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  • Vol.303 結城浩/再発見の発想法 - 投機的実行/ミスしたときにはどうするか/嫉妬の感情と本を書く動機/

    2018-01-16 07:00
    216pt
    Vol.303 結城浩/再発見の発想法 - 投機的実行/ミスしたときにはどうするか/嫉妬の感情と本を書く動機/

    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年1月16日 Vol.303

    はじめに

    結城浩です。

    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

     * * *

    『プログラマの数学 第2版』の話。

    『プログラマの数学 第2版』がようやく刊行されました!

    先週末にサイン本が先行販売され、 今週には通常本も販売が始まります。 毎度毎度思うことですけれど、 新しい本が出るのはほんとうにうれしいです。

    ありがたいことに、 アマゾンでは数学一般書籍でランキング一位となりました。 たくさんの応援に感謝しています。

    また、驚いたことがあります。 書泉ブックタワーの「コンピュータ書ベスト1/7-1/13」で、 『プログラマの数学 第2版』がランキング二位になっていたこと。 多くの読者さんが買って下さったのですね。感謝です!

     ◆書泉ブックタワーコンピュータ書ベスト
     https://twitter.com/shosen_bt_pc/status/952394292462477313

     ◆『プログラマの数学 第2版』
     http://www.hyuki.com/math/

     * * *

    『数学ガール6』の話。

    もう少しなんです。

    「数学ガール」シリーズの第6弾となる、 『数学ガール6』の脱稿の話です。

    現在は第10章(最終章)を書いているところ。 何とか、何とか、 今週中にはレビューアさんに送ります。

    結城の予定では2018年1月30日までには、 少なくとも第1章〜第10章までは脱稿したいのです!

    がんばります。

     * * *

    論理的に考える話。

    ふだん意識して論理的に考えていないけれど、 「論理的に考える練習」をしてみたいという方へ。

    魔法の言葉を差し上げましょう。

    「論理的に考える練習」をする魔法の言葉とは、

     「なぜかというと」

    です。自分が何かを考えるときに、 ときどき、この魔法の言葉を心の中でつぶやいてみるのです。 それは「論理的に考える練習」になります。

    なぜかというと「なぜかというと」とつぶやくと、 心はひとりでに理由や根拠を考え始めるからです。

    「今晩は早く寝た方がよさそうだ。 なぜかというと……」

    「銀行からお金をおろしておこう。 なぜかというと……」

    「私の勉強方法はまずいんじゃないかな。 なぜかというと……」

    どんなことを考えるときにも「なぜかというと」 という魔法の言葉は使えますね。 何となくの思いつきで考えを進めるのではなく、 ただの印象論で判断をするのではなく、 理由や根拠を探してみる。 それは「論理的に考える練習」の一つといえるでしょう。

    ぜひお試し下さい!

     * * *

    「なぜの呪い」の話。

    一つ前の話と一見矛盾するようですが、 「なぜ」を問うことには危険があるという話をします。

    それはしばしば「なぜの呪い」と呼ばれています。 この表現はワインバーグ『コンサルタントの秘密』で知りました。

    理由は決して品切れになりません。 「なぜそれをするのか」「なぜそれをしないのか」 「なぜ」「なぜ」「なぜ」…… いくらでも問いを続けることができますし、 いくらでも理由を求め続けることができます。

    言い換えるなら「なぜ」を問い続けることは、 無限に時間を消費してしまう危険性があるということです。

    『コンサルタントの秘密』には「ムカデ」の話が出てきます。 そのムカデは、バッタからこんな質問を受けました (表現を変えて紹介します)。

     散歩するときには、どの足を先に出すんですか。
     どの足を先に出すか、どうやって決めるんですか。
     なぜ、その足を先に出さなくちゃいけないんですか。

    かわいそうなムカデは、一歩も歩けなくなってしまいました。

    論理的に考えるのは大事で、 「なぜ」を問うことは有効ですが、 問いすぎることは問題ですね。

     * * *

    記憶力の話。

    結城は丸暗記が苦手です。 何かを暗記するときには、 物語のように連なった自然な絡み合いがないと、 なかなか覚えられません。

    といっても、 そんな物語を作るわけにもいきません。 高校生時代に暗記するときには、 自分で歌にして覚えたこともありました。 頭文字だけをつなげて適当なメロディを付けるのです。

    あるいはまた、 通学路の街角と関連づけて、 歴史の順序を覚えたりすることもありました。

    最近はこのようにします。 暗記するときに「覚えよう」としません。 そうじゃなくて、

     次回、私が「これ」を思い出すときには、
     何を手掛かりにして思い出そうとするだろうか?

    と考えるのです。 つまり「覚える」ことに意識を向けるのではなく、 「思い出す」ことに意識を向けるといえるでしょう。

    こういう発想は、暗記以外にも役立ちます。 たとえば「探し物が多い人」や「忘れ物が多い人」 にも役立つでしょう。

    探し物が多い人は、 何かものを片づけるときに、

     次回、私が「これ」を探すときには、
     部屋のどこを探そうとするだろうか?

    と自問します。そしてその場所に置くのです。 たとえそこが、 片づけようとする自分の意図に反する場所だとしても。 そして多くの場合、自分の意図に反する場所でしょう。 だって「片づけたがる場所」と「探したがる場所」 の不一致が「探し物が多い」状況を生んでいるわけですから。

    忘れ物が多い人も同じです。 大切なものを持っていくのを忘れるのは、 誰しもあることですが、 それが頻繁に起きるなら困りますよね。 そういうときには、

     私が出かけるときに「必ず見るもの」は、
     いったい何だろうか?
     あるいは「必ず手にするもの」は、
     いったい何だろうか?

    と自問します。そしてその見るものや 手にするもののところに「忘れてはいけない大切なもの」 に関するメモを置いておくのです。 そうすれば、 出かける前に必ず思い出すことができるでしょう。

    記憶法に関して、もう少しいいましょう。 「覚えるとき」には、 「思い出すとき」のことを考えました。 実は「思い出すとき」には逆に、 「覚えたとき」のことを考えるのです。

     自分は以前、これを覚えようと思ったはずだ。そのときには、
     あとで自分が思い出すときの手掛かりも合わせて覚えたはず。
     さあ、いまこそ思い出すべきときだ。
     過去の私が用意した手掛かりは何だ?

    と自問するということです。

    すなわち、過去の自分と現在の自分が協力して思い出すのです。

    ぜひ、試してみてください!

     * * *

    気力が出ないときの話。

    仕事にせよ、勉強にせよ、 「気力が出ない」というときがあります。

    人によって表現はさまざまです。 気力が出ない、モチベーションが上がらない、 やる気がしない、眠い、帰りたい、サボりたい……

    もちろん結城もそういうときがあります。 昔は「こんな怠け心を起こしちゃだめだ」 と思ったものです。 でも最近は違います。

    気力が出ないなと感じたときには、

     ・低気圧が来ていないか?
     ・お腹が空いていないか?
     ・昨晩はよく眠れたっけ?

    という項目をチェックします。 つまり、自分の怠け心に要因を求めるのではなく、 低気圧・空腹・睡眠という要因を確認するのです。

    低気圧が来ると、 頭がどよんとして血のめぐりが悪くなります(私は)。

    お腹が空いていると、 「よしやるぞ!」という元気は出ないし、 「私は大丈夫だろうか」と余計な不安が襲ってきます。

    睡眠不足だと、 そもそも眠くなりますし判断力も鈍ってきます。 身体を動かすのもだるくなります。

    自分は頭だけで動いているわけでなく、 肉体を持って動いています。 いくらソフトウェアをスピーディに動かそうとしても、 ハードウェアのクロックが低下していては話になりません。 ですから、自分の意識で気力をアップさせる前に、 ダウンさせている要因がないかをチェックするのです。

    それに、気力が出ないのを自分のせいにすると、 かえってめげてしまう悪循環になりやすいものです。 気圧や空腹や睡眠不足のせいにしちゃえ!

    (睡眠不足は自分のせいかもしれないけど……)

     * * *

    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。

    どうぞ、ごゆっくりお読みください!

    目次

    • はじめに
    • 再発見の発想法 - 投機的実行
    • ミスしたときにはどうするか - 仕事の心がけ
    • 嫉妬の感情と本を書く動機 - 本を書く心がけ
    • おわりに
     
  • Vol.302 結城浩/自分の理解に関心を持つことは大切 - 教えるときの心がけ/わけへだてなく学べる社会/

    2018-01-09 07:00
    216pt
    Vol.302 結城浩/自分の理解に関心を持つことは大切 - 教えるときの心がけ/わけへだてなく学べる社会/

    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年1月9日 Vol.302

    はじめに

    結城浩です。

    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

     * * *

    『プログラマの数学 第2版』の話。

    先週もお伝えしましたが、2018年1月に、

     『プログラマの数学 第2版』

    が刊行されます。日頃の応援に感謝して、 恒例の《サイン本無料プレゼント》を行います。 応募〆切は、

     2018年1月10日(水)

    です。以下のページをごらんの上、 ぜひご応募ください!

     ◆『プログラマの数学 第2版』《サイン本無料プレゼント》
     https://snap.textfile.org/20171229214054/

     * * *

    サイン本無料プレゼント企画の話。

    結城は新しい本を出すたびに、 《サイン本無料プレゼント》企画を個人的に行っています。

    書籍を執筆している人には、 同様の企画をなさることをおすすめします。

    どうしてかというと、応募してくる読者さんが、 応募メールに感想を書いてくださるからです。 読者さんの声は貴重ですし、何よりすごく励まされます!

    複数の読者さんが以下のようなことを異口同音に書いていました。

     ファンレターを送りたいといつも思っているけれど、
     何もないときにいきなり送るというのは難しい。
     Twitterで話しかけるというのはためらってしまう。
     なので《サイン本無料プレゼント》のような企画で、
     「どんなことでもいいので感想を書いてください」
     と言われると、気軽に感想メールを送れる……

    ということで、 本の宣伝にもなり、読者さんもうれしいし、 著者もうれしいという企画といえるでしょう。

    ちなみに《サイン本無料プレゼント》の企画をするときには、 ツイートするだけではなく企画ページを作った方がいいです。 そこに応募方法や条件などを明記できるからです。

    また、書籍の刊行前に抽選を終えるようにするのがいいでしょう。 刊行後に《サイン本無料プレゼント》の企画を立ち上げると、 刊行直後に急いで買った人ががっかりするからです。

    《サイン本無料プレゼント》企画、オススメです!

     * * *

    Spectreの話。

    年明けから、 MeltdownとSpectreという脆弱性が話題になっています。 CPUの設計上の問題なので、 ほとんどすべてのマシンが影響を受ける脆弱性になります。

    といっても、一般ユーザができることは、 通常のセキュリティ上の注意を続けることしかありません。 あやしいソフトを動かさない、添付ファイルを開かない、 OSを最新の状態に保つ、セキュリティソフトを更新する…

    詳細は以下のページをごらんください。

     ◆Meltdown and Spectre
     https://spectreattack.com

    ところで真面目な話はさておきます。

    結城が最初にこの脆弱性を知ったのは、 「Spectreのロゴは悪い結城先生みたい」 というお知らせを受け取ったからです。 調べてみると……確かに!

    思わず「結城浩とSpectreは違います」 という比較画像を作ってしまいました。

     ◆結城浩とSpectreは違います(画像)

    spectre.png

     ◆結城浩とSpectreは違います
     http://www.hyuki.com/icon/#spectre

    これで思ったのは、 「広める」という点でロゴやキャラクタ画像は大事ということ。 特に、脆弱性のような「形のないもの」 に形を与えるのは大事なのですね。

     * * *

    メールアドレスの使い分けの話。

    「結城先生は複数のメールアドレスをどう使い分けていますか」 という質問をいただきました。

    難しい問題です。

    セキュリティや迷惑メールのことを考えると、 複数のメールアドレスを使い分けるのは大事だと思いますが、 あまり多数のメールアドレスを持つと、 メールのチェックやパスワードの管理が大変になってしまいますね。

    結城は数個(十個未満)のメールアドレスを持っていて、 おおよそ、以下のような使い分けをしています。

     ・重要な目的に使うメールアドレス
     ・家族とのやりとりに使うメールアドレス
     ・仕事のやりとりに使うメールアドレス
     ・Webサービスに使うメールアドレス
     ・ちょっとお試しに使うメールアドレス

    使い分けの観点は何かというと、

     メールアドレスの公開の度合い

    になります。そのメールアドレスを知っている人は誰か、 おおよそ何人(何社)になるかということです。

    自分のメールアドレスをメール送付に使う場合、 メールの送信者はそれを知っている必要があります(当然)。 ということは、メールの送受信で使う限り、 「他人に知られること」が前提になります。

    その一方でメールアドレスは、 WebサービスでログインIDに使われる可能性があります。 この場合には「他人に知られること」 はセキュリティリスクでしかありません。

    なので結城は「メールアドレスの公開の度合い」 で使い分けるようにしているのです。

    あなたはどうしていますか。

     * * *

    地震と夢の話。

    夜中に大きな地震があり、目が覚めました。

    結城は、ちょうどそのとき夢を見ていて、 急に起こされたため、 夢をはっきりと思い出すことができました。

    自分が、非常に複雑で鮮明な夢を見ていることを自覚しました。 そのリアリティ(というのも変ですが)の点において、 現実とほとんど違いがありません。 まさにもう一つの世界がそこにあり、 もう一つの人生がそこにあるという趣だったのです。

    とはいえもちろん夢の中。 こちらがわの現実世界とは、 物理法則や因果関係の点で違いは大きいです。 しかし「本物らしさ」という点では違いがありません。

    そのとき見ていたのは、 新しいリコーダーが届いたので試奏していた夢でした。 木管ではなくプラスチック管だったのですが、 「意外にいい音出るなあ」 と感動しながら吹いていました。

    リコーダーの運指はこちらの世界と同じでした。 穴を塞ぐときに指が感じるリズムや、 唇にあたる吹き口の感触なども、 こちらの世界と夢の世界で同じでしたね。

    夢の世界は、 こちらの世界と同じような存在があって、 しっかり時間が流れているのかもしれない、 と思うほどしっかりとした現実感がありました。

    こちらの世界で目を覚ましているとき、 夢の世界での体験はほとんど覚えていないものです。 それと同じように、夢の世界で生きているとき、 こちらの世界での体験は覚えていないのかも。

    そんなことを感じるほど、 リアルな夢の体験でした。 大きな地震の副産物。

     * * *

    討論番組の話。

    私はテレビの「討論番組」が好きではありません。 司会者がきちんと司会をして、 落ち着いた調子でなされるものならいいのですが、 多くの場合は違います。

    参加者が我先に言いたいことをいって、 他の人の意見を聞かず、発言をさえぎろうと身構えている。 そういう番組は見ないようにしています。 気持ちが落ち着かず、新たな知見を得ることがないからです。

    参加者が、さえぎられる前に言いたいことを言おうとすると、 大声になり、粗雑な表現になり、早口になります。 互いに相手の言葉尻を捕らえるため、 本質的な話になることがありません。

    互いに意思疎通ができていないのに、 建設的な討論ができるわけがありません。 ちゃんと発言を聞き合う関係を作らずに、 討論を行うのはナンセンスですね。

    相手の意見を「理解すること」と、 その意見に「賛同すること」が混同されているのかもしれませんし、 単に討論の形に似せているだけで、 個人弁論大会なのかもしれません。

    もしも「大きな声で相手の発言を封じたら勝ち」 というゲームをやってるなら、 拡声器持ち込んで討論会やればいいんですよ。 アンプのパワー勝負だ! ……などと茶々を入れたくなります。

    みんながわーわー言い合っても、 有益な議論がなされるとは限りません。

    正しい意見は、 たとえ「ささやき声」であっても正しいのです。

     * * *

    数学が苦手な子に数学を教える話。

    質問

    数学が苦手な子や嫌いな子には、 どのように数学を教えたらいいでしょうか。

    回答

    これだけの情報をもとにして的確に答える自信はありません。 つまり「このように教えたらいい」という答えはできません。

    ですから、少し違う方向から答えてみます。

    あなたが接している当人、 つまりあなたが「数学が苦手」や「数学が嫌い」 と認識している本人に尋ねてみたらどうでしょうか。

    でもそのとき、 「どうして君は数学が苦手なの?」や、 「どうして君は数学が嫌いなの?」 とその子に聞くのではありません。

    「苦手」や「嫌い」というのは、あなたの認識ですよね。 しかもかなり大ざっぱな認識です。 ですから、そこを質問の中に折り込んでしまうと、 その子自身の自己認識を誘導しかねません。

    その子が数学に対してどのような認識でいるのかを、 できるだけニュートラルなスタンスで聞きたいところです。 あくまで一例ですが、

     数学ってどう思う?

    のように。 これだけだと大した返事は期待できませんが、 でも、きっかけは作れます。

    子供が「数学はきらーい」や、 「計算がめんどう」や、「先生がキモい」や、 「テストで点数が取れない」のように言ってくれたら、 そこから話を解きほぐしていくのが大事だと思います。

    子供が正しく自己認識しているとは限りませんし、 それを的確な言葉で表現してくれる保証もありません。 しかし、あなたが想像している子供の姿を、 現実の子供の姿に近付ける効果はあるはずです。

    想像だけで話を進めると、対策を見誤ります。

    たとえば、 数学に興味は持っているけど計算練習不足な子に対して、 数学に興味を持たせる読書をさせても効果は低いでしょう。

    あるいは、 機械的な計算はこなすけれど、 その計算が持つ意味や、文章を読む力が低い子に対して、 計算ドリルをさせるのも的外れですよね。

    代数的な計算や式変形は得意だけれど、 図形の操作や立体を想像する力が足りない子はよくいます。

    もしかしたら、 テストの点はちゃんと取れるけれど、 数学の深いところに「もやもや」 を感じている子供だっているでしょう。

    「数学」はたった二文字の言葉ですが、 それが内包している世界は多岐にわたります。 いったいどこに引っ掛かっているのか、 何が不足なのか、あるいは何が過剰なのか、 それを見極めることが大事であると思います。

    そして、子供の姿が見えてくると、 「数学が苦手な子」や「数学が嫌いな子」 という表現がいかにアバウトであるかがわかるはずです。

    「苦手な子」や「嫌いな子」 を総称として使うのが悪いわけではありませんが、 対策を考えるには、より精密な観察が必要になると思います。

    あなたと相手との対話が、実り多きものとなりますように。

     * * *

    適用可能範囲の話。

    論理的に考える人は、 論理的に「扱えること」と「扱えないこと」 その二つの違いを意識しています。

    「論理」は「数学」や「科学」 などに置き換えることもできるでしょう。

    つまり、道具の適用可能範囲を意識しているということです。

    適用可能範囲を意識しないと、 ノコギリで紙を切ろうとしたり、 胃薬で頭痛を治そうとしたりするミスを犯すでしょう。

    自分の持っている道具がパワフルであればあるほど、 適用可能範囲を意識することは大切です。

    結城は若いとき、 どんな問題でもプログラムを書いて解決したがる時期がありました。 たとえば、本来なら会社の営業と相談して、 納期を変更したり、仕様を相談すべき事項であっても、 自分のプログラミング技術で目の前の問題を解決しよう! と試みてしまったのです。

    道具の適用可能範囲、大事です。

     * * *

    訃報の話。

    訃報(ふほう)とは、人が亡くなった知らせのこと。

    享年(きょうねん)とは、人が生きていた年数のこと。

    先日、星野仙一監督の訃報を耳にしました(享年70)。

    結城は最近、訃報に接したとき享年に注目するようになってきました。 もちろん、自分の現在の年齢と比較するためです。 星野監督は70歳で亡くなりました。 結城は現在54歳なので、引き算すれば16歳違いますね。

    たとえばあと16年生きることができたとして、 私は何をするのだろうと考えざるを得ません。

    16年だろうが、100年だろうが、 1日の積み重ねなのですけれどね。

     * * *

    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。

    どうぞ、ごゆっくりお読みください!

    目次

    • はじめに
    • 自分の理解に関心を持つことは大切 - 教えるときの心がけ
    • わけへだてなく学べる社会
    • おわりに
     
  • Vol.301 結城浩/定義は何?/あなたにとって、仕事とは何か/

    2018-01-02 07:00
    216pt
    Vol.301 結城浩/定義は何?/あなたにとって、仕事とは何か/

    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年1月2日 Vol.301

    はじめに

    結城浩です。

    新年あけましておめでとうございます。

    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

     * * *

    サイン本無料プレゼントの話。

    2018年1月に、

     『プログラマの数学 第2版』

    が刊行されます。日頃の応援に感謝して、 恒例の《サイン本無料プレゼント》を行います。 応募〆切は、

     2018年1月10日(水)

    です。以下のページをごらんの上、 ぜひご応募ください!

     ◆『プログラマの数学 第2版』《サイン本無料プレゼント》
     https://snap.textfile.org/20171229214054/

     * * *

    数学ガール6の話。

    2017年12月末に、 『数学ガール6』はようやく第9章まで形になりました。 現在は、何とか2018年1月末まで『数学ガール6』 全体を完成させようとしているところ。

    まだまだ楽観視はできませんが、 少しずつゴールが見えてきました。 あわてずあせらず、 第10章を書き進めていきたいですね。

    応援よろしくお願いいたします。

     * * *

    試し読みの話。

    結城の『数学文章作法』基礎編・推敲編は、 「正確で読みやすい文章」を書くための本として、 多くの方からご愛読いただいています。

    先日は、両方の本がダブル重版となりました! 基礎編が第10刷、推敲編が第3刷になります。

    未読の方にも本書の内容を知っていただくため、 それぞれの本について、

     第1章をまるまる全部PDFで読める

    ように公開しています。 PDFは筑摩書房が管理している以下のWebページにあります。 もしも未読でしたら、この機会にごらんください。 登録不要、もちろん無料。閲覧期限もありません。 PDFをダウンロードして、じっくりお読み下さい (PDFはダウンロードのアイコンからたどれます)。

     ◆結城浩 数学文章作法 (筑摩書房)
     http://www.chikumashobo.co.jp/special/yukihiroshi/

    推敲編については、 刊行当初から試し読みのPDFを公開していました。 今回は、それに加えて基礎編のPDFも公開したものです。

     * * *

    古本をめぐる話。

    先日、古本を購入したときの体験談です。

    執筆中に参考資料を読んでいました。 その参考資料の中には定理の概略が書かれていましたが、 証明までは書いてありません。 「証明はこの本を参照」として古い数学書が紹介されています。 結城は、その数学書を「すぐにほしい!」と思いました。

    アマゾンへ行き、書名で検索すると、 その数学書はすぐに見つかりました。 いろんな状態の古本があり、 コンディションと価格付きで一覧になっています。 そこからクリック数回で購入手続き完了。

    この一連の作業に掛かった時間はわずか数分。 数日後には自宅にその数学書が届きました。

    ネットで買い物をする現代では、 この一連の流れは特に珍しいものではありません。 でも、結城はその便利さに改めて感動したのです。

    もちろん図書館に行けば、 その数学書を見つけられるでしょう。 しかしそのためには執筆を中断して時間を掛け、 図書館に出かけていく必要があります。 自分の貴重な時間を使うことなく、 必要な情報を手に入れることができるのは、 ほんとうにありがたいのです。

    書籍を検索すると、 新品と古本が並んで一覧に出ることがあります。 結城は、著者への還元という意味を込めて、 ほとんどの場合には新品を買うよう心がけています。 古本を購入しても、著者へは一円も入らないからです。

    しかしながら、 先日購入した数学書の新品はありませんでした。 版元品切れ、いわゆる絶版です。 いくら新品を購入して著者に還元したくても、 存在しないなら、古本を買うしかありません。 ときに、とても有名な本が絶版になっていて、 ショックを受けることがあります。

    紙の本は在庫を抱えることになりますから、 出版社にも無理はいえませんが、 せめて電子化してくれればいいのに…と思うことが、 これまで何回もありました。

    電子化されていて助かった例はたくさんあります。

    〆切間近の夜中に作業をしていて、 どうしてもある数学書が必要になりました。 困ったなと思いつつアマゾンで検索したところ、 電書が見つかり即購入&ダウンロード。 原稿に間に合い、たいへん助かりました。

    こう言ってはなんですが、 そのとき購入した電書はかなり「雑」な作りでした。 しかしながら、あるのとないのとでは大違いなのです!

    どんな形であれ書籍が存在することの大切さと、 入手のしやすさについて考えさせられたできごとでした。

     * * *

    フェイクの話。

    先日、TwitterAuditというサービスを知りました。 audit(オーディット)は審査や監査という意味ですね。 このサービスは、Twitterのアカウントを入力すると、

     フォロワー数の何割がリアルで何割がフェイクか

    を調べてくれるというもの。調べてみると、 結城のフォロワーさんは97%リアルとのこと。

     ◆TwitterAuditの結果(スクリーンショット)

    2017-12-10_audit.jpg

    どうしてこんなサービスがあるかというと、世の中には、 フォロワーを買ってフォロワー数を「水増し」する人がいるからです。 おそらくは「フォロワーの数」をアピールし、 商売に結びつけるためでしょう。

    検索するとアカウントを売るサービスが見つかります。 しかし、アカウント(ユーザ名)を売る行為は、 Twitterルールに違反しています。

     ◆Twitterルール
     https://help.twitter.com/ja/rules-and-policies/twitter-rules

    フォロワー数をアピールするアカウントを見たときに、 TwitterAuditを使います。そうすると、 本当にたくさんのフォロワーが存在するのか、 見かけだけのフェイクしかいないのか、 それがわかるというわけです。

     * * *

    言葉のコンフリクトの話。

    こんなショートコントを考えました。

     A「誰もが驚くほど超巨大な宇宙ステーションが完成したぞ!」
     B「どのくらい大きいんですか?」
     A「月と大きさ比べができるほど大きいんだ!」
     B「大きさは月並みなんですね」
     A「ち、違う。そうなんだが、違う!」

    ここでは、

     ・「平凡」という意味の「月並み」
     ・「○○と同じくらい」という意味の「○○並み」

    という二つの言葉がコンフリクト(衝突)しています。

    ここではショートコントで済みましたが、 文章を書いていると言葉のコンフリクトが発生し、 書き換えを余儀なくされることがたまにあります。

    表記上の例で先日ぶつかったのが、

     あなたがた

    という言葉です。 「あなたがた」とひらがなで書くと何も不思議はありません。 でも、漢字で書くとこうなります。

     貴方方

    「貴方」と「○○方」の表記で、 たまたま「方」の字が重なってしまうのです。

    まちがいではないのですが、 一瞬「え?」と読者の意識がそれるので、 別の表現に置き換えました。

    もう一つ別の例。 鴨浩靖先生(@kamo_hiroyasu)が、

     「計算可能性構造を入れることができる」

    を表す言葉で悩んでおられました。

     https://twitter.com/kamo_hiroyasu/status/928804965207785472

    そのまま言葉にすると、

     「計算可能化可能」(computablizable)

    というやや奇妙な表現になってしまうからです。 ここでは「可能」が一単語内でコンフリクトしています。

     ・「計算可能性構造」という用語中の「可能」
     ・「○○ができる」という意味の「○○可能」

    この二つですね。

    言葉はしばしば思わぬところでコンフリクトするのです。

     * * *

    クラウドファンディングの話。

    「クラウドファンディング」ってご存じですか。

    近年よく耳にするプロジェクトの資金集めの方法で、 ネットを活用して多くの人から少しずつ出資してもらうものですね。 Kickstarterが有名です。

    ところで、これについて先日「はっ」と気づいたことがあります。

    「クラウドファンディング」の「クラウド」って、

     cloud じゃなくて crowd

    なんですね。 ネットでクラウドといえば「雲」を意味する「cloud」が多いので、 クラウドファンディングもてっきりそっちだと思っていました。

    実際は「たくさんの人々」を意味する「crowd」なのでした。 クラウドファンディングの意味を考えたら当然ですね。

    まちがっていたのは自分だけかなあと不安になり、 Twitterのアンケート形式でお尋ねしてみたところ、 多くの人が同じように誤解していたので謎の安心感 (いや、安心しちゃまずいですけれど)。

    あなたは、crowdだと知ってました?

     * * *

    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。

    どうぞ、ごゆっくりお読みください!

    目次

    • はじめに
    • 「定義は何ですか?」という問いかけ
    • あなたにとって、仕事とは何か - 仕事の心がけ
    • どこまで答えたら答えたことになるのか
    • おわりに