3点を通る円がただ1つだけ存在することの証明
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3点を通る円がただ1つだけ存在することの証明

2015-12-05 04:54
  • 2
この記事は、日曜数学 Advent Calendar 2015の6日目の記事です。
こんにちは、キグロです。
先日、「日曜数学 Advent Calendar 2015」の3日目の記事を書きましたが、6日目も私キグロが担当いたします。

3日目の記事にて、私の日曜数学は、大きく次の3つになると書きました。
1つ。身近な題材からオリジナルの問題を作って解く。
2つ。数学や数学史の本を読む。
3つ。数学の動画を作る。

前回の記事ではこのうちの1つ目をパフォーマンスしたので、今回は2つ目の「数学や数学史の本を読む」をパフォーマンスしたいと思います。
とはいえ、単に本の紹介をしても、私の日曜数学のパフォーマンスにはなりません。それは単に「私が読んで面白かった本の紹介」であって、「私の日曜数学の紹介」ではないからです。
というわけで、「私が本を使って何をしているのか?」をパフォーマンスしたいと思います。
(だいぶ屁理屈ですがスルーしてくださいw)


今回使う本は、数学界の聖書とも言うべき本、ユークリッドの『原論』です。
これは紀元前300年頃に書かれた本で、当時の数学の教科書か、資料集のようなものだったと考えられています。
『原論』には、幾何学や数論に関する定理が400個以上も書かれており、しかもそのすべてに厳密な証明がついています。

数学の「定理」とは、既に証明された事柄を指します。そして定理を証明するには、「既に証明された事柄」が必要です。つまり定理の証明には定理が必要なのです。
では定理の証明に使う定理はどうやって証明するのかと言えば、やっぱり既に証明されている別の定理を使って、さらにその定理の証明には、既に証明されている別の定理を……と、次々と定理を遡っていくことができます。
この遡行は、最終的に「明らかに正しいけれども、証明できない(証明しない)事柄」に行き着きます。この事柄のことを「公理」と呼びます。
(それと、「言葉の定義」にも行き着きます)

『原論』のすごいところは、最初に定義と公理が書かれ、そこから様々な定理を証明しているところです。
このような「公理→定理→定理→…」という証明の仕方は、現代の数学者や日曜数学者にとってはごく当たり前のことです。しかしこれは、数学史の最初から当たり前だったのではなく、何百年か何千年か、あるいはそれ以上の年月をかけて、少しずつ形成されていった考え方なのです。
そして『原論』は、この考え方が用いられている最古の本なのです!
(もちろん、「現存する中では」という注釈が必要ですが)

公理から様々な定理を証明する関係上、『原論』には、「そんなの証明するまでもなく、当たり前じゃん」と思えるような定理の証明も載っています。
例えば、こんな定理があります。
【定理】
円は、円と2つより多くの点で交わらない。
――『原論』第3巻命題10
円が2つあり、それが交わっていたら……直感的に、3つや4つの点で交わることはありえませんよね?こんなこと、証明するまでもなさそうですが、『原論』ではきちんと証明されているのです。

証明には背理法を使います。つまり、「2つより多くの点で交わる」と仮定して、矛盾を導きます。
2つの円 O, O' が2つより多くの点で交わるとし、そのうちの3点を A, B, C としましょう。

まず、AとB、BとCをそれぞれ結んで、線分AB と線分BC を引きます。円周上の2点を結んだ線分のことを、「弦」と呼びます。

ここで特筆したいのは、「2点を通る線分を引けること」は公理であるということです。つまり、2点AとBを結んで線分ABとできることは、「証明はできないけど、証明に使ってもよい事柄」なわけですね。

次に、いま書いた2つ弦AB, BCの垂直二等分線を引きます。垂直二等分線とは、線分の真ん中の点を通り、線分と直角に交わる直線のことです。
線分の垂直二等分線が必ず引けることは、実は『原論』の中では証明されていません。ですが、線分の真ん中の点を見つける方法と、線分上の特定の点で直角に交わる直線を引く方法は、それぞれ第1巻の命題10と命題11で証明されています。つまり、これらを組み合わせれば、垂直二等分線を引けるわけですね。
弦ABの垂直二等分線をm、弦BCの垂直二等分線をnとします。
弦の垂直二等分線は円の中心を通ることが、『原論』第3巻命題1(系)にて証明されています。つまり、円Oの中心は直線m上に存在し、しかも、直線n上にも存在することになります。
さらに、円の中心は一つしかないので(円の定義に含まれる)、二直線m, nは円Oの中心Pで交わらなくてはなりません。

ところで、弦AB, BC は、円Oの弦であると同時に、円O' の弦でもあります。従って、二直線m,nの交点Pは、円O' の中心でもなければなりません。
しかし、互いに交わる2つの円は、同じ中心を持たないことが、『原論』第3巻命題5にて証明されています。つまり、もし2円O, O' が同じ中心を持つとすると、この命題5に矛盾してしまいます。
この矛盾の原因は、「2つの円が2つより多くの点で交わる」と仮定したことにあります。よって背理法により、2つの円は2つより多くの点では交わらないことが証明されました。

…………

さて。
私は冒頭で、『原論』を「使っている」と言いました。これをどうやって使っているのでしょうか?
実は、以前私が投稿した動画に、この定理が使われているのです。



この動画の2分40秒ほどのところから、「3点を通る円はただ1つしか存在しない」ことの証明が出てきます。
しかしその証明は、簡易さを求めたせいで、なんとも中途半端になっています。
動画内の説明文を抜き出しましょう。

平面状に一直線に並んでいない3点があるとき、その3点を通る円が、必ず1つだけ存在します。
このような円が存在することは、3点を結んで三角形を作ったとき、その三角形の外接円が必ず存在することから、わかります。
また、3点を通る円が2つ以上ないことは、背理法で示せます。
もし、3点を通る円が2つ以上あったら、それらは3点以上で交わる円になりますが、3点以上で交わる円は存在し得ないので、3点を通る円は2つ以上存在しないことがわかります。

太字で書いた部分が、今回の記事で証明した部分ですね。
ちなみに、動画内では「三角形の外接円が必ず存在すること」の証明も成されていませんが、これは『原論』第4巻命題5にて証明されています。
以上の2つ――「3点を通る円が存在すること」「3点を通る円は2つ以上存在しないこと」――から、3点を通る円は1つ、かつ1つだけ存在することが証明されました。

実はこの動画を作ったとき、
「3点を通る円が1つしかないことは知っているけど、その証明って知らないなぁ」
と、ふと思いました。
そこで、手元にあった『原論』を読んだところ、今回の記事の証明が載っていたのです。

つまり私にとって、数学や数学史の本は、資料集のような機能も持っているのです。
数学には無数の定理があります。「数学する」ためには、それらの定理をよく理解しておく必要があります。しかし、あらゆる定理を覚え、理解しておくことは、なかなか難しいことです。
そこで、数学の本をたくさん読んでおくと、
「確かこんな感じの定理があった気がするし、その定理の証明がこの本に書いてあったような気がする」
と考えることができ、実際にその証明を読むことができます。定理の証明を理解すれば、その定理を縦横無尽に扱うことができるようになるので、気持ちよく「数学する」ことができるようになるのです。


いかがでしたでしょうか。
念のため付け加えておくと、数学や数学史の本は、それを読むこと自体も十分に楽しいことです。
数学の美しさは、「公理→定理→定理→…」という論理の塔にあります。現代の数学の本はすべてこの手法を踏襲しているので、一冊の数学書をじっくり読めば、美しい彫刻を見たときのような感動を得られるでしょう。
もし今回の記事を、少しでも「面白い」と感じたのなら、ぜひ色々な数学の本を読んでみることをオススメします。

本日の私の記事は以上。
明日はKinebuchiTomoさんの
 https://twitter.com/kyoto_np/status/670606351505190914 の解答
です。京大のあの入試問題の解答のようです。お楽しみに!


P.S.
プレアデス動画の新作は、現在鋭意作成中です。
今年中には何とか上げたい……。
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三角形の各頂点を通る外接円があることの証明は高校の教諭が教えてくれた記憶があるなぁ
内容は覚えてないけどわかりやすい説明だったことは覚えてるけど、如何せんその内容の記憶が…
わかりやすい説明と記憶に残る説明は別物ですからね(言い訳)

プレアデス動画待ってます、頑張ってください
15ヶ月前
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コメントありがとうございます。
私も「この部分は高校(大学)で習って、『面白い』って思った記憶もあるんだけど、なんだっけ……」となっている事柄はごまんとありますねw

プレアデス動画、頑張ります。
15ヶ月前
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