• 間違いだらけの冒涜的フィール神話劇場 MASTER RULE 4 [ep.6]

    2017-03-23 21:33111
    ◆0 アバン

    「いけ、シューティングスター!!スターダスト・ミラージュ…5連打ァ!!!」

     5つの幻影が次々とデコード・トーカー、そして遊作に突撃し、フィールの爆炎を上げる。


    「次やるときは、イカサマには気を付けよう。不動遊星、じゃあな!」

    「ああ!じゃあな!」

     3300の5回攻撃を受けた遊作のライフはゼロ。爆炎の中から飛び出した遊作は、デュエルボードを巧みに操り、爽やかな挨拶とともに大きく手を振りながら青空の彼方へ消えていった。残ったのは遊星の盤面と、歩道を埋め尽くす観衆の大喝采だった。



    ◆1 コンマイ本社 黒咲と正邪

    『―MISSON CLEAR』

     デュエルディスクが映し出す中継で遊星のシューティングスターが5つに分かれて遊作を撃破したその瞬間、コンマイ本社のサーバールームで黒咲が対面していたメインサーバーの画面上の警告ウィンドウも消滅する。デコード・トーカーの戦闘破壊というアンロック条件を満たしたことで、これまでに入力されていた操作が次々と実行されていく。

     マスタールール4の試作データが保管されているデュエルサーバーはあらゆるネットワークを寸断し、バックアップデータは跡形もなく消える。外界から独立したサーバーの中にマザーデータだけを残した状態が完成した。黒咲たちの仕事はここまでだ。


    「よし、ソフト面の準備は完了だ。ハード面は任せるぞ、瑠璃」

    「ああ。デュエルモード起動っと…」

     このサーバーにも当然デュエルディスクとしてデュエルアプリケーションを実行する機能はついている。正邪はタッチパネル式のモニターを操作して、このサーバーでデュエルを開始した。設定はソリティアモード、対戦者待ち。

    「よし、私はこのサーバーにダイグレファーを召喚!」

     正邪は反転世界を通さない素のフィールを通して、召喚したモンスターをマテリアライズした。この場で強力なモンスターを具現化させ、サーバーを破壊することもできる。しかしそれでは足がついてしまう。黒咲と正邪はあくまで下準備をし、痕跡を残さず静かに去る。それが与えられた役割だ。

    「それから、こっちのディスクでサモプリ召喚、コスト切ってゾンマス特殊召喚。2体でオーバーレイ!黒咲、飛ぶぞ!」

    「ああ」

     二人は地上50階の窓から何の躊躇もなく飛び降りた。落下する二人を具現化した正邪の黒竜が拾い上げ、静かにコンマイ本社ビルから飛び去っていく。国道での熱いデュエルに熱狂するこの町は、その存在に気づかなかった。



    ◆2 本当の目的

     遊作とのエキシビジョンマッチを終えたばかりの遊星は、慌ててディスクをホーム画面に戻し、位置情報を表示した。次のポイントはもう1㎞先まで迫っていた。

    「間に合うか…。ターンカウントを進めてドロー、俺はデブリドラゴンを召喚し、ゼロガードナーを釣り上げ、2体でオーバーレイ。口上省略、出てきていいぞ」

    「No.50、ブラックコーン号デース!!」

     フィールが形を紡ぎ、光の中から遊星の相棒が姿を現す。コーン号はフィールホバークラフトで路面から僅かに浮かび、ジェット噴射で遊星のバイクに並走する。遊星はディスクの探知機能を呼び出し、フィールを遠くに飛ばして周辺に存在するデュエル端末を検索した。

    「あった!」

     マップ上に現れるアイコン。起動中のデュエル端末、その位置はコンマイ本社の場所とぴったり重なっている。遊星はアイコンをタップし、対戦モードに移行して相手の盤面を確かめる。相手フィールド上には通常モンスター「戦士ダイ・グレファー」が1体。ついさっき、正邪が起動してモンスターを具現化させた、コンマイ本社のサーバーだ。そう、ここが合流ポイント。黒咲と正邪はマスタールール4をひとつのサーバーに閉じ込めて、そこに示し合わせた下級モンスターを置いて脱出する。ダイ・グレファーを選んだ理由は使っているプレイヤーがおらず、周辺にほかのディスク反応があっても誤認しにくいからだ。そして遊星はそのポイントを通過するときに…

    「やれ、ブラックコーン号!コンマイ本社にいるダイ・グレファーを墓地に送り、1000ポイントのダメージだ!」

    「YES!」

     遊星が対象に取るモンスターをタップすると、コーン号の艤装ユニットから展開する砲身はコンマイ本社のほうを自動で向いて、移動に合わせて射角を微調整し始める。コーン号の効果でフィールの砲弾を打ち出し、サーバーを狙撃するのだ。細かい作業が嫌いで大雑把なコーン号には、高速で移動しながら照準を合わせて射撃するなどという精密な動作は到底不可能。そこで、対象に取ったモンスターの場所へ自動で砲弾を飛ばすこの機能を使うために、コーン号よりも攻撃力が低いモンスターをサーバーの位置に召喚する必要があったのだ。

    「いきますヨー!センチメンタル・アウトロー・ブルース…!!」

    「うわああああっ!!」

    「ワッザ!?オーノー!」

     コーン号が腕を振り上げ意味のないポーズを取り、フィール弾を発射した次の瞬間だった。前方から人間が悲鳴を上げながら転がってきて、コーン号と接触した。展開した艤装ユニットの重量と空気抵抗のせいで、避けようとはしたものの間に合わなかったのだ。コーン号はスピンしながらかろうじてバランスを取っている。

    「遊星!」

    「ジャン!」

     掛け声と同時に2台のバイクがコーン号の両脇に躍り出る。

    『オートパイロット、オン。対象の車両と並走します』

     遊星はディスクを操作し、バイクの制御をジャンのバイクと連動させた。そして右手をアクセルから離し、コーン号のほうへと伸ばす。

    「捕まれ、コーン号!!」

    「遊星サン!アキヤマ!」

     転倒する直前、遊星とジャンはコーン号の手を取り、バイクで牽引しながら体勢を立て直させることに成功した。一瞬の判断と連携が思わぬ事故からコーン号を救った。

     弧を描いてビルの隙間を縫うように飛ぶフィールの光弾は、紅の看板を掲げる巨大ビルに吸い寄せられ…

    『あーっと!先ほどの接触事故による暴発でしょうか!国道沿いでデュエルを繰り広げていた不動遊星の相棒、ブラックコーン号が放った攻撃が、コンマイ本社ビルに命中しました!』

     これでマスタールール4はこの世界から完全に消滅した。立ち上る黒煙を見送ってほっと一息をついた遊星は、ミラー越しに飛ばされていった人の姿を確認した。マントを付けた小太りの男がアスファルトの上でボロ雑巾のように情けない姿になり寝転んでいる。

    「なんてことだ!王国のコマンダーがうちのコーン号にぶつかったせいで効果が暴発してコンマイ本社を爆破してしまったぞー!コマンダー最低!」

     卑劣!転んでもただでは起きない男、不動遊星。コーン号の転倒という思わぬ事態すらも、好機に変えた!全国中継を通して、本社爆破の罪をコマンダーに擦り付ける!

    「遊星!前だ!」

     ジャンの叫び声につられ、顔を上げた遊星。遊星たちの100メートルほど先に、一台の護送車とその上に立つ二人組、そして車と並走する翼のない竜の姿があった。赤い鱗に覆われた竜は大型の護送車よりも高く、長い。尻尾を規則的に振り回してバランスを取りながら、二本の後ろ足で映画に出てくる肉食恐竜のようにアスファルトを踏みしめて走っている。

    「お前たちは、コマンダーと戦っていた…」

    「あんな威勢だけの雑魚など相手にならん。フィール具現法の前ではな」

     車の上に立つ長身の男がコマンダーへのいたってまともな評価を吐き捨てる。ロングコート姿のその男はつばの広い帽子を深くかぶっており、その顔には影がかかって遊星たちからはよく見えない。隣にいる小柄な子どもは頭から足の先まで純白のローブで覆われ、その隙間から覗くデュエルディスクを構えた左手だけが見えている。

    「フィール具現法だと…!?まさか、正邪が言っていた教団の連中か!!」

    「『教団』だと!?遊星、俺が聴いたコマンダーと怪しい男の会話にも出てきた名前だぜ!教団のプロフェッサーと、レイ・ベクター!」

    「ほう、相変わらずコマンダーは人の足を引っ張ることだけは天下一だな。うちのモルモットが世話になっているようだから挨拶くらいはしてやろうか。私は『教団』のプロフェッサー・ディヴァインだ。以後よろしく頼むよ」

     長身の男は皮肉めいて恭しく帽子を外し、会釈をした。帽子の下に隠されていたのは通常ではありえない角度にはねた長髪、強いフィールを持つものに特有の決闘髪だ。鋭い目つきをしたその若い男は、有無を言わさずに言葉をつづけた。

    「まさか秋山ジャンがお前たちと一緒にいるとは予定外だった。貴様は今日、顔のない神のお告げ通り車にはねられて死んでもらうはずだったのだが」

    「何っ!なぜお前がそのことを!」

     黒咲と遊星が見た悪夢、遊星たちに関わったものには顔のない神の呪いによって不幸が降りかかるというそのビジョン。それはまさに、今プロフェッサーが口にしたものと全く同じ、ジャンが車にはねられて死ぬというビジョンだった。

    「なぜかだと?それは私もそのお告げを受け取っているからだ。そして、お告げを現実とするたびに、顔のない神の完全なる復活がひとつ近づく!邪神カウンターが溜まっていくのだ。予定は変わってしまったが、秋山ジャンがここで死ねば問題はない。決闘巫女丹陽、やれ」

     プロフェッサーは隣に立つ子どものほうを向き、右手でジャンを指さした。子どもが小さく頷き、竜に向けて手をかざす。すると、前を向いて走っていた赤い竜は突然体を翻し、ジャンのほうを振り返った。

    「まずい、ジャン!逃げろ!!」

    「ダメだ!間に合わねえ!!遊星、コーン号!離れろ!!」

     竜はアスファルトを亀裂が入るほど強く蹴り、高く飛び上がった。ジャンをバイクごと踏みつぶすつもりだ。大きな黒い影が太陽を遮りジャンを飲み込む。

    「アキヤマー!!」

     遊星の体を流れる時間が鈍り、限りなく静止に近づいていく。隣を走るジャンに、今にも覆いかぶさろうとする巨大な竜。攻撃力2500の最上級モンスターは、コーン号では対処できない。まして具現化したモンスターだ。

     呪いから遠ざけるために一度は距離を置いたかけがえのない仲間。しかしそれは間違いだと気づいた。不幸にすることを恐れて絆を捨てるくらいなら、その絆を仲間ごと呪いから守って見せる。遊星はそう決意した。このままでは、ジャンは呪いが見せたビジョンによって、それを実行しようとするプロフェッサーによって死んでしまう。

    「うおおおおっ!!」

     遊星は決断的にアクセルをひねり、オートパイロットを解除して竜の足元、影の中に飛び込んだ!

    「ジャン、捕まれ!!」

     バイクから身を乗り出し、手を伸ばす遊星。ジャンもまた、バイクの制御を捨てて遊星のほうに手を伸ばす。指先が触れ合う瞬間、バイクのけたたましいエンジン音、竜の咆哮、観衆たちの声援…すべての音が消えた。


     BBMの中継ヘリがとらえた国道でのライディングデュエル騒動の中継映像は、2台のバイクとライダーを踏み抜く巨大な竜の姿を捉えていた。








    ◆3

     遊星、ジャンをバイクごと踏みつぶした赤い竜はそのままアスファルトを踏み抜いて高架下の道路に着地した。土煙を巻き上げながら大きく尻尾を振り回すと、空を割るような咆哮を上げて跳躍し、高架を走る護送車のほうへと戻っていく。その近辺に集まっていた観衆たちは、恐る恐る竜が立っていた場所に集まった。割れて砕けたアスファルトに巻き込まれてぐちゃぐちゃにねじ曲がった赤と黒の2台のバイクが、オイルをまき散らしている。

    『ああ!何ということでしょう!モンスターのソリッドビジョンが実体化して、不動遊星、秋山ジャンのバイクを踏みつぶして…!国道の高架に大穴が空いています!いったい何が起こってしまったのでしょう!』


     護送車の上からそれを見つめていたプロフェッサーは、帽子を深く被りなおす。

    「不動遊星まで死んでしまったか。お告げとは大きく異なるが、秋山ジャンの死という条件さえ満たしていれば問題あるまい」

     高架のアスファルトが崩落する際に巻き上げた大量の粉塵をかき分けて、赤い竜が護送車の上に立つ決闘巫女のもとに戻ってくる。

    「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン…制御は順調なようだな」

    「はい、プロフェッサー」

    「これで邪魔者が二人も消えた。顔のない神の復活がまた、大きく近づいたのだ」




    「それはどうかな」



     青天の霹靂!自信に満ちたクールな声色、青空に響き渡る乾いた音!『カンコーン!』



    「あえて言わせてもらうデース!ジャンジャジャ~ン!」

    「俺のセリフ…」


    『ぶ、無事です!不動遊星、秋山ジャンを抱えたブラックコーン号が、土煙の中から姿を現しました!二人は無事です!!』


    「生きていたか!」

    「当然だ。呪いが見せた予知夢で死ぬのはジャン一人。俺が死ぬというビジョンはない」

     咄嗟の判断だった。遊星はあえて自分を生命の危機に晒すことにより、ジャンの運命を変えたのだ。踏みつぶされる寸前でバイクを飛び降りた二人はアスファルトに叩きつけられながらもかろうじて竜の攻撃を逃れ、ブラックコーン号によって崩落する足場の中から救い出された。

    「ならばもう一度だ!丹陽、やれ!」

    「はい、プロフェッサー」

     プロフェッサーの指示で巫女が竜を遊星たちに差し向ける。戦闘形態の艤装を展開しながら二人を抱えるコーン号のスピードは、それをかわすにはあまりにも遅すぎる。今度は攻撃力で劣るコーン号ごと踏みつぶすつもりだ。


    「トリーズン・ディスチャージ!!!」


     突如として黒い雷撃のようなエフェクトが発生し、決闘巫女丹陽のオッドアイズを包み込んで動きを阻む。高らかな叫び声と共に、巨大な翼を広げた漆黒の竜が彼方より飛来する!


    「あれは!」

    「正邪チャン!!クロサキ!!」


     遊星の左腕、デュエルディスクが新たな決闘者の乱入とカード効果の発動を通知する。正邪のエース、ダークリベリオンのトリーズンディスチャージは、対象の攻撃力を半減させ、同じ値を自分の攻撃力に加える打点吸収効果。ローブ姿の決闘巫女のモンスター、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの攻撃力が、これを受けて1250に低下している!

     遊星のヘルメットに内蔵されたスピーカーから、はるか上空、ダークリベリオンの背に乗る黒咲の声が響く。

    『遊星、やれ!あれはペンデュラムモンスター、戦闘破壊ではすぐに蘇る!』

    「わかった。コーン号、撃て!!」

    「YES!セーフティー解除!センチメンタル・アウトロー・ブルース…!ファイアー!!!」

     コーン号の艤装ユニットから打ち出された弾丸が、弱体化したことで攻撃力がコーン号を下回ったオッドアイズを貫く。コーン号のフィール弾は命中した相手のフィールを打ち消し、問答無用で墓地送りにする。破壊される場合エクストラデッキに戻っていくペンデュラムモンスターであっても、その例外ではない。

     光の粒子に分解されて消えていく赤い竜。コーン号の攻撃が生み出した衝撃が風を巻き起こす。よろめくコーン号にしがみつきながら、遊星は護送車の上に立つ二人の姿を人殺しのような鋭い目で見つめていた。帽子を抑えながら身を低くし、風圧に耐えるプロフェッサー・ディヴァイン。その横で直立する決闘巫女のローブがはためき、フードの下の素顔があらわになる。


    「あ、あの子は…!!」


     コーン号と二人で街へ買い物に出かけた日曜日、休憩のために立ち寄った公園。カードを無くして泣いていた小さな女の子を慰めているとき、その子がなくしたカードを持って声をかけてきたあの朗らかな茶髪の少女だった。お気に入りのカードと言って、スナイプストーカーを優しく手渡したあの無垢な少女が、静かな瞳で遊星のほうを見つめている。

    「遊星サン!あ、あの子…」

    「ああ、あの時の…」

    「おい、ぼさっとしてんな!黒咲たちがこっちに来るぞ!飛び移るんじゃねーのか!」

     道路すれすれにまで降下して後方から迫る正邪の黒竜は、その腕で遊星、ジャン、コーン号を抱え上げると勢いのまま護送車を抜き去った。すれ違うその一瞬、竜の背に乗る正邪と、護送車の上に立つ茶髪の少女が視線をかわす。

    「た、丹陽…!」

     動揺する正邪を、丹陽という決闘巫女は静かで悲しげな表情で見送った。


     一方、ダークリベリオンの両腕に抱えられた遊星たちは、すれ違いざま、護送車の風圧で割れた窓の向こうに、邪悪な薄笑いを浮かべながらワイングラスを傾ける男の姿を目撃していた。


    「あれは、レイ・ベクター!!」

    「あいつは、コマンダーと話してた…!」


     ダークリベリオンは翼を羽ばたかせて国道を離れ、空へ舞い上がってゆく。男の姿が、茶髪の少女の姿が、護送車が、灰色の大地が遠ざかる。


    「黒咲!!レイ・ベクターだ!!あの車の中にいた!!戻るんだ!!」

    『落ち着け遊星!これ以上の長居は危険だ。今ならまだなんとかコマンダーに罪を擦り付けられる。マスタールール4を葬るという目的は達成された、離脱するぞ』




    ◆4 護送車の中

    「そんな…、先ほどの爆発によって、マスタールール4のデータが完全消失だと!?」

     風圧ですべての窓ガラスが吹き飛び、外界の生温い空気と騒音に晒される護送車の車内。レイ・ベクターが何食わぬ顔でグラスのワインを舐めるように口へ運ぶその横で、コンマイの代表取締役は本社からの連絡を受け怒声を上げていた。

    「バックアップも存在しない…?どういうことだ、いや、どうするのだ!新たなルールをいちから作り直すのにまた3年…もう一度9期をやるつもりか!?嘘だ、こんなのはうそだ…」

     マスタールール4は文字通り世界から消滅した。国会で法案が通ろうがもはや関係ない。存在しないルールに移行できるはずがない。


    「レイ・ベクター!これもすべて、お前が連れてきた遊作とかいう男がふざけたデュエルをして負けたせいだ!お前の責任だぞ!」


     レイ・ベクターは静かに笑った。


    「いやぁ、悪かったな。俺としては、良かれと思って…やったんだけどな」

    「ふ、ふざけるな!何が良かれと思ってだ!!このままでは、我が社の計画は…いや、我が社は…」

    「でも俺は楽しかったぜ?お前らとの黒幕ごっこ」

    「な、なんだと…貴様、初めから我々に味方する気など…」

    「思いあがるなよ、コンマイさん。てめえらは所詮、光る紙切れを刷るだけの印刷屋なんだよ。この世界のゲームマスターにでもなったみてえなツラしやがって。おかしくって、腹痛いわぁ」

     レイ・ベクターの表情が、愉悦と狂気の笑顔に変わる。

    「なんだ、いったい何が目的なんだ、貴様は…」


    「さっき言っただろ、俺の目的は不動遊星たちの破滅。今回のはそれまでの余興、暇つぶしさ。遊戯王が基準となる世界で力を付けすぎたメーカーとカードショップを潰すためのな。悪いな、ゲームマスターは俺だ」


     絶望に打ちひしがれ、しめやかに失禁するコンマイ社代表取締役を見てケタケタと笑うレイ・ベクター。窓の外に、地響きを上げながらアスファルトの道路を走る巨大な竜のモンスターと、その背中に乗る『教団』の二人。

    「ベクター!奴らはどうする!追うのか!」

    呼びかけるプロフェッサー・ディヴァイン。その姿を見たレイ・ベクターは窓についた格子を蹴破ると、一言告げて向こうへ跳び移って消えた。

    「じゃあな、コンマイさん。これからは『教団』に手伝ってもらうとするよ、顔のない神の復活をね」



    ◆5

     後日、コンマイ社よりHP、公式ツイッターで簡素な連絡があった。諸事情によるマスタールール4導入の中止と、現代表取締役の引責辞任の連絡が。

     遊星たちの作戦は無事成功し、彼らのデッキは破滅の未来から守られた。サバイバルデュエル大会も従来通りのマスタールールで開催されることになった。ソリティアを禁じられたショックで倒れてICUに入っていたジョニー・ザ・サティスファクションも当たり前といえば当たり前だが無事に復帰し、遊星たちのチームは大会へ向けて再び万全の態勢を取り戻した。

     しかし、それは新たな戦いの幕開けに過ぎなかった。負けるな、不動遊星。世界を遊戯王から解放するその日まで…。





    間違いだらけの冒涜的フィール神話劇場 MASTER RULE 4 完
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  • 間違いだらけの冒涜的フィール神話劇場 MASTER RULE 4 [ep.5]

    2017-03-21 20:43191
    まだ文章でデュエルしてます。
     読むほうはもっと大変だと思うので頑張ってください。
     ルールやカード効果の間違いがあったらごめんなさい。コメントで補足してくれる人たちありがとう。今後とも無限によろしくお願いします。


    ◆0 アバン 遊星・3ターン目

    「いくぞ、俺のターン、ドロー!俺の場にはお前が生成したレベル2のローズトークンが3体!」

     シンクロ使いの遊星にとって、これほどうれしいことはない。マスタールール4さえなければの話だが。

     遊作の場には毎ターン増える装備魔法で攻撃力10000オーバーを維持するデコード・トーカーと、装備の供給源であるパワーツール。そして、パワーツールを守るハニーボット。2体のハニーボットのうち、1体はデモンズチェーンで効果を無効化することに成功した遊星だったが、この盤面を突破してデコード・トーカーを戦闘破壊し、コンマイ本社のサーバーにかかったロックを解除することはできるのか。

    「クソっ、黒咲との合流ポイントが近い…」

     遊星たちは国道を道なりに進み、新埼玉の中央部まで出てきていた。高架の上を走る道路、遠くに見えるコンマイ本社。時間はもう残されていない。なんとかして、デコード・トーカーを戦闘破壊する方法を見つけ出さなければ。遊星の中で、戦略はあと一歩のところまで出来上がっていた。しかし、その最後の一歩に届かない。



    ◆1 遊星・3ターン目 メインフェイズ1

    「俺は手札からジャンクシンクロンを召喚!効果で墓地のジェットシンクロンを特殊召喚する!」

     この瞬間、遊作の場にはトークンが生成され、3体のモンスターと合わせてフィールドが埋まる。

    「俺はレベル2のローズトークン3体に、レベル3のジャンクシンクロンをチューニング!」

     空気が揺れる!遊星のフィールに闘志が宿った!ライディングデュエルによって高度に加速したフィールは冷気をまとって遊星の周囲に吹雪を作り出す!

    「天翔る星の輝きよ、時を越える水晶の煌めきよ…今こそ無限星霜の摂理に基いて、その正しき姿をここに現せ!!」

     時が凍り付く!遊星が発するフィールは路面を、空間を、次々とシンクロ召喚の色、白に染め上げていく!遊作は吹雪から逃れるため、身を低くして一気に加速した。

    「アウェイキング!!…ジョニー!お前の力を貸してくれ!!シンクロ召喚!」

     そう、マスタールール4の施行を聞き、ソリティアを禁じられたショックのあまり倒れて意識不明の重体となっているジョニー・ザ・サティスファクションこと鬼塚一郎。彼が倒れる直前、遊星に託した最強の切り札が今、召喚されようとしている。


    「光さす道となれ!第三満足龍・トリシューラ!!!」

     暗黒空間から飛来したソリッドビジョンは、三つの首を持つ白銀の龍!すべての決闘者の遺伝子に刻み込まれた恐怖と畏敬が日本列島を揺らす!!最強にして最高のカード、世界の頂点に君臨する白銀のエンペラーの登場だ!

    「黒庭の効果発動!トリシューラの攻撃力は半減する!」

    「トリシューラの効果!俺はお前の手札、フィールド、墓地からそれぞれ一枚ずつ…対象に取らず除外する!!」

     なぜかはわからないが、トリシューラの効果は対象を取らない。しかも破壊を介さず除外する。

    「手札は右端、墓地はRAMクラウダー、そして俺はフィールドのブラックガーデンを除外!」

    「おっと、そっちからくるか!」

    「トークン生成は断ち切らせてもらう。そして、1体目のハニーボットの効果が無効となっていることにより、2体目のハニーボットは耐性を持たない!バトルだ!俺は攻撃力1350のトリシューラで、攻撃力950のハニーボットを攻撃!」

     トリシューラの3つの口から放たれた冷気の塊がハニーボットを打ち砕く!

    「俺はカードをセットしてターンエンドだ!」

     遊星は再び5伏せでターンエンド。



    ◆2 遊作・3ターン目

    「俺のターン!パワーツールの効果!団結、魔導士、魔導士!選べ!」

    「真ん中!」

    「俺は団結の力をサーチして発動!場には6体のモンスターと4枚の魔法カード!よって団結の力は4800、魔導士の力は2000ポイント、攻撃力を上昇させる。デコード・トーカーは自身の効果で1000ポイントアップ!攻撃力は19700だ!さっきデコード・トーカーを除外しなかったところを見ると、もう『仕掛け』には気づいているみたいだけど…」

     デュエルを実行しているディスク同士でのみ繋がる試合用回線から遊作の声が、遊星に届く。空を自在に舞う彼はスピードすらも完全に味方として、あっという間に遥か前方を行く護送車の列に追いついている。

    「お前は俺たちの狙いが法案提出の阻止ではないと気づいていたというのか、PLAY MAKER!」

    「おっと、そっちも気づかれてたか。さすがだね。さあ!お前の答え、デュエルで聞かせてくれよ!メインフェイズ終了時、俺は手札から速攻魔法サイクロンを発動!いつものかかしを破壊する!行くぞバトルだ!俺はパワーツールドラゴンでトリシューラを攻撃!」

    「受ける!」

     機械龍のドライバー状の腕が高速で振動しながら白銀の満足龍の胸を貫き、粉砕する!2300打点を侮るなかれ。黒庭によって攻撃力が半減したトリシューラではとても耐えられない、強力な一撃だ。

    「行くぞ!俺はデコード・トーカーでダイレクトアタック!」

     デコード・トーカーの剣が、パンプアップ効果を受けて10倍以上の大きさに膨れ上がる。鉄塔のような刃が高らかに振り上げられ、空気を割り轟音と共に遊星に迫る。いつものかかしによる防御を失ってしまった遊星。

    「トラップ発動、リビングデッドの呼び声!」

     リビングデッドの呼び声は、墓地のモンスターを蘇生するおなじみの永続罠だ。しかし、必ず攻撃表示で蘇生しなければならず、当然ながらデコード・トーカーよりも高い攻撃力を持つモンスターなど遊星の墓地にはいない。

    「俺が蘇生するのは、最初のターンに手札抹殺で墓地に送っていた、ゼロガードナー!モンスターがフィールド上に特殊召喚されたことにより巻き戻しが発生し、お前は改めてデコード・トーカーの攻撃対象を選択する!」

     ゼロガードナーはその名の通り攻守ともに0の戦士族モンスター。しかし、プレミ即ち死の状況で遊星が無駄な手など打つはずはない。

    「俺はゼロガードナーを攻撃!」

    「ゼロガードナーの効果発動!このカードをリリースすることで、このターン自分が受けるダメージを全てゼロにする!」

    「何っ!」

     そう、いつものかかしなんて一度見られたらあとは破壊されるためにあるようなものだ。見えているかかしで除去を吸い取り、もう一つの活路であり、より汎用性が高いリビデを守る。これが遊星の戦略だ。

    「さすがは孔明たちが組み上げた遅延型デッキ、どこからでも守れる」

     遊作のデッキは力押しにたけた王道ビート系。遊星が選択した防御特化の遅延デッキはこの上なく有利に立ち回れる。しかし、その好相性をマスタールール4との嚙み合いが相殺し、今の一進一退の戦況を作り出している。つまり、このデッキタイプでなければここまで遊作の出方を伺いながら活路を探すことはできなかったというわけだ。

    「いいぞ遊星!俺の戦略、破れちまうよ!お前の全力ぶち込んでくれよ!」

     二度もつまらない遅延で水を差されているにも関わらず、モニターに映し出される遊作の表情は明るかった。普通のYPなら顔を真っ赤にして怒れる霊長類と化している。だが彼はADS出身、このようなイロモノデッキ同士のぶつかり合いを心から楽しむというスタンスが身に染みているのだ。どんなカードが飛び出すか、どんな戦略が飛び出すか全くの未知数。そんなデュエルに心を躍らせている様子が遊星にも伝わってきた。

    「ターンエンドだ!」



    ◆3 遊星・4ターン目

     遊作の盤面を覆す兆しが見えた!しかし、遊星は最後の決め手を見つけきれていない。あと一歩。デコード・トーカーを破壊し、セキュリティーシステムのロックを解除するにはあと一歩足りない。

    『今です!!』

     無線に響き渡る高らかな声!孔明の掛け声は、遊星には何を意味しているのか、まるで意味が分からない。

     その時!遊星の真横、別の国道からの合流地点から1台のバイクが轟音を上げて乗り込んできた!

    「カーッカッカッカッカ!!!」

     高らかな笑い声が響き渡る!真っ黒なヘルメットをかぶったライダーは、純白のコック服に身を包んでいる!遊星と並走した黒いバイクのライダーは、意気揚々とヘルメットのバイザーを跳ね上げた!

    「ジャンジャジャ~ン!!待ちくたびれたぜ遊星!!」

     ヘルメットから覗く、遊星と同じ鋭い目つき!一瞬視線を交わしただけで、遊星の胸の奥から無限の闘志と自信が湧き上がる!盟友、秋山ジャンの登場だ!

    「ジャン!どうしてここに!」

    「孔明のおっさんの指示だ!俺様のフィールが必要らしいんでな!」

    『隠していてすみません遊星さん。しかし、伝えるわけにはいかなかったのです』

    「どういうことだ」

    『実は、そのデッキには1枚だけ、レシピと違うカードが入っているのです。それをあえて遊星さんに知らせないことで、無駄引きを防げるのではと思ったのです』

     遊星は孔明の意図を一瞬で汲み取り、恐れおののいた。フィールが引きを左右するこの世界では、遊星ほどの決闘者なら引きたいカードを引き、引きたくないカードを好きなだけデッキに寝かせておける。では、そもそもデッキに入っているとも思っていないカードならば。そう、引くはずがない。孔明はこの法則を逆手に取り、逆転の一手を最終局面まで温存していたのだ。

    『ジャンさん、あとは任せますよ』

    「おうよ!遊星、お前のデッキに隠した逆転のカードは俺様のカードだ!今から俺が発するフィールで、そいつをデッキトップに引き寄せる!さあ、お前のターンだ。引きやがれ!!」

     遊星が放つ風のフィールに、ジャンの炎のフィールが乗る!デッキトップが火花を放ちながら書き換えられていく。


    「うおおおおっ!!俺のターン、ドロー!!」

     遊星がディスクのデッキポケットからカードを引き抜くと同時に、鋭いフィールが空間を駆け抜ける。それは一陣の風となり、遊作を、護送車の中の人々を、高架の下に集まった観客たちを震え上がらせた。

    「一気に攻める!!俺は手札から禁じられた聖槍を発動!対象はデコード・トーカーだ!」

     聖槍は対象の攻撃力を800下げながら、他の魔法罠の効果を受けなくするカードだ。これを通せば装備魔法による大幅な打点増強は無に帰してしまう。遊作には止めない理由などない。

    「ハニーボットをリリースして無効!」

    「さらにチェーンだ!手札より禁じられた聖杯を発動!当然対象はデコード・トーカーだ!」

    「クソっ、パワーツールドラゴンをリリースして無効!!」

     これにより、遊作のデコード・トーカーはリンク先のモンスターを全て使い切った!矢印のエフェクトが収縮していく。黒庭のロック、デコード・トーカーのパーミッション。このコンボが崩れたのだ。終わってみればあっけないようにも見えるが、遊星は確実に崩せる瞬間まで対象に取る効果を持つカードを温存していたのだ。


    「さらに俺は手札からフィールド魔法、ブラックガーデンを発動!!」

    「お前も黒庭軸だったのか!?」

    「遅延デッキといっただろう。守備固めをするならシンクロとも好相性のこのカード、入っていても不思議ではない。」

     遊星はフィールド魔法ゾーンにカードを設置した。これにより、今後召喚されるモンスターは攻撃力が半減する。

    「だが俺のデコード・トーカーは召喚済みだ。今更張っても自分の首を絞めるだけだぜ」

    「それはどうかな。俺は黒庭第二の効果を発動する。黒庭と場の植物族モンスター全てを破壊し、破壊したモンスターの攻撃力の合計と同じ数値の攻撃力を持つモンスターを俺の墓地より特殊召喚する!!」

     そう、黒庭の効果は厄介な遅延効果だけではない。蘇生札としても機能するのだ。

    「お前の場には植物族のローズトークンが2体、攻撃力の合計は1600だ!俺が墓地から蘇生するのは、アーマード・ビー!!」

     遊星が特殊召喚したモンスターは攻撃力1600の昆虫族モンスター、スズメバチの姿をした「アーマード・ビー」だ!!

     その姿をみたジャンは孔明の策に気付き、感嘆の声を上げる。

    「なるほど、そういうつもりか!遊星!俺のカードも使っちまえ!!」

    「ああ!!俺は手札から、BF‐疾風のゲイルを通常召喚!!!」

     遊星の場にジャンのフェイバリットモンスターが現れる!




    ◆4 光刺す道―スズメバチには気を付けよう!

    「アーマード・ビーの効果発動!1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力を半減させる!俺が対象に取るのは、デコード・トーカーだ!」

     振動音を発しながら、スズメバチがデコード・トーカーに迫る!!

    「さらにゲイルの効果発動!1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力を半減させる!俺が対象に取るのはデコード・トーカーだ!!」

     黒い翼をはためかせ、疾風のゲイルがスズメバチに並んで共にデコード・トーカーに迫る!!


    『チクッ』

    『チクッ』


    「アアアアアアア…!!」


     悲鳴を上げながら急速にパワーダウンするデコード・トーカー!一瞬にして攻撃力は4分の1に。団結の力3枚により、2400ポイント、魔導士の力により2000ポイント上昇し、6700ポイントあった攻撃力は、1675まで落ち込んだ。

    「まだだ!俺は通常魔法アイアンコールを発動!墓地のチューニングサポーターを特殊召喚!!レベル3のゲイルに、レベル4のアーマード・ビー、レベル1のチューニングサポーターをチューニング!集いし願いが、新たに輝く星となる!光さす道となれ!シンクロ召喚、飛翔せよ!スターダスト・ドラゴン!!!」

     暗黒空間から、まばゆい閃光をまき散らし、遊星のエースモンスターが飛来する!!白い翼を大きく広げ空を翔ける最初の決闘竜。その強力なフィールは、空に立ち込める暗雲をも切り裂く!

    「攻撃力2500…!デコード・トーカーを上回ったか!」

    「まだまだだ!俺は素材となったチューニングサポーターの効果で1枚ドローし、シンクロキャンセル発動!墓地から素材を蘇生する!!」

     スターダストが消え去ると同時に、スズメバチとゲイルたちが再び姿を現す!


    「そしてトラップ発動、貪欲な瓶!墓地のカードを5枚戻し、1枚ドロー!よし、もう一度刺してこい!!」


    「アーマード・ビーの効果発動!1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力を半減させる!俺が対象に取るのは、デコード・トーカーだ!」

     振動音を発しながら、スズメバチがデコード・トーカーに迫る!!

    「さらにゲイルの効果発動!1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力を半減させる!俺が対象に取るのはデコード・トーカーだ!!」

     黒い翼をはためかせ、疾風のゲイルがスズメバチに並んで共にデコード・トーカーに迫る!!


    『チクッ』

    『チクッ』


    「アアアアアアア…!!」

     デコード・トーカーの攻撃力:1675→418.75


    「そして同じ素材でスターダストをシンクロ召喚し、1枚ドロー!!引いたカードは今貪欲な瓶で3枚ともデッキに戻した、シンクロキャンセル!3回目ェ!!」


     
     スターダストが消え去ると同時に、スズメバチとゲイルたちが再び姿を現す!


    「そしてトラップ発動、2枚目の貪欲な瓶!墓地のカードを5枚戻し、1枚ドロー!」


    「アーマード・ビーの効果発動!1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力を半減させる!俺が対象に取るのは、デコード・トーカーだ!」

     振動音を発しながら、スズメバチがデコード・トーカーに迫る!!

    「さらにゲイルの効果発動!1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力を半減させる!俺が対象に取るのはデコード・トーカーだ!!」

     黒い翼をはためかせ、疾風のゲイルがスズメバチに並んで共にデコード・トーカーに迫る!!


    『チクッ』

    『チクッ』


    「アアアアアアア…!!」

     デコード・トーカーの攻撃力:418.75→104.6875


    「そして同じ素材でスターダストをシンクロ召喚し、1枚ドロー!!引いたカードは2枚目のシンクロキャンセル!4回目ェ!!」



     
     スターダストが消え去ると同時に、スズメバチとゲイルたちが再び姿を現す!



    「アーマード・ビーの効果発動!1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力を半減させる!俺が対象に取るのは、デコード・トーカーだ!」

     振動音を発しながら、スズメバチがデコード・トーカーに迫る!!

    「さらにゲイルの効果発動!1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力を半減させる!俺が対象に取るのはデコード・トーカーだ!!」

     黒い翼をはためかせ、疾風のゲイルがスズメバチに並んで共にデコード・トーカーに迫る!!


    『チクッ』

    『チクッ』


    「アアアアアアア…!!」

     デコード・トーカーの攻撃力:104.6875→26.171875


    「そして同じ素材でスターダストをシンクロ召喚し、1枚ドロー!!引いたカードは最後のシンクロキャンセル!5回目ェ!!」


     スターダストが消え去ると同時に、スズメバチとゲイルたちが再び姿を現す!



    「アーマード・ビーの効果発動!1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力を半減させる!俺が対象に取るのは、デコード・トーカーだ!」

     振動音を発しながら、スズメバチがデコード・トーカーに迫る!!

    「さらにゲイルの効果発動!1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力を半減させる!俺が対象に取るのはデコード・トーカーだ!!」

     黒い翼をはためかせ、疾風のゲイルがスズメバチに並んで共にデコード・トーカーに迫る!!


    『チクッ』

    『チクッ』


    「アアアアアアア…!!アアアアアア…!!!!!!」

     デコード・トーカーの攻撃力:26.171875→6.54296875 


     切り上げにより、攻撃力:7


     いまだかつて、攻撃力7などというカードが存在しただろうか。遊星の執拗な半減連打により、デコード・トーカーは攻撃力0にも等しい貧弱なモンスターへと成り果てていた。
     これが孔明が仕掛けた最後の秘策!攻撃力を半減させるまったく同じ効果を持つチューナーと非チューナー、そしてシンクロキャンセルを使った弱体化コンボだ。
     遊星はそのコンボにチューニングサポーターを絡ませるアレンジで、さらに手札補充までやってのけた。

     もはやデコード・トーカー、つまりコンマイ本社のセキュリティーシステムのガードは風前の灯火。これを戦闘破壊するだけで、目的は達成される。遊星の場には既に打点で勝る3体のモンスターがいる。



    「だが、俺はこの場で俺自身を見せしめにするコンマイの野望を、無限に俺を小馬鹿にしたマスタールール4を徹底的に粉砕してやる!!俺は3体を素材に、再びスターダストをシンクロ召喚!!さらに手札から死者蘇生を発動!!」

     連続ドローに遊星のフィールが合わさることで、遊星のフィニッシュ圏内における蘇生確保率は99%を優に超えている。

    「俺が蘇生するのは、遊作!お前の墓地のハニーボットだ!!墓地からEXモンスターを特殊召喚する場合は、メインモンスターゾーンにおいていいんだったな!!」

    「何っ!?」

     遊星のフィールド上、中央のモンスターゾーンに二つのリンクマーカーを携えた青い枠のモンスター、リンクモンスターが召喚される!


    「これにより、俺はハニーボットの両脇にシンクロモンスターを展開できる!!行くぞ!俺は手札を一枚捨て、墓地のジェットシンクロンの効果を発動!自己蘇生だ!!さらに手札からアイアンコールを発動し、墓地の機械族モンスター、チューニングサポーターを蘇生!!レベル1のチューニングサポーターに、レベル1のジェットシンクロンをチューニング!!集いしドローが新たなる強欲の地平へいざなう!光さす道となれ!シンクロ召喚!欲望の塊、シンクロチューナー!強欲な車!!」

     遊星は強欲な車と、その素材となったチューニングサポーターの効果により、さらにカードを2枚ドロー。普通ならこれだけ引いて回せばデッキが薄くなってしまうところだが、遊星はこれを見越し、貪欲な瓶の効果を何度も使って墓地のカードをデッキに戻していた。デッキ切れはまだ遠い。

    「うおおおおっ!ようやく解禁だ!アクセルシンクロォォォォ!!!」

    「いいぞ遊星、ぶちかましてやれ!!」

    「集いしフィールの結晶が、新たな進化の扉を開く!!光さす道となれ!!アクセルシンクロ!!招来せよ、シューティングスタードラゴン!!」

     スターダストが光を身にまとい、姿を変えていく!これぞ遊星と最も相性が良いとされる最強のエースアタッカーだ!


    『不動遊星、姑息にも奪ったリンクモンスターでアクセルシンクロです!!しかし、彼がシンクロに使えるモンスターゾーンは計3か所!より強力なシューティングクェーサーの召喚も狙えた場面ですが…』


     全国中継に流れる鞍馬アナウンサーの疑問に、孔明が満足げに腕を組みながら小さくつぶやく。

    「クェーサーは強力なカードですが、制圧力のカード。爆発力ではシューティングスターのほうが勝るのです」



    「俺はシューティングスターの効果を発動!デッキトップ5枚をめくり、そのうちのチューナーの数だけ攻撃できる!」

     そう、シューティングスターと言えばこの連続攻撃効果。そのまま使えばただの博打効果でしかないが、遊星にはカードを引き寄せるフィールがある!カードを仕込む積み込みがある!!そして、その成功率を上げる戦略がある!!!

    「俺は何もシンクロキャンセルを使いまわすためだけに貪欲な瓶を何度も使用したわけではない。幾多ものドローを繰り返しながら加速するソリティアの中で、デッキ内のチューナー率を調整していた!!1枚目、ヴェーラー!!2枚目、ヴェーラー!!3枚目、ヴェーラー!!4枚目、幽鬼うさぎ!!5枚目、幽鬼うさぎ!!よって5回攻撃が可能!!」

     しらじらしい!!しかし、イカサマを検知するディスクのセーフティー機能は無反応!!つまりこの引きがフィールによるものなのか、何らかのトリックを使ったイカサマなのか、チューナー率を高めた結果起こった必然的偶然なのか、それは誰にもわからない!!


    「さすがだぜ不動遊星。俺のコンボを破っただけじゃなく、俺のリンクモンスターを利用して封じられたアクセルシンクロまで成功させるとは恐れ入った」
     
    「これが俺の答えだ!!マスタールール4、ここでくたばれ!!」

     遊星は腕を振り上げ、白銀の巨竜に合図を出す。シューティングスターは5つの幻影に分身し、遊星のバイクを追いかけるように飛翔する!!


    『やあ、楽しかったよ。不動遊星』

     対戦者同士の個別回線だ!遊作が遊星に対して通信を送っている。中継の音声を通して自由に会話できる今、あえて個別回線、つまり二人にしか聞けない回線を使うということの意味は遊星にも理解できた。

    『そっちこそ、本社のセキュリティーとこのデュエルをリンクさせるとは、ずいぶんと味な真似をしたな、PLAY MAKER』

     OCGとADS、戦う土俵は異なるがトッププレイヤー同士、相手の実力を存分に感じる試合だった。

    『まあ、俺としては楽しめればよかったからさ。面白そうだから引き受けただけで、もともとコンマイに味方するつもりなんてなかったし』

    『デコード・トーカーの攻撃力にこだわらず、普通にリンク召喚を使って戦うことに専念していれば俺を倒せたはずだ』

    『だって、それじゃ面白くないだろ。ルールに潰された古いデッキ相手に未発売のカードを使ってやることじゃない』

    『遊作、お前はリンク召喚とマスタールール4に賛同しているのではないのか?』

    『中立だよ、俺は。だってどのみちADSしかやらないし。ルールが変わろうがカードプールが変わろうが、アプリを適応させればそれで好きなだけ無料で遊べる。どんなルールだろうと、俺はコンマイにはびた一文払うつもりはないよ。新しいルールを体験できるのは楽しそうだなって思っただけさ』

     そう、遊星たちのようなOCGプレイヤーも厄介な人種だが、オンライン上でのみ活動するADSプレイヤーも似たようなものなのだ。

    『なるほど、相変わらずADS勢は金も落とさずコンマイ叩きとは図々しいな』

    『紙遊びにアホみたいな金かけて悪徳企業に募金してるOCG勢に言われてもね』

     口汚い罵りあいだが、自虐とリスペクトを含む爽やかなやり取りだった。

    『さあ遊星、お前のシューティングスター、ぶち込んでくれよ!』

    『言われなくともぶち込んでやるぜ!』

    『おっと、それから最後に。お前にとっては重要なことかもしれないから教えておくよ。俺とコンマイはレイ・ベクターって男に引き合わされたんだ。ご存知の通りもともと水と油だったんだけどね。君が関わってる案件絡みでの話みたいな口ぶりだったから、伝えておく』

    『そうか、ありがとう』


    「いけ、シューティングスター!!スターダスト・ミラージュ…5連打ァ!!!」

     5つの幻影が次々とデコード・トーカー、そして遊作に突撃し、フィールの爆炎を上げる。


    「次やるときは、イカサマには気を付けよう。不動遊星、じゃあな!」

    「ああ!じゃあな!」

     3300の5回攻撃を受けた遊作のライフはゼロ。爆炎の中から飛び出した遊作は、デュエルボードを巧みに操り、爽やかな挨拶とともに大きく手を振りながら青空の彼方へ消えていった。残ったのは遊星の盤面と、歩道を埋め尽くす観衆の大喝采だった。



  • 間違いだらけの冒涜的フィール神話劇場 MASTER RULE 4 [ep.4]

    2017-03-21 20:1941

    デュエルしてます。文章でデュエルをするというのはとても大変なことだと感じました。
     読むほうはもっと大変だと思うので頑張ってください。
     ルールやカード効果の間違いがあったらごめんなさい。コメントで補足してくれる人たちありがとう。今後とも無限によろしくお願いします。

     もしかしたら遊戯王よくわからないからデュエル場面は飛ばすけど一応読むという奇特な人もいるかもしれないので、せめてもの情けでデュエルしてる場面のタイトルを「◆」、デュエル以外の場面のタイトルを「」にしておきます。

    ◆0 アバン

    「俺はデコード・トーカーに団結の力を装備し、戻した黒庭を張りなおしてターンエンドだ」

     団結の力は装備したモンスターの攻撃力を自分のモンスターの数×800アップさせる。デコード・トーカーは自身の効果で打点が1000上がっており、合わせると2600ポイント上昇して現在は4900打点だ。黒庭の効果で実質その倍でもある。

     さらに、遊星がモンスターを召喚すれば遊作の場には黒庭によってローズトークンが生成され、団結の力の効果がさらに高まる。

     デコード・トーカーの二つの効果を最大限に生かすことを考えた強力なコンボだ。


     遊星は圧倒的に不利なマスタールール4と、リンク召喚という未知の戦法を相手に、活路を切り開くことができるのか…。

     加速したデュエルは、危険な領域に突入する…。



    ◆1 遊星・2ターン目


    「俺のターン、ドロー!」

     遊星は必死に打開策を探った。EXゾーンを使ったルールのせいで、連続シンクロはできない。普段の遊星ならトリシューラを絡めて当たり前のように突破しつつワンキルできる盤面のはずが、たった1回だけに制限されたシンクロ召喚ではどうしようもない。中途半端に展開を重ねれば、黒庭のトークン生成効果で相手の場にモンスターが溜まり、無駄に遊作を喜ばせるだけだ。

    『pppppp...』

     遊星のディスクに通知音だ。仲間から通信が来ている。

    「通信か!途切れたり繋がったり、まだ不安定なようだな…。もしもし」

    『繋がりましたか、よかった』

     声の主はアドバイザーの孔明だ。

    「孔明、助かった。普段のデッキセットだったら太刀打ちできていなかった」

    『レシピを見て頂ければわかったと思いますが、デッキコンセプトはドロー加速と防御です。未知の相手に対して守りを固め、活路を見出すまで耐え続けるのです』

    「ああ!しばらくは持たせて見せる。サポートチームはあの遊作とかいうやつの情報分析を頼む。こっちでデュエルしながら検索をかけているが、公式戦の記録がまるで見当たらないんだ」

    『戦ってみてデュエルの腕はどう思いますか?』

    「俺たちトップレベルのYPと比較しても遜色のないフィールとタクティクスだ。俺たちとは違う場所で遊戯王をやっていなくては説明がつかないくらいな」

     空気を焼くような鋭いフィールでドローンや車を操る能力、誰も使ったことがないリンク召喚というギミックを活かしてあのようなパワーデッキを作り出す構築力、咄嗟のやりとりで見せる直感やタクティクス、そのどれも遊星が戦ってきた相手の中でトップクラスのものだ。それだけの逸材がこのデュエルを基準とする世界で埋もれていたとは、遊星にはとても思えなかった。

    『なるほど、わかりました。少々調べてみますのでしばらく耐えてください』

     孔明からの通信が切れる。淡々とした口調からは何も想像ができない。ただ信じて戦うことのみが遊星に許される選択だ。

     遊星の場には3枚の伏せカードとチューナーのジェットシンクロン、非チューナーのチューニングサポーターがそれぞれ守備表示で1体ずつ。決して悪い盤面ではないはずなのだが、遊作の黒庭、団結、デコード・トーカーのパンプ&パーミッションコンボの厄介さに加えて連続シンクロを許さないマスタールール4。今の遊星にはできることが少なすぎる。


    「さあどう出る不動遊星!このまま俺の盤面を崩せなければ、次のターンはもっと恐ろしいぞ」

     遊作が浮遊するボードで遊星の周囲を旋回する。リンクの光でつながったデコード・トーカーとパワーツールドラゴンがそのあとに続き、悠々と宙を舞う。遊作が恐ろしいというのは、パワーツールドラゴンを残せばまた装備魔法サーチ効果でデコード・トーカーの攻撃力を上げるということだろう。

    「こっちには伏せも手札もまだ潤沢にある。恐ろしいとは思わないな」

    「それはどうかな。ジャンドの伏せこそ怖くもない。デッキタイプからして、妨害札にそこまで枠を割けるはずはないだろうしね」

     優れたYP同士の戦いで起こる腹の探り合いだ。これは単なる意地の張り合いや煽りあいではなく、精神的優位を取ることでハッタリやブラフを通りやすくしようという立派な戦略なのだ。

    「俺はジェットシンクロンとチューニングサポーターでレベル2のシンクロ召喚!現れろ、シンクロチューナー!強欲な車!!」

     遊星は場に残った2体を素材に、毎度おなじみのドローソースである強欲な車を召喚した。当然守備表示だ。これによって、遊星は素材のチューニングサポーターと出来上がった強欲な車の効果でカードを2枚ドローし、遊作の場には黒庭によってローズトークンが生成される。

    「どうする、これ以上動くべきか…」

     遊星の迷いは、得意の展開力で相手のモンスターゾーンをローズトークンが埋め尽くすまでモンスターを並べるか、それともここで止まるかだ。あらゆる可能性を考慮し、遊星はアクセルを強く捻った。

    (ブラロぶっぱが最善だが、相手は無伏せ…。フィールド上に見えないものを置いていない以上、ヴェーラー警戒は必須だ。確実に通すには…)

    「俺はアイアンコールを発動!墓地のチューニングサポーターを特殊召喚!さらに手札からボルトヘッジホッグを召喚!」

     これにより遊作の場にはさらにローズトークンが2体。

    「EXゾーンのシンクロモンスターを素材にすれば、EXゾーンは空になり!連続シンクロは可能!俺はレベル2、強欲な車にレベル1のチューニングサポーターとレベル2のボルトヘッジホッグをチューニング!現れろ、シンクロチューナー!アクセルシンクロン!」

     遊星はこのシンクロによりまたカードをドローし、ついに遊作のモンスターゾーンが埋め尽くされた。EXゾーンのデコードトーカー、メインゾーンのパワーツールと4体のローズトークンだ。

    「ボルトヘッジホッグは場にチューナーがいるとき、墓地から特殊召喚できる!そしてカードを一枚伏せてターンエンドだ!」



    2 コンマイ本社ビル・サーバールーム

    「…よし、パスワードはジョニーがメモに残していたもので間違いないようだな。こちら黒咲、システムにログイン成功だ」

    「よし!早く回線とかっていうのを切断しちまえ!」

     ここは新埼玉市中央部、メガロポリスの中心にある巨大ビルの中だ。そう、誰もが知る日本を代表する巨大企業、コンマイ本社のサイバーセキュリティ部門が入っているフロアだ。

     ご存知の通りコンマイ本社は正邪によってグスタフマックスで砲撃され、大穴を空けられたばかりだ。黒咲と正邪はフィール具現法を使って再びコンマイ本社に潜入していた。

    『ふぅん…。フィールマテリアル技術と具現法が合わされば、職員の指紋データの再現など容易いこと。黒咲、遊星は国道をそちらに向かって移動中だが、正体不明の決闘者による妨害を受けている。予定時刻より遅れが出ることを覚悟しておけ』

     ヘッドセットの中で指揮を執る海馬の声が響く。黒咲はコンマイ本社にあるデュエルオペレーティングシステムのサーバーにアクセスしている。このシステムがマスタールール4に切り替わっていることで、遊星のデュエルにそれが適応されている。そしてデータを解析するうちに、遊星のデュエルが終わるころには法案の成立を待つことなく、全世界に向けていまだ調整中のマスタールール4が配信されてしまうことが判明した。

     遊星たちの作戦は元から、表向きは法案の提出を阻止するために動いているように見せかけて、実はこのサーバー内のデータを破壊するための作戦なのだ。
     国道での護送車襲撃に加担して騒ぎを起こすことはそのための陽動でもある。

     しかし現在、マスタールール4が適応されたオペレーティングシステムのサーバーは他のサーバーと複雑にリンクしている。一台だけをクラッシュさせてもすぐにバックアップと復元を自動で行われてしまう。それを寸断するための操作を黒咲が行っているところだ。正邪はそれを見守りながら社員に見つからないよう、通路を監視している。


    「リンクの解除は…。なんだ、これは」

     黒咲は海馬が事前にコンマイのシステムをハックして得た情報が示す手順を確認しながら操作を進めていた。画面上には現在アクセスしているサーバーを中心に、リンクの見取り図が表示されている。ここからはコマンド入力することでスタンドアローン状態に変更できるはずなのだが、情報とは異なるウィンドウの出現が黒咲を困惑させた。

     ウィンドウが発する警告によって、黒咲が入力したコマンドは実行が阻止されている。このような侵入を想定して最後の壁が用意されていたようだ。ウィンドウには黒い騎士のようなモンスターの姿とともに、次のような警告文が表示されていた。

    【MISSION:デコード・トーカーを戦闘破壊せよ】

    「海馬、デコード・トーカーとは何だ」

    『なぜお前がその名を!』

    「ロックがかかっている。デコード・トーカーとやらを戦闘破壊しなければ、リンクを断ち切ることはできないらしい。詰めデュエル式のパスワードかと思ったが、そうでもない」

    『なるほどな…。わかった、お前はしばらく待機してくれ。それを突破できるかどうかは遊星にかかっている』





    ◆3 遊作・2ターン目


    「俺のターン、ドロー!」

     遊作の場は埋め尽くされている。デコード・トーカーの攻撃力は団結の力によりモンスターの数×800、つまり6体のモンスターがいることで4800、デコード・トーカーのリンク先にモンスターが2体いることで1000、合計5800ポイント上昇して8100打点だ。

    「まずはパワーツールの効果だ!デッキから団結の力、団結の力、魔導士の力を選び、お前がランダムに一つ選ぶ!」

    「真ん中」

    「団結の力だ!よし、俺は団結の力をデコードトーカーに装備!攻撃力はさらに4800アップする!そして手札から装備魔法、魔導士の力をデコード・トーカーに装備!」

     魔導士の力は自分フィールドの魔法罠カード×500ポイント打点を上げる装備。遊作の場には団結の力が2枚、黒庭が1枚、そして魔導士の力自身が1枚あることで計2000ポイント。デコード・トーカーの攻撃力はついに一万の大台を超え、14900だ。一体どうしてそこまでやる必要があるのだろうか。

    「フィールドが埋まっているのでそのままバトルフェイズだ」

     遊星の場には守備力2100のアクセルシンクロンと、守備力800のボルトヘッジホッグ。ローズトークンの攻撃力も800なので、このターンはデコード・トーカーによるダイレクトアタックは飛んでこない。

    「俺はパワーツールドラゴンで…」

    「今だ!俺はアクセルシンクロンの効果発動!相手ターン中にシンクロ召喚する!俺はレベル5、アクセルシンクロンとレベル2、ボルトヘッジホッグで…ブラックローズドラゴンをシンクロ召喚する!」

    「何っ!?」

    「冷たい炎が世界のすべてを包み込む!漆黒の花よ、開け!シンクロ召喚!!現れろ、ブラックローズドラゴン!!」

     2体のモンスターが紡いだフィールの光が巨大な竜のモンスターを形作る。暗黒空間より現れ遊星の後方から飛来したブラックローズドラゴンは、深紅の花吹雪をまき散らしながら先を行く遊作に迫る。

    「俺はブラックローズドラゴンの効果を発動!シンクロ召喚成功時に、フィールド上のすべてのカードを破壊する!!」

     ソリッドビジョンが描き出す深紅の巨体が赤熱する!このまま遊星の伏せカードもろとも、遊作のコンボ盤面を巻き込んで爆発四散するつもりだ。遊作はボードを巧みに操り、フィールの光を噴射して空高く舞い上がる。

    「てめえ、調子乗ってんじゃねーぞ!俺は手札から速攻魔法、禁じられた聖杯を発動!ブラックローズドラゴンの攻撃力を400ポイント上昇させ、効果を無効にする!」

    「何っ!!」

     ブラックローズドラゴンが放つ光が一瞬にして収まった。遊星は動揺のあまり、ハンドルをふらつかせて減速する。

     一手と一手の応酬でしかなかったが、ここまでには遊星の緻密な読みがあった。ブラックローズドラゴンの召喚自体は直前の自分ターンにも可能だった。その場合はフィールドを更地に戻した後でさらにモンスターを展開して攻撃を仕掛けることもできたのだ。しかし遊星はあえてシンクロ素材のまま残してターンを渡し、アクセルシンクロンの効果で相手ターンにシンクロ召喚を行った。

     前のターン、遊作の場には伏せカードがないにもかかわらず、自信満々でターンを回してきた。このことから遊星は手札誘発効果を持つ妨害カードの存在を警戒していた。つまり、エフェクトヴェーラーを。ヴェーラーは手札から捨てることで相手モンスターの効果を無効化できる強力なカードだが、その効果を使用できるのは持ち主から見て相手ターンのみ。つまり、遊星からすれば自分のターンにブラックローズを召喚するとヴェーラーが飛んでくる恐れがあった。それを警戒しつつ、相手にさらに手札を消費させてから爆破するという作戦だったのだ。

     しかし、その読みは外れた。遊作の手札にあったのは、自分のターンに発動可能な速攻魔法、禁じられた聖杯だったのだ。

     体を折りたたんで連続バックフリップで遊星の背後につけた遊作は、2体のモンスターとトークンを伴い、減速する遊星の真横に颯爽と現れる。

    「フィール感じるんでしたよね?」

     その不敵な笑みと迸る電流のようなフィールで遊星はすべてを察した。この状況、遊作はこのターンのドローで偶然禁じられた聖杯を引き当てたためそのまま手札から発動できたと考えるのが普通だ。もしも前のターンから持っていたのならば、普通はセットするからだ。しかし遊作の様子は効果を阻止できてラッキー、なんていう暢気なものではない。俺のほうが上手だったな、と視線が語っている。

     遊作はセットすべき聖杯をあえて伏せずに温存した。遊星が最小限の動きでブラックローズ爆破を狙ってくることを読み切り、ヴェーラーを持っていると見せかけることでターンを回させ、余計な動きを封じ込めたのだ。

    「お前、本当に無名の決闘者か…?」

    「だが、さすがは不動遊星…はめられてまで隙のないやつだ…」

     一方で遊作も一連のやりとりの中で遊星が見せたプレイングに感嘆し、額に冷や汗をかいていた。遊星はブラックローズドラゴンを守備表示で召喚していたのだ。

     ブラックローズは自爆効果を使えばすぐに破壊されて墓地に行く。つまり効果を通すつもりならば表示形式などどちらでも関係ない。しかもデュエルディスクの仕様上、デフォルトになっている攻撃表示のほうが選択しやすい。
     遊作の狙いはそこだった。あえて伏せカードなしの状況を作り、遊星にヴェーラーの存在を信じ込ませた。遊作にターンが回った時点で、普通なら遊作がブラックローズドラゴンを止める手段を持っているとは考えない。確実に効果を通せると判断するはずなのだ。そこで油断しきってディスクを何気なく連打し、攻撃表示でブラックローズを出したところに聖杯を叩き込み、棒立ちになったブラックローズを攻撃力一万オーバーのデコード・トーカーで粉砕してワンキルを決める。そこまでが遊作の作戦だった。

     しかし遊星は遊作の変則ブラフに引っ掛かり、ブラックローズの効果が通ることを確信した状態でさえ、警戒を解かず守備表示を選んだ。凄腕YPの緻密なプレイングというべきか、あるいは決闘者の直観か。優位に立ったはずの遊作も、まったく精神的な余裕を感じることはなかった。


    「変な罠を踏みたくないからできれば動かずに殴りたかったんだけど、しかたない」

     遊作の場はローズトークンで埋め尽くされている。これをどうにかしなければ、展開は不可能だ。

    「俺はフィールド上から通常モンスターとして扱われているトークンを素材として墓地に送り、3枚目のリンクスパイダーを召喚する!」

    「何っ!?トークンを素材にリンク召喚だと!?おいコンマイ、そんなことが許されるのか!!」

    『マスタールール4は現在衆議院にて審議の手続きを行っており、細部については未確定な部分もあります。今回は公式ジャッジチームの判断により、トークンによるリンク召喚は可能という裁定を取らせて頂きます』

    「死ね!」

     あまりにも卑怯すぎる。トークンは墓地へは行かず消滅する。シンクロ素材にはできるがエクシーズ素材にはできない。等々扱いが特殊であるため、リンク召喚に使えるかどうかは不透明だ。それを逆手にとって遊星を不利にするような裁定を下しているとしか考えようがない。

    「俺がモンスターを召喚したことで、遊星の場にもローズトークン1体を攻撃表示で生成する。バトルだ!俺はローズトークンでローズトークンを攻撃し、相打ちを取る!」

     トークン同士で潰しあい、自分の場を空ける戦略だ。

    「さらに俺はパワーツールドラゴンでブラックローズドラゴンを攻撃!」

     機械仕掛けの竜が守備表示のまま残った遊星のブラックローズドラゴンを粉砕する。これによって遊星の場はがら空きになった。

    「行け、デコード・トーカー!遊星にダイレクトアタックだ!」

     デコード・トーカーは無数の装備魔法により攻撃力を上昇させているため、禍々しいオーラを放ちながら自分の何倍もの大きさに巨大化した剣を重々しく構えている。その一振りが遊星に迫る!

    「トラップ発動!いつものかかし!」

     いつものかかしは文字通りいつものだ。攻撃を無効にした後ふたたびセットされるいつものかかしだ。

    「クソっ、初めてやられるが嫌に既視感があるぜ…」

     いつものかかしは攻撃反応罠であり、対象は取らない。これにより、遊星に次のターンが回ってくることが決まった。とりあえず一安心、といったところだろう。




    4 護送車の内部

     外では遊作と遊星、コマンダーとプロフェッサーによって、ソリッドビジョンのモンスターとフィールの閃光を伴う激しいデュエルがスピードの世界で繰り広げられている。しかし、それらの先を走る護送車の中は相変わらず停滞した空気の静かな空間だった。


    「おい、藤木遊作は何をやっている!エースモンスターを無駄に強化ばかりして、遊んでいるのか!あれだけのリソースがあればもう相手を倒せているのではないのか!」

     コンマイ社社長は苛立った様子でインカムを通し本社のオペレーターと会話している。デュエルに疎い彼でも、遊作の戦法が過剰であることは見て取れるようだ。

    「まあまあコンマイさんよぉ、いいじゃねえか。エキシビジョンマッチなんだろ?このくらい派手なほうが盛り上がるんじゃねーの?」

     対面に座る男はまるで他人事のような口ぶりで吐き捨てる。

    「すぐに不動遊星にとどめを刺せと伝えろ!これ以上のパフォーマンスは不要だ!」

    「あれをそう簡単に刺そうと思ってとどめを刺せる相手だと思ってるのか、コンマイさんは」

    「何が言いたい。レイ・ベクター、あなたはわが社に味方すると言いましたよね。だがその口ぶりでは、不動遊星が勝つことを望んでいるようだ」

    「とんでもない、俺の望みは不動遊星と仲間の破滅だけさ。ケケケ…」



    ◆5 遊作・2ターン目 メインフェイズ2


    『遊星!聞こえるか!』

     遊星のヘルメット内に聞きなれた声が響く。また無線が戻った。海馬からの通信だ。

    「海馬!何があった!」

    『黒咲からだ。どうやらコンマイ本社のオペレーティングシステムのセキュリティーは、デコード・トーカーの戦闘破壊によって解除されるらしい。その遊作という男が仕掛けたんだろう』

    「何っ、あれの戦闘破壊だと!?」

     遊星は頭の中で、対象に取る効果への耐性と高すぎる打点をすり抜けるために、トリシューラによる除外での突破を考えていた。あれを真正面から突破するには状況が苦しすぎる。

    『遊星さん聞こえますか!藤木遊作の手がかりが見つかりました!』

     次は孔明の声だ。もちろん海馬にも聞こえている。

    「ああ、俺もやつの決闘スタイルと操作の癖からなんとなくだがわかってきていたところだぜ」

    『さすがです遊星さん。彼の正体はADS世界ランク1位のオンライン専門プレイヤー、PLAY MAKER で間違いないでしょう』

     ADSとはオンライン上でデュエルを楽しめるフリーソフトだ。現実でのカードを持っていなくても自由にデッキを組むことができ、海外限定のカードや未発売のカードなども使用できる。非常にポピュラーなソフトで、世界中から親しまれている。デュエル賭博の対象にもなっており、海外では競馬デュエルや競艇デュエルのようにプロ選手によるリーグも形成されている。PLAY MAKERはそのトップ選手だ。

     PLAY MAKERは頑なにネット上での活動とADSに拘り、公式大会など現実のデュエルには一切関わらないプレイヤーとして有名だ。ADS以外ではデッキ紹介動画の投稿など、一貫してネット上での活動に徹しているため、だれも正体を知らないのだ。

    「やはりな。シャカパチもしないし、猿みたいにキレないし、煽りも飛ばしてこない。それにあの操作の癖や無駄に打点を上げたがるところはADSプレイヤーに特有のものだ。プレイスタイルも王道ビート系と称されるPLAY MAKERのスタイルと一致する。だが、気がかりなのはなぜADSのトッププレイヤーがコンマイのデバッガーになっているかだ」

     そう。ADSはコンマイが配信しているソフトではなく、非合法の存在なのだ。コンマイに振り回されず純粋にデュエルだけを楽しみたいという意志のもと作られたADSは、カードを買うという行為を真っ向から否定するものであり、コンマイからしてみれば営業妨害以外の何物でもない。
     お互いに憎しみ合っているはずの存在が手を結ぶということがあり得るのだろうか。遊星は何者かが裏で手を引いていることをすぐさま感じ取った。

    『PLAY MAKERのツイッターアカウントやブログでもそのような告知はされていませんでした。経緯は全く不明と言わざるを得ませんが、今はそれよりもデコード・トーカーの破壊です!遊星さん、頼みますよ!』

    「ああ!」



    「無線が戻ってきたか。お友達と何を話してるのかな。まあいい、俺はメイン2!手札からサイバース族モンスター、RAMクラウダーを召喚する!」

     この瞬間、黒庭の効果で遊星の場にトークンが生成される。

    「RAMクラウダーの効果!場のモンスターをリリースし、墓地のサイバース族モンスターを蘇生する!俺はトークンをリリースし、ビットロンを守備表示で特殊召喚!さらにリンクスパイダーとRAMクラウダーを墓地に送り、サイバース族モンスター2体でリンク召喚!現れろ、ハニーボット!」

     遊作の場に新たなリンクモンスターが生成される。左右に広がる光の矢印を従えて、蜂を模した女性型のロボットのようなモンスターがデコード・トーカーのリンク先に現れた。元々の攻撃力は1900なので、黒庭の効果により半減して950打点となる。

    「このカードのリンク先に存在するモンスターは対象に取られず、戦闘では破壊されない。このカード自身に耐性はないが、俺はハニーボットとパワーツールの間に作った空きゾーンに死者蘇生でRAMクラウダーを特殊召喚!」

    「待て!自分、テキスト確認いいすか!」

     この瞬間だ!遊星は一瞬の隙を突き、待ったをかけた。ハニーボットの画像をタッチし、テキストの詳細を確認する。そしてこれは、表向き単なる確認でしかないが、相手の勢いに水を差しつつ自分が戦略を練る時間を得るという、テンポアドに係わるテクニックでもあるのだ。一般に「遅延」と呼ばれ、YPの間では広く知られた技術だ。遊星ほどのYPにもなれば相手がテキスト確認からの遅延を使ってきても、相手のテキスト確認を急かすことで逆にテンポアドを取り返すテクニックを持ち合わせているが、この遊作がPLAY MAKERならADS専門プレイヤーの彼にそのようなテーブルゲーム特有の技術はないだろう。

    (ハニーボットはリンクマーカーで隣接する両隣のモンスターに戦闘破壊と対象に取る効果への耐性を付与するカード。今はトークンとRAMクラウダーを守っているだけだが、このカードは明らかに2体並べることで切り込み式のロックを形成することを想定したモンスターだ。素材はサイバース族2体で、やつのフィールドにはビットロンとRAMクラウダーがそろっている。そして、デコード・トーカーとデルタを形成するハニーボットとパワーツールの間に2体目のハニーボットを召喚すれば、ロックを完成させながらパワーツールすらも守ることができる。つまり、動くならここだ!)

     この間わずか2秒!遊星は遊作が次のコマンドを実行するよりも早く、パネルをたたいてトラップを発動した!

    「いまだ!俺はトラップカード、デモンズチェーンを発動!ハニーボットを対象に、その効果を無効にする!」

     もしも遊作が2体目のハニーボットを召喚すれば、対象に取ること事態が不可能になってしまう。そして、すでにデコード・トーカーが持っている、対象に取る効果を無効にし、破壊にする効果も今ならすり抜けられる。

    「遊作!デコード・トーカーの効果を使うか」

    「くっ…!」

     デコード・トーカーの効果はリンク先のモンスターをコストに要求する。つまり、パワーツールを捨ててハニーボットを守るか、狙われているハニーボットを捨てて無効にするかだ。パワーツールはデコード・トーカーに強力な装備魔法を供給する重要な存在。その上黒庭を張る前に出したモンスターなので攻撃力が半減しておらず、戦力としてもデコード・トーカーに次ぐ。一方、ハニーボットを捨ててこのトラップを止めるという選択肢にはさほど意味がない。止めなければハニーボットは攻撃ができなくなり効果が無効になる。つまりいてもいなくても変わりはないということだ。

    「さあ選べ、遊作!お前の戦略、見せてみろ!」

    「甘いぞ遊星!俺はデモンズチェーンを止めない。これによりハニーボットの効果は無効化されるが、リンクマーカーは効果ではない。こいつが存在している限り、その両脇にはEXからの召喚が可能なんだよ!俺はビットロンとRAMクラウダーで2枚目のハニーボットを、ハニーボットとパワーツールの間に召喚!これにより、パワーツールには耐性が付与される!俺はターンエンド!」

    「引っ掛からないか、さすがに冷静だな…」



    6 コンマイ本社 黒咲と正邪

    「いけ遊星!さっさとデコード・トーカーをぶっ潰せ!」

     正邪は見張りそっちのけでディスクの中継画面に食い入っている。操作を中断せざるを得ず暇になった黒咲も、正邪を何食わぬ顔で膝の上に座らせて、それを一緒に眺めている。

    「だが、デコード・トーカーの戦闘破壊は容易ではない。闇属性だから伝家の宝刀カタストルも通用しない」

    「くっそー、私ならダークリベリオンのトリーズンディスチャージで攻撃力を半分奪って一発なのに…」

    「トリーズンディスチャージは対象を取る。デコード・トーカーの効果で無効にされるぞ。エクシーズをするまでに最低でも3回の召喚と特殊召喚が絡む。黒庭効果でリリースコストは何度でも生成される」

    「そっか…。じゃあ先にカステルかダイヤウルフで黒庭を割ってから」

    「そいつらも対象を取る」

    「だー、わかったわかった、ビュートぶっぱで全除去だ!」

    「ビュートを使ったらデコード・トーカーごと効果破壊してしまう。そうなればシステムにはアクセスできないだろう」

    「め、めんどくせえ…どうすりゃ突破できるんだ…」

    「遊星は今、それだけ難しいデュエルを迫られているということだ」





    ◆7 遊星・3ターン目


    「いくぞ、俺のターン、ドロー!俺の場にはお前が生成したレベル2のローズトークンが3体!」

     シンクロ使いの遊星にとって、これほどうれしいことはない。マスタールール4さえなければの話だが。

     遊作の場には毎ターン増える装備魔法で攻撃力10000オーバーを維持するデコード・トーカーと、装備の供給源であるパワーツール。そして、パワーツールを守るハニーボット。2体のハニーボットのうち、1体はデモンズチェーンで効果を無効化することに成功した遊星だったが、この盤面を突破してデコード・トーカーを戦闘破壊し、コンマイ本社のサーバーにかかったロックを解除することはできるのか。

    「クソっ、黒咲との合流ポイントが近い…」

     遊星たちは国道を道なりに進み、新埼玉の中央部まで出てきていた。高架の上を走る道路、遠くに見えるコンマイ本社。時間はもう残されていない。なんとかして、デコード・トーカーを戦闘破壊する方法を見つけ出さなければ。遊星の中で、戦略はあと一歩のところまで出来上がっていた。しかし、その最後の一歩に届かない。