夢幻機動ゼレイブ 第6話「コスモ・パイレーツ」
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夢幻機動ゼレイブ 第6話「コスモ・パイレーツ」

2015-04-20 23:52
  • 2

1~5話までの「導入編」が終わり、この話から地球を目指す「逃亡編」となります。
面白い作品にするために、頑張っているけれど
小説という形態はやはり難しい…。
もっと文章や物語構成のうまい人に手直ししてもらいたいなぁ。
そんな弱音を吐きつつ、6話をどうぞ



ミオの愛機、ペリグヴァインがブースターを切り離し減速した。
ペリグヴァインのレーダーには友軍母艦を示すアイコンが点滅している。
「あれか…」
ミオはそう呟くと、バーニアを吹かせて戦艦「レゴリス」へと着艦した。
「本土から大佐殿が、わざわざご苦労だねぇ。
 あたしは『コスモ・パイレーツ隊』隊長、レーア中佐だよ」
ミオがレゴリスのブリッジに上がると、髪の長い30半ばの玉兎が挨拶をした。
「私とて、豊姫様の命令じゃなければ
 上官に敬語も使えないような連中なんかと
 一緒の作戦になんかゴメンだよ」
「へっ、言ってくれるねぇ。
 どうせあたしらは汚れ役専門の私掠部隊だ。
 本土の正規連中ほどお高くとまれないもんでさ」
開き直る態度のレーアに、ミオが続いて言った。
「フン…離反した味方殺しに駆り出されるには
 うってつけの部隊ってことか」
「あんたも人のことは言えないだろう?
 聞いてるよ、開発途中のモノを勝手に使って
 こんな辺境に飛ばされてきたんだろう?」
ミオは、そう言われてムーンライズ隊を取り逃した後のことを思い出した。

ミオが、ガチャリと扉を開け執務室に入る。
執務室の椅子には、不敵な笑みを浮かべる豊姫が鎮座していた。
「狂化兵士を使ったそうね」
「はっ…」
あの時、ミオは鈴仙を逃がすまいと開発中の狂化兵士の1番目である
サーディスを勝手に目覚めさせ、投入したのであった。
結果、ユリを撃墜したもののムーンライズ隊の逃亡を止めることはできなかった。
「まだ狂化兵士は不安定なのよ。
 あなたが鈴仙に執着しているのは知っているけれど
 まだ未完成の彼女たちを使うのは良くないわね」
ミオは豊姫にそう言われ、頭を下げた。
「申し訳ありません…。
 罰ならなんなりと」
「あなたには、コスモ・パイレーツ隊に合流してもらうわ」
「コスモ・パイレーツというと…あの海賊部隊ですか?」
「正確には私掠部隊。
 敵輸送船の略奪や反体制派の粛清みたいな
 後ろ暗いことを影で行う汚れ役の部隊よ。
 今のあなたが行くには、うってつけじゃない?」
「…何を仰りたいので?」
「フフ…。
 ムーンライズの航路はある程度予想はできているわ。
 コスモ・パイレーツは、その途中に今いる。
 鈴仙をその手で殺してあげたいんでしょう?」
「…!」
「すでにWA用の加速ブースターを用意させてるわ。
 先回りして、コスモ・パイレーツと共に
 ムーンライズを沈めてあげなさい」
「ハッ…!」

憎き鈴仙をその手で殺したいと考えているミオは、
確かにコスモ・パイレーツ向きだとは思った。
しかし、エリート意識のあるミオは素直に認めるわけにはいかなかった。
気持ちを抑えつつ、ミオは冷静に提案をした。
「…連中は仲間を一人喪ったばかりで
 士気が落ちているはず。
 捉え次第、攻撃をかけよう」
「フン、せっかちだねぇ?
 まあ、こっちもさっさと終わらせたいもんだしね。
 けれど、艦には豊姫様の妹やペットが乗っているんだろう?
 始末しちまってもいいのかい?
「豊姫様はそれでも良いとおっしゃっていた」
その言葉を聞いて、レーアは少し嫌な顔をした。
(肉親や従者を平気で切り捨てるような奴が今の月のトップかい…)
「お前たち! 準備をするんだよ!」
レーアは不快感を表に出さないようにそう叫び、ブリッジを去っていった。
「鈴仙…今度こそお前を…!」
ミオは、静かに闘士を燃やしていた。


光を失った真っ赤な目をして、個室の中でワカバは泣いていた。
「う…うう…」
親友のユリが目の前で、自分を守るために死んだという現実は
それまでただの学生として生きてきたワカバには、辛すぎる現実であった。
「…どうだった?」
「ああ…やっと落ち着いたわ」
ワカバの部屋に外から鍵をかけ、鈴仙は廊下で待っていたネイザンと一緒にブリッジに戻った。
ブリッジに戻った鈴仙に、エーディンが掴みかかって叫んだ。
「ゼロ少佐…!
 ワカバを、ゼレイブに乗せるって本当かよ!」
「彼女のことを思ってのことよ…。
 このまま、狂気の瞳が発症したままでは
 精神に傷が残る可能性があるから…」
「あんたが原因なんだぞ!
 あんたがスパイ行為なんてするから、
 関係がなかったユリが巻き込まれて、死んじまった!」
鈴仙はそう叫ぶエーディンの手を払いのけた。
「私は、あなた達を騙していたんだからね。
 恨んでくれても構わないわ。
 責任を感じているからこそ、ワカバには生きてもらいたい。
 戦いで発症した狂気の瞳は、
 戦いの中で克服させるしかないのよ」
「狂気の瞳は、放置すれば不安定な心のまま
 自傷行為に走ったり、自殺をする可能性もある危険な状態なの。
 通常は数カ月間のカウンセリングを行って
 徐々に治していくものなんだけど…」
「今、この艦にはそんな時間も余力もない。
 だから、戦場という極限状態の中で戦いの恐怖を…
 ワカバには克服してもらう」
ネイザンと共に、鈴仙が言った。
「そんな方法があるかよ!
 それでワカバが死んじまったらどうするんだ!
 真っ赤な目になって、あんなになっちまって!」
「そうならないようにゼレイブに乗せるのがわからないか!」
鈴仙が大声で反論した。
「今、発進前に搬入できた物資でゼレイブの強化改造をやらせている。
 主に、生存性向上のためのね。
 …私は、調整を手伝ってくる」
そう言って、鈴仙は格納庫の方へ行ってしまった。
追いかけようとしたエーディンを、ネイザンが止めた。
「艦長…どうして…!?」
「鈴仙は…必死なのよ。
 魔導戦争の時に、私たちの仲間が大勢死んだわ。
 多くは戦場で…だけど、仲間を失ったショックで発症した
 狂気の瞳がもとで自ら命を絶った仲間も多かった…。
 ちょうど、今のワカバくらいの歳の娘もいたわ」
「魔導戦争…」
鈴仙が英雄となった戦争。
しかし、英雄とならざるを得なくなった過程で多くのつらい経験をしたのであった。
その話を聞いて依姫がブリッジを訪れた。
「鈴仙は…今も過去と戦っているのね…」
「依姫様…」
「ごめんなさい。
 あなた達を巻き込んでしまって…。
 私が、姉様を止めることができれば…」
依姫がエーディンに頭を下げた。
エーディンは慌てて依姫をとめた。
「あ、頭を上げてくださいよ!」
「はい…」
依姫が顔を上げるのを確認して、エーディンは少し間を置いて考えを話した。
「俺だって、豊姫様のやろうとしていることは危険だと思うし
 止めなきゃいけないと思ってますよ。
 ただ…考えが、まとめられないだけなんです…。
 知り合いが戦いで死んだなんて経験…した事無いですから」
そう言って、エーディンは部屋にこもっているレイセンのことを思い出した。
「そろそろ失礼します。
 レイセンのやつの様子も見てやらないと。
 気丈なフリしてたけど、あいつも辛いだろうから…」
「ありがとう。頼みます…」
依姫の言葉を受け、エーディンはレイセンの部屋へと向かった。
「…若いですね」
「ええ…」
エーディンの後ろ姿を見て、ネイザンと依姫が呟いた。

(はっきりと症状の出てたワカバばかり気にしてたけど、
 あいつもこんなこと初めてだっただろうに…。
 狂気の瞳が発症しているかもしれないからな…)
そう思いながらエーディンは廊下を進み、レイセンのいる部屋をノックした。
「…どうぞ」
「入るぞ…その、なんだ。
 お前も辛いのならこもってないで相談を…」
そう言いつつ、レイセンの目を見たエーディンは驚愕した。
レイセンの目は、目に光こそあれど今のワカバと同じ真っ赤な色になっていたからだ。
「お前…その目…」
「はい…狂気の瞳…ですよね…」
「気分は大丈夫なのか…?」
「気分は…大丈夫なんです。普通です。
 むしろ、頭のなかがスッキリしているくらい…。
 私…何が起こってるんですか…!?」
エーディンは答えられないまま立ち尽くしていた。

一方、霖之助は格納庫で整備長を手伝っていた。
霖之助、パルスィ、わかさぎ姫、クライドの4人は鈴仙と相談し
幻想郷出身であることをまだ隠しておくことに決めていた。
月面軍からの離反のショックや、ワカバの狂気の瞳などの問題が解決し
落ち着いた時に明らかにしようと取り決めたのだ。
必要以上に、艦内に混乱を増やさないためである。
「子供が死ぬのを見るのは、辛いな…」
ふと、霖之助が心境を漏らした。
それを聞いて、整備長が口を開いた。
「ああ、あっちゃいけねぇさ。
 しかもあの娘は、兵士ですらなかった…。
 状況的にしかたなかった、で片付けるしかねぇとはわかっちゃいるが
 そう認めたくはないもんだ…」
「整備長…」
「わしらが整備するのが、パイロットの棺桶であっちゃならねぇ。
 こいつらワンダーアーマーを、パイロットを乗せて、
 無事に帰してくれる乗り物にするために
 わしらはこうやって、整備しているんじゃよ…」
寂しそうな顔で話す整備長を見て、彼が過去にも送り出したパイロットが
帰ってこないということを経験したのであろうと、霖之助は感じた。
何か言葉をかけてあげようと考えていると、鈴仙が格納庫に入ってきて整備長に作業の進捗状況を聞いた。
「整備長、ゼレイブの改修の方はどう?」
「ああ。
 最新型のプラズマ・シールドに、装甲には耐プラズマ性コーティング。
 それから、フルドライブの時間を伸ばすために
 2倍の容量のバッテリーを2本に増設。
 それから自動防御パターンの動作と、
 フルドライブのエネルギー供給先にバーニア部分を追加しておいたぞ。
 お前さんたちの機体にもプラズマ・シールドだけはつけておいた」
「プラズマ・シールド?」
「プラズマエネルギーの膜を生成し、攻撃を防ぐ防御装置じゃよ。
 プラズマエネルギーの電荷吸収効果によって
 実弾はもちろん、プラズマ弾やスパーク弾も防げる、
 WA同士の戦闘用にと開発されたものをちょろまかしてたんじゃよ」
「WA同士の戦闘…幻想同盟との戦いのための装備が、
 同軍同士の戦いの役に立つとは皮肉なものね…」
鈴仙はプラズマ・シールドの発生ユニットを見上げながらそうつぶやき、整備長に礼を言った。
「ありがとう。
 あとは…レイセンのやった操作感度設定を保存して初期化しないと…」
「ああ…あの赤毛の嬢ちゃんを乗せるんだったな…。
 そういうのはわしらよりも、あんたのほうが詳しいじゃろ?
 すまんが、やってくれんかの?」
「…わかったわ」
鈴仙はそう言ってゼレイブのコックピットに登り、設定画面を開いた。
保存する設定数値を見て、鈴仙はあることに気づいた。
「私の設定と、全く同じ…?」
エーディン曰くレイセンがめちゃくちゃにやったらしい
ゼレイブの操作感度設定数値はすべて、小数点以下単位で鈴仙の設定と同じだった。
通常、操作感度設定とはパイロットそれぞれで違うものであり
すべて同じというのは、ありえないことである。
(一体…なぜ…?)
鈴仙は、数値の初期化作業をしながらしばらく考え込んだ。
ピリリリ。
鈴仙が考えこんでいると、ネイザンから通信が入った。
「こちら鈴仙。どうかしたの?」
「ああ、鈴仙。
 今、エーディンから聞いたんだけど、
 レイセンが狂気の瞳を発症していたの」
「…無理もないわね。それで、症状の程度は?」
「それが…彼女の症状は、克服後のそれなのよ…。」
「…何だって?」
鈴仙の中でまたひとつ、レイセンに謎が増えたのであった。
カウンセリングで狂気の瞳を治療した場合は、その後に狂気の瞳になることはない。
ネイザンもかつてはその方法で狂気の瞳を治療した。
狂気の瞳を発症してもなお、正気を保っていられるのは
鈴仙のように戦いの中で狂気を克服した者の中の一握りである。
ネイザンから聞いたレイセンの状態が本当ならば、
レイセンは過去に狂気の瞳を発症するような戦いを行い、かつ克服したということになる。
たとえ、類まれなるWA操縦の天性を持っていたとしても、
あの若さでそのような戦いに加われるものであろうか?
それ以前に、魔導戦争終結からこの戦争が始まるまでにそのような戦闘が起こったであろうか?
そう考えを巡らせていると、不意にけたたましく警報が鳴り響き、
オペレーターの放送が格納庫に響き渡った。
「15機のワンダーアーマーの接近を確認!
 識別は…月面軍私掠部隊『コスモ・パイレーツ』と判明!
 また、内1機はペリグヴァインの反応と確認!
 ワンダーアーマーパイロットは、至急発進準備を行ってください!」
「ペリグヴァイン…ミオも来たわね…!」
鈴仙はゼレイブのコックピットから飛び降り、エーディンが背負ってきたワカバをゼレイブのコックピットまで案内した。
その傍らで、整備長がパルスィと霖之助に叫んでいた。
「だから、オメーらの機体は宇宙用の気密処理ができてねーんだって!」
「どうして3号機だけは大丈夫なのよー!」
「んだって、3号機は水中用だもんで、
 気密はしっかりしてるし、変形は宇宙にも対応できるようになっとるんだって。
 おおう、わかさぎちゃん。
 車いすのまま乗れるように改造しておいたぞ!」
「ありがとう、おじいちゃん!」
車いすに乗ったわかさぎ姫は、そのまま3号機に乗り込んでいった。
「わかさぎ姫…俺達の分まで頼むぜ」
クライドが見送りながら言った。

ワカバをゼレイブに乗せた後、自動発進モードを入れコックピットを出た鈴仙に、
エーディンはサングラスを差し出した。
「…これは?」
「俺達と一緒に行動する間は、こいつをつけて
 ゼロ・ゲイン少佐でいてくれ。
 素顔のあんたのままだと、殴りたくなってくる」
「…それで気が済むのであれば」
鈴仙はサングラスを受け取って身につけた。
「少佐…もしも、ワカバが死ぬようなことがあったら
 俺があんたを撃つ。いいな?」
「そうならないように、お互いにフォローを頼む」
ゼロになった鈴仙はそう言うと、ワンブ・ゼロに乗り込んだ。

ワカバの代わりにワンブに乗り込もうとするレイセンに依姫が声をかけた。
「レイセン、大丈夫なの…?」
「はい、依姫様。狂気の瞳が出てから
 頭のなかがスッキリしているんです。
 今なら、ワンブでもいけます」
「そう…気をつけてね」
「はい!」

「…幸運を祈っちょるぞ。
 ゼレイブ、自動発進!」
整備長の号令とともに、カタパルトに乗せられたゼレイブが
ワカバを乗せて宇宙空間に飛び出した。
「ゼロ・ゲイン、ワンブ・ゼロ、出るぞ!」
「エーディン、スカイイーター、出る!」
「レイセン、ワンブ、行きまーす!」
「わかさぎ姫、3号機、行きます!」
その後を追うように、残りの機体も次々と発進していった。
「ハハハッ!
 十人十色な顔ぶれだねぇ!
 選り取りみどりだ!」
先行していたレーアがムーンライズ隊のWAを見て興奮した様子で叫んだ。
「紫の奴は私がやる!
 他の雑魚は任せた!」
ミオはそう言ってワンブ・ゼロの方へとバーニアを吹かせて向かっていった。

「各機、ゼレイブを中心にフォーメーションを固めろ!
 3号機は後方から援護しろ!」
ゼロの号令でゼレイブを囲むようにエーディン達は陣形を固めた。
「鈴仙、覚悟ぉぉ!!」
「チィッ!」
ゼロは真っ直ぐ向かってきたミオ機のプラズマ・ライフルの弾丸を
プラズマ・シールドで受け止めた。
「ふん…面白い!」
そのまま、ゼロはミオをゼレイブから引き離すように交戦しながら移動していった。
「敵ワンブ接近!」
「対空砲、迎撃開始!
 補給はできないんだ、無駄弾は撃つなよっ!」
ネイザンの命令でムーンライズの対空気銃が火を吹いた。
敵ワンブ部隊は対空砲火を受け散開した。
「敵部隊の散開を確認!」
「待ってました!」
わかさぎ姫は、3号機のレバーを捻った。
3号機のバックパック部からミサイルが発射された。
ミサイルは敵ワンブに向かっていき、大きな爆発を起こした。
「やった!」
しかし、そんなわかさぎ姫の声をかき消すがごとく1機のWAが突撃してきた。
「舐めるんじゃないよ! そんなミサイルで!」
「見たことのないWA!?」
「このあたしのカイメルから逃れられるものか!」
レーアはそう叫びながらカイメルの胸部からビームの機関砲をゼレイブに向け発射した。
ゼレイブをかばうようにレイセンのワンブが割り込み、シールドを展開して防いだが
あまりの弾速のために数発はゼレイブにあたってしまった。
「ああああっ!」
「ワカバッ!」
ゼレイブが大きく振動し、乗っているワカバがうめき声をあげる。
「ビーム兵器だって!?
 禁止されているはずだぞ!」
「あたし達が知るもんかい!
 戦いはルールを守るおままごとじゃないのさ!
 野郎ども! あのツノ付きをのしちまいな!」
レーアの命令を受け、散開したワンブのうち数機がゼレイブに向かって来た。
「守るだけじゃダメだ!
 敵の数を減らす!」
エーディンはそう言って接近してくるワンブに向かって突撃を仕掛け、
ミサイルと機関砲を乱れ撃った。
それに続いて、わかさぎ姫は3号機を潜水艦形態に変形させ敵に向かっていった。
「私もお手伝いします!」

ゼロは、遠くからゼレイブに敵ワンブが集結していることに気づいた。
「ゼレイブがっ!」
「よそ見をしている場合か!」
ペリグヴァインのプラズマ・サーベルがワンブ・ゼロをかすめた。
「お前の相手は私だよ!
 せいぜい楽しませてくれよな!」
ペリグヴァインはワンブ・ゼロから距離を取り、
その周りを周回するような動きをしながらプラズマ・ライフルを連射した。
ゼロは防戦一方となっていた。
「くっ…!」
ゼロはプラズマ・シールドで攻撃を防ぎながらもペリグヴァインの動きを注視していた。
そして、一瞬だけわざとシールドの方向をペリグヴァインのライフルから逸らした。
ミオはその瞬間を逃さず、プラズマ・ライフルを構えた。
「そこだぁっ!」
「もらった!」
ペリグヴァインが発砲するよりも早く、ゼロは頭部のプラズマヘッドカノンを発射した。
プラズマ弾を受けたペリグヴァインのライフルが、エネルギーの行き場を失い爆発した。
「バカなっ、隠し武器!?」
「はぁぁぁぁ!」
爆発に怯んだ隙にゼロはハンドレールガンを連射しながらペリグヴァインに接近する。
「負けてられるかぁっ!」
ペリグヴァインは腰部からカギ状の刃を持つ武器を取り出し、レールガンの弾丸を素早い動きで弾いた。
「プラズマ・ハーケンか…!」
「お前にだけは…負けられないんだよ…!」

「何をもたもたしているんだい!
 もういい、あたしがやるよ!」
しびれを切らしたレーアが攻撃をかいくぐりゼレイブに接近し、
先端にプラズマエネルギーを帯電させたチェーン状の武器を発射した。
「速いっ!?」
レイセンはそう言いながらもプラズマ・サーベルでチェーンを弾くが、
その間にカイメルがレイセンのワンブの目の前に接近していた。
「ショックウィップを防いだのは褒めてやろうかねぇ…!
 だが、カイメルはWAや魔導兵器の良いパーツの集合体さ!
 既成兵器が追いつけるものじゃないんだよ!」
カイメルの素早い動きにはワンブに乗ったレイセンでは反応しきれず、
プラズマ・サーベルで片足を来られてしまった。
「あああっ!」
「レイーッ!」
レイセンのピンチに機関砲を乱れ打ちながらエーディンが接近するが
軽くあしらわれた上にショックウィップを受けてしまった。
「ぐあぁぁ!」
「エーディン准尉!」
「くっ…悪いがこれ以上は無理そうだ…。
 ワカバを…頼んだぜ…!」
エーディンはそう言って傷ついた機体のままムーンライズに帰艦した。
「さあ…次はお前の番だよ!」
「ワカバ…!」
レイセンは、未だ動かないゼレイブの方を見てワカバの名を叫んだ。
「ワカバ…動いて…!」

「うっ…ううっ…」
ワカバはゼレイブの中で涙を流していた。
「こんな…事になるなんて…」
涙を流し泣きじゃくりながら、ユリとの会話を思い出していた。
『ワカバ、依姫様に会えるんだよ!
 レイセン様ともお友達になれるかも…!
 一緒に行こうよ! ね!』
ワカバと無理やり一緒に、レイセンの案内役として立候補した時のこと。
『ああっワイヤーがっ…!』
『ユリ!』
『ワカバちゃん…!
 どうしてワイヤーを…!?』
『一人にさせられるわけ…ないでしょ…!』
ムーンライズに拾われる前、修理ポッドのワイヤーが切れた時のこと。
『これ、ワカバにあげる!』
『わ、私に?』
『最近、ワカバ戦い続きだったから…お守り!』
アルファ11の店で、ユリにお守りをもらった時のこと…。
「ずっと…一緒だったじゃない…!
 どうして…あんただけ死んじゃったのよ…!
 ユリがいない世界なんかよりも、私も一緒に…」
そういう考えをかき消すがごとく、
レイセンが防ぎきれなかった攻撃がゼレイブに当たり、コックピットが激しく揺れた。
「死ぬ…の…? 私…。
 消えるの…? ユリのように…」
初めて月の賢者・八意永琳の伝記を読んで彼女のようになりたいと思ったことも。
一人ぼっちだったところを話しかけてくれたことがきっかけで
ユリと出会い、共に学び、遊んだ思い出も。
死ねば全て消えてしまう。
「嫌…!
 私が死んだら…ユリが…!」
ユリとの思い出が消えることは、
ユリの存在そのものが消えることに等しいとワカバは思った。
「生きたい…死にたくない…!」
ワカバが決意を固めるのに応じるかのように、ワカバの目に光が戻った。
「こんなところで…負けたくない…!
 死ぬもんか…生きてやるんだァァァァ!!」
ワカバはゼレイブのフルバースト・システムをオンにし、
バーニア制御のペダルを目一杯踏み込んだ。

「何っ!?」
突然フルバーストにより光り始めたゼレイブを見て、レーアは一旦全速でゼレイブから離れた。
「…ヤバイね、嫌な予感がする。
 態勢を建て直して再度攻撃を…!」
そう言い終わらないうちに、猛加速したゼレイブがカイメルに追いついた。
「逃すもんかぁぁぁ!!」
「バカなっ! カイメルに追いつくだって!?」
カイメルと並走しながらゼレイブが頭部のプラズマヘッドカノンを発射し、
カイメルのバーニア部にダメージを与えた。
「しまった!」
速度が落ちたカイメルに向かって、ゼレイブがプラズマ・サーベルを抜き接近する。
ゼレイブのサーベルの一線を、カイメルがプラズマ・サーベルで防ぎ、
少しの間、鍔迫り合いをした後離れた。
「…もう、誰も死なせやしない!」
ワカバはゼレイブのフルドライブを、バーニアから武器に切り替え、
プラズマ・シールドの照射方向を全面に集中させた。
そしてそのまま、プラズマ・シールドをカイメルに向け、突撃した。
「やぁぁぁぁ!」
「くっ!」
レーアのカイメルがプラズマ・サーベルで受け止めようとしたが、
出力差によりプラズマ・サーベルを貫通し、
ゼレイブのプラズマ・シールドはカイメルのコックピットのやや外した位置を貫いた。その衝撃でカイメルの右腕と頭部が爆発し、カイメルは動かなくなった。
「くっ…とどめを刺しなっ!」
レーアは敗北を察し、ワカバに向けて叫んだ。
しかし、ワカバはフルドライブを解除して言った。
「…殺すまではしない」
「あたしに情けをかけるってのかい!?」
「私たちの目的はあなたを殺すことじゃない…。
 私たちが生き伸びるために抵抗しただけ。
 戦えなくなったあなたに攻撃する意味は無いわ」
「そんな綺麗事で!」
「じゃあ言葉を変えるわ。
 エネルギーがもったいない!
 …これでいい? じゃあね…!」
そう言って、ゼレイブがカイメルを蹴っ飛ばした。
「小娘の言うことかぁぁぁ!」
蹴られたカイメルはバーニアで姿勢制御することもできず、回転しながら離れていった。
「野郎ども、作戦は失敗だ! 引き上げだよ!
 さっさとあたしを回収をし!」
レーアは、かろうじて生きてた通信で叫ぶと、ため息を付いて呟いた。
「屈辱だよ…。
 あたしに情けをかけるとはねぇ…。
 初めてだよ、そういうの…」
その周りでは、コスモ・パイレーツのワンブが次々とカイメルに集まってきていた。

「ちっ…撤退か…!」
ミオは通信を聞いてワンブ・ゼロから離れ、離脱した。
「次こそは必ず…お前を…!」
ゼロは、そう叫び去るミオの姿に向けて言った。
「あれが恨みの強さか…。
 ミオ…このままじゃお前が…」
その言葉は、ミオには届かなかった。

「ユリ…私は生きるよ。
 あなたの分まで…」
光の灯った赤い目のまま、ワカバはゼレイブの中で呟いた。
「ユリ…あなたが生きていたという事実を、
 消さないために…ね…」
そう言って、ワカバはユリからもらったお守りを握りしめ、涙を流した。



運悪くコスモ・パイレーツと幻想同盟に挟まれ形で戦うこととなったムーンライズ隊。
その乱戦のさなか、レイセンと霖之助達は帰艦のタイミングを逃し
農業コロニー・ガンマ3へと迷い込む。
そこで彼らを待っていたのは、旧月面軍の軍人、バルであった。
次回、夢幻機動ゼレイブ 第7話「ガンマ3に住む男」
君は、月の果てに何を見るのか。



感想をいただけると励みになります。
匿名の方がいい方はブログhttp://touhoualive.blog124.fc2.com/までどうぞ


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いつも読ませてもらってます!ロボット物のロマンあふれる熱い展開はさすがです!
続きも楽しみにしてます。こういうの大好きです
30ヶ月前
×
やっぱリアル系のロボットものだと人間ドラマも欠かせないですよね。ワカバも覚醒してどうなることやら・・・
ところで、もう少しロボットとか戦艦の特徴とかの描写が欲しいです。色と名前と武装だけだといまいち想像しにくいですしそっちの方が絵とかも描きやすいと思います。まあ私は絵心無いですが(笑)
30ヶ月前
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