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記事 12件
  • むしマガ Vol.29【パワーエコロジー】

    2012-06-27 14:53  
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    ・一生を夢の中で過ごすことが可能に 理化学研究所の研究グループが、とんでもないものを発明しました。もう1つの現実を体験する「代替現実システム」を開発 私たちが映画館で映画を見ていても、スクリーンの中の世界は私たちがいる世界とは異なるものだ、と誰でも知っています。しかし、この装置を使って映像を人に見せると、その人はその映像が今現実に目の前で起こっていることと認識してしまうのです。 人は夢を見ている時、その夢で起きている出来事が現実に起きているものだと錯覚します。この装置は、いわば起きている人に夢を見させることができるわけですね。 つまり、映画のマトリックスみたいな体験ができてしまうんです。 この装置を心的外傷の治療に応用することが検討されているそうです。洗脳装置としても、これ以上のシロモノは無いでしょう。カルト教団に悪用されると問題になりそうです。 でも、一番の使い道としては、エンターテイメントになるでしょう。バーチャルであらゆる体験ができてしまうからです。 たとえば、昔のギャグ漫画でよくあるパターン。夢から覚めたと思ったら、その世界もまだ夢で、その夢から覚めてもまだ夢で、その夢から....なんていう、どれが現実なのか仮想空間なのか区別をつかなくさせることも可能です。 また、イチローのような超一流の野球選手として一生を終えたいと思う人は、人生ゲームソフト「イチロー」を購入し楽しむこともできるようになるでしょう。 実際にはただぼーっとしているだけなのに、自分がメジャーリーグで毎年200安打を打つ野球選手として活躍している夢を現実のものとして体感し、一生を終えることが可能になるのです。 もちろん、独裁者やハリウッド女優や世界的経営者まで何にでもなれてしまいます。 TVゲームですら、現実逃避のツールとして中毒者を生み出すほどですから、この超バーチャルリアリティーゲームが普及した際には、多くの人が現実世界を捨てて、ゲームの世界を選ぶようになるのは想像に難くありません。 そのときが、人類の終わりの始まりなのだと思います。★クマムシ研究日誌「パワーエコロジー」 神奈川大学を無事に卒業し、北海道大学大学院地球環境科学研究科の修士課程に入学した。指導教官は、東正剛教授。この東教授、風格のあるコワモテタイプの教官である。 当時、東研究室には全部で20人以上のメンバーが在籍しており、みな特定の動物についての生態学的研究を行っていた。 対象とする動物は、アリやハチなどの社会性昆虫、スズメやタカなどの鳥類、テンやクマ、そしてテングザルなどのほ乳類と多岐にわたっていた。 僕がクマムシを研究対象に選んだことで、東研究室のモットーは「クマムシからクマまで」となった。多様性に富む研究対象動物を扱う、東研究室の特徴をよく表すモットーだ。 対象動物以外の研究室の特徴としては、野外でのフィールド調査を重視していることが挙げられる。とにかく外に出て動物を追いかけまわす、そういう研究スタイルだ。頭ではなく、まずは体を使え。そういうことである。 
  • むしマガ Vol. 28【森山和道インタビューその3「サイエンスライターの存在意義」】

    2012-06-25 14:47  
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     こんにちは。6月最後の週のむしマガをお届けします。・飛ばないテントウムシが作出される 近畿中国四国農業研究センターなどの研究グループにより、飛ばないテントウムシが作出されたそうです。飛ばないテントウムシを開発 害虫アブラムシ退治のため テントウムシは害虫アブラムシの天敵、つまり益虫なのですが、農場に離しても飛んで逃げていってしまいます。 そこで飛ばないテントウムシを作出するために、飛ぶのが苦手なテントウムシを選別して交配させて、さらに飛ぶ能力が落ちた個体を選別して....という作業を何年にもわたって繰り返したのだとか。 新規の変異体を作るのにはバイオエンジニアリングが主流の昨今ですが、こういう昔ながらの地道な品種改良技術によって成果を上げるところには個人的にぐっとくるものがあります。 分子生物学自体は大変素晴らしいものですが、皆が皆そこに流れてしまい取り残した宝の山が見過ごされている場合も多々あります。手前味噌で恐縮ですが、たとえばクマムシの人工飼育系の開発などもそのひとつです。 やっぱりハイテクに頼らなくても、面白い成果は出せるよなーと再認識されるような、飛ばないテントウムシのお話でした。★むしコラム「森山和道インタビュー(第3回)」  森山さんと初めてお会いしたのは、2006年12月に東京大学で開催された「第1回クマムシ研究会」でした。僕が発表を終えた後に、名刺をいただいたのを覚えています。 その時はそれっきりで終わったのですが、後に慶応大のクマムシ研究者、鈴木忠さんと共著でクマムシ本を出すなど、クマムシ周りでは有名なサイエンスライターさんでした。「クマムシを飼うには」鈴木忠/森山和道 著 僕がブログやtwitterを始めてからもたまに絡んだり、こちらのブログ記事を紹介してくださったりと、ネット上でゆるい交流をしていましたが、今年の3月に久々にお会いして今回の対談となりました。 森山さんはサイエンスメールというメルマガに、研究者へのインタビューをコンテンツとして載せているのですが、今回は研究者である僕からインタビューを受けるというユニークな形になっています。サイエンスメール それでは、どうぞお楽しみください。☆プロフィール☆森山和道(もりやま・かずみち)http://moriyama.com/ フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。 1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。メールマガジン「サイエンス・メール」、http://www.mag2.com/m/P0003148.html「ポピュラー・サイエンス・ノード」編集発行人。http://www.mag2.com/m/0000014382.html共著書に『クマムシを飼うには 博物学から始めるクマムシ研究』(鈴木忠、森山和道 /地人書館)。第3回「サイエンスライターの存在意義」森→森山堀→堀川堀: 今、これだけネットが普及して、現場の人たちがダイレクトに自分のやっていることを解説したり紹介するようになりましたよね。 そうすると、現場の人と一般市民を繋いでいたジャーナリストとか、もちろんサイエンスライターもそうだと思うんですけど、厳しい言い方をすると、そういう中継ぎ役の方々の意義って何?っていうことになると思うんですけど。例えばサイエンス系のブログでも、匿名の研究者がやっているブログで人気のあるのが結構ありますよね。森: はいはい。ありますね。堀: たとえば、蝉コロンさんとか。ああいう人が出てくると、サイエンスライターとかジャーナリストとしては、どういう風にして対抗するのかな、っていうのがお聞きしたいんですが。森: どうなんですかね。僕自身は、本当によくわからないところがありますね。なんかこう、時々書くというのと、常に書くというのは、やっぱり根本的に違うので。そこは一つ大きいところではありますよね。 あとは、言ってみたら僕らはある意味、寄生虫みたいなものだな、と思うんですけど。寄生虫が宿主にどういう恩恵をもたらしうるか、ということですよね。宿主に何らかの恩恵を与える共生微生物になれる可能性はあるんじゃないですかね。ひょっとしたら、宿主にとって共生微生物の良い遺伝子は宿主に吸収されちゃうかもしれないですけど。堀: 何かしらのメリットを研究者に与えながら、ということですか。それは具体的に言うと、宣伝するとかそういうことになるんですか。森: どうなんでしょうね。何が一番いいのかは僕はちょっと分かりませんけど。堀: ふーん。森: でも、いわゆるジャーナリストってあるじゃないですか。自分で「私はジャーナリストだ」って名乗っている人は、だいたい物事を批判的に語るのが仕事ですよね。社会の木鐸(ぼくたく)と言うか。まあ木鐸って本来は叩かれる方ですよね。まあ、ある意味そういう役割が期待されているのがまず一つありますよね。つまり、研究者と迎合するような人は、まずなれないですよね。堀: そうかー。森: ただ、昔から海外でもよく言われていることらしいですけど、サイエンスの分野を取材をしている人は、取材対象とと迎合しやすい傾向があるようです。それは、良くもあるけど悪くもあると。共感しやすいというか。良く作用した場合には、分かりやすく伝えてくれるということですよね。それはあるんだけど、でも逆にそうじゃない部分もありますよね。その辺でどうすればいいのかというのがまず一点。 あと、外部の人間が何をすればいいのか。まあ単純に言って、本人が「楽しいですよ」って言うのと、「こんな楽しい人たちががいるんだよ」って伝える側というのは、別々のそれぞれの役割があるのかな、と。笑顔を振りまく人と、その笑顔を写真で撮って広める側ですよ。そういう違いがあるのかもしれませんね。 
  • むしマガ Vol. 27 2012/06/24【乾燥クマムシは何年生きられるか?その1】

    2012-06-24 14:32  
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     こんにちは。前回と前々回のクマムシトリビア「クマムシの乾燥レシピ」が好評でした。とってもうれしいです。と小学生みたいに嬉しさを素直に表明したいです。 読者数もまたまた増えてきました。とても有り難いことです。こうしてクマムシの輪が全国に広がっていき、堀川が北海道第2区から立候補してもトップ当選するくらいになればいいな、と思っております。 つきましては、みなさまのご友人にぜひ清き一票を、いや、むしマガ購読登録をお勧めいただけますと幸いに存じます。本メルマガの転送は暗黙の了解でフリーとなっていますので、ぜひともご興味のありそうな方々にお送りください。 そんなこんなで、今号はクマムシトリビアをお届けいたします。★クマムシトリビア その12 読者からのクマムシにまつわる様々な疑問に対して堀川が回答します。◆ 質問: クマムシは乾燥した仮死状態で何年くらい生きられるんですか?永久に生きられるんでしょうか?(その1)◇ 回答: きました。「クマムシは永遠に生きられる」説の検証です。 鈴木忠さんの書かれた本「クマムシ?!」にも、この部分について解説が書かれていますが、ここでもこの疑問に一通りお答えした後、さらに掘り下げたお話もしますね。・有名な120年伝説 まず、有名な話として、コケの中で120年間乾眠状態だったクマムシが蘇った、というのがあります。博物館で120年間保存されていたコケに水をかけると、その中から出てきたクマムシが動き出した、というものです。 この話は様々な文献に紹介されてきました。もちろんきちんとした、それも高名な研究者らによって書かれた論文に、です。 僕も最初はこの「伝説」を信じていました。 この伝説の元となる論文は、Franchesci氏によって1948年に発表されていました。ただし、このイタリア語で書かれた論文では、120年間眠っていたクマムシの様子が、ちょっと微妙な表現で記述されています。 2001年のJonsson氏とBertolani氏による総説の中で、この部分の英訳が引用されています。ここでは、この部分をさらに和訳して引用します。 
  • むしマガ Vol.26 2012/06/21【中途半端だった卒業研究】

    2012-06-21 14:29  
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    ★クマムシ研究日誌「中途半端だった卒業研究」 今回は、卒業研究の話に戻ろう。 卒業研究のテーマで色々考えていたり、大学院受験の勉強などをしていたこともあり、卒業研究は実は、大学院受験の後の9月からスタートしたのだった。 クマムシを自分で初めて採りに行ったのも、クマムシの乾燥方法を習ったのも、9~10月である。つまり、卒業研究期間は実質的に3~4ヶ月しかなかった。 ここで改めて僕の卒業研究のテーマを紹介したい。研究テーマタイトルは「高酸素分圧環境がクマムシの生存に与える影響」である。 クマムシは乾眠状態で長期間生存が可能である。しかし、高分圧酸素、すなわち濃い酸素環境は生物にとって有害だ。疾患がおきたり寿命が縮まるのは、私たちの体が活性酸素種などにより酸化されるからだ、という見方が有力である。 そういえば、漫画「ジョジョの奇妙な冒険・第6部」でも、周囲の環境の酸素濃度を高めて相手に酸化ダメー
  • むしマガ Vol. 25【森山和道インタビューその2「僕らの役割は何?」】

    2012-06-18 14:21  
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     こんにちは。またまた月曜日がやってきました。・クマムシさん手ぬぐい むしマガのロゴを作っていただいたmacoさんに、クマムシさんの手ぬぐいをデザインしていただき、手ぬぐいの業者さんに製品を作ってもらいました。クマムシさん手ぬぐい かわいくて渋い出来上がりになっています。 ということで、先週のクマムシさんバッグに引き続き、こちらのクマムシさん手ぬぐい(非売品)もむしマガ読者のみなさまの中から抽選で5名様にプレゼントいたします。 商品をご希望の方は、住所・氏名・電話番号を明記の上、 horikawadd@gmail.comまでご応募ください。 みなさまからのご応募、楽しみにお待ちしています。★むしコラム「森山和道インタビュー(第2回)」 森山さんと初めてお会いしたのは、2006年12月に東京大学で開催された「第1回クマムシ研究会」でした。僕が発表を終えた後に、名刺をいただいたのを覚えています。 その時はそれっきりで終わったのですが、後に慶応大のクマムシ研究者、鈴木忠さんと共著でクマムシ本を出すなど、クマムシ周りでは有名なサイエンスライターさんでした。「クマムシを飼うには」鈴木忠/森山和道 著 僕がブログやtwitterを始めてからもたまに絡んだり、こちらのブログ記事を紹介してくださったりと、ネット上でゆるい交流をしていましたが、今年の3月に久々にお会いして今回の対談となりました。 森山さんはサイエンスメールというメルマガに、研究者へのインタビューをコンテンツとして載せているのですが、今回は研究者である僕からインタビューを受けるというユニークな形になっています。サイエンスメール それでは、どうぞお楽しみください。☆プロフィール☆森山和道(もりやま・かずみち)http://moriyama.com/ フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。 1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。メールマガジン「サイエンス・メール」、http://www.mag2.com/m/P0003148.html「ポピュラー・サイエンス・ノード」編集発行人。http://www.mag2.com/m/0000014382.html共著書に『クマムシを飼うには 博物学から始めるクマムシ研究』(鈴木忠、森山和道 /地人書館)。第2回「僕らの役割は何?」森→森山堀→堀川堀: 今、クマムシさんという僕が作ったキャラクターをプロモーションしてるんですよ。これ、山内さんという方にクマムシさんのポストカードを作ってもらったんです。どうぞ。森: クマムシさん?「乾眠なう」?こういうグッズも売ってるってことですか?堀: いや、まだ売ってないですけど。プロモーションしている段階です。いわゆる、ゆるキャラです。これを作った理由というのは、人々に「かわいい」から入っていって科学に関心を持ってもらおうと。森: この絵は誰が描いてるんですか?堀: 私です。森: そういうの、もともと得意なんですか?堀: いや、そんなことないですよ。まあ、いろんなかわいいキャラクターを観察して、かわいさのポイントを抽出して作ったというか。森: ああ、そういうのが得意なんですね。ようするにこうすればいいんだよね、みたいなのが。堀: 研究と通じるところありますよね。つまり、過去に成功している例から、ポイントを抽出して試してみるというか。森: そういう人は器用貧乏になりがちなので気をつけてください(笑)。堀: ははは。森: 器用貧乏にならないくらいの才能のある方なら、何の問題もないと思うんですけどね。僕、昔、イラストでバイトしていたことがあるんですよ。堀: え、そうなんですか?森: 今はまったく描いていませんけど、そのころですけど、ある先生から「君は器用だけどねえ」と。要するに、これはこうしてこうやって描けばいいんだろ、という感じで僕が描いていたのを見透かされてそう言われたんですね。今でも僕は、作家ではなくてライターなんだと思ってます。堀: といいますと?森: 画家とイラストレーターの違いで例えると分かりやすいと思うんですけど、発注を受けた時に「どういう作風にしましょうか?」と聞くのがイラストレーターで、「おれはおれの画風で行くぞ」というのが画家だと。それと同じようなところが、ライターと作家の違いにもあると思うんですよね。堀: なるほど。森: でもなんか、このクマムシさんのキャラクター、すごくセンスいいですよね。堀: あ、ありがとうございます。森: これ、売るんですよね?堀: そうですね。森: どういったものを売るんですか? 
  • むしマガ Vol. 24【クマムシの乾燥レシピその2】

    2012-06-17 13:59  
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    ・パリ日本人研究会 金曜日、初めてパリの日本人研究会に出席してきました。パスツール研究所の研究者らが中心となり、組織されています。月に一度、1人の発表者が自分の研究内容を発表するというものです。 ちなみにパスツール研究所は、僕のいるパリ第5大学から歩いて5分くらいのところにあります。パスツール研究所 僕がパリに来たのは1年以上前なのですが、この研究会の存在は最近になって知りました。知ったきっかけは、僕のブログやナショジオの記事を読んでいたパスツール研究所所属のTMさんからのメールでした。 もちろん、TMさんとは面識がありませんでした。このメルマガでも何度も書いていることですが、ネット上で活動しているとコネクションが無いところからも声がかかってきて、色んなネットワークに繋がれることを改めて実感しました。 このパリの日本人研究会を仕切っている(ように見えた)人は、パスツール研究所でパーマネント(終身雇用)の研究者をしているEMさんです。 日本からやってきて、フランスでパーマネント研究者のポジションをゲットするというのは、並大抵のことではないのですが、彼女はなんと神奈川大学の出身、つまり僕の先輩です。 神奈川大学からはアカデミックの世界に残る人がほとんどいないため、日本の学会でも神奈川大学出身者に会うことはまずありません。早い話が、EMさんは神奈川大学出身のスター的存在です。 そんな彼女とパリで出会うという、なんとも不思議な縁を感じました。クマムシトリビア その11 読者からのクマムシにまつわる様々な疑問に対して堀川が回答します。◆ 質問: クマムシを上手に乾眠させるのにはろ紙を使うと良いとのことですが、他にも上手に乾燥させる方法はあるのでしょうか?(その2)◇ 回答: クマムシの乾燥レシピの続きです。今回は、クマムシを直接スライドガラスの上に置いて乾燥させる方法について、その奥義を伝授します。 前回も書きましたが、クマムシが乾眠に移行するためにはゆっくりと乾燥する必要があり、スライドガラスの上で放置して乾かすと通常は死んでしまいます。 そこで、クマムシをスライドガラスの上でうまく乾燥させるためには、乾燥用の密閉容器(デシケータ)の中で湿度を高く保ち、ゆっくりと乾燥させる必要があります。 じめじめした梅雨時には洗濯物がなかなか乾かないのと同じで、高湿度の環境ではクマムシがゆっくりと脱水していくのです。 デシケータ内の湿度を調節するためには、何か化学物質を溶かした溶液を入れてやります。僕の場合は、グリセロール溶液を良く用います。 たとえば35%のグリセロール溶液を入れてやると、デシケータ内の湿度を85%に調節することができます。 ちなみに100%グリセロールだと湿度は0%、グリセロールを一切含まない水だけの場合は、湿度は100%になります。 ちょっと難しいかもしれませんが、要するに水に何かの溶質を溶かし込むと飽和蒸気圧が下がるので、溶質の種類や濃度を変えることでちょうど良い湿度を作り出すことができるわけですね。 
  • むしマガ Vol.23【クマムシを誰かにやらせようと思っていた】

    2012-06-14 13:56  
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     こんにちは。パリは冷え込む日が続いています。夏、早く来い。・飼育 昨日は1日ヨコヅナクマムシの飼育作業をしていました。最初の飼育システムは僕が作ったのですが、その後に東大の國枝さんや慶応大の荒川さんがこのシステムに改良を加え、今では当初に比べてだいぶ飼育作業が簡略化され助かっています。 とはいえ、実験のためには多数のクマムシを使う必要があるため、その分飼育作業にかける時間も増えます。飼育作業員として助っ人を迎え入れたいところです。 パリでクマムシを飼いたい方がおられましたら、ご一報ください。★クマムシ研究日誌「クマムシを誰かにやらせようと思っていた」 時間軸を少し遡るが、今回は大学院受験にまつわる話をしよう。 クマムシ研究日誌の初回でも述べたように、僕はもともと動物生態学に興味があった。学部3年生の終わりには、他大学の大学院修士課程に進学し、動物生態学を研究することを決心していた。 どこの大学院の研究室に進学すべきか、動物生態学を研究している研究室をインターネットで探し、面白そうな研究をしている7~8つの研究室に見学に行くことにした。学部4年生の5月、まだクマムシを研究するのを決める前のことだ。 北は北海道大学から南は九州大学まで、日本列島を横断しながらの研究室訪問を実行した。まだ訪れたことのない場所も沢山あったので、旅行気分もあった。 とはいえ、よその大学の教授にアポイントメントを取って話を聞きにいくという行為は、当時の自分にとっては果てしなくハードルの高いものだった。 実際、研究室訪問の際には教授達にバカなやつに思われないように、必死で的確な質問をするように頑張っていた。研究室訪問とはいえ、ネガティブな印象を相手に与えれば、大学院試験の合否にも影響があると思っていたからだ。 教授達との面談中は汗をかくほど緊張した。僕は一般企業への就職活動は経験が無いが、研究室訪問の際の緊張感は就職活動の際の面接時のそれと似ているんだろうと思う。 研究室訪問で教授たち以上に僕に対して緊張感を与えたのが、そこにいた大学院生達の存在である。いくつかの研究室では、セミナーにも出席させてもらったが、ズバズバと発表者に質問攻めにしている大学院生らの攻撃的な姿を見て、 「なんて場違いなところに来てしまったんだろう」 と、後悔することもあった。まるで、よその国の内戦地に放り込まれた旅行者のような気分だった。 あるセミナーでは、発表も議論もすべて英語で行われており、僕に質問がふられても英語を全く理解できないために何も答えられず、恥をかいただけで終わってしまうこともあった。 
  • むしマガ Vol. 22【森山和道インタビューその1「サイエンスライターになった経緯」】

    2012-06-11 13:50  
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    ★むしコラム「森山和道インタビュー(第1回)」 今回から、9週にわたってサイエンスライターの森山和道さんへのインタビュー内容をお届けします。 森山さんと初めてお会いしたのは、2006年12月に東京大学で開催された「第1回クマムシ研究会」でした。僕が発表を終えた後に、名刺をいただいたのを覚えています。 その時はそれっきりで終わったのですが、後に慶応大のクマムシ研究者、鈴木忠さんと共著でクマムシ本を出すなど、クマムシ周りでは有名なサイエンスライターさんでした。「クマムシを飼うには」鈴木忠/森山和道 著 僕がブログやtwitterを始めてからもたまに絡んだり、こちらのブログ記事を紹介してくださったりと、ネット上でゆるい交流をしていましたが、今年の3月に久々にお会いして今回の対談となりました。 森山さんはサイエンスメールというメルマガに、研究者へのインタビューをコンテンツとして載せているのですが、今回は研究者である僕からインタビューを受けるというユニークな形になっています。サイエンスメール それでは、どうぞお楽しみください。☆プロフィール☆森山和道(もりやま・かずみち)http://moriyama.com/ フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。 1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。メールマガジン「サイエンス・メール」、http://www.mag2.com/m/P0003148.html「ポピュラー・サイエンス・ノード」編集発行人。http://www.mag2.com/m/0000014382.html共著書に『クマムシを飼うには 博物学から始めるクマムシ研究』(鈴木忠、森山和道 /地人書館)。第1回「サイエンスライターになった経緯」森→森山堀→堀川堀: 森山さんがライターになる経緯というのは、どんな感じだったんですか?森: いや、なんとなくですよ。時々聞かれるんですけど。堀: 森山さんは元々はNHKにお勤めだったんですよね?森: ええ。堀: なぜNHKを辞められたんですか?森: NHKっていうところは、職員は東京と地方を行ったり来たりするんですよ。それは決まっていて、だいたい3年から4年の周期でね。僕は最初東京にいたんですけど、異動で岡山に行けって言われたんですよ。でも、岡山に行きたくないなと思って。本当に単純なんですけど、それが辞めた理由です。堀: そうですか。森: あともう一つは、堀川さんもひねくれ者だとご自身おっしゃっていましたけど、僕もかなりひねくれていて、岡山に行けって言われた瞬間に、今でもはっきりと覚えているんですけど、頭の中で人生のレールがバーッって見えたんですよ。堀: はあ。森: これでこーなってあーなってこーなるな、っていうのが見えちゃって。つまんないから辞めようと思って。岡山に行けって言われた瞬間に、じゃあも辞めますと言って席立っちゃってましたから。堀: あはは。森: いや、あの会社にいると本当に分かるんですよ、人生のレールが。周りの人たちを見てると。実際、いま僕の同期とか、だいたいデスクとかプロデューサーとかになってるんですけど、そういう風になる過程がなんか全部分かっちゃって。もういいやと。そういう感じですね。堀: そうですか。森: で、しばらく家でぐーたらしていたんですけど、そのとき僕は既にウェブサイトを作っていまして。そして、そのウェブサイトに仕事募集中です、と書いたんです。そうしたら、ライターの仕事が来て、今日に至るんです。今も仕事募集中です。堀: そういうことだったんですか。森: ええ。積極的にライターになるぞ!とか思ったわけじゃないんです。もちろん、後づけでの理由はありますよ。テレビだと映像で撮れるものしかとれないけれども、ライターはもう関係ないわけですよ、過去の話だろうが未来の話だろうが。好き勝手書けますから。そういうことですね。でも、それは本当に後づけですよ。流れで言えばそういうことです。別に、収入面を考えるとか、そういうこともまったくなく。考えたら辞めないですよ、普通。堀: ほとんどの人は、収入とか安定面を最重要視しますよね。普通に考えると。森: 僕は、なんでかそういうことをあまり考えなかったんですよね。今になって思えば、 
  • むしマガ Vol. 21【クマムシの乾燥レシピその1】

    2012-06-10 13:46  
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     こんにちは。この原稿を書いているのは土曜日の夜10時すぎなので、本当はこんばんは。です。 10時過ぎだというのにパリの外はまだ明るく、僕の体内時計を攪乱してくれていて困ってしまいます。・宇宙開発、民間主導時代の到来 ちょっと前になりますが、アメリカの宇宙ベンチャー企業スペースX社が無人宇宙船ドラゴンの打ち上げ、そして国際宇宙ステーションとのドッキングに成功しました。 これまで宇宙開発と言えば国家主導のプロジェクトが中心でしたが、冷戦終結の影響もあり宇宙開発への意欲と予算は下がり続ける一方なのが現状です。 そんな中、ここ最近は宇宙旅行計画も含めた宇宙産業に民間のベンチャーがぽつぽつ参入し続けており、今後は民間主導の形で宇宙開発ブームが訪れる予感がします。 個人的にも一生に一度は宇宙旅行に行ってみたいので、適度な規制緩和をするなど国が民間の開発の足かせにならないような仕組みを作ってくれることを願うばかりです。★クマムシトリビア その10 読者からのクマムシにまつわる様々な疑問に対して堀川が回答します。◆ 質問: クマムシを上手に乾眠させるのにはろ紙を使うと良いとのことですが、他にも上手に乾燥させる方法はあるのでしょうか?(その1)◇ 回答: 待ってました!これこそクマムシ研究の中でも僕が最も得意にするジャンルなのです。 クマムシの乾燥レシピはですね、色々あるんですよ。ダンナ。 まぁ確かにむしマガvol. 20のクマムシ研究日誌で紹介したように、ろ紙の上にクマムシを乗っけて乾かせるのが一番楽ちんな方法なんですが。 ただ、ろ紙の上に直にクマムシを乗せて乾燥させると、ちょっと問題なことがあるんです。それは、乾眠クマムシに水をかけて復活させた後、クマムシを回収しづらいことなんですね。 なぜ回収しづらいか。それは、ろ紙の表面は、クマムシの爪がジャストフィットするようなザラザラになっているのでクマムシがしがみついて離れにくくなるからです。 これの何が困るかというと、例えば乾眠からさめたクマムシの体の中の変化を調べたい時にはクマムシを分析する必要があるわけですが、かれらをうまく回収できないと実験がスムーズに進まなくなってしまいます。 また、乾燥処理後のクマムシの生存判定をする場合にも、ろ紙の上にしがみついたままのクマムシは動かないことが多く、生きているかどうかを判断しづらいのです。 実験に使わない場合でも、出張などで長期間クマムシの世話をできない時に乾かしておく場合にも、後々復活させたクマムシを培地に移す作業が困難になってしまいます。 そこで僕は、 
  • むしマガ Vol.20【プチ魔法使いになった感覚】

    2012-06-07 13:38  
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     おはようございます。むしマガGW特別号として配信したエッセイ「地上最強の動物クマムシと人類」が昨日発売の言論雑誌「kotoba」にて無事掲載されました。言論誌「kotoba」 今月からムシマガを購読し始めた方には、本エッセイを無償で送信させていただきますのでhorikawadd@gmail.comかtwitterアカウント@horikawadまでお気軽にお声をかけてください。 これまでに取材やインタビューなどが商業誌や新聞に載ったことはありましたが、自分の書いた文章が商業誌に掲載されるのは今回が初めてのことで、また一つ人生の中で新しい経験をさせてもらいました。ありがとうございます。 初の商業誌での執筆、しかも他の執筆陣も豪華な面々ばかりとあって、だいぶ力が入りすぎ空回りしたというか青臭い感じの文章になってしまい、数年後に読み返したときには恥ずかしくなること請け合いなのですが、まぁそれもそれで面白いかなと思い込むようにします。 ということで、やはり青臭い連載エッセイ、クマムシ研究日誌をご笑読ください。★クマムシ研究日誌「プチ魔法使いになったような感覚」 私がクマムシの研究を初めて10年以上が経ちました。ここでは、これまでのクマムシ研究生活を振り返りつつ、その様子を臨場感たっぷりにお伝えしていきます。 乾眠状態のクマムシが高圧酸素環境にどの程度耐えられるかを検証することが、僕の研究内容だ。そこで、クマムシを人工的に乾眠状態にする方法を豊島さんに教えてもらった。 クマムシは乾燥すると脱水して乾眠状態に移行するが、これにはゆっくりと乾いていく必要がある。 実験室でクマムシをスライドガラスの上に放置して乾かした場合は、クマムシが急激に乾燥するため、うまく乾眠に入れずに死んでしまうのだ。 うまく乾眠に入ったクマムシは、酒樽のような形をした樽状態になるが、急激に乾燥した場合は体が伸びた状態でひからびてしまう。こうなると、後で水をかけてもクマムシが復活することはない。樽状になった乾眠状態のヨコヅナクマムシ 野外でクマムシが乾燥する時は、クマムシの住処であるコケごと乾くことになる。このとき、クマムシは水を含んだコケのクッションに囲まれているため、急激に乾燥することはない。 このとき、クマムシは高湿度の条件でゆっくりと乾いていく。 例えるなら、お風呂上がりに髪を乾かすとき、頭にバスタオルをぐるぐる巻きにした上からドライヤーをあてるようなものである。バスタオルに包まれた湿った髪は、当然なかなか乾かないだろう。完全に乾くまでには、丸一日かかるかもしれない。 実験室でクマムシをうまく乾燥させるには、クマムシの周りの環境に高湿度を作り出してやる必要がある。もっと手っ取り早いやり方は、ろ紙を使う方法だ。これが、豊島さんに教えてもらった方法だった。