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【ほぼ全文公開】ドラクエ開発者、ファミ通元編集長、シュタゲ作者が5時間に及ぶ激論――ニコニコ自作ゲームフェス4最終選考会の内容を掲載【前編】
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【ほぼ全文公開】ドラクエ開発者、ファミ通元編集長、シュタゲ作者が5時間に及ぶ激論――ニコニコ自作ゲームフェス4最終選考会の内容を掲載【前編】

2014-12-30 21:00
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 2014年11月30日、ニコニコ自作ゲームフェス4の表彰式が池袋P'PARCOのニコニコ本社で行われた。

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「ニコニコ自作ゲームフェス」は、インターネットを舞台に活躍する、広く自作されたゲームのクリエイターを応援するゲーム投稿のコンテスト。4回めとなる今回は、過去最多となる400以上の作品が集結、審査員からはクオリティの高さに驚きの声が上がり、大賞に加えて特別に審査員による個人賞も贈呈されたのであった。


 ――さて、それから時を遡ること1ヶ月半前の10月某日、経営統合されて間もないKADOKAWA・DWANGOのオフィスがある新歌舞伎座タワーの一角に、日本のゲーム業界を代表する錚々たる面々が集まって、なんと5時間にわたって議論が繰り広げられていた。

 彼らの名前は、スパイク・チュンソフト代表取締役会長の中村光一氏、株式会社KADOKAWA常務取締役にしてファミ通グループ代表の浜村弘一氏、そしてMAGES.代表取締役社長の志倉千代丸氏。そんな彼らが語り合っていたのはグループの経営について……では、なかった。
 なんと彼らは、多忙の合間を縫って(!)プレイしてきた選評メモを片手に、この自作ゲームフェス4の最終候補作について議論し続けていたのだ。


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 今回は、そんな御三方のご好意によって、そこで行われていた議論の内容を、ほぼ全文掲載という形で収録させていただいた。
『ドラゴンクエスト』や『シュタインズ・ゲート』などの名作ゲームを生み出してきたクリエイターや、長年に渡り「ファミ通」でゲームのレビューを続けてきた編集者が、実際のゲームを目の前にして交わした議論は、私たちが小さな頃から遊んできたゲームの数々が、いかに繊細な配慮に支えられたものであったかを伝えるものである。
 また同時に今回、最終選考に残された作品は、サンドボックス、脱出ゲーム、ハック&スラッシュ、戦闘のないRPG……などの若者から人気を集める、ネット文化と強く結びついて現れた新興ジャンルの作品が多かった。こうした”新しい世代のゲーム”の動きをいかに考えるかという視点でも、本選考会は示唆に富む議論の場となっている。

 この前編では、選考会前半の順繰りに各作品を議論していった箇所を掲載する。2015年の1月初旬に公開予定の後編(※)では、この内容を踏まえての大賞決定までの議論と、その後に繰り広げられたゲームの現状にまつわる歓談を掲載する予定である。


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(※)記事リリース当初は元旦の昼頃配信とありましたが、予定が変更となりました。大変に恐縮ですが、よろしくお願い致します。

ハイレベルな作品が集まった「自作ゲームフェス4」


ドワンゴの自作ゲーム担当者(以下、D担):今日はお集まりいただき、ありがとうございました。 
 まず、この選考会が「自作ゲーム」をどう捉えているかを説明します。 私たちは「自作ゲーム」を、いわゆる「インディーゲーム」にかぎらず、「同人ゲーム」や「フリーゲーム」などの、ネットを中心に発達したゲームまでを含んだ、広いカテゴリーとして捉えています。
 その結果、このアワードは様々なゲーム文化が衝突しあうものになっており、最終選考に残った作品たちも、脱出ゲーム、サンドボックス、戦闘のないRPG、ハック&スラッシュなど、近年インターネットで独自に大きな人気を博してきたジャンルの作品が多くなっているのが特徴です。
 今回、このようにゲーム業界の一線で活躍されている方々に、自作ゲームについて議論していただくことは、自作ゲームのみならず、ゲーム文化全体にとっても意義のあるものになるだろうと考えております。今日はよろしくお願い致します。


一同:よろしくお願いします。


D担:ちなみに今日の司会進行は、ゲーマーからの信頼の厚い4Gamer.netの編集者TAITAIさんにお願いさせていただきました。

TAITAI:よろしくお願いします。今日、みなさまにはゲームのプロとしての視点で、各作品の評価・分析を行っていただければと思っております……ということでいいんですよね?

D担:はい。また、私たちは「クリエイター応援のためのプロジェクト」と、このフェスを位置づけています。そこで、今日は「こうすればよくなる」というご提案もいただきたく思います。実は、自作ゲームにはユーザーのコメントや実況を見ながら、作者が作品をアップデートする文化があります。ここにいる皆さまから"一プレイヤー"としてアドバイスをいただくのは、きっと作者にも励みになると思います。
 
TAITAI:では、それぞれの作品について触れながら、いろいろな話題のお話が聞ければと思っておりますが……まず、最終候補に残った作品群の全体的な感想としてはどうですか?
 
志倉:まず、純粋に「クオリティが高いな」と感じました。 
 
 
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志倉 千代丸(しくら・ちよまる)

7月3日生まれ。幼少期よりプログラミングを学び、後に株式会社ヒューマンにサウンドプログラマーとして入社。同社の代表作で作曲など を手がけるようになる。退社後は音楽プロデューサーとして様々なアーティストに楽曲提供などを行い、株式会社5pb.を立ち上げ、現在は 株式会社MAGES.の代表取締役社長に就任。2014年に株式会社ドワンゴの取締役にも就任。
クリエイターとして、音楽プロデュースや「カオス・ヘッド」「シュタインズ・ゲート」「ロボティクス・ノーツ」、最新作「カオス・チャイルド」を代表とする科学アドベンチャーゲームの企画・原作を手掛ける他、自身初の小説「オカルティック・ナイン」を執筆中。
また、テーマレストラン「アフィリア魔法学院グループ」、アイドル育成型エンターテイメントカフェ「AKIHABARAバックステージpass」のプロデュースを務める等、その活動は多岐に渡っている。
FM NACK5『THE WORKS』(毎週日曜・24時~)、ニコニコ生放送『電人★ゲッチャ!』(毎週木曜・21時~)』などにレギュラー出演中。

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 やはり、昔と比較して制作ツールが進化していますね。かつてはPCのスペックが低かったので、裏ワザのような手法を使って、「スプライトを持っていないのに、スプライト風に動かす」みたいな細かなテクニックの積み重ねが重要でした。しかし、現在は「RPGツクール」などがあり、こういう発表の場もある。一言でいうと、皆さんが「羨ましい」ですね。 
 かつてのゲームは、プログラマの文化でした。僕はその世代ですが、もちろんツールで作ったこともあります。しかし、当時のツールはとても自由度が低くて、同じツールで作ったものはどうしても似てしまいました。僕自身、当初はプログラマとしてやっていきたい気持ちもあったので、「こんなのを使っちゃいけない」と感じたものです。でも、今だったら使っちゃうでしょうね。できることの幅が全然違いますから。 
 
TAITAI:浜村さんはいかがでしたか? 
 
 
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浜村 弘一 (はまむら ひろかず)

KADOKAWA・DWANGO取締役 ゲームメディア担当
ファミ通グループ代表


1961年生まれ。大阪出身。
1986年、ゲーム総合誌『週刊ファミ通』(当時は『ファミコン通信』)創刊から携わる。
1992年に編集長へ就任。現在はファミ通グループ代表として、さまざまな角度から
ゲーム業界の動向を分析し、コラムの執筆なども手掛ける。
著書に『ゲームばっかりしてなさい。-12歳の息子を育ててくれたゲームたち-』ほか。
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浜村:商業的にも通用するレベルの作品がいくつか混じっていて、正直に言って驚きました。思っていたよりもずっと高いクオリティの作品が、“自作ゲーム”というカテゴリから登場する時代になっているのだな、と。 
 
TAITAI:自作ゲームって、いわゆる”インディーゲーム”とも違う文化だと思いますが、その辺はどう捉えましたか?
 
浜村:脱出ゲーム 「脱出4コマ・アンタルチカ」(以下、アンタルチカ)は、どちらかというと“インディー”寄りの雰囲気でしたよね。『ヒーロー&ドーター』も、アマチュアよりもプロに近い雰囲気があります。この2つはVitaで出ても全くおかしくない作品でしょう。

中村:まさに浜村さんのおっしゃるように、その2つは充分に売り物にできる水準ですね。でも、他の人たちにもキラリと光る部分があって、いいなあと思いましたよ。ちょっと昔の自分を思い出したりしてね(笑)。雑誌に投稿していた頃とかを、しみじみとね……。 
 
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中村光一(なかむら こういち)

1964年8月15日、香川県で生まれる。スパイク・チュンソフト代表取締役会長。高校生時代から、雑誌へのプログラム投稿者として名を馳せる。大学在学中の1984年4月9日に株式会社チュンソフトを設立。『ドアドア』『ポートピア連続殺人事件』、『ドラゴンクエスト』シリーズ(Vまで開発を担当)、『風来のシレン』を始めとする不思議のダンジョンシリーズ、『かまいたちの夜』や『街』といったサウンドノベルシリーズなどを手がけており、代表作多数。

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浜村:一方で、『ヒカリヲアビタイ』や『コクラセ』はいかにも自作ゲームらしいですね。ただ、全体を通して言えば、インディーゲームと自作ゲームの境はかなり曖昧なように思いました。 
  
TAITAI:そういえば、そもそも中村さんって、こういう賞の選考委員をされた経験はあるのですか? あまりお名前を見かけたことがないような……。
 
中村:実は、ないんですよ。頼まれたことは何度もありましたが、これまで全て断ってきました。なぜなら、僕は「作る側の人間」であり、あくまで「評価される側」だと考えていたからです。作る側の人間が評価する側に立ったら、「では、お前のソフトはどうなのか?」という問いが跳ね返ってきますからね。だから、やるわけにはいかないと思ってきました。 
 
TAITAI:なるほど、確かにそうですね。でも、ではなぜ、今回は引き受けることにしたんですか?

中村:いや。今回はこう、ドワンゴさんという断れない筋(スパイク・チュンソフトの親会社)からのお願いだったので、これは仕方がないかなぁ……と思って(笑)。 


一同:えええええ(笑)。 


TAITAI:そんな“大人な事情”が理由でいいんですか(笑)。

志倉:いやでも、それを言っちゃうと、本当は僕だって選考委員なんて引き受けたくなかったです。僕も商業ゲームの会社を経営する人間でもあるので、その立場からインディーゲームを評価しちゃうと、「上から目線」で偉そうなこといってる、みたいな見え方にどうしてもなってしまうじゃないですか(苦笑)。 

TAITAI:そうですよねぇ。
 
中村:まぁでも、「一度くらいならいいか」と思って引き受けてみたんですけど、実際にやってみると、他人の作品を見てコメントするのも、なかなか面白いものだなと思いました。僕としては、キャラやサウンド、プログラムのような部分よりは、ゲームとしての面白さや構造を見たいと思って、そういう部分に注目して評価させてもらいました。 
 
浜村:中村さんの選評は事前に読ませていただきましたが、実際に作ってきた方ならではの、本当に素晴らしい視点があちこち散らばっていて。これは制作者に役立つだろうなと思いましたよ。 
 
TAITAI:そういえば、今回、皆さんには点数と選評を事前につけていただいています。

 選考の進め方としては、前半でまずこの内容を踏まえながら、個々の作品について議論していきたいと思います。そして後半は、前半の議論を踏まえて各々の作品を比較し、大賞を決定いたいと思っています。あとは……適度に雑談も含めながら、インディーゲームの現状や、商業ゲームは今後どうあるべきか――みたいな議論などもしていければと思っております。
 
D担:それでは、まずは選考委員の皆さんが、事前につけた点数をお見せいたします。(パワポを映す)
 
 
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当日、会議室のディスプレイに映されたパワポより。 


(全員が凝視) 
 
志倉:へえー。 
 
浜村:大体、みんな近いですね。なるほど。 
 


※ ここから議論される最終選考作品は、以下のリンクからダウンロード可能です。自分でプレイしながら読んでいただくと、議論の内容もより一層楽しめるかと思います。(D担)



1.『ヒカリヲアビタイ』――若者に人気の新興ジャンル「サンドボックス」 
 
TAITAI:では、各作品について順に議論していければと思いますが、まずは『ヒカリヲアビタイ』から始めていきましょう。D担さん、最初に本作の背景を説明していただけますか。
 
 
『ヒカリヲアビタイ』 "よしさん"さん作 (DLはコチラ
中村講評
ちゃんと評価しようとすると、かなりの時間を要すると判断しました。このゲームはテラリアやマインクラフトと比較して評価すべきなのですが、私は二つのゲームを十分にプレイして、理解しているとはいえません。 よって、私の立場は完全ニュートラルとし、他の二人の意見に従ずるという形にさせてください。評価は、他の二人の平均値でお願いします。
浜村講評
SFテイストのサンドボックスゲーム。取る、加工する、使うの基本的な流れが、独自の世界観でしっかりと構築されている。欲を言えば、もう少し操作性が良ければな。
志倉講評
マインクラフトでもなく、テラリアでもなく、海原川背でもなく、もちろんメトロイドでもない新しい作品。サンドボックス型のゲームとしては敵キャラも多く、空中ブランコのようなギミックも含めアクション性はかなり高め。ワイワイガヤガヤとマルチプレイでの対戦や、超巨大生物との戦いなどは賑やかで楽しい。また最初にチュートリアルもありとても丁寧な作り。ただ、サンドボックスゲームとしての面白さは、操作性というか手触り感みたいな部分が何より重要で、そういう意味でのサクサクはもう一つか。もちろん慣れもあると思うけど、特にブロック選択の当たり判定はちょっとシビア。
 
 
D担:この『ヒカリヲアビタイ』は、ニコニコユーザーの間で根強い人気のあるゲームです。開発者の方は週に1回、ニコニコ生放送で進捗を報告していて、なんとコミュニティメンバーは6500人に達しています。既に固定ファンが非常に多い作品です。一方で、投稿された動画も大変に雰囲気が素晴らしく、初期の頃には「これが大賞じゃないか?」との声もユーザーの間では上がっていました。
 
 ジャンルとしてはいわゆる「サンドボックス」です。この作品の面白いところは、『テラリア』や『マイクラ』と違って、とにかく下へ下へと潜っていくゲームであることです。武器を装備していくのも特徴でしょう。しかし、実は第二回にこのジャンルで大変に野心的な作品が大賞を獲っており、賞に推す場合にはそれとの比較が必要になるかと思います。ただ、このジャンルが若いユーザーに大人気であることは、こうした話からも窺えるかと思います。



自作ゲームフェス2の大賞受賞作『Sanxen World』。ブラウザで遊べるようになっており、他のプレイヤーとマップのデータが共有される。(参考) 



TAITAI:最近は自作ゲームでもチームで作っているものが多いですが、これは、一人で作っている作品なんですよね。 
 
D担:はい。職業プログラマの方が作っているようです。コミュニティ名は「この星の一等賞になりたいの、ゲーム制作で俺は。そんだけ!」です。 
 
志倉:この『ヒカリヲアビタイ』というタイトルには、なにか意味が込められているのですか? 
 
D担:おそらく、長くプレイして潜っていったときに、「このままでは死んでしまう、上に行って光を浴びたい!」となるのだと思います。 
 
志倉: 「陽の目を見たい」という意味かと深読みしておりました……(笑)。  
 
 

「常に同じテンポでプレイできれば、触っていて気持ちよくなる」(中村氏) 

TAITAI:しかし、みなさん、評価がちょっと厳しめですよね。

浜村:最初は流れが良さそうに見えるゲームなんですよ。でも、実際にプレイしてみると……どうもとっつきにくいんです。志倉さんも選評に書いてますが、ブロックの当たり判定も問題で、1個選択してから壊すまでに「まだかな」というくらいに時間がかかる。そこが惜しい。
 

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レーザーでブロックを壊すのに比較的、時間がかかることが議論にのぼった。


志倉:「サンドボックス」は、サクサク進むのが命ですからね。 
 
浜村:そうそう。ブロックを1個壊すときの、その壊れ方さえ気持ちよければ、もうそれだけで楽しめちゃうジャンルなんです。そこに時間がかかることだけでも、大変に損しているように思いました。 
 
TAITAI:中村さんはどうでしたか? 
 
中村:そうですね。極端な言い方をすれば、この手のゲームはまさに「サクサク」さえあれば、十分に間が持つところがあります。その意味では残念ながら、操作性にも難があって、なかなか上手く先に進めないんです。「ああ、この操作で全部進めると、とんでもなく時間がかかってしまうな」と思ってしまいました。 

 自分の例で恐縮なのですが、例えば「不思議のダンジョン」のシリーズで、僕はBダッシュでマップを回れるスピード感とアイテムを選ぶ際の速度に、もう徹底的にこだわり抜いたんです。特にシリーズ初期は、そうでした。 
 
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TAITAI:ゲームの“手ざわり感”みたいな部分のお話ですよね。

中村:そう。コンピュータゲームは中身のルールも大事だけど、まずは触っているだけで気持ちいいことが重要なんです。それまでのローグ系のゲームで、あれほど高速でダンジョンを進む作品はなかったと思います。でも、あのゲームを繰り返し遊べるのは、ガーッとスピードを上げて走り回るのが気持ちいいからなんですよ。

 もしあれが、必ず一歩一歩進んでいたらと考えてみてください。とても何回もプレイできない。もちろん、これはルールのような内容の面白さとは別の話ですが、やはりゲームには求められるんですね。
 
TAITAI:その辺のバランスは、制作の際にどういう風に配慮するのでしょうか。いきなり脱線気味の質問で恐縮ですが、おそらくゲーム制作の本質に触れる話題だと思いますので……。 
 
中村:昔はコンピュータが遅かったでしょう。だから、アセンブラでいじっていたのですが、それでも動きに限界があったのですね。ドラクエ1であれば「動くのは1ドットずつが限界かな」とか「ウィンドウは1/64秒で1行かな」とか、そういうことを考えるのが重要な時代でした。 

  その頃にいつも考えていたのが、常に同じテンポでプレイしてもらうことでした。遅いなら遅いなりに、速いなら速いなりにリズム感さえしっかりしていれば、触っていて気持ちいいのですよ。逆に、たまたま処理が早く行くときはそのまま行かせてしまったり、重くなった処理でも放置してしまったりすると、プレイヤーにストレスが溜まります。


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 もちろん、作り手は「あ、ここがストレスになってるな」と分かるんですよ。でも、普通のお客さんは、単になんとなく無意識にストレスが蓄積して――あるときに「ああ、イヤだな。やめよう」と思うだけです。 
 そこがしっかり処理されていて、なおかつ面白ければ、触ってるだけで楽しいですね。宮本茂さんの作るゲームなんて良い例ですよ。マリオがまさにそうだし、ゼルダなんてガサガサ切ってるだけでも楽しい。まあ、その辺を突き詰めると、コントローラーやタッチパネルなどのデバイスの問題も入ってくるのですけどね。 
 
TAITAI:例えば、アドベンチャーのようなジャンルでさえも、実はボタンを押すテンポ感やテキストを切るタイミングが重要という話がありますよね。志倉さんは、どう思われますか。 
 
志倉:まさにその通りです。昔からそうですが、基本的に画面の中でできないことはありません。どんなことでも可能である――しかし、重くてもよいならば、です(笑)。回転機能がない時代だって、僕たちはプログラムで回転させることはできましたよ。でも、”激重”なんです。僕なんて"へっぽこプログラマ"でしたから、理想は高く掲げるのだけど、重くて重くてゲームにならず、いつも挫折していたものです。
 ただ、そういう意味では、この作者はJavaを使ってますよね。現代は高級言語より更に上にある言語とでも言うような「ツール」という存在が普及した時代です。その中で彼は、きっと昔からの「プログラマ魂」を持った作り手なのでしょう。当然ながらカスタマイズの「余地」は、ツール製の作品よりも沢山あるはずですよ。そこに期待したいですね。  
 
 
「欲張った部分は、全部手ざわりをよくしなければいけない」(志倉氏) 
 
TAITAI:ちなみに、志倉さんは選評で「マインクラフトでもなく、テラリアでもなく、海原川背でもなく、もちろんメトロイドでもない……」と書かれてましたね。 
 
志倉:今の若い子は、『海原川背』は知ってるかなあ(笑)。でも、「ここ、ラバーアクションをさせたいんだろうなー」とか、このゲームからはやりたい事が色々と伝わってくるんです。きっと、この作者さんは欲張りなんでしょうね。でもやはり、その欲張った部分は、全部手ざわりをよくしなければいけないんですよね。
 
浜村:でも、これはこれでありじゃないですかね。サンドボックスなのに、SFがあって、武器が手に入って、ロボットが出てくるという。だから、もっとちゃんと作りこめば、商業でも戦えると思うなあ。 
 
 
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選考会の最中、ドワンゴの自作ゲーム担当者がゲームをプレイし続けて、その画面を見ながら議論が行われた。
 
 
志倉:よく見ると、ちゃんとアニメーションを入れてるんです。待機モーションなんてこのゲームにはいらないのに、なぜか「ふうふう」と息を吐く動作を入れている(笑)。そういうところにも「こだわり」を感じますよね。僕は、この人のゲーム制作に賭ける意気込みは高く評価したいですね。  
 
TAITAI:志倉さん的には、ツクール系の作品ではないところを高く評価されているんですね。


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志倉:ええ。それに、このゲームって巨大な敵と戦ったりするシーンもあるでしょ? あれがオンラインでサクサク進みながら、みんなでガヤガヤと遊べたら実に楽しいと思います。『R-TYPE』3面の巨大戦艦みたいなものじゃないですか。  
 
浜村:はっはっは(笑)。 
 
志倉:画面に収まらないサイズの敵キャラって興奮しませんか(笑)。大好きなんですよ。そこも、個人的にちょっと惹かれたところでした。  
 
 
「"サンドボックス"の登場はソーシャルがあってこそ」(浜村氏) 
 
TAITAI:志倉さんって、『マイクラ』や『テラリア』は結構遊ばれるのですか。 
 
志倉:ええ。『マイクラ』はそこそこやってますし、『テラリア』もiPhoneでやってます。
 
中村:なんと、ありがとうございます……って、そういう場じゃないですね(笑)。 
 
志倉:いえいえ(笑)。「サンドボックス」がいいのは、遊び方が自由なことですね。例えば、ディズニーランドを作ってみんなを招待して、その中でルールを決めてゲームだってやれてしまう。そこはもう、このジャンルの遊び方の広さだし、深さです。でも結局は何度も言ってしまいますが「手ざわり感」が全てなんですよ。それが弱ければ、モチベーションは担保できません。  
 
浜村:「サンドボックス」というのはインターネットが出てきて、動画サイトやゲーム実況などのソーシャル的なものが登場して、初めて可能になったジャンルだと思いますね。だって、自分が表現したものを簡単に見せて、評価してもらえる環境があるからこそ、楽しいわけでしょう。 
 
志倉:だから、昔からインターネットがあったら、きっとファミコン版の『ロードランナー』はもっと流行ってましたよ。   

浜村:そうだよねえ、自分でコースを作れたよね。 
 
TAITAI:ファミコンの頃にはコンストラクション要素が入っているゲームが結構あったんですよね。任天堂の『レッキングクルー』とか。 
 
志倉:『エキサイトバイク』なんてのもありましたよね。まあ、僕は"インターネット反対派"なんですけどね。今の世の中は刺激が多すぎると思うんですよ。まぁ、ネット仕事が多いくせに何を言ってるんだという感じですが(笑)。  


2.『コクラセ』――女子中高生に大人気のジャンル「戦闘なきRPG」
 
TAITAI:次は『コクラセ』なのですが、このゲームは皆さん、色々と言いたいことがありそうです。ただ、作った方の背景が面白いので、まずはD担さん説明を。 
 
 
『コクラセ』 galantiさん作 (DLはコチラ
 
中村講評
2Dのマップ上で複数のキャラクターを同時に操りながら、「コトノハ」システムを駆使して進めていくというドラマ、楽しかったです。世界観のベースとなっている独特のキャラクターも素敵でした。今回の候補で、最も素人が作った作品ならではの「光る原石」のようなところがあるタイトルでした。「気になる女子に告白をする」という目的や、学校という設定。なんだか不必要に広いマップ。投げ出された難易度など......。
ただ、難易度については、やはり気になりました。最初は(たぶん)ちゃんとバランス調整されていて、なんとか進めることができました。とはいえ、ユーザー視点だと、ちょっと厳しいかもしれません。作り手視点で「答はこうなるよなぁ~」と考えて、なんとか進めました。

ただ、むしろ気になったのは、一回目のプレイではほぼクリア不可能に近い難易度に、急に変わるポイントがあることです。もちろん、難易度そのものが高いことは作り手の主義主張なので、いいと思います。しかし急激に、勝手に難易度を変えてしまうのは、よろしくないと思います。こういうときは、「こういう風に変わっていきますよぉ~」みたいな感じを、少しずつにおわせる設定を作るのが必要です。
正直に言います。実はドワンゴの担当者から「解」をもらってはいたのですが、それを少し追ってみて、私はそこでやめてしまいました。

浜村講評
ゲームシステムとしては、なかなかに個性的。ザッピングをさせながら、物語を楽しませるアイデアは悪くないと思う。
志倉講評
飛び込んで来る事件はとても小さく、成功した時の報酬は宿題という圧倒的に可愛いスケールの作品。『合言葉でのやりとり』『自分の中で考えをまとめる』などに使える『コトノハ』はとても汎用的に使える良いシステムで、これがまた厨二心をくすぐる。さらにこのゲームの最大の特徴とも言える『ヒトカエ』は物語を立体的に描き出す効果があり、それぞれの立場でフラグを立てていく楽しさが〇。まるで華麗なる秘密探偵グループを彩るような軽快な音楽は、事件規模とのミスマッチも含め逆にアクセントになっていて、気分を盛り上げてくれる。
 
 
D担:作者は海外在住の男性と、19歳の絵師の女性です。同じチームで第二回の大賞候補となった『Chime』という作品は、ゲーム実況で人気を博しています。本作ほど深く取り組んではいなかったものの、ザッピングシステムを採用しています。 

  この作品は、『青鬼』に代表される、言わば「戦闘なきRPG」の流れにおける、今回の代表的な作品といえると思います。このジャンルには、RPGツクールの追跡機能などを上手に組み合わせて、謎解き物語を構築した作品が多く、ゲーム実況でも50万~100万再生程度まで達するヒット作品は決して少なくありません。 

TAITAI:本作は、出版社からの注目度も高いのも特徴ですよね。


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19歳の絵師どろみずさんの絵。


D担:そうですね。現時点でいくつかの会社から賞の候補に検討している旨を告げられました。近年台頭した「ボカロ小説」を手がけていたり、最近は自作ゲームのノベライズに乗り出している出版社です。現在のニコニコ動画のメイン層であり、また自作ゲームブームの盛り上がりの大きな担い手でもある、10代の女子中高生に強く響くと判断したようです。 
 
TAITAI:ただ、そういう注目を浴びながらも、本作に対する皆さんの評価はかなり辛口ですね。実際、作品としてはかなり荒削りではあります。みなさんの感想を聞いていきたいと思います。

 
「商業の人間が思いつかないアイディアが飛び出してくる」(中村氏) 
 
浜村:テーマも、アイディアも、発想も斬新。まずは面白い作品だと思います。でも、なんだか余計なところでストレスが溜まるんです。例えば、「なんでこんなにフィールドが広いんだろう?」と思いました。ザッピングがあって、スピード感のある展開なのに、空間の移動が長すぎるのです。無駄に広い。それで「もういいや」となってしまうんです。 
 
志倉:「走る」の機能があったから、まだ良かったですよ。なかったら厳しかったですね。  

浜村:この作者さんは、「学校って広いものだよね」という発想で作られているのではないでしょうか。でも、人を上手に配置して情報を集めさせるようなやり方は可能なのですよ。 
 
中村:そういう細かい部分での難点は、いくつもあるのですね。学校への入り口の場所なんかも「あれ、どっちだろう?」となりますね。入れるドアと入れないドアの違いもわかりづらい。他にも、例えばマップの端っこで画面が遷移するのかも、毎回わかりづらい。 

 
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ゲーム開始直後に廊下を歩いていると、この骸骨の模型にビビる。


志倉:画面の端を切りっぱなしなのはマズイですね。当たり判定のありそうな木なんかを一本置いておくだけでも違うんですけどね。ちなみに、僕が気になったのは、秘密基地に入る前に途中の骸骨の置かれた鏡の部屋に入れてしまうことです。「いや、基地の前に骸骨を隠そう」みたいな(笑)。これでは、部屋に入れたときの驚きがないのですよ。   

中村:その辺は、いかにも素人の方が作った作品らしいところです。ところが、一方でザッピングの使い方のように商業の人間が思いつかないアイディアが飛び出してくる。「コトノハ」のシステムも大変によくできてますよね。志倉さんの言うような「事件の小ささ」も、僕らの発想からは出てきにくいです。
 
 そういう部分を、もっともっと磨いていけば、ずっと良くなるはずだと思いました。その意味で「原石」という言い方をしました。 
 
浜村:この作品は「惜しい」んですよ、実に。 
 
TAITAI:僕も例えば、ウィンドウを挟まずにボタンひとつでキャラを切り替えられたり、使用キャラの顔を画面に出して誰かひと目で分かるようにしたり、という工夫は欲しいと感じました。全般的に、作者の頭の中では当然でもプレイヤーには分からない、不親切な部分が多いのですね。ただ、この辺ってRPGツクールの制約による問題ではないんですか?
 
D担:いえ、RPGツクールでもっと丁寧に作られた作品は沢山ありますから、違います。 
 ただ、この作者はドイツ在住の方で、ネット上にあるRPGツクールのコミュニティにあまり参加されていない気がします。コミュニティに参加していれば簡単に得られる話題や技術を知らないように見えます。実際、現在のRPGツクール作品は大抵いくつかの傾向に収まるのですが、この作品は何にも似ていません。しかし、その分だけ最も独特な使い方をしています。 
 
TAITAI:なるほど。ただ、逆に言えば問題点さえ直せば、可能性はかなりある作品ですよね。
 
 
「ラリホーを覚える前に"まどうし"にかけられる必要がある」(中村氏) 
 
中村:うーん。個人的に気になったのは、難易度が突然カクンと上がることなんですよ。 

 何か新しいことをさせるためには、先に説明を一つ入れるのが大事なんです。例えば、ドラクエで言えば、自分がラリホーを覚える前に、先に"まどうし"にラリホーをかけられて「あ、これは眠る呪文なんだ」と体験するのが必要なんですよ。こういう順番で設計すれば、どんどん呪文が増えても大丈夫です。“設計の順番”は、謎解きをするゲームでは特に重要ですね。この順番を守らないと、仮になんとか「解けたぞ!」となっても、プレイヤーの快感に繋がりません。 
 
TAITAI:まさにゲームデザイン的な考え方ですね。

中村:はい。そういう配慮があれば、格段に遊びやすくなると思います。選評にも書きましたが、僕は最後の告白日まで行けなかったんですね。なので、僕としてはこれ以上にコメントをするのは難しいですね。 
 
D担:ただ、このゲームって、ラストは大変に巧い展開になっているんですよ。(実際にプレイして見せながら)「コトノハ」システムを上手に使うと、「風が吹けば桶屋が儲かる」式に配置しておいたキャラクターが動いて、伏線がどんどん回収されていき、大団円になります。 


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大団円の箇所の実況動画はこちらから。
 
 
中村:なるほどなあ、ここまで来れなかったのが残念ですね。 
 
TAITAI:やりたいことを説明されると、「おお!」となるんですよ。でも、ここまで辿り着くのが難しいですね。 
 
志倉:アドベンチャーゲームにおける物語の面白さは、伏線の張り方とその回収にありますからね。コツは、最後に向けた大きな伏線を回収するまでに、小さな伏線をいくつも回すことです。もうひとつ大事なのは、序盤に伏線をぽんぽんと上手く回しつつ、同時にチュートリアルも進めていくことですね。これをやらないと、どうにもプレイヤーがつまづいてしまいます。

 でも、このゲームの点数が一番高いのは僕なんですね。やっぱり、この小さい世界はいいと思いますし、中二病力も高いですよね。なにせ、ゲームのスタートが「合言葉」ですからね(笑)。


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「ザッピングらしさがないんです」(志倉氏) 
 
TAITAI:ザッピングの元祖である『街』の作者として、中村さんは気になった点は他にありますか? 
 
中村:ジブンノ・ミンナノ・イアワセと、3つの種類がコトノハにあるでしょう。でも、僕は「ミンナノ」が不要な気がしました。ザッピングを考えるなら、むしろ「ミンナノ」がなければこそ、「イアワセ」の意味合いが出てくる構造があると思います。 
 
TAITAI:個人的にはもっとキャラを切り替えるギミックを活かした小さな仕掛けを散りばめてほしかったですね。実は切り替えの面白さを活かしたギミックがあまりなくて、順に移動する場面が多いのは気になりました。


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志倉:ザッピングという仕組みは、伏線を回収していく物語に向いてるんです。それがスピーディな楽しさと結びつくんですね。例えば、中村さんの『428』でタワレコの倉庫に閉じ込められるでしょう。そうしたら、すぐに「ここであの人物で鍵を開けておけば!」と思うじゃないですか。もう、すぐに視点を変えたくなるんです。この作品は、そういうシーンをもっと序盤にドンドン入れて欲しかったですね。  
 
中村:あと、他の作品にも感じたことなのですが、皆さんの作る物語は、画面の中のキャラが小さいんです。だから、沢山キャラが出てくるのに、どれがどれだかわかりづらい。パッと見てすぐに誰か分かりたいですよね。キャラクターの意味合いが大きいような物語を作っているわけですから。 
 
TAITAI:ううむ……次々に「こうすればいいのに」という感想が出てくる作品です。しかし、皆さんの話を聞いていると、優れたアマチュアとプロのクリエイターの間にある差というのは、まさに自然に状況を理解させるための一手間にこそあるのかもしれませんね。 
 
 
3.『アンタルチカ』――ネット発のゲームジャンル「脱出ゲーム」 
 
TAITAI:次の『アンタルチカ』は、事前の評価で最も点数が高かった作品ですね。 
 
 
『脱出ゲーム 「脱出4コマ・アンタルチカ」』 足立工業さん作(DLはコチラ

中村講評
4コマ漫画の内容を書き換える(?)ことで、グッドストーリーに導くというアイデアは素敵ですし、また分かりやすいルールだと思います。素敵なグラフィックと世界観、そしてシナリオで、簡単に入り込めます。 ......ところが、いざ解き始めると意外に難しい。最初のパートから、つまってしまいました。特に、謎の設定に無理があります。別にそのロープはそこにある必要ないじゃん......とか、なんでそのコンセントケーブルがそこにあるの? という感じになってしまい、結局は画面に向って、トントンと色々なところをタップしまくるという感じになりました。大本のアイデアはとても良いと思うので、謎の設定の仕方にもう一工夫欲しいです。 あと、今、ダメになっている状態(穴に落ちているとか、転びそうとか)からちゃんとした状態に戻してあげるというのは、結果として完成された4コマ漫画が想像できてしまい、つまらないものになってしまうのも残念です。エンターテインメント性という意味では、完成された4コマが、まったく想像できなかった面白い結果になるように、全体として設計する方がいいでしょう。
浜村講評
4コマ漫画形式で脱出ゲームを作るというアイデア自体が、とても新鮮。一話完結なので、飽きが来ない作りになっている。グラフィックのセンスも良く、ストーリーとしても笑えて、少し泣ける。とても完成度の高い作品だと感じます。
志倉講評
これはもうインディーズゲームじゃないでしょう。各種設定、グラフィック、音楽、UI、操作性その他どれをとっても逆に出来過ぎていて可愛げが無いレベル。あ、もちろん良い意味で(笑)。まず4コマ漫画という設定がナイス。いちいちタイムマシンに乗って過去へ行かなくてもコマを巻き戻せば良いのですから、このアイデアは素晴らしいです。なにより時間を操作する物語の描き方として新しい。システム的には古き良きADVゲームを思い出す仕様。フラグを立てるとリアルタイムにどこかのコマが変化するので、間違い探し的な要素も楽しめます。
 
 
D担:この作品は、4コマ漫画を書き換えていく「脱出ゲーム」です。このジャンルは、ウェブブラウザから人気に火がつき、現在はスマホのインディーゲームでも大人気のジャンルです。今回も投稿がいくつかあり、本作はその代表的な作品でした。 

 ネット上ではYouTubeで、キヨさんとマックスむらいさんが紹介しており、20万再生(※ 選考会の時点)に達しています。また、既にファミ通賞、IDGA日本賞、PS Loves indies賞が決まっています。やはりUIの良さや、このフォーマットへの評価が高いようです。こちらも作者は職業プログラマの方で時折、少人数でインディーズの制作をしているようです。 
 
志倉:てかこれ、完全に商業作品ですよね。なんで入ってるんですか? これが許されるなら、僕もVitaで作った作品を応募するよ(笑)。   
 
D担:一応、海外では独立系の開発会社が作ったゲームもインディーズですし、こういうスマホで落とさせて広告でマネタイズするような作品も、日本ではその文脈に入るだろうと判断しました。 
 
志倉:なるほど。範囲広いですね。  
 
D担:あと……このゲームの場合は、「脱出ゲーム」という明白にインターネットの文脈で育ってきたジャンルを背負った作品だったのは大きいです。最終選考で残された理由の一つは、その歴史におけるこのゲームの意義でした。
 
 ただし、実は最終選考には残らなかったのですが、他に法人が開発した商業アプリの応募がありました。小さな会社の少人数制作で、海外のインディーズの基準ではインディーズと判断しましたが、この辺は次回に向けて議論するべきことかもしれません。 
 
 
「可愛げがないくらいに、よくできている」(志倉氏) 
 
TAITAI:ひとまず議論を始めたいと思います。ちなみに、司会ながら所感を一つ言ってしまうと、大変によくできているのですが、「何かが足りない」作品という印象があったのです。 
 
志倉:商業的な作品として見ると、そうですね。でも、インディーの作品としては、もう可愛げがないくらいに、よくできている(笑)。  
 
TAITAI:ただ、そんな"もやもや"が、中村さんのコメントを読んで晴れまして……。とくに「クリアしたときの完成された4コマ漫画が、つまらないもの(普通の絵)になるのはよくない」という指摘には唸ってしまいました。これは、さすが商業のプロの視点だな、と。 
 
中村:やはり、最後の形を見たときに、「なるほど、そうだったのね」と意外性もあってニヤリとできたら、嬉しいじゃないですか。ここまでよくできていると、ついそこまで求めてしまいますね。 

志倉:確かに、そっちのほうがいいですね。解決したと思ったら、主人公が「これじゃ、4コマ漫画の主人公なのに笑いが取れねえよ、もっとダメにしてくれよ!」とか要求してきたりとか、そんなのもアリですよね(笑)。  
 
中村:あと、ロープなどがある場所にあまり脈絡がないのは気になりました。それが1〜2つ程度ならいいのだけど、この作品は全体的にそうなんです。特に詰まったのが、ロフトに行くところです。なかなか気づけなくて、時間を費やしました。結局、最後はひたすら画面を押して探すことになってしまって……システムの発想はすごく良いのですが、詰めが甘いのです。 


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画面を上下にスクロールさせて、コマの内容を変えていく。


浜村:作品そのものは、非常にハッタリがよく利いているのですけどね。4コマで見せて、時間を戻すという発想が、もう秀逸。しかも、それがスクロールさせて戻す動きとつながっている。とてもスマホ向きのインターフェイスですよね。スマホの文法をよく理解して、アドベンチャーゲームに落としてみせた作品です。まず、見たときに「これは凄いね」となりますよ。
 
 ただ、そんなふうに最初の印象点はとても高いのですが、確かにアドベンチャーとして見ると「なぜここに?」となるのは多かったですね。 
 
中村:謎解きで重要なのは「意外性」と「納得感」です。王道のミステリって、最も犯人らしくない人が犯人になるでしょう。その「なぜだ!」と思わせてくれるのが、「意外性」です。一方で、なんとなく解きながらイメージが湧いてきて、そして試してみたら正解――そうなると、今度はユーザーは「ああ、気持ちいい。思ったとおりだ」と満足できる。それが「納得感」です。要は、プレイヤーが解いたときに「なるほど」と思える謎が必要なんです。コマンドを全部試したら正解がわかった、というのではダメなんです。 
 
志倉:これは”鬼タップゲー”ですよ。「ここだ!」と思わない場所でも、とにかくタップする。『iEscaper』というスマホの人気アドベンチャーゲームも鬼タップゲーで、それに慣れていたから、僕はもういきなり端から順番にポンポンと指で打っていきましたが(笑)。  
 
TAITAI:やはり、スマホの「脱出ゲーム」はこういう解き方が多いですか。 
 
志倉:多いですね。でも、昔のアドベンチャーゲームでも、上から順番にカーソルを合わせて、ひたすら押していくのはありましたから。適当にロッカーを開けたらロープが出てきて、「ちょうど欲しかったやつだ!」みたいな(笑)。

 ちなみに、僕は最初のコマに戻って4コマ目を変える展開って、「『シュタインズ・ゲート』じゃないか!」と思いましたよ(笑)。まあ、未来から過去に影響しているコマがあるとか、時間軸の問題はツッコミどころ満載なのですが……そこは4コマ漫画ならではの説得力ということで、触れない方針で。  

浜村:もう少し納得感のある謎解きになっていれば、大変にクオリティの高いゲームになるでしょう。アドベンチャーにおける新しいジャンルをひとつ作れると思います。実際、スマホゲームで新しいジャンルを作るのは、本当に難しいですからね。 
 
TAITAI:スマホゲームが出てきたとき、新しい操作がもっと出てくるかと思ったのですが、不思議と出て来ないですね。 
 
中村:『アングリーバード』や『モンスト』の引っ張るパターンと、『パズドラ』のような上をなぞるパターン、僕も成功例はこの2つくらいしか思いつかないなぁ……。
 
 
「せっかくスマホで手軽にプレイできる作りなのに」(浜村氏) 
 
浜村:ユーザー的な希望を言うと、きっと小さなサクサク進む謎解きがいくつもあるのが良いタイプのゲームなのですね。勝ち負けがなくて、スマホで空き時間に軽くプレイして「ああ、楽しかった」と思えるという。ところが、せっかくそんなフォーマットなのに、メモをしないと解けないような謎を入れています。それは、このインターフェイスには向いていないのです。 
 
志倉:そうなんです。このゲームの一番の問題は、実は「難度が高いこと」ですね。パソコンの数字を打ち込むところなんて、割と序盤にも関わらず中々のハードルでしたからね。 
 
TAITAI:間違えたときにどこを間違えたかがわからない作りなのも、厳しかったですね。例えば、ディレクトリにコマンドを打ち込む場面で、コマンドのメモを見つけられていなかったんです。でも、「あれ、あれ、おかしいな」となるばかりで先に進めない。もちろん、その後で偶然メモを見つけたのですが、やはり納得感は薄いんですね。 
 
浜村:この作者さんは、1つ15分で解ける簡単なゲームを、50~100個とか用意して、ストーリーをつなげるのが正解だったと思います。変に難しく考えさせるのではなくて、「ああ、なるほど」とわからせてくれる作りにして、もっと僕たちを”踊らせて”ほしかったですね。

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 でも、こういう気づきこそが、プロデューサーが入ってチームを組んでいる連中ができることでもあります。そこはプロとの差かもしれない。この作品、本当に可能性はあるんですよ……。実はストーリーも良いですからね。ちょっと笑えて、でもさみしくて。 
 
志倉:僕も一個目のコーヒーブレイクを見て、「あれ、暗い……」と思いました。こんなにポップな見た目なのに(笑)。


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実は家庭内危機のわりとヘビーな話。


4.『Hero and Daughter』――男の子が大好きな”ハクスラ”とハーレム 
 
TAITAI:中村さんの評価が一番高かったのは、この『Hero and Daughter(以下、ヒーロー&ドーター)』ですね。 
 
中村:これは面白かった! 本当にツボにハマりまくってしまいました。 
 
D担:本作の作者は、前回も自作ゲームフェスに応募していて、お化けになって相手を驚かすホラーゲームを出しています。現時点でも既に大人気で、作品の実況が数十万再生されるクリエイターです。今回も実況者のアブさんが実況し、50万再生を超えました。しかも、本作はフリーゲームのダウンロードサイト最大手「Freem!」で、フェスの期間中ずっと1位でした。累計ランキングでも2位に昇っており、既にフリーゲームの歴史に残る作品になっています。 
 
『Hero and Daughter』 tachiさん作 (DLはコチラ
 

中村講評

勇者はレベル1に戻されて、そのまま固定。その代わりに可愛い女の子たちを召還して、ハーレムなパーティーで冒険するという設定。その笑えるシナリオは最高!ゲームバランス・キャラクター・サウンドともに十分なクオリティー。私はこのタイトルから始めたのですが、もうあまりに面白くて、私のツボに刺さりまくりで、大笑いしながらプレイしました。こんなに続きがやりたくて仕方ないゲームは久しぶりでした。中村光一個人としては、ぜひ一緒に仕事をしたいと思いました。すごくセンスがよいです。総合得点は9点にします。文句なしに大賞候補です。本当なら10点でもいいのですが、ここまで笑わせてもらえるなら、戦闘シーンにおいても笑いの要素を入れてほしかったですね。なにせ一番遭遇するシーンですから。
浜村講評
個性豊かな女の子たちを集めて、そして育てる。そのシンプルな楽しさにハマる。その楽しさが、ダンジョンに入って、武器、防具を集めることに、しっかりとモティベーションをキープさせてくれる。語り口の軽妙さもポイント。
志倉講評
元々勇者であり世界を救っている設定。その他会話も全般的にテンポ良く面白い。世界がゲームである事に気付いているような意味深な言葉や、要所要所メタ発言が飛び出すあたりの演出もゲームファンはニヤリ。テキストウィンドウ内のキャラフェイスは表情差分などもあり〇。経験値やアクセサリーなどの『貢ぎ』行為も「主人公がレベル1固定」というハードな設定のお陰でシステムとして面白い味付けになっている。召還出来る女子キャラバリエーションの豊富さも、コレクション欲をくすぐり、ゲームを続けるモチベーションに大きく貢献しているが、レベルアップやアクセサリーを貢いだ時にルックスが変化しないのが残念。
 
 
  この作者はとにかく実況などの意見を聞いて、どんどんアップデートしていくのが特徴です。(ページにアクセスして)あ、一昨日で既にver1.6.8だったのですが、もう今日は1.7.1ですね。 
 
TAITAI:実況で要望を聞いていくっていうのは現代らしいですよね。

D担:また、インターネット文化における意義を言うと、「ハック&スラッシュ」は、ネットの自作ゲームにおける人気ジャンルです。凝ったものから簡単なランダムダンジョンまで、実に幅広く存在しています。ちなみに、『小説家になろう』などの小説サイトで男性読者に人気が高いタイプの作品に、ハーレム物でハック&スラッシュを続ける物語というのが数多くありまして、そういう意味でも人気の高い形式です。 

中村:
まず、ゲームバランスが本当によくできてるんですよ。戦闘でのオートと入力の使い分けも絶妙で。全てオートにするのは、少しだけ無理なようになっているんですね。ちゃんと、自分の手で各キャラの技を出す機会をくれるわけです。……これ、ゲーム関係の人ではないんですよね? 「実は私でした」とか言いながら、有名な人がひょっこり出てきたりして(笑)。 
 
D担:少なくとも、プロフィールにはそう書かれていません。趣味で作っているというスタンスの方だと思います。 
 
中村:趣味で済ますのは、もったいないですよ。 
 
浜村:いや、本当にそうですよ、これは。 
 
中村:僕は、『弟切草』や『かまいたちの夜』みたいな怖いゲームは作ったんですよ。「怖くてボタンを押せないゲーム」があったら面白いよなあ、と思って(笑)。でも一方で、笑えるゲームもずっと作ってみたいんですね。もう、「ボタンを押すたびに腹を抱えてしまうゲーム」というね。 
 この作品は、かなりそれに近いんですよ。笑いを目指したゲームとして、相当に出来がいいでしょう。輪ゴムを装備するところなんかも、「え、これ装備するの?」って出るじゃないですか。自分の思ったことが、そのまま画面に出ているだけなのですが、おかしくって笑ってしまうんですよね。


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志倉:メタっぽい演出は、中村さんと同様に僕も爆笑でした。登場キャラが「未実装ってことか」とか言い出したりね。お前が言うなよと(笑)。ただ、このネタは何回もできないとは思います。自作ゲームやフリーゲーム界隈は、メタっぽいネタがは多いですからね。  
 
TAITAI:メタっぽいネタが流行る理由ってなんなんでしょうか。
 
志倉:「メタ視点」を導入した瞬間にファンタジーから押し付けがましさがなくなる気がしますよね。みんなが飽き飽きしている中で、「メタ視点」が入っていると、半歩こっちに寄っている感じが出るのだと思います。実際、このゲームも「あなたの気持ち、わかりますよ」という空気の中で、安心して進めていけるでしょう。   

中村:僕も「未実装です」のところはそういう印象を受けたかなぁ。あと、女子高生が「女子高生パンチって、卒業したらどうなるんだろう?」と言うシーンがあるじゃないですか。「人妻パンチになるのかな?」と言いだして、「それはお前が結婚できたらの話だろ」とツッコまれてる(笑)。ああいうのは、もうお腹を抱えちゃいますよね。 
 

「男の子の好きなものがたくさん詰まったゲーム」(浜村氏) 
 
D担:インターネットという視点で重要なのは、色んなゲームのキャラクターを放り込めることですね。どんどん美少女キャラを足していけるので、アップデートの可能性が高いと思います。 
 
中村:召喚される子がランダムなんですよね。一人面白い子が出たのですが、すぐに死んでしまって、そのあと出てきませんでした。「ああ、あの子にもう一度会いたいな」と(笑)。 
 
浜村:まあ、ハーレムものは基本的に、男の子は大好きです。そして、ゲーム前提の会話も大好き。男の子の好きなものがたくさん詰まったゲームなんですね。その上で、志倉さんが書いていた「キャラのルックスが変わっていくべき」という指摘、これは実に大事だと思いますね。 

 
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志倉:そうそう、「貢いでる感」ですよ(笑)。服装や表情に差分が生まれたりしていくと、どんどん貢いじゃいますね。好感度を上げていけば、ウサギの耳をつけられたりとかね。しかも、そんな子が死んじゃった日には、もうね。  
 
浜村:「この子にエッチな服を着せたら」とかね(笑)。ゲームシステム的な必然性がありますから、どんどん面白くなりますね。 
 
TAITAI:僕はこのゲームに物足りなさを感じていたのですが、志倉さんの「貢ぐ」という言葉で理由がわかったんです。このゲームはハーレム作りとダンジョン探索が、現状では上手くマッチしていないんですよ。言わば、2つ美味しい料理がゴロッと並んでるだけなのですね。だけど、「貢ぐ」という目的をより強く与えてあげると、「ハーレムの子に貢ぐために戦おう」ということでモチベーションが統一されますね。 
 
中村:このゲームの場合は「好感度」で何が可能になるかを、もっと明示した方がいいですね。僕は「貢ぐ」ときに「大体、このくらいでいいのかな」という感じになってしまって、少しもったいなかったです。 

 あと、このゲームって、十字キーとA、Bだけしか使いませんけれど、遊んでいて「ああ、ゲームってこうだったよなあ」と思いました。個人的には、もうね、XとかYとか要らないと思う。スタートもセレクトも要らない(笑)。 
 
志倉:あと、僕的に本作で一番ビビッと来た部分は、「俺もRPGツクールで作りてえ」と思わせてくれるところなんですよ。このゲームを遊んで、そういう感想を抱いた人は一杯いるんじゃないかな。 

TAITAI:あるジャンルやカテゴリが流行るときって、「俺にも作れそう」と思えるのは大事なことですよね。BASICの世代しかり、同人ゲームしかり。ニコニコ動画のムーブメントとかも、やっぱりそういう背景があってこそだと思います。

志倉:まあ、僕はBASIC世代だったけど、実際に作ってみたら、そんなに上手くいかなかったですけどね(笑)。でも、チャレンジしようと思えるのが重要だと思います。
  
 
「一緒に仕事をしていて、楽しそう」(中村氏) 
 
TAITAI:中村さんは、寸評で「一緒に仕事がしたい」とまで書かれていますが、具体的にどういう部分で仕事をしたいと思われたのですか。 
 
中村:センスがまず素晴らしいですね。こういう面白いコメントを思いつく人は、一緒に仕事をしたら、きっと笑いが絶えない打ち合わせになりそうです。 
 
浜村:でも、こういう人は意外と無口だったりするんですよ(笑)。 
 
TAITAI:ちょっと脱線ですが、中村さんの仕事相手で印象に残っている面白い方って、どんな方でしたか? 
 
中村:僕の仕事歴は本当に恵まれていて、初期にいきなりドラクエで各業界の頂点のような人たちと仕事をさせていただきました。なので、人には恵まれすぎなんだけれども……そうだなあ。 『かまいたちの夜』でお願いしたミステリ作家の我孫子武丸さんなんかは、印象的でしたねえ。


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『かまいたちの夜』(チュンソフト・1994 ※上画像はプレイステーションのリメイク版)。自作ゲームの歴史にサウンドノベルが与えた影響は大きい。
 

 毎回京都から来ていただいて打ち合わせをするので、終わった後の食事の店を頑張って考えていたんです。あるとき、「新宿2丁目のオカマバーはどうだろう」と思って、我孫子さんを連れて行きました。そうしたら、翌週に送られてきたのが、あのオカマのシナリオです(笑)。もうこの人、なんて面白いんだろうと思いました。そんな感じで、いつも何かしら盛り込んでくださるので、こっちも「よし、次はどこへ連れて行こう」と考えていたものです。 
 
TAITAI:なるほど。志倉さんとかは、こういう人と仕事をしたい、みたいなものってあるんですか?
 
志倉:やはり「モノ作りをしたい」というベーシックなハートを持っていることが大事です。これは、今回の6作品全てに感じました。特に、この『ヒーロー&ドーター』の作者なんかは、プレイヤーが「ここで笑ってくれたかな」とか想像しながら作ってるのが伝わるでしょう。こういう想像ができるのはモノ作りの基本ですよ。  
 
中村:まずは作り手として、「こんなことをやりたい」というアイディアをどんどん盛り込むのは、もちろん大事なんです。でも、そのあとで今度は、初めてプレイする人の視線になるのが大事なんですよ。そのときに「こりゃ難しすぎるよ!」となったら、直していくわけです。
 
TAITAI:どんな作品でもそうですが、客観性みたいな部分ってとても大事ですよね。気配りとでもいいますか。

志倉:そのへんで言うと、逆に商業だと、そこに色んな人の目が入ってしまうので、どうしてもエッジがなくなってしまうのも事実なんですよ。
 例えば、音楽でいうと、ニコニコのボカロ楽曲って、自分(一人)で最初から最後まで作るでしょう。商業音楽では、作曲家が作った音楽に、編曲家がアレンジをして、エンジニアがトラックダウンして……みたいな工程を経て、それでやっと表に出るわけですよ。その過程で、平準化されてしまう側面はあると思います。 

TAITAI:プロであるほど、既存の常識や定石に即したりって面もあるでしょうしね。

志倉:でも、ボカロ楽曲とかは、その過程がないから、逆にもうとにかく全体的にエッジが尖ってたりする。そこは商業とインディーの大きな差ですね。だからこそ、とんでもなく面白いものが生まれる一方で、とんでもないクソゲーも生まれるんですけど。   

浜村:バランスは悪いのだけど、その代わり、一極に尖ったようなエッジの利いたものが出てくる。そういう環境こそが、異質なものを生み出す力の元になるんでしょうね。 
 
TAITAI:「粗はあるけど、尖ってる作品」が、きちんと注目されて、評価される場があることが大事ですよね。一時期のボカロ楽曲なんかは、まさにそういう環境がセットであったからこそのムーブメントだったように思えます。 


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浜村:エッジの利いた作品こそが、次の時代を作るのですよ。世の中には「ダメなところが沢山あるけど、これは凄いぞ」という作品があるんです。そういうときには、メディアはそこにあえて目をつむって、ドンドン推すべきだと、僕は思うんです。それによって、新しい道が生まれて、新しいジャンルが生まれるからです。 
 
TAITAIそこはおっしゃる通りですね。

浜村:だって、新しいジャンルを作った作品って、尖ってる代わりにダメなところが必ず沢山あったでしょ(笑)。例えば、『バーチャファイター』がそうですよ。最初のなんて、普通の人から見たら「ん? これはよく見ると人間だけど……?」という感じでしたから。でも、それでもあの凄さをひたすら伝えるしかなかった。メディアには、人よりも早く見ることの「使命」というものがあるのです。 
 
TAITAI『モンハン』の最初も、すごく荒削りでした。ついつい僕らは悪いところを見てしまうし、きっと穴のある作品を褒めたら褒めたで読者から叩かれてしまうんですけど、それでもやるべきなんでしょうね。 
 
浜村:叩かれるどころか、「ゲーム会社から宣伝費をもらってるんだろう」とか言われますよね(笑)。でも、意外とそんなことはないんです。僕たちは、自分が面白いと思ったからこそ、褒めるんです。 
 

「完璧なゲームは、意外に売れない」(中村氏) 
 
中村:荒削りな作品こそがっていうのは、ゲームを作ってきた立場からも言えるかもしれないですよ。 
 
TAITAI:というと?

中村:制作している中で、「あと一週間あれば……」「もっと良くできたのに」という思いのまま、締切が来てしまうゲームがあるんです。ところが、そういうゲームに限って、不思議に売れるんですよね。それに対して、「これは大満足だ! もう完璧!」と思って出したようなゲームは、意外にも売れない(笑)。
 

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TAITAI:それは興味深いお話ですね。

中村:どうも、2や3をみんなが買いたくなるゲームって、みんなに「もっとこうすればいいのに」と思わせてくれるゲームであるように思いますね。これ、不思議なんですよ(笑)。「もう完璧」と思ったゲームが、かえって次の続編を出したときに売れ行きが落ちてしまうんですから。 

  ちなみに、最近は作り手がそのことに気づきだしていますね。ドワンゴの横澤さん(ニコニコ超会議・総合プロデューサー)は、社員向けのセミナーで「かえって欠けている部分があった方が、ユーザーが議論してくれる」なんて言っていましたから。あれは、「なるほど」と思いましたね。 
 
志倉:僕の物語の作り方もそうですよ。伏線の中で、あえて10%か20%を拾わずに残しておくんです。そうすると、ネット上で「ああでもない」「こうでもない」と議論が始まって、コミュニティの起点になる可能性があります。全部に説明があると、なんかそれはそれでつまらないんですよ。 

TAITAI:ゲームにおけるクチコミ文化って意味なら、「裏技」や「隠しコマンド」、「超必殺技」みたいなものもありましたよね。

浜村:ああ、「裏技」っていうのは、佐藤さんたち(現KADOKAWA・DWANGO代表取締役社長の佐藤辰男氏)が『コンプティーク』で作った言葉ですよ。「『ゼビウス』の裏ワザ」とか呼んでてね、僕らは他誌だったから、「禁断の秘技」とか「ウルテク」とか呼んでいたんですけど。 
 
TAITAI:へえ〜、そうだったんですか。

中村:いやあ、でも、ユーザーの皆さんがバグを「裏ワザ」なんて呼んでくれたもんだから、僕たちゲーム開発者は本当に助かりましたよ(笑)。 


一同:(爆笑)

 
中村:だって、バグなんて、本当は欠陥品ということですからね……ということで、次の議論に行きましょう!  この話をやり過ぎるのはよくない(笑)。 
 
 
5.『魔法の線陣』――あまりに斬新な「同時ターン制」を駆使したゲーム性
 
TAITAI『魔法の線陣』ですが、これも「惜しい」という声が出ている作品ですね。 
 
中村:そうなんです。 
 
TAITAIこれは作品の背景がとてもユニークなので、先に紹介を聞きましょう。D担さん、お願いします。
 
D担:はい。作者のブログによれば、このゲームは4年越しのアイディアで作られた作品なのだそうです。こういう形で外に向けて発表した、おそらく初めての作品ではないかと思います。 
 
 
『魔法の線陣』 レゴさん作 (DLはコチラ

中村講評
一見地味ですが、凄くちゃんと考えられて、練りこまれています。ちょっとわかりにくいなぁ~と思いながら始めましたが、気がついたらすっかりハマっていました。不気味なBGMと効果音が、独特の世界観を演出しています。うちのワンコが、すっかり大人しくなって、聞き入っていました。最初はちょっとわかりづらいのですが、ルールがわかると実によく練りこまれていて、気がつくと時間が経っています。難しめのパズルが好きな人なら、きっとハマると思います。 残念なのは、画面が小さいので仕方ないのですが、マイキャラと敵キャラの見分けが付きにくい...とか、smallで飛び越せる敵なのかどうなのかとかが、画面横の拡大情報からじゃないとわからなかったことです。画面情報をもっと分かりやすくて親しみやすいものにしたら、多くの人に受け入れられるのではないでしょうか。
浜村講評
新規性に富んだゲームデザイン。それでいてルールはシンプルでわかりやすい。また戦略性にも富んでおり、ついつい続けてしまう中毒性を備えている。
志倉講評
チュートリアルも無い状態で、急に目の前に敵が居る緊迫のシーンへ!このハードな導入には参りました。敵の行動はタイプにごとに決められているものの鼓動や吐息、さらには音の方向など、注意すべきポイントも多く難易度は高め。ただ敵が確立された思考ルーチンの上で行動している為、攻略パターンが見えてくると実況向きな"魅せプレイ"が可能なのかも。3人のヒロインの特性と、星・太陽・月の状況ごとに攻略方法が変わるので、使いこなせるようになるにはかなりのトライ&エラーが必要。その時点で挫折してしまう人がいるかも。
 
 
 このゲームの大きな特徴は「同時ターン制」なのですが、フリーゲームにも事例はほとんどありません。本作にはサイゲームスさんが、このゲーム性を評価して賞を出しています。ただし、UIとストーリーとチュートリアルは頑張りましょう、という留保がついていますが。 
 
TAITAIそういえば、ニコニコゲームフェスにおける「企業の賞」ってどういう形で出しているのですか? 
 
D担:基本的には、こちら側から営業をかけて、協力という形で、手弁当で賞を出していただいています。商品としては、GREEさんのように賞金が出たり、ファミ通さんのようにゲームをもらえたりするのですが、その辺は各社にお任せしております。 
 
TAITAIなるほど。あ、続けてください。

D担:あと、このゲームは、他の候補作ほど知名度は高くないです。作者の方も、ネットのこの界隈では無名です。また、率直にいってしまうと、おそらく公式生放送で今後、僕たちがこのゲームを扱っても、あまり視聴者数は伸びない気がします。 
 
TAITAI確かに、実況でパッと見ても、どんなゲームかわからないですよね。 
 
D担:実際、このゲームは何にも似ていないので、余計分かりにくいんですね。でも、最終選考まで推させていただいたのは、まさにその独自性ゆえです。
 
中村:ただ、このゲームはやりはじめると面白いんですよ。「ああ、こうすればもっと上手くできた」とか思って、ついつい続けてしまうんですね。 
 
浜村:ええ、面白いです。ゲームとして、本当によくできている。 
 
 
ボードゲーム好きの視点から見ると…… 
 
D担:そういえば、TAITAIさんってボードゲームなども結構遊ばれていると聞きますけど、そんなTAITAIさんから見て、このゲームへの評価ってどうなんですか?
 
TAITAIえっと、そうですね……。

  あくまでも司会の余談として聞いてほしいのですが、ボードゲームという視点で見ると、まさに中村さんが指摘されている、見せ方の工夫は確かに足りないと思います。やはり駒を見た瞬間に、「このキャラはこういう役割だろう」とすぐに分かるべきで。ルールにしても、囲んで相手を倒せるという部分を、もっと分かりやすく伝える必要があると思います。例えば――これはコンピュータゲームになりますけど――「倉庫番」みたいな作品って、世界観とかキャラの設定が画面から伝わって、すぐに「ああ、荷物を押すゲームなのね」ということが分かって、プレイヤーがやるべきことも伝わりますよね。そういう配慮というか、工夫があるだけで全然違うんじゃないでしょうか。
 
中村:そう。ゲーム自体は面白いのに、他人がプレイしている姿を見ても、何が行われているかわかりづらいんです。もったいないんですよね。


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『魔法の線陣』プレイ中のゲーム画面。

 
TAITAIあと、時間の概念や音で敵の位置を探ったりだとかが、果たして本当に必要な要素なのかもちょっと疑問なのです。なんというか、“要素が多い”のは気になりました。もっとプレイヤーができることを絞り込んだほうが面白いと思います。
 
志倉:その通りですね。このゲームは、まさにそういう詰め込み過ぎたり、他人に伝わりづらかったりという、ゲーム制作側が陥りがちな問題が、ちょっと多すぎかもしれませんね。  

TAITAIただ、この作者にとっては、バラバラの要素をまとめ上げて作り上げたことこそが、重要だったのかなと思いますから、そこの評価は難しいですね。実際、それらの要素を一つにまとめたのは凄いことです。 
 
中村:画家のピカソは、実は若い頃には写実的な、大変に綺麗な絵を描いているんですね。その技術とノウハウがあった上で、彼の後の絵ができているわけです。作者の方にとって、この作品はまさにピカソが写実的な絵を練習していた時期にあたる作品ではないでしょうか。なにか、すごく真剣にゲームに向き合って、作られているように思えます。先ほどの説明にあった、4年という歳月がそう感じさせるだけかもしれませんが……。この人は、大化けする可能性を秘めている気がします。 
 
浜村:まず、新しいルールをゲームで作ったというだけで、賞賛に値します。 
 
TAITAI最近のゲームって、どんなものでもある程度は系譜が見えるのですが、本作はそれが見えないですよね。似たゲームはもちろんあるのですが、そこを意識しているようには見えません。 
 
浜村:ええ、突然変異的に生み出されていますよ。大変に素敵だと思います。 
 
 
「面白さを"伝える"ことを頑張ってほしい」(中村氏)
 
TAITAI志倉さんは、選評でコメントをかなり書かれていますね。 
 
志倉:自分がつけた中で、一番得点が低いゲームなんですが、こうすればいいのにって部分が多い作品でもありますからね。やはり、導入の悪さが気になります。そして、パッと見のわかりにくさ。もう少しキャラクターが大きくなるだけで全然変わるはずなんですよ。  
 
TAITAI左のカードなんかは、画面に説明がほしいところですよね。 
 
中村:これ、ウィンドウの拡大もできないんだよね。できた方がいいね。 
 
志倉:攻略性という意味では、今後カードをどんどん増やしていくとかもありですよね。今回は3枚だけですが、今後は20枚だとかのカードから選んで、戦えてもいいと思います。あと、操作という意味では「OK」のボタンが遠いんですよ。何度も押す場所ですから、なんとかして欲しかったですね。右クリックで進行してもいいですしね。


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上に貼ったプレイ画面の画像の左端。不思議に「OK」と「EXIT」を間違えやすい。


TAITAI僕は「OK」と間違えて「EXIT」を押しそうになりました。そういう意味では、「EXIT」も左下ではない場所に寄せて欲しいです。 
 

(ここで突然、D担のプレイするゲームから怖い効果音が流れ出る) 

 
志倉:ああ。……あと、効果音が独特すぎて、僕は思わず音量を下げてしまいました(笑)。   
 
中村:選評にも書きましたが、ウチの犬がもうピタッと止まって、ずーっとそのままなんですよ(笑)。 
 
TAITAI独特の緊張感がありますよね。ここは良い部分だと思いますけど。
 
D担:(プレイしながら)どこから敵が出てくるかわからなくて、すごく不安なんですよ。でも、ホラーゲームと違って、その不安や緊張がプレイ中の自分にしかわからない(笑)。 
 
志倉:そこが上手く伝われば、第三者にも状況把握がしやすいし、ゲーム実況にも向くんですけどねぇ。  

浜村:やはり難易度の階段をしっかりと作って、演出を頑張って欲しいですね。雰囲気も良いし、ルールも新しいし、可能性は十分にある。頑張ってほしいなあ。 
 
中村:面白いルールを「作る」ところまではできているので、次は面白さを「伝える」ことを頑張ってほしいですね。 
 
D担:作者の方も、ブログで「一度できたことは、次からもっと早く、もっと良くできる。次は、手間をかけずにもっとおもしろいゲームが作れるはず。もう次のアイデアはいっぱいあります」と書いていました。 
 
 
6.『瞳の中のアビス』――自作ゲームを支えるツール文化 
 
TAITAI最後の『瞳の中のアビス』について話しましょう。 
 
浜村:これ、ゲームということでいいの? 
 
中村:まあ、ノベルですよね。でも、そこは前提にして評価しました。 
 
TAITAIはい、まさにおっしゃるとおり、ノベルです。ただ、このタイプのノベルをずっと頑張って、作ってきた作者の方です。過去作の「マジックポーション・ストーリーズ」が、「BitSummit2014」にてストーリーテラー賞に次点入賞しています。
 
 
『瞳の中のアビス』 artifactsさん作 (DLはコチラ
 
中村講評
サウンドノベルに通ずる読み物で、その深く考えさせられるシナリオが素敵でした。効果音の選定やタイミングなども雰囲気を出すのにぴったりな使い方です。彼女の病気を魔女に治してもらうため山奥に......という出だしも、ちょっと「かまいたち」を連想させるような吹雪でスタートして、すっと引き込まれました。 ただ、横の2Dマップとキャラ劇が、シナリオとマッチしていません。むしろ雰囲気のあるちゃんとした、一枚絵を添える方が味のある読み物としての完成度が高まると感じました。このビジュアルが内容に活かされていれば、と思います。あと、序盤の時間経過の表現には、もう少し工夫が必要だと思います。 総合得点は5点でしょうか。なんらかのゲーム性が欲しかったです。そういう意味で、ボリューム不足に思いました。
浜村講評
ホラーテイストの物語に、思わず引き込まれました。画面をスクロールさせて、物語を読ませるという形式は、おもしろいアイデアだと思います。ただ、これ、ゲームなのでしょうか?
志倉講評
一見ゲームにも見えるのでチビキャラを操作する気満々で臨みましたが最後まで完全なるノベルでした。物語は全体を通じてとても詞的で、さながら異国の王道ファンタジーの様相。効果音や画面エフェクトで「ドキっ!」と驚かすようなシーンは抑えめだけど、逆に深層心理に訴えかけるような怖さが在る。精神的に影響力の強い童話の世界が、現実の世界へ何らかの影響を及ぼす可能性は充分に高く、それを考えるとますます怖くなってきます。この世には『作者不明』の作品も多くありますからね......。
 
このゲームを最終選考に残したのは、日本の自作ゲームにおけるツール文化の影響力を考えたからです。

TAITAIテキストADVにおける「立ち絵+テキスト」というフォーマットがあったように、「RPG風のキャラ寸劇+テキスト」というフォーマットは、新たな創作を生み出す土壌になり得るか、という視点ですよね。

D担:ええ。例えば、この作品にも使われている「WOLF RPGエディター」と呼ばれるツールがあります。これはSmokingWOLFという、大変に長くこのコミュニティに貢献されてきた開発者の方が、おそらくRPGツクールのシステムを利用した経験から、色んなゲームにそれを応用できるようにしたエディタです。このツールによって、様々な要素を組み合わせたような作品が、自作ゲームには多く生まれています。

志倉:ほほう。


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テキストと並行してキャラクターが寸劇のように動きまわる。


D担:本作はその前衛に位置する作品ですが、同時に手法としての可能性も感じます。例えば、この手法を使って、2Dキャラの素材として「涼宮ハルヒの憂鬱」のデータなどを用意してあげれば、涼宮ハルヒの二次創作ゲームなんかが簡単につくれたりするわけです。ドワンゴとしてはそのポテンシャルを、選考委員の皆さまに評価していただければと思って最終に残しました。 
  
中村:RPGの絵の部分と物語のテキストの部分の相性が、どうにもバランスが悪く感じました。せっかくBGMや効果音もとても良くて、ミステリアスな怖い話でしょう。それなのに、どこか動きがコミカルに見えてしまうのですよ。 
 
D担:一応、この方は前作まではコミカルな作品を作っていらして、今回ホラーに挑戦されたようです。 

中村:なるほどなあ。でも、せっかく視点を動かせるのに、動かしてもあまり発見がないんです。それがあればもっと楽しめるはずなのに、と思います。視点を変えて、ぐるっと回って何かを発見すると、部屋が変化しているとかね。やっぱり、できる以上は欲しくなっちゃいますよね。 
 
志倉:確かに、「できる以上は……」というのは人間の心理ですね。あとは、もう少し絵の側に意味があってもいいと思いました。  
 
中村:それに、最初の方で「暗転」を何度も繰り返しますよね。「暗転」を使うのは、もっと絞った方がいいんです。あれを効果的に使うと、読者が「あれ?」となってくれますから。サウンドノベルをいくつも作ってきた立場から、少々思いました(笑)。 
 

「”俺ならば……”を考えたくなるフォーマットで、それが一番の価値」(志倉氏) 

TAITAIサウンドノベルの見地から、このテキストと動く絵を組み合わせるスタイルの可能性はどう思われますか? 
 
中村:テーマ次第だと思います。ただ、ホラーとは合わないかなあ、と感じてしまいます。もちろん、RPGなどでこれと合うストーリーはあり得ると思いますが……。 
 あと、どうも「読む」ことと「見る」ことの目の動きが難しい形式だなと思いました。キャラが動くと、読むときの集中が途切れてしまうでしょう。わずかな時間ではあるのですが、やはり読むときは読ませてほしいし、見るときは見せてほしいですね。細かいツッコミで申し訳ないのですが……。 
 
TAITAI視点の移動は僕も少々気になりました。これなら、フキだしにしてくれた方がキャラと文字の間の目の動きが少なくて済むような気はします。商業ゲームでは、『英雄伝説』なんかが、この辺を考え抜いていたように思います。 

志倉:でも、この作品の持つ雰囲気自体はなかなかよいと思いますよ。


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TAITAI志倉さんは、三人の中で最も本作への評価が高いですね。 
 
志倉:一見、魔法で病気を治してもらう王道ファンタジーのようで、実は違う。童話のような世界を現代的なスタンスで語る手法は個人的に好みです。

 あと、たぶん、この作品もプレイした人の中には「俺もこういうの作りたいな」と思う人が多い気がします。物語を作って、あとは左側のキャラ寸劇部分を動かせば成立するから、なんとなく「自分もやれそう」って思えるんですよ。これは「俺ならば……」を考えたくなるフォーマットで、それはとても価値あるものだと思います。  
 
TAITAI最終選考で残した意味もそこだという話ですしね。現在のインターネット環境の中で、こういうフォーマットが発表されることで、次々に新しい作品が生まれていく可能性はあると思います。 
 
 それでは、ひと通り各作品について話し合いましたので、一旦休憩に入りたいと思います。休憩後に、今度はここまでの議論を元に各作品の点数を付け直していただいて、大賞を決める議論に入っていきたいと思います。(後編に続く)


【構成:稲葉ほたて・TAITAI】

後編の配信は2015年の1月初旬となります(※ 本記事のリリース当初に見ていた方は元旦と書かれていたと思います。申し訳ありません)。そちらでは、選考会後に3人で交わされた議論も掲載する予定です。現在のゲーム業界が抱える困難や、その中で商業の視点から自作ゲームにかける期待などが議論されています。楽しみにお待ちください。(D担)

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ニコニコ自作ゲームフェス5が既に開催中!

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最終候補6作品も実況される公式生放送もぜひご覧ください

他3件のコメントを表示
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さすがと思わせる選評。
ほめるべきところは何がどうなって、それでどう受け止められているのかを明確にしてもらえている。
さらに具体的な問題点の定義と対策のアドバイスまでもらえるとは、コレはクリエイター魂に火が付くだろうね。
17ヶ月前
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久々に見ていてハッとするものがある素晴らしい選評でした.
誠実に評価して,良い点と改善点をわかりやすく導き,経験などから納得するに足るアドバイスをされている.

本当に読みがいのある選評でした.
別分野で仕事をしているクリエイターですが良い刺激をもらえました.
17ヶ月前
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本題と直接関係はないですが、「コンプティーク」でファミコン用ゼビウスの裏技についての記事を掲載した1985年7・8月号では「隠しコマンド」と呼んでいたようですね。

http://fm-7.com/museum/magazine/comptiq/190001000.html

これより少し前の「コロコロコミック」1985年5月号で「裏技」が大々的に扱われていて、裏技という言葉の広がりには、発行部数の面で考えるとこちらのほうの影響力が強かったのではないでしょうか。

http://37432029.at.webry.info/201306/article_3.html
17ヶ月前
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ゲームも面白そうだと思ったけど、やっぱりプロのクリエイターってすごいんだなあと思いました。(小並感)
17ヶ月前
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本当シレン系列面白かった
長くて全文読んでないけどとりあえず感謝
17ヶ月前
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中高生が喜びそうな設定を羅列しただけの紙芝居ゲー(しかもフルプライス、移植もやはりフルプライス)しか出していない人間がゲームを語るのか。それでギャラが貰えるんだから日本のゲーム業界は業が深いな
17ヶ月前
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斬新さとかUIとかのこういったコメントが討論の場でさっと出てくるあたりやっぱ商売してるプロだよなと思わされた。
なんか上の値段でガタガタ言って通ぶってる馬鹿のコメントとかとは比べ物にならないわ。
17ヶ月前
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423も参加作品がありましたが、審査員の方は何作品遊んで評価したのか?とか
クリアまで数十時間かかる長編ゲームもありましたが
審査員の方はクリアした上での評価をしたのか?とか
そういう事が知りたかったのに書かれてないですね・・・

多忙の合間を縫ってとは書いてあるから、要するに
そういう事なんだろうなと思っちゃうわけですけど。
17ヶ月前
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いずれの審査員も言わば“お偉いさん”でヒマじゃないだろうし
大賞候補として選ばれた作品をちょっとやっただけだろうね
極めつけに「攻略は教えてもらったけど途中放棄した」とまで言ってるし

このコンテストがニコニコ出来レースフェスである以上、
コメント寄せてくれただけ豪華なことだと思う

17ヶ月前
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Hero and Daughterはバランス最悪だろ

業界人が挙ってこのゲームを褒め称えてるのは、いかに企業がフリゲ界に無知で疎いかを表してるようだな
メタで笑いを取るのが斬新とか他のフリゲなんて一切やってないんだろう。

しかし中村ってほんと腐っちまったなぁ。
もうこいつはゲームに関わらない方がいいだろ。
17ヶ月前
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