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マクガイヤーチャンネル 第158号 【藤子不二雄Ⓐと映画と童貞 その1】
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マクガイヤーチャンネル 第158号 【藤子不二雄Ⓐと映画と童貞 その1】

2018-02-14 07:00
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    マクガイヤーチャンネル 第158号 2018/2/14
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    おはようございます、マクガイヤーです。

    初のイベント開催まであと1週間弱、期日が迫ってきており、ドキドキしています。

    皆様、チケットはお買い求めになられたでしょうか?

    http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002249518P0050001P006001P0030001

    早く買わないと無くなっちゃうYO!


    マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。


    ○2月17日(土)20時~

    「Road to ぷ女子 in マクガイヤーチャンネル」

    これまで、番組でもさまざまな機会でプロレス愛を披露してきた那瀬ひとみさんが産休前にお送りする特別企画。

    那瀬さんも登場する漫画『Road to ぷ女子』の著者永野あかね先生もお呼びして、5分でわかるプロレスの歴史からぷ女子講座、ぷ女子からみた新日本とDDTプロレスリングの魅力まで、2時間たっぷりプロレスについて語っていただきます。

    果たしてプロレス弱者のマクガイヤーはついていけるのか? 乞うご期待!



    ○3月10日(土)20時~

    「映画界のメフィストフェレス川村元気と映画ドラえもん」

    3/3より『映画ドラえもん』第38作である『のび太の宝島』が公開されます。

    本作は『君の名は。』『バケモノの子』などのプロデューサーとして知られると共に、『世界から猫が消えたなら』『四月になれば彼女は』などを書き、小説家としても活躍する川村元気が脚本を執筆した作品になります。

    そこで、日本映画界の若き名プロデューサーにしてメフィストフェレスである川村元気と、映画ドラえもんの関係性について迫ってみたいと思います。



    ○3月24日(土)20時~

    「最近のマクガイヤー 2018年3月号」

    いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

    詳細未定




    ○2月24日(土)19時~

    「山田玲司とDr.マクガイヤーのマイナー生物大バトル:エロい生物編」in阿佐ヶ谷ロフト

    一昨年、漫画家の山田玲司先生と行った「マイナー生物大バトル」がイベントになって帰ってきました!

    http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/81516

    しかも今回のバトルは「エロい生物」縛り。

    形がエロい、手触りがエロい、生殖方法がエロい……その他に、果たしてどんな話が飛び出すのか!?

    ちなみに過去に行った「マイナー生物大バトル」の模様は↓

    チケットは↓で購入できます!

    http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002249518P0050001P006001P0030001



    ○Facebookにてグループを作っています。

    観覧をご希望の際はこちらに参加をお願いします。

    https://www.facebook.com/groups/1719467311709301

    (Facebookでの活動履歴が少ない場合は参加を認証しない場合があります)



    ○コミケで頒布した『大長編ドラえもん』解説本ですが、↓で通販しております。ご利用下さい。

    https://yamadareiji.thebase.in/items/9429081





    さて、今回のブロマガですが、安孫子素雄というか藤子不二雄Ⓐについて書かせて下さい。


    ●藤子不二雄Ⓐという男

    先日発売された『藤子不二雄Ⓐ&西原理恵子の人生ことわざ面白“漫”辞典』を読んだのですが、巻末の対談で「これが最後の本になると思うので、ぜひたくさんの人に見てもらいたい」などと書かれていて、ちょっと切なくなってしまったのです。その後に「それにはやっぱり西原さんの『出せば必ずベストセラーになる』お力も拝借して(笑)。」などと続けており、冗談半分な発言であることが分かるのですが。

    1934年生まれの藤子不二雄Ⓐは今年で84歳です。『まんが道』の続編である『愛…しりそめし頃に… 満賀道雄の青春』は2013年に完結、コミックエッセイである『PARマンの情熱的な日々』は2015年に休載したことを考えると、なんだかドキドキしてしまいます。


    2011年、神奈川県川崎市多摩区に藤子・F・不二雄ミュージアムが開館しました。自分も何回か行ったのですが、充実した常設展示や、時期折々に工夫を凝らした特別展を楽しんだことを覚えています。また、ジブリ美術館と同じく外国人の観覧者が多く、世界的な人気を実感したりもしました。


    しかし、自分は藤子・F・不二雄ミュージアムを訪れるたびに、いつも不満を感じてもいました。

    何故、この隣に藤子不二雄Ⓐミュージアムがないのでしょうか?

    藤子・F・不二雄ミュージアムは向ヶ丘遊園の入り口とボウリング場の跡地に建設されました。土地は小田急電鉄からの賃借です。横にはほぼ同じスペースの小田急電鉄所有による土地と駐車場が広がっていたりします。もし億万長者か石油王だったらここに藤子不二雄Ⓐミュージアムを建設して川崎市に寄贈するのに……などと考えてしまうのは自分だけではないでしょう。



    ●藤子不二雄Ⓐの特異さ

    そんなふうに考えてしまうのは、自分にとっての藤子不二雄はあくまでも二人で一人であったから、という個人的な思い入れ以外に、藤子不二雄Ⓐが特異な漫画家であるからという理由もあります。


    同世代のトキワ荘出身漫画家――藤子・F・不二雄や石ノ森章太郎、手塚治虫(年長のイメージがありますが、実は藤子両人とは6歳しか離れていません)が60代で亡くなり、赤塚不二夫は60代からアル中状態にあったといいます。漫画家はストレスの多い職業であることが理由とされますが、これに比べると、80になっても連載をこなしていた藤子不二雄Ⓐが如何に異様であるかが分かります。

    藤子不二雄Ⓐが漫画という仕事に打ち込んでいなかったわけではありません。子供向けには『忍者ハットリくん』『魔太郎がくる!!』、大人向けには『笑ゥせぇるすまん』のようなヒット作があります。『まんが道』はマンガ家漫画の原典にして傑作ですし、Ⓐの漫画技術の集大成のような『劇画 毛沢東伝』『ひっとらぁ伯父サン』『マグリットの石』などの「ブラックユーモア短編」シリーズはⒶにしか描けない作品であり、傑作です。


    藤子不二雄Ⓐの実家はお寺であり、子供の頃から精進料理ばかり食べていたことから、肉も魚も食べないことは有名です。卵と乳製品は食べるそうです。一説によれば、Ⓐがラクト・オボ・ベジタリアンであることが、80歳になっても元気であることの理由の一つとされていますが、一方で酒やゴルフや麻雀は存分に愉しみ、飲み会やパーティには精力的に顔を出しています。

    フィジカルだけでなく、メンタルも常人とは違います。まず記録魔であり、常日頃から日記をつけ、トキワ荘時代や妻が倒れた時につけていた日記は、『妻たおれ夫オロオロ日記』という、そのものずばりのタイトルで出版もされています。

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    記録癖の他に収集癖もあり、使用済みのチケットや初めて訪れた小料理屋の箸袋を収集し、日記やスクラップブックに貼り付けてます(『愛…しりそめし頃に…』の巻末ではこれらが「貴重な資料」として公開されていますが、これは明らかに「収集癖」の産物です)。

    水野英子の『トキワ荘日記』によれば、Ⓐの部屋は四畳半にも関わらず「トキワ荘にそぐわないのではないかと思われるオーク材のような立派な書棚があり、文学全集などの難しそうな本がギッシリと入っていた」そうです。文学青年で、当初は小説家を目指していたこともあちこちでⒶ自身が書いています。80を過ぎてもゴーストライターに任せるのではなく自分で文章を書き(Ⓐの書く文章には、明らかに本人でしか書けないリズムと表現があります)、本を出版できるのは、記録・収集癖に加えて、若い頃からの読書量の多さに支えられているからでしょう。


    一時まで、ホラーやダーク・ファンタジーの世界を描く機会が比較的多いⒶのことを「黒い藤子」、SFにバックグラウンドを置くFを「白い藤子」と呼ぶ風潮がありましたが、これは一面的すぎるものの見方です。FはSF短編でⒶ以上にブラックで救いのないオチを用意した作品を描いています。一方でⒶ作品は、ブラックユーモア短編シリーズで救いの無いオチを描く時も、絵のタッチと、「ギニャー!」「ンマーイ!」「キャバキャバ!」「ニャリーン!」……といった漫画的な擬音の使用により、一定以上の漫画的な明るさがあるのです。



    ●藤子不二雄Ⓐと映画

    そんな藤子不二雄Ⓐですが、同世代の漫画家と同じく、創作における最大のバックグラウンドの一つは映画です。

    『まんが道』や『トキワ荘青春日記』を読むと、とにかく映画ばかりみています。『妻たおれ夫オロオロ日記』を読むと、妻が脳内出血で倒れ、入院している時も、当然のように映画館へ通っているのです。


    Ⓐの好みは西部劇をはじめとするアクション映画に、ホラー映画、サスペンス映画などですが、これらを大量にみた経験は創作に存分に活かされています。『まんが道』では、手塚治虫と一緒に『ヴェラクルス』をみて決闘シーンの秀逸さについて語り合ったり、映画『アスファルト・ジャングル』を観て漫画『コンクリート・ジャングル』を描くシーンがあります。後者は一時期の『ジョジョの奇妙な冒険』のようですね。

    続編である『愛…しりそめし頃に…』では、仕事をこなして小金を手に入れたⒶとFが8ミリカメラを買い、更にアメ横でモデルガンと西部劇風のブーツやガンベルトといった衣装を買い、自主映画を製作しようとします。当然、カメラや衣装の購入に大金がかかってしまうわけですが、ここでF……じゃなかった才野が吐く台詞が秀逸です。


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    「でも才野、

    あの店でおたくがこれ全部買おうと言い出した時とびあがったよ!

    だってすごい値段だったろ!

    お金たりるかと思って……

    ところがおたく、落ち着いて財布からお金だして払ったのにはびっくりしたよ!」


    「びっくりすることはないさ。

    行く前に予算をたて、貯金をおろしていったもの」


    「それにしてもちょっと買いすぎたんじゃないかなぁ!」


    「いまさらそんな後悔するなよ!

    8ミリ撮るには、最低これだけ必要なんだから」


    「そりゃそうだけど…」


    「たしかにムダ遣いのようだけど…

    ぼくら漫画家だろ!

    こういうムダ遣いが、きっとあとで生きてくるんだ!」

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    「こういうムダ遣いが、きっとあとで生きてくるんだ!」

    これは藤本弘をモデルとする才野の台詞ですが、本作を描いているⒶの哲学でもあるのでしょう。


    実際に作中では、直後に西部劇漫画の仕事が舞い込みます。

    『愛…しりそめし頃に…』は時系列関係をかなりシャッフルしてますので、都合の良い描き方ではありますが、あちこちに首をつっこみ様々な経験を得ることが、自分の漫画の「糧」となることを、Ⓐは実感しているのでしょう。


    その後、ⒶはFとのコンビ解消後に映画『少年時代』をプロデュースしました。これは柏原兵三の小説『長い道』を原作とする自身の漫画『少年時代』を原作としています。Ⓐにとって渾身の企画だったのでしょう。



    ●藤子不二雄Ⓐ流映画鑑賞術

    藤子不二雄Ⓐは映画についてのエッセイも数多く書いています。なかでも昭和58年から平成9年にかけてコミックトムで書いていたものは『パーマンのわくわく指定席』として一冊にまとまっています。

    本書を読んでまず驚くのは、Ⓐはその時々の話題作をきっちりと観て、チェックしているということです。そして、出演している俳優でもジャンルでもなく、まず監督を基準に映画を理解しようと勤めています。


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    大島渚監督の新作「戦場のメリークリスマス」の試写を観た。一九七八年の「愛の亡霊」以来、五年ぶりの監督作品で、くせもの大島監督らしいひねった戦争映画だった。

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    その最終回にとびこんで「バイオレント・サタデー」を観た。(中略)しかし「ワイルドバンチ」(69年)などで男の挽歌をすさまじいアクションで勇壮にうたいあげたペキンパーにしては、なんともスケールが小さくて、クラーイ。なんだかイジイジして劇場を出た……

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    スピルバーグは「カラーパープル」以来路線を変更している。新作「太陽の帝国」も新しい路線上の大作だ。

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    ……と、頭の中に監督や映画界の流行り廃りの時系列があり、それぞれの新作をきちんと当てはめているのです。

    これはシネフィルにとっては当然のことですが、逆にいえば、漫然と映画を観ている一般の観客には絶対にできない映画の観方です。


    そればかりか、Ⓐは取材旅行の途中に飛行機の中で見逃した映画を観ては「もうけ!」と喜び、海外でも映画館やホテルのテレビで「日本ではまた封切ってない映画だ!」とジャンジャン観まくります。Ⓐは英語を完全に理解できるわけではないのですが「念力で会話をよみとって観る」そうです。

    更には、深夜にテレビで放送されている日本未公開の洋画まで観て「時々こんな”掘り出しもの“映画をやっているから、深夜のテレビもバカにできないね!」などと喜んだりしています。

    藤子不二雄Ⓐは幸せなタイプのシネフィルといって良いでしょう。



    Ⓐが映画の魅力にとりつかれ、熱中するようになったのは、「映画館の中が現実から切り離された別世界で、映画を見ている間は現実の苦しさ(!?)から逃げられるから」です。たとえアイディアが出なくて苦しんでいても、なかなか作品がヒットせず日々の生活に苦しんでいても、映画館の中に入ってしまえば2時間はつらい現実から逃げられる――そのようなことをⒶは漫画でもエッセイでも幾度となく書いています。

    だからⒶが愛するのは、映画館で映画を観ることです。

     
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