ゲージと張力とチューニング
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ゲージと張力とチューニング

2015-01-30 21:00
  • 2

振り返ってみると、ここしばらくギター関連の話題がない件。
ということで、ブロマガのタイトルに立ち返ってギター関連の話題で一題。
ギターに絡めて屁理屈をもっともらしくこね回してみる。
(間違いとか直せるところは後でこっそり直す予感)


ゲージと張力とチューニング

先日、1音下げのギターについて、やはり.009-.042スーパーライトゲージでは
十分な張力が稼げず、演奏上いろいろと不安定になるので、
ダウンチューニングでも張力を稼げるように、太い弦に変えようと思い立ちました。
ただ、どのくらいのゲージに変えればいいのか、具体的な指標がなく、
トライ&エラーでいろいろ試すというのも王道の選択肢ではあるのですが、
敢えてネタ作りのために、数字で検討してみることにしました。
(なお、筆者は数学とか計算とかはまったく得意ではありません(強調)。)

検討にあたって、まず終着点としては、
現状のレギュラーチューニングでのスーパーライトゲージに近い感触で弾けること
を目標とします。
そのため、ざっくりとした条件設定ですが、
弦の張力がいつもの状況に近くなるものを探す
という条件で考えていきます。
つまり、1音下げチューニングの時の張力が、
スーパーライトゲージレギュラーチューニング時と近似するゲージ
計算で求めることが今回の具体的な狙いです。


計算の準備とデータ集め

さて、それを踏まえて、まずは計算の下準備から。
まず基本として、音の高さはその振動周波数によって決まります
弦楽器の場合、その音の高さを決めるものは弦の振動の周波数で、
その計算式には、弦の振幅長弦の張力振動している弦の線密度が関係します。
具体的には

振動周波数=(1/(2×弦の振幅長))×√(弦の張力/弦の線密度)

という計算で、弦の振動周波数が求められます。

また、音階上の各音の周波数は、12平均律の場合、
ある音の周波数に2の12乗根を掛けると半音上の音の周波数になるという
等比数列的な関係があります。
こちらは計算が面倒なので、グーグルで検索をかけて
各音の周波数を載せているページを参考にします。
「音階 周波数」で検索をかければ、いくつかのページが引っかかると思うので、
二つ三つくらい見繕って、同じ数値が出ていることを確認した上で
各チューニングの開放弦の音の周波数を写し取っておきます。

さらに、D'addarioの弦は、パッケージにその弦を所定のピッチで張った時に
どれだけの張力が掛かるかを表にして、表示しています。
(本家の公式サイト(英語)に行くと、一覧表を見ることもできます。
なお、D'addarioは各弦の張力の差を少なくした
バランスドテンションというセット弦を発売しているなど
張力のデータにこだわる弦のメーカーでもあります。)

ダウンチューニング向けやバリトン系ギター用の極太の弦以外は
だいたいレギュラーチューニングに合わせた時の張力がまとめられているので、
このデータを、いろいろなゲージのセットについて、収集しておきます。

以上、これらの数字を基にして、今回の目的の計算を進めていきます。


計算過程の整理

今回の計算で求めるのは、1音下げの時の弦の張力です。
まず、ここまでで収集できているデータを整理すると、

  • 各音の周波数
    ネットで拾ったデータ。複数のサイトで同じ数値であることを検証済み。
  • 弦のゲージとレギュラーチューニング時の張力
    D'addarioのサイトから取得。

これらのデータがあります。
逆に、振動周波数の計算式を見て、判明していない分のデータとしては、

  • 弦の振幅長
    多分、ロングスケールの648mmだと思いますが、推測で特定はしません。
  • 弦の線密度
    これは該当データが見つかりませんでした。

これらが挙げられます。

これらを基に、計算のやり方を整理します。
まず、わかっている部分を改めて見直すと、
レギュラーチューニング時の周波数張力一音下げの時の周波数は判明しています。
求めるべき値の一音下げの時の張力は、当然ながら不明です。
(調べがついてたら、こんなめんどくさい計算しなくて済みますが。)

さて、ここから計算過程を整理するわけですが、
まずデータが不明弦の振幅長弦の線密度については、
ここでは同じギターで同じ弦を使ってチューニングを変えた場合張力の変化
ざっくりと求めようとしている訳で、その仮定を適用して
この二つにかかる数値を定数として計算式から除外します。
つまり、先に挙げた正式な計算式を、以下のように簡略化します。

振動周波数=定数×√弦の張力

レギュラーチューニングの時の数値について、振動数をf1、張力をT1と表現すると、

f1=定数×√T1

また1音下げの時の数値については、振動数をf2、張力をT2と表現すると

f2=定数×√T2

これらは同じ計算式の変数に異なる数値を代入して求めた結果なので、
f1:f2の比は√T1:√T2の比と同じになるはずです。(定数は不変なので、除外)
そこから、T2を求める式に変換します。

f1:f2=√T1:√T2 (比)

f1√T2=f2√T1 (比の計算から)

√T2=(f2/f1)×√T1 (両辺をf1で割った結果)

T2=(f2^2/f1^2)×T1 (両辺を二乗した結果)

この計算式を使って、各弦の1音下げチューニングの時の張力を計算していきます。
表計算ソフト万歳。


計算結果

D'addarioで販売しているエレキギター用セット弦の一部について
表計算ソフトを使って、チューニングを下げた時の張力を計算した結果が以下の通りです。
合わせる周波数がわかれば、その時の張力が計算できるので、
ついでに他のダウンチューニングの時の結果も併せて出してみました。
改めて表計算ソフト万歳。

セットゲージ
(.inch)
張力(kgf)
レギュラー半音下げ1音下げ1音半下げ2音下げ
8-3884.714.203.743.332.97
104.133.683.282.922.60
155.855.214.644.143.69
215.434.844.313.843.42
306.305.615.004.453.97
385.344.764.243.783.36
合計31.7628.2925.2122.4620.01
8.5-398.55.324.744.223.763.35
10.54.554.053.613.222.87
155.855.214.644.143.69
226.025.364.784.263.79
327.036.265.584.974.43
395.655.034.484.003.56
合計34.4230.6627.3224.3421.68
9-4295.965.314.734.213.75
115.004.453.973.543.15
166.665.935.294.714.20
247.136.355.665.044.49
327.036.265.584.974.43
426.525.815.174.614.11
合計38.3034.1230.4027.0824.13
10-46107.366.565.845.204.64
136.986.225.544.944.40
177.526.705.975.324.74
268.347.436.625.905.25
368.847.887.026.255.57
467.676.836.095.424.83
合計46.7141.6137.0733.0329.43
11-49118.907.937.066.295.61
148.097.216.425.725.10
188.437.516.695.965.31
289.588.537.606.776.04
389.518.477.556.725.99
498.607.666.836.085.42
合計53.1147.3242.1537.5533.46
12-541210.609.448.417.506.68
1610.579.428.397.476.66
2010.419.278.267.366.56
3212.5311.169.958.867.89
4211.6110.349.218.217.31
5410.719.548.507.576.75
合計66.4359.1852.7246.9741.85

計算があたっていれば、1音下げの時の張力
スーパーライトゲージ(.009-.042)レギュラーチューニングの時の張力に近いのは
ライトゲージ(.010-.046)を張った場合のようです。
ということで、1音下げのギターに張る弦は、ライトゲージにすることにしました。

なお、上記の計算結果はD'addario張力のデータを利用しているので、
D'addarioの弦に関しては、この計算と近い値が期待できますが、
弦の組成・線密度が違う可能性のある他のメーカーの弦で、同じ値が出るかは疑問です。
ただ、メーカーによって組成が違うとしても、
極端に線密度が異なるということも考えにくいので、
数字そのままを流用はできませんが、傾向を汲み取ることは十分に可能でしょう。
(ちなみに、筆者はD'addarioユーザなので、このデータを丸呑みしてます。)

ついでに、蛇足の考察ですが、
経験上、張力が著しく低い条件では、まともな弦振動は期待できなくなります。
(弦の太さによっても状況が変わるので、境目になる確定的な数値は挙げられませんが。)
一定以上の張力が掛かっていない弦は、
振動するたびにピッチが揺れてチューニングが安定しなかったり、
サスティーンがほとんど確保できなかったり、
楽音がまともに作れないような事態が起こり得ます。
上記の結果はあくまでも比率から出した計算値で、
例えばエクストラライトゲージ(.008-.038)ダウンチューニングにあわせ
計算値通りの張力を出した状態で、音が作れるかどうかは保証できません


以上、ゲージと張力とチューニングの関係について、数字で考えてみました。
ダウンチューニングには太い弦という話は定石として語られるところですが、
どれだけ太い弦ならいいのかという話になると、感覚的な話が主で
結局は実験して確かめるような解決法になるのが実情です。
最終的に、その感覚的な部分で弦を選択すること自体は正道なのですが、
それでも数値で傾向だけでも把握できるようなデータはないものかとネットを検索して
これといった情報が見つからなかったので、自分で計算してみることにしました。
なお、筆者は計算が苦手です。計算結果の正確性は保証できません
検証は各自お願いします。
そんな内容ですが、参考になれば幸いです。

もっとちゃんと勉強しておけばよかった。学力って大事w


以下、蛇足として、ドロップチューニングの表も投下。

セットゲージ
(.inch)
張力(kgf)
レギュラードロップDドロップC#ドロップC
8-3884.714.714.203.74
104.134.133.683.28
155.855.855.214.64
215.435.434.844.31
306.306.305.615.00
385.344.243.783.36
合計31.7630.6627.3124.33
8.5-398.55.325.324.744.22
10.54.554.554.053.61
155.855.855.214.64
226.026.025.364.78
327.037.036.265.58
395.654.484.003.56
合計34.4233.2529.6326.39
9-4295.965.965.314.73
115.005.004.453.97
166.666.665.935.29
247.137.136.355.66
327.037.036.265.58
426.525.174.614.11
合計38.3036.9532.9229.33
10-46107.367.366.565.84
136.986.986.225.54
177.527.526.705.97
268.348.347.436.62
368.848.847.887.02
467.676.095.424.83
合計46.7145.1340.2035.82
11-49118.908.907.937.06
148.098.097.216.42
188.438.437.516.69
289.589.588.537.60
389.519.518.477.55
498.606.836.085.42
合計53.1151.3445.7340.74
12-541210.6010.609.448.41
1610.5710.579.428.39
2010.4110.419.278.26
3212.5312.5311.169.95
4211.6111.6110.349.21
5410.718.507.576.75
合計66.4364.2257.2150.97

以下、さらに蛇足の蛇足。

ここまでは、チューニングを特定の音に合わせた時の各弦の張力を、
既知のデータから計算しました。
ところで、同じチューニングに合わせた時スケール長が長いギターの方が、
スケール長が短いギターよりも、弦の張りが強くなるという現象もよく知られています。
この際なのでついでに、スケール長の違いによる張力の違いも試算してみましょう。

弦の振動周波数を求める式については、先述の通りです。

振動周波数=(1/(2×弦の振幅長))×√(弦の張力/弦の線密度)

また今回は、各スケール長のギターについて、同じ弦を張り
レギュラーチューニングに合わせた場合を想定して計算を行います。
計算のサンプルにするのは、長さを少々大雑把に丸めますが

  • ロングスケール 648mm
  • ミディアムスケール(ギブソンスケール) 628mm
    ↑ ギブソンスケールって書きたかっただけ
  • ショートスケール 610mm

この3つのスケール長について検討してみます。

計算に使う数値については、こちらもD'addarioのデータを使います。
D'addarioの張力計算の根拠に使われているスケール長は不明ですが、
ここでは648mmと仮定して計算を進めていきます。

ある条件下での上記の計算式は、スケール長L1張力T1線密度ρと表現すると

振動周波数=(1/(2×L1))×√(T1/ρ)

また、同じ弦を別のスケール長のギターに張った場合の上記の計算式は、同様に
スケール長L2張力T2線密度ρと表現すると

振動周波数=(1/(2×L2))×√(T2/ρ)

こうなります。
この中で不明な値は、線密度648mm以外のスケール長での張力になります。
スケール長計算条件によって与えられ、
また振動周波数レギュラーチューニングに合わせるという条件から
各弦ごとに一定値になります。

このとき、上の二つの条件下での式について、同じチューニングに合わせたとしたら、
両式は同じ値になるので、下の式のようにまとめられます。
(なお、線密度同じ弦を使っている条件から両条件に共通の値になります)

(1/(2×L1))×√(T1/ρ)=(1/(2×L2))×√(T2/ρ)

ここから、T2を求める式に整えなおします。

(1/(2×L1))×√(T1/ρ)=(1/(2×L2))×√(T2/ρ)

√(T2/ρ)=(1/(2×L1))×(2×L2)×√(T1/ρ) (両辺に2×L2をかけた結果)

√T2=(L2/L1)×√T1 (両辺を√(1/ρ)で割り、整理した結果)

T2=(L2/L1)^2×T1 (両辺を二乗した結果)

L2L1計算条件で設定され、T1例の張力データを使うので、
この式からスケール長が違うギターでの張力の値(T2)を計算できます。

以下が、その計算結果です。表計算ソフト万歳(3回目)。

セットゲージ
(.inch)
張力(kgf)
スケール長648mm628mm610mm
8-3884.714.424.17
104.133.883.66
155.855.495.18
215.435.104.81
306.305.925.58
385.345.024.73
合計31.7629.8328.14
8.5-398.55.325.004.71
10.54.554.274.03
155.855.495.18
226.025.655.33
327.036.606.23
395.655.315.01
合計34.4232.3330.50
9-4295.965.605.28
115.004.704.43
166.666.265.90
247.136.706.32
327.036.606.23
426.526.125.78
合計38.3035.9733.94
10-46107.366.916.52
136.986.566.19
177.527.066.66
268.347.837.39
368.848.307.83
467.677.206.80
合計46.7143.8741.39
11-49118.908.367.89
148.097.607.17
188.437.927.47
289.589.008.49
389.518.938.43
498.608.087.62
合計53.1149.8847.06
12-541210.609.969.39
1610.579.939.37
2010.419.789.22
3212.5311.7711.10
4211.6110.9010.29
5410.7110.069.49
合計66.4362.3958.87

非常に単純な話ですが、スケール長を仮定すれば、
基準とするスケール長その時の張力の関係を基にして、
仮定したスケール長で同じチューニングにしたときの張力が計算できます。
また、あるスケール長の張力を求める時
基準となる張力にかける係数をまとめると、以下のようになります。

張力にかける係数
基準スケール長張力を求めるギターのスケール長
648mm628mm610mm
648mm1.00000.93920.8862
628mm1.06471.00000.9435
610mm1.12851.05991.0000

レギュラーチューニング以外の各スケール長での張力については、
本題の方で求めた値にこちらの係数をかければ計算できるはずです。
例によって、正確性の保証はありませんが、参考まで。

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