ラブライブ!2期9話の何がすごいのか - 映像の原則から読み取る -
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ラブライブ!2期9話の何がすごいのか - 映像の原則から読み取る -

2014-06-12 03:15
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茶番?それとも…

公開されるなり茶番だなんだと言われたラブライブ!2期9話。

見ていない方に簡単に説明しますと、なにが茶番かと言えば
・いきなり猛吹雪の中、走っていくしかないという状況になる
・たかが学校から出るだけなのに死にそう
・とってつけたようなシリアス
などといった要素が挙げられます。

ところがこの9話、よく見ると実はものすごく色々な要素が詰まっており、非常に計算された
構成であることがわかります。
これを茶番だと笑い飛ばすのは簡単なことですが、その前に一度、丁寧に紐解きながら見てみましょう。

※本エントリの趣旨は、「茶番シーンと言われてるけど、色々考えながら見てみると面白いよ」という提案と自分なりに思いついたポイントの紹介です。
ここに書いた内容が正しいというわけではありません。

映像の原則

演出を解釈するにあたり、「映像の原則」を頼りに見ていきます。
富野由悠季監督の映像技術書のタイトルであり、画面作りや演出など、多岐にわたって
解説がなされています。

映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

ハイランドビューさんがそのエッセンスをまとめてくださっています。


下記サイト様よりお借りしています:

落ちるアクシズ、右から見るか?左から見るか?<『逆襲のシャア』にみる『映像の原則』> - HIGHLAND VIEW 【ハイランドビュー】

あくまで富野流の原則ではありますが、ラブライブ!も制作はサンライズですから、系統としては参考になるはずです。

校舎から吹雪の中へ - 関係性のおさらい -

では、校舎から出て、実際に吹雪の中に歩き出すところから見ていきましょう。


画面の左から右、つまり下手から上手へ向かっていく構図が、この一連のシーンにおける基本の流れとなります。
表を見ると「上昇、逆行、勝利へ」となっており、まさに原則通りの構図となっていることがわかります。
スノハレを歌うために、吹雪に立ち向かって会場にたどり着かなければなりません。
猛吹雪に穂乃果はひるみますが、ことりが進もうと呼びかけます。


ことりが上手、上位に立って穂乃果を引っ張ります。
今まで穂乃果の意見に賛同することがほとんどだったことりにしては珍しい態度だったので、おやっと思った方も結構いたのではないでしょうか。
実は、ことりが呼びかけることは重要な意味を持っています。脚本、構成に関係する部分なのでそっちの話をする時に詳しく書きます。


しかしことりが自ら最初の一歩を踏み出すことはしません。それは穂乃果の役割です。
穂乃果が発案し、ことりが承認し、海未が押しとどめる。それが三人の役割分担です。


それを示すように、海未は「雪が足にまとわりついて…」などとネガティブ発言。
下手の方向に移動していることに注目。


が、結局先を行く二人を見てついていく。最初にスクールアイドルを結成した時と同じ流れです。この短い一連のシーンで、三人の関係性を描写しつつ、ことりの成長を示しています。

学校を出るまで - 必要アイテムは揃ったか? -

いよいよ吹雪の中、会場に向けて歩いていきます。


基本の構図は変わらず下手から上手への移動。
信号が青であることは覚えておいてください。

さて、茶番と言われる一番の原因に、「学校から出るのになんでそんなに必死なのww」と
言った点が挙げられます。
学校なんかさっさと出て、仲間と合流する直前に風が強くなって…といった脚本でもよかったはずです。

※以降の話は、「映像の原則」とは関係なく、私なりに思いついた一つの解釈です。

ここを読み解くためには、ラブライブ世界を理解する必要があります。
一言で言えば、ラブライブの世界は我々の現実世界とは違う世界法則が作用しています。
世界法則とは何か。例を挙げると、ヒーロー物における「正義は勝つ」であるとか、ホラー映画における「なぜか単独行動する」などが該当します。
では、ラブライブ世界の法則とは?
それは、「心象風景が色濃く現実に作用を及ぼす世界」だということです。

そもそも1期1話でも2期1話でも、いきなり歌から始まりました。
最初からこのアニメはミュージカル的な世界ですよ、ということが示されています。
そういった演劇においては、限られた舞台の中でより強く印象付けるために大げさに演出されることが多いものです。

では、この吹雪は単なる演出なのか?
どうやら、そうではないらしいことが2期1話の最後でわかりやすく示されています。
そうです、穂乃果が「雨やめー!」と言えば雨がやんだシーンです。
ラブライブ出場を決意した穂乃果が叫んだことで雨がやむ。
人物の心情、行動が世界に影響を及ぼしうることがはっきりと示されています。
ダイエット回も同じで、問題があったからこそ体重は増え、問題を解決したからダイエットも成功する。トラブルと世界は表裏一体、不可分の関係で、切り離すことはできない。
それがラブライブ世界における世界法則です。
(修学旅行で穂乃果の天候操作が効かなかったのは、問題を抱えていたのが凛だからです)

話を吹雪に戻します。
となると、吹雪で前に進めないのは、誰かが問題を抱えているからです。
それは、誰でしょうか?

この謎を解決するためには、ラブライブのテーマに立ち返る必要があります。
ラブライブでは「やりたいこと」への問いかけが一貫して行われてきました。
本当にやりたいことは何なのか?
1期では花陽や真姫、絵里のやりたいことが描かれてきました。
2期でも、凛や希のやりたいことが示され、皆それぞれやりたいことを表明し、実現しています。
それぞれがみんなやりたいことが違うけれど、そんな9人が揃うことがμ'sであり強みだと6話で穂乃果の口から語られています。

これから戦う相手は強敵A-RISEです。対抗できる必殺技スノハレを発動するためには、ラブライブのテーマである「やりたいこと」を、各々が理解、宣言し、会得していなければなりません。RPGで例えて言えば、全員がアイテム「やりたいこと」を装備している必要があります。
A-RISEは1期からずっと君臨してきたいわばラスボスです。対抗するには作品のテーマぐらいの装備が必要なのです。

ところが、まだやりたいこと、が明確になっていない人がいます。
海未です。そもそも、ことりと海未の二人は、スクールアイドルにしたって穂乃果の発案に乗っただけで、自分からやりたいと言ったわけではありません。ことりは1期の最後で穂乃果と一緒にいたいとやりたいことを宣言しましたが、海未はその時もはっきりとは宣言していません。
校舎を出るときにことりが穂乃果に発破をかけたのは、ことりの成長の証でもあり、自分が「やりたいこと」を明確に持っているという宣言でもあります。

上記を踏まえたうえで、吹雪のシーンを見てみましょう。


上手からの猛烈な吹雪に負けそうになる穂乃果。


再びことりが上手から引っ張る。


そしてついに海未が「やりたいこと」を宣言!重要なシーンなので真正面のアップ。


穂乃果が後ろを見ながら聞いていることで、海未が背後にいることを示しています。
海未は見せない。海未と穂乃果が同じ画面内にいて、下手から呼びかける形だと意味が変わってしまいます。

全員が「やりたいこと」を宣言したことでついに条件が整いました。
世界法則にしたがい、課題が解決したので吹雪が止みます。
晴れて学校の代表μ'sとして、学校から出られる時がやってきました!

なお、「やりたいこと」全員装備の他に、条件として「学校代表であること」もあると思われます。単にアイドルというだけでは駄目で、スクールアイドルとして学校の代表でなくてはならない。そのためのクエストは既に生徒会のトラブル解決で終了済みです。
Aパートで「説明会を欠席するわけにはいかない」と言ったのは、学校代表としては当然です。いわば学校代表であるためのコストです。
また1話と9話での挨拶の対比も学校代表であることの証でしょう。


ここで青信号を思い出しましょう。こういうシリアスシーンであれば信号は赤にしていかにも絶望感を煽るのが常道ですが、信号は青。ここに違和感はありませんでしたか?
これはおそらく学校代表という条件は満たしていたので信号は青だったものと思われます。
学校代表の条件は満たしていたが、まだ「やりたいこと」が揃っていなかったため進めなかった。
とにかくラブライブは、何気ないシーンでも恐ろしく高密度に情報が詰まっています。

学校から会場へ - 信号機君の名演技 -

いやいや、信号なんてそんなの適当でしょ。そう思うのももっともです。
それを確かめるためにも、続きを見ていきましょう。


抜けたところで神モブ登場。最初は常に上手にいます。
しかしスノーブーツの受け渡しを境にして――


上手と下手が逆転。神モブは見送る立場になります。
イマジナリーラインを演出の道具として効果的に超えています。


出ました、信号機。赤です。止まれ?ピンチ?
いえ、この信号はもう渡った後です。むしろ戻るなという意思表示でしょう。

さて、眼下には神モブの呼びかけで集まって雪かきをする全校生徒たちの姿が。
学校代表の条件を満たしていないと、ここでゲームオーバーになるところでした。

この後は、集まってくれた全校生徒に感激して一気に走り出す前の、いわば「溜め」のシーン。ここでふさわしい信号描写は何でしょうか。
赤?状況的に赤ではない。けれど、進め!と青を点灯するにはまだ早い。
じゃあ、どうするか。


答えはこちら。
傘で覆うことで、うまく青の部分だけを見えないようにしています。
これぞプロの演出、プロのコンテ。これに気が付いたとき、心底すごいと思いました。


そして走り出す。当然このシーンの信号は青、進め!
どうでしょう。さりげない信号機の背景にも、明確な意味があることがわかっていただけたでしょうか。


この後はひたすら走り続けます。基本的には右方向、上手方向に走って未来へ進んでいます。


しかし、仲間と合流する最後のシーンでは一転して下手に向かって移動します。
表を見ると「安心、普通」などと並んで「絶望」などといった言葉が。
「映像の原則」内でも述べられていますが、複数の矛盾した意味があるのです。


そして下手で待ち受ける絵里に抱き付いてゴール。
上手を覆うように置かれている傘がいいですね。
「寒かった、怖かった」といって絵里に甘える穂乃果と、流れに逆らって上手に向かい続けた反動による下手への動きが一致しています。
上手に向かい続けて生じたストレスをここで解消し、準備万端。スノハレへとつながっていきます。

追記:神モブと全校生徒についての記述が中途半端でしたので、別エントリにて補足しました。合わせてこちらもどうぞ。

追補:神モブと全校生徒について

まとめ


以上、茶番と言われたシーンをじっくりと見てきました。
意図を考えながら見返すと、脚本と演出、そしてラブライブのテーマにまで関係したものすごく濃密な、見どころたっぷりのシーンであることがわかります。
自分も最初に見たときは「なんだこの茶番!?」と思ったのですが、繰り返し見るうちに、色々な見方ができることに気がつきました。上に書いた内容も、何回も見るうちに思いついたものです。
これはいわばカルピスの原液状態です。
今となっては、私はこの茶番と呼ばれるシーンが、断然好きになりました。

こうした見方をしてみると、ラブライブの見かたが変わってきます。
改めて他の回を見てみると、まだまだ多くの発見があります。
「映像の原則」を片手に、作り手の意図を想像しながら見てみてはいかがでしょうか。

例えば…1期1話の最初の信号も、やっぱり青ですよ!
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他135件のコメントを表示
×
>1 カリフォルニアロールさんのコメントにものすごく納得しました。
二期全体に言えることですが、どんなにコンテ演出・作画がよくても脚本がそれを殺してしまっているように思います。
36ヶ月前
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>>115
茶番言われてる内容の記事に対して、みんなでコメントしてるんだからやっぱり注目度高いんだなと感じる。
次回のブロマガで批判される要素があるのに人気になるコンテンツを考察してみると面白いと思います。今回のように演出なのか、脚本なのか、キャラクター性、話題性、楽曲の良さetc. 批判されてる内容だけど、こういうところがやっぱり好きっていうのがわかると、一つのコンテンツとして多様な解釈が出来るんじゃないかと思う。
あと、一つの解釈として「吹雪の演出=過去の売れない頃のμ's」「吹雪の中で雪かきをしたモブ=売れなくても必死に応援していたファン」→「今後が決まるSnow halation」っていう流れは初期ファンにとっては重なるものがあって、嬉しかったのかなとか勝手に思ってました。
一期と比較して表現されてたり、キャラクターのイメージカラー使ったり、10話でμ's+1の話をしたり、そういった演出上の小ネタは面白いと思うんだけどね~やっぱ脚本ダメだと茶番になっちゃうか・・・
36ヶ月前
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9話の展開が嫌な人は何で一期で切らずに見続けてるんですかね…
36ヶ月前
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この解釈好き。
9話好きだったからなんか嬉しいわ。
いいと思う。
36ヶ月前
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あばたもえくぼ
36ヶ月前
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なかなか良い考察してるじゃね~かよ
アーナキソ
34ヶ月前
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アニメ観るのに、わざわざ作り手の意図を紐解かなきゃいけないのか?
違うだろ。
直感的、感情的、なんでも良いけど、面白く感じたなら楽しめた、面白くなく感じた方が茶番に感じた。
ただそれだけの事だろ。

実質20分程度の中に情報を詰め込むより、単純に観て、楽しめるか楽しめないかを考えて作れば、茶番とか言われなかったかもね。

ことりの発言だって、あれ?珍しい事言うやん!って感じるか否かでストーリーに受ける印象は変わるし。

あとさ凛の誤字を指摘している人キモいわ。

まぁ、今回の解説は、脚本、映像の見せ方、作り方、その意味を知らなきゃ楽しめないとか、そこはおかしいだろ。
それが既に茶番。

私的には、好きなかいだけど、もう少しバカになって観れないのかね?
32ヶ月前
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素晴らしい考察ですね…。自分は初見のとき茶番だとは思いませんでしたがこういう見方もあるのだとつくづく感じますね。
32ヶ月前
×
はぇ^~すっごい・・・(絶句)
29ヶ月前
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こういう考察をしてくれる人は自分にとってとても
そうとても!ありがたいです
なんとなく物事を見ている自分にとって全く知らなかった培われてきたものの上にあるルールや
それを踏まえたうえで見えてくる作り手の意図、その思いを汲み取った考察
こういったものを読んで驚いたり納得したりシーンをめぐらせて考えたりすると
いつもそれまで以上の感動を与えてもらえます

最近とある劇場版を見ましたが、考察してくださった方々の意見を見て
さらに感動が深くなりました

ありがとうございました
⁽˙³˙⁾◟( ˘•ω•˘ )◞⁽˙³˙⁾
23ヶ月前
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