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記事 8件
  • 長谷川幸洋コラム第31回 自民党の都知事選候補選びのカギは「政権との距離感」

    2013-12-30 20:00  
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    主去り、次の「顔」は…[Photo] Bloomberg via Getty Images
    医療法人「徳洲会」グループからの5000万円献金問題で揺れた東京都の猪瀬直樹知事が辞任した。後任選びはこれからだが、来年2月上旬にも実施される都知事選は事実上、安倍晋三政権に対する信任投票になる可能性がある。 特定秘密保護法をめぐって国民の間に批判が高まり、与野党対立が激化した。その結果、安倍政権の内閣支持率は各種世論調査で軒並み10%前後、低下した。1月19日には、米軍普天間飛行場の移転問題が焦点になる沖縄の名護市長選もある。 安倍政権は沖縄と東京で国政選挙並みの注目を集めて、国民の審判を受ける形だ。こういう局面で、都知事選は「できれば避けたい」というのが政権の本音だっただろう。自民党は年内にも候補者を選ぶ方針だが、清新さはもちろん政策課題への理解、政権との距離感などが鍵になる。はたして、そんな条件を満たす候補者が見つかるだろうか。橋本「芯強い」、小池「度胸あり」、舛添「立派」…石破氏の人物評
    いまの段階で名前が挙がっているのは、与党側では小池百合子元防衛相(衆院東京10区)や都議経験がある下村博文文部科学相(同11区)、安倍と近い萩生田光一総裁特別補佐(同24区)、元五輪選手の橋本聖子前参院政審会長(参院比例代表)、さらに丸川珠代参院議員(東京都選挙区)らだ。 野党側では、参院議員を引退した舛添要一元厚生労働相や、日本維新の会を離党し衆院議員も辞職した東国原英夫元衆院議員らがとりざたされている。なかでも舛添は必ずしも野党側だけが推すとは限らない。知名度があるだけに、与党側の候補者選びが難航した場合は野党と相乗りする可能性もある。 猪瀬がカネにまつわるスキャンダルで辞めた後で、かつ東京五輪も控えているだけに、最も重要な要素は「清新さ」だ。一部報道によれば、安倍首相が周辺に「女性候補がいい」と語ったとされるが、それも同じ理由だろう。 そんな中、私は木曜日ナビゲーターを務めているJ-waveの番組「JAM THE WORLD」の収録で19日午後、自民党の石破茂幹事長にインタビューした。同夜の番組でも放送したが、主な都知事選候補と目される人物についての石破評を紹介しよう。 私の頭に真っ先に浮かんだのは橋本聖子だ。元五輪選手の橋本は「五輪を開く東京の顔」として収まりがいい。スキャンダルの話も聞かない。石破は「どんな困難も乗り越える芯の強さがある。参院政審会長も務めた。閣僚経験がない点をどうかという人もいるが、政策の理解力、ひたむきさは超一級ですね」とほめちぎった。 それから、小池百合子である。「環境相、防衛相と閣僚経験があり、語学は達者で国際的な視野も広い。花もある。兵庫から東京に選挙区を変えるなど、すごい度胸もある」 丸川珠代についても聞いた。「キャスター、アナウンサーを務めて、そういうセンスもある。厚生労働政務官を務め、いまは党の厚生労働部会長だ。ただ参院であれだけの票をとって当選したばかり。(都知事選に転身するとなると)党としてそこをどう考えるか、という問題もある」 舛添要一については自民党を離れた人なので、どうかと思ったが、意外な評価が返ってきた。「立派な人ですよ。私は福田康夫、麻生太郎の両政権で閣僚としてご一緒したし、お付き合いもある。才能と弁舌はすばらしい。知名度も都政への見識もある。ただ、我が党が下野して一番つらいときに出て行かれたので、悲しい思いをした。そこをどう考えるかですね」 最後にもう1人、東国原英夫はどうか。彼については「勘弁してくださいよ〜」の一言だった。野党はいざしらず、自民党の候補としてはあり得ない、という判断である。 
  • 田原総一朗 江田新党は、都市部の不満をすくいとる「都市型政党」を目指せ

    2013-12-24 20:00  
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    18日、江田憲司衆議院議員の新党、「結いの党」が旗揚げした。しかし、「みんなの党」代表の渡辺喜美さんは、離党した比例代表選出の13名に対して、会派離脱を認めないという方針を打ち出している。「結いの党」の船出は、あまり先行きが明るいとはいえないようだ。江田さんは、いったい何を旗印に掲げればよいのだろうか。僕は、タイの政治にヒントがある、と思っている。タイでは、連日大規模なデモが起きている。そして、ついに議会が解散する事態にまで至った。タイの政治状況は、いま大変なことになっているのだ。現在の首相は、タイ史上初の女性首相であるインラックさんだ。彼女は、2006年に失脚したタクシン元首相の妹にあたる。実は、インラック首相が窮地にあるのは、タクシン元首相の失脚と同じ原因なのだ。「バラマキ」政治である。 

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  • 長谷川幸洋コラム第30回 内紛、離党、分裂が相次ぎ、流動化する野党。「江田新党」は再編の要となれるのか。

    2013-12-19 20:00  
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    〔PHOTO〕gettyimages
    野党の流動化が止まらない。みんなの党から江田憲司前幹事長ら14人が離党したと思ったら、日本維新の会では東国原英夫衆院議員が離党し、議員辞職する。民主党でも山口壮衆院議員や、少し前には落選中の鈴木寛・元参院議員らが離党している。江田は民主党の細野豪志前幹事長や日本維新の会の松野頼久国会議員団幹事長らと「既得権益を打破する会」を結成する一方、自身も近く新党を立ち上げる予定だ。はたして、こうした動きは野党再編につながるのだろうか。結論から言うと、政治家はだれでも「新党を作るなら政策の一致が大事だ」と言うが、実は政治が政策だけで動くわけでもない。だから、目先の利害損得を優先した結果、間違って事実上の再編になってしまう可能性はある。ただし、それで長続きするかといえば、無理だろう。政策一致でも、ガバナンスめぐり対立したみんなの党
    まず、江田離党の経緯から見る。
  • 田原総一朗 みんなの党分裂に見る、日本の野党が育ちにくい特殊事情とは?

    2013-12-17 12:00  
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    江田憲司さんら議員15名が、「みんなの党」を離党した。もともと江田さんは、「みんなの党」代表の渡辺喜美さんとうまくいっておらず、8月には幹事長を解任されている。「みんなの党」の中に溜まっていたマグマが、特定秘密保護法案への対応をきっかけに噴出した、ということだろう。もちろん、5名以上の国会議員が所属する政党に交付される政党助成金の算出の基準が1月1日だという理由も大きいだろう。江田さんは「既得権益を打破する会」という、勉強会を立ち上げた。12月10日の設立総会には52人の議員が集まった。民主党の細野豪志さん、日本維新の会の松野頼久さんらも参加した。そのため、「野党再編」と見出しを打った新聞もあった。新党結成の可能性は、あるだろう。だが、細野さんが民主党を離れるとは考えがたい。野党の大きな流れになるかは疑問だと僕は思う。何より「柱」がないのだ。会の名前は「既得権益を打破」だが、具体的に何がし

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  • 長谷川幸洋コラム第29回 国会は会期延長して特定秘密保護法案の慎重審議を!

    2013-12-12 20:00  
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    特定秘密保護法案をめぐって参院の審議が大詰めを迎えている。政府与党は12月6日までの臨時国会会期中に採決して可決成立させる方針だ。だが、たとえば共同通信やFNNの世論調査では、回答者の8割以上が今国会にこだわらず、慎重審議を求めている。私も同意見だ。さて、そうなると、注目されるのは修正法案の提出者である自民、公明の与党とみんなの党、日本維新の会の対応である。4党は国会の会期延長、あるいは次の通常国会へ継続審議に動くのか。石破幹事長はブログ失言の汚名をそそぐチャンス
    自民、公明の与党は、いまのところ会期延長に動きそうにない。政府が強気の姿勢を崩していないからだが、私は今回の問題では、与党が政府の立場と異なって会期延長の判断をしてもいい、と思う。石破茂幹事長はじめ自民党の与党議員は、政府と何が違うのか。政府は法案を国会に提出する立場であり、与党議員は法案を受けて国会で野党と議論を尽くすのが仕事である。今回ほど、そういう役割分担が重要になった局面はちょっと思い出せないほどだ。なぜ、この役割分担が重要か。それは冒頭で紹介したように、国民の8割以上が「国会で議論を尽くせ」と望んでいるからだ。国民は自分たちに代わって議員たちに国会での議論を委任している。議員は「国民の代理人」である。通常であれば、国民は選挙で与党に多数を与えた時点で政府には法案提出、与党にはそれを可決成立させる手続きをほぼ一括して委任している、と考えてもいい。だが、今回のようなケースでは、国民は政府が提出した法案について、国会に「しっかり議論して問題点があるなら修正してもらいたい」と期待しているのではないか。複数の世論調査で8割以上という数字が示すのは、そういう民意であると思う。そうだとすれば、普通は政府を支えるのが与党ではあるが、ここはいったん立ち止まって、国会運営を預かる与党の権限において「慎重審議をしよう」という判断があってもいい。なんでも「政府の言う通り、国会を運営するのが与党」という話になったら、国会や国会議員の権威がないではないか。ここで石破幹事長が英断をふるって、国会会期延長に動けば「幹事長の権威」は間違いなく高まるだろう。ブログ失言の汚名をそそぐチャンスでもある。国民は「国会というのは政府とは違うのだ」と実感する。それは民主主義にとってプラスである。 

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  • 田原総一朗 特定秘密保護法案の危険性に、何度言っても政治家はなぜ気がつかないのか?

    2013-12-09 16:30  
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    12月6日、特定秘密保護法案が先日の衆議院に続き、参議院でも可決された。そこで、改めてこの特定秘密保護法について話をしたい。先月11月29日の「朝まで生テレビ!」は、特定秘密保護法案を取り上げて激論をした。法案への反対側は、青木理さん、長谷川幸洋さん、江川紹子さん、手嶋龍一さんなど、ジャーナリストたちが揃った。一方、与党側は元防衛庁長官の中谷元さん、総理大臣補佐官の磯崎陽輔さんが出演した。彼は、今回の法案の直接担当者だ。番組では、この法案に反対する側から、次のような意見が出た。「チェック機関がない」「対象分野が曖昧」「恣意的な運用が可能」「取材が実質規制される」。対する政府側は、「そんなことはあり得ない」と答えていた。僕の考えは、この法律は必要だが、法案自体に不備があるというものだ。司会という立場から、中谷、磯崎両議員を一歩引いて見ていると、決して「国民を騙そう」とか、「ごまかそう」という気持ちは彼らにはないということがわかった。政治家たちは、本心から「だいじょうぶ」だと思っているのだ。自分たちに「悪気」がないからだろう。よく言えば、人がよいのだ。だが悪く言うと、彼らには想像力が足りない。彼らには、この法律を悪用する気持ちがまったくないのかもしれない。けれども、後世の政治家、あるいは官僚はどうか。未来の政治家や官僚が、この法律を恣意的に運用する可能性がある。その危険性が彼らにはわからないのだ。しかし、議論が進むうちに、両議員にもその「危なさ」に気づいたようだ。ついに、磯崎さんは、「チェック機関を検討する」と答えたのだ。だが僕は「検討じゃダメだ」とさらに詰め寄った。磯崎さんは最後には、「チェック機関を設置する」と、番組内で明言したのだ。これは初めてのことであった。 

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  • 長谷川幸洋コラム第28回 特定秘密を法律で決めるのは前進 参院で審議中の法案の何が問題なのか

    2013-12-05 20:00  
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    [Photo] Bloomberg via Getty Images
    特定秘密保護法案の参院審議が本格化している。ここでは本来の問題である「特定秘密」がいま、どういう扱いになっているのか、について確認しておきたい。というのは、まだ法案は成立していない。では、いま「自衛隊の暗号」とか「日本で活動しているスパイ」といった国家の秘密は世間にずぶずぶに漏れているのか。そんな秘密を含めて「あらゆる情報は国民のものだ」という立場もあるかもしれない。だが、私は「国家に守るべき秘密はある」と思う。政府も当然、そう考えて、いまでも重要秘密を守る枠組みを構築している。それは、内閣官房に設置された「カウンターインテリジェンス推進会議」だ。内閣官房長官を議長に内閣危機管理監ら関係省庁幹部が構成員になっている。事務局を務めているのは内閣情報調査室だ。そこのトップは内閣情報官である。カウンターインテリジェンス推進会議が定める特別管理秘密とは
    この会議は第1次安倍晋三政権当時の2006年12月25日に「内閣総理大臣決定」を根拠に発足して以来、日本の重要秘密保護の柱になってきた。会議は秘匿すべき「特別管理秘密」の定義を定めている。それは次のようだ。「国の行政機関が保有する国の安全、外交上の秘密その他の国の重大な利益に関する事項であって、公になっていないもののうち、特に秘匿することが必要なものとして当該機関の長が指定したもの」これを読むと、あえて該当条文は挙げないが、今回の法案が定めた「特定秘密」と実質的に同じであることが分かる。つまり、これまでも政府は実質的に特定秘密を指定してきたのだ。具体的にどういう取り扱いをしているか、各省庁によって異なるが、たとえば、警察庁は訓令(PDFです)で特別管理秘密について「内閣衛星情報センターが偵察衛星で得た画像情報」とか「重要政策に関する情報検討会議で警備局長が議事とした事項」とか「他の官公庁が国の安全、外交上の秘密として、特に秘匿することが必要としたもの」などと定めている。秘密は取り扱う人間の適正評価も重要だ。今回の法案がどうなっているかといえば、特定秘密を取り扱える人間を厳格に制限して、たとえば「テロリズムとの関係」とか「精神疾患に関する事項」とか「飲酒の節度に関する事項」などについて適正評価をする、と条文で定めている(第12条)。これまではどうだったのか。私は「政府には、従来から『特別管理秘密』がある」という話を聞いて、それはいったい、どういうものか、念のために関係機関の最高幹部に確かめてみた。 
  • 田原総一朗 月尾嘉男東大名誉教授に聞いた、「ビッグデータとサイバー戦争のカラクリ」とは?

    2013-12-05 19:05  
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    いま世界が、巨大な怪物によって、とてつもなく大きく変わろうとしているといわれている。その怪物の名は「ビッグデータ」だ。現代は、以前とは比べものにならないほど巨大で、しかも複雑なデータが氾濫しているのだ。たとえば、2012年の1年間に僕たちが生み出した情報量は、人類の黎明期から2003年までに創出された情報量の、なんと500倍に当たるという。このビッグデータを使いこなせば、ビジネスはもちろん、政治、スポーツでも勝つことができる。オバマ大統領が2012年に再選を果たしたのは、ビッグデータを有効に使ったからだ。同じ年、日本ハムファイターズが優勝したのも、ビッグデータを活用したからである。僕は、そんな「ビッグデータ」というものに、たいへん興味をもった。そして、「ビッグデータ」に関する記事を探し、何冊も本を読んだ。けれど、どうしても残る疑問が2つあった。「ビッグデータの登場に至るまでの道筋」「プライバシーの問題はどうなっているか」。この2つの点だ。 

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