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記事 4件
  • 党首討論の迫力はどこへいった? 民主党はTPP、金融政策論議を避けてはいけない!

    2012-11-26 21:00  
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    いよいよ衆議院が解散し、選挙戦に突入した。 11月14日の党首討論で、自民党総裁の安倍晋三さんに対し、野田佳彦首相が 解散すると宣言したのである。 突然の解散宣言に驚く声も上がった。だが、野田首相には理由があったのだ。 なにより内閣支持率は下がるばかりだった。 そのため民主党内では、野田首相のままでは選挙戦を戦えないという声が、 日に日に大きくなっていた。 「野田降ろし」の風が吹くのは時間の問題だったのだ。 野田首相には、消費税増税という難事をなしとげたのは自分だ、という自負がある。 彼にしてみれば、きちんと仕事をしたのに、みすみす降ろされるのはたまらない というところだ。 だったら、いっそのこと首相の権限で衆議院解散を、と決意したのだろう。 この日の野田首相には迫力があった。 「衆議員の定数削減」を条件に、安倍さんに「勝負」を挑んだのだ。 挑戦された安倍さんはタジタジであった。 今度の衆議院選挙で、民主党が獲得できる議席数は70~80だと見られていた。 だが、この党首討論の効果で、民主党の票が伸びるのではないか、と僕は感じた。 民主党の議席が100を超え、もしかしたら120くらいまで伸びるのではないか、 とさえ思ったぐらいだ。 ところが、である。 19日からカンボジアで開かれたASEAN首脳会合に参加した野田首相は、 「TPP交渉参加」について、「検討する」と発言したのだ。 TPP参加を「公約にする」と言っていたのだから、これは大きな後退である。 国内で「やる」と言いながら、対外的には「検討する」では、国の内外から信頼を 失うのは目に見えている。 先日の党首討論での迫力が、一気になくなってしまった。 一方、安倍さんは、大胆な金融緩和政策を打ち出している。 大規模な公共事業に伴う建設国債を日銀に引き受けさせ、さらに、2~3%の 物価上昇を目指す。安倍さんの狙いはデフレ脱却だ。 これに対して白川方明・日銀総裁は、 「現実的でない」 「財政再建や実体経済に悪影響を与える」 などと、ただちに反論した。 バックに財務省がついているから、白川総裁は強気なのだろう。 財務省は「締める」金融政策が好きなのだ。 だから、安倍さんが主張するインフレターゲット政策は、財務省官僚にとっては もってのほかなのだ。 こういった経済政策の論議は、大いにやってほしいと僕は思っている。 民主党にとって、自民党との政策の違いを国民に示す絶好の機会である。 ところが、安倍さんの政策に対して、民主党からは、対論が出されていない。 野田首相が外遊中だから対論を出すのは無理だというなら、金融大臣なり、 官房長官なりが発表すればいい。 ASEAN首脳会合での野田首相の発言、安倍さんの金融政策に対する対応で、 民主党は好機を逃したのではないか、と僕は思う。 14日の党首討論をピークに、民主党の勢いは、ふたたび急降下している。

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  • 選挙の争点TPPの基礎知識「農水省発表の日本の食料自給率39%、実は70%である」

    2012-11-21 14:15  
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    11月16日、野田佳彦首相が衆議解散を断行した。 この解散を「TPP解散」だという声もある。 TPPとは、環太平洋戦略的経済連携協定のこと。 アメリカをはじめとする、アジア太平洋地域の国ぐにが、高い水準の自由化を 目標にした多国間の経済連携協定のことである。 野田首相は、今回の解散を小泉純一郎元首相が断行した「郵政解散」に なぞらえたとも言われている。 野田首相の本心はどこにあるのか。 衆議院の解散をのばすと民主党の党内から野田降ろしが噴出する、まずそれを 恐れたのだろう。 さらに、TPP参加を打ち出して選挙に臨めば、TPP問題で党内意見が まとまらずにモタモタする自民党を圧倒できる、という目算もある。 だから、野田首相はTPP交渉参加を、民主党の公約にしようとしている。 僕は、TPPには当然、参加すべきだと思っている。 あくまでも協定の内容を決める「交渉への参加」にすぎないのだ。 だから賛成してもいいのではないか。 だが、アレルギー反応のようにTPP交渉参加に反対する議員は多い。 TPPは医療、サービス業も含めたさまざまな産業分野に関連するが、 その中でもとりわけ農業についての反対が強い。 加盟国間で関税障壁がなくなるため、海外から安い農産物が輸入され、 日本の農業が立ち行かなくなるというのが反対派の意見なのだ。 僕は、この考えはまったく逆だと考えている。日本の農業は決して弱くない。 農水省が、日本の農業を守らねばならないと主張する根拠は、日本の食料自給率が 低いということだ。 平成23年度の食料自給率は39%しかないと。 だが、この数字はゴマカシなのだ。 食料自給率39%というのは、カロリーベースの数値である。 生産額ベースで計算すると、66%と、ぐんとアップする。 ただし、これは震災後の低い数字で、震災前の平成22年度は70%にもなる。 70%という数字は諸外国と比べても高く、世界第5位だ。 日本は農業大国なのだ。 さらに言えば、そもそも日本以外の国で、カロリーベースの食料自給率を 採用している国はない。 では、なぜ日本はカロリーベースの数字で統計をとっているのか。 カロリーベースだと、高カロリーの農産物が多いと自給率の数字があがる。 小麦や油脂などがそうだが、それはほとんど輸入している。 一方、日本国内でほとんど生産している野菜などは、カロリーが低いので、 自給率の数値が上昇しない。 また、肉牛や鶏卵は、ほとんど日本で生産されている。 ところが、輸入飼料で生産されたものは「自給」とみなさないため、 これらも自給した畜産物として計算されないのである。 このように、日本の食料自給率は、「自給」の実態を見る指標としては 大いに疑問がある。 それなのに、なぜ農水省はカロリーベースの“低い”自給率をことさら 喧伝するのか。 僕は農水省の「省益」のためだと考えている。 農業に対する危機感をあおり、日本の農業を保護すべきだと主張することで、 農水省は職員の数を減らさず、農業関係の予算を守りたいのだ。 もうひとつ、TPP交渉参加に猛烈に反対するのが、農協である。 農協は「日本の農業が守れない」と主張している。 これも、とんでもない主張だ。 やる気のある農家にとって、TPPはむしろチャンスだと僕は思っているのだ。 時間と手間をかけ、丁寧に栽培された日本の農産物は、世界に通用する。 質が高く、味もよく、安全な農産物は日本産ブランドとして世界中で人気だ。 もしTPPに参加すれば、日本の農業は輸出産業となり、もっと伸びていく 可能性を充分に持っているのだ。 では、なぜ農協はTPPに反対するのか。 農協は、日本の農業を弱いままにしておきたいのではないか。 農家が小規模で弱いままなら、農協の会員数は減らない。 農協の影響力も維持できるのだ。 一方、やる気のある農家が世界に進出して成長すれば、経営も安定する。 そうすると、農協に頼る必要がなくなるから、農協の会員数が減ってしまう。 農協にとっては、許しがたい事態だ。 TPPは、日本の農業の将来がかかっているといっても、過言ではないのだ。 本気で取り組むのなら、そうとうの覚悟とエネルギーが必要なテーマである。 野田首相はこのことをどれほどの覚悟をもって言っているのだろうか。

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  • 石原慎太郎の「原発も消費税もささいなこと」発言は、政界再編を呼ぶラブコールである

    2012-11-05 20:45  
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    石原慎太郎さんが都知事を辞任した。ついに「石原新党」が誕生するようだ。 石原新党は「たちあがれ日本」を母体に、「第三極」の結集を目指す、と言われている。 だが、石原さんは、野党に甘んじるような男ではない、と僕は断言する。 石原さんは、1968年、参議院選挙に全国区で出馬し、史上初の300万票を獲得して トップ当選。その後、衆議院議員に転じて8期務めた。 その間、環境庁長官、運輸大臣を歴任する。ところが、任期途中で衆議院議員を辞職、 東京都知事となって4期も務めている。 そんな華々しい経歴を持つ石原さんが、ただ国政復帰を目的として、おめおめと野党で 大人しくしているわけがない。 彼は、自民党や民主党を割って政界再編を目論んでいる。 そして目指すはズバリ、「首相の椅子」だと僕は見ている。 では、なぜ「今」なのか。理由は大きく2つある。 夏の段階で石原さんは、「新党は考えていない」と発言した。 これは、ごまかしではなく、本当のことだろう。 なぜなら、長男の伸晃さんが自民党総裁選に出ることが予想されていたからだ。 石原さんは、ああ見えて大変な子煩悩だ。 伸晃さんが自民党総裁になるのに、自分が新党を作って、困らせるわけにはいかない。 そう考えたに違いない。 ところが、その伸晃さんが、自民党総裁選で落選した。 ならば、もう遠慮は必要ない、いや、むしろ息子を総裁にしなかった自民党を 壊すくらいの気持ちを持っても不思議はない。 そして、2つめの理由は、石原さんは根っからの「作家」だということだ。 彼は、ずっと政治家ではあったが、その行動は「作家」そのものなのだ。 いつも、世間を挑発し、面白がっている。 まだ大学生で『太陽の季節』を書いたころから、石原さんはまったく変わっていないのだ。 たとえば、今年4月、わざわざワシントンで尖閣諸島を買うという爆弾発言をした。 挑発に乗った野田首相が「いや、国が買う」と言って、大騒ぎになった。 石原さんにとっては、面白くて仕方ないだろう。 そして今度は、国政復帰、新党騒動だ。 今度もまた政界は大騒ぎ、またまた面白くて仕方ないはずだ。 「暴走老人・石原」の行動は、「作家」として見れば、とてもわかりやすいのだ。 さて、これからどう展開するのか。 まず石原新党が「維新の会」と組むのは必至だろう。 10月末、橋下徹さんは福岡からお忍びで東京を訪れた。石原さんに会うためだ。 そこで何が話されたかは、想像に難くない。 この連合に「みんなの党」もつく。 原発や消費税についての意見の相違は「ささいなこと」だと石原さんは語ったが、 これは「維新の会」のラブコールを受け入れるよ、という表明である。 みんなの党の江田憲司さんは「ささいではない」と発言したが、政党同士が 組むうえでは「ささいなこと」なのだ。 なぜなら原発の問題は、すでに日本全体が「脱原発」に向かっており、 実現時期に違いがあるだけだ。 問題は新エネルギーであって、決裂する要因にはならない。 もうひとつの「ささいなこと」である「消費税」は、すでに国会で可決された。 これもまた、当面の決裂要因には、なりようがないのだ。 総選挙で自民党・公明党がどこまで議席を伸ばすかによるが、石原さんは 条件をつけて自民党に切り込んでいくだろう。 そして、自民党も分裂し、民主党もまた分裂して、政界再編が起きる。 そのとき「作家・石原慎太郎」は、会心の笑みを浮かべるに違いない。

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  • 榊原英資、竹中平蔵にズバリ聞いた「それで、どうする! 日本経済 これが答えだ!」

    2012-11-01 11:44  
    いま日本の経済は、問題が山積みである。 債務残高の対GDP比は、昨年200%を超えた。 デフレはすでに20年続き、円高株安の流れも止まらない。 新聞や雑誌は暗い予測ばかりし、「日本が沈没する」と不安を煽る。 けれど、そうした悲観論を鵜呑みにしてはいけない、と僕は思う。 メディアが不安を煽るのは、商売のためだ。 不安を煽らなければ、人びとはテレビを見ないし、新聞や雑誌を買わない、 そう大手メディアの人は思い込んでいるのだ。 では本当はどうなのか。日本経済は沈没するのか。メディアが煽っているだけなのか。 そういう疑問を、僕がもっとも信頼する2人のエコノミストに徹底的にぶつけてみた。 ひとりは、元大蔵省財務官の榊原英資さんである。 榊原さんは国際金融局長などを歴任し、「ミスター円」の異名を持っている。 もうひとりは竹中平蔵さんだ。 経済財政政策担当大臣などを歴任し、小泉内閣の構造改革を主導した。 元大蔵省官僚と、規制緩和を主導した経済学者。 経歴も考え方もまったく異なる彼らが、対談することなど普通はあり得ない。 その2人が、僕の質問に率直に答えてくれたのだ。 国債について榊原さんは、こう答えてくれた。 「少なくとも5年は暴落はない。供給が大きくなってもまだ充分需要がある。 日本人は国内貯蓄がほとんどだからだ」 一方、竹中さんの答えはこうだ。 「いますぐ暴落する懸念はまったくない。ただし、プライマリー・バランスを 回復するシナリオを、そろそろ作らなければ危ない」 つまり、すぐに国債が暴落することも、財政が破綻することもない。 だが、国の収支をできるだけ早い時期に、黒字に持っていかなければならない ということだ。 消費税増税については、2人とも、 「消費税は上げる必要はあったが、だが時期がよくない」 と意見が一致している。 そして将来的に消費税は、 「少なくとも15%まで引き上げなければダメだ」 と榊原さんは述べた。 竹中さんの答えは、 「消費税増税だけでは財政再建はできない」「まずは市場の活性化を最優先すべき」 であった。 原発の問題でも、2人の答えは一致していた。「原発ゼロ」である。 そのうえで、竹中さんは 「電力を自由化し、市場メカニズムを働かせるべき」 と訴え、榊原さんは 「原発から予算を付け替えて代替エネルギーの開発をすべきだ」 と答えた。 この話の中で、僕がとても印象に残ったことがある。 2人の意見が、「日本の未来は明るい」ということで、はっきりと一致したことだ。 榊原さんは、日本は自然環境がよく、 「環境技術も水道技術も文句なく日本が世界一」 であることを挙げる。 そして、竹中さんは、そのような日本のポテンシャルが 「100%発揮できる政策がほとんど採用されていない」「もっと自由が必要だ」 と現状に苦言を呈す。 日本経済の問題点や現状分析では、両者の意見はほぼ一致している。 水と油の2人の意見が一致するということは、議論の余地がない確たる事実だと言っていいのだろう。 一方、対応策や政策面については、多くの点で対立した。 ここが、きっと日本の分岐点となるにちがいない。 この2人の激論で、低迷する日本経済への「答え」が明らかになったと僕は思ったのだ。 この鼎談は、『それで、どうする!日本経済 これが答えだ!』というタイトルで1冊の本にまとめた。 日本と日本経済の問題がよくわかり、いま僕たちが何をすればいいのか、どうすれば、「日本の未来が明るくなるのか」がはっきりと明示された、自信作となっている。

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