• 夢幻機動ゼレイブ キャラクター紹介

    2015-04-25 15:264時間前
    おかげさまでゼレイブも6話まで出来ました。
    というわけで、一旦搭乗キャラクター紹介をします。
    栢山さんのデザイン画があるキャラクターについてはそれも紹介します。
    疑問点や文章的におかしい点はコメントしていただけるとありがたいです。

    メカデザインは大変だからメカ紹介はまた今度だなぁ。

    ■レイセン(レイセン・ワタツキ)
    綿月姉妹のペット。16歳。
    ショートカットの淡水色の髪をした少女であり、
    9年前の儚月抄事変の際の行動がきっかけで綿月姉妹の目にとまり
    玉兎たちにとっては憧れの座である、閣僚である綿月姉妹のペットの座についた。
    素直で優しい性格で、正義感が強い。
    また、状況への適応がかなり早く、危機的状況でも慌てることなく
    自分のすべきことを行うことができる胆力をも持ち合わせている。
    偶然ゼレイブに乗ったことがきっかけでムーンライズ隊のパイロットとなり
    短い搭乗期間にもかかわらず、めきめきと操縦の腕を上げている。
    しかし、天性の才能という言葉でも説明できないような能力を多々見せることがあり、
    幼少期の記憶が無いことからもその過去には謎が多い。

    ■ワカバ(ワカバ・ラムゼイ)



    学園都市コロニー・イオタ3の工業系ハイスクールに通う玉兎の少女。
    16歳。赤いツインテールの髪型が特徴。
    親友のユリとジェーンと3人でレイセンにイオタ3を案内していたところ、
    コロニーが幻想同盟の襲撃を受け、戦艦ムーンライズに救われる形で
    ムーンライズ隊に加わることになる。
    ムーンライズが危機に陥った時に勝手に出撃したことがきっかけで
    ワンダーアーマーのパイロットとなった。
    気が強く、特にライバル意識を燃やしているレイセンに対しては
    きつくあたってしまうことが多いが、内面は世話やきで優しい。

    ■ユリ(ユリ・シラカワ)



    学園都市コロニー・イオタ3の工業系ハイスクールに通う玉兎の少女。
    おさげの緑色の髪が特徴。16歳。
    ワカバとは親友同士であり、いつも一緒にいる。
    イオタ3が幻想同盟の襲撃を受けた際、戦艦ムーンライズに救われ
    ムーンライズ隊に加わることになる。
    争いを好まない優しい性格で、ムーンライズ隊に加わった後も
    戦いには参加せずに、料理などの家庭的な部分での手伝いに従事している。
    ワンダーアーマーに乗って戦いに加わるワカバを心配するとともに
    自分から離れていっているように思い内心では恐れている。

    ■ジェーン(ジェーン・ロシェール)



    学園都市コロニー・イオタ3の学校に通う玉兎の少女。
    ボブカットの金髪の髪が特徴。14歳。
    人見知りで口数が少なく、臆病な性格。
    ワカバやユリとはかつての先輩後輩の関係であり、レイセンの案内の際に
    ユリが彼女に声をかけたため参加することにした。
    幻想同盟の襲撃によってワカバたちとは離ればなれになるものの
    乗っていた脱出艇がアルファ7にて幻想同盟に捕まったことで捕虜になり、
    ムーンライズ隊に助けられワカバたちとは再会する。
    しかし、アルファ11において、他の避難民たちとともに本土へ帰還させられてしまう。

    ■エーディン(エーディン・メルヴィル)


    月面軍第8航空小隊所属の戦闘機パイロット。
    階級は准尉であり、年齢は18歳。
    非番の時に母校のあるイオタ3を訪れていたところで幻想同盟の襲撃に巻き込まれ、
    偶然出会ったレイセンとともにゼレイブに乗り込む。
    戦艦ムーンライズに助けられた後は、ムーンライズ隊のパイロットのひとりとして、
    戦闘機・スカイイーターで戦う。
    ワンダーアーマーの操縦は非常に苦手であり、ゼレイブに搭乗した時は
    揺れた衝撃で頭をぶつけて負傷してしまう。
    男のような口調・一人称や、短い髪などから男とも思われることも少なくないが、
    れっきとした女性兵士である。
    なお、月面軍の中でも数少ない人間の軍人であり、
    ウサ耳型の通信機は周りに合わせて身につけているだけである。

    ■ゼロ(ゼロ・ゲイン)
    ムーンライズ隊のエースパイロット。階級は少佐。25歳。
    サングラスを常に身につけており、ネイザン以外の前では決して素顔を見せようとはしない。
    ワンダーアーマーの操縦技能は天下一品であり、量産型のワンブでも高い戦果を発揮する。
    軍人としての厳しさと仲間に対する優しさを兼ね備えており、
    ムーンライズ隊のリーダーとして周囲からの信頼は厚い。

    ■鈴仙(鈴仙・優曇華院・イナバ)
    魔導戦争の英雄であり、ゼロ・ゲインの正体。
    月面軍所属当時の最終階級は大佐。
    綿月姉妹のペットであったが、英雄である自分を祭り上げることでしか
    政府を維持できない魔導戦争後の月面政府の腐敗ぶりに月の未来を憂い、
    自ら反逆者の汚名を被りながらも月から去った過去を持つ。
    なお、その件は表では「逃げ出した」と言われてはいるが、
    鈴仙がそういう人物でないことから月では信じていない者は少なくない。

    月面軍に潜入していた目的は、不穏な動きを見せる豊姫の監視であり、
    同時に月面軍を探るスパイとしても動いていた。
    正体発覚後、捕らえられ裁判なしの銃殺刑を言い渡されるが、依姫の協力を得て脱出。
    ムーンライズ隊と共に幻想郷へと向かうこととなった。
    なお、正体発覚後もエーディンの案で戦争が一段落するまでは
    サングラスを身につけゼロ・ゲインを名乗り続けることにした。
    自分の意志で複数の性格を切り替えることができ、幻想郷での優しい薬売りの姿も、
    ゼロとしての隊長の姿も切り替えられる性格の一つである。
    どの性格が本来の素なのかはネイザンだけが知っている。

    ■ネイザン(ネイザン・マツオ)


    戦艦ムーンライズの艦長である女性。29歳、中佐。
    魔導戦争経験者であり、その戦闘の中で鈴仙をかばった際に右腕を失っている。
    ゼロとは旧知の仲であり、よくふたりきりで話している姿を見かけられる。
    艦長としての能力は高く、非戦闘時は隊の母親役として仲間を暖かく見守っている。
    なお、失った右腕を義手に代えないのは軍上層へのあてつけのためであり、
    とくに片腕で困っている様子もない。

    ■霖之助(森近 霖之助)
    幻想郷出身の商人。
    幻想同盟に拉致され、アルファ7にて監禁されていたところをムーンライズ隊に救われる。
    その際に新型ワンダーアーマーに乗ったことがきっかけで
    ワンダーアーマーのパイロットとして数えられてしまう。
    物腰柔らかそうな外見に似合わず意外と武闘派でもある。

    ■パルスィ(水橋 パルスィ)
    幻想郷の民間人。
    幻想同盟に拉致され、アルファ7にて監禁されていたところを
    ムーンライズ隊に救われる。
    その際に新型ワンダーアーマーに乗ったことがきっかけで
    ワンダーアーマーのパイロットとして数えられてしまう。
    戦いに巻き込まれたことを嘆いている。
    なお、幻想郷出身の非戦闘員がワンダーアーマーでも戦果を出せるのは、
    ワンダーアーマーの操作系が思考による補助を利用したものであり、
    日々の弾幕勝負や荒事で戦いに対しての動き方を心得ているからである。

    ■わかさぎ姫(わかさぎ姫)
    幻想郷の民間人。
    幻想同盟に拉致され、アルファ7にて監禁されていたところを
    ムーンライズ隊に救われる。
    その際に新型ワンダーアーマーに乗ったことがきっかけで
    ワンダーアーマーのパイロットとして数えられてしまう。
    人魚のため下半身が魚であるが、擬態魔法で人の足に見えるようにしている。
    普段は足が悪いということで車いすに乗って過ごしている。

    ■クライド(クライド・エイムズ)


    幻想軍の軍人。階級は軍曹相当。26歳。
    霖之助達を救出するために片道切符のワープでやってきた。
    霖之助とは気が合うため仲が良い。
    軍人と言っても幻想郷の軍組織はラフであるため軍隊的な堅苦しさや規律とは縁遠く、

    クライドも軍人というよりは用心棒みたいな感じである。
    戦闘ヘリ乗りであり、ワンダーアーマーの操縦はしたことがない。
    そのため宇宙空間の戦闘では役に立てないのを気にしている。

    ■依姫(綿月 依姫)
    現在の月の最高権力者である豊姫の実妹。
    常に帯刀をしており刀を媒介に神の力を使うことができるが、
    ワンダーアーマー相手は効果が薄いのと、
    ワンダーアーマーの操縦をしたことが無いため戦いには参加できない。
    鈴仙が月にいた頃は彼女を頼りにしており、当時はやや依存していた。
    強く逞しく振舞っているが、心は繊細で内面はじつは弱い。
    豊姫が自分を邪魔とし、幻想同盟を使って消そうとしていることを偶然知ってしまい、
    ムーンライズ隊や、銃殺刑を言い渡された鈴仙とともに月を離反。
    幻想郷にいる永琳を頼るために地球へ向かうこととなる。

    豊姫(綿月 豊姫
    現在の月の最高権力者。依姫の実姉。
    かつては月政府で防衛省にあたる部門を担当していた閣僚の一人であったが

    開戦の際の幻想郷側の先制攻撃で他閣僚が全滅したため、唯一残った彼女が
    実質的に最高指導者の座に収まることとなった。
    戦争以前は穏やかで優しいのんびりとした性格であったが、最高指導者となってからは
    冷酷な判断をためらわず下すことも多くなり、厳しい人物となった。
    敵対組織であるはずの幻想同盟ともつながりを持っており、鈴仙や依姫を消そうとするなど
    黒い部分が見え隠れしているが、大半の月の民達はそのことに気づいていない。

    ■ミオ(ミオ・ヴァイス)


    「月面の白き隼」の通名を持つ月面軍のエースパイロット。大佐、25歳。
    白と見間違うほどの銀色のウェーブがかかったショートの髪型。
    鈴仙とは魔導戦争時代の同期であり、彼女と同じく数少ない
    戦争を五体満足で終えた兵士の一人。
    魔導戦争の最終決戦では同じ部隊に所属し、共に戦争終結を果たした功労者でもある。
    しかし、鈴仙ばかりが英雄として讃えられたことと、
    鈴仙が閣僚のペットの座を蹴って地球に下ったため、
    鈴仙のことを非常に強く憎んでいる。
    豊姫からはその鈴仙に対しての憎悪を認められ、ムーンライズ隊の掃討を命じられる。

    ■レーア(レーア・エンロート)
    月面軍の私掠部隊「コスモ・パイレーツ隊」の隊長。中佐、35歳。
    深緑色のロングヘアーと左腕の義手が特徴。
    海賊部隊とも呼ばれ、汚れ役を担う隊を率いるだけあって豪傑肌な人物であり、
    多少のルール違反は気にせず、禁忌のビーム兵器を低出力とはいえ兵器で使う。
    しかし、完全に冷酷非道でも心が無いわけでもなく、
    肉親をも平気で消そうとする命令を下す現在の豊姫には疑問を抱いている。


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  • 夢幻機動ゼレイブ 第6話「コスモ・パイレーツ」

    2015-04-20 23:522

    1~5話までの「導入編」が終わり、この話から地球を目指す「逃亡編」となります。
    面白い作品にするために、頑張っているけれど
    小説という形態はやはり難しい…。
    もっと文章や物語構成のうまい人に手直ししてもらいたいなぁ。
    そんな弱音を吐きつつ、6話をどうぞ



    ミオの愛機、ペリグヴァインがブースターを切り離し減速した。
    ペリグヴァインのレーダーには友軍母艦を示すアイコンが点滅している。
    「あれか…」
    ミオはそう呟くと、バーニアを吹かせて戦艦「レゴリス」へと着艦した。
    「本土から大佐殿が、わざわざご苦労だねぇ。
     あたしは『コスモ・パイレーツ隊』隊長、レーア中佐だよ」
    ミオがレゴリスのブリッジに上がると、髪の長い30半ばの玉兎が挨拶をした。
    「私とて、豊姫様の命令じゃなければ
     上官に敬語も使えないような連中なんかと
     一緒の作戦になんかゴメンだよ」
    「へっ、言ってくれるねぇ。
     どうせあたしらは汚れ役専門の私掠部隊だ。
     本土の正規連中ほどお高くとまれないもんでさ」
    開き直る態度のレーアに、ミオが続いて言った。
    「フン…離反した味方殺しに駆り出されるには
     うってつけの部隊ってことか」
    「あんたも人のことは言えないだろう?
     聞いてるよ、開発途中のモノを勝手に使って
     こんな辺境に飛ばされてきたんだろう?」
    ミオは、そう言われてムーンライズ隊を取り逃した後のことを思い出した。

    ミオが、ガチャリと扉を開け執務室に入る。
    執務室の椅子には、不敵な笑みを浮かべる豊姫が鎮座していた。
    「狂化兵士を使ったそうね」
    「はっ…」
    あの時、ミオは鈴仙を逃がすまいと開発中の狂化兵士の1番目である
    サーディスを勝手に目覚めさせ、投入したのであった。
    結果、ユリを撃墜したもののムーンライズ隊の逃亡を止めることはできなかった。
    「まだ狂化兵士は不安定なのよ。
     あなたが鈴仙に執着しているのは知っているけれど
     まだ未完成の彼女たちを使うのは良くないわね」
    ミオは豊姫にそう言われ、頭を下げた。
    「申し訳ありません…。
     罰ならなんなりと」
    「あなたには、コスモ・パイレーツ隊に合流してもらうわ」
    「コスモ・パイレーツというと…あの海賊部隊ですか?」
    「正確には私掠部隊。
     敵輸送船の略奪や反体制派の粛清みたいな
     後ろ暗いことを影で行う汚れ役の部隊よ。
     今のあなたが行くには、うってつけじゃない?」
    「…何を仰りたいので?」
    「フフ…。
     ムーンライズの航路はある程度予想はできているわ。
     コスモ・パイレーツは、その途中に今いる。
     鈴仙をその手で殺してあげたいんでしょう?」
    「…!」
    「すでにWA用の加速ブースターを用意させてるわ。
     先回りして、コスモ・パイレーツと共に
     ムーンライズを沈めてあげなさい」
    「ハッ…!」

    憎き鈴仙をその手で殺したいと考えているミオは、
    確かにコスモ・パイレーツ向きだとは思った。
    しかし、エリート意識のあるミオは素直に認めるわけにはいかなかった。
    気持ちを抑えつつ、ミオは冷静に提案をした。
    「…連中は仲間を一人喪ったばかりで
     士気が落ちているはず。
     捉え次第、攻撃をかけよう」
    「フン、せっかちだねぇ?
     まあ、こっちもさっさと終わらせたいもんだしね。
     けれど、艦には豊姫様の妹やペットが乗っているんだろう?
     始末しちまってもいいのかい?
    「豊姫様はそれでも良いとおっしゃっていた」
    その言葉を聞いて、レーアは少し嫌な顔をした。
    (肉親や従者を平気で切り捨てるような奴が今の月のトップかい…)
    「お前たち! 準備をするんだよ!」
    レーアは不快感を表に出さないようにそう叫び、ブリッジを去っていった。
    「鈴仙…今度こそお前を…!」
    ミオは、静かに闘士を燃やしていた。


    光を失った真っ赤な目をして、個室の中でワカバは泣いていた。
    「う…うう…」
    親友のユリが目の前で、自分を守るために死んだという現実は
    それまでただの学生として生きてきたワカバには、辛すぎる現実であった。
    「…どうだった?」
    「ああ…やっと落ち着いたわ」
    ワカバの部屋に外から鍵をかけ、鈴仙は廊下で待っていたネイザンと一緒にブリッジに戻った。
    ブリッジに戻った鈴仙に、エーディンが掴みかかって叫んだ。
    「ゼロ少佐…!
     ワカバを、ゼレイブに乗せるって本当かよ!」
    「彼女のことを思ってのことよ…。
     このまま、狂気の瞳が発症したままでは
     精神に傷が残る可能性があるから…」
    「あんたが原因なんだぞ!
     あんたがスパイ行為なんてするから、
     関係がなかったユリが巻き込まれて、死んじまった!」
    鈴仙はそう叫ぶエーディンの手を払いのけた。
    「私は、あなた達を騙していたんだからね。
     恨んでくれても構わないわ。
     責任を感じているからこそ、ワカバには生きてもらいたい。
     戦いで発症した狂気の瞳は、
     戦いの中で克服させるしかないのよ」
    「狂気の瞳は、放置すれば不安定な心のまま
     自傷行為に走ったり、自殺をする可能性もある危険な状態なの。
     通常は数カ月間のカウンセリングを行って
     徐々に治していくものなんだけど…」
    「今、この艦にはそんな時間も余力もない。
     だから、戦場という極限状態の中で戦いの恐怖を…
     ワカバには克服してもらう」
    ネイザンと共に、鈴仙が言った。
    「そんな方法があるかよ!
     それでワカバが死んじまったらどうするんだ!
     真っ赤な目になって、あんなになっちまって!」
    「そうならないようにゼレイブに乗せるのがわからないか!」
    鈴仙が大声で反論した。
    「今、発進前に搬入できた物資でゼレイブの強化改造をやらせている。
     主に、生存性向上のためのね。
     …私は、調整を手伝ってくる」
    そう言って、鈴仙は格納庫の方へ行ってしまった。
    追いかけようとしたエーディンを、ネイザンが止めた。
    「艦長…どうして…!?」
    「鈴仙は…必死なのよ。
     魔導戦争の時に、私たちの仲間が大勢死んだわ。
     多くは戦場で…だけど、仲間を失ったショックで発症した
     狂気の瞳がもとで自ら命を絶った仲間も多かった…。
     ちょうど、今のワカバくらいの歳の娘もいたわ」
    「魔導戦争…」
    鈴仙が英雄となった戦争。
    しかし、英雄とならざるを得なくなった過程で多くのつらい経験をしたのであった。
    その話を聞いて依姫がブリッジを訪れた。
    「鈴仙は…今も過去と戦っているのね…」
    「依姫様…」
    「ごめんなさい。
     あなた達を巻き込んでしまって…。
     私が、姉様を止めることができれば…」
    依姫がエーディンに頭を下げた。
    エーディンは慌てて依姫をとめた。
    「あ、頭を上げてくださいよ!」
    「はい…」
    依姫が顔を上げるのを確認して、エーディンは少し間を置いて考えを話した。
    「俺だって、豊姫様のやろうとしていることは危険だと思うし
     止めなきゃいけないと思ってますよ。
     ただ…考えが、まとめられないだけなんです…。
     知り合いが戦いで死んだなんて経験…した事無いですから」
    そう言って、エーディンは部屋にこもっているレイセンのことを思い出した。
    「そろそろ失礼します。
     レイセンのやつの様子も見てやらないと。
     気丈なフリしてたけど、あいつも辛いだろうから…」
    「ありがとう。頼みます…」
    依姫の言葉を受け、エーディンはレイセンの部屋へと向かった。
    「…若いですね」
    「ええ…」
    エーディンの後ろ姿を見て、ネイザンと依姫が呟いた。

    (はっきりと症状の出てたワカバばかり気にしてたけど、
     あいつもこんなこと初めてだっただろうに…。
     狂気の瞳が発症しているかもしれないからな…)
    そう思いながらエーディンは廊下を進み、レイセンのいる部屋をノックした。
    「…どうぞ」
    「入るぞ…その、なんだ。
     お前も辛いのならこもってないで相談を…」
    そう言いつつ、レイセンの目を見たエーディンは驚愕した。
    レイセンの目は、目に光こそあれど今のワカバと同じ真っ赤な色になっていたからだ。
    「お前…その目…」
    「はい…狂気の瞳…ですよね…」
    「気分は大丈夫なのか…?」
    「気分は…大丈夫なんです。普通です。
     むしろ、頭のなかがスッキリしているくらい…。
     私…何が起こってるんですか…!?」
    エーディンは答えられないまま立ち尽くしていた。

    一方、霖之助は格納庫で整備長を手伝っていた。
    霖之助、パルスィ、わかさぎ姫、クライドの4人は鈴仙と相談し
    幻想郷出身であることをまだ隠しておくことに決めていた。
    月面軍からの離反のショックや、ワカバの狂気の瞳などの問題が解決し
    落ち着いた時に明らかにしようと取り決めたのだ。
    必要以上に、艦内に混乱を増やさないためである。
    「子供が死ぬのを見るのは、辛いな…」
    ふと、霖之助が心境を漏らした。
    それを聞いて、整備長が口を開いた。
    「ああ、あっちゃいけねぇさ。
     しかもあの娘は、兵士ですらなかった…。
     状況的にしかたなかった、で片付けるしかねぇとはわかっちゃいるが
     そう認めたくはないもんだ…」
    「整備長…」
    「わしらが整備するのが、パイロットの棺桶であっちゃならねぇ。
     こいつらワンダーアーマーを、パイロットを乗せて、
     無事に帰してくれる乗り物にするために
     わしらはこうやって、整備しているんじゃよ…」
    寂しそうな顔で話す整備長を見て、彼が過去にも送り出したパイロットが
    帰ってこないということを経験したのであろうと、霖之助は感じた。
    何か言葉をかけてあげようと考えていると、鈴仙が格納庫に入ってきて整備長に作業の進捗状況を聞いた。
    「整備長、ゼレイブの改修の方はどう?」
    「ああ。
     最新型のプラズマ・シールドに、装甲には耐プラズマ性コーティング。
     それから、フルドライブの時間を伸ばすために
     2倍の容量のバッテリーを2本に増設。
     それから自動防御パターンの動作と、
     フルドライブのエネルギー供給先にバーニア部分を追加しておいたぞ。
     お前さんたちの機体にもプラズマ・シールドだけはつけておいた」
    「プラズマ・シールド?」
    「プラズマエネルギーの膜を生成し、攻撃を防ぐ防御装置じゃよ。
     プラズマエネルギーの電荷吸収効果によって
     実弾はもちろん、プラズマ弾やスパーク弾も防げる、
     WA同士の戦闘用にと開発されたものをちょろまかしてたんじゃよ」
    「WA同士の戦闘…幻想同盟との戦いのための装備が、
     同軍同士の戦いの役に立つとは皮肉なものね…」
    鈴仙はプラズマ・シールドの発生ユニットを見上げながらそうつぶやき、整備長に礼を言った。
    「ありがとう。
     あとは…レイセンのやった操作感度設定を保存して初期化しないと…」
    「ああ…あの赤毛の嬢ちゃんを乗せるんだったな…。
     そういうのはわしらよりも、あんたのほうが詳しいじゃろ?
     すまんが、やってくれんかの?」
    「…わかったわ」
    鈴仙はそう言ってゼレイブのコックピットに登り、設定画面を開いた。
    保存する設定数値を見て、鈴仙はあることに気づいた。
    「私の設定と、全く同じ…?」
    エーディン曰くレイセンがめちゃくちゃにやったらしい
    ゼレイブの操作感度設定数値はすべて、小数点以下単位で鈴仙の設定と同じだった。
    通常、操作感度設定とはパイロットそれぞれで違うものであり
    すべて同じというのは、ありえないことである。
    (一体…なぜ…?)
    鈴仙は、数値の初期化作業をしながらしばらく考え込んだ。
    ピリリリ。
    鈴仙が考えこんでいると、ネイザンから通信が入った。
    「こちら鈴仙。どうかしたの?」
    「ああ、鈴仙。
     今、エーディンから聞いたんだけど、
     レイセンが狂気の瞳を発症していたの」
    「…無理もないわね。それで、症状の程度は?」
    「それが…彼女の症状は、克服後のそれなのよ…。」
    「…何だって?」
    鈴仙の中でまたひとつ、レイセンに謎が増えたのであった。
    カウンセリングで狂気の瞳を治療した場合は、その後に狂気の瞳になることはない。
    ネイザンもかつてはその方法で狂気の瞳を治療した。
    狂気の瞳を発症してもなお、正気を保っていられるのは
    鈴仙のように戦いの中で狂気を克服した者の中の一握りである。
    ネイザンから聞いたレイセンの状態が本当ならば、
    レイセンは過去に狂気の瞳を発症するような戦いを行い、かつ克服したということになる。
    たとえ、類まれなるWA操縦の天性を持っていたとしても、
    あの若さでそのような戦いに加われるものであろうか?
    それ以前に、魔導戦争終結からこの戦争が始まるまでにそのような戦闘が起こったであろうか?
    そう考えを巡らせていると、不意にけたたましく警報が鳴り響き、
    オペレーターの放送が格納庫に響き渡った。
    「15機のワンダーアーマーの接近を確認!
     識別は…月面軍私掠部隊『コスモ・パイレーツ』と判明!
     また、内1機はペリグヴァインの反応と確認!
     ワンダーアーマーパイロットは、至急発進準備を行ってください!」
    「ペリグヴァイン…ミオも来たわね…!」
    鈴仙はゼレイブのコックピットから飛び降り、エーディンが背負ってきたワカバをゼレイブのコックピットまで案内した。
    その傍らで、整備長がパルスィと霖之助に叫んでいた。
    「だから、オメーらの機体は宇宙用の気密処理ができてねーんだって!」
    「どうして3号機だけは大丈夫なのよー!」
    「んだって、3号機は水中用だもんで、
     気密はしっかりしてるし、変形は宇宙にも対応できるようになっとるんだって。
     おおう、わかさぎちゃん。
     車いすのまま乗れるように改造しておいたぞ!」
    「ありがとう、おじいちゃん!」
    車いすに乗ったわかさぎ姫は、そのまま3号機に乗り込んでいった。
    「わかさぎ姫…俺達の分まで頼むぜ」
    クライドが見送りながら言った。

    ワカバをゼレイブに乗せた後、自動発進モードを入れコックピットを出た鈴仙に、
    エーディンはサングラスを差し出した。
    「…これは?」
    「俺達と一緒に行動する間は、こいつをつけて
     ゼロ・ゲイン少佐でいてくれ。
     素顔のあんたのままだと、殴りたくなってくる」
    「…それで気が済むのであれば」
    鈴仙はサングラスを受け取って身につけた。
    「少佐…もしも、ワカバが死ぬようなことがあったら
     俺があんたを撃つ。いいな?」
    「そうならないように、お互いにフォローを頼む」
    ゼロになった鈴仙はそう言うと、ワンブ・ゼロに乗り込んだ。

    ワカバの代わりにワンブに乗り込もうとするレイセンに依姫が声をかけた。
    「レイセン、大丈夫なの…?」
    「はい、依姫様。狂気の瞳が出てから
     頭のなかがスッキリしているんです。
     今なら、ワンブでもいけます」
    「そう…気をつけてね」
    「はい!」

    「…幸運を祈っちょるぞ。
     ゼレイブ、自動発進!」
    整備長の号令とともに、カタパルトに乗せられたゼレイブが
    ワカバを乗せて宇宙空間に飛び出した。
    「ゼロ・ゲイン、ワンブ・ゼロ、出るぞ!」
    「エーディン、スカイイーター、出る!」
    「レイセン、ワンブ、行きまーす!」
    「わかさぎ姫、3号機、行きます!」
    その後を追うように、残りの機体も次々と発進していった。
    「ハハハッ!
     十人十色な顔ぶれだねぇ!
     選り取りみどりだ!」
    先行していたレーアがムーンライズ隊のWAを見て興奮した様子で叫んだ。
    「紫の奴は私がやる!
     他の雑魚は任せた!」
    ミオはそう言ってワンブ・ゼロの方へとバーニアを吹かせて向かっていった。

    「各機、ゼレイブを中心にフォーメーションを固めろ!
     3号機は後方から援護しろ!」
    ゼロの号令でゼレイブを囲むようにエーディン達は陣形を固めた。
    「鈴仙、覚悟ぉぉ!!」
    「チィッ!」
    ゼロは真っ直ぐ向かってきたミオ機のプラズマ・ライフルの弾丸を
    プラズマ・シールドで受け止めた。
    「ふん…面白い!」
    そのまま、ゼロはミオをゼレイブから引き離すように交戦しながら移動していった。
    「敵ワンブ接近!」
    「対空砲、迎撃開始!
     補給はできないんだ、無駄弾は撃つなよっ!」
    ネイザンの命令でムーンライズの対空気銃が火を吹いた。
    敵ワンブ部隊は対空砲火を受け散開した。
    「敵部隊の散開を確認!」
    「待ってました!」
    わかさぎ姫は、3号機のレバーを捻った。
    3号機のバックパック部からミサイルが発射された。
    ミサイルは敵ワンブに向かっていき、大きな爆発を起こした。
    「やった!」
    しかし、そんなわかさぎ姫の声をかき消すがごとく1機のWAが突撃してきた。
    「舐めるんじゃないよ! そんなミサイルで!」
    「見たことのないWA!?」
    「このあたしのカイメルから逃れられるものか!」
    レーアはそう叫びながらカイメルの胸部からビームの機関砲をゼレイブに向け発射した。
    ゼレイブをかばうようにレイセンのワンブが割り込み、シールドを展開して防いだが
    あまりの弾速のために数発はゼレイブにあたってしまった。
    「ああああっ!」
    「ワカバッ!」
    ゼレイブが大きく振動し、乗っているワカバがうめき声をあげる。
    「ビーム兵器だって!?
     禁止されているはずだぞ!」
    「あたし達が知るもんかい!
     戦いはルールを守るおままごとじゃないのさ!
     野郎ども! あのツノ付きをのしちまいな!」
    レーアの命令を受け、散開したワンブのうち数機がゼレイブに向かって来た。
    「守るだけじゃダメだ!
     敵の数を減らす!」
    エーディンはそう言って接近してくるワンブに向かって突撃を仕掛け、
    ミサイルと機関砲を乱れ撃った。
    それに続いて、わかさぎ姫は3号機を潜水艦形態に変形させ敵に向かっていった。
    「私もお手伝いします!」

    ゼロは、遠くからゼレイブに敵ワンブが集結していることに気づいた。
    「ゼレイブがっ!」
    「よそ見をしている場合か!」
    ペリグヴァインのプラズマ・サーベルがワンブ・ゼロをかすめた。
    「お前の相手は私だよ!
     せいぜい楽しませてくれよな!」
    ペリグヴァインはワンブ・ゼロから距離を取り、
    その周りを周回するような動きをしながらプラズマ・ライフルを連射した。
    ゼロは防戦一方となっていた。
    「くっ…!」
    ゼロはプラズマ・シールドで攻撃を防ぎながらもペリグヴァインの動きを注視していた。
    そして、一瞬だけわざとシールドの方向をペリグヴァインのライフルから逸らした。
    ミオはその瞬間を逃さず、プラズマ・ライフルを構えた。
    「そこだぁっ!」
    「もらった!」
    ペリグヴァインが発砲するよりも早く、ゼロは頭部のプラズマヘッドカノンを発射した。
    プラズマ弾を受けたペリグヴァインのライフルが、エネルギーの行き場を失い爆発した。
    「バカなっ、隠し武器!?」
    「はぁぁぁぁ!」
    爆発に怯んだ隙にゼロはハンドレールガンを連射しながらペリグヴァインに接近する。
    「負けてられるかぁっ!」
    ペリグヴァインは腰部からカギ状の刃を持つ武器を取り出し、レールガンの弾丸を素早い動きで弾いた。
    「プラズマ・ハーケンか…!」
    「お前にだけは…負けられないんだよ…!」

    「何をもたもたしているんだい!
     もういい、あたしがやるよ!」
    しびれを切らしたレーアが攻撃をかいくぐりゼレイブに接近し、
    先端にプラズマエネルギーを帯電させたチェーン状の武器を発射した。
    「速いっ!?」
    レイセンはそう言いながらもプラズマ・サーベルでチェーンを弾くが、
    その間にカイメルがレイセンのワンブの目の前に接近していた。
    「ショックウィップを防いだのは褒めてやろうかねぇ…!
     だが、カイメルはWAや魔導兵器の良いパーツの集合体さ!
     既成兵器が追いつけるものじゃないんだよ!」
    カイメルの素早い動きにはワンブに乗ったレイセンでは反応しきれず、
    プラズマ・サーベルで片足を来られてしまった。
    「あああっ!」
    「レイーッ!」
    レイセンのピンチに機関砲を乱れ打ちながらエーディンが接近するが
    軽くあしらわれた上にショックウィップを受けてしまった。
    「ぐあぁぁ!」
    「エーディン准尉!」
    「くっ…悪いがこれ以上は無理そうだ…。
     ワカバを…頼んだぜ…!」
    エーディンはそう言って傷ついた機体のままムーンライズに帰艦した。
    「さあ…次はお前の番だよ!」
    「ワカバ…!」
    レイセンは、未だ動かないゼレイブの方を見てワカバの名を叫んだ。
    「ワカバ…動いて…!」

    「うっ…ううっ…」
    ワカバはゼレイブの中で涙を流していた。
    「こんな…事になるなんて…」
    涙を流し泣きじゃくりながら、ユリとの会話を思い出していた。
    『ワカバ、依姫様に会えるんだよ!
     レイセン様ともお友達になれるかも…!
     一緒に行こうよ! ね!』
    ワカバと無理やり一緒に、レイセンの案内役として立候補した時のこと。
    『ああっワイヤーがっ…!』
    『ユリ!』
    『ワカバちゃん…!
     どうしてワイヤーを…!?』
    『一人にさせられるわけ…ないでしょ…!』
    ムーンライズに拾われる前、修理ポッドのワイヤーが切れた時のこと。
    『これ、ワカバにあげる!』
    『わ、私に?』
    『最近、ワカバ戦い続きだったから…お守り!』
    アルファ11の店で、ユリにお守りをもらった時のこと…。
    「ずっと…一緒だったじゃない…!
     どうして…あんただけ死んじゃったのよ…!
     ユリがいない世界なんかよりも、私も一緒に…」
    そういう考えをかき消すがごとく、
    レイセンが防ぎきれなかった攻撃がゼレイブに当たり、コックピットが激しく揺れた。
    「死ぬ…の…? 私…。
     消えるの…? ユリのように…」
    初めて月の賢者・八意永琳の伝記を読んで彼女のようになりたいと思ったことも。
    一人ぼっちだったところを話しかけてくれたことがきっかけで
    ユリと出会い、共に学び、遊んだ思い出も。
    死ねば全て消えてしまう。
    「嫌…!
     私が死んだら…ユリが…!」
    ユリとの思い出が消えることは、
    ユリの存在そのものが消えることに等しいとワカバは思った。
    「生きたい…死にたくない…!」
    ワカバが決意を固めるのに応じるかのように、ワカバの目に光が戻った。
    「こんなところで…負けたくない…!
     死ぬもんか…生きてやるんだァァァァ!!」
    ワカバはゼレイブのフルバースト・システムをオンにし、
    バーニア制御のペダルを目一杯踏み込んだ。

    「何っ!?」
    突然フルバーストにより光り始めたゼレイブを見て、レーアは一旦全速でゼレイブから離れた。
    「…ヤバイね、嫌な予感がする。
     態勢を建て直して再度攻撃を…!」
    そう言い終わらないうちに、猛加速したゼレイブがカイメルに追いついた。
    「逃すもんかぁぁぁ!!」
    「バカなっ! カイメルに追いつくだって!?」
    カイメルと並走しながらゼレイブが頭部のプラズマヘッドカノンを発射し、
    カイメルのバーニア部にダメージを与えた。
    「しまった!」
    速度が落ちたカイメルに向かって、ゼレイブがプラズマ・サーベルを抜き接近する。
    ゼレイブのサーベルの一線を、カイメルがプラズマ・サーベルで防ぎ、
    少しの間、鍔迫り合いをした後離れた。
    「…もう、誰も死なせやしない!」
    ワカバはゼレイブのフルドライブを、バーニアから武器に切り替え、
    プラズマ・シールドの照射方向を全面に集中させた。
    そしてそのまま、プラズマ・シールドをカイメルに向け、突撃した。
    「やぁぁぁぁ!」
    「くっ!」
    レーアのカイメルがプラズマ・サーベルで受け止めようとしたが、
    出力差によりプラズマ・サーベルを貫通し、
    ゼレイブのプラズマ・シールドはカイメルのコックピットのやや外した位置を貫いた。その衝撃でカイメルの右腕と頭部が爆発し、カイメルは動かなくなった。
    「くっ…とどめを刺しなっ!」
    レーアは敗北を察し、ワカバに向けて叫んだ。
    しかし、ワカバはフルドライブを解除して言った。
    「…殺すまではしない」
    「あたしに情けをかけるってのかい!?」
    「私たちの目的はあなたを殺すことじゃない…。
     私たちが生き伸びるために抵抗しただけ。
     戦えなくなったあなたに攻撃する意味は無いわ」
    「そんな綺麗事で!」
    「じゃあ言葉を変えるわ。
     エネルギーがもったいない!
     …これでいい? じゃあね…!」
    そう言って、ゼレイブがカイメルを蹴っ飛ばした。
    「小娘の言うことかぁぁぁ!」
    蹴られたカイメルはバーニアで姿勢制御することもできず、回転しながら離れていった。
    「野郎ども、作戦は失敗だ! 引き上げだよ!
     さっさとあたしを回収をし!」
    レーアは、かろうじて生きてた通信で叫ぶと、ため息を付いて呟いた。
    「屈辱だよ…。
     あたしに情けをかけるとはねぇ…。
     初めてだよ、そういうの…」
    その周りでは、コスモ・パイレーツのワンブが次々とカイメルに集まってきていた。

    「ちっ…撤退か…!」
    ミオは通信を聞いてワンブ・ゼロから離れ、離脱した。
    「次こそは必ず…お前を…!」
    ゼロは、そう叫び去るミオの姿に向けて言った。
    「あれが恨みの強さか…。
     ミオ…このままじゃお前が…」
    その言葉は、ミオには届かなかった。

    「ユリ…私は生きるよ。
     あなたの分まで…」
    光の灯った赤い目のまま、ワカバはゼレイブの中で呟いた。
    「ユリ…あなたが生きていたという事実を、
     消さないために…ね…」
    そう言って、ワカバはユリからもらったお守りを握りしめ、涙を流した。



    運悪くコスモ・パイレーツと幻想同盟に挟まれ形で戦うこととなったムーンライズ隊。
    その乱戦のさなか、レイセンと霖之助達は帰艦のタイミングを逃し
    農業コロニー・ガンマ3へと迷い込む。
    そこで彼らを待っていたのは、旧月面軍の軍人、バルであった。
    次回、夢幻機動ゼレイブ 第7話「ガンマ3に住む男」
    君は、月の果てに何を見るのか。



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  • 夢幻機動ゼレイブ 第5話「離反」

    2015-04-15 20:463

    対して応援されてないけど、話の節目の第5話です。
    リアル系ロボットものにはこういう話は不可欠だと重います。
    いや、無い方が本当はいいんですけどね。
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    あと、こんかいから次回予告入れてみました。
    それでは、どうぞ




    アルファ7を発ったムーンライズは、一日を経て目的地のアルファ11へと入港した。
    これで、ゼレイブを回収して機体をアルファ11へと届けるというムーンライズ隊の任務が終わったのだった。
    「ネイザン中佐、ご苦労様だったわね」
    入港が終わり、艦を降りたネイザン達に豊姫が言った。
    「ミオ大佐も、PVAシリーズをありがとう。
     これで、新世代WA開発の準備が整ったわ」
    豊姫はそう言うと、後の指示を士官に任せて去ってしまった。
    「豊姫様…?」
    自分に気づかなかったのか、豊姫が一言も声をかけなかったことが気になったが
    きっと仕事中だからなのだろうと、レイセンは思った。
    「ムーンライズ隊は民間の協力者も含めて、
     しばらくはこの基地に滞在してもらいます。
     ご不便をお掛けしますが、なにとぞ」
    豊姫から言伝を頼まれた士官が、ムーンライズ隊に言った。

    「どれくらい拘束されるのかな?」
    「イオタ3に帰れるかな…」
    案内された個室でワカバとユリが今後の心配を口にした。
    「拘束といっても、基地内はある程度自由に歩けるし
     軍関係者向けの商店街があるから、退屈はしないと思うわよ」
    二人にネイザンが言った。
    「あれ、ジェーンは?」
    レイセンが、個室にジェーンがいないのに気づいて言った。
    「あの娘なら、他の避難民たちと一緒に本国に向かったってよ」
    「ええっ!」
    エーディンの言葉に、ワカバが驚きの声を上げた。
    「そりゃ、あの娘は巻き込まれただけで軍艦に長時間いたわけでも
     兵器に乗って戦闘をしたわけじゃないからなぁ…」
    「私たちはどうなるの?」
    「さあなぁ、調書をとったり、報告書書いたり、面談したり、
     いろいろと手続きしてそれらが終わったら、解放かなあ?
     一週間くらいは覚悟した方がいいかもしれないぜ?」
    エーディンがそう言うと、ワカバは大きくため息をついた。
    「れ…じゃなかった、ゼロ少佐は?」
    「さあ? 用事を片付けてくるって言って
     どこかに行っちまったぞ?」
    部屋の隅で霖之助とクライドが言った。
    「あんたら、いい腕してたからさぁ
     軍に残るって選択肢はないかい?」
    エーディンが霖之助達に聞いた。
    「いや、それはちょっと…」
    「もったいねぇな~。
     人間の月面軍人仲間が増えるかと思ったんだが」
    「え、エーディンさんって玉兎じゃないの!?」
    エーディンの言葉にパルスィが驚いた。
    「まあな、軍人だからこの耳型無線機つけてはいるけど
     俺はれっきとした人間だよ。
     つっても、今の時代は相当珍しいけどな」
    エーディンが笑いながら言った。
    「そもそも、どうして兵士さんは
     玉兎ばかりなんですか?」
    「ん? ああ…。
     昔は人間と半々だったんだが
     玉兎のほうがなんか優秀だってんで…。
     なんでだっけ?」
    「ええー…」
    「ああ、思い出した。
     『狂気の瞳』があるからだな」
    「『狂気の瞳』?」
    「玉兎が強いストレスを受けると発症する一種の病気のようなもので、
     最初の発症時は脳の一部が麻痺して発狂状態になるんだが、
     一発それを乗り越えると、極限状態ですごい判断能力を持ったり
     直感が働いたりするんだとさ」
    「へぇー」
    わかさぎ姫がその説明に納得した。
    「でも、克服後の力を使えるのは一握りだからね…。
     単純に、玉兎のほうが身体的に優れてるからってのが
     大きいわね」
    ネイザンがそれに補足した。

    「…流石に表立った資料には残っていないか」
    ゼロが、基地の資料室を漁りながら呟いた。
    「と、なると…執務室か」
    そう言うと立ち上がり、豊姫の行動スケジュールを調べ始めた。

    ワカバとユリは、暇を潰すために基地内の商店街を訪れていた。
    「これ、ワカバにあげる!」
    ユリが目についた雑貨屋で買った首飾りをワカバに渡した。
    「わ、私に?」
    「最近、ワカバ戦い続きだったから…お守り!」
    「ありがとう。でも、もう戦うことはないよ、ハハハ」
    ワカバは嬉しそうに首飾りを身につけた。
    「どうかな?」
    「似合う似合う、かわいいよ!」
    ユリに言われて、まんざらでもないワカバだった。

    翌日、ネイザンを士官が訪ねた。
    「はい…ムーンライズを?
     …わかりました」
    「何があったんです?」
    「機体の搬出が終わったから、ちょっと遠くのドッグに
     ムーンライズを動かしてほしいんだって。
     ムーンライズクルーのみんなは観に戻って配置について!」
    ネイザンはそう号令をかけてクルーたちとともに出て行ってしまった。
    「レイセン、無事だったのね!」
    「依姫様!」
    ネイザンが出てしばらく後、依姫が部屋を訪ねてきた。
    依姫はレイセンをしばらく抱きしめた後、ワカバたちにお礼を言った。
    「ありがとう、あなた達が守ってくれたのね?」
    「い、いや…逆に守られてたというか…」
    「ワカバのおかげで、助かったの。ありがとう!」
    レイセンに素直に礼を言われて、依姫の手前悪態をつくわけにもいかず
    ワカバは照れることしかできなかった。
    「どうして依姫様はここへ?」
    「姉様のやり方に、異議を唱えようと思ったの。
     関係のないコロニーで新兵器の開発なんかをして、
     ワカバさんやユリさんのような罪もない人々を
     戦いに巻き込むようなやり方はどうかと思ったのよ」
    依姫はユリの質問に丁寧に答えると、そのまま去っていった。
    「…いつになったら動けるんだろうな、俺達」
    「…さあ…」
    クライドと霖之助がぼやいた。
    「そういえば、アルファ7の敵の新型、すごかったってね?」
    「ええ、ヴァチュスっていう小型の浮遊ビーム砲を使ってきて
     全方位からの攻撃を仕掛けてきたの」
    レイセンはワカバが振った話題を、思い出しながら答えた。
    「幻想同盟が?
     どうしていち武装勢力にすぎない幻想同盟はそんな技術力を持っているんだ?」
    「さあ…どうしてかな?」
    「そもそもおかしいんだよ。
     幻想軍ってのは、WAの開発能力すら持ってない。
     なのに、そう工業コロニーをいくつか抑えた程度で
     こっちでもないような武器がホイホイ作れるもんかね?」
    「…うーん、確かに」
    エーディンの突っ込みも確かである。
    現在、月面宇宙軍はその大半を対幻想同盟のために動いている。
    月面軍が兵力の半分を幻想郷に送っているとはいえ、
    一国の軍に匹敵する兵力を持ちながら幻想郷に協力をしている幻想同盟は
    謎の多い存在であった。

    「依姫、何かしら?」
    「姉様、民間人を隠れ蓑にするようなやり方は、
     やめていただきませんか!」
    執務室に座る豊姫に、依姫が力強く言った。
    「甘いわよ、依姫。
     敵…幻想郷は、幻想同盟なんかと手を組んで
     確実にこちらの動きを妨害しているのよ。
     敵が搦め手で来る以上、こちらも策を講じなければ負けてしまうわ。」
    「噂では、生命科学研究所で怪しげな実験を行っていると
     聞いていますよ?」
    「噂でしょう?
     実験に関しては、兵達の疲労回復の方法の模索よ。
     あなたには、関係がないわ」
    「…冷たく、なられましたね」
    「為政者たるもの、冷静に判断を下せないようではね。
     幻想郷の先制攻撃で、政府官僚のほとんどが死んで、
     私が最高責任者になったからには
     この国のために、感情を殺してやらなければならない時もあるわ」
    「…」
    冷たく言い放つ豊姫の迫力に閉口してしまう依姫であった。
    かつて優しく自分の前に立ち、導き守ってくれた姉ではなくなったのだと感じた。

    翌日、豊姫が別のコロニーの視察に向かったのを確認してから
    ゼロは執務室に忍び込んだ。
    「あいつが何を企んでいるか…!」
    執務室のコンピュータを起動し、最近やりとりされたメールを検索した。
    普通の連絡の間に、不穏な文字が見えてきた。
    「人工狂化兵士計画…!?
     何を考えているの?」
    「そこまでよ」
    突然執務室の扉が開き、豊姫が叫んだ。
    「…豊姫…様」
    「フフ、主がいない間に盗み見とは関心しないわね。
     ゼロ少佐、いや…鈴仙・優曇華院・イナバ」
    「…バレていた、のか」
    「ハハハハハ!
     偽の視察予定に引っかかるようじゃ、まだまだね。
     昔の甘い私のままだと思っていたのね。
     幻想郷のスパイを逮捕しろっ!」
    豊姫がそう叫ぶと、2~3人の兵士が飛んできて、鈴仙を拘束した。
    そして、彼女はそのまま地下の独房へ連れて行かれてしまった。

    「大変だ! ゼロ少佐が…逮捕されたって!」
    その知らせは、逮捕からしばらく経ってから
    エーディンを介してレイセンや霖之助たちに伝わった。
    「少佐が!? ど、どうして…!」
    ゼロを尊敬していたワカバが、顔を真っ青にしてエーディンに詰め寄った。
    「少佐は、正体を偽っていた幻想郷のスパイだったんだ。
     そしてその正体は…魔導戦争の英雄、鈴仙その人だったって…」
    「それで、少佐はどうなるって…!?」
    「それが…」

    「裁判なしの銃殺刑!?
     姉様、正気なんですか!?」
    執務室の机を強く叩きながら、依姫は豊姫に向かって叫んだ。
    「スパイが紛れ込んでいた事実は重いわ。
     そして、スパイが彼女だけとは限らない。
     あいつは口を割ることはないだろうからね。
     だから、見せしめに処刑するのよ」
    「だからって、彼女は…鈴仙なんですよ!」
    「ええ、そう。
     かつての英雄、鈴仙。
     けれど今は地上の穢れに汚れた薄汚いスパイよ。
     あの、八意と同じ、ね」
    「姉様っ…!」
    「あなたも、アイツの事を庇い立てするなら
     反逆罪で逮捕してもいいんだからね?」
    「くっ…! 失礼します!」
    依姫は悔しい顔で、執務室を出た。
    かつては自分たちの家族であった鈴仙を、なぜこうも簡単に
    処刑などといえるのか。それが依姫には理解できなかった。

    「…」
    独房に鎖で繋がれ、身動きを封じられた鈴仙に、ミオが近づいた。
    「…まさか、こんなに近くにいて気づかなかったとはね。
     へっ! あんたを直接殺せなくて悔しいよ」
    鈴仙に向かってミオが吐き捨てるように言った。
    「あなた…まだあの時のことを…」
    「ああ、そうさ!
     魔導戦争終結を目前にしたあの時!
     お前と私は二人でマザーコンピューターの破壊任務についた。
     そして、部隊の中で二人だけが軽傷で生還した。
     なのに、お前は英雄扱いで、私は昇格止まりだった。
     お前さえいなければ、私が綿月様の元へ…!」
    「あの位は、決して居心地のいいものじゃなかった」
    「お前にとっては、だ!
     そうして手に入れた地位を、全うするなら良かった!
     だが、お前は逃げ出したんだ!
     わかるか? 私の目の前で、地位を捨てたんだよ!
     それが、どれほど私を惨めな思いにしたか知るまい!」
    「…」
    ミオの恨みがこもった叫びに、鈴仙は口を閉じた。
    「いい気味だね。
     お前の刑の執行は、私が行うことにした。
     私の号令で、お前が死ぬんだ。
     最高の気分だよ。ハハハハッ!」
    言いたいだけ言って、ミオは去っていった。
    鈴仙は、この状況を脱する手を考えていた。

    (ダメでも、もう一度…姉様に言ってみよう)
    決定に納得がいかなかった依姫は、再び執務室に向かった。
    そして、部屋の前に立った時、中の話し声がわずかに聞こえてき
    行儀が悪いとわかっていながら、中の話を聞いた。
    どうやら、士官の一人と豊姫が二人で話をしているようだった。
    「…最近彼女も私に対して反抗することが多くなったわ」
    「いかがしましょうか…。
     人工強化兵計画を感付かれたら、兵達の反感を買うことに…」
    「余計なことに気づかれる前に幻想同盟を動かして、
     消してしまいましょう」
    「妹君を、ですか?」
    「だからこそよ。
     あの娘は兵たちからの信頼も厚い。
     それが幻想同盟、ひいては幻想郷の手によって命を奪われたとなれば
     復讐心によって、兵達の士気も上がるわ」
    「ムーンライズの連中も、余計なことを知っている可能性もあるわね。
     彼女たちには、狂化の実験台にでもなってもらいましょう。
     精神制御をすれば、秘密をばらすこともなくせるわ。
     特に、レイセンはいい兵士になってくれるでしょう。
     そうでないものは、適当に処刑してしまいなさい」
    「…恐ろしい方だ」
    「フフフフフフ…!」
    その話を聞いてしまった依姫は、驚愕した。
    姉様が、自分を殺す。殺そうとしている。
    そして、ムーンライズの乗員を、
    レイセンもろとも恐ろしい実験の材料にしようと企てている。
    依姫は、豊姫に気付かれないようにそっと執務室を離れ、
    レイセン達が集まる個室へと急いだ。

    「その話…本当か!?」
    依姫から執務室のそばで聞いた話を聞いて、霖之助が叫んだ。
    「このままここにいては、危険よ!
     今の姉様は普通じゃない! 本気よ!」
    「でも、どうすれば…」
    「逃げるしか無いでしょう!」
    霖之助にワカバが外に漏れないように小声で叫んだ。
    「待って、依姫様…このことは、他の者にはまだ?」
    「ええ…。姉様直下の士官以外はまだ知らないはずよ」
    レイセンが依姫の返答を聞くと、しばらく考えてから言った。
    「このことをまだ他の人達が知らないのなら、
     逃げるのは今しかないわ!
     格納庫のWAで脱出しましょう!」
    「く…このまま変な実験の材料にされるか、殺されるか…!
     だったら、やるしかねえか…!」
    エーディンが深刻な顔で言った。
    「でも、WAだけでは逃げられない…。
     逃げるにしても、どこへ逃げたものか…!」
    「そこは、私に任せて」
    レイセン達が話しあっているうちに依姫が考えたプランを話し始めた。
    「まず、私が偽の出動命令…パトロールとかを出します。
     そして、同時にムーンライズへと連絡。
     ネイザン艦長に状況の説明と、合流ポイントの指定をする。
     私は、鈴仙…ゼロ少佐とともに、一芝居をうってあなた達に合流するわ。
     そして…幻想郷へ行きましょう」
    「げ、幻想郷へ!?」
    「幻想郷には、八意様がいる…。
     鈴仙とともに行けば、力を貸してくれるはずよ」
    「月を裏切るんです!?」
    ワカバが驚いた顔で言った。
    「話から察するに姉様は、幻想同盟と繋がっている。
     宇宙で民衆を巻き込みながら見せ掛けの戦争を行っているのは異常よ。
     この状態を放っておけば、それこそ…幻想同盟や
     姉様達が、この国を…月をメチャメチャにしてしまうわ!」
    「覚悟を決めよう。
     どのみちこのままじゃ俺達の命も危ない!」
    「やるしか…無いのね…!」
    レイセンが静かに言うと、全員で頷いた。
    「私は鈴仙を助けに行く。
     あなた達はさっき伝えたポイントにWAで向かって!
     …くれぐれも、平常心で悟られないように…!」
    「わかりました…!」
    こうして、アルファ11脱出作戦が始まった。

    「鈴仙!」
    依姫は独房へ駆け込み、説明しながら鈴仙を拘束している鎖の鍵を外し始めた。
    「…なるほど、事情は察したわ」
    「あの時から、あなたに頼ってばっかりだけど…
     お願い、今はあなたの力が必要なの…!」
    そう言うと、依姫は鎖を外した。
    「…わかった。
     けれど、WA格納庫へはここからじゃ遠いわ」
    「…5番格納庫に、私用に用意させたWAがあるわ。
     そこならここからでも遠くない。
     私を人質にすれば、抵抗は抑えられるはずよ」
    「ああ…わかった!」
    鈴仙はそう言うと、依姫の腹をおもいっきり殴った。
    「がっ…!?」
    「悪いけど、あなたに人質の演技ができるわけないでしょ。
     しばらく眠ってなさい」
    気を失い、倒れた依姫を床に寝かせ、鈴仙は身を隠した。
    「何事だ!?
     よ…依姫様!?
     一体何が…ぐはっ…!」
    鈴仙は様子を見に来た看守を影から殴り倒し、懐から自動小銃を奪った。
    「いくわよ、お姫様!」
    鈴仙はそのまま依姫を抱え、彼女のこめかみに銃口を当てながら独房を飛び出した。
    「脱走だー!」
    「よ、依姫様!?」
    「撃つな! 依姫様に当たる!」
    異変を察知して鈴仙の脱走に気づき兵が集まってきたが、
    依姫を人質にされているため発砲ができず、鈴仙を通してしまった。
    「道を開けろ! さもなければこいつの頭が弾けるのを見ることになる!」
    鈴仙は、迫真の演技で兵士たちを威圧し、道を開けさせ駆け抜けた。
    「鈴仙の奴め、やったな…!」
    その状況を知ったミオは、ほくそ笑みながらある部屋へと走った。
    「フフフ、狂化兵士1号…出番だぞ!」

    「…5番格納庫、ここね。
     こいつが依姫のWA、ワンブ・ゼロか」
    紫色の塗装をされたWAを見て、鈴仙は呟いた。
    ワンブ・ゼロは試作型ワンブをベースに、
    ゼレイブに使うパーツの実験に用いられた機体である。
    そのため、各部は量産機に比べ性能が高く、頭部もゼレイブに似た形になっている。
    鈴仙は依姫を抱えたままコックピットへと上り、シートの脇にうまく寝かせた。
    そして、機体を起動させ、格納庫のハッチを破壊して外へと飛び出た。
    「ゼロ少佐…ですね!」
    手はず通りにWAで基地の外に出ていたレイセン達は、
    鈴仙と合流することに成功した。
    「ユリ、大丈夫!?」
    「な、なんとか…」
    ユリは、初めて乗る戦闘用WAの操縦に慣れずに、
    危なっかしくふらふらしていた。
    「ムーンライズは!」
    「後、数分でこちらに来ます!
     合流したら、とっとと脱出だ!」
    「させるものかぁっ!」
    遮るようにして、ミオがWA部隊を引き連れ攻撃を仕掛けてきた。
    「くっ…早い!
     ミオのやつ、準備をしていたのか!
     ムーンライズが来るまで、なんとか持たせろ!」
    「は、はいっ!」
    鈴仙の指示で、各々戦闘を始めた。
    「嬉しいよぉ! 鈴仙!」
    「ミオッ! 現実が見えていないのか!」
    ミオのペリグヴァインがプラズマ・ハーケンを抜き、鈴仙に迫った。
    「豊姫は幻想同盟と結託して何かを企んでいる!
     あなたはこのまま利用されるだけでいいのか!」
    「いいともっ!
     お前さえこの手で殺せるならね!
     貴様が地球へくだってから、よもやこの機会が来るとは
     豊姫様に感謝しても足りないくらいだ!」
    「ちぃっ!
     こっちには依姫が乗っているのにか!」
    「構うものか!
     豊姫様から許しは頂いているからな!」
    「なんだとっ!」
    ミオの攻撃をプラズマ・サーベルで防ぎながら鈴仙はミオを釘付けにした。

    「お願い、このままかえって!」
    レイセンは敵のワンブの頭部分だけを破壊しては放置していた。
    頭部分にはメイン・カメラやセンサー類が集中しており
    破壊されれば戦闘の続行は不可能になる。
    今は敵とはいえ、同族を手に掛けたくないというレイセンの想いだった。
    「くっ! このぉっ!」
    初めての本格的なWA同士の格闘戦に、ワカバは苦戦していた。
    ワカバだけではない、エーディンも、霖之助も、パルスィも、わかさぎ姫も、クライドも
    ミオが連れてきた精鋭部隊の腕に苦戦を強いられていた。
    そのため、戦場に現れた緑色の機体への反応が、遅れてしまった。
    「あははっ! いい声で鳴きなさい!」
    鍔迫り合いで動けないワカバの機体に向かって、緑色の機体・モーラ・グースが
    腕のシールド・シザースを展開し、接近した。
    「ワカバ! 危ない!」
    その近くにいたユリが、とっさに間に入った。
    入ってしまった。
    サーディスのシールド・シザースはそのままユリの乗るワンブを挟み込み、
    コックピットから上下に両断した。
    「あ…れ…?」
    ユリは、自分がやられたことに気づかないままワンブの爆発に消えていった。
    「ユ、ユリィィィ!?」
    ワカバは、ユリがやられたことに気づき叫び声を上げた。
    「そ、そんな!?」
    「ちっ…あの娘が…!」
    レイセンとエーディンもその事実に気づいて言った。
    「サーディスのやつめ、やったか。
     狂化兵士…使えなくはないようだな」
    サーディスの働きを見て、ミオが呟いた。
    「狂化兵士…すでに完成しているのか!?」
    「見ただろ! あいつだよ!
     だがてめえの命は、あんなのに頼らずともこの手で…!」
    ミオがそう言い終わらないうちに、ムーンライズの
    メイン・プラズマ・キャノンの弾が戦場に放たれ、地面に当たり大きな砂埃を巻き上げた。
    「ネイザン…少し、遅かったわ…!
     みんな、直ちに艦に引き上げよ!」
    鈴仙の号令で、レイセン達はユリの機体の残骸を見下ろしながら、
    ムーンライズの援護を受けつつ着艦していった。
    「よくも、ユリを、ユリをぉぉぉ!」
    半狂乱でレールガンを乱れ撃つワカバだけ、着艦しようとしていなかった。
    「しまった、『狂気の瞳』が発症したか!」
    鈴仙は反転し、ワカバを元へ駆けつけた。
    「落ち着きなさい! ワカバ!
     彼女の死を無駄にするの!?」
    「うるさい! うるさい!
     ユリの仇を…! ユリの仇を!」
    抵抗するワカバを押さえつけようとする鈴仙の背後から、サーディスが接近する。
    「おかわり、もーらい!」
    「させないっ!
     ゼレイブ・フルドライブ!」
    レイセンが間に飛び込み、フルドライブを発動した。
    「くっ! じゃまをしないでよっ!」
    フルドライブによって強化されたサーベルにサーディスがたじろいだ。
    「…時間がない、ワカバ、切らせてもらう!」
    その間に、鈴仙はワカバの機体の四肢をサーベルで切り落とし、
    だるまになった状態のコックピットを抱え、ムーンライズに向かった。
    「レイセン、ワカバは回収した!」
    「…わかりました!」
    レイセンはフルドライブを解除し、プラズマ・ライフルで牽制をしながら
    鈴仙と共にムーンライズに着艦した。
    「みんな乗ったわね!
     全速で緊急発進! コロニーを抜ける!
     何かに掴まれ!」
    ネイザンが指示を出すと、ムーンライズは加速をし、
    宇宙港を突っ切ってアルファ11を飛び出した。
    「離してよ! ユリが…ユリがまだなのよぉぉぉ!!」
    ワンブ・ゼロに抱えられたコックピットから、
    狂気に囚われた真っ赤な目をしたワカバの悲痛な叫びがこだました。



    ユリを喪い、意気消沈するムーンライズ隊に
    ミオを加えた月面軍の私掠部隊、通称・宇宙海賊隊が襲いかかる。
    そして、狂気に囚われたままのワカバに、鈴仙はある決断を下す。
    次回、夢幻機動ゼレイブ 第6話「コスモ・パイレーツ」
    君は、月の果てに何を見るのか。