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マクガイヤーチャンネル 第171号 【藤子不二雄Ⓐと映画と童貞 その7 ブラックユーモア短編その2】
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マクガイヤーチャンネル 第171号 【藤子不二雄Ⓐと映画と童貞 その7 ブラックユーモア短編その2】

2018-05-16 07:00
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    マクガイヤーチャンネル 第171号 2018/5/16
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    おはようございます、マクガイヤーです。

    ちょっと時間ができたので映画観に出かけたいところですが、家の用事をやらなければならず、なかなか自由に動けません。でも、ゴールデン・ウィークは何も出来なかったので仕方ないですね。


    ○5月26日(土)20時~

    「石ノ森ヒーローとしての『仮面ライダーアマゾンズ』」

    『仮面ライダーアマゾンズ』はシーズン1、2がAmazonプライム・ビデオで独占配信されている特撮シリーズです。

    いわゆる平成ライダー1期のスタッフが『アギト』でも『ファイズ』でも『カブト』でもやれなかった仮面ライダー、あるいは石ノ森ヒーローとしての限界描写を突き詰めたような内容で、自分はおおいに楽しみました。

    そんな『アマゾンズ』が5/19に『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』として、劇場公開されるそうです。それも、これまで意欲作(と自分には思える)春のスーパーヒーロー大戦映画枠を廃止してまで公開する劇場版です。未だ詳細な公開日が発表されていないことが気になりますが、大いに期待しています。

    そこで、これまでの『仮面ライダーアマゾンズ』を振り返ると共に、あるいは石ノ森ヒーローとしての『アマゾンズ』に迫りつつ、劇場版を予想するニコ生放送をお送りします。

    今度のシロタロスは裏切らないぜ!

    アシスタント兼ゲストとして、友人の虹野ういろうさんをお招きする予定です。




    ○6月8日(金)20時~(金曜日の放送になります、ご注意下さい)

    「『デッドプール2』とXフォース」

    6/1より傑作コメディにしてスーパーヒーロー映画『デッドプール』の続編『デッドプール2』が公開されます。

    本作は『インフィニティ・ウォー』に引き続いてアメコミヒーロー映画に出演するジョシュ・ブローリンがケーブルを演じたり、X-フォースの結成が描かれたりすることがアナウンスされています。

    ただ、自分はケーブルやX-フォースに関してほとんど知識がありません。

    そこで、ゲストとしてアメコミ翻訳家の御代しおりさん(https://twitter.com/watagashiori)を再度お招きして、ケーブルやX-フォースについて解説して頂く予定です。



    ○6月30日(土)20時~

    「しまさんとマクガイヤーの推しNetflix」

    Netflix、Hulu、dTV、U-NEXT、Amazonプライム・ビデオ……と、様々な動画配信サービスをネットで愉しむことができる昨今ですが、大きな問題があります。

    それは、「配信されるコンテンツが多すぎてどれから観れば良いのか分からない」もしくは「面白いコンテンツを見逃してしまう」といった悩みです。

    そこで、編集者のしまさんとマクガイヤーが、Netflix配信ラインナップから独断と偏見で「推し番組」を紹介し合い、魅力を語り合います。

    久しぶりのしまさん出演回です。乞うご期待!



    ○7月(詳細日時未定)「最近のマクガイヤー 2018年7月号」

    最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

    詳細未定





    ○Facebookにてグループを作っています。

    観覧をご希望の際はこちらに参加をお願いします。

    https://www.facebook.com/groups/1719467311709301

    (Facebookでの活動履歴が少ない場合は参加を認証しない場合があります)



    ○コミケで頒布した『大長編ドラえもん』解説本ですが、↓で通販しております。ご利用下さい。

    https://yamadareiji.thebase.in/items/9429081





    さて、今回のブロマガですが、引き続いて藤子不二雄Ⓐ作品、それもブラックユーモア短編について書かせて下さい。



    ●分類とテーマ

    藤子不二雄Ⓐはこれまで約60編のブラックユーモア短編を描いています。連載版『黒ィせぇるすまん』『夢魔子』『戯れ男』『番外社員』などの連作(短期連載作)を含めれば、100編以上になるでしょう。


    藤子不二雄Ⓐが描くブラックユーモア短編はバラエティに富んでいます。

    前回紹介した『内気な色事師』『なにもしない課』『明日は日曜日そしてまた明後日も……』そして前回紹介し忘れましたが『ハレムのやさしい王様』のような社会問題を予見したかのようなサイコホラーの他に、

    『黒ィせぇるすまん』や『赤紙きたる』のような不条理ホラー、

    『禁じられた遊び(修正前)』や『田園交響楽』や『水中花』のような超自然的現象を完全に除いたホラー、

    『不思議町怪奇通り』や『社長幼稚園』のようなナンセンスギャグ、

    かと思えば『コレク太の変コレクション』や『大恋愛』のようなブラックだけれども対象年齢低めの短編、

    『無邪気な賭博師』や『魔雀』のようなギャンブルもの、

    『カタリ・カタリ』や『赤毛布漂流記』シリーズのような旅行もの、

    『ひっとらぁ伯父サン』や『シンジュク村大虐殺』のような風刺精神たっぷりだけど、それだけではない短編、

    『北京填鴨式』『毛のはえた楽器』『わが分裂の花咲ける時』『野蛮人』のような、過激な描写が問題となったのか単行本未収録や後の修正を余儀なくされた作品(これには『禁じられた遊び』も含まれますが)

    ……と千差万別です。


    このシリアスからギャグ、子供向けから大人向けまでのなんでもアリ感は、Ⓐが影響を公言しているロアルド・ダールやスタンリィ・エリンやリチャード・マシスン――特にマシスンが脚本で参加した『トワイライト・ゾーン』『アウターリミッツ』それらの日本版である『世にも奇妙な物語』によく似ています。勿論、Ⓐとしては発表する雑誌や年代に合わせた作品を考えているのですが(たとえば『コレク太の変コレクション』に代表される『変シリーズ』は「週間少年ジャンプ」、『禁じられた遊び』や『明日は日曜日そしてまた明後日も……』が含まれる『白い童話シリーズ』は「まんがエリートのためのまんが専門誌」である「COM」に発表されています)、全体としてみれば、まるで一人で『世にも奇妙な物語』の脚本を全て書いているかのような幅広さがあるのです。



    ●サラリーマンにとっての麻雀

    Ⓐが描くブラックユーモア短編で最も強烈な印象を残すのは、前回紹介したような現在の社会問題を予見したかのようなサイコホラーですが、他にも印象的な特徴があります。

    それは、ギャンブルをテーマとしたり、作中の要素として扱っていたりする作品の多さです。


    先ほど題名を挙げた『無邪気な賭博師』や『魔雀』は、いずれも真正面からギャンブル、それも麻雀について扱っています。


    『無邪気な賭博師』は、何故かもの凄く麻雀が強い中学生が出てくる話です。

    雀荘で数合わせにその中学生と麻雀を打つサラリーマン三人組。中学生を入れるなんてと雀荘のおばさんに咎められますが、「負けたらキャッシュで払います」と札束をみせられたらカモにせざるを得ません。しかし、目論見が外れてしこたま負けるサラリーマン三人組。相手が中学生なのにつけこんで、支払いを値切ろうとした結果、超自然的な出来事がおこりとんでもない目にあう……という内容です。

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    クライマックスで中学生が熱弁する「賭の神聖さと純粋さ」が奮っています。


    『魔雀』は、会社では「おっさん」と呼ばれて馬鹿にされている万年ヒラ社員の中年先輩社員が、実は麻雀のイカサマ師だったという話です。

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    おっさんは自身の秘密について主人公に打ち明け、ツミコミを得意とするイカサマ師だった自らの過去とギャンブルの怖さについて語り、自分と同じように麻雀を辞めるよう忠告します。ですが、主人公は「子供の時から体が弱くて内気だった自分に友達ができたきっかけが麻雀だった」と断ります。しかし、学生時代の友人三人が組むイカサマ「通し」でカモにされている主人公をみかねたおっさんは、主人公の代わりに三人と麻雀を打つのですが、次第に現役イカサマ師だった時の愉しさを思い出していき……という内容です。


    両作共に、仲間うちや見知らぬ他人同士でお金を掛け合い、勝ったり負けたりすることの恐ろしさを描いています。

    『黒ィせぇるすまん』『戯れ男』『喝揚丸ユスリ商会』といった(短期)連載作やシリーズものでは、必ず1回以上はギャンブルに勝ったり負けたりすることがトラブルの引き金になったりする回があります。また、ギャンブルにハマった脇役が必ず出てきます。前回紹介した『なにもしない課』にも麻雀で「調査課」に異動してきた社員が脇役として描かれていました。

    麻雀をテーマとする場合は、麻雀が弱くて気も弱いキャラクター(多くは主人公)が、麻雀が強くて態度がデカい同僚や知人からカモにされるという構図が共通しています。『無邪気な賭博師』も、一見麻雀が弱そうにみえる中学生をカモにしようとしたのが話の契機となっていました。つまり、日本の大人――サラリーマン社会における「いじめ」だったり、「社会の縮図」として麻雀が使われているです。

    麻雀が弱ければ卓を囲む誘いを断れば良いのですが、気の弱さや「もしかして上手く稼げるかも?」という儚い希望から、誘いを断ることができません。主人公は、喪黒福造のような怪しい協力者や怪しいアイテムのおかげで麻雀に勝つのですが、その後に強烈なしっぺ返しが主人公(や協力者)に帰ってくる……という構図も共通しています。

    そもそもⒶにとっての最初のブラックユーモア短編である短編版の『黒ィせぇるすまん(1968)』がそのような話でした。『ひっとらぁ伯父サン』も、ギャンブルの魅力に取り付かれやすい大衆の習性を主人公であるひっとらぁ伯父サンが覇権を握るために利用する描写があります。


    これらの描写には、明らかに阿佐田哲也が著した『麻雀放浪記』のようなギャンブル小説が影響を与えていますが、麻雀を扱った漫画作品としては最初期の部類に属します。『麻雀放浪記』がヒットしたのは1965-75年の間ですが、69年に初の麻雀漫画とされるつのだじろうの短編『發の罠』が、71年に初の麻雀漫画連載とされる『牌の魔術師』の連載(阿佐田哲也の同名小説の漫画化)が始まり、75年に日本初の麻雀漫画雑誌『漫画ギャンブルパンチ』が創刊されています。短編版の『黒ィせぇるすまん』はそのどれらよりも早かったわけです。


    また、このギャンブルへの注目や偏愛は、Fや他のトキワ荘漫画家と比較した時の大きな違いになります。Fや石ノ森章太郎は作品数の多さに対してギャンブルを題材とした作品はごく少数でしかありません(寺田ヒロオに至っては皆無でしょう)。一方、Ⓐやつのだじろうや赤塚不二夫はギャンブルをテーマとした作品を比較的多く描いています。


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    例えば、藤本(藤子・F・不二雄)氏は、いわゆる根っから純粋な童心を持ち続けた人だから、やれたんですけど、僕は、20代の終わりぐらいから、いろんな友達と付きあいだしましてね。いわゆる漫画家だけじゃなくて、いろんな世界の人たちと知り合いになって、お酒飲んだり、ゴルフしたり、マージャンやったり、そういうこと始めたんで、子供マンガをこのまま描いていって良いかという疑問がね、出てきたんです。

    『ビッグ作家究極の短編集 藤子不二雄Ⓐ』巻末インタビューより)

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    ギャンブルをすると、必ず勝者と敗者が生まれます。ギャンブルに負ければ悔しいばかりか、金銭的に困窮します。ギャンブルに勝てば嬉しいばかりか儲かりますが、自分が負けたときと同じ思いをする人がどこかに生まれます。

    20代後半から様々な人物たちと「夜の遊び」を通してトキワ荘から自分の世界を広げていったⒶ(やつのだじろうや赤塚不二夫)にとって、麻雀を初めとするギャンブルは、「社会の縮図」を実感する契機だったのでしょう。

    このギャンブルにおける勝ち負けが、子供時代のいじめっ子・いじめられっ子――今でいうスクールカーストとしての勝ち負けや、漫画家としての勝ち負けに結びついていったのは、想像に難くありません。


    更に、Ⓐがギャンブルを扱う漫画を描くとき、いかにも漫画的な絵柄の間に、時折挿入されるリアリティあふれる劇画調のタッチによるコマや、写真のコピーを基にして作画したリアルなコマが効力を発揮します。

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    これらリアリスティックな作画のコマが、物語の流れに合わせて使用されるわけです。手法としては『シルバークロス』と同じなのですが、主人公に共感して一喜一憂するギャンブル漫画で使われると、いつも以上に読み手の気持ちが大きく揺さぶられるのです。



    ●旅行とギャンブル

    更に印象的なのは、69年の『B・Jブルース』を初めとする旅行を題材としたブラックユーモア短編です。

    『B・Jブルース』はリノ、『パラダイス』はタヒチ、『マカオの男』は勿論マカオ、『赤か黒か』はジュネーブ、『ポルノを買いに』と『マンハッタン・ブルース』はニューヨーク、『スターダスト・ラプソディ』はラスベガス、『Q・Eマーチ』は豪華客船クイーン・エリザベス号、『カタリ・カタリ』はローマと、いずれも実在の場所を舞台にしています。

    映画とギャンブル以外のⒶの趣味はゴルフ、そして旅行です。これらの旅行を題材とした短編は、どれも実際にⒶが旅行で訪れ、その地で得た経験を題材としています。

    それ故に、これらの短編群ではどれもⒶを思わせるチビで痩せぎすの日本人が主人公となり、世界各地でトラブルに巻き込まれたり、ヒヤリとする恐怖を感じたりする話となります。


    日本で海外旅行、それも観光を目的とする海外旅行が完全に自由化されたのは1966年です。それまでは特定の職業や会社の業務でなければ認可されなかったり、1人年間1回限りという制限があったりしました。海外旅行が一般化したのは70年代に入ってからです。それでも固定相場制、1ドル=308円の時代です。庶民が気軽に海外旅行に行ける時代ではありませんでした。


    そんな中、『オバQ』のヒットでまがりなりにも人気漫画家であったⒶは、妻や仲間と一緒に海外旅行し、カジノでギャンブルもやり、その土地土地で得た経験を漫画化したわけです。

    当然、リノやベガスといったカジノが有名な町ではカジノに入ります。だから『B・Jブルース』、『スターダスト・ラプソディ』では負けそうになったギャンブルで一発逆転したりしなかったりする話が描かれるのですが、最もドギついのは『マカオの男』です。


    ツアーでマカオのカジノに来た主人公は、賽原というマカオ在住の日本人でただ1人のカジノ研究家を紹介されます。

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    「誰でもいつも必ず勝つことはできない…だから賭博をやるときは遊びだと思って自分のこづかい銭程度で楽しみなさい」

    という古くから伝わるいましめの言葉を紹介したり、

    「ルーレットとブラック・ジャックは運とカンだけでは勝負できない。自分自身で確立したシステムを武器に親とゲームそのものを虚々実々と勝負を展開するところにダイゴ味がある」

    ……といった名台詞を吐く賽原にすっかりほれ込む主人公。


    主人公は「自分では賭けない」という賽原と交渉し、賽原のアドバイスで自分のおカネを賭けます。それは「親が総取りを狙って周期的に0を出すのに賭ける」という手段――システムでした。

    見事0を当てた主人公は、お礼として賽原に儲けの約半分、5千ドルを渡します。「本当にすごいギャンブラー」と賽原への賞賛を惜しまない主人公をみて、「賽原さんはすごいギャンブラーというより……あわれなギャンブラーというべきですよ」と嗤うガイドは、主人公に賽原の真の姿をみせます。

    主人公からもらった5千ドルを元手にブラックジャックに挑むも、負け続ける賽原。賽原は、人の金を賭ける時は冷静に賭けることができ、ギャンブルに勝てるけれども、自分の金を賭けると熱中し、負けてしまう、そして負けることがわかっているのにやらずにはいられないという「あわれなギャンブラー」だったのです。


    ギャンブルには、やっている本人にしか分からない快感があります。


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    昨今のオレはだいぶボケている。早い話が今年になってから身を入れて本さえ読んでいない。

    去年などは、新しい本を買って、そいつを舌なめずりして読む、ぞくぞくするような、独りだけの快感があったのだが、このところ、そういう気分をまるで失くしてしまっている。

    『トキワ荘青春日記』より)

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    上記は昭和三十一年、Ⓐが21歳の時の文章ですが、「ぞくぞくするような独りだけの快感」を本に求めていた文学青年が、同種のものを旅行やギャンブルに求めないわけがないのでした。

    それを『魔雀』のタイトルに合わせて、ギャンブルが本質的に秘める「魔」と呼んでもいいかも知れません。

    『魔雀』や『マカオの男』には、そのような「魔」がしっかりと描かれていると感じるのは自分だけではないでしょう。他人のおカネで賭けたり、他人を助けるために賭けているうちはこの「魔」に囚われずに済みますが、そうでなければ大切な何かを失ってしまう……いつも張り付いた笑顔のような表情をしている「オッサン」や、左腕が無い賽原のキャラ造型は、そのような喪失を既に経験していることを表しているかのようです。



    ●共通するテーマ

    そんな風に考えていくと、幅広く多様なⒶのブラックユーモア短編群にも、一つの共通するテーマがあることに気づきます。

    それはギャンブル、カネ、名誉……なんでも良いのですが、肉体や精神が変化するほどなにがしかに囚われた、妄執を抱く人間を描いているということです。


    たとえば、前回紹介した『内気な色事師』の女性、『なにもしない課』は会社員という立場、『明日は日曜日そしてまた明後日も……』は引きこもりによって得られる心の平穏に囚われた人間を描いているといっていいでしょう。

    『禁じられた遊び(修正前)』や『田園交響楽』や『水中花』は、それぞれ「綺麗なお墓(と少女のイノセンス)」、「田舎の因習」、「理想の女性」に妄執を抱く人間たちによって引き起こされるホラー作品であるといえます。そういえば前者の発想の基になった映画『禁じられた遊び』も死が理解できないせいで「お墓」にこだわる少女が主人公でした。

    『シンジュク村大虐殺』のような風刺作品や『五百億円の鼡』のようなドキュメンタリータッチのアクションものは数少ない例外ですが、全ページリアリティあふれる劇画調のタッチで描こうとするⒶの妄執が表れているといっていいかもしれません。



    ●『万年青』

    『マグリットの石』や『わが分裂の花咲ける時』は、誰がどうみても妄執をテーマとしていますが、この観点でみた場合に自分が特に重要だと思う短編が『万年青』です。

    「万年青」と書いて「おもと」と呼ぶ古典園芸植物の育成を趣味とする老人 五呂田作造は、若いくせに異様に万年青に詳しい高校生 清一と知り合います。自慢の万年青「荒波獅子」の病気の徴候を見抜いた清一の実力に感服した五呂田は、同じ趣味を持つ仲間として年齢を越えた友達づきあいをはじめます。また、受験勉強に集中させたい父親を警戒し、家以外の置き場所を探していた清一の万年青を預かります。

    清一が育てようとしている万年青は、葉がすべて一直線に伸びるような万年青でした。

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    「い 一直線にのびた こ 紺地の葉の……ま 真ん中に スーッと こ これも一筋のまっ白な縞が流れる!!

    そ そしてその……一直線の葉が あ あ あ 朝日の光のように は は 八方にひろがる……

    そ そんな お 万年青を つ つくりたいんです!!

    も もし ぼくの夢の万年青ができたら……ぼくはそれに……せ せ 「青春光」と名づけるつもりです!」


    どもりながらも熱っぽく話す清一に五呂田は共感し、自身の大事な古鉢を貸し与えます。

    年齢を超えて同じ趣味に没頭する二人は、まるで昔からの友人同士のようです。

    また、日常生活や世間体を省みず、汗を流して理想の万年青育成に没頭する姿からは、万年青育成=Ⓐにとっての漫画執筆という連想をしてしまいます・


    五呂田の古鉢に植え替えられた「青春光」は見事に育ちます。「青春光」をみた五呂田の万年青仲間が「コンクールに出したら評判よびますぜ」と賞賛するほどの見事さです。

    その言葉を聞いた五呂田の心の中に、これまで存在しなかった名誉欲が沸きます。あくまで趣味として万年青を育てていた五呂田ですが、急に名誉が欲しくなったのです。


    枯れた万年青と「青春光」の鉢をすり替え、「青春光」が枯れてしまったと清一に思わせる五呂田。

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    「これでサッパリしたんです」「そろそろ受験勉強に専念しなきゃと思ってたんですよ」「万年青は卒業です」

    と万年青育成そのものに見切りをつける清一。また時々遊びにくると告げて、五呂田の元を去ります。


    清一が去った後、高笑いする五呂田。

    清一のあきらめがあまりに良かったので、清一を裏切ったことへの罪悪感を全く抱かなかったことへの笑いです。

    「まーこれで「青春光」はわしのものになったわけや

    しかし………この「青春光」がじつはピンピンしてるとしったら あの子どう思うかな」

    ……と隠していた「青春光」を確認する五呂田。

    しかし、主を失った「青春光」は完全に枯れていたのでした。


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    夕日に向かって家路を急ぐ清一の後ろ姿を描いたコマで物語は終わります。

    それは青春の終わりのようにもみえますし、新しい世界に向かって駆け出す姿のようにもみえます。

    そういえば、五呂田に別れを告げる清一の最後の台詞は、もうどもっていませんでした。


    Ⓐはこれまでの人生の中で、上京、トキワ荘、酒、ゴルフ、ギャンブル、旅行と、新しい環境や趣味に果敢に挑み、こだわることで自身の世界を広げてきました。

    その中で、仕事に失敗したり(これは後の『まんが道』で徹底的に描かれることになります)、ギャンブルに負けたり、裏切られたりと、自身の世界を破壊されるようなこともあったでしょう。

    しかし、その度ごとにⒶは逆に世界を広げていったのです。


    妄執を手がかりに現実と対峙し、挫折したり裏切られたり卒業したりしながら自身の世界を破壊すると共に、世界を広げていくことが、Ⓐにとって現実と対峙するやり方なのです。



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    マクガイヤーチャンネル 第171号 2018/5/16
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    企画編集:Dr.マクガイヤー
         平野建太

    発  行:合同会社Tetragon
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