 00:22
  • 36
  • 11
今夜の『プロフェッショナル 仕事の流儀』は、藤子・F・不二雄先生でした。
没後17年。この番組で故人のことが採り上げられるのは、はじめてなのだとか。
『ドラえもん誕生秘話』が主なテーマだったのですが、「ドラえもん直撃世代」である僕にとって、この番組内で語られている藤子・F・不二雄先生のさまざまなエピソードと肉声は、本当に印象深いものばかりでした。

『ドラことば』という本のなかに、藤子・F・不二雄先生のこんな言葉が載っていました。

 人気まんがを、どうやってかいたらいいか。そんなことが一言で言えたら苦労はしないのですが、ただひとつ言えるのは、

普通の人であるべきだ。

ということです。(中略)かたよったものの見方や考え方をする人は、大勢の共感を得ることはできない。だから、まず最初に普通の人であれ、というのはそういう意味なのです。

 そのうえで、ただ本当に普通の人であったのでは、まんがなんてものはかけません。プラスアルファ――なにか自分だけの世界を、ひとつは持っているべきである。それは、必ずしもまんがに直結したものでなくてもいいのです。釣りが上手であるとか、模型作りに熱中するとか、SF小説を読みあさるとか。そういったことが、その人の奥行きになって、しごくありふれたものにプラスして、何か個性みたいなものが生まれてくるんじゃないか、と思うのです。 (『藤子・F・不二雄自選集 ドラえもん』上巻(小学館))

 『プロフェッショナル 仕事の流儀』でも講演の一部として紹介されていた言葉なのですが、実際のF先生の生活ぶりも「普通の人」のものだったようです。
 日々のルーチンを大切にし、毎朝6時に起きて家族と朝食を摂ってから仕事場に出勤し、なるべく23時には家に帰ってくるようにしていた、というF先生。
 行きつけの寿司屋は、家の近所にあって、「高級店」という雰囲気ではありませんでした。

 先日、僕は神奈川県川崎市にある『藤子・F・不二雄ミュージアム』を訪れたのです。
 そこには、F先生の仕事場が再現されていました。
 机のまわりに資料が整然と積み上げられていて、落語のCDやクラシックを聴きながら、先生は仕事をされていたそうです。
 仕事机の周りでは、鉄道模型が走っていました。

 藤子・F・不二雄先生は、「自分を理解してくれる仲間に恵まれた人」でもあったのです。
 F先生の若い頃について、長年のパートナーである、藤子不二雄A先生は、こんなふうに仰っておられます(藤子不二雄A著『78歳いまだまんが道を…』(中央公論社)より)。

 高校を卒業はしましたが、あのころ漫画家なんて、まだ”夢のまた夢”でした。漫画家を目指して上京するなんて時代ではありませんでした。僕はたまたま伯父が富山新聞の重役だったので、縁故で入れてもらうことができました。僕は絵が描けたので、社長と重役に会って、その似顔絵を描いたら、それが入社試験でした。藤本氏は親類がお菓子屋さんだった関係でしょうか、製菓会社に就職しました。

 ところが藤本氏は、たった三日で会社を辞めてしまいました。彼はとにかく人見知りで、僕以外の人とつきあうとか、社交がほとんどできない人だったから、そもそも勤めなんて無理だったんでしょう。それで、「俺は漫画描くから、お前は新聞社に勤めてろ」と言いました。


「阿川佐和子のこの人に会いたい」(文春文庫)より。

(1996年10月の藤子不二雄(A)(安孫子素雄)さんとの対談から。)

(東京に出てきた当初のことを回想して)

藤子(A):「藤本君は、非常に人見知りが激しくてね。昭和29年に、東京に出てきてトキワ荘に住んだ頃は、編集者が来る頃になると、「ちょっと散歩してくる」って出ていっちゃう。自然と僕が応対して、編集者が藤子不二雄は僕だけのことだと思ってた時期もありました」

 
 
 F先生は、かなりシャイで人見知りが激しい人だったようなのですが、遊び好き、社交家のA先生がパートナーとして、F先生をうまくフォローしてくれていたのです。
 F先生がもしひとりで漫画家になっていたら、漫画家生活の入り口のところで、挫折してしまったかもしれません。

 

 また、A先生は、F先生の「才能」を、こんなふうに評しておられます。

 漫画は頭で考える部分と、自分の実体験をふくらませる部分とがあります。もちろん、最初から最後まで空想で描く場合もありますが、ある程度現実が基になっていると、読者もリアルに感じて納得してくれるわけです。

「途中下車」の主人公のおじさんなんて、僕が現実に見た顔を絵にして描いたから、何ともいえないリアルな感じが出てると思うんですよ。読者も、ああ、本当にこういうことがあるかも知れないと。漫画に気持ちが入るというか。

 藤本氏はおそらく、全部、彼の想像力で考えていた。これは天才にしかできないことなんです。僕も最初はそうでしたが、だんだんと体験の部分が大きくなっていきました。最初はまったく同じスタートで出発した二人でしたが、次第に路線が分かれていった。トシをとるにつれ、経験をつむにつれ、二人の個性がはっきりしてきて別々の”まんが道”を進むようになっていったのです。

 堅実なリアルライフを送りながら、頭のなかに無限の世界を持っていた人。
 子どもの頃のF先生のエピソードを読んでみると、本当に「ただのマンガ好きの夢想家の少年」のように思えます。こういう子どもは、日本中にたくさんいたのではないか、と。
 外部からみても「その他大勢の内向的な子どものひとり」だったはず。
 でも、その頭の中には、あんなに大きな世界が広がっていたんですね。

 そして、F先生は「あきらめない人」でした。

参考リンク:定本コロコロ爆伝!! 1977-2009~「コロコロコミック」全史 ☆☆☆☆☆(琥珀色の戯言)

↑の本のなかに、たくさんの藤子・F・不二雄先生のエピソードが紹介されているのですが、そのなかのひとつ。

平山隆さん(コロコロコミック・3代目編集長)

「映画の話をした時ににも、先生は「読後感の良いマンガを描きたい」ってよく話してましたね。

悲劇でも、明日につながるなにかが必ずあるようなもの。

たとえば僕が好きな作品で、「みどりの守り神」。これが、いちばん先生の思想が出ていると思うんです。

主人公が、最後に空を見て、「鳥が!」っていうラスト。これが、藤子・F・不二雄なんですよ。最後にこういうシーンを持ってくるというのは、これはテクニックじゃなくて、思想ですね。

あらゆる作品で……、もちろん全部が全部そうではないけれど、基本的なベースに流れているのが、その「明日がある」っていう部分。つまり、悲観的な人ではないと思うんですよ。誤解を恐れずに言えば、楽観主義者。

……これは先生から聞いた話だけど、高校卒業した後、会社に勤めてすぐ、右手を怪我したらしいんです。

マンガ家になろうと思ってたから、ペンを持つ右手はとくに大事。医者に行って治療を受けてる間に、

「平山さん、その時僕がなにを考えてたかっていうとね、『急いで家に帰って、左手で絵を描く練習しなきゃ』って思ってた」って(笑)。

そういうエピソードを聞いていると、僕の言っている「思想」ってわかるでしょ?「明日へ」って。人類の未来に対してもすごく希望を持っている人だったんじゃないかな。

人間を信頼して、なんとかなるよ、って思いつづけていた人だと思う。

その思想がいちばん大きいのが、「ドラえもん」だと思うんですよ。僕はね」

 僕の息子が、楽しそうに『ドラえもん』を観ているとき、僕はなんだか血縁以上の「絆」を感じてしまうのです。
 ああ、こいつは僕の子どもなんだな、って。

 これほど絶望ばかりが語られがちな世の中でも、『ドラえもん』が愛され続けているというのは、なんのかんの言っても、多くの人が「なんとかなるよ」っていう希望を持ち続けている証拠なのかもしれないな、とも思うのです。

広告
他26件のコメントを表示
×
進撃の巨人も、エロゲーのマヴラブオルタネイティブとSIMPLE2000シリーズの地球防衛軍2から着想して、
2200万部売れてるからな。
興味のない人からすれば時間の無駄でしかないような経験から
世の中変えるようなアイディアにするのが才能ってものなんじゃないかな。
48ヶ月前
×
乱暴な事例の示し方をすれば、モテたい自分やモテなかった自分を解消する為に恋愛モノがあり
現実の女性の冷たい反応を体現するツン状態があり、そこからデレるツンデレがカタルシスとなってブームになった。
そのうちツンデレの設定だけが暴走してツンが「暴力をふるう」「罵倒する」など現実から乖離して廃れた

どんなファンタジーでもベースは現実であるべきだと思う
普通からちょっとスパイスが加わることでユーザーは魅せられるんだから
48ヶ月前
×
よく、「広い視野を持て」とか偉そうに語ってくれるけども、問題はなにを見るかではなく、どう見るか。
エンターテイメントの本質がわかってないと、どんな経験を持ち込んでも、結局は歪んだ物にしか出来上がらない。
48ヶ月前
×
やなせ先生が亡くなってから言いたい放題いってる売名漫画家とかは論外だけど巨匠かどうかなんていうのは周りが判断することだしね
48ヶ月前
×
「変な奴の方が面白い」とか主張してるようなのに聞かせてやりたい
「面白い」のが重要であって、ただの「変な人・物」はつまらないし、何の魅力もないどころか短所でしかない

もちろん「面白い」にも色々あるから、一概に「変な物=ダメ」とは思わないけど
48ヶ月前
×
普通の感覚がなければ、面白いことの初心をわすれるってことかな~ まあ、日常系すきなので、ひだまり のんのん大好きです
48ヶ月前
×
もっと広い視野で色んな物を取り入れてそれを糧にして形にしなさい
48ヶ月前
×
まさに普通の人が「あんなこといいな、できたらいいな」と考えてることを具現化したのがドラえもんというわけですな。
48ヶ月前
×
ありがたやありがたや…
ミュージアム行きたいなぁ。
48ヶ月前
×
普通の感性を持てない人に多くの人を楽しませる作品は書けないっていう
すごく真っ当なことを言ってるんでしょ?普通の人=普通の漫画ではないよ
48ヶ月前
コメントを書く
コメントをするには、
ログインして下さい。