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「大路恵美(おおじ・めぐみ)」と仕事をするのは
何年ぶりの事だっただろう?
恐らくは2005年の舞台
『姫が愛したダニ小僧』以来ではないだろうか?
そもそも彼女と出会ったのは
今から17年前の2001年の事!
吉本新喜劇座長「内場勝則」氏が
自らのプロデュース公演に
彼女を指名した事によるものだった!
私は作・演出・出演を依頼され
”名優内場勝則が4つの血液型を演じる!”
というすごいのかすごくないのかわからないコンセプトで
舞台『四つの理由』を作り上げた!
怪人「石丸謙二郎」を含めた4人による
4本のオムニバス作品だった!
その舞台を上演する事で
私は大路恵美のファンになった!
女優としてではない!
女性としてでもない!
一人の画家として心底惚れてしまったのだ!
その2年後!
私と「喜劇王」川下大洋と山内圭哉による
3人時代の「Piper」は
朝日放送で深夜番組『発熱!猿人ショー』を手に入れた!
我々はそこに大路恵美を迎え入れ
毎週どうでもいいコントを演じる中
彼女に絵を描かせるワン・コーナーを設けた!
そこでの彼女は輝いていた!
まさに原石がダイヤモンドに変わる瞬間だった!
彼女が番組内で描いた「カマキリ」は伝説となり
冗談でTシャツにして
5名様ぐらいの視聴者プレゼントにしたところ
1,000通近い応募があったと聞かされた!
そのせいで彼女は周囲から
「画伯」と呼ばれるようになったのである!
最近書斎「LEVEL 4」の引き出しを掃除していると
ファンから頂戴した面白い物が出てきた!
それは見事な手作りはんこで
なんと
大路画伯による伝説の「カマキリ」と
それに続く傑作と言われた
「ザリガニ」がデザインされた物だった!
(もう一つは番組のレア・キャラクター
「知らないおじさん」だった!)
「いずれは大路画伯本人に渡さなければいけない!」
と保存しておいた物だったが
彼女に会う機会は今年2018年になるまで無かった!
内場氏とは常々酒盛りのたびに
「『四つの理由』だけは絶対にもう一回やらなければ!」
と話し合って来た!
なにしろ私の30年近い演劇人生の中で
唯一アンケートに
「金返せ!」
との殴り書きを見た公演だったのだ!
理由は作品の不出来ではなかった!
客席の組み方のミスにより
”3列目以降はほとんど見えない”
という大失態をやらかしてしまったのだ!
この話をすると当時のスタッフは
とても寂しい表情になってしまうのだが
そんなのは誰あろう演出家である私の責任だ!
当時ノリだけで公演を連発していた私は
満員になった客席から舞台がどう見えるか?
を全くチェックしていなかったのだ!
当時のお客さん達には
大変失礼で申し訳ない事をしてしまった!
許されるものならば
今ここで心からお詫びを申し上げたい!
しかしながらそれを一生悔やんでいても先には進めない!
そんなわけで
”『四つの理由』をもう一度!”
は私と内場氏との合言葉になっていた!
なので!
「わかぎゑふ」「岡部尚子」「村角太洋」という
3人の劇作家と共作したオムニバス舞台
『Small Town,Big City』
からわずか2週間後となる強行スケジュールであっても
「今なら初演キャストが全員揃う!」
という滅多にない貴重な機会を
見逃す手はなかったのだ!
そして先日!
大阪・東京の2都市にて
2018年版『四つの理由』が上演された!
かつては内場氏によるプロデュース公演だったが
今回はそうではない!
なので私も俳優として司会者として
でしゃばる事にした!
更に17年前には無かった
特殊で冒険的な演出を思いついた!
大路に絵を描かせよう!!!
かくして大路は私の思いつきに従い
毎ステージ舞台の上で絵を描く事となった!
「超視点画家」の大家である大路画伯が
遂に復活となったのだ!
では!
2018年版『四つの理由』で大路画伯が描き上げた
素晴らしい作品を
未公開のリハーサル分まで含めて一挙公開し
力の続く限り解説してひろごうと思う!
完成順ではなく
私なりの判断による超視点順だ!
★『クレヨンしんちゃん』
ひと目見て人間である事がわかる時点で
これは「超視点画」としては認めにくい!
大路画伯にしては稀に見る凡作と言えるだろう!
しかし長時間見つめていると
眉毛なのか目なのか?
目なのか鼻の穴なのか?
がわからなくなり
トリック・アートの不安感がこみ上げて来る!
大路画伯のテクニックの一つである
「自信が無い時には黒く塗りつぶせばなんとかなる」
という手法も見られる一枚だ!
★『アイアンマン』
「黒く塗りつぶしてみたけど余計わからなくなった」
というメッセージが頭頂部に込められた一枚!
これではマーベル社も訴えようがないオリジナリティだ!
Tシャツの上からカーディガンを羽織った
実に気取らぬカジュアル・ファッションは
ロバート・ダウニーJr,の私生活でのセンスを描き出している!
★『ピカチュウ』
「塗ればなんとかなる技法」を
”途中で諦める”という匠の技が見られる!
塗ってもどうにもならないと気づくまでに
なかなかの時間を要した大作である!
なにかの動物の上に
全体的にギザギザを描けば
どうにかピカチュウになるのではないか?
という大路画伯の壮大な夢が込められた作品!
★『ドナルド・ダック』
特徴あるくちばしに対して
よせばいいのに正面から挑んだ勇気あふれる一枚!
しかも本来くちばしの先にあるべき鼻孔を
顔の中央に描いてしまったものだからさぁどうしましょう!
鳥類としての特徴を失い
ちょっとふざけた人間になってしまっている!
セーラー服を脱ぎ捨てて
オーバーオールに着替えてしまった事も
衣替えの季節に適した超視点と言える!
★『太陽の塔』
2025年に再び万博を誘致する事となった大阪!
それを聞いて
かつての象徴が落胆し
つい両手を降ろしてしまった図!
「塗ればなんとかなる技法」に加え
大路画伯第2の表現方法
「同じ線をなぞっていればどうにかなるかも技法」
が見られる混合テクニックによる超視点画だ!
漫画家・吉田戦車のタッチに酷似しているのは
間違いなく偶然だ!
大路画伯には他人のタッチを真似る事などできはしない!
★『トリケラトプス』
さぁ!
この辺りから大変な事になっていくので
意識をしっかり持ってご覧いただきたい!
草食恐竜にあるまじき凶暴性と
まさかの荒くれたトサカ!
不安を煽る手足のバランス!
うまく伝わって来ないお腹の構造!
恐竜達に禁じられたはずの三点直立!
そしてなによりも
描いたはいいけどバランスがよくわからなくなった
と言わんばかりの他人事な尻尾!
全てにおいて観る者にギブ・アップを迫る
力強さがある!
★『カメレオン』
先の超視点画『トリケラトプス』と
重ね合わせるようにご覧いただきたい!
驚くほど正確にバランスの狂った尻尾が再現されている!
胴体の構造や手足のバランスもほぼ合致している事から
この作品は明らかに
『トリケラトプス』の姉妹作と言えるだろう!
怪獣ソフビ界で言うところの
”胴体流用首だけチェンジ方式”で生産販売された
「レッドキング」と「アボラス」の関係に近い!
なにしろ我々に衝撃を与えてくれるのは
この不愉快な生き物の顔だ!
私は今回展示する全ての絵が描かれる過程を
真横から見ていたのだが
大路画伯はこの絵を「べろ」から描き始めた!
そして最終的には
それが「べろ」だか何だかわからなくなっていく様を
目の当たりにした!
見れば見るほど奇妙な顔をしており
1分見続けるだけで
これが何なのかわからなくなる!
尻尾の線にわずかな「なぞり技法」を見せる
破壊力抜群の快作だ!
★『こおろぎ』
大路画伯と言えばやはり昆虫画の大家だ!
かつて描いた歴史的名作『カマキリ』のパワーを
今なお持続している事を証明するのがこの作品だ!
”独創的”と呼ぶよりもむしろ
”独走している”と表現した方が正しいかもしれない!
こちらを凝視している顔はもう何だかわからず
「塗り技法」か「なぞり技法」かもわからない頭頂部の迷いは
大路画伯の真骨頂と言える!
背中から飛び出したわがままな後ろ足も
大路画伯の問答無用さを伝えている!
昆虫好きから言わせれば屈辱的な一枚だ!
★『マングース』
一見しておわかりの通り
大路画伯はいつだって弱者の味方だ!
私が「マングース」というテーマを出したにも関わらず
画伯は迷いなくこの絵を描き始めた!
爬虫類を退治する動物ではなく
退治される側を描いてしまったのだ!
そしてほとんど描き終えたところで
小さく一言
「・・・あ。」
とつぶやかれた!
その直後に描き加えられたのが!
あろう事か!
頭上に並ぶ二つの突起である!
画伯は思ったはずだ!
「耳を描き足せば今からでも取り戻せるかもしれない!」
その不屈の闘志は
”何事も決してあきらめてはいけない”
というメッセージを鑑賞者に与えてくれる!
しかしそのメッセージが伝わらない私には
「究極の悪あがき」
として深く心に残った!
★『アルマジロ』
超視点画の傑作!
この名作には大路画伯特有の
「塗る」「なぞる」が見られない!
つまり!
画伯はこの絵に自信を持っている!
「これをアルマジロと呼ばずして
何をアルマジロと呼ぶのか?」
という自分勝手な乙女心のほとばしりが
この絵の全体から垂れ下がっている!
なぜこれほどまでに迷いの無い線で
観る者全てを迷わせる絵を描く事ができるのだろう!
生き物としてのルールを次々と破って描かれた
あまりにも独自な「なにか」!
食べてもおいしそうだが
それを許さない悲しい眼差し!
そして新幹線の先頭車両!
画伯の超視点能力をどこまでも感じさせてくれる
素晴らしい作品である!
★『アリクイ』
大路画伯は基本的にキャンバスを縦使いする画家だ!
ところがこれを描く際には
迷わずキャンバスを横にした!
画伯の中で
「アリクイは四本脚の生き物」
というイメージが固まったのだろう!
なのに!
最終的には一本も脚を描かなかった!
そんなパンクな話があるものか!
理不尽この上ない予測不能の横描き絵画だ!
そんな私の疑問に一切動じる事なく
悠然と描き続けて完成した本作は
数ある大路作品の中でも
後世に語り継がれるべき価値ある一枚となった!
渡されたキャンバスを飛び出すほどの
ダイナミックな作品だが
飛び出している部分が
肩なのか胸なのか想像もつかない!
そして肩か胸だったらとんでもない事だというのを
しばらくしてから気づかされる!
私は舞台上でこの絵の完成を見届けた瞬間
「大変な事になった!」
と感じた!
特に誰かに実害が出るわけでもないのだが
今見てもその感想は変わらない!
★『タツノオトシゴ』
2018年版『四つの理由』で
大路画伯が生んだ多くの名画中
私はこの作品が
最も観る者の心を乱す傑作超視点画だと感じた!
道なき道での暴走!
迷いの無いいかれ具合!
誰をも真似せず誰にも真似されない独自性!
尻尾のミステリアス!
胴体のあきらめ加減!
両目のあっちゃこっちゃ!
まさかの耳!
ここまでトータルして不自由な自由は見た事がない!
なのにこの生き物は
間違いなくものすごく楽しく生きている!
多分木の実とかを食べて冬に備えている!
海中にこれがいたら私は人生を考え直すだろう!
しかし優れた超視点を持つ大路画伯は
これを見た瞬間に
「あ!見て見て!タツノオトシゴ!」
と認識できるのだ!
久しぶりに会う友人が
別人かと思えるほど変わっている時がある!
そんな時はなんだか寂しくなる!
だが!
大路画伯はまったく変わっていなかった!
もう少し変わっていてもいいと思えるぐらいに
変わっていなかった!
常人の視点を超えた特殊認識能力「超視点」!
大路恵美はX-MENの一人にでもなればいい!
あぁひろいだひろいだ!
なお今回のこの『ひろぐ』から
大路画伯による名画をダウンロードし
嫌がる友達に見せて
「さて何でしょう?」
と問う遊びも推奨します!
付録
過去の超視点画に関する『ひろぐ』記事
『目を信じるな!超視点画家を探せ』
『超視点画家の襲来!〜奴はすぐ近くにいた』
『超視点画家の逆襲!〜爆風で飛ぶ鳥』
『伝説の超視点画家が危険な新作を公開!』
何年ぶりの事だっただろう?
恐らくは2005年の舞台
『姫が愛したダニ小僧』以来ではないだろうか?
そもそも彼女と出会ったのは
今から17年前の2001年の事!
吉本新喜劇座長「内場勝則」氏が
自らのプロデュース公演に
彼女を指名した事によるものだった!
私は作・演出・出演を依頼され
”名優内場勝則が4つの血液型を演じる!”
というすごいのかすごくないのかわからないコンセプトで
舞台『四つの理由』を作り上げた!
怪人「石丸謙二郎」を含めた4人による
4本のオムニバス作品だった!
その舞台を上演する事で
私は大路恵美のファンになった!
女優としてではない!
女性としてでもない!
一人の画家として心底惚れてしまったのだ!
その2年後!
私と「喜劇王」川下大洋と山内圭哉による
3人時代の「Piper」は
朝日放送で深夜番組『発熱!猿人ショー』を手に入れた!
我々はそこに大路恵美を迎え入れ
毎週どうでもいいコントを演じる中
彼女に絵を描かせるワン・コーナーを設けた!
そこでの彼女は輝いていた!
まさに原石がダイヤモンドに変わる瞬間だった!
彼女が番組内で描いた「カマキリ」は伝説となり
冗談でTシャツにして
5名様ぐらいの視聴者プレゼントにしたところ
1,000通近い応募があったと聞かされた!
そのせいで彼女は周囲から
「画伯」と呼ばれるようになったのである!
最近書斎「LEVEL 4」の引き出しを掃除していると
ファンから頂戴した面白い物が出てきた!
それは見事な手作りはんこで
なんと
大路画伯による伝説の「カマキリ」と
それに続く傑作と言われた
「ザリガニ」がデザインされた物だった!
(もう一つは番組のレア・キャラクター
「知らないおじさん」だった!)
「いずれは大路画伯本人に渡さなければいけない!」
と保存しておいた物だったが
彼女に会う機会は今年2018年になるまで無かった!
内場氏とは常々酒盛りのたびに
「『四つの理由』だけは絶対にもう一回やらなければ!」
と話し合って来た!
なにしろ私の30年近い演劇人生の中で
唯一アンケートに
「金返せ!」
との殴り書きを見た公演だったのだ!
理由は作品の不出来ではなかった!
客席の組み方のミスにより
”3列目以降はほとんど見えない”
という大失態をやらかしてしまったのだ!
この話をすると当時のスタッフは
とても寂しい表情になってしまうのだが
そんなのは誰あろう演出家である私の責任だ!
当時ノリだけで公演を連発していた私は
満員になった客席から舞台がどう見えるか?
を全くチェックしていなかったのだ!
当時のお客さん達には
大変失礼で申し訳ない事をしてしまった!
許されるものならば
今ここで心からお詫びを申し上げたい!
しかしながらそれを一生悔やんでいても先には進めない!
そんなわけで
”『四つの理由』をもう一度!”
は私と内場氏との合言葉になっていた!
なので!
「わかぎゑふ」「岡部尚子」「村角太洋」という
3人の劇作家と共作したオムニバス舞台
『Small Town,Big City』
からわずか2週間後となる強行スケジュールであっても
「今なら初演キャストが全員揃う!」
という滅多にない貴重な機会を
見逃す手はなかったのだ!
そして先日!
大阪・東京の2都市にて
2018年版『四つの理由』が上演された!
かつては内場氏によるプロデュース公演だったが
今回はそうではない!
なので私も俳優として司会者として
でしゃばる事にした!
更に17年前には無かった
特殊で冒険的な演出を思いついた!
大路に絵を描かせよう!!!
かくして大路は私の思いつきに従い
毎ステージ舞台の上で絵を描く事となった!
「超視点画家」の大家である大路画伯が
遂に復活となったのだ!
では!
2018年版『四つの理由』で大路画伯が描き上げた
素晴らしい作品を
未公開のリハーサル分まで含めて一挙公開し
力の続く限り解説してひろごうと思う!
完成順ではなく
私なりの判断による超視点順だ!
★『クレヨンしんちゃん』
ひと目見て人間である事がわかる時点で
これは「超視点画」としては認めにくい!
大路画伯にしては稀に見る凡作と言えるだろう!
しかし長時間見つめていると
眉毛なのか目なのか?
目なのか鼻の穴なのか?
がわからなくなり
トリック・アートの不安感がこみ上げて来る!
大路画伯のテクニックの一つである
「自信が無い時には黒く塗りつぶせばなんとかなる」
という手法も見られる一枚だ!
★『アイアンマン』
「黒く塗りつぶしてみたけど余計わからなくなった」
というメッセージが頭頂部に込められた一枚!
これではマーベル社も訴えようがないオリジナリティだ!
Tシャツの上からカーディガンを羽織った
実に気取らぬカジュアル・ファッションは
ロバート・ダウニーJr,の私生活でのセンスを描き出している!
★『ピカチュウ』
「塗ればなんとかなる技法」を
”途中で諦める”という匠の技が見られる!
塗ってもどうにもならないと気づくまでに
なかなかの時間を要した大作である!
なにかの動物の上に
全体的にギザギザを描けば
どうにかピカチュウになるのではないか?
という大路画伯の壮大な夢が込められた作品!
★『ドナルド・ダック』
特徴あるくちばしに対して
よせばいいのに正面から挑んだ勇気あふれる一枚!
しかも本来くちばしの先にあるべき鼻孔を
顔の中央に描いてしまったものだからさぁどうしましょう!
鳥類としての特徴を失い
ちょっとふざけた人間になってしまっている!
セーラー服を脱ぎ捨てて
オーバーオールに着替えてしまった事も
衣替えの季節に適した超視点と言える!
★『太陽の塔』
2025年に再び万博を誘致する事となった大阪!
それを聞いて
かつての象徴が落胆し
つい両手を降ろしてしまった図!
「塗ればなんとかなる技法」に加え
大路画伯第2の表現方法
「同じ線をなぞっていればどうにかなるかも技法」
が見られる混合テクニックによる超視点画だ!
漫画家・吉田戦車のタッチに酷似しているのは
間違いなく偶然だ!
大路画伯には他人のタッチを真似る事などできはしない!
★『トリケラトプス』
さぁ!
この辺りから大変な事になっていくので
意識をしっかり持ってご覧いただきたい!
草食恐竜にあるまじき凶暴性と
まさかの荒くれたトサカ!
不安を煽る手足のバランス!
うまく伝わって来ないお腹の構造!
恐竜達に禁じられたはずの三点直立!
そしてなによりも
描いたはいいけどバランスがよくわからなくなった
と言わんばかりの他人事な尻尾!
全てにおいて観る者にギブ・アップを迫る
力強さがある!
★『カメレオン』
先の超視点画『トリケラトプス』と
重ね合わせるようにご覧いただきたい!
驚くほど正確にバランスの狂った尻尾が再現されている!
胴体の構造や手足のバランスもほぼ合致している事から
この作品は明らかに
『トリケラトプス』の姉妹作と言えるだろう!
怪獣ソフビ界で言うところの
”胴体流用首だけチェンジ方式”で生産販売された
「レッドキング」と「アボラス」の関係に近い!
なにしろ我々に衝撃を与えてくれるのは
この不愉快な生き物の顔だ!
私は今回展示する全ての絵が描かれる過程を
真横から見ていたのだが
大路画伯はこの絵を「べろ」から描き始めた!
そして最終的には
それが「べろ」だか何だかわからなくなっていく様を
目の当たりにした!
見れば見るほど奇妙な顔をしており
1分見続けるだけで
これが何なのかわからなくなる!
尻尾の線にわずかな「なぞり技法」を見せる
破壊力抜群の快作だ!
★『こおろぎ』
大路画伯と言えばやはり昆虫画の大家だ!
かつて描いた歴史的名作『カマキリ』のパワーを
今なお持続している事を証明するのがこの作品だ!
”独創的”と呼ぶよりもむしろ
”独走している”と表現した方が正しいかもしれない!
こちらを凝視している顔はもう何だかわからず
「塗り技法」か「なぞり技法」かもわからない頭頂部の迷いは
大路画伯の真骨頂と言える!
背中から飛び出したわがままな後ろ足も
大路画伯の問答無用さを伝えている!
昆虫好きから言わせれば屈辱的な一枚だ!
★『マングース』
一見しておわかりの通り
大路画伯はいつだって弱者の味方だ!
私が「マングース」というテーマを出したにも関わらず
画伯は迷いなくこの絵を描き始めた!
爬虫類を退治する動物ではなく
退治される側を描いてしまったのだ!
そしてほとんど描き終えたところで
小さく一言
「・・・あ。」
とつぶやかれた!
その直後に描き加えられたのが!
あろう事か!
頭上に並ぶ二つの突起である!
画伯は思ったはずだ!
「耳を描き足せば今からでも取り戻せるかもしれない!」
その不屈の闘志は
”何事も決してあきらめてはいけない”
というメッセージを鑑賞者に与えてくれる!
しかしそのメッセージが伝わらない私には
「究極の悪あがき」
として深く心に残った!
★『アルマジロ』
超視点画の傑作!
この名作には大路画伯特有の
「塗る」「なぞる」が見られない!
つまり!
画伯はこの絵に自信を持っている!
「これをアルマジロと呼ばずして
何をアルマジロと呼ぶのか?」
という自分勝手な乙女心のほとばしりが
この絵の全体から垂れ下がっている!
なぜこれほどまでに迷いの無い線で
観る者全てを迷わせる絵を描く事ができるのだろう!
生き物としてのルールを次々と破って描かれた
あまりにも独自な「なにか」!
食べてもおいしそうだが
それを許さない悲しい眼差し!
そして新幹線の先頭車両!
画伯の超視点能力をどこまでも感じさせてくれる
素晴らしい作品である!
★『アリクイ』
大路画伯は基本的にキャンバスを縦使いする画家だ!
ところがこれを描く際には
迷わずキャンバスを横にした!
画伯の中で
「アリクイは四本脚の生き物」
というイメージが固まったのだろう!
なのに!
最終的には一本も脚を描かなかった!
そんなパンクな話があるものか!
理不尽この上ない予測不能の横描き絵画だ!
そんな私の疑問に一切動じる事なく
悠然と描き続けて完成した本作は
数ある大路作品の中でも
後世に語り継がれるべき価値ある一枚となった!
渡されたキャンバスを飛び出すほどの
ダイナミックな作品だが
飛び出している部分が
肩なのか胸なのか想像もつかない!
そして肩か胸だったらとんでもない事だというのを
しばらくしてから気づかされる!
私は舞台上でこの絵の完成を見届けた瞬間
「大変な事になった!」
と感じた!
特に誰かに実害が出るわけでもないのだが
今見てもその感想は変わらない!
★『タツノオトシゴ』
2018年版『四つの理由』で
大路画伯が生んだ多くの名画中
私はこの作品が
最も観る者の心を乱す傑作超視点画だと感じた!
道なき道での暴走!
迷いの無いいかれ具合!
誰をも真似せず誰にも真似されない独自性!
尻尾のミステリアス!
胴体のあきらめ加減!
両目のあっちゃこっちゃ!
まさかの耳!
ここまでトータルして不自由な自由は見た事がない!
なのにこの生き物は
間違いなくものすごく楽しく生きている!
多分木の実とかを食べて冬に備えている!
海中にこれがいたら私は人生を考え直すだろう!
しかし優れた超視点を持つ大路画伯は
これを見た瞬間に
「あ!見て見て!タツノオトシゴ!」
と認識できるのだ!
久しぶりに会う友人が
別人かと思えるほど変わっている時がある!
そんな時はなんだか寂しくなる!
だが!
大路画伯はまったく変わっていなかった!
もう少し変わっていてもいいと思えるぐらいに
変わっていなかった!
常人の視点を超えた特殊認識能力「超視点」!
大路恵美はX-MENの一人にでもなればいい!
あぁひろいだひろいだ!
なお今回のこの『ひろぐ』から
大路画伯による名画をダウンロードし
嫌がる友達に見せて
「さて何でしょう?」
と問う遊びも推奨します!
付録
過去の超視点画に関する『ひろぐ』記事
『目を信じるな!超視点画家を探せ』
『超視点画家の襲来!〜奴はすぐ近くにいた』
『超視点画家の逆襲!〜爆風で飛ぶ鳥』
『伝説の超視点画家が危険な新作を公開!』
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