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  • Vol.273 結城浩/結城タスクと進捗コマンド/仮想通貨「モナコイン」とネットでの「投げ銭」/

    2017-06-20 07:00
    216pt

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    Vol.273 結城浩/結城タスクと進捗コマンド/仮想通貨「モナコイン」とネットでの「投げ銭」/

    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年6月20日 Vol.273

    はじめに

    おはようございます。結城浩です。

    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

     * * *

    新刊の話。

    『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』は、 2017年6月末に刊行の予定です。

    表紙の画像がやってきたので、新刊が出るたびに作っている 「書籍紹介ランディングページ」 も作りました。

     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』
     https://note9.hyuki.net/

     ◆ランディングページ(スクリーンキャプチャ)

    2017-06-19_landingnote9.png

    ランディングページというのは、 自分の著書を紹介・宣伝するときの必須ツールのひとつです。

    メールでも、SNSでも、自分の本を他の人に伝えるときに、 「こんな本が出ます。詳しくはこちらのページをみてくださいね」 と簡潔に紹介することができるからです。

    また著者自身が紹介するときだけではなく、 読者さんが検索するときにも有効です。

    たとえば、2016年に結城が刊行した統計の本を 試しに検索してみましょう。 「数学ガールの秘密ノート やさしい統計」 を検索したときの順位は、

     (1)アマゾン(紙の本)
     (2)アマゾン(Kindle)
     (3)ランディングページ
     (4)シリーズのページ

    となりました(スクリーンショット参照)。

     ◆「数学ガールの秘密ノート やさしい統計」の検索順位

    2017-06-19_ranking.png

    このような順位になるのは著者にとってはうれしいことです。

    ランディングページは、結城メルマガでも何回か紹介した 「でんでんランディングページ」 をもとに作っています。

     ◆でんでんランディングページ
     http://lp.denshochan.com

     ◆書籍のランディングページの作り方(結城浩ミニ文庫)
     https://note.mu/hyuki/n/n75de4c371507

    結城は書籍一冊ごとにランディングページを作っています。 そうすると共通点が非常に多くなるので、 どうしてもコピー&ペーストが多くなってしまいます。 それを避けるため、erbというプログラムを使って、 決まり切った部分をプログラムで生成するようにしています。 以前作ったerbファイルは以下で公開しています。

     ◆erbファイル(make-landing-page-for-note6.erb)
     https://gist.github.com/hyuki0000/469aa65677849265c4e2

    使い方については、 結城メルマガのVol.205で詳しく紹介しました。

    ランディングページは、結城が個人的に管理している、

     hyuki.net

    という独自ドメインのサブドメイン上に作っています。 新刊の『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』の場合は、

     note9.hyuki.net

    になります。独自ドメインに作っておくのはとても大事です。 ランディングページを実際に運用するサーバが変化したとしても、 URLが変化しないからです。

    実際、結城は以前自分のランディングページを Tumblrというサービスを使って公開していました (Tumblrには独自ドメインを使う機能があります)。

    ある時点で、TumblrからさくらVPSのWebサーバに切り換えたのですが、 その場合でもURLは変わりません。 ドメインを考えてWebページを公開するというのは、 検索順位を落とさないため、 またリンク切れを防ぐために大事なことですね。

    ともあれ、新刊刊行までもう少し。 ぜひ応援ください!

     * * *

    はてなダイアリーの話。

    「はてなダイアリー」の新規開設受付終了というアナウンスが出ました。

     ◆ はてなダイアリーの新規開設受付を2017年7月3日をもって終了します
     http://d.hatena.ne.jp/hatenadiary/20170605/1496643809

    このアナウンスには時代の移り変わりというものを感じます。

    結城は「はてなダイアリー」でたくさんの記事を書きました。 「はてなブログ」が出てからも、 メインの軸足をそちらに移すことはありませんでしたね。

     ◆結城浩のはてな日記
     http://d.hatena.ne.jp/hyuki/

    はてなダイアリーをせっせと更新していたときは、 Perlで作った「はてなダイアリーライター」 というスクリプトを使っていました。 2004年〜2009年ころの話題になります。

     ◆はてなダイアリーライター(略称:はてダラ)
     http://www.hyuki.com/techinfo/hatena_diary_writer.html

    このツールは、自分の手元にあるテキストをアップロードし、 はてなダイアリーの記事にするという簡単なものです。 現在の「はてなブログ」でいえばAtomPubに相当する機能を、 自前でごそごそ作っていたことになります。

     ◆はてなブログAtomPub - Hatena Developer Center
     http://developer.hatena.ne.jp/ja/documents/blog/apis/atom

    このときに考えていたことの根底には、

     ・Web上で入力したものをマスターにしたくない
     ・テキストは自分のエディタで書きたい

    という感覚があったように思います。 はてなダイアリーのUIを使って入力したテキストは、 自分の手元に残りません。 またテキストを書くときのUIもはてなダイアリーに縛られます。 それが嫌だったため、 手元にあるテキストファイルをマスターとし、 それをWebにアップロードするツールを作ったのです。

    時代は流れ、現在の結城の感覚はやや変化しています。 それは、

     ・場合によってはローカルにあるよりもWeb上にあった方が残る
     ・Web上で入力しようが、自分のエディタで書こうがかまわない

    というものです。

    結城は、 Twitterで連続的なツイート(連ツイ)を行い、 それをテキストにして自分の手元に持ってくるツール(autogetter) を使っていますが、 その「連ツイ」の発想は「はてなダイアリーライター」 とはほぼ反対になっていますね。 Webで書いたものを手元に持ってきているわけですから。

     ◆AutoGetter - Twitterで自分のツイートから自分へのリプライをまとめるRubyスクリプト(連ツイまとめ作成用)
     https://gist.github.com/hyuki0000/85989bcf78d1476d74d3

    時代が変わればツールも変わります。 でも、ツールが変わっても「文章を書く」 という行為についてはあまり変わらないように感じます。

     * * *

    PR表記の話。

    数日前に「広告記事やタイアップ記事のタイトルにPR表記するべきか」 という話題が出ていました。

    いかにも、論点が多岐にわたりそうな話題ですし、 発言者の立ち位置(広告主側、ライター側、読者側) で紛糾しそうなテーマです。

    以下で書くのは、あくまで結城の限られた観点での意見です (他の人に押しつけたり、声高に主張したいわけではないの意)。

    結城は《読者のことを考える》という原則に照らすのが好きです。 《読者のことを考える》ならば「タイトルにもPR表記する」 方に軍配を上げたくなります。

    必ずしもタイトルの一部に文字列として入れる必要はありません。 それは方法にすぎません。 大事なことは、読者に対して記事を見せる前に (リンクをたどってジャンプする前に)、 「これは広告記事である」と知らせる方が読者に喜ばれそうだ、 という点です。

    タイトルにPR表記するとガクッとPVが減るとしたならば、 なおさら、タイトルにPR表記した方がいいと思います。 なぜなら、PR表記するとPVが大きく減るとしたならば、 PR表記は読者にとって、 「見るか否かを定める有効な判断材料になっている」 わけですから。

    「記事の先頭でPR表記されていれば、 広告記事を見ない人はすぐ戻るからいいのでは」 という意見も考えられます。もちろん、 記事の先頭でPR表記するのは大事だと思いますが、 でも、なんだか「PVを詐称したい」 といってるみたいに聞こえてしまいます。

    もっとも、 最近の広告記事にはコンテンツとして楽しいものもあります。 最後まで楽しんでから「これ、広告記事だったのか! でも楽しかったなあ、なかなかうまい!」 という場合もたまにありますね。 そのようなコンテンツをねらった広告記事の場合、 タイトルにPR表記するのは「ネタバレ」になりそうなので、 なかなか一概にはいえないのかもしれません。

    とはいえ、 ふつうの記事だと思って最後まで読んできたけれど、 最後で広告記事だとわかった場合「がっかり」 することの方が多いと結城は感じます。 「がっかり」といいますか、 「誤認させられた」感といいますか。 いかにもネタやジョークっぽい記事ならばまだしも、 情報提供の形をした記事の場合には不快感は増します。 「だまされた」というと言い過ぎかもしれませんが。

    そして、読者に不快感を与えるとしたら、 広告としては失敗ではないのでしょうか。

    結城はそんなふうに思っています。

     * * *

    学習効果と「対話」の話。

    「自己学習の効果をより高める4つのポイント」 というWeb記事をぱらぱらと読んでいました。

     ◆自己学習の効果をより高める4つのポイント
     http://www.dhbr.net/articles/-/4863

    原文の題名は、 "Talking to Yourself (Out Loud) Can Help You Learn" 「(声を出して)自分と話すのは学ぶ助けとなる」 ですね。

    この記事には、 以下のような4つのポイントが書かれていました。

     ・ひとりごとを言う
     ・なぜかと尋ねる
     ・要約する
     ・関連づける

    これを読みながら、結城はこれらのポイントが、 「数学ガール」シリーズに登場する「テトラちゃん」 にぴったり当てはまる!と思っていました。

    テトラちゃんはいつも元気で熱心で、 好奇心が旺盛です。でもそれだけではなく、 学び方がとてもうまいのです。

    そして、上に挙げた4つのポイントのほとんどを、 テトラちゃんは日々の学習で実践していますね。 彼女の学び方は読者さんにもよく注目されています。

    結城は「対話」というのが学びにおいて重要だと思っています。 古くはソクラテスやプラトンの時代から、 対話は重要な役目を担っています。特にその中でも、 《問いかけ》は重要です。 『いかにして問題をとくか』に出てくる《問いかけ》 も有名ですね。

    自分で「ひとりごと」をいうのは、 自分自身を相手に対話を行っていることになります。 問いを自分に投げかけることによって、 人はそれに答えようと試みます。 そこが「学び」にとって重要なのでしょう。

    プログラマの中にも、 「ひとりごと」をいう人が多いと思います。 プログラムを書きながら、

     「どうしてそうなるんだ?」
     「xが0のときでもうまくいくか?」
     「この条件のとき、ここに来るかなあ?」

    そんなことを誰にともなく言うプログラマは、 決してめずらしくありません。

    あなたは考えるとき、自分自身と「対話」しますか?

     * * *

    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。

    どうぞ、ごゆっくりお読みください!

    目次

    • はじめに
    • 結城タスクと進捗コマンド - 仕事の心がけ
    • 仮想通貨「モナコイン」とネットでの「投げ銭」
    • おわりに
     
  • Vol.272 結城浩/再発見の発想法/教えるときの心がけ/著者と出版社の販促活動/

    2017-06-13 07:00
    216pt

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    Vol.272 結城浩/再発見の発想法/教えるときの心がけ/著者と出版社の販促活動/

    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年6月13日 Vol.272

    はじめに

    おはようございます。結城浩です。

    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

     * * *

    まずはご連絡から。

    『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』 《サイン本無料プレゼント》実施中です!

     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』《サイン本無料プレゼント》
     https://snap.textfile.org/20170612150529/

     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』カバーイラスト

    2017-06-12_note9.png

     * * *

    新刊の話。

    2017年6月末に刊行される予定の新刊 『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』の、 再校読み合わせが終わりました。

    編集長との読み合わせのとき、 結城は出版社まで出向くのが普通です。 でも今回は直前に体調を崩してしまい、 近所のカフェまで編集長の方に出向いてもらいました。 何とか読み合わせをこなすことができましたけれど、 体調管理の点で猛省が必要ですね。

    ともあれ、再校読み合わせが終わりました。 この本の内容に関して結城ができることは、 ほぼすべて終わったことになります。 あとは印刷して本ができるのを待つばかりという状態。

    今回の本の執筆は、個人的にたいへんな時期と重なり、 難産だったイメージがあります。しかしながら、 長い時間が掛かった分、多様な視点での読み返しができたため、 いつもより品質が上がった可能性もありますね。 感謝なことです。

    微分に関してはすでに、 『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』 という本が出ていますので、今回の積分と合わせて

     《微分積分セット》

    ができたことになりますね。

    今回の新刊も、 この本を必要としている読者さんに無事届きますように!

     ◆『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』
     https://note5.hyuki.net/

     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』
     https://bit.ly/girlnote09

    後ほどQ&Aのコーナーでは、 本を書いているというメルマガ購読者さんからの、 「販促活動」に関する質問にお答えします。

     * * *

    執筆のようすをアニメーションGIFにして公開する話。

    結城はMacBookを使っています。 Macでは、QuickTime Playerを使うと、 コンピュータ上での操作のようすを動画として記録できます。 いわば「録画」ですね。QuickTime Playerのメニュー項目名は、 「新規画面収録」です。

     ◆QuickTime Playerで「新規画面収録」

    2017-06-12_qtime.png

    保存した結果はmovファイルになりますので、 それをYouTubeにアップロードすれば公開できます。 でも、ffmpegというツールでmovファイルをアニメーションGIFに変換すれば、 もっと手軽に公開することができます。

    しかし、結城はffmpegというツールのオプションが複雑で覚えられません。 変換するたびに使い方を検索することになります(悲しい)。 そこで、mov-to-gifというスクリプトを作りました。 一度学んだ結果をスクリプトに覚えさせておけばいいのです! スクリプトは以下で公開しています。

     ◆mov-to-gif
     https://gist.github.com/hyuki0000/66990a8152e78eb48c38d31991383114

    たとえば、結城が作ったWebサイトDraftで数式入力しているようすを、 QuickTime Playerで「録画」して、mov-to-gifでアニメーションGIFに変換してみました。 タイプしているようすをリアルタイムで見るのはたいくつなので、 タイプしたときの三倍速で再生するようにしています。

     ◆Draft
     https://draft.hyuki.net/

     ◆数式入力しているようす(アニメーションGIFへのリンク)

    2017-06-17_draft.gif

    なお「動画をアニメGIFにしては?」という示唆は、 以下のツイートで @nnabeyang さんからいただきました。

     https://twitter.com/nnabeyang/status/868800719062614016

    結城が以下の動画をYouTubeにアップロードしたときに、 リプライで教えてもらったものです。

     ◆Draft - Distraction Free Editor with Math
     https://youtu.be/ADZj4pAD52c

    ちょっとした動画なら、 YouTubeにアップロードするよりも、 アニメーションGIFにしてツイートする方が確かに手軽ですね。

     * * *

    スタティック・テトリスの話。

    スタティック・テトリス(static tetris)というゲームの原案を思いつきました。

    普通のテトリスはリアルタイムゲームですよね。 プレイヤーがじっとしていても、ピースはどんどん降ってきます。

    でも、テトリスのおもしろさの一つは、 やってくるピースをどのような向きで、 どのように積むかというところにあります。

    そこで、テトリスからリアルタイム性を除いたパズルゲームにするのです。 プレイヤーはじっくり考えて一手を進める。 一手というのは、左右に動かしたり、回転したりというアクションです。 プレイヤーが一手を進めたら、ピースが少し下に落ちる。

    リアルタイム性がない分だけやさしくなっちゃいますから、 普通のテトリスよりも難しくしたほうがいいですね。 たとえば、同時に複数個のピースが落ちてくるとか。

    結城はリアルタイムなゲームがあまり好きじゃないけど、 パズルゲームは好きなので、 どなたかおもしろいゲームとして実現してくれないでしょうかね。 名前に「テトリス」は使えないかもしれませんけれど。

     * * *

    比喩と説明の話。

    プログラミング言語で「変数」のことを説明するときに、 「変数は箱のようなものです」ということがあります。 「変数に値を代入することは箱にものを入れるのに似ている」 のように使うことになります。

    これは「変数」という抽象的なものを相手に教えるために、 「箱」という具体的なものの性質を借りていることになりますね。 つまり《比喩を使った説明》ともいえるでしょう。

    比喩を使った説明は、うまくいけばとても強力です。 抽象的な概念はなかなか相手に伝えることが難しいものです。 具体的な事物を使って「完全にこれと同じというわけではないけれど、 これと似た性質を持っているんだよ」と説明すれば、 まずは理解のとっかかりとして有効です。

    ただし、比喩を使った説明を行うときには、 教える側にも学ぶ側にも注意が必要です。 比喩はあくまで比喩であって、 概念すべてを説明するわけではありません。 つまり、比喩には自ずから適用できる限界があるのです。

    たとえば「変数は箱のようなものである」といった場合、 「変数に値を代入すること」を「箱にものを入れること」 にたとえるのは、まあいいでしょう。 でも「変数の値を他の変数に代入すること」を、 「箱からものを取り出して他の箱に入れること」 と見なすのは正しくありません。 つまり「変数は箱」の比喩は、 その適用限界にすぐ至ってしまいます。

    教える側も学ぶ側も、 比喩を使った説明でさっとイメージをつかんだ後は、 いさぎよくそれを捨てて、もっと正確な説明 (あるいはより正確な比喩)へと移るのがいいでしょう。

    結局捨てることになるなら、 最初から「変数は箱」などといわない方がいいのでしょうか。 それは説明する内容と読者によります。

    比喩を捨てるときも、相手に概念を伝えるいいチャンスになります。 つまり、こうです。

     「変数は箱のようなものだから○○できるといったよね。
     でも、変数は箱とは違って△△はできないんだ。
     そこは箱とは違う点だから注意して」

    このような説明を行えば、 「変数」という未知で抽象的なものが持つ性質を、 「箱」という既知で具体的なものが持つ性質を使って 理解を深めることができるのです。

     ・変数は○○できる。その点は箱に似ている
     ・変数は△△できない。その点は箱に似ていない

    このように「できる」「できない」を知ることで、 学ぶ側は概念の姿をくっきりと理解できるようになるでしょう。

    概念を的確に表す比喩を求めるのはいいことですが、 最適な比喩を求めすぎるのはよくありません。 概念との一致を求めすぎると、 わかりにくくてアクロバティックな比喩が生まれがちだからです。 大きな特徴がさっとわかるシンプルな比喩がいいですね。

    比喩は道具の一つに過ぎません。 使いどころを間違えなければ、強力な道具となるでしょう。

     * * *

    gitとグラフ表示の話。

    バージョン管理システムgitをコマンドラインで使っていると、

     これからマージするんだけど、
     コマンドラインだと不安なので、
     ブランチの様子やリモートリポジトリの様子を
     グラフィカルに見ておきたい

    という場面がよくあります。そんなときには、

     open -a SourceTree .

    を実行すると、カレントディレクトリで SourceTree(GUIアプリ)が開かれるので便利です。

     ◆SourceTreeでcommit historyを見ている様子

    2017-06-12_gitgui.png

    Macのopenコマンドはとても便利で、-a オプションで、 アプリを指定して起動することができるのです。

    さて、こんな話をツイートしながら、 (ふふん、私ってgitやMacを使いこなしてるなあ) と心ひそかに思っていました。でもあるとき、 gitにはそもそもグラフ表示機能が付いていることを知り、 ショックを受けました。具体的には、

     git log --oneline --graph

    を実行するだけで、以下のような表示になるのです。 左側にテキストを使ってグラフっぽい形が描かれていますね。

     ◆gitでcommit historyを見ている様子

    2017-06-12_gittext.png

    結城は、結城メルマガVol.270でこんなことを書きました。

     ある技術を使って活動をしているとき、
     「こういうことをしたいな」
     と思ったらまずは公式ドキュメントを読むべき。
     自分が考える「改良」や「応用」というのは、
     すでに誰かが考えていて、
     適切な対応方法が確立されていることが多い、
     ということ。

    今回の--graphオプションは、 まさにこれにぴったりあてはまる事例ですね。

     * * *

    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。

    どうぞ、ごゆっくりお読みください!

    目次

    • はじめに
    • 再発見の発想法 - DRY
    • 還元論と全体論 - 教えるときの心がけ
    • 著者と出版社の販促活動について - Q&A
    • おわりに
     
  • Vol.271 結城浩/数式混じりの文章/増刷のタイミングが教えてくれること/愛の原則/

    2017-06-06 07:00
    216pt

    電子書籍の機能を使用するには、記事を購入してください

    Vol.271 結城浩/数式混じりの文章/増刷のタイミングが教えてくれること/愛の原則/

    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年6月6日 Vol.271

    はじめに

    おはようございます。結城浩です。

    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

    このさわやかな天気がずっと続けばいいのになあ…… と思っていましたが、もう六月。 そろそろ梅雨が近づいています。 フラワーショップのレパートリーにも紫陽花が登場しています (向日葵も)。

    気がつけば、 もう今年2017年も半年が過ぎようとしているんですね。 毎回書いているようですが、時間が過ぎるのって、 どうしてこんなに速いんでしょうか!

     * * *

    新刊の話。

    『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』の再校ゲラが届きました。

    再校ゲラの段階になると、 もう極端に大きな変更はできません(いや、できないことはないのですが、 危険をともなうのでできるだけ避けます)。

    さすがにそろそろ文章としてはスムーズに読めるようになっていますし、 単純な誤植もほとんどなくなります。 レビューアさんから指摘された事項の大半も(取捨選択ののちに)、 反映された状態になっています。 ゲラを読んでいても気持ちいいことが多いですね。

    この段階になると、ゲラを読んで修正しかかるけれど、 やっぱり修正は止めるということがとても多くなります。 『数学文章作法 推敲編』にも書きましたが、 ある意味で「最適」な状態に近くなっているため、 文章を少し動かすと、かえって悪くなってしまうことが多いからです。 「山の頂上にいるなら、どちらの方向に動いても下がることになる」 というのと似ている現象ですね。

    「最適」とはいえ「局所最適」ですから、 構成を大きく変更してよりよい状態に向かうことは不可能ではありません。 山の比喩でいうなら、いったん下がったとしても、 となりの山脈まで行けばもっと高くなれるということです。 しかしながら、再校ゲラの段階ではそんなに大きな変更はできません。 たとえば、この段階から章全体を書き換えたり、 章の順番を入れ換えるというのはかなり困難です。 「この本はここまで」という見切りをしなくてはいけません。 理想と現実との折り合いを付ける必要があるのです。

    それに実際のところ「大きな変更をすればもっとよくなりそう」 と思ったとしても、本当にもっとよくなるのかどうかは不確定です。 大改造や大手術をしたけれど、結局は大して変わらなかった。 単に時間だけ使う結果になるのもよくある話です。

    無理をしても直す価値があるのか、 それともこれで実際上は最適だと見切るのか。 それは本を書く上で難しい問題です。

    実は本に限らない話かもしれませんね。 ある程度以上の複雑さを持ち、 作成するのに時間が掛かる構造物を完成まで持っていくときには、 どんな人でも同じような判断が必要になるでしょう。

    いま欠点のように見えているところがある。 これは無理をしても直す価値があるのか、 それともこれで実際上は最適だと見切るのか。

    なかなか言語化しにくい判断かもしれませんね。

    そんなこんなで終盤戦を迎えている新刊です。 先日は、販売の際に一部のチェーン店さんが同梱してくださる 《メッセージカード》を描いていました。 いろんな書店さんが応援してくださるのは、 ほんとうにありがたいですね。

    この新刊が書店に並ぶのは六月末になる予定です。 がんばります!

     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』
     https://bit.ly/girlnote09

    後ほど「本を書く心がけ」のコーナーでは、 「増刷のタイミングが教えてくれること」 というお話をします。

     * * *

    執筆環境の話。

    少し前までは、レビューアさんからの指摘事項を ファイルに反映する作業をしていました。

    レビューアさんからの指摘はメールでやってきます。

     「ここに計算ミスがあります」
     「このテトラちゃんのセリフは意味が取りにくいです」
     「h > 0という条件が必要だと思いますが」

    のような指摘が結城あてにたくさん届くことになります。 結城はMacBook Air 13インチで作業をしており、 だいたい四個か五個のアプリを起動し、 それらを行き来して作業が進みます。

     ◆作業しているときの画面の様子

    2017-05-24_writing.jpg

    開いているアプリは以下のようなもの。

     ・ターミナル(iTerm2):コマンド入力やVimでの編集のため
     ・メール:レビューアさんの指摘を読むため
     ・プレビュー:原稿PDFを見るため
     ・ブラウザ(Safari):Draftを使ってメモするため
     ・Evernote:参考資料や過去のメモを見るため

    ウインドウはすべてフルスクリーンにして、 四本指スワイプでシャッシャッと切り換えたり、 Command+Tabで切り換えたりします。

    机の上に必要なものを広げて、 あちこち参照しながら作業を進める感覚です。 現実の机よりも手の移動距離が短くて済むので楽ですね。 また、すべての情報は画面に表示されていますから、 「いま見ているコレを後で検討しよう」と思ったら、 すぐに画面をEvernoteにクリップできるのもいいですね。 現実の机だと「いま見ているコレ」をクリップするのがやや大変です。

    コンピュータ上でできるだけ作業を進めるようにしているので、 コンピュータの執筆環境を整えると、作業効率がアップします。 つまり、自分のプログラミングによって、 作業効率を上げることが可能になります。 これはすごくうれしいこと。

    後ほど「仕事の心がけ」のコーナーでは、 「Draftで数式混じりの文章を書く」 というお話をします。

     * * *

    DIST.16 「esa meetup in Tokyo〜情報共有Night」の話。

    2017年6月23日(金)に、 ドキュメント共有サービスesaのmeetupが開催されるようです。

    結城は参加しませんし、 このイベントに関わっているわけではありませんが、 応援ということでご紹介。

    対象:

     ・Web制作における情報共有に興味のある方
     ・他者(社)がesa.ioをどのように使いこなしているか知りたい方
     ・学生でWeb制作業界に興味を持っている方

     ◆DIST.16 「esa meetup in Tokyo〜情報共有Night」
     https://dist.connpass.com/event/58048/

     * * *

    グラフのトリックの話。

    結城は『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』の第1章で、 「グラフのトリック」について書きました。 いろんなグラフを使って印象操作が可能であることや、 それを回避するために自分でグラフを読んだり、 描き直したりするという話題です。

    先日、@ShiMa1296 さんのおもしろいツイートを見かけました。 これもグラフのトリックの一種ですね。

     --------
     データそのものを弄らずとも印象操作はできる
     https://twitter.com/ShiMa1296/status/867288004850614273

    DAk51eSW0AARyTt.jpg
     --------

    ここに描かれているのは「レーダーチャート」と呼ばれるグラフです。 複数の項目に対して何段階かの評価があったとき、 その評価を「レーダー」や「蜘蛛の巣」のような形に描くことで、 特に良い項目や悪い項目を見つけ出すというものです。

    このツイートに書かれていたのは、 「項目が同じ」で、しかも「各項目の評価が同じ」だとしても、 並べ方を変えるだけで印象操作ができるという話題です。

    人間にはグラフの面積(広がり)がパッと目に入るので、 評価の高い項目が上下に、低い項目が左右に配置されると、 面積が大きく変化するのですね。

    本来はバランスを見るはずのレーダーチャートですが、 面積が小さいと「全体的に悪い」という印象を与えてしまいます。 なるほど、と思いました。

     * * *

    正確で読みやすい文章の話。

    正確で読みやすい文章を書くのはとても難しい、 といつも思います。 そもそも、内容が正確な文章を書くのは難しいですし、 読みやすい文章を書くのも難しいです。 でもその両方を備えた文章というのは本当に難しくなります。

    どんな主張にも、必ず「例外」や「前提条件」があります。 ということは正確に主張するためには、 それらをどう扱うかの判断が必要になりますよね。

    「AはBである。ただし例外として、CとDとEがある。 まれにはFという例外もある。過去にはGという例外もあり、 海外にはHという例外もある。太陽系から離れたところでは、 Iという例外もあり……」などと続けていったら、 「例外はもういいから話を先に進めてくれないかな」 と感じますよね。

    「AはBである。これが成り立つためにはCという前提条件が必要だ。 また環境によってはDという前提条件が必要になる場合もある。 まれにはEという前提条件を考えなくてはいけないし……」 と書かれていたら、 「前提条件の話はいいから話を先に進めてよ」 と言いたくなります。

    上に述べたのはわざとらしい例ですが、 文章を書くときの現場では同様のことが起きます。 正確さをアップしようとすると読みやすさがダウンし、 読みやすさをアップしようとすると正確さがダウンするのが普通です。 ひとことでいえば「トレードオフ」ということですね。

    「この文章は不正確だ」や「この文章は読みにくい」 と読者が主張するのは100パーセント正当です。 しかし、著者がそれを解決するのは容易なことではありません (まあ、だから、正確で読みやすい本に商品価値が生まれるわけですけれど)。

    正確で読みやすい文章を書くために必要なことはたくさんあります。 その一つは「存在だけではなく、重みも理解していること」でしょう。 先ほどの「例外」や「前提条件」の場合でも、 どんな例外や前提条件が「存在」するかを理解していることは必要です。 でもそれだけではだめで、 その「重み」まで理解していなくてはいけません。

    「重み」がわかっているからこそ、どれを詳細に書き、 どれを省略するのかの判断が可能になるのです。

    正確で読みやすい文章を書くのは難しいものです。 でもその執筆プロセスの中で、 ものごとを少し深く理解できるのは楽しいことでもありますね。

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    未来大の話。

    公立はこだて未来大学の高村先生の記事が出ていましたのでご紹介。 主に高校生向けの記事のようです。数学とはどんなものか、 数学の学び方についてなどのお話です。

     ◆未来大と数学
     https://www.fun.ac.jp/funbox201705/

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    Qiitadonの話。

    プログラミングに関する情報共有サイトqiita.comが、 マストドンインスタンスの運営を試験的に始めたようです。 「きーたどん」と読むのでしょうか。

     ◆Qiita ユーザー向けの Mastodon インスタンス Qiitadon を試験的に公開しました - Qiita Blog
     http://blog.qiita.com/post/161193715974/qiitadon

    Qiitaのアカウント連携なので、 プログラミングに関する話題がローカルタイムラインに流れるのでしょう。

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    「ほうれんそう」の話。

    あるとき、こんなわかりにくいジョークを考えました。

     「ほうれん草、入荷しました!」
     「ほうれん草、安くなっています」
     「ほうれん草、買ったほうがいいですか?」

    要するにビジネスシーンでよく使われる「ほうれんそう」 (報告・連絡・相談)を「ほうれん草」に適用したという話。 これはこれだけのことで(大して面白くもない)ジョークです。

    ところでこれに関して「ほうれんそう」を検索していて、 おもしろいことを知りました。

    「ほうれんそう」はしばしば、

     社員は、上司や同僚にきちんと情報伝達することが大事

    という意味だと考えられています。 社員のビジネスマナーとして捉えられているわけですね。

    でも、「ほうれんそう」を名付けた山崎富治氏の著書によると、 もともとは、そうではないらしいです。

     社員が『ほうれんそう』をしやすいような、
     風通しのよい職場環境を作ることが大事

    というのがポイントのようです。 つまり、部下よりは上司が注意する必要があるわけですね。

    (結城は著書に直接あたったわけではなく、以下の記事の孫引きです)

     ◆あなたの「ほうれんそう」は間違っている
     http://ascii.jp/elem/000/000/887/887822/

     * * *

    文章を書くテンプレ(定型)の話。

    文章を書くとき、こんなテンプレがあります。

     「でも、たった一つ言えることがあります。それは〇〇ということ」

    このテンプレは便利ですし、 ここぞというときに使えば文章がピリッと引き締まります。 読者の意識を「○○」に集中させる効果もありますね。

    でも、たった一つ言えることがあります。 それは使いすぎるなということ。

    ……というメタな文章を書いて楽しんでいます。

     * * *

    ファンレターの話。

    先日、韓国の高校生さんからファンレター(メール)をいただきました。 許可を得て、以下で公開しています。

     ◆結城浩の日記
     http://bit.ly/2qRjey4

    ご感想をいただくのはとてもうれしいのですが、 興味深いのは、この韓国の高校生さんが持たれた感想が、 日本の高校生さんが持つ感想と変わらないという点です。 『数学ガール』では、

     「数学は、時を越える」

    というキャッチフレーズを使っていますが、 結城はこのメールを読んで、

     「数学は、国境を越える」

    ということも言えるんだなあとつくづく思います。

    題材をうまく料理して提示すれば、 国境を越えて「数学のおもしろさ」が伝わるのですね。 住んでいる国が違っていても、使っている母国語が違っていても、 数学のおもしろさ、楽しさ、喜びというのは共通なのだな……と感じ入りました。

    学ぶことの楽しみもまた、 時や国境を越えていくに違いありません。

     * * *

    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。

    どうぞ、ごゆっくりお読みください!

    目次

    • はじめに
    • 複数の項目を提示するには「糸」が必要 - 文章を書く心がけ
    • Draftで数式混じりの文章を書く - 仕事の心がけ
    • 増刷のタイミングが教えてくれること - 本を書く心がけ
    • 愛の原則
    • おわりに