夢幻機動ゼレイブ 第5話「離反」
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夢幻機動ゼレイブ 第5話「離反」

2015-04-15 20:46
  • 3

対して応援されてないけど、話の節目の第5話です。
リアル系ロボットものにはこういう話は不可欠だと重います。
いや、無い方が本当はいいんですけどね。
感想をいただけると励みになります。
匿名の方がいい方はブログhttp://touhoualive.blog124.fc2.com/までどうぞ
あと、こんかいから次回予告入れてみました。
それでは、どうぞ




アルファ7を発ったムーンライズは、一日を経て目的地のアルファ11へと入港した。
これで、ゼレイブを回収して機体をアルファ11へと届けるというムーンライズ隊の任務が終わったのだった。
「ネイザン中佐、ご苦労様だったわね」
入港が終わり、艦を降りたネイザン達に豊姫が言った。
「ミオ大佐も、PVAシリーズをありがとう。
 これで、新世代WA開発の準備が整ったわ」
豊姫はそう言うと、後の指示を士官に任せて去ってしまった。
「豊姫様…?」
自分に気づかなかったのか、豊姫が一言も声をかけなかったことが気になったが
きっと仕事中だからなのだろうと、レイセンは思った。
「ムーンライズ隊は民間の協力者も含めて、
 しばらくはこの基地に滞在してもらいます。
 ご不便をお掛けしますが、なにとぞ」
豊姫から言伝を頼まれた士官が、ムーンライズ隊に言った。

「どれくらい拘束されるのかな?」
「イオタ3に帰れるかな…」
案内された個室でワカバとユリが今後の心配を口にした。
「拘束といっても、基地内はある程度自由に歩けるし
 軍関係者向けの商店街があるから、退屈はしないと思うわよ」
二人にネイザンが言った。
「あれ、ジェーンは?」
レイセンが、個室にジェーンがいないのに気づいて言った。
「あの娘なら、他の避難民たちと一緒に本国に向かったってよ」
「ええっ!」
エーディンの言葉に、ワカバが驚きの声を上げた。
「そりゃ、あの娘は巻き込まれただけで軍艦に長時間いたわけでも
 兵器に乗って戦闘をしたわけじゃないからなぁ…」
「私たちはどうなるの?」
「さあなぁ、調書をとったり、報告書書いたり、面談したり、
 いろいろと手続きしてそれらが終わったら、解放かなあ?
 一週間くらいは覚悟した方がいいかもしれないぜ?」
エーディンがそう言うと、ワカバは大きくため息をついた。
「れ…じゃなかった、ゼロ少佐は?」
「さあ? 用事を片付けてくるって言って
 どこかに行っちまったぞ?」
部屋の隅で霖之助とクライドが言った。
「あんたら、いい腕してたからさぁ
 軍に残るって選択肢はないかい?」
エーディンが霖之助達に聞いた。
「いや、それはちょっと…」
「もったいねぇな~。
 人間の月面軍人仲間が増えるかと思ったんだが」
「え、エーディンさんって玉兎じゃないの!?」
エーディンの言葉にパルスィが驚いた。
「まあな、軍人だからこの耳型無線機つけてはいるけど
 俺はれっきとした人間だよ。
 つっても、今の時代は相当珍しいけどな」
エーディンが笑いながら言った。
「そもそも、どうして兵士さんは
 玉兎ばかりなんですか?」
「ん? ああ…。
 昔は人間と半々だったんだが
 玉兎のほうがなんか優秀だってんで…。
 なんでだっけ?」
「ええー…」
「ああ、思い出した。
 『狂気の瞳』があるからだな」
「『狂気の瞳』?」
「玉兎が強いストレスを受けると発症する一種の病気のようなもので、
 最初の発症時は脳の一部が麻痺して発狂状態になるんだが、
 一発それを乗り越えると、極限状態ですごい判断能力を持ったり
 直感が働いたりするんだとさ」
「へぇー」
わかさぎ姫がその説明に納得した。
「でも、克服後の力を使えるのは一握りだからね…。
 単純に、玉兎のほうが身体的に優れてるからってのが
 大きいわね」
ネイザンがそれに補足した。

「…流石に表立った資料には残っていないか」
ゼロが、基地の資料室を漁りながら呟いた。
「と、なると…執務室か」
そう言うと立ち上がり、豊姫の行動スケジュールを調べ始めた。

ワカバとユリは、暇を潰すために基地内の商店街を訪れていた。
「これ、ワカバにあげる!」
ユリが目についた雑貨屋で買った首飾りをワカバに渡した。
「わ、私に?」
「最近、ワカバ戦い続きだったから…お守り!」
「ありがとう。でも、もう戦うことはないよ、ハハハ」
ワカバは嬉しそうに首飾りを身につけた。
「どうかな?」
「似合う似合う、かわいいよ!」
ユリに言われて、まんざらでもないワカバだった。

翌日、ネイザンを士官が訪ねた。
「はい…ムーンライズを?
 …わかりました」
「何があったんです?」
「機体の搬出が終わったから、ちょっと遠くのドッグに
 ムーンライズを動かしてほしいんだって。
 ムーンライズクルーのみんなは観に戻って配置について!」
ネイザンはそう号令をかけてクルーたちとともに出て行ってしまった。
「レイセン、無事だったのね!」
「依姫様!」
ネイザンが出てしばらく後、依姫が部屋を訪ねてきた。
依姫はレイセンをしばらく抱きしめた後、ワカバたちにお礼を言った。
「ありがとう、あなた達が守ってくれたのね?」
「い、いや…逆に守られてたというか…」
「ワカバのおかげで、助かったの。ありがとう!」
レイセンに素直に礼を言われて、依姫の手前悪態をつくわけにもいかず
ワカバは照れることしかできなかった。
「どうして依姫様はここへ?」
「姉様のやり方に、異議を唱えようと思ったの。
 関係のないコロニーで新兵器の開発なんかをして、
 ワカバさんやユリさんのような罪もない人々を
 戦いに巻き込むようなやり方はどうかと思ったのよ」
依姫はユリの質問に丁寧に答えると、そのまま去っていった。
「…いつになったら動けるんだろうな、俺達」
「…さあ…」
クライドと霖之助がぼやいた。
「そういえば、アルファ7の敵の新型、すごかったってね?」
「ええ、ヴァチュスっていう小型の浮遊ビーム砲を使ってきて
 全方位からの攻撃を仕掛けてきたの」
レイセンはワカバが振った話題を、思い出しながら答えた。
「幻想同盟が?
 どうしていち武装勢力にすぎない幻想同盟はそんな技術力を持っているんだ?」
「さあ…どうしてかな?」
「そもそもおかしいんだよ。
 幻想軍ってのは、WAの開発能力すら持ってない。
 なのに、そう工業コロニーをいくつか抑えた程度で
 こっちでもないような武器がホイホイ作れるもんかね?」
「…うーん、確かに」
エーディンの突っ込みも確かである。
現在、月面宇宙軍はその大半を対幻想同盟のために動いている。
月面軍が兵力の半分を幻想郷に送っているとはいえ、
一国の軍に匹敵する兵力を持ちながら幻想郷に協力をしている幻想同盟は
謎の多い存在であった。

「依姫、何かしら?」
「姉様、民間人を隠れ蓑にするようなやり方は、
 やめていただきませんか!」
執務室に座る豊姫に、依姫が力強く言った。
「甘いわよ、依姫。
 敵…幻想郷は、幻想同盟なんかと手を組んで
 確実にこちらの動きを妨害しているのよ。
 敵が搦め手で来る以上、こちらも策を講じなければ負けてしまうわ。」
「噂では、生命科学研究所で怪しげな実験を行っていると
 聞いていますよ?」
「噂でしょう?
 実験に関しては、兵達の疲労回復の方法の模索よ。
 あなたには、関係がないわ」
「…冷たく、なられましたね」
「為政者たるもの、冷静に判断を下せないようではね。
 幻想郷の先制攻撃で、政府官僚のほとんどが死んで、
 私が最高責任者になったからには
 この国のために、感情を殺してやらなければならない時もあるわ」
「…」
冷たく言い放つ豊姫の迫力に閉口してしまう依姫であった。
かつて優しく自分の前に立ち、導き守ってくれた姉ではなくなったのだと感じた。

翌日、豊姫が別のコロニーの視察に向かったのを確認してから
ゼロは執務室に忍び込んだ。
「あいつが何を企んでいるか…!」
執務室のコンピュータを起動し、最近やりとりされたメールを検索した。
普通の連絡の間に、不穏な文字が見えてきた。
「人工狂化兵士計画…!?
 何を考えているの?」
「そこまでよ」
突然執務室の扉が開き、豊姫が叫んだ。
「…豊姫…様」
「フフ、主がいない間に盗み見とは関心しないわね。
 ゼロ少佐、いや…鈴仙・優曇華院・イナバ」
「…バレていた、のか」
「ハハハハハ!
 偽の視察予定に引っかかるようじゃ、まだまだね。
 昔の甘い私のままだと思っていたのね。
 幻想郷のスパイを逮捕しろっ!」
豊姫がそう叫ぶと、2~3人の兵士が飛んできて、鈴仙を拘束した。
そして、彼女はそのまま地下の独房へ連れて行かれてしまった。

「大変だ! ゼロ少佐が…逮捕されたって!」
その知らせは、逮捕からしばらく経ってから
エーディンを介してレイセンや霖之助たちに伝わった。
「少佐が!? ど、どうして…!」
ゼロを尊敬していたワカバが、顔を真っ青にしてエーディンに詰め寄った。
「少佐は、正体を偽っていた幻想郷のスパイだったんだ。
 そしてその正体は…魔導戦争の英雄、鈴仙その人だったって…」
「それで、少佐はどうなるって…!?」
「それが…」

「裁判なしの銃殺刑!?
 姉様、正気なんですか!?」
執務室の机を強く叩きながら、依姫は豊姫に向かって叫んだ。
「スパイが紛れ込んでいた事実は重いわ。
 そして、スパイが彼女だけとは限らない。
 あいつは口を割ることはないだろうからね。
 だから、見せしめに処刑するのよ」
「だからって、彼女は…鈴仙なんですよ!」
「ええ、そう。
 かつての英雄、鈴仙。
 けれど今は地上の穢れに汚れた薄汚いスパイよ。
 あの、八意と同じ、ね」
「姉様っ…!」
「あなたも、アイツの事を庇い立てするなら
 反逆罪で逮捕してもいいんだからね?」
「くっ…! 失礼します!」
依姫は悔しい顔で、執務室を出た。
かつては自分たちの家族であった鈴仙を、なぜこうも簡単に
処刑などといえるのか。それが依姫には理解できなかった。

「…」
独房に鎖で繋がれ、身動きを封じられた鈴仙に、ミオが近づいた。
「…まさか、こんなに近くにいて気づかなかったとはね。
 へっ! あんたを直接殺せなくて悔しいよ」
鈴仙に向かってミオが吐き捨てるように言った。
「あなた…まだあの時のことを…」
「ああ、そうさ!
 魔導戦争終結を目前にしたあの時!
 お前と私は二人でマザーコンピューターの破壊任務についた。
 そして、部隊の中で二人だけが軽傷で生還した。
 なのに、お前は英雄扱いで、私は昇格止まりだった。
 お前さえいなければ、私が綿月様の元へ…!」
「あの位は、決して居心地のいいものじゃなかった」
「お前にとっては、だ!
 そうして手に入れた地位を、全うするなら良かった!
 だが、お前は逃げ出したんだ!
 わかるか? 私の目の前で、地位を捨てたんだよ!
 それが、どれほど私を惨めな思いにしたか知るまい!」
「…」
ミオの恨みがこもった叫びに、鈴仙は口を閉じた。
「いい気味だね。
 お前の刑の執行は、私が行うことにした。
 私の号令で、お前が死ぬんだ。
 最高の気分だよ。ハハハハッ!」
言いたいだけ言って、ミオは去っていった。
鈴仙は、この状況を脱する手を考えていた。

(ダメでも、もう一度…姉様に言ってみよう)
決定に納得がいかなかった依姫は、再び執務室に向かった。
そして、部屋の前に立った時、中の話し声がわずかに聞こえてき
行儀が悪いとわかっていながら、中の話を聞いた。
どうやら、士官の一人と豊姫が二人で話をしているようだった。
「…最近彼女も私に対して反抗することが多くなったわ」
「いかがしましょうか…。
 人工強化兵計画を感付かれたら、兵達の反感を買うことに…」
「余計なことに気づかれる前に幻想同盟を動かして、
 消してしまいましょう」
「妹君を、ですか?」
「だからこそよ。
 あの娘は兵たちからの信頼も厚い。
 それが幻想同盟、ひいては幻想郷の手によって命を奪われたとなれば
 復讐心によって、兵達の士気も上がるわ」
「ムーンライズの連中も、余計なことを知っている可能性もあるわね。
 彼女たちには、狂化の実験台にでもなってもらいましょう。
 精神制御をすれば、秘密をばらすこともなくせるわ。
 特に、レイセンはいい兵士になってくれるでしょう。
 そうでないものは、適当に処刑してしまいなさい」
「…恐ろしい方だ」
「フフフフフフ…!」
その話を聞いてしまった依姫は、驚愕した。
姉様が、自分を殺す。殺そうとしている。
そして、ムーンライズの乗員を、
レイセンもろとも恐ろしい実験の材料にしようと企てている。
依姫は、豊姫に気付かれないようにそっと執務室を離れ、
レイセン達が集まる個室へと急いだ。

「その話…本当か!?」
依姫から執務室のそばで聞いた話を聞いて、霖之助が叫んだ。
「このままここにいては、危険よ!
 今の姉様は普通じゃない! 本気よ!」
「でも、どうすれば…」
「逃げるしか無いでしょう!」
霖之助にワカバが外に漏れないように小声で叫んだ。
「待って、依姫様…このことは、他の者にはまだ?」
「ええ…。姉様直下の士官以外はまだ知らないはずよ」
レイセンが依姫の返答を聞くと、しばらく考えてから言った。
「このことをまだ他の人達が知らないのなら、
 逃げるのは今しかないわ!
 格納庫のWAで脱出しましょう!」
「く…このまま変な実験の材料にされるか、殺されるか…!
 だったら、やるしかねえか…!」
エーディンが深刻な顔で言った。
「でも、WAだけでは逃げられない…。
 逃げるにしても、どこへ逃げたものか…!」
「そこは、私に任せて」
レイセン達が話しあっているうちに依姫が考えたプランを話し始めた。
「まず、私が偽の出動命令…パトロールとかを出します。
 そして、同時にムーンライズへと連絡。
 ネイザン艦長に状況の説明と、合流ポイントの指定をする。
 私は、鈴仙…ゼロ少佐とともに、一芝居をうってあなた達に合流するわ。
 そして…幻想郷へ行きましょう」
「げ、幻想郷へ!?」
「幻想郷には、八意様がいる…。
 鈴仙とともに行けば、力を貸してくれるはずよ」
「月を裏切るんです!?」
ワカバが驚いた顔で言った。
「話から察するに姉様は、幻想同盟と繋がっている。
 宇宙で民衆を巻き込みながら見せ掛けの戦争を行っているのは異常よ。
 この状態を放っておけば、それこそ…幻想同盟や
 姉様達が、この国を…月をメチャメチャにしてしまうわ!」
「覚悟を決めよう。
 どのみちこのままじゃ俺達の命も危ない!」
「やるしか…無いのね…!」
レイセンが静かに言うと、全員で頷いた。
「私は鈴仙を助けに行く。
 あなた達はさっき伝えたポイントにWAで向かって!
 …くれぐれも、平常心で悟られないように…!」
「わかりました…!」
こうして、アルファ11脱出作戦が始まった。

「鈴仙!」
依姫は独房へ駆け込み、説明しながら鈴仙を拘束している鎖の鍵を外し始めた。
「…なるほど、事情は察したわ」
「あの時から、あなたに頼ってばっかりだけど…
 お願い、今はあなたの力が必要なの…!」
そう言うと、依姫は鎖を外した。
「…わかった。
 けれど、WA格納庫へはここからじゃ遠いわ」
「…5番格納庫に、私用に用意させたWAがあるわ。
 そこならここからでも遠くない。
 私を人質にすれば、抵抗は抑えられるはずよ」
「ああ…わかった!」
鈴仙はそう言うと、依姫の腹をおもいっきり殴った。
「がっ…!?」
「悪いけど、あなたに人質の演技ができるわけないでしょ。
 しばらく眠ってなさい」
気を失い、倒れた依姫を床に寝かせ、鈴仙は身を隠した。
「何事だ!?
 よ…依姫様!?
 一体何が…ぐはっ…!」
鈴仙は様子を見に来た看守を影から殴り倒し、懐から自動小銃を奪った。
「いくわよ、お姫様!」
鈴仙はそのまま依姫を抱え、彼女のこめかみに銃口を当てながら独房を飛び出した。
「脱走だー!」
「よ、依姫様!?」
「撃つな! 依姫様に当たる!」
異変を察知して鈴仙の脱走に気づき兵が集まってきたが、
依姫を人質にされているため発砲ができず、鈴仙を通してしまった。
「道を開けろ! さもなければこいつの頭が弾けるのを見ることになる!」
鈴仙は、迫真の演技で兵士たちを威圧し、道を開けさせ駆け抜けた。
「鈴仙の奴め、やったな…!」
その状況を知ったミオは、ほくそ笑みながらある部屋へと走った。
「フフフ、狂化兵士1号…出番だぞ!」

「…5番格納庫、ここね。
 こいつが依姫のWA、ワンブ・ゼロか」
紫色の塗装をされたWAを見て、鈴仙は呟いた。
ワンブ・ゼロは試作型ワンブをベースに、
ゼレイブに使うパーツの実験に用いられた機体である。
そのため、各部は量産機に比べ性能が高く、頭部もゼレイブに似た形になっている。
鈴仙は依姫を抱えたままコックピットへと上り、シートの脇にうまく寝かせた。
そして、機体を起動させ、格納庫のハッチを破壊して外へと飛び出た。
「ゼロ少佐…ですね!」
手はず通りにWAで基地の外に出ていたレイセン達は、
鈴仙と合流することに成功した。
「ユリ、大丈夫!?」
「な、なんとか…」
ユリは、初めて乗る戦闘用WAの操縦に慣れずに、
危なっかしくふらふらしていた。
「ムーンライズは!」
「後、数分でこちらに来ます!
 合流したら、とっとと脱出だ!」
「させるものかぁっ!」
遮るようにして、ミオがWA部隊を引き連れ攻撃を仕掛けてきた。
「くっ…早い!
 ミオのやつ、準備をしていたのか!
 ムーンライズが来るまで、なんとか持たせろ!」
「は、はいっ!」
鈴仙の指示で、各々戦闘を始めた。
「嬉しいよぉ! 鈴仙!」
「ミオッ! 現実が見えていないのか!」
ミオのペリグヴァインがプラズマ・ハーケンを抜き、鈴仙に迫った。
「豊姫は幻想同盟と結託して何かを企んでいる!
 あなたはこのまま利用されるだけでいいのか!」
「いいともっ!
 お前さえこの手で殺せるならね!
 貴様が地球へくだってから、よもやこの機会が来るとは
 豊姫様に感謝しても足りないくらいだ!」
「ちぃっ!
 こっちには依姫が乗っているのにか!」
「構うものか!
 豊姫様から許しは頂いているからな!」
「なんだとっ!」
ミオの攻撃をプラズマ・サーベルで防ぎながら鈴仙はミオを釘付けにした。

「お願い、このままかえって!」
レイセンは敵のワンブの頭部分だけを破壊しては放置していた。
頭部分にはメイン・カメラやセンサー類が集中しており
破壊されれば戦闘の続行は不可能になる。
今は敵とはいえ、同族を手に掛けたくないというレイセンの想いだった。
「くっ! このぉっ!」
初めての本格的なWA同士の格闘戦に、ワカバは苦戦していた。
ワカバだけではない、エーディンも、霖之助も、パルスィも、わかさぎ姫も、クライドも
ミオが連れてきた精鋭部隊の腕に苦戦を強いられていた。
そのため、戦場に現れた緑色の機体への反応が、遅れてしまった。
「あははっ! いい声で鳴きなさい!」
鍔迫り合いで動けないワカバの機体に向かって、緑色の機体・モーラ・グースが
腕のシールド・シザースを展開し、接近した。
「ワカバ! 危ない!」
その近くにいたユリが、とっさに間に入った。
入ってしまった。
サーディスのシールド・シザースはそのままユリの乗るワンブを挟み込み、
コックピットから上下に両断した。
「あ…れ…?」
ユリは、自分がやられたことに気づかないままワンブの爆発に消えていった。
「ユ、ユリィィィ!?」
ワカバは、ユリがやられたことに気づき叫び声を上げた。
「そ、そんな!?」
「ちっ…あの娘が…!」
レイセンとエーディンもその事実に気づいて言った。
「サーディスのやつめ、やったか。
 狂化兵士…使えなくはないようだな」
サーディスの働きを見て、ミオが呟いた。
「狂化兵士…すでに完成しているのか!?」
「見ただろ! あいつだよ!
 だがてめえの命は、あんなのに頼らずともこの手で…!」
ミオがそう言い終わらないうちに、ムーンライズの
メイン・プラズマ・キャノンの弾が戦場に放たれ、地面に当たり大きな砂埃を巻き上げた。
「ネイザン…少し、遅かったわ…!
 みんな、直ちに艦に引き上げよ!」
鈴仙の号令で、レイセン達はユリの機体の残骸を見下ろしながら、
ムーンライズの援護を受けつつ着艦していった。
「よくも、ユリを、ユリをぉぉぉ!」
半狂乱でレールガンを乱れ撃つワカバだけ、着艦しようとしていなかった。
「しまった、『狂気の瞳』が発症したか!」
鈴仙は反転し、ワカバを元へ駆けつけた。
「落ち着きなさい! ワカバ!
 彼女の死を無駄にするの!?」
「うるさい! うるさい!
 ユリの仇を…! ユリの仇を!」
抵抗するワカバを押さえつけようとする鈴仙の背後から、サーディスが接近する。
「おかわり、もーらい!」
「させないっ!
 ゼレイブ・フルドライブ!」
レイセンが間に飛び込み、フルドライブを発動した。
「くっ! じゃまをしないでよっ!」
フルドライブによって強化されたサーベルにサーディスがたじろいだ。
「…時間がない、ワカバ、切らせてもらう!」
その間に、鈴仙はワカバの機体の四肢をサーベルで切り落とし、
だるまになった状態のコックピットを抱え、ムーンライズに向かった。
「レイセン、ワカバは回収した!」
「…わかりました!」
レイセンはフルドライブを解除し、プラズマ・ライフルで牽制をしながら
鈴仙と共にムーンライズに着艦した。
「みんな乗ったわね!
 全速で緊急発進! コロニーを抜ける!
 何かに掴まれ!」
ネイザンが指示を出すと、ムーンライズは加速をし、
宇宙港を突っ切ってアルファ11を飛び出した。
「離してよ! ユリが…ユリがまだなのよぉぉぉ!!」
ワンブ・ゼロに抱えられたコックピットから、
狂気に囚われた真っ赤な目をしたワカバの悲痛な叫びがこだました。



ユリを喪い、意気消沈するムーンライズ隊に
ミオを加えた月面軍の私掠部隊、通称・宇宙海賊隊が襲いかかる。
そして、狂気に囚われたままのワカバに、鈴仙はある決断を下す。
次回、夢幻機動ゼレイブ 第6話「コスモ・パイレーツ」
君は、月の果てに何を見るのか。



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状況が大きく変わり始めましたね。まさか最初に出会った三人の中から逝くとは・・・
小説として読むと展開が早いような気がしますが、これがゲームになったときにどのくらいのテンポになるのか。
そして、3号の潜水艦モードは使う機会が出るのか・・・
30ヶ月前
×
少し気になるところがあって、単に興味本位なんですが。
キャラのセリフに対して状況説明が常に後出しなのはなんでですか?
30ヶ月前
×
>>2
未熟であるがゆえの癖のようなものです
30ヶ月前
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