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  • 仮釈放されたホリエモンに会ってわかった!「刑務所は堀江貴文の何を変えたか?」

    2013-04-08 15:00  
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    3月27日の朝8時ごろ、僕の携帯電話が鳴った。電話に出ると、声の主がこう答えた。「ホリエです、ホリエタカフミです」。寝起きでぼーっとしていたが、思いがけない声を聞いて、いっぺんに目が覚めた。いや、そんなはずはない。「堀江さんは、まだ長野の刑務所にいるはずじゃないか」。咄嗟にそう聞くと、彼は答えた。「さっき仮釈放になりました」。声は心もちはずんでいるように感じた。堀江さんは仮釈放されたその足で、僕にいちばんに電話をしてくれたのだ。刑期は11月までだったが、7か月も早く仮釈放になったという。
    僕は、2011年6月に堀江さんが収監される直前に対談していた。その対談は『ホリエモンの最後の言葉』として出版している。その本の中で僕は、「出所するときは必ず迎えに行く」と堀江さんと約束していた。そのときが、思っていたよりもずっと早くやってきたのだ。「いや、本当によかった」。僕は心からそう言って、早々の再会を約束したのだ。
    数日後、堀江さんに会った。そしていろいろな話をした。堀江さんと再会して僕が強く感じたのは、「堀江さんは変わった」ということだ。そして、やはり堀江さんは非常に面白いということだった。ネットの世界には、有能でユニークな人材はたくさんいる。その中でも堀江さんは能力もスケールもダントツだ。
    堀江さんは、刑務所生活の間、メルマガの発行を続けていた。所内でパソコンは使えないため、手書きで記した原稿を郵送し、外にいるスタッフが入力してメルマガとして配信していたのだ。規則だから仕方がない。とはいえ、手間も時間もかかる。
    無駄だらけの刑務所生活を実感して、塀の外にたくさんある無駄を堀江さんは考えた。たとえば、既存メディアだ。日本で記者会見を開くと、通信社と各新聞社の記者が来る。彼らは同じ「情報」に接し、同じ記事を書く。けれど、アメリカを例にすると、通信社が「情報収集」して配信し、新聞記者はそれを「分析・解説」する。通信社と新聞社で役割分担がはっきりしているのだ。
    一方、日本の新聞社は、「情報収集」をするのだが、「分析・解説」がほとんどない。さらに言えば、印刷したものを宅配するという膨大な手間とコストをかけている。だが、ネットならば、この無駄が省ける。もっとローコストでこの世界に参入することが可能なのだ。このメディアに堀江さんは、まず革命を起こしたいと言う。彼なら、きっとできるだろう。
    堀江さんが語っていたなかでもうひとつ印象的だったことがある。堀江さんは、所内で高齢の受刑者の介護をしていた。堀江さんは気づいた。年を取った受刑者には、歯がボロボロであったり、体の手入れがまったくできていない、そういう人が多かったそうだ。そして、彼らの多くは刑務所を出たり入ったりしていた。再犯率が高いのである。彼らは貧しさから罪を犯し、捕まって刑務所に入る。だが、刑期を終えて出所してもまともな仕事につけずに、また犯罪を繰り返す――。こうした負のサイクルを目の当たりにしたのだ。
    このことを僕に語った堀江さんは、「このままではいけない、なんとかしたい」と漏らしたのだ。かつて「ホリエモン」と呼ばれ、世間を騒がしていたころの彼とは明らかに変わっていた。
    逮捕される前の堀江さんは、常に世間を騒がせていた。ニッポン放送株買収、球団買収、そして衆議院選挙立候補など。これらは既得権益への挑戦だった。そして、その根底には、堀江さんの熱い思いがあったと僕は思っている。だが、堀江さんには大事なことが欠けていた。自分の思いをみんなに伝えよう、自分の考えをわかってもらおう、という努力をまったくしなかったのだ。だから多くの誤解が生まれた。そして、「見せしめ」として、あの逮捕につながったのだと僕は思っている。
    いま、堀江さんと話をしていると、彼が自分のしたいことや考えていることを「わかってほしい」とちゃんと伝えようとしているのを感じる。「堀江さん、変わった。刑務所っていいところだね」と言うと、彼は笑っていた。
    当時、僕は堀江さんの事件について、取材を重ねた。その結果、堀江さんは冤罪だと思った。そして今回、仮釈放された彼に聞いた。事件について、「検察についてどう思うか」と問いかけると、こう答えた。「田原さん、もういいんですよ」。堀江さんの目は、いま前しか向いていない。前に向かって走リ始めようとしているのだ。
    収監前の対談で、彼は宇宙に行く夢を語ってくれた。その夢が実現したとき、堀江さんの宇宙船で僕を宇宙に連れて行ってくれるという約束もした。その日まで僕も、走り続けていかなければと強く感じた。

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