【映画】ジェイコブス・ラダーとサイレントヒル【ネタバレ】
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【映画】ジェイコブス・ラダーとサイレントヒル【ネタバレ】

2015-10-30 22:12
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今日の映画。

ジェイコブス・ラダー

この手の映画は「意味がわからない」「理解出来ない」と投げ出されがちだが、日本でも海外でも評価はかなり高い。
まずこの作品の映像技術、演出、テーマが素晴らしく評価出来た。
その一方である日本のゲーム『サイレントヒル』がこの映画に強く影響されていたことも、後の高評価に繋がったと言えるかもしれない。
以下、両作品のネタバレをかなり含んでいるので要注意。


今回は『ジェイコブス・ラダー』と『サイレントヒル』シリーズの関係について考察していこうと思う。
まず2つの作品の関連性であるが、これは以下の攻略本の中で公式に影響を受けていることは明らかになっている。


●生と死
『ジェイコブス・ラダー』では主人公ジェイコブ・シンガーの走馬灯が描かれている。
戦後の暮らしやその中で襲い掛かる異形の者、暖かい家族、同じ苦しみを負っているかつての戦友…
死を受け入れるまでのジェイコブの葛藤。悪魔に抗うか、天使に身を委ねるか。死という結果に変わりはない。
ダンスの場面で占い師に手相を見られて「あんたもう死んでるはずなんだけど」と突然のネタバレをされるが、これは展開を読みやすくする為の演出と考えると見事なものであった。

『サイレントヒル』では2に近い。

このゲームはマルチエンディングで結末はいくつかあるのだが、ファンの間では主人公ジェイムスが入水自殺をするというのがトゥルーエンドとの声が高い。
最初から異世界等はなく、死を受け入れる為の旅であったという話である。


●悪魔の存在
『ジェイコブス・ラダー』では冒頭からあらゆる異形の者が現れる。
ゾンビのような者、翼の生えた悪魔のような者、マスクで覆った屈強な黒人、目のない看護師。
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そしてジェイコブの恋人ジェジー。彼女はジェイコブの前妻サラや子供達を忘れさせてくれる存在であったが、地下病院の手術室の中にジェジーはいた。彼女もジェイコブが死への抗いから生まれた魔の者であった。
未公開シーンではジェジーがジェイコブ自身に変わる場面がある。

『サイレントヒル』では数々の「クリーチャー」と呼ばれる化物が徘徊する。
彼らには意味があり、主人公の怒り、苦悩、恐怖といった負の感情から生み出されて襲い掛かってくる。
ジェジーはサイレントヒル2で言えばマリアのような存在であろう。
そして時折出現した顔面黒マスク男を見てピンと浮かぶのは「レッドピラミッドシング」。
顔が覆い隠され上半身裸で屈強な体。『ジェイコブス・ラダー』では襲い掛かってはこないが悪魔のボスのような象徴的な感じを受けた。
目のない看護師はこれもお馴染み「バブルヘッドナース」である。
顔を激しく震わせるのは黒マスク男の方であったが、サイレントヒルではナースがこの動作を行っている。
この作品無しではこれらの名クリーチャーは誕生しなかったと言えるぐらいである。


●場面
『ジェイコブス・ラダー』では戦場、地下鉄、廃病院といった場面が登場する。
特に誰もが印象的に感じられたのはジェイコブが廃病院から精神病棟のようなところを通って肉塊が転がる道をストレッチャーで運ばれるシーンだろう。
気を失って目覚めたらそこはボロボロの病院で、周りには重度の精神病患者や奇形の人間がウヨウヨいて、最後には頭に注射を刺されるという衝撃的な展開である。

『サイレントヒル』シリーズではこの作品以外の多くの映画作品からヒントを得ているが最もメインと言われているものはやはり病院だろう。
日本で開発されなかったサイレントヒル5(ホームカミング)では冒頭のシーンで手足を拘束された主人公が精神病院と思わしき場所で同じくストレッチャーで運ばれるシーンがある。その途中には他の病室でおぞましい光景が広がっているのだ。

『ジェイコブス・ラダー』でも運ばれる途中でジェイコブの息子が亡くなったシーンを回想する場面があるがこれもオマージュだろう。
また未公開シーンでトイレからティッシュのようなものが穴から出てくるシーンがあるが、サイレントヒルといえば全シリーズを通して穴というのがキーになっている。これも影響を受けているのかどうかはわからないが、未公開シーンも含めてゲームに投影されていると思うと面白いところがある。


●恐怖との対峙
ジェイコブは自らの死に至るまで様々な恐怖と向き合うことになるが、これらは彼自身が生み出したもの。
この悪夢の中で唯一彼を手助けしたのはルイという整体師であった。
「死から逃げていれば悪魔は追ってくる。死を穏やかに受け入れればそれは天使に変わるだろう」
DVDのメイキングの中で「この作品は人間全てに関わる問題」としている。
死ぬのは怖いし、その恐怖を再現できる者はこの世にいる人間誰も知らない。
多分死に直面した瞬間は言葉では言い表せない恐怖なのだろう。
しかし死を受け入れればその苦しみの扉から脱出できる。
これは天国とか地獄とか宗教的な問題ではないと思う。人間誰もが最期に経験する旅なのだ。

『サイレントヒル』シリーズも主人公の生死に関わらず「自分との闘い」をテーマにしている。
アレッサ然り、ジェイムス然り、ヘザー然り最後に対峙するのは姿を持たない畏怖の存在である。
敵対関係としてカルト教団があり、謎の魔力によってクリーチャーが生み出されているという設定があるがそれを具現化させているのは結局人間の心なのである。


●ジェイコブを殺したのは…
終盤ジェイコブはタクシーでかつての家族と住んでいた自宅へと戻る。
そのタクシーの運転手の顔を見て直感的に何かを思い出すが、それはジェイコブを銃剣で刺したアメリカ人であった。
彼はキーホルダーにロザリオを付けていた。つまり彼も悪夢に襲われていた可能性がある。
しかし戦場での出来事は現実のはずである。
これがジェイコブの走馬灯だとすると軍が秘密裏に作っていた覚醒剤の存在があやふやになるが、ジェイコブを殺したのがベトコンではなく本当に米兵だとすると…

余談であるが、ジェイコブの走馬灯に同じ苦しみを持った仲間達が登場したのは彼らもまた死を受け入れられずに苦しんでいるという共鳴が起こっているのだろう。
車が爆破して死んだ仲間はきっと苦しみながら死んでいったのだと思われる。


●映画の総合評価
作品の中で幾度と無く観客は騙される。
これは夢か、死後の世界なのか、目が覚めたら幸せな家族に囲まれた普段の生活に戻りたいと思いたい。
しかし最後の最後で時系列はベトナム戦争時代に既に終わっていたという結末なのだ。
「夢オチ」という言葉では片付けられない。

この作品はレビューされすぎているので今回はゲーム『サイレントヒル』との対比を行ったが、この作品の一番背景にあるのはやはりベトナム戦争の狂気である。
ベトナム戦争では戦中戦後多くの帰還兵が精神を病んでしまったということでこれをテーマにした映画はたくさんある。
有名なところでは『フルメタルジャケット』もそのひとつだ。

レンタルで借りてすぐ返してしまったのでチャプターごとに検証してもっと考察したい作品。
いつか二度目に観た時にもう一度レビューするかもしれない。
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