• その65:2017年 夏虫草

    2017-08-18 05:234

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    ≪注意≫
    このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
    記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
    なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添って
    もらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。
    ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※≪2017年の夏虫草≫
     今年の夏に見つけた虫草まとめです。これら以外にも案内されて見せてもらったものもいますが基本自分のフィールドで自力発見したものだけにしています。




     

    ハナヤスリタケ
     以前虫草の大師匠たるどろんこさんに案内していただいて(記事:その51)見たことはありましたが、地元での自力発見は初です。というか菌生菌の坪を地元で見つけたのはこれが初! 今まで宿主になるツチダンゴはいくつも見ているのに肝心の虫草が全然生えないとぼやくのもこれまでです。

     ただ今回見つけたハナヤスリタケ、どろんこさんに案内されて見たものとは違うように思っています。そもそも案内された時に見たのは春先でこれを見つけたのは梅雨時期。春と秋に出るキノコ、もしくは梅雨と秋に出るキノコというものはいますが、春と梅雨に出るキノコというのはあまり聞きません。気温の変化で見たらざっくりこんなイメージ。


     そしてもう一つ気になるのは宿主のツチダンゴです。春先に見たものは外皮に大理石模様の入るアミメツチダンゴという種類でしたが、今回梅雨時期に見たものは模様のないノーマルのツチダンゴ。実はこの違いがけっこう大事だったりします。

     先の記事(その51)でも書いている通り、ハナヤスリタケは春型と秋型の二種類がいると言われています。そしてその違いがどうやら宿主によるらしいのです。聞いた話によると春型のハナヤスリが出るのはアミメツチダンゴで秋型のハナヤスリが出るのは普通のツチダンゴ。アミメツチダンゴは西日本に多く、無印ツチダンゴは東日本に多い傾向にあるのだそうです。

     以上のことを踏まえ、今回見つけたハナヤスリタケは秋型のものかそれに近い種なのではないかと考えています。なので次の課題は秋に同じ場所を探して出ているかどうかですね。地元で見つけるとこういった定点観察がしやすくて助かります。




     

    ツブノセミタケ
     もういいっちゃもういいってくらい見てきた虫草ですね。成熟すると保護色で見つけにくいやつなんですけど、若いうちだと結構簡単に見つかります。私の目が虫草に慣れてきたというのもあってか、今年はもう散々見つけてきました。なので基本見つけてもスルーしています。

     ただ一回とある公園内でのキノコ調査に出たときに見つけたのはデータを残すために採取しました。4枚目の写真のがそれです。よりにもよって長いのが出てきたので「ツブノセミタケ実は短い説」を唱えてきた私にはいろんな意味で苦しい相手でした。あ、でも今まで私が掘ってきた数で言えばやっぱり短いやつのが多かったからまだ自説が崩れたというわけではありませんね。今後検証していくためにはより多くのサンプルが必要になってくるでしょう。
     なのでもう二度と掘りません。




     

    クモタケ
     何気に地元でずっと探している相手です。絶対いるはずなのにどうにも見つかりません。
     この写真は海一つ向こうの香川県で撮影したものです。ちょっと神社にお参りに行ったついでに周りの山を歩いていたらいい具合の発生地を見つけました。クモタケはとにかく群生する虫草なようで一本見つけたら周りにあるわあるわ。全体で100本以上は出ていたんじゃないかと思います。そんだけ出るのに宿主が途絶えないのはなぜなのか。単に数が多いだけか、もしくはクモタケの出る時期が産卵した後だとか上手いことやってるのかもしれませんね。




    クモ生アナモルフ
     多分コエダクモタケあたりだろうと思っています。以前まだ成熟していないのを見つけていて(記事:その57)成熟しただろうという頃合いに見に行ったらこれでした。有性胞子を作るテレオモルフはできておらず、無性胞子を飛ばすアナモルフだけができていました。
     おそらくこれは今年の梅雨のせいだと思われます。梅雨入り前にそこそこ雨が降っていたので菌糸伸ばし始めたのに、パタッと雨が止んだせいでテレオモルフからアナモルフに切り替えたとか。一概に全部がそうとは言えませんがテレオモルフとアナモルフではテレオモルフの方が栄養や環境への条件が厳しいようです。実際にテレオモルフを使って胞子を飛ばした後、残った栄養でアナモルフを作るというようなものも見ることがあります。
     それにしても成熟楽しみにしてたのになぁ……。




     

    ハチタケ
     これも前々から探していた虫草。普通種も普通種なのに全然見つからず、何が普通種だ! この野郎! お前らみんな見つけてるからそうやってすぐ見つかるとか、そこらへんにいるよとか言えるんだよ! と半ばキレ気味になっていたところ、他の虫草を探しているときにあっさり見つかりました。

     しかもその後も見つかる見つかる。この夏だけで6か所くらい見つけました。
     そこら辺にいるね、こいつ。
     ただ見つかるのは小型のハチから出ているのが多く、特に一枚目のベッコウバチの仲間から出ているのは3回くらい見つけました。ハチタケの宿主はハチだったら小型から大型まで幅広く出ます。小型のハチからでは上のような小さな子実体しか作れませんが、これが大型のスズメバチ、特に女王蜂から出ていたりするととてつもないことになります。


     こんな具合に。さっきのもハチタケ、これもハチタケ。悔しいことにこれを見つけたのは私ではないんですよね。発生している場所はわかったので、次はこういう立派な個体を探すようにします。目指せスズメバチ! でも生きてる奴は帰れ!




    ハチ生アナモルフ
     ハチの繭から出る虫草。ずっとメタリジウム属の仲間だと思ってましたが、アカンソマイセスという意見も出ているのだとか。とりあえずこの場はハチ生のアナモルフとだけ。右の写真は繭を剥がして中のサナギを見たものです。色味が赤くて気持ち悪いなと思いながら作業してました。この画像で宿主が何かわかったりしないかな? 虫屋さんお願いします。(分野違いを盾にした無茶ぶり)




     

    ウスキヒメヤドリバエタケ
     小さすぎて何が何やらわからないのはご愛嬌。とにかく小さな虫草です。宿主はミズアブの幼虫。アナモルフであるマユダマヤドリバエタケが群生している坪でぽつぽつとウスキヒメヤドリバエタケが見つかります。実はこう見えて結構探しやすいほうの虫草です。小さいのは小さいのですが、土の色に白色が目立つので探していたらすぐ目に入ります。ハチタケ同様に今年に入ってから急に目について見つかったやつです。
     ただ分布に偏りがあるみたいで、県北の方では3か所くらい発生を確認しているのに対し、県南では見たことがありません。宿主の好みか虫草の好みか、冷涼な気候を好むようです。


     クリーニングしたのがこちら。アブの幼虫って要はウジ虫ですよね。ブロマガ用にリサイズしているのでわかりにくいですが、先端の結実部には淡い黄色の子嚢殻ができています。




     

    ウンカハリタケ
     名前の通りウンカから生えるハリタケ型の虫草。一枚目からわかるとおり小さいは地味だはでかなり見つけにくい虫草です。子嚢殻が微細なのも特徴で、ルーペで覗くまでぱっと見子嚢殻がついているのがわからないほど。

     このウンカハリタケは一度広島の方の坪を案内していただいたときに教えてもらった虫草です。最初に紹介したハナヤスリタケもそうですが、案内された相手を地元で見つけることができるというのは教えられたことをちゃんと身に付けられているようで嬉しいものですね。こうして知識や経験を受け継いでいくことが教えてくださった先輩方への何よりの恩返しだと思っています。こういうこと言うと「いや飯でもおごって返してくれよ」とか言われそうですが、
    私はこれが何よりの恩返しと思っていますので。






    不明虫草
     よくわからなかった奴ら。というかどっちも未成熟なので判断の仕様がありません。ベテラン勢になったらこれだけでも絞り込んだりできるのでしょうか。8月中にもう一度見に行って、その時に成熟していることを祈ります。コエダクモタケの二の舞にはなってくれるなよ。



     これらの他にも岡山県内ではオサムシタケやジムシヤドリタケ、コメツキムシタケなど見ていますし、案内された広島の坪ではフトクビハエヤドリタケやツキヌキハチタケなども見ています。こうして見ればこの夏だけでかなりの発見があったことに驚きます。虫草を勉強し始めて3年。まだまだ新米のつもりでいてもそれなりの経験は積んでいるようです。採取に関してもツブノセミタケ相手に臆するようなことはなくなりましたし、当然ギロチンだってしていますが、それも含めて自らの糧にできていると思います。

     まあ何が言いたいかと言いますと、私もそろそろ新米虫草屋の域を出てベテランとは言わずとも中堅どころにはなれたんじゃね? みたいな? いや実際のとこ観察会で講師の真似事みたいなのもやったし、既にある程度なら人に教えられるレベルなのでは?

     ――そんなことをネタ交じりにでも考えていた矢先、それは現れました。

     ちょうど記事:その64で紹介したハチスタケを探していた時のことです。ハチスタケを見つけるためにまずウサギの糞を探していた私は別のものに目をとめました。ムラサキホウキタケモドキが生えている中に一本だけ異なるシルエット。表面に見える粒々はまさしく虫草のそれでした。私は他のメンバーに一声かけて、その虫草を相手にすることにしました。




     この時点で私はまだ相手が何者なのか理解していませんでした。子嚢殻が斜めに埋まった斜埋生と緑色を帯びた色合いからメタリジウム属の何かだろう。その程度の認識で土を掘り始めたのです。

     掘り始めて1分。相手がなんであったのかに気付く。
     掘り始めて5分。憧れだった相手を見つけたことに喜び、昂揚感に包まれる。
     掘り始めて10分。事の重大さに気づき始める。
     掘り始めて20分。見つけたことを後悔し始める。
     掘り始めて30分。呪詛の言葉を一人吐きつづける。
     掘り始めて40分。絶望に支配される。
     掘り始めて50分。虚無。

     そして採取を開始してから1時間強。地中の菌糸を見失った私は最後の望みをかけてスコップによる一括掘りを決意。奇跡を信じて土塊を掘り出し、対象を完全にロストしました。私は呆然と自分の掘り返した穴を覗きこみ、そういえば途中経過の様子とか全然撮影してなかったな……なんてことをぼんやりと考えていました。

     今まで採取難度の高いと言われる虫草にはいくつかであってきました。地下部が長いツブノセミタケも採取しましたし、菌糸が脆いマヤサンエツキムシタケには連敗しつつも近づきつつあることを実感していました。しかしこいつは、そんなちっぽけな自負さえも吹き飛ばす圧倒的な力で私の心を打ち砕いていったのです。




     その名はカンピレームシタケ。
     ただひたすらに長く、そして細い。採取難度最高クラスの虫草界のラスボスです。一時間強の時間をかけて私が掘り出したのは15㎝ほどの長さでした。しかしこれも図鑑などを見るにまだ1/3程度でしかありません。掘れば掘るほど穴は深くなり、作業スペースは狭くなり、光源は遠く暗くなる。掘っても掘っても終わりが見えない。たどり着く気配すらない。ゴールも知らずに走らされるマラソンのように体力は削り取られ、精神はすり減り最後にはただ無心で掘りつづける無間地獄。全てが台無しになった時、私の自尊心は粉々に崩れ去っていました。

     いやマジで、調子乗ってすんませんでした……。靴舐めます……。


     結局掘り当てることのできなかった宿主はハチのサナギだとか甲虫の仲間だとか言われています。そもそも発見数が少ない上に見つけてから採取するのが難しく、ベテランの虫草屋にさえ二度と掘りたくないと言わしめるレベルです。掘り始めて数分は「おいおい、もしこれ採取しちゃったら俺、相当ドヤ顔できるんじゃないの?」とか思ってましたが、思って数秒で「あ、これダメな奴だ」とわかりました。

     図鑑では暫定的にメタコルジセプス属(現在はメタリジウム属)に置かれていますが、それも先ほど説明した緑色系の色合いと斜埋生の子嚢殻といった形態的特徴によるもので、妥当なものかどうかは検討を要するとのことです。つまりまだ詳しいことはわかっていないということです。この個体が採取できていれば何らかの研究の一助になったかもしれませんが、とりあえず言えるのは分布地域に岡山があるということくらいですかね。

     ほんと力及ばず、申し訳ありませんでした……。
     今日から床でご飯食べます……。


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  • その64:2017年 夏キノコ

    2017-08-18 05:2231

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    ≪注意≫
    このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
    記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
    なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添って
    もらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。
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     どうも御無沙汰しております。先日ようやっと八丈島遠征の記事を書き終えたところでまた期間が空いてしまいました。もともとこのブロマガは動画編集よりもインスタントに報告ができるということで始めたのにこれでは本末転倒もいいところです。その八丈島の記事にしたって6月の遠征をまとめるのに2か月近くかかってるわ、伸ばしに伸ばしてなかなか完結しないわで、ご批判の声には返す言葉もございません。

     なので謝りません。

     嘘ですごめんなさい。更新頑張ります。
     そもそもなぜこのような体たらくになってしまったのか思い返してみると、一番の原因は私が7月中に予定をぶっこみすぎたことに尽きます。7月(正確には6月終わりから8月初め)はキノコにとっての最盛期の一つですので、あちらこちらで観察会や調査が実施されていました。過去の私は調子に乗って参加できるものすべてに顔を出し、結果として7月は毎週必ずどこかの山に出るということになっていました。
     そのせいで部屋にこもって作業する時間も減り、写真はたまって整理も追いつかず、あげく疲れがたまってやる気が起きないという有様でした。30超えると基礎体力よりも回復力のなさを実感しますね。とりあえず今後は身の丈にあった活動計画を立てていこうと思います。


    ≪2017年の夏キノコ≫
     というわけで言い訳はこのくらいで本題です。先述の通り、八丈島遠征以外にもこの夏は何度も山に出ており、当然それなりの収穫をしています。ただこれらをまた個別に記事にしていればいつ終わるのか見当もつかないので、今回は夏の間に見たキノコ・虫草の中で面白かったものや気になったものなどを抜粋してまとめてみたいとおもいます。今回はキノコ編です。





    Alpova diplophloeus(アルポバ ディプロフロエウス)
     初っ端から和名なしのキノコ。地下生菌の仲間で外見的特徴と胞子の大きさ(長さ約6㎛×太さ2~3㎛)から判断。もともとアルポバ属の仲間だろうなとは思ってたんですけど、切断面を見て、(あれ? 変色性あるの?)と思い込んでからが長かった。

     図鑑には変色性なんて書いてないし、そもそも載ってるの一冊くらいしか持ってないしでこれは不明菌扱いかなと。そのあともう一度見に行って再度観察したところ、これは変色性というより汁が染み出してるだけだとわかりました。先入観って怖い。






    アナアキアカダマタケ
     上の地下生菌と同日に見つけた別の地下生菌。初めはアカダマタケかホソミノアカダマタケのどちらかだろうと思っていたので持ち帰って胞子観察。

     アカダマタケなら胞子は長さ10~16㎛×太さ9~13㎛の広卵型
     ホソミノアカダマタケなら長さ5~8㎛×太さ3~4㎛の長楕円型
     ところが本種の胞子は長さ10㎛×太さ5㎛の紡錘形

     アカダマタケにしたら胞子が細いけどホソミノに比べたらでかいという特徴から上記のアナアキアカダマタケと判断しました。ただこのアナアキアカダマタケ、今までアカダマタケと混同されてた種でまだ学名もついていないキノコです。とりあえず新称として図鑑に載ってるのでそっちを採用しときました。




     

    アオゾメクロツブタケ
     どうせなので最初は地下生菌でまとめてしまいましょう。名前の通り強い青変性のあるキノコです。元の色は真っ白ですがちょっと触るだけでも即座に青く変色していきます。

     こんななりをしていても実はイグチの仲間。アイゾメイグチの系統に近いんだそうです。言われてみれば青変性ってイグチの仲間に多い印象があります。ちなみにこの青い色自体も空気に触れていると次第に退色するので標本などに残すことはできないみたいです。






    アケボノドクツルタケ
     今まで何度か紹介してるキノコで今更っちゃ今更なんですけど、個人的に可愛い写真が撮れたので乗っけておきます。かつてはドクツルタケの低地型とされていましたが現在は別種扱いでタマゴタケモドキの白色変種とされています。なので学名はAmanita subjunquillea var. alba。傘中央が色づくのとツバが黄色いのが特徴。よく似たのでニオイドクツルタケってのもいますがこいつは塩素みたいな臭いがします。この写真の個体は這いつくばって臭いを嗅いで確認したのでアケボノの方でいいでしょう。断定するには試薬がいるんですけど。




    フカミドリヤマタケ(ヒスイガサ)
     草地に生える綺麗な緑色のキノコ。ヌメリガサの仲間で肉質がやや透明がかっているので翡翠のような美しさで、その色合いから以前はヒスイガサと呼ばれていました。ただ新種として登録された名前はフカミドリヤマタケ。この仲間にはアカヤマタケとかトガリベニヤマタケとかいるので色の部分だけ変えてこういう名前になったようです。

     名前の体系的にはまとまってるし、特徴も踏まえた名前ではあるのですが正直言うと私はヒスイガサの方が好きです。というかキノコ屋同士で話す時も「あのーほら、昔ヒスイガサって呼ばれてたやつ」といった具合でヒスイガサの方が通りがいいです。

     こういうのってキノコの中には結構あって他にもタマゴテングタケモドキなんかもアカハテングタケの方が通じやすかったりします。キノコの和名って実は学名のようなルールとか拘束力とかないのでヒスイガサを広めていって多数派にしちゃえば名前変わるんじゃないかなぁと密かに狙ってます。ヒスイガサヒスイガサヒスイガサヒスイガサヒスイガサ……。






    ヤナギマツタケ
     どこら辺がマツタケなのか謎なキノコ。あやかり鯛的なもんだろうなと思ってます。本種はモエギタケ科フミヅキタケ属のキノコで全然マツタケとは関係ありません。傘表面のしわとフミヅキタケの仲間に見られる顕著なツバが特徴的で、よく自前の胞子を積もらせて暗褐色にしています。それは胞子飛ばす邪魔になってんじゃないの? ヤナギと名前にありますが樹種は広葉樹なら割と幅広く出るようで、公園の木や街路樹からも出ることがあります。梅雨時期から初夏にかけてはいろんなところで目にするキノコです。




     

    ツエタケの仲間
     以前からツエタケは再分類が必要で色々検討されているとは聞いていましたが、最近購入した図鑑で細かく載っていたのでよっしゃじゃあこいつを特定してやろうと思い写真を撮りました。ところが帰って図鑑を見てみたところ判別には胞子観察が必要とのことで結局何なのかはわからずじまい。ヒマラヤツエタケかチェンマイツエタケのどっちかだと思います。




     

    アカヤマドリ
     夏を代表する食用キノコ。今年は当たり年だったのか、タイミングが良かったのかあちこちで腐るほど生えてました。というか腐ってました。イグチの中でも本種は特に虫に食われやすいイメージです。そんな中運よく生き残ったまま成長したのがこの個体。傘径はおよそ23㎝という大物でした。まあ割ってみたら悲惨なことになってそうですけど。




     

    コウラグロニガイグチ
     クロニガイグチにしては赤変性がないし、ウラグロニガイグチにしては管孔が大きいし色も明るいな。ということで調べてみたところ行き着いたのがコウラグロニガイグチ。ウラグロニガイグチの一変種という扱いらしいです。名前の通り小型のキノコで柄の根元が赤みを帯びるという特徴とも一致。やや珍しいらしく今回見つけたのが初めての相手でした。




    アカダマキヌガサタケ
     動画にもしたキノコですね。左が成長初めで右が生長後。大体一時間くらいでこれだけ伸びます。実はもっと初期の段階から見つけていたんですがそれは写真に収めていませんでした。何故かというとイノシシに掘り返されて引っこ抜けてたから。そう、実はこの写真のアカダマキヌガサタケ、引っこ抜けてたのを私が植えたものなのです。

     このポイントでアカダマキヌガサタケを見つけた私は、一つ今にも割れそうな個体があることに気づきました。そこで翌日の朝方、意気揚々と同じポイントへ向かったわけです。ところがそこには前日にはなかったイノシシの食事跡が! 近くにあった既に伸びきっていたアカダマキヌガサタケの頭部が綺麗になくなっていたのでこれ狙いで掘り返していたようです。

     引っこ抜かれた個体は私の見込み通り先端が破れてこれから伸びるという状態でした。私はせめて胞子を飛ばしてくれとその個体を真っ直ぐ植え直し、他に生長し始めている個体がいないか探しまわりました。しかし20分ほど捜索しても見つかるのはまだ卵の状態の幼菌ばかりでこれはもうだめかと思い、荷物を置いた場所に戻ってきたら、
    あれ、こいつ伸びてるじゃん……。

     完全に引っこ抜かれて菌糸もちぎれたはずのそいつは元気に伸び伸びしておりました。どうやらキヌガサタケって幼菌の卵を破ってからはバネ仕掛けのびっくり箱のように自動で伸びていくみたいです。そういえばカゴタケなんかも幼菌に切れ目入れたら勝手に開くって聞いたことがあったっけ。そうと知っていれば最初から撮影に入っていたものを……。無念。




    ヌメリコウジタケ
     傘表面の大人しい色合いとは裏腹に管孔の鮮やかさが美しいキノコ。ひっくり返してみてはっとさせてくれる、こう言う奴らは嫌いじゃないです。ていうか好き。コウジタケというキノコがいて、それの粘性がある版みたいなのが名前の由来でしょうけど言うほどコウジタケとは似てないです。別属のキノコですしね。




     

    アメリカウラベニイロガワリ
     分布は日本と北アメリカ。アメリカにも広く分布してるのでこういう名前になりました。クラピのキノコはこいつでいいか。色変わりの名の通り強い青変性があります。どこ触ってもすぐ変色しちゃうので取扱いには気を遣う相手です。




    タマゴタケ
     言わずと知れたメジャーどころですね。夏のキノコですけど真っ盛りの盛夏には生えず、初夏か晩夏あたりに生えてきます。こいつは梅雨の終わりに見つけた奴らで、同じポイントでは去年の秋にもタマゴタケを見つけています。(記事:その37を参照

     ただその時に見つけたタマゴタケは柄のだんだら模様が薄い個体でした。以前からこの近辺で秋に見つけるタマゴタケは柄の模様がなかったり薄かったりするものばかり。しかし今回見つけた初夏のタマゴタケは柄に綺麗な模様が出ていますね。となるとこの模様の有無って成長速度による違いなんじゃないでしょうか。初夏の暑くなってくる時期は柄の生長に表皮がついていけずに破れて模様を作り、秋に向かって涼しくなっていく時期だと破れずに一緒に伸びていくとか。まあ詳しくはよくわかりませんけど。
     



    ハチスタケ
     蜂の巣みたいなのが名前の由来。ハチノスタケというキノコもいますがそれとは全く別のキノコです。生えているのはウサギの糞。ウンコです。ウンコウンコウンコ! どうにもこのハチスタケ、かなりウサギに依存した生態をしているようです。
    ●ハチスタケが胞子を飛ばす
    →周囲の草に付く
    →ウサギが胞子ごと草を食べる
    →糞をする
    →生える

     というサイクルのようで、むしろウサギに食われることで胞子が活性を得ているのではという説もあったりなかったり。そんなウサギと密接なキノコなので学名はPodosordaria jugoyasan(ポドソルダリア ジュウゴヤサン)。十五夜満月と兎をかけた実に素敵な学名です。ロマンティックね(←のんき)

     もともとはかなり発生の限られた珍キノコだったようですが、最近はそこそこ見つかってるらしいです。海岸沿いの砂地などに多いのだとか。これ見つけたのは山の中にある公園内ですけどね。数人がかりでウンコを探し回って見つけました。いえーい、ウンコー!





     

    コガネヤマドリ
     実はあんまり自信ないやつです。後ろに(?)つけてもいいくらい。とりあえずはコガネヤマドリでいいとは思うんですけどね。図鑑見ると傘裏の管孔が離生するっていうんですよ。ここら辺は結構揺れる部分なので個体差のうちでいいと思います。いいんじゃないかな。いいってことにしておいてください。





     




     

    不明菌
     よくわからなかった奴。本当はもっとたくさんあるけど全部貼ってたら切りがないので適当に代表として。どっちもイグチ科というところまでは特定しました。頑張ったでしょ?

  • その63:梅雨八丈島アイランド(3日目~夜編~・4日目)

    2017-08-09 17:4631

    ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
    ≪注意≫
    このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
    記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
    なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添って
    もらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。
    ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

     本命と思われたポイントが不作に終わり、そのまま日も暮れてしまいました。osoさんが大場さんたちに連絡して確認してみましたが、コガネムシタケのポイントはやはり今回探した場所が一番実績のある場所なのだそうです。今年の梅雨は雨の降り方が変な感じだったので発生時期がずれてるのかもしれません。最終日の午前中は一度見たポイントを再度洗いなおそうということにして夕食を食べに下山しました。

     この日の夕食は前々から決めていたカレー屋さんへ向かいます。前に八丈島に来た時も一度来ているのですが、シェフはTVチャンピオンで優勝した実績もあるという腕前の持ち主で次も必ず来ようと話していました。
     ところが案内板などみじんもない小道を進み、ようやくたどり着いた店先には一枚の張り紙が。何ということでしょう、タイミング悪くちょうど私たちの滞在期間中は臨時休業をしているとのことでした。ガーンだな。
     結局夕飯はこちらも前回来た時に気になっていたピザ屋に入店。かなり本格的な出来立てピザを美味しくいただきました。メニューの中にキノコばっか載せたピザがあって正気を疑いましたが、osoさんたちがそれを注文するのを見てこの世界は狂っているのだと実感しました。

     食事を終えるころになると外はとっぷり日も暮れていました。ロッジに向かうため車を走らせると思いもよらぬ光景が広がっていました。初めはちらほら小雨でも降ってるのかと思いきや。そこら中を飛び交う。どうやらシロアリの巣立ちの人ドンピシャでかぶってしまったようです。ロッジの人も窓ガラスを掃除しながら毎年こんなもんですよと苦笑いしてました。場所によっては車がスリップするレベルで集まるんだそうです。osoさんとアメさんはそんなシロアリを食べに出てきたであろうヤモリを捕まえてきゃっきゃきゃっきゃと遊んでました。

    oso「鳴いた! ヤモリが鳴いた!」
    アメ「柄もなんか違ったし、あれはいつものヤモリじゃないですよ!」

     はしゃぐのはいいんですけど、せめて私が来るまで肝心のヤモリを捕まえておいてくださいよ。と、ここで一日ぶりにしょうどんさん登場。先のヤモリの話をしたところ、外来種のヤモリなんだそうです。

    私「鳴くのは外来種だったのか」
    しょうどん「そもそも普通のヤモリも外来種」

     この他にもどでかいサツマゴキブリを見つけてアメさんが奇声(歓喜の)を上げたり、ロッジから出て10秒ほどの茂みで虫草らしきものを見つけたりと色々ありましたが割愛します。ゴキブリは自己責任で画像検索してください。そもそもしょうどんさんがやってきたのは偶然でもなんでもなく、これからまたガイドをお願いするからに他なりません。大の大人が揃って夜の中を出かける……。もうおわかりですね?
     そう発光菌探しです。

     発光菌というのは文字通り暗闇で光るキノコのことです。前の記事でも書きましたが八丈島は発光菌がたくさん見られることで有名で、それ用の観光ツアーもあるくらいです。空港のお土産屋さんにあったご当地キティちゃんのキーホルダーも発光菌でした。前回来たときはエナシラッシタケを見ることができましたので、今回はそれ以外のものが見たいなぁと何気に私の中ではコガネムシタケと同レベルに楽しみにしていた相手です。ちなみに前日にご一緒した大場さんは発光菌のスペシャリストなのですが、この日は別の場所(確か四国)で発光菌の調査を行っているため不在です。

     先行するしょうどんさんの車についていくと何やら見慣れた風景が見えてきました。たどり着いてみれば何のことはない、日中にコガネムシタケを探し回ったのと同じ場所じゃありませんか。まさかここに発光菌がいたとは。まああいつら明るいうちは目立たないし、虫草と探す場所違うんで気づかないのは当然なんですけど。



     ガイド経験もあるしょうどんさんの手馴れた案内を聞きながら向かうと、遠目にもわかる発行体。シイノトモシビタケの群生です。今まで朽ちた倒木から出ているのは見たことがありましたが、立ち木から生えているのは初めて見ました。枯死した部分から出ているのだろうとのことです。

     縦方向に伸びる生え方は見ていてとても壮観ですね。ただ写真に収めにくいのが難点。生えている場所がかなりの急斜面になっているのでうかつに近づくこともできないし。

     と思っていると近場で見れるポイントもあるということでさっそく案内してもらいました。







     間近で撮ったシイノトモシビタケ。左がフラッシュありで、右が長時間露光。シイノトモシビタケは発光菌の中でも明るいやつなので割と簡単に撮影できます。そしてシイノトモシビタケの撮影を済ませるといよいよメインの相手の登場です。



     すっげぇ……。
     息をのむ美しさとはこのことですね。眼前に広がったのは得も言われぬほどの荘厳な光景でした。これは巨木の側面を写した写真なのですが、暗闇にそびえ立つ巨影を覆い尽くす光の群れはまるでホタルの一群のようです。これがギンガタケというキノコです。小型の発光菌で、とにかく大量に群生するのが特徴。そのためタイミングさえ合えばまさしく銀河のような姿を見ることができます。


     フラッシュをあててとるとこのようなキノコ。とても小さく発光する力もそれほど強くないので、今回のように綺麗な状態で見れるのはなかなか難しいのだそうです。しょうどんさんの話ではやはり直前の雨が効いたのだろうとのことでした。この旅では色々振り回された空模様でしたが、すべてはこのための布石だったと考えれば納得できますね。

     いややっぱ無理だわ。一日分の宿泊費返せ。



    4日目(最終日)朝

     昨晩の発光菌観察から一夜明け、最後の朝です。寝る前はちょっと早起きして海でも見に行こうかと思ってましたが睡魔には勝てませんでした。八丈島に二回もやってきて一度も海見てないってのもどうなんだろうなと思いつつ、またロッジの食堂で朝食をとりました。
     話し合いの結果、この日は昨日見たポイントの近くを見て回るということになっています。昼には空港へ行かなければならないので残された時間はわずかばかりです。


     宿泊したロッジの目の前にあるやぶの中に生えてたクモタケ。初日にサソリモドキとか捕まえてた場所です。しかしこんな目と鼻の先に生えていたとは、虫探してる時には全く気が付きませんでした。

     そして最後の望みをかけて行ったコガネムシタケ探しですが、結論から言うと見つかりませんでした。残念。宿主となるクロコガネの死体はいくつか見つけたので、やはり場所自体は間違いなさそうです。こうなってくるとタイミングが悪かったか、日ごろの行いが悪かったかのどちらかですね。後者に関して私は全く心当たりがないので、他のメンバーの誰かでしょう。


     斜面に生えていたモウセンゴケ。野生の食虫植物ってあまり見たことがないので新鮮な感じです。こんな風に生えてるんだなぁ。


     というわけで最後の最後で何とも尻すぼみで終わってしまった感が残りましたが、これにて3泊4日の八丈島合宿は終了です。メインに据えていたコガネムシタケに出会えなかったのは心残りであるものの、ヤブニッケイモチ病菌や虫草各種、ギンガタケなど普段目にすることができない相手をしっかりと観察することができました。また同行した仲間たちや現地を案内してくださったお二方とも親交を深めることができ、実に有意義な4日間だったと言えます。

     この後は空港でお土産を買ったり、天気が崩れてきてこれまた飛行機飛ばないんじゃね?ってなったり、単位が危ないアメさんが帰れないと本当にまずいと本気で狼狽したりと色々ありましたがそこら辺は書かないことにしておきましょう。天気はギリギリ持ったようで無事予定していた昼の便で帰ることができました。


     飛行機に乗って久しぶりの羽田空港。私が「ハンバーガー食べたい! ハンバーガー食べないなら一歩も動かん!」と大人らしい提案をしたため最後にみんなでハンバーガーを食べることになりました。念願のハンバーガーと一緒に名残惜しさも飲み下すと数日間の思い出が鮮明に思い出されました。色々とトラブルもあったけれど、実に楽しい旅でした。


     ありがとう、八丈島。
      さようなら、八丈島。


     コガネムシタケはもうちょっと空気読め。