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記事 4件
  • Vol.200 結城浩/読みやすいブログ記事/自己責任の重み/年齢ごとに変化していく文章/

    2016-01-26 07:00  
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    Vol.200 結城浩/読みやすいブログ記事/自己責任の重み/年齢ごとに変化していく文章/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年1月26日 Vol.200
    はじめに
    おはようございます。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    何と、今回でVol.200となりました!
    ちなみにVol.001は、2012年の4月3日でした。 ざっくり四年も前のことなのですね。 これだけ長く続いたのはひとえに、 あなたをはじめとする読者さん方の応援のおかげです!
    これからもよろしくお願いいたします。
     * * *
    新刊準備の話。
    「数学ガールの秘密ノート」シリーズは年に二冊出すつもりでいます。 先日『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』を出したばかりですが、 早くも次の巻を準備しなければなりません。
    次の巻は『数学ガールの秘密ノート/場合の数』です。 これまで通り、cakesでのWeb連載をベースにして、 いろんな場合の数、順列や組み合わせについて書く予定です。
    場合の数は、単なる公式あてはめと計算問題のように思われがちですが、 ミルカさんの大好きな「構造」が直接的に扱われる分野です。 そのあたりのおもしろさを読者に気付いていただけるような本にしたいですね。
    『数学ガールの秘密ノート/場合の数』は今年の春刊行の予定です。 いつものように応援してくださいね!
     * * *
    女性と数学の話。
    こんな記事を見かけました。
     ◆STEM〔科学・テクノロジー・工学・数学〕   教育の将来は12歳女子の教育にかかっている  http://tcrn.ch/1NtLAgD
    女性の役割は重要だけれど、 自信を持てないでいる人が多いとこの記事には書かれています。 結城は「数学ガール」シリーズを書いているので、気になる話題です。
    人類の半分は女性なので、女性が広い意味で「活躍」することは、 とても大切なことと思います。 結城自身は「女性は数学が苦手」という意識はあまりありません。 中学校のときの数学教師は女性でした。 高校で積分がわからなくなったときには姉に習いました。 高校時代に成績争いをしていたライバル(?)は女子でした。 ずいぶん以前、IT企業で働いていたときにも女性の活躍は不可欠でした。
    以前、ICUHS(国際基督教大学高校)で特別授業をしたとき、 そこに参加した生徒の男女比はあまり意識していませんでしたが、 およそ半々くらい。どちらかといえば女生徒の方が熱心だったかもしれません。
    いずれにせよ、男性であれ女性であれ、 自分の性によって理不尽な制約を受けることなく、 生き生きと活動できるような社会になるのはよいことだと思います。
    「数学ガール」の物語では、各人がそれぞれ、 自分なりのアプローチで数学に立ち向かいます。 数学のような「ホンモノ」は、 誰のどんなアプローチに対してもどっしりしていて、 豊かな喜びを与えてくれるものです。 幾何的・解析的・代数的・計算機科学的なアプローチ、 あるいはもっとずっと素朴なアプローチに対しても、 しっかりと応えてくれるのが数学だと思います。
    住んでいる地域とか、肌の色とか、持っているお金とか、 性別とか、宗教や思想信条から離れて、 純粋に立ち向かえる数学(を初めとする多くの学問)には、 大きな魅力があります。
    生まれる国や、性別や、時代を私たちは選ぶことができません。 個人の能力で、能力に応じてチャレンジできるホンモノの学問は魅力です。 一生かかっても汲み尽くせない魅力がそこにあります。 特に数学は、自分の現在の状態に応じてチャレンジできるのがいい。 大がかりな道具もいらない。数学は一生楽しめる。
    学校で学ぶ「数学」という科目を考えると、 その多くは「与えられた問題を解く」という形になりますね。 でも、数学の中には「世界を作る」喜びが隠れています。 それは「小さな数学をこしらえる」喜びとも言えます。 そんな本もまた書きたいですねえ。
     * * *
    連ドラの話。
    毎朝、NHKの連続テレビ小説「あさが来た」を観ています。 主演の波瑠さんとそのご主人役の玉木宏さんがとてもいい。
    ここしばらく、朝の連ドラは、 大がかりな事件やジェットコースターのような展開のものが多かったのですが、 今回の「あさが来た」はぶっ飛んだ事件は起きないし、 おかしなキャラも出てきません。
    基本的には「いいひと」(しかも、本当にいい人)が大半を占めています。 それなのに見ていて飽きないし、面白く感じます。 朝一番で観るドラマだから、さわやかな印象になるものがいいですよね。 あまり朝イチでどろどろした人間劇は観たくないと思います。
    初めの回はあまり観ていなかったのですが、 最近はよく観るようになりました。毎回「観てよかった」と感じます。 こういうのは脚本家の力なんでしょうか。
     * * *
    数の話。
    Twitterで結城のアカウントをフォローしてくださっている方が、 先日2万9千人を越えました。あと数百人で3万人になります。 フォローしてくださっている方に感謝します。
    ところで、2万9千人っていったいどのくらいの人数なのでしょうか。 そんな疑問を抱きました。2万9千人は2万9千人以外の何でもないのですが、 たとえば、市町村でいえばどんな規模なのだろうかと考えたのです。 検索してWikipediaの「日本の市の人口順位」をみますと、 北海道根室市の人口がほぼ2万9千人のようですね。
    なるほど、と納得しそうになったのですが、 よく考えてみますと、それで2万9千人がイメージできたといえるのかどうか。 でも、根室市の方々には親近感が湧いてきましたよ。
    結城はよくTwitter上で活動しています。 ときどき「お、この人はおもしろそうだ」という人を見つけます。 その人のbio(プロフィール)を読みにいったら、 結城のことをフォローしている方であるのが判明した! という状況がよくあります。何か波長が合うんでしょうかね。
    いずれにしても、3万人になったからといって何も変わらず、 結城は、いつも通りのツイートをしていくことでしょう。
     * * *
    モテる話。
    Twitterのトレンドに「あなたがモテるのに足りないもの」 というハッシュタグが上がっていました。 この「モテる」という単語を聞くたびに、結城は思うことがあります。
    それは「モテたい!」と主張する人は、何を求めているのかということ。 もちろん「モテたい」は「モテたい」なんですが、もう少し正確に知りたいのです。
     ・誰でもいいから、たくさんの人にモテたいのか。  ・自分が好きなタイプの複数の人からモテたいのか。  ・特定のこの人から深くモテたいのか。
    理屈っぽいと言われるかもしれませんが、 この違いは意外と重要だと思うんですよ。 単に「モテれば幸せ」というふうにはいかないような気がするからです。 たとえば「自分が嫌いな人からモテてしまう」というのは、 ときに苦痛なことだってありそうですよね。
    確かに「自分のまわりに恋愛対象になりそうな人がほとんどいないから、 そういう状況を改善したい」という主張はあるかもしれません。 男子校の生徒が女子と知り合う機会を増やしたいとか。 自分の生活圏の中に恋愛対象になりそうな人がいないとか。 そんな状況を改善したいという主張は理解できます。
    それから、結城はあまり共感できないけれど、 もうとにかく誰でもいいから、複数人からきゃーきゃー言われたい、 という欲求もありえるのでしょうか。 その気持ちもわからないではないけれど、 じっくり考えると、いやちょっと違うんじゃないかと。
    こういう思考は、やっぱり、理屈っぽいかな。
    はっ! さっき私自身が書いた「結城をフォローしてくださる人の数」の話も、 「モテたい」に近い発想なのかな?! (いま文章を書きながら気付いて驚いている)
    いわゆる「承認欲求」(誰かから認めてもらいたいと願う気持ち) の一種なのかもしれませんね。
     * * *
    本を届ける話。
    結城が書いている「数学ガールの秘密ノート」には、 「ポリアの問いかけ」がよく出てきます。 これは数学者ポリアが『いかにして問題をとくか』という本に書いた 「私たちのリスト」をもとにしています。
     「定義にかえれ」  「与えられているものは何か」  「求めるものは何か」
    このような問いかけは数学の問題を解く際にきわめて有益です。 実際、数学に限った話でもなく、考えることの本質に迫る問いかけだと思います。
    ポリアの問いかけは「数学ガールの秘密ノート」シリーズに頻繁に登場します。 その理由はたくさんあります。 この問いかけが学びにとって大事であること。 問いかけと答えが、数学ガールのような「対話」にとって根源的な要素であること。 そして、問いかけが、プラクティカルであること。
    どんな問題に出会っても、
     「定義にかえれ」  「与えられているものは何か」  「求めるものは何か」
    という問いかけが無駄になることはないはずです。 この問いかけは、問題に直面している私たち一人一人が「自分」に対して行うもの。 自分への問いかけなのです。
    数学的な話に限らず、現実的な「悩み」にぶつかったときもそうです。 もやもやと困っているときに、ポリアの問いかけを思い出して、
     「そうだ。いったい私が求めるものは何か」
    と問いかけたり、
     「うーん。自分に与えられているものはなんだろう」
    と問いかけたり。 それは、悩みに対するプラクティカルな方策につながることがあるはずです。
    私は、だから、現代を生きる人(特に若い人)に向けて、 これらの「問いかけ」を送りたいと思っています。 ポリアが書いたものであって、私が考えたものではない。 しかし、私は「仲介者」であり「注解者」です。 大切なことをわかりやすく伝えるのが私の仕事。 私の天職ですから。
    「数学ガールの秘密ノート」シリーズでは、 『いかにして問題をとくか』という本の内容を、 数学において《実践》しようとしている子たちが描かれています。 学ぶこと。知ること。伝えること。 困難に出会ったときになんとか対処すること。 そのような姿を描こうとしています。
    結城はときどき読者さんから、
     「この本にもっと若いころに出会いたかった」
    というメールをいただきます。すべてに返信はできないのですが、 返信できるときには、
     「あなたの最善のタイミングで出会えたのだと思います」
    と伝えるように心がけています。
    でも、やはり、私の非力も思います。
    もしも、あなたのそばに、結城の本を楽しめそうな方、 必要としてくださる方がいましたら、ぜひご紹介やご案内をお願いします。 結城の本を必ずしも買わなくても構いません。 持っている本を貸してあげたり、図書館を紹介したり。
    何らかの形で、結城の本が、必要としている人に届くことを願っています。
    結城は、本を書くときにはいつも「たった一人のあなた」に向けて書きます。 自分の書く本が、この本を必要としている「あなた」に届くことを願いながら。
    本は手紙です。 「あなた」にあてて書いた手紙。 残り少ない時間と、できる限りの自分の知恵をかき集め、 大切な「あなた」に届ける手紙です。
    私は書くことはできる。でも届けることは難しい。とても難しい。 ネットにもつながっておらず、もちろん結城のTwitterアカウントなんて知らない、 そのような人に私の本を直接知らせたり届けたりすることはできません。 どんなにがんばっても、結城にはできない。
    でも、もしかしたら、あなたにはできるかも。 結城の本を必要としている人に、私の本を伝えるお仕事。 お任せします。よろしくお願いいたします。
     * * *
    それでは、今週の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください。
    目次
    はじめに
    読みやすいブログ記事と、最初の課題提示 - 文章を書く心がけ
    自己責任の重みについて
    年齢ごとに変化していく文章について - 文章を書く心がけ
    おわりに
     
  • Vol.199 結城浩/再発見の発想法 - Timestamp/仕事の心がけ/編集長との新年会/教師の仕事/

    2016-01-19 07:00  
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    Vol.199 結城浩/再発見の発想法 - Timestamp/仕事の心がけ/編集長との新年会/教師の仕事/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年1月19日 Vol.199
    はじめに
    おはようございます。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    サイン本無料プレゼントの話。
    日頃の感謝を込めて、 中文繁体字版 結城浩『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』 のサイン本を無料プレゼントします。 〆切はこの結城メルマガが配信される今日(2016年1月19日)です!
     ◆數學女孩秘密筆記:圓圓的三角函數篇  http://snap.textfile.org/20160109222509/
    よろしければ、ぜひご応募ください!
     * * *
    風を通す話。
    「ライフハック」や「生産性向上のコツ」のような記事をよく見かける (結城がそういう話題に関心があるから)。
    それらを「鵜呑み」にしたり「神格化」するのは間違っていると思う。 「盲目的に従う」というのも違うなと思う。 しかしながら、完全に無視したり馬鹿にしたりするのも間違っているだろう。
    定期的に自分の行動や生活を見直したり、 ちょっとした改善を試みたりするのはとても健全なことである。
    それは、いうなれば、 自分のよどみがちな生活にときどき「風を通す」ような行為である。 窓を開けて空気の入れ換えを行うようなものだ。
    宮崎駿の映画「風の谷のナウシカ」で、おっ、と思ったセリフがある。 幼子に対して「いつも いい風がその子に吹きますように」と願う言葉だ。 あれはとても印象的だった。
    「いつもと同じ」「いつものまま」というと、 空気はよどむ。新しい風をときどき通すのが必要になる。
    風を通す。
    これを意識するのは、老いない工夫でもある。 思考に対して、行動に対して、人間関係に対して、 よどまないように「風を通す」ことは大切である。
    そんなことを思っている。
     * * *
    セールの話。
    結城が書いた『数学文章作法 基礎編』のKindle版が、 現在セールを続けています。 Kindleの月替わりセールらしいですね。 よろしければどうぞ。
     ◆『数学文章作法 基礎編』Kindle版  http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00O9YUJUE/hyam-22/
    セールの影響なのか、 数学のKindle有料本ランキングで1位になったりしているようです。 お読みくださっている方に感謝!
     * * *
    バツをつける話。
    Webでときどき、 「数学的にはまちがっていない式と答えなのに、算数のテストでバツにされた」 という話題を見かける。たくさんの要素を含んでいる話題なので、 ここでは具体的には挙げない。
    結城が小学校のころの話だ。
    小学生のころ「二進法」を覚えた。 十進法と違うような、 それでいて同じような、そんな計算が楽しくて、 たくさん書いて遊んでいた。
    そして、祖母に「ここが2の位だよ」と得意げに教えた (十進法では1の位、10の位、100の位、1000の位だけれど、 二進法では1の位、2の位、4の位、8の位になる)。
    二進法を知らない祖母は、十進法の感覚で、
     「浩ちゃん、2の位なんてないんだよ」
    と言いかける。その直後、祖母は「はっ」とした顔になり、
     「いや、おばあちゃんにはわからないけど、  おもしろい話なのかもしれないね」
    と言ってくれた。
    孫が楽しそうに意味ありげなことをしているときに、 自分がよくわかっていないことを不用意に断じないようにしよう、 祖母はそう思ったのだろう。
    自慢の祖母である。
     * * *
    「このコンピュータ書がすごい!」の話。
    毎年、年の初めには、ジュンク堂書店池袋本店で 『新春座談会 このコンピュータ書がすごい!』 というトークセッションが開かれます。
    これは一年間のジュンク堂書店池袋本店での売上冊数ランキングを元に、 一年間、多くの人に読まれてきたコンピュータ書を紹介するイベントです。 今年の「2016年版」は先日終了したところ。
     ◆『このコンピュータ書がすごい! 2016年版』開催情報  http://compbook.g.hatena.ne.jp/compbook/20160104
    結城が書いた『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』が、 このイベントで年間第5位に入ることができました。 ジュンク堂書店池袋本店さんで、 昨年2015年に売れたコンピュータ書で第5位ということで、 たいへん光栄なことだと思っております。 応援してくださる読者さんに感謝です!
     ◆2015年ジュンク堂池袋本店コンピュータ書売上冊数ランキング第5位  http://compbook.g.hatena.ne.jp/compbook/20160105
    ところでこのトークイベントはYoutubeで見ることができます。 よく売れたコンピュータ書というのは業界の動きを映し出す鏡とも言えるでしょう。 単に本のリストを読み上げるわけではなく、 達人出版会の高橋さん(日本Rubyの会代表理事)による一言コメントがあるので、 たいへん参考になりますね。
     ◆新春座談会 このコンピュータ書がすごい! 2016年版   2015年に出たコンピュータ書ならこれを読め!  https://youtu.be/LJ_evEQ0Rso
    ちなみに、結城の本が紹介されているシーンは、こちらから。
     https://youtu.be/LJ_evEQ0Rso?t=1h29m25s
     ◆スクリーンキャプチャ
     * * *
    Simplenoteの話。
    最近Evernoteが重いなあという話をWebで読んでいて、 そこでSimplenoteというサービスが紹介されていた。
    Simplenoteというのは、 プレーンテキストをクラウドで管理できるサービスらしい。
     ◆Simplenote  http://simplenote.com
    プレーンテキストというのは、 見出しや強調文字やフォント情報などを持たない「素のテキスト」である。 たとえばプログラムのソースコードは通常プレーンテキストで管理する。
    実は、EvernoteやiCloudのメモだと、 プレーンテキストを管理するのが難しいし遅い。 Simplenoteではそれが非常に簡単にできる。 また、書いたテキストをワンタッチでWebとして公開する機能もある。
    試しにいろいろと使ってみているところ。
     * * *
    夜の目覚めの話。
    午前二時や三時に、ふと目が覚めることがある。 たいした理由もないのに、変な時間に目覚めてしまった。
    睡眠は大事なので、すぐにまた眠るのだけれど、 こんなふうに変な目覚め方をしたときには、 「いま、まさに眠れないでいる人」のために、 神さまに祈ってから眠るように心がけている。
    病気や悩みや気がかりなこと、 さびしさやつらさや不安などで「眠れない」ことは、 誰にでもある。特に理由がなく「眠れない」ことだってある。
    変な時間に、ふと目が覚めたというのは、 「そういう人のために祈れ」という意味かもしれないと考えている。
     ◆あなたのために、祈ります  http://www.hyuki.com/pray/
    そして、人のために祈ることは、 とりもなおさず自分のためでもあることに気付く。
     * * *
    数のイメージの話。
    あなたは、とても大きな数、 たとえば「1億」を具体的にイメージすることができますか。
    もし、あなたが日常的に「1億《円》」を扱っているなら、 イメージしやすい……のかな? ただし、そのイメージは、 ほんとうに「1億」という数をイメージしたことになるといえるか。
    私が考えたのは「組み立てていく」方法。
    まず、100ならイメージしやすい。
    さらに100×100=10000もなんとかわかる。 つまり100×100=10000個の四角(□)を正方形のマス目状に並べるのです。 これで「万」がイメージできました。「万」を四角(■)で表しましょう。
    この「万」を使って「億」を組み立てます。 つまり、1000×100=10000個の四角(■)を正方形のマス目状に並べるのです。 これで1万個の■、つまり1億個の□が並んだことになりますね。 これで何とかイメージできました。
    人によっては「1億を表記すると1のあとに0が8個並ぶ」ことで、 イメージする人がいるかもしれません。 これ数学の「常用対数」を使っていることになりますね。 「10を底として、1億の対数は8である」からです。
    あなたなら、「1億」をどのようにしてイメージしますか。
    Twitterでは、「3年は約1億秒」や「1万円札が1万枚」など、 いろんな意見をいただきました。
     https://twitter.com/hyuki/status/683932648658452480  https://twitter.com/hyuki/status/683933713630019584
     * * *
    少年の話。
    実用数学技能検定準1級に昨年最年少で合格した高橋洋翔さん(8歳)の記事が、 日経MJ(2016年1月4日付)に掲載されていました。 記事には「将来は数学者になり、リーマン予想を証明するか反例を見つけたい」 とありました。いまは結城浩の『数学ガール/ガロア理論』を読んでいるとのこと。
    コメントとして「リーマン予想を証明するか反例を見つけたい」 が掲載されていました。リーマン予想が(正しいことを)証明するか、 (誤っていることを証明するために)反例を見つけたいというコメントから、 この子がよく「わかってる」ことが伝わりますね。
     * * *
    バッハの話。
    グスタフ・レオンハルトが演奏するバッハの「フーガの技法」はすばらしい。 すべてについてすばらしいのだけれど、特に《間合い》がすばらしいと思う。
    バッハの曲はまるで数学のようにかっちりしているという印象があるけれど、 だからといって機械的に音符を並べればいい演奏になるわけではない。 レオンハルトの演奏を聴いていると、 「これ以上曲のテンポをゆらがせたら、すべてが崩壊してしまうのでは」 というギリギリのところまで、ぐっとためているように感じる。 そのあやうさが絶妙なのだ。
    結城が文章を書くとき、その多くはグスタフ・レオンハルトの「フーガの技法」 をBGMとしている。結城にとって、これくらい文章を整えてくれる音楽はない。
    正確だけれど無味乾燥じゃない。 「香り豊かな計算機」あるいは「官能的なビット列」の趣を感じるのである。
     ◆バッハ「フーガの技法&クラヴィーア練習曲集第2巻」(レオンハルト)  http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0009I8UKU/hyam-22/
    同じくバッハの「音楽の捧げもの」もお勧め。
     ◆バッハ「音楽の捧げもの」(レオンハルト)  http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005G7ZE/hyam-22/
     * * *
    それでは、今週の結城メルマガを始めましょう。
    今回は「再発見の発想法」のコーナーで、
     Timestamp(タイムスタンプ)
    の話をお送りします。
    その他の読み物も、 どうぞ、ごゆっくりお読みください。
    目次
    はじめに
    再発見の発想法 - Timestamp(タイムスタンプ)
    経営者のこと - 仕事の心がけ
    編集長との新年会 - 本を作る心がけ
    教師の仕事とは - 教えるときの心がけ
    おわりに
     
  • Vol.198 結城浩/開かれた本をめざして/変化を起こす・明日に繋げる/

    2016-01-12 07:00  
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    Vol.198 結城浩/開かれた本をめざして/変化を起こす・明日に繋げる/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年1月12日 Vol.198
    はじめに
    おはようございます。
    これを書いているのは、2016年1月11日の成人の日、 すなわち祝日です。
    祝日にお仕事をするのは悲しいといえば悲しいのですが、 よくよく心の中を探ってみますと、あまり悲しくはありません。
    どうも私は、決まった日に決まったことをする方が、 身体も心も調子がいいようなのです。
     * * *
    台形の話。
    台形の面積を求める公式って、覚えていますか。
    台形というのは、 少なくとも一対の向かい合う二辺が平行になっている四角形のことです。
    台形の面積を求めるには、 「上の辺(上底)と下の辺(下底)を足して高さを掛け、二で割る」 のがふつうです。
    ところでこの上底の長さを0にしてみましょう。 つまり、台形から三角形を作るのですね。 そうして台形の面積を求める公式に当てはめて面積を考えると、 上底が0ですから、 下の辺に高さを掛けて二で割ればいいですよね。
    うん、そうすると「底辺×高さ÷2」になり、 これは三角形の面積を求める公式になるんです!
    そんなことを思いながら、こんな絵を描きました。
     ◆台形の面積と三角形の面積
    これは当然のことですけれど、 あらためて考えてみるとしみじみ嬉しくなります。
    つまり、台形という図形と、三角形という図形は、 ばらばらに存在しているわけではない。 台形の上底を0にしたような図形が三角形になってるんだ、といえる。 それが嬉しいのです。
    ふつうは、三角形のことを台形だと思う人はいないけれど、 見方を変えれば、三角形は上底を0にした台形だと呼べる。 そう見なすことができる。
    そんな感覚って、楽しくないですか。
     * * *
    教える話。
    高校一年生の @20151201215math さんから、 「数学を他人に教える時に意識しておくべきことって何かありますか?」 というご質問をいただきました。
     ◆数学を他人に教える時に意識しておくべきことって何かありますか?  https://twitter.com/20151201215math/status/681001301598015488
    こういうのは結城が大好きな質問です! 私は、嬉々としてこんなリプライをしました。
     ----------  数学に限りませんが、  相手が理解しているかを考えたり確かめたりすることでしょうかね。  生徒のいう言葉をよく聞くことも大切です。  具体的には数学ガールの「僕」の振る舞いでしょうか (^^)  ----------
    結城はこういうやりとりがすごく好きです。 その内容もさることながら、 自分の答えを読み返すことで、 「自分はふだん何を大切に考えているか」 がよくわかるように思うからです。 私は私に関心があるのです。
    私の「ぱっと答えたリプライ」を読むと、 「教師と生徒の間のコミュニケーションを大切に思っている」 ようすがよくわかります。
    「理解」や「言葉」というキーワードが出ているのも興味深い。 さらにリプライから滑らかに、 自著の宣伝にもつながっていますけれど。
     ◆『数学ガールの誕生』  http://birth.textfile.org/
     * * *
    note(ノート)の話。
    結城はnote(ノート)というサービスで文章をいくつか公開しています。 この結城メルマガの過去記事からの抜粋もありますし、 ずっと昔に書いたエッセイ風の文章もあります。
     ◆結城浩のnote(ノート)  https://note.mu/hyuki
    note(ノート)は気軽に有料のテキストを公開できるので、 いろんな可能性を試したがりの私は楽しく利用しています。
    昨年、2015年のnote(ノート)での売上は毎月1500円ずつくらいでした。 毎月十数人が購入やサポートをしてくださる感じですかね。 ありがとうございます。
    結城のnote(ノート)は、
     ・無料のもの  ・PDFのURLを販売しているもの  ・ほぼ半分を無料で公開しているもの  ・全文公開しているけれど最後に「投げ銭」希望のもの
    などで構成しています。「投げ銭」というのは、 「気に入ったら、お金を払ってくれるとうれしいです」 というスタイルですね。
     ◆「投げ銭」スタイル  https://note.mu/hyuki/m/m2fcf49389ee8
    ダッシュボード(売上一覧やアクセス数が見えるページ)を調べてみると、 文章を更新した頻度が高い月は売上も大きくなっているようです。 まあ、それは当然のことですけれど。
    結城は定期的に過去記事のリンクをツイートしていますが、 そこ経由で読んでくださる方がたいへん多いようです。 これまた当然ですが、定期的な紹介は有効なのですね。
    手軽に有料テキストを公開&販売できるのはいいのですが、 プラットホームとしてのnote(ノート)には不満もあります。 まず、プラットホームの方針らしく、 検索機能が限定的になっていること。 また、ノートの一覧性がよくないこと。 「これまで結城が公開したノート一覧」 というページがないのです。しょうがないので、 結城は手動で一覧ページを作っています。
     ◆結城浩がnote(ノート)に書いたページの一覧  http://www.hyuki.com/note/
    note(ノート)には、一覧ページがない代わりに「マガジン」 というノートをまとめる機能があります。
     ◆結城浩の「マガジン」  https://note.mu/hyuki/magazines
    「古今和歌集を読む」というマガジンを作っています。 古今和歌集から親しみやすい歌を選び、文法事項を解説し、 現代語訳を付けるというマガジンです。 もっとも、このマガジンは最近更新していませんね。
     ◆古今和歌集を読む  https://note.mu/hyuki/m/mfa4fe40c022b
    また2016年も、おもしろい試みができるといいな。
     * * *
    マルチディスプレイの話。
    結城はふだんの仕事をすべてMacBook Air一台でまかなっています。 自宅でもカフェでもこれ一台で書き物やプログラミングを行っています。
    カフェは無理としても、自宅ではマルチディスプレイにしたほうがいいかな…… と思ってもう何年も過ぎています。 周期的に「あ、ディスプレイほしいな」と思うのですが、 何となくやめてしまうのですね。
    先日「ディスプレイほしいな」という気持ちの波がやってきたときに、 「duet」というアプリを利用してみました。 これは手持ちのiPadやiPhoneを使って、Macのサブディスプレイを作るというもの。
     ◆duet  http://www.duetdisplay.com
    実際にMacBookにiPad miniをつないでみたら、 驚くほどサクっとマルチディスプレイ状態になりました。 「おお!ディスプレイが増えた!」と感動したのですが、 マルチディスプレイに慣れていないせいか、 作業をどう進めていいかわからず、結局使わずじまいとなりました。
    そんなことを書いていたら、 またディスプレイが欲しくなってきました。 やっぱり買おうかなあ……
     * * *
    軽口と言葉遊びの話。
    「足らぬ足らぬは工夫(くふう)が足らぬ」
    これは、上から運用現場への要請。
    「足らぬ足らぬは工夫(こうふ)が足らぬ」
    これは、運用現場から上への反論。
     * * *
    それでは、今週の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください。
    目次
    はじめに
    開かれた本をめざして - 本を書く心がけ
    変化を起こす・明日に繋げる - 仕事の心がけ
    出題を通して学ぶ - 教えるときの心がけ
    数学の本に問題が出てきたら、解答も載っているとうれしいな - 本を書く心がけ
    おわりに
     
  • Vol.197 結城浩/老人対若者/結城さんは偽善者です/育休の話題から思うこと/スター・ウォーズの思い出/

    2016-01-05 07:00  
    220pt
    Vol.197 結城浩/老人対若者/結城さんは偽善者です/育休の話題から思うこと/スター・ウォーズの思い出/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年1月5日 Vol.197
    はじめに
    あけましておめでとうございます。
    今回は2016年最初の結城メルマガです。
    本年もよろしくお願いいたします。
    結城はファイル名に日付を使うことが多いのですが、 今年に入って何回も、
     2015……おっとっと、違う違う。  もう2016なんだった!
    というタイプミスをしています。 今日はすでに三回くらいまちがえていますね。 くりかえし、2015と書きかけて2016に書き直しています。
    年が明けても、手はまだ昨年のままなのでしょうか。
     * * *
    新たな気持ちの話。
    新年になると何だか気分が改まる。
    新しい何かを始めたくなる。
    新年、まずやったのはiPhoneのホーム画面のアイコン配置を整理したことでした。 え、ええと……発想小さいですかね!
    でも、意外に、アイコン配置を整理すると気持ちが一新します。 きっと一日のうちホーム画面を眺めている時間が長いからでしょうか。
    ついでに、最近使ってなかったアプリを削除し、 使用頻度の低いものをまとめ、適当にアップデートも行いました。
    これまでiPhoneの壁紙には、 ニューヨークで撮影したグーテンベルク聖書の写真を使っていたのですが、 すっきりした抽象画に変えてみました。さらに気分一新。
    この感覚って大掃除と似ていますね。
     * * *
    とても嬉しかったツイートの話。
    『数学ガール』の中には「フィボナッチサイン」 というハンドサインが登場します。 仲間が1,1,2,3と指を出したら、それに5で応えるというもの。 これはフィボナッチ数列から作ったものです。
    このフィボナッチサインをテーマにして、 南部晃史さん(@Ackey_pp)が作成した歌があります。 さらにその歌にUTWorksさん(@u2rks)が動画を作成しました。 それがこちら。
     ◆【初音ミク】フィボナッチサイン【数学ガール】  http://www.nicovideo.jp/watch/sm27652317
    そして、John114さん(@e_john114)が2015年末の最後の授業で、 生徒さんに数列クイズを出し、 このフィボナッチサインの歌と動画を試聴させたというツイートがこちら。
     https://twitter.com/e_john114/status/680198466518159360
    授業のたのしい様子が伝わってきて、結城は感激してしまいました。 子供達の声が聞こえそうです。
    フィボナッチ数列があって、 結城が『数学ガール』という本を書いて、@Ackey_pp さんが曲を作って、 @U2rks さんが動画を作って、@e_john114 さんが授業で使って、 そして、生徒たちが数学を楽しむ。これがすごく、すごく嬉しい!
     * * *
    ゲームの話。
    何だか気がつくと毎回ゲームの紹介しているみたいですね。
    それはさておき、最近のお気に入りパズルゲームはBeat Sneak Banditです。 これは「屋敷に忍び込んで時計を集めてゴールする」というゲームになります。 見張りのガードマンをかいくぐり、時計を集めます。
     ◆Simogo AB「Beat Sneak Bandit」(スクリーンショット)
    設定によれば、Duke Clockface(という名前の敵)が世界中の時計を盗んだので、 それをBeat Sneak Banditが取り返すというゲームのようですね。
    パズルゲームというと、隠された謎を解くとか、 画面のオブジェクトを動かして目的の形にするとか、 表示されたもの同士を線で繋ぐとか、 何らかの形で提示されている迷路を通り抜けるとか、 いろんなパターンがあります。
    Beat Sneak Banditは、 障害をくぐりぬけてゴールに至るという意味では迷路に近いのかな。 でも、このゲームならではの「ひねり」があります。 それは「リズムに乗ってタップしないと、キャラクタが前に進まない」 という「ひねり」です。
    ゲームは最初から一定間隔でビートが刻まれていて、 キャラクタを動かすためには、 それに合わせてタップする必要があります。 ガードマンの横をすり抜けるときも、 急げばいいというものではなく、 冷静で等間隔のタップが求められます。
    これがおもしろいのは、ゲームしているうちに、 ダンスを踊っているような感覚になる点。 ビートに乗ってゴールしたときの達成感は格別です。
     ◆Simogo AB「Beat Sneak Bandit」  https://itunes.apple.com/jp/app/beat-sneak-bandit/id473689550
     * * *
    「?!」の話。
    辞書編纂のお仕事をしている飯間浩明さん(@IIMA_Hiroaki)が、 「?!」と「!?」はどちらが一般的か、というツイートをしていました。
     ◆「?!」と「!?」はどちらが一般的か。  https://twitter.com/IIMA_Hiroaki/status/675126136830099456
    このツイートによれば、
     ツイッターで“What's this”を含む過去6時間の投稿を検索してみると、  「?!」は26例、「!?」は8例で前者が多い。
    とのこと。また、日本の文章では「!?」が多数派とのこと。
    結城も気になったので、自分の原稿を検索してみました。 「数学ガール」と「数学ガールの秘密ノート」二つのシリーズ、 現行の11冊ぜんぶを調べたところ、「?!」は19個で「!?」は12個でした。
    眺めた感じでは、登場人物の「疑問の意識」が先に立つと「?!」になり、 「大きな声を出す意識」が先に立つと「!?」のように見えました。 でも、あまりきちんとは使い分けてはいないようです。
    なお、これは結城の手元にある原稿ファイルで調べたものなので、 出版される段階で変更や統一されている可能性もあります。 私自身はどちらでなければいけないとは特に思っていないので。
     * * *
    それでは、今週の結城メルマガを始めましょう。
    今回は、ちょっとあらたまった話題が多めかも。
    どうぞ、少しずつお読みください。
    目次
    はじめに
    育休の話題から思うこと
    老人対若者という図式から思うこと
    スター・ウォーズの思い出
    「結城さんは偽善者です」というメール
    おわりに