杖術の寸止めについて
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杖術の寸止めについて

2015-02-01 01:04

    杖術の稽古で、壁に向かって突いたり打ったりして寸止めをするというのを、最近始めた。先日の稽古会で久しぶりに打太刀(といっても攻撃なしで寸止めの的になってもらった)ありの稽古をしたら、ものすごく恐かったので、はてこれは何故だろうと思ったのがきっかけになっている。実際は壁ではなくハンガーに吊したシャツを的にした方がよいと聞いたことがある(壁に傷をつける恐れもあるし)。

    対人で稽古をしたときの恐さの原因は今のところいくつかあると思っていて、意外と間合が近いこと、近い距離の中で杖を操作する必要があること、いつでも寸止めできる状態で杖を操作する必要があることの3つである。以下順々に書いていく。

    杖の長さは130cmで、竹刀よりちょっと長いくらいなので、つい竹刀の間合で考えてしまうのだが、実際には竹刀よりも両手の幅を広げて持つので、木刀(100cm)の間合にちょうど収まるように思える。もともとが刀を相手にした型なので、当然といえば当然なのだけれども。これは恐さの直接の原因ではないけれども、残り2つと密接に関係しているので、独立した項目とした。

    さて、その距離の中で杖を操作する必要がある。例えば杖の先端を相手に向けて突こうとしたとき、向きが変わる前に相手に当たってしまったら寸止めも何もないわけで、移動距離は小さくても角度は充分に変わってなければならない。それを恐れたため、無意識に一旦相手とは別の方向に先端を向けてから戻すようなことをしていた。これも近い距離に相手がいなければ、なかなか気付かないことである。この突きの動作を細かく見ていくと、上げた左手を右脇腹まで持っていくと移動距離が長すぎるので、鳩尾のところまでにしたいが、そうすると今度は手首が曲がって辛いので、その分肘を引き(というか外に開き)、その結果として腕が外旋したり、それをサポートするために半身を開くとか、そんな風にしてより体を大きく使う必要が出てくる。

    一方、杖はそれなりの重さがあるので動き出せば勢いがつく。今までの動きを振り返ると、動き始めだけ力を入れて、そのあとは力を抜いて杖の勢いで腕が伸びるなどし、止めるところで再び力を入れて止めていたような気がする。これだと止めるときに止めやすい角度まで腕が伸びてくれないと困るので、思ったより距離が近ければ恐い。あるいは相手が予想外の動きをした場合に、緊急で止めることも難しい。逆にいえば、いつでも寸止めできる状態でなければならない。どうすればよいかというと、体を大きく使うことによって、結果的に可能になった。例えば腕を内旋外旋する動きを続けようとすれば力は抜けないし、突きの動きに体重移動を含めれば、それを途中で止めることもできる。実際に相手が予想外の動きをした場合にどうなるかはわからないが、実感としての安心感がある。

    大きい動きの方が制御しやすいというのは、例えばネジ回しを回すよりも、自動車のハンドルのような大きい輪を回す方が角度の制御がしやすいというイメージで解釈している。ただしあまりうまい喩えではないように感じる。これは別の面からいうと、テコの原理で、同じ仕事量をどういう力と移動距離で実現するかということで、基本的に人体は最適な割り振りを経験的に知っているのだと思う。ただしその経験則には、体術で相手に技をかけるとか、杖術で寸止めをするなどの特殊なケースの場合はインプットされてないので、そういう局面でのパターンは別途学習する必要があるのだろう。そう解釈している。

    こういう杖の使い方については、自分なりに確信があるにはあるのだが、一方では何年も前に習ったことと矛盾しているような気もしていて、若干気持ち悪くもある。例えば肘を外側に開くのだが、脇は閉じておけと習った気がする。手を上げる箇所があるが、ここでは手を上げないと習った気がする。手を引く箇所があるが、ここでは手を引くなと習った気がする。しかしさらによく考えてみると、脇を閉じると習ったのは別の動きでのことだったような気もするし、手を上げるなではなく肩を上げるなだった気もするし、手を引くなではなく杖を引くなだったような気もする。なんであれ、習ったことは曖昧なまま自分を縛ってしまうので、それは師匠の言葉ではなく、師匠の言葉を自分なりに解釈したものを覚えてるのだと、常に注意しなければならない。

    そしてあまり関係なく子供の話。子供を保育園に連れていくと、必ずどっかに行って教室まで来てくれないので、追いかけていって連れてくるわけなのだけど、手を掴んで引っぱると綱引きのように抵抗されてしまい、膠着する。片手でもそうだし、両手同士で持ってもそうなる。そこで両手とも引くのではなく、片手は引くがもう片手は押してやると、相手は回転してバランスを崩すので、その状態を保ったまま歩けばついてくる。これはかなり前に半身動作研究会(現・動作術の会)で稽古した動きほぼそのもので、かなりのタイムラグはあったが役に立った。この感覚は僕にとってはけっこう入りやすいもので、それまではこういう技は片手同士で効かせられなければ意味がないと思っていたが、とにかく最初はやりやすいところからやって感覚をインプットした方がよさそうだ。両手を使ってもいいんだという気付きは甲野先生のメルマガがきっかけになった。

    その感覚をいろいろ検討して再現することで、片手同士でも手を引きつつ体はしゃがむとか、手を下げつつ歩いて引っぱるとかで、いくらか応用ができるようになってきた。あるいは服を着せるときに抵抗されたら、とにかくやりやすい方向に体を回転させようというようなことでも応用が効く。なんというか父親と息子という組み合わせになると、決まり事に沿って進行していくようなごっこ遊びというよりも、必然的にそう動くよなあという取っ組み合いだとかキャッチボールだとかになっていく印象があり、実際にそうなりつつあるので興味深い。

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