その57:梅雨虫草ドライ
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

その57:梅雨虫草ドライ

2017-06-19 00:56
  • 5
  • 1

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
≪注意≫
このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添って
もらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 梅雨です。梅雨といえばキノコです。他に何もありません。
 毎年のこととはいえ、この時期はやはり心が躍りますね。世間一般で言えば梅雨なんて雨がうざいとか湿気がうっとおしいってなもんでしょうが、キノコ趣味をやっていればむしろそれらを心待ちにするようになります。週間予報の雨マークを見るだけでもうわくわくものです。

「ちょっと待ってください!」
 
 ヒゲじい!
「ということはキノコを趣味にすれば憂鬱な季節も楽しく過ごせるってことじゃないですか! これはもうキノコを始めるしかないですな」
 ヒゲじいは黙ってて!!!!!!!


 と、言う具合にハイテンションで勧誘をしたいのはやまやまなのですが、今年はどうにも調子が良くないですね。というのも梅雨入りしたというのにまるで雨が降りません。空梅雨もいいとこです。こんなんでよく梅雨入り宣言できたな、例年の梅雨前線に恥ずかしくないのか。おかげで地面はカラッカラに干からび、キノコもろくに出てこない始末です。

 とはいえ天候ばかりはどうしようもありません。こうしてその年ごとに違いが出るのも自然趣味の面白さの一つということにしておきましょう。それにキノコがないからといって嘆くことはないのです。

 キノコがなければ虫草を探せばいいじゃない。
 


 以前どこかで言ったかもしれませんが、虫草の類はキノコの中でも特に湿度が大事です。発生する場所は基本的に沢筋や伏流のある場所など、水辺の近くで年中湿っているようなところばかり。要は虫草の生える環境は雨が降らなくてもジメジメしているところということです。

 なので今回は虫草を探しに県北へ行ってきました。虫草の出るような環境なら、雨がなくてもキノコも出ているかもという目論見もあります。

 最初にやってきたのは去年の冬辺りに見つけた滝へと続く沢沿いの道。ここは絶対いいぞ、絶対何か出る……! と思いながら何度も通っていますが、今のところろくな成果はなし。椿がたくさん植えられているので、春先にツバキキンカクチャワンタケが嫌になるほど生えていたくらいです。でもツバキンなんて地元でも見れるし、何なら一時期自宅の庭でも観察できました。これはあてが外れたかなぁ、と薄々感じ始めていたところ、ひょいと木の下を覗くと、



 いるじゃねえか! 枝にしがみついているのはガ生の冬虫夏草。おそらくガヤドリナガミノツブタケの仲間でしょう。子嚢殻が出ていないため、現段階では何とも言えませんが。それにしてもいい個体です。去年の冬に別の場所で見つけたものよりも格段に大きい! 伸びている菌糸の数も段違いで、これは成熟が楽しみですね。



 ちなみに去年見つけていたのはこれ。(この動画で紹介した奴です→sm30231263
 宿主は小型のガです。これが昨年の12月頃の写真。その後、どこかに飛ばされないようにわかりやすいところに隔離しておいたのを見に行くと――。


 こうなってました。全体を白いモフモフした菌糸で覆われています。それ、自前の菌糸? それともかびちゃってたりする? こいつもこのまま要観察ですね。




 ガヤドリの発見に気分よく歩いていくと、沢筋にかかった倒木から何やら出ていますね。ハチノスタケあたりかなと思って近づくと、管孔の大きさが違います。3枚目の写真を見るとかなり細かい管孔をしているのがわかりますね。ハチノスタケはもっとこれが大きく明瞭になりますし、アミスギタケはキノコ自体がもっと小さい。ということでこれはタマチョレイタケの材上型でしょう。管孔が古くなると崩れてくるという特徴も一致します。
 どうにも聞き慣れないこの名前は漢字で書くと『玉猪苓茸』。猪苓(チョレイ)とはイノシシの糞のことです。うんこ。実はこいつちょっと変なキノコでして、地面に生えるときと今回のように倒木から生えるときの2パターンがあります。この地面に生えるタイプのタマチョレイタケは土の中に菌核と呼ばれる菌糸の塊を作るのです。この菌糸の塊がイノシシの糞っぽいことからこの名前が付きました。ただ材上型の個体だとこの菌核は見ることができません。地上型なら掘り出して見たかったのに、残念。

 その後場所を変えてえっちらおっちら山道を登ります。一時間ほど登ればブナの原生林にたどり着けるので、そこをメインに探していきましょう。この後にまた他の場所も見ていきたいので道中はなるべく立ち止まらずに進みます。こういう時にキノコが少ないと誘惑されないという利点があります。



 それでも見つけちゃうのが私なんだよなぁ~。……いや、実際は以前見当をつけておいた場所で誘惑に負けて探し回っちゃったからなんですけどね。このひょろりと伸びているのは木の根ではなく虫草の仲間です。子嚢殻ができていない未成熟な段階ですがおそらくコメツキムシタケでしょう。昨年これまた別の場所で見つけたときは(見つけた動画→sm30061785)もうすっかり干からびていましたが、今度はまだ早かった様子。でも場所はわかったし、夏場には成熟した姿が拝めそうです。

 このコメツキムシタケを見つけたのは前にツブノセミタケを見つけたヒノキ林です。ということはそもそもの発端もいるんじゃないの?


 てなわけで、なおもしつこく探していくとやっぱりいました。ツブノセミタケです。これもまだ未成熟な段階で子嚢殻も何も分かったものではないですね。


 念のためわかりにくい人のために。この白いのがそうです。ゴミのようにしか見えないかもしれませんが、むしろ幼菌の方が白く目立つので探しやすいです。これが成熟してくると褐色で完全に背景に埋もれてしまうので、先に幼菌を見つけておいて目印を付けるなどしておくと観察がしやすくなります。



 

 その後、ブナ林までたどり着いて定点観察を続けているシロキツネノサカズキ近縁種の発生を確認。例年通りなら成熟して胞子を吹き始めるのは7月の中頃のはず。今年は胞子とか子嚢とかの検鏡をしっかりやってみたいです。



 近くでタマタマを見つけました。はて、何のタマだろうか。いっそ割ってしまうか。と手を伸ばしたところで成菌がいることに気づきました。この卵はキツネノロウソクというキノコの幼菌です。生長すると左の卵を割って右のキノコが出てきます。もうこれは完全にあれだね。
頭部に付いたドロドロしたものが胞子の詰まった粘液で、これが悪臭を出してハエなどを呼び寄せます。臭いにつられて飛びついたハエに粘液が付着して胞子を運んでもらうという寸法。
 よく似たキノコにキツネノエフデというのもいます。こちらは頭部と柄の境界があいまいという違いがあります。臭いのは一緒。


 大きさはこのくらい。短くて小さいね。


 カミキリムシ。


 アワフキムシ。虫草生やせ。


 一通りの観察も終わったので山を下りて最後のポイントへ。ちょっと時間を使ってしまったので転ばない程度に急ぎ足。最後に来たのは以前コウボウフデを見つけた場所です。ここではいくつか虫草を見つけた実績もあるし、梅雨時期に来たら何かいるはず!
 

 まず見つけたのはコメツキムシタケ。こいつらって今まであんまり見つけたことないけど、けっこうそこらにいるみたいです。ツブノセミタケと同じで成熟すると色味が暗くなって見つけにくくなります。ぱっと見で見つかるのは今のうちだけ。



 

 ついで見つけたのはコガネムシタンポタケ! こいつはやっぱりいいですね。好きな虫草です。右下のものは材から零れ落ちたのか、むき出しのまま地面に転がっていたのを拾い上げたものです。宿主はハナムグリなど甲虫の幼虫で、見ればしっかり幼虫の形を残しているのが実にいい。他の場所で発生地は見つけていましたが、ここは一つの材から5つも出ているという群生具合。しかも車を止めて5分もかからずに来れるという好立地。こりゃ家賃高いぞ。


 軒並み未成熟な個体ばかりの中で一つだけ子嚢殻を作っているやつがいました。逆になんでこいつだけ成熟が進んでいるんだろ? 上のものと比べて、周りにコケが生えているのが上手いこと湿気を保ってくれたのかな。



 それから沢筋のイヌガヤから出ているカイガラムシキイロツブタケ(未成熟)


 まだ赤みが強いカメムシタケ(未成熟)


 クモ生の何か。トルビエラの仲間でしょうけど、この類は名前のついていないのがいくらでもいるので、成熟しても名前はつかないかもしれません。ついたとしても面倒くさくてつけないかもしれません。そもそも成熟したとしてサンプル採取できんのかな。片方とか岩壁だし。


 といったところで、今回見つけたキノコと虫草は以上になります。全体の感想としては虫草が未成熟な個体ばっかりでしたね。成熟が進んでいたのはコガネムシタンポタケの中の一つだけだし、それもまだ胞子を出すまでには至っていませんでした。これはどうにも勇み足だったか? もう一週間二週間、いや一雨二雨降るのを待っていればもっとちゃんとした成菌に出会えたのでは?
 というような考えも浮かびましたが、そんなのは所詮結果論です。むしろコメツキムシタケなどは若い段階だからこそ見つけられたというのもあるでしょう。何より成長具合を観察していくのも大事なことなのです。今回未成熟な状態を見ておいたことで、次回成熟したものと比較することができますからね。幼菌・成菌・老菌とどのように変化していくのか、しっかり経験しておけばある程度の個体差にも対応できるようになるのです。



 ……ただまあ、それでも通う回数はできるだけ減らしたいところではあります。ハイシーズンってレンタカー高いんですよね。

広告
×
こちらもコガネムシタンポタケ出ましたが…キノコバエめ…
カイガラムシ生未熟が数十個体着いた枝とかもありましたし、何よりこれからが虫草シーズン開幕の季節で、楽しみですよね。
1週間前
×
連日乾燥注意報がでてますね。梅雨とはいったい・・・うごごごご

以前から目をつけて温存しておいたものが、観察できるものなんですね。
キノコってもっと足の早いイメージでした。
1週間前
×
なんと素晴らしいスポット!
これで近所だったら最高なんでしょうけど…
1週間前
×
>>るねこさん
コガネムシタンポは他の虫草に比べて柔らかいイメージがありますね。乾燥標本にするとものすごく縮みますし。こちらで見つけるカイガラムシは小さい種類ばかりなのか、子嚢殻も少ないものしか見当たりません。枝にくっついてるコブみたいなやつを探しています。

>>いぼがえるさん
予報を見る限り来週くらいから雨にも動きがあるようです。とあるデータによると降水量が増えてから3~4週間ほどでキノコの発生につながるとのことで、本番は7月に入ってからになりそうですね。

>>錦田さん
近場で見つけられたら言うことなしなんですけどね……。県北や県央はいい山が多いのですがいかんせん私の住む県南の方では……。いや私が見つけられてないだけかもしれませんけど。
1週間前
×
あ、こちらのカイガラムシ生はカイガラムシキイロツブタケでなく、カイガラムシツブタケ系統です。追培養成功しないんですよね〜…
1週間前
コメントを書く
コメントをするには、
ログインして下さい。