夢幻機動ゼレイブ 第4話「幻想から来た者たち」
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夢幻機動ゼレイブ 第4話「幻想から来た者たち」

2015-04-11 02:06
    好評か不評かよくわからないまま4話です。
    やっとこさ東方キャラにも出番が、といっても東方キャラ的な活躍は見込めませんが。
    なにせ、ロボットものですからね。
    挿絵とかがあれば、もっと雰囲気が伝えやすいのかなぁ。
    でも、描いてくれる人なんていないからなぁ。



    スペース・コロニー、アルファ7は
    月面軍の新型兵器の研究開発を主な目的としたコロニーである。
    そのため、防衛にはエースパイロットであるミオを隊長とした
    エリート部隊が配備されていた。
    しかし、幻想同盟はイオタ3の避難民の脱出ポッドを人質に
    武装解除を迫り、やむを得ずアルファ7は無血開城される形となった。
    下手に抵抗をして民間人が犠牲になるようなことがあれば、
    たとえアルファ7を守りぬいたとしても、民衆に不安を与えることとなる。
    ミオはそう考えた結果、策を巡らし救援を呼ぶためにアルファ7を抜け出し
    ムーンライズ隊との接触に成功したのであった。

    その同じ頃、人質にされた避難民たちは、幻想同盟の兵士によって
    脱出ポッドを降ろされ、アルファ7内の研究施設の地下室に集められていた。
    「ちっ…。
     地下室がいっぱいになっちまったな」
    幻想同盟の兵士が避難民ですし詰めになった地下室を見て呟いた。
    「おい! 隅に一人、ガキが残っていたぞ!」
    脱出ポッドを検査していた別の兵士が、ジェーンを無理やり引きずりながら叫ぶ。
    「ガキ一人くらいだったら、例の牢屋にぶち込んでおけ」
    「わかった。おい、死にたくなきゃ来い!」
    そのまま、ジェーンは更に地下にある牢屋に連れていかれてしまった。

    「おたくらさあ、僕らをいつまでこうやって閉じ込めておくつもりだい?」
    例の牢屋と呼ばれたその場所に入れられている
    眼鏡の男性…森近霖之助が看守の兵士に訊いた。
    「俺達も知らねぇよ…。
     上からの命令で動いているだけだからな。
     余計なことは喋らないほうがいいぜ」
    看守は面倒くさそうにそう答えると、かかってきた内線電話の受話器をとり
    何やら話し始めた。
    「あーもー…最悪…。
     幻想郷で散歩してたらいきなり捕まって、今は宇宙…。
     ああ、自分の不幸が妬ましい…」
    同じ牢屋に入っている金髪の少女…水橋パルスィがぼやく。
    「私たち、幻想郷に帰れるのかしら…。
     脚の魔法、このままじゃ解けないわ…」
    もう一人の青髪の少女、わかさぎ姫が呟く。
    わかさぎ姫の下半身は人魚のそれであるが、今は魔法で人間の足に擬態している。
    幻想郷では魔法文化が広く伝わっているので、この程度は軽いものだった。
    しかし、擬態しているだけなので、その足で歩いたりということはできず、
    足の不自由な少女として振る舞わざるをえないのが、わかさぎ姫の悩みだった。
    彼ら彼女ら3人は、地球の幻想郷で拉致され、
    はるばる宇宙のコロニーまで運ばれたのだった。
    拉致されてからどれくらいの時間が立ったのか、
    時計もカレンダーもない牢屋に入れられっぱなしでわからなかった。
    「おい、牢屋に一人追加だとよ」
    看守が電話を置き、霖之助たちに言った。
    それからすぐ、乱暴に引っ張られたジェーンが牢屋に連れて来られた。
    (この娘、月の娘だ…)
    ジェーンのうさ耳型のアクセサリを見て、霖之助は思った。
    玉兎達がつけるうさ耳型のアクセサリは、ある種の身分証であり
    ひと目で種族がわかるようにするための措置で装着が義務付けられている。
    (僕らが幻想人だとバレると厄介だ。黙っておこう…)
    霖之助はパルスィとわかさぎ姫に小声で提案した。
    宇宙では主だった戦闘が幻想同盟と月面軍に移り変わってはいるが、
    地上では相変わらず幻想郷と月面軍の戦争が続いている。
    幻想郷に住む幻想人と、月の民は外見上に違いはないため、
    黙っていれば人種を隠し通すこともできなくはない。
    「だ、誰…?」
    牢屋に連れて来られたジェーンは霖之助たちの姿を見て怯えた。
    とりあえず、霖之助たちはジェーンに自己紹介をした。
    「そう…なの。
     霖之助さん、私たちはどうなっちゃうの…?」
    自己紹介を終えた後、不安そうな表情でジェーンが尋ねた。
    「そう言われても、私たちもさっぱりなのよね」
    パルスィが諦めたような表情で答える。
    「あら、素敵な髪留めね」
    わかさぎ姫は、ジェーンをリラックスさせるために
    ジェーンの身につけている髪留めの話を始めた。
    「えっと…ありがとう。
     わ…かさぎ姫?さん…」
    ジェーンの不安いっぱいの返事を聞いて、わかさぎ姫は彼女を安心させるのは
    苦労しそうだと思った。

    「これより、アルファ7奪還作戦についてのブリーフィングを始める!」
    ネイザンがブリーフィングルームで、パイロットたちに説明を始めた。
    ブリーフィングルームに集められたパイロットの中には、ワカバの姿もあった。
    「まず、チームを2つに分ける。
     ミオチームには、ミオ大佐を隊長とし、レイセン、エーディン准尉が。
     ゼロチームには、ゼロ少佐を隊長にワカバをメンバーとする」
    アルファ7周辺の宇宙地図を指しながら作戦を説明するネイザン。
    「そして、予めミオチームをアルファ7の外部ハッチ付近に待機させる。
     配置についたら、本艦とゼロチームが陽動をかけ、敵の防衛戦力をおびき出す。
     防衛戦力をアルファ7から引き出させた後、ミオチームがアルファ7に潜入
     内部施設を制圧し、民間人を救出する!」
    「陽動に二人だけで大丈夫なんですか?」
    レイセンが質問をした。
    「陽動の目的は、あくまでも敵戦力を分断させ、時間を稼ぐことよ。
     前回の戦いのような急な遭遇戦じゃない場合は
     対スパーク撹乱用のチャフを充分な範囲に撒くことができるわ。
     あとは、艦の装備と直掩のWAだけで、十分時間稼ぎはできるわ」
    対スパーク撹乱用のチャフは、散布することで
    散布範囲内でのスパーク兵器の威力を著しく低下させることができる。
    副作用として、プラズマ系の武器も威力が低下するが、
    実弾兵器が射撃兵装のワンブではその影響は少ない。
    一見妙なチーム分けも、この陽動作戦を見れば、納得のいくものだった。
    「ワカバ、無理なら休んでもいいぞ」
    緊張の顔を浮かべるワカバに、ゼロが尋ねた。
    「い、いえ…!
     ゼロ少佐が訓練してくれたんです、やってみせますよ…!」
    ワカバが、緊張の汗を拭いながら言った。
    前回の無断出撃の罰として、ワカバはムーンライズの予備パイロットとして、
    ゼロから戦闘のレクチャーを受けたのだった。
    レクチャーを受けたのは短い間ではあったが、もともと努力家であったワカバは、
    ゼロの教えたWA操縦のノウハウを素早く吸収した。
    今回での作戦での出撃は、危険性の低い陽動作戦を通して、
    知識を経験とするための実地訓練も兼ねていた。
    「よし、作戦準備開始!
     30分後にミオ隊出撃、その後に攻撃を開始する!」
    ネイザンの号令を受け、パイロットたちは出撃の準備を始めた。

    「あれ、ワンブの腕治ってる?」
    ワカバは、自分が乗るワンブが
    前回の戦闘で切断された腕が修復されていることに気づいた。
    「あれなー、バラムの残骸から使える腕を引っ張ってきたんじゃよ」
    整備長がワカバに説明をした。
    「バラムの…って、敵の腕が使えるんですか?」
    「そりゃ使えるもーん、同じもんじゃからのー」
    「へ?」
    首を傾げるワカバに、整備長は説明を続けた。
    「バラムはな、ワンブの製造工場を占領した幻想同盟が、
     同じ工場で作ったWAなんじゃよ。
     じゃから、頭と武器以外は色が違うだけで、ワンブなわけじゃ。
     まあ、ノウハウが足りなくて本物より質は落ちとるがの」
    「へ~!へ~!」
    ワカバは興味深そうな顔で相槌を打った。
    勉強好きなワカバにとっては、こういう知識は面白く感じるものだった。
    「ワカバ…気をつけてね」
    格納庫に来たユリが、ワカバに声をかけた。
    「大丈夫、ゼロ少佐もついてるし…。
     私だって、レイセンくらいにはやってやるんだから…!」
    そう言うと、ワカバはワンブのコックピットへと向かっていった。

    「レイ…セン。新型のゼレイブを任されているからには、
     腕は立つと思ってはいるけど、足を引っ張るなよ?」
    ミオがレイセンに冷たく言った。
    レイセンという名前に、若干口が鈍っていたがレイセンは気づかなかった。
    「はい…! 全力でやってみせます!」
    「そう…コロニーをあまり壊しすぎるないように。
     この艦の修理に必要な部品の調達も兼ねてるから。
     帰れなくなる」
    そう言うと、ミオは自分のカスタムワンブ…ペリグヴァインに乗ってしまった。
    レイセンは、ミオの態度を気にすることなくゼレイブのコックピットに入り、
    発進準備を進めていった。
    「レイセン、俺達がフォローすっからな。
     あんまり緊張しすぎるなよ」
    「あ、はい! ありがとうございます」
    エーディンの励ましで、レイセンの気分は少し軽くなった。
    「あと、そうだ。整備長から伝言。
     『バックパックの武器もたまには使ってくれ。
      あと、ゼレイブの機能もしっかり活用してくれよ』
     …だとさ。
     ゼレイブの機能って何だ?」
    「さあ…今度調べておきます…」
    レイセンは、乗りこなしつつはあったものの、
    ゼレイブというWAがどんな力を持っているかは、
    まだ把握しきれないでいたのだ。

    作戦開始の時間になり、ミオ隊発進の合図がかかった。
    「ミオ・ヴァイス、ペリグヴァイン、出る!」
    「レイセン、ゼレイブ、行きます!」
    「エーディン、スカイイーター、出るぜぇ!」
    レイセン達が次々と発進する。
    「外部ハッチの方向に、悟られないギリギリの速度まで加速したら
     バーニアを切り、慣性でそのまま進むわよ。
     レーダーにうつりにくくなるからね」
    「了解!」
    ミオの指示通りに、レイセンは加速し、慣性で進み始めた。
    その間にレイセンは、ゼレイブのコンピューターで
    どんな機能があるかを調べ始めた。

    「…そろそろね」
    時計を見て、ネイザンが指示を飛ばし始めた。
    「メイン・プラズマキャノン、発射準備!
     チャフの散布状況確認!」
    「チャフ散布確認! 予定範囲に散布完了!」
    「よし…ゼロ隊、発進!
     同時にメイン・プラズマキャノン、ポイントA21に向け発射!」
    「メイン・プラズマキャノン、発射します!」
    砲撃手が復唱すると、ムーンライズの主砲である
    メイン・プラズマキャノンが展開し、巨大なプラズマ弾を発射した。
    プラズマ弾はコロニーの外縁部を掠めるように当たり、小さな爆発を起こした。

    「敵襲ーっ!
     機動部隊は、直ちに出撃しろーっ!」
    爆発のような音と共に地面が大きく揺れた後、
    独房の外が騒がしくなり、幻想同盟の兵士たちが慌ただしく走り回る音が聞こえた。
    「こ…怖い…!」
    「大丈夫、泣かないで…」
    怯えるジェーンを、わかさぎ姫が慰める。
    「おい! 囚人ども!
     おとなしくして…グアッ!」
    看守が背後から何者かに殴られ、気を失った。
    「よし、3人ともいるな?」
    看守を殴った男が、霖之助達に言った。
    「あなたは?」
    「幻想軍のクライド・エイムズ、人間だ。
     お前たちの救出に来た」
    クライドと名乗った男が霖之助に耳打ちをする。
    幻想軍とは、月面軍の襲撃に際して結成された民間人を中心とした軍隊である。
    民間人とは言っても、幻想郷の町々で妖怪などをあいてに人々を守る
    自警団の出身が多いので、腕の立つものは少なくない。
    「どうやって来たんです?」
    「八意総帥が、例の妖怪に掛けあってくれてね。
     人一人くらいなら転送できるってんで、イオタ3に飛ばしてもらったんだ。
     イオタ3の脱出ポッドが君たちのところへ流れ着いて、探す手間が省けた」
    知らない者が聞けば意味の分からない説明であるが、霖之助たちはすぐに理解できた。
    「といっても、片道切符だ。
     この混乱に乗じて連中の船を奪うぞ!」
    クライドが手にした自動小銃で牢屋の扉を破壊し、霖之助たちを出した。
    「…その娘は?」
    「避難民の一人よ…彼女だけ一人牢屋に入れられたの」
    「そうか…最後に見つかった娘ってこの娘か」
    クライドはジェーンを見つつ考えた。
    「ひとまず、この施設は丈夫だ。
     避難民達に危険が及ぶことはないだろうが、
     いまから避難民の部屋に連れて行く時間もないな。
     悪いが同行してもらおう」
    「どこへいくんですか?」
    わかさぎ姫がクライドに聞いた。
    「なんにせよ、ここの連中をどうにかしないことには
     脱出もクソもない。
     連中の兵器を拝借して、ひと暴れだ」
    「穏やかに済みそうにないわね…」
    パルスィは、これからのことを思いため息を付いた。
    「急ごう、脱走したのがバレるまで、そう時間はないはずだ」
    クライドは倒れた看守の懐から、施設の地図データの入った小型端末を抜くと、
    それを操作しながら霖之助達を格納庫へ案内し始めた。

    「巣を突つかれて、出てきたぞ!」
    アルファ7から続々と出てくるバラムを見て、ゼロが叫んだ。
    「メイン・プラズマキャノン! 装填!
     機関砲、オートロックで連射開始!
     弾を惜しまず、敵を近づけるな!」
    ネイザンがそう指示を飛ばし、ムーンライズの全砲門をバラムの方向へと変えさせた。
    「ムーンライズの砲撃は私たちをかわしてくれる。
     味方の弾幕に恐れず、敵を迎撃するんだ!」
    「は、はいっ!」
    ワカバがゼロに力強く返事をした。
    ムーンライズの機銃がうなり、プラズマ弾が発射される。
    「来るな、来るな、来るな!」
    ワカバは、叫んで気持ちを高ぶらせながら
    慎重にレールガンの照準を合わせ引き金を引いた。

    「ぐあぁっ!」
    見張りの幻想同盟兵を無力化させつつ、霖之助達は格納庫へ辿り着いた。
    「どれどれ…ちっ!
     どれも一人乗りじゃないか!」
    格納庫の兵器を見てクライドが悪態をついた。
    「悪いが、君たちにも戦ってもらわにゃならなさそうだ。
     そこのジェーン、だっけ?
     君は身体が小さいから誰かと相乗りできるだろうが…」
    「そんな! ロボットの操縦なんてやったことないわよ!」
    パルスィが叫んだ。
    「大丈夫だ。
     月面軍の兵器は思考操作オートマチックシステムがついている。
     要するに、歩こうと思えば歩けて、撃とうと思えば撃てる。
     専門的な知識は不要だ」
    「そんなこと言ったって…」
    わかさぎ姫が自信なさげに呟いた。
    「しっかりしてくれ!
     このままここで殺されてもいいってのか!
     生き延びたいなら、やってくれ!」
    「…わかった。
     だが、あてにはしないでくれよ?」
    霖之助が覚悟を決めてそう言った。
    「もちろん。
     俺はこのヘリでかき乱すから、お前たちは…そうだな。
     せっかくだから新型っぽいそいつらを使え」
    クライドはそう言って、格納庫の端に置いてある3体のWAを指さした。
    できたてなのか、装甲の表面が光を反射している。
    「…もう、知らないわよ!」
    パルスィはそう言って、真ん中のWAに乗り込んだ。
    「霖之助さん、頼みます」
    「わかった」
    霖之助は、わかさぎ姫を背負い、ジェーンを連れて最奥のWAのコックピットに連れて行った。
    「君、この人は足が不自由だから、助けてあげて」
    「…うん」
    霖之助に言われて、ジェーンはわかさぎ姫の横のスペースに身体を滑らせた。
    「脱走者がいたぞー!」
    格納庫の入り口から、幻想同盟の兵士の声が聞こえた。
    「ちっ!」
    クライドはヘリコプターのミサイルを格納庫の入り口に発射した。
    「時間がない! 早く乗れ!」
    「わかってるよ!」
    霖之助も残ったWAに乗り込んだ。
    「こいつがスイッチか!」
    霖之助があからさまなスイッチを押すと、WAの制御システムが起動した。
    ディスプレイに外の風景が写ると、パルスィとわかさぎ姫の乗ったWAも起動したのか
    カメラアイの部分に光が灯った。
    「プロト・ヴァリアブル・アーマー1号機…PVA-1?」
    霖之助は画面に表示された機体名を思わず読み上げた。
    「要するに試作ってことか! 1号!働いてくれよ!」
    霖之助は手探りで機体を動かし、ゆっくりと前に歩き始めた。
    「誰か、天井のハッチをぶっ壊してくれ!」
    「わかったわ。これね!」
    クライドが叫ぶと、わかさぎ姫乗った3号機が腕のミサイルを発射し
    天井のハッチに大きな穴を開けた。
    「よし、外にでるぞ!」
    そのまま4人は、ハッチからコロニーの地上部分に飛び出した。

    「…コロニーの中が騒がしいな?」
    侵入用ハッチの付近で待機しているエーディンがミオに言った。
    「悪い予感がする。
     予定より速いけど、入るよ!」
    ミオはそう言って、WAでハッチを開き、そのまま中へと侵入した。
    「…よし!」
    コンピューターでゼレイブの機能を調べていたレイセンも、
    ミオについて入っていく。
    エーディンは、二人が入ったのを確認してから、細かく姿勢を整え、
    スカイイーターをハッチに滑り込ませた。
    コロニー内では、霖之助達が多数のバラムと、戦闘機相手に奮闘をしていた。
    素人である霖之助達が戦えたのは、幻想郷の暮らしの中でそれなりの修羅場をくぐってきているからであった。
    「あのディティール、月面軍の新型か?」
    「…このコロニーで作っていた新型ね。
     バラムと戦っているということは、味方かしら?
     コンタクトを取ってみましょう。
     こちら、月面軍のミオ大佐だ!
     そこのWA、誰が乗っている!」
    「え、ええ、ああ?」
    通信から霖之助の素っ頓狂な声が聞こえてきた。
    「月面軍か、まずいな。
     幻想人だってことは黙ってろよ…!」
    クライドが直通回線で霖之助に囁いた。
    「えっと、僕たちはひ、避難民だ!
     騒ぎに紛れて、敵のWAを奪ったんだけど…」
    霖之助は、闘いながら嘘を交えて説明した。
    「民間人?
     そうか、無理をするなよ。
     これより支援する!」
    軍人口調でミオが返事をすると、戦場に飛び出していった。
    「いくぞ、レイセン!」
    「え、ええ!」
    ミオに続いて、エーディンも参戦した。
    「あれ、あれれ!?」
    レイセンも後を追おうと思い、宇宙の感覚でバーニアを吹かせたが
    地面に引き寄せられバランスを崩した。
    「宇宙パックの制御バーニアで空を飛べるかよ!
     足で歩いて地上戦をしろ!」
    「は、はい!」
    エーディンの突っ込みに応答して、レイセンはゼレイブを走らせた。
    それなりの数が陽動で外に出たとはいえ、
    まだかなりの数のバラムがコロニー内に待機していた。
    「なめるんじゃないよ!」
    パルスィが2号機のレールライフルを唸らせ、バラムを撃墜する。
    「やった!」
    「パルスィ! 危ない!」
    ガッツポーズを決めるパルスィの背後から攻撃しようとしたバラムを
    わかさぎ姫の乗る3号機のミサイルが吹き飛ばした。
    「くっ…! こいつ!」
    霖之助の1号機は鈍重だったので、苦戦を強いられていた。
    霖之助はコックピットを見回し、使われていないレバーを見つけた。
    「何とかしろよっ!」
    やけになってそのレバーを力任せに倒すと、1号機が変形し、戦車のような形になった。
    「ヴァリアブル…なるほど、変形できるのか!
     これなら…!」
    霖之助は自動照準をオンにし、キャタピラで走り始めた。
    キャタピラとはいえ、かなりの速度で1号機は地を走った。
    「そこだぁっ!」
    ロックオンされたバラムに向け、引き金を引くと戦車砲の部分から砲弾が飛び出し、
    バラムを貫いた。
    「変形だって! すげぇな!」
    その様子を見たエーディンが、幻想同盟の戦闘機を撃ち落としながら叫んだ。
    「ってことは、2号機も!」
    パルスィは1号機の変形を見て、レバーを倒した。
    2号機は飛行機のようなフォルムに変形し、空へと浮かび上がった。
    「こっちのほうが性に合うわね!」
    空を飛んでごきげんになったパルスィはそのまま敵の戦闘機の迎撃に入った。
    「私もできるかな?」
    「ダメ…これ、水中用…」
    わかさぎ姫がレバーを倒そうとすると、ジェーンが止めた。
    3号機は潜水艦に変形できるらしいが、地上では変形不可能であった。

    「一機、抜けてきたぞ!
     ワカバ!」
    「わかった!」
    艦に接近するバラムに向けて、ワカバが姿勢を正す。
    「行けっ! トマホーク・ビット!」
    ワカバは宇宙パックの武器を発射した。
    パックの側面から丸い物体が放たれ、中から刃を飛び出させ高速回転を始めた。
    コレは、一種の遠隔兵器であり、高速回転する斧で遠距離の相手を攻撃できる武器である。
    ワカバはトマホーク・ビットをうまく動かし、
    接近するバラムの片腕を切断することに成功した。
    「落ちてぇー!」
    そしてそのまま、プラズマ・サーベルを抜き、バラムのボディを切り裂いた。
    バラムは爆発を起こし、ばらばらになった。
    「…やった!」
    ワカバは、コックピット内でガッツポーズを決めると
    ワンブの武器をレールガンに持ち替え、また迎撃に戻った。

    「数が減ってきた! あと少しだ!」
    クライドがバラムを撃墜しながら状況を見て叫んだ。
    ビシューン!
    その時、コの字型の小さな物体が飛んできてビームを放った。
    「何っ!」
    とっさにビームを避けるミオ。
    同じような物体が複数、戦場を飛び交い始めた。
    「トマホーク・ビット…じゃない!
     この小ささで、ビーム兵器か!」
    「ご名答! バルバトのヴァチュスを避けるとは、只者じゃないな?」
    ミオが叫ぶと、バラムと同じ頭部であるが、ボディの形状が異るWAが戦場に現れた。
    「幻想同盟の新型!?」
    エーディンが反応すると、ヴァチュスと呼ばれた物体がビームを撒き始めた。
    「うわああ!」
    「ちょっと!」
    霖之助たちの方にもヴァチュスが飛んでいったらしく、彼らの方からも慌てる声が聞こえた。
    「くっ…!」
    「こいつは私が相手をします!」
    「レイ! 無茶はするなよ!」
    レイセンは、プラズマ・ライフルを構え、バルバトと呼ばれた新型に向かっていった。
    ヴァチュスがレイセンの方に集まって行ったので、ビーム地獄からは開放された。
    「レイセンが奴の相手をしているうちに残りのバラムを!」
    「了解!」
    そのまま、またバラムとの戦闘にとりかかった。
    ビシュビシュビシューン!
    ゼレイブを囲むように飛び回るヴァチュスが次々とビームを放つ。
    ヴァチュスはビームの発射前に一瞬止まるので、
    ビームの回避自体はレイセンには難しいことではなかったが、
    肝心のバルバトには接近できないでいた。
    「この!この!」
    ヴァチュスを破壊しようとプラズマ・ライフルを撃つが、
    的が小さいためなかなか当たらない。
    バルバト自体も、操縦者の腕が高いのかこの距離からではすべて回避されてしまった。
    「隙だらけだ!」
    そうしているうちにバルバトがスパーク・サーベルを抜いて接近戦を仕掛けてきた。
    とっさにプラズマ・サーベルを抜き、刀身で受け止める。
    「くっ! トマホーク・ビット!」
    レイセンが宇宙パックのトマホーク・ビットを放つが、
    同時に、ヴァチュスがバルバトから飛び立ち再びビームでビットを撃ち落とした。
    「だめかっ!」
    レイセンは反撃を許されないまま、ビームの回避をし続けることになった。

    「これで最後だ!」
    ゼロが宇宙空間に出てきたバラムをプラズマ・サーベルで撃墜して言った。
    「これより、本艦はアルファ7へと突入する!
     WAは直ちに帰艦せよ!」
    「はい!」
    ネイザンの指示を受け、ワカバとゼロはムーンライズに着艦した。

    (接近攻撃の時はヴァチュスは使えない…?)
    レイセンは冷静に相手の動きを観察した結果、ひとつの結論を出した。
    バルバトが接近攻撃をかける際、ヴァチュスをバルバトに戻させる。
    (いや、ヴァチュスはずっと飛べるわけじゃないんだ!)
    おそらく、ヴァチュスは充電式か何かであり、
    エネルギーが減るとバルバトに戻り、近接線を行っている間に充電して
    再び飛んで攻撃するのだ。
    つまり、近接戦を仕掛けてきた時はヴァチュスに注意を向ける必要がない。
    レイセンは、アルファ7に突入する前に調べたゼレイブの能力を思い出しつつ、
    バルバトが接近戦を仕掛けてくる時を待った。
    「くらえぃっ!」
    バルバトがヴァチュスを収納し、何度目かの接近戦を仕掛けてきた。
    レイセンはそれをプラズマ・サーベルで受け止め、ゼレイブのコンソールを操作し、
    あるシステムを起動させた。
    「ツインプラズマ・エンジン!フルドライブ!」
    ゼレイブの排熱部から余剰エネルギーが吹き出し、
    掴んでいるプラズマ・サーベルの刃が巨大化した。
    「何ぃ! サーベルの出力が上がっただと!?」
    バルバトのパイロットが驚愕の声を上げた。
    通常、月面軍のWAは駆動用のプラズマ・エンジンを1基のみ搭載しており、
    武器用のエネルギーはエンジンの余剰エネルギーを充電した
    特殊バッテリーでまかなっている。
    しかし、ゼレイブは大型プラズマ・エンジンを2基搭載しており、
    駆動用エネルギーをバッテリーに切り替え、
    両方のエンジンを武器用に転用することで短時間であるがプラズマ兵器のパワーアップを行うことができる。
    この機能が、レイセンが調べることで発見したゼレイブの機能『フルドライブ』であった。
    ズバァシュッ!
    互角のつばぜり合いをしていたところを、ゼレイブ側が出力を上げたため
    バルバト側のサーベルが押し負け、そのまま腕を切り落とされた。
    「ちいっ!」
    「このぉ!」
    そのままレイセンは追撃をかけようとしたが、ヴァチェスを囮に放たれ、
    その間にバルバトが猛スピードで撤退していった。
    フルドライブで強化されたサーベルを振り回し、ヴァチェスをすべて破壊した時には
    レイセン達が入ってきたハッチにバルバトは逃げ込もうとしていた。
    「待てー! ああっ!」
    追おうと、バーニアを吹かせようとしたが、ガクンとゼレイブの出力が落ちた。
    駆動系に使っていたバッテリーが切れ、一時的に動力を失った状態になったのだ。
    「追う必要はないね。
     私たちの目的は、達成した」
    バラムを片付けきったミオが、レイセンに声をかけた。
    ちょうど、ムーンライズがアルファ7の宇宙港からコロニー内に入ってくるところだった。

    ムーンライズが基地に着陸し、ネイザンの指示で避難民の収容と、
    基地にある部品を使ってのエンジンの修理が始まった。
    もう少し進めば、完全に月面軍の勢力圏に入るので、
    そこまで進むための応急的な修理ではあるが。
    すっかり抜け出すタイミングを失った霖之助、クライド達は
    そのまま避難民と一緒にムーンライズに乗ることとなった。
    このタイミングで抜け出すのは不自然であるし、
    幻想人であることがバレればただでは済まないからだ。
    少々危険でも、このまま避難民のフリをするのが安全だという判断だった。
    「作戦へのご協力、感謝します」
    「は、はぁ…」
    試作機をムーンライズに運び入れ、降りたところで霖之助達は
    個室に案内され、ネイザンから感謝の言葉を送られた。
    「しかし、軍の機密を民間人が触ったというのは、
     軍上層に対して体裁が悪いので、すまないけれど
     形だけでも、志願兵となったということにしてほしい。
     ゼロ、彼らに書類の書き方を教えてあげて」
    そのまま、ネイザンが書類を差し出しながら言った。
    一応避難民のフリをしているので、クライドも含め4人は民間人扱いだった。
    ネイザンが個室を出ると、ゼロがサングラスを外し、彼らに正体を明かした。
    「あ、あんたは…!」
    「しーっ! 大声を出さないで。
     今、潜入中なのよ」
    驚く霖之助を、鈴仙が止めた。
    「でも、薬売りさんがこうも軍人をやっているとはねぇ」
    パルスィが呟いた。
    幻想郷で普段暮らしている際の鈴仙は、優しい薬売りで通っていた。
    そんな彼女を知っていた彼らからしてみれば、軍人としてやっている
    本来の鈴仙は、違和感のある存在だった。
    「誰しも人には話せない過去がいくつかあるものでしょう?
     あなた達の身柄は、私が保証する。
     とりあえず今は、その書類に指示通り書き込んで」
    「…とやかく考えても仕方ないだろう。
     ここは、君に任せるよ」
    そう言って、クライドは書類に必要事項を書き始めた。
    霖之助たちも、それに続いて諦めたような顔で書類に向かい始めた。

    「ジェーン!」
    3号機から降りてきたジェーンの姿を見て、ワカバが叫んだ。
    「ワカバちゃん…!」
    「捕まった脱出ポッドにいたのね!
     無事でよかった!」
    そう言いながら駆け寄ってジェーンの頭をワカバがなでた。
    「あ、艦長!」
    その様子を見ていたレイセンは、歩いてきた艦長に気がついた。
    「あら、お友達が見つかったのね。
     もうすぐ修理が終わるから、出発の準備をしてね。
     …といっても、すぐに勢力圏に入れるから
     アルファ11に到着したら、あなた達とはお別れね」
    「そうですか…」
    「いつまでも子供を、しかも民間人を戦わせることはできないからね。
     依姫様と豊姫様がアルファ11にいるっていう話よ。
     あなたの活躍を報告してあげるわ」
    「あ、ありがとうございます」
    レイセンは、素直に喜べなかった。
    戦いが好きなわけではなく、戦いによって誰かの役に立てる
    誰かを守ることができるということに、満足を感じていたからだ。
    ペットとしてぬくぬくしているよりは、ソッチのほうが性に合っているらしい。
    依姫に要相談だなあ、とレイセンは思った。
    「やっと、戦いから開放されるんですね…」
    ユリの方は、その知らせを聞いて安心していた。
    ユリは、レイセンやワカバと違って
    戦いに積極的ではない性格なので無理もなかった。
    ミオは、試作機運搬の責任者としてムーンライズに残ることになった。
    ゼロにとってはそれだけが不安の種であった。

    やがて修理が終わり、ムーンライズは様々な思いを載せて
    アルファ11へと進み始めたのだった。



    戦いを終え、安堵するムーンライズ隊。
    しかし、運命は彼女たちに休みを与えてはくれなかった。
    うごめく野望、黒い影。すべてを知った、依姫が走る。
    次回、夢幻機動ゼレイブ 第5話「離反」

    君は、月の果てに何を見るのか。


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