苗字における「斎(齋)」と「斉(齊)」の違いについてちょっとだけ考えてみた
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苗字における「斎(齋)」と「斉(齊)」の違いについてちょっとだけ考えてみた

2013-03-18 21:33
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「佐藤、斎藤、べこのくそ」なんて言葉がある。佐藤さんや斎藤さんは牛の糞と同じくらいたくさんいる、ありふれているという意味だ。この言葉は誰が言い出したのか定かではないが、各地方で「佐藤、斎藤」の部分がその地域で多い苗字に置き換わって使われているようだ。

さて、斎藤という苗字だが、これは平安時代中期の武将・藤原利仁の子、藤原叙用が斎宮頭となったことから「」宮頭の「」原ということで斎藤を称したのが始まり。斎宮頭とは伊勢神宮に奉仕する未婚の皇女・斎王をお世話する役所・斎宮寮のトップのこと。

伊勢神宮なんてキーワードから分かるように、「斎(齋)」という字には物忌みとか、いつく(神を祀る、神に奉仕する)と言う意味がある。本来の意味からすると、「斎」藤でなくちゃならないはずだ。

でも、実際には斎藤から省略されたとみられる藤さんも多くいる。「斉(齊)」と言う字は本来、揃っているとか整っているという意味だから、「斉藤」だと本来の意味から外れていることになる。

別の字である「斎」と「斉」だが、江戸時代から「斉」が「斎(齋)」の略字として用いられている、と出版デザイナーの大熊肇氏がブログで指摘している。

tonan's blog【補足】「斎藤」さんと「斉藤」さん
tonan's blog【補足2】「斎藤」さんと「斉藤」さん

また、大修館書店の漢字Q&Aコーナーにも、斉が斎の略字として用いられている例が古くからあると書かれている。

つまり、「斎」と「斉」は別の字だけど混用されてて「斎藤」と「斉藤」は同じ由来を持つ苗字という非常にややこしいことになっていることがお分かりいただけただろうか。

さて、実は「斎藤」と「斉藤」の分布は少し違っている。新潟県より西の地域では「斉藤」と書かれることが多く、東日本では「斎藤」と書かれている事が多い。「同姓同名探しと名前ランキング」というサイトで両姓を検索してみると、その傾向がわかるだろう。特に新潟県では「斉藤」さんが「斎藤」さんの3倍近く存在している。

次に、斎藤の方が多い都道府県と斉藤の方が多い都道府県を白地図に書き込むと、

※白地図は「CraftMAP」より拝借

という結果になった。北陸三県や愛知県・三重県は「斎藤」の方が多いという例外はあるものの、新潟県・長野県・静岡県から西側は「斉藤」の方が多い都道府県が増えるのだ(ちなみに三重県には先述の伊勢神宮があり、福井県・石川県は藤原利仁や、藤原叙用の子孫の斎藤氏が勢力を持った地域である)。

ここで、私は「斎」と「斉」の文字の使い分けには地域性があるのかにゃーと考えた。なにも「斎」「斉」の字を使う苗字は「さいとう」だけではない。「斎」「斉」の文字を使った苗字の軒数が多い方から10傑を挙げて、軒数が最多となる都道府県を見てみる。

「斎」の字を使う苗字

  1. 斎藤:山形県で最多
  2. 安斎:福島県で最多
  3. 斎木:埼玉県で最多
  4. 斎田:神奈川県で最多
  5. 斎:宮城県で最多
  6. 斎川:栃木県で最多
  7. 斎野:山形県で最多
  8. 斎賀:東京都で最多
  9. 小斎:宮城県で最多
  10. 斎須:福島県で最多

「斎」の字を使った苗字は概ね関東地方や東北地方で多いことが分かる。

「斉」の字を使った苗字

  1. 斉藤:新潟県で最多
  2. 斉木:新潟県で最多
  3. 斉田:福岡県で最多
  4. 安斉:福島県で最多
  5. 斉川:新潟県で最多
  6. 斉賀:香川県で最多
  7. 斉:宮城県で最多
  8. 美斉津:長野県で最多
  9. 斉野:鹿児島県で最多
  10. 斉尾:鳥取県で最多

「斉」を使った苗字は「安斉」「斉」を除き、概ね新潟県・長野県・静岡県より西の地域で多いことが分かる。

勿論、これは大雑把にも程が有る調査とも言えない調査だけれども、新潟県・長野県・静岡県より西では「斎」より「斉」を使う傾向が強い。と分かる。

どうして新潟県・長野県・静岡県より西では「斉」を使うのだろう。特に、「斉」8位の美斉津(みさいづ)という苗字は長野県小諸市に集中している苗字で、小諸市周辺以外ではほとんど見られない。だけど「斉」を「さい」と読ませている(美津と言う苗字は全国で20~30軒でほとんどが長野県外で見られる。美津さんが長野県外に出て文字を変えたものだと思う)。

そして、もっと気になる事実が、この新潟県・長野県・静岡県を境とした「斎」「斉」ライン(さいさいらいんって読ませるとかっこいいと思った)が、いわゆる「苗字の東西」とはズレているということだ。

「苗字の東西」とは、姓氏研究家の佐久間英氏や森岡浩氏が指摘している、「苗字の東西の分布傾向」のことだ。森岡浩氏によれば、日本海側では新潟県と富山県の境目(親不知)、太平洋側では三重県の雲出川周辺を境にして、東日本型の苗字と西日本型の苗字にわかれるとされている。東日本型の苗字とは、東北・関東・東海各地方に圧倒的に多い鈴木や、佐藤・伊藤・加藤などの藤原氏を由来とする苗字など。西日本型の苗字は、西日本で多い山本や田中、吉田、井上などの苗字だ。

この、苗字の東西ラインと「斎」「斉」ラインは少しずれているのがお分かりいただけると思う。

「斎」と「斉」の苗字の謎は尽きないが、もうちょっとだけ調べてみようかななんて思う。

それにしても松平斉斎って凄いお名前

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新字体(『当用漢字字体表』で提示された標準字体)が1949年に告示された後、
齋藤さんが間違えて斉藤と書いて婚姻届を出した例が多く出て、斉藤さんが爆発的に多くなった。
それで国はしかたなく「斉藤」を「サイトウ」と読むことを認めた。
なんて話を聞いたんですが、どうなんでしょうか?
その辺も調べていただけると嬉しいです。
52ヶ月前
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