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【第356号】老いは認める、が、今日ではない:『トップガン マーヴェリック』
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【第356号】老いは認める、が、今日ではない:『トップガン マーヴェリック』

2022-06-29 07:00
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    マクガイヤーチャンネル 第356号 2022/6/29
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    おはようございます。マクガイヤーです。

    6月でこれだけ暑ければ8月はどれだけ暑いのか――なんて漫才みたいなことを考えてしまう今日この頃です。



    マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



    〇7月11日(月)19時~「元祖中二病コンテンツとしての『BASTARD!! 暗黒の破壊神』」

    6月30日よりアニメ『BASTARD!! 暗黒の破壊神』がNetflixにて全世界配信されます。1988年より週刊少年ジャンプにて連載された同名漫画の、初のシリーズアニメ化です。2クール、全24話を予定しているそうです(https://bastard-anime.com/onair/)。まさか21世紀にあんなにエロくてあんなにいきあたりばったりな『BASTARD!!』がアニメ化されるなんて……90年代の自分に伝えたら絶対に信じてくれないのではないでしょうか。


    そこで、『BASTARD!!』について解説しつつ魅力を紹介するような放送を行います。


    ゲストとして自分よりも『BASTARD!!』に詳しい舞台女優の桜木ゆいさん(https://twitter.com/sakuramauyoru)をお迎えしてお送り致します。



    〇7月24日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2022年7月号」

    詳細未定

    いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



    〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

    当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

    https://macgyer.base.shop/items/19751109


    また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

    https://macgyer.base.shop/items/25929849


    合わせてお楽しみ下さい。





    さて、本日のブロマガですが、『トップガン マーヴェリック』とトム・クルーズについて書かせて下さい。ニコ生の補足のような文章になります。



    ●『トップガン マーヴェリック』は傑作

    5月末の公開から約一ヶ月が経過しましたが、『トップガン マーヴェリック』は未だ大ヒット公開中です。日本だけでなく世界中でヒットしており、アメリカでは本作の翌々週から公開になった『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』を抜き返し、首位返り咲きを果たしたそうです。興行面だけでなく批評家からの評価も高く、Rotten Tomatoesでは驚異の高得点です(https://www.rottentomatoes.com/m/top_gun_maverick)。


    『トップガン』の続編が少なからずヒットするのは予想の範囲内でしたが、批評面での評価がこれほどまでに高い作品になるとは思いませんでした。

    『トップガン』は80年代を代表するアクション映画ですが、時代を代表するがだけに、今の目で見返すと辛い点が多々あります。軍隊における「学校」を通してオトナになるという意味での参照元である『愛と青春の旅だち』がどことなくアメリカンニューシネマの雰囲気をまとっているのに対し、『トップガン』が醸成した作品の雰囲気はポップな青春スポーツ映画のそれです。「毒親」は「かつて英雄だった父」になり、友人の「自殺」が「訓練中の事故死」になり、「格差社会からの脱出」が「西海岸のリア充生活」になり、ついでにトライアンフ T140ボンネビルがカワサキGPZ900Rニンジャになり――『愛と青春の旅だち』がデオドラント化・ポップ化したのが『トップガン』である、と言い切って良いかもしれません。

    続編である『トップガン マーヴェリック』も、作品が纏う雰囲気は「かつての問題児が教師として学校に帰ってくる」という『GTO』的青春スポーツ映画のそれです。主人公に反発する若者であるマイルズ・テラーとヒロインであるジェニファー・コネリーの立ち位置はジョセフ・コシンスキー監督の前作『オンリー・ザ・ブレイブ』と同じですが、実話を基にしていること、『グーニーズ』でデビューした後アラフォーになるまで脇役ばかりだった「アメリカの負け犬」であるジョシュ・ブローリンが主役であること……といった決定的な違いがあります。

    また、俳優を実際に戦闘機に乗らせ、なるべくCGやグリーンバックを使わず、「実際の映像」に徹底的にこだわっていますが、「リアルさ」にこだわっているわけではありません。主人公は36年間ずっと大佐のままであり、ヒロインとその娘以外の民間人は登場せず、敵は人種も宗教も顔すらも曖昧な名無しの国家で、敵基地を攻撃した際に絶対に死人が出ているのに死体は描かれません。一種のセカイ系映画のような趣さえあります。



    ●マーヴェリック≒トム・クルーズ

    もっといえば、本作が拘っている「リアルさ」は、トム・クルーズの俳優人生をメタ的に反映させることによる「リアルな郷愁」や「リアルなアニキ感」なのでしょう。

    マッハ10で満足せずそれ以上の速さと記録に挑戦してしまう狂気は、還暦間近になっても自らの肉体を酷使するスタントに熱中するトム・クルーズの狂気であり、バーの外から楽しそうにピアノに興じる若者たちを目にして自らの若い頃を幻視してしまう白昼夢は、ヒアルロン酸と筋トレで見た目は若いままでも実際には老いているトムクル自身の郷愁です。「あんたには妻も子供もいない」と言われて何も言い返せない主人公の孤独は、三回結婚と離婚を繰り返し親権も喪ったトムクルの孤独であり、教官として参加したにも関わらず結局は現場で身体を張って戦い、おいしいところを全てもっていく主人公は、59歳になってもハリウッド・スターとしてあり続ける本作におけるトムクルの立ち位置そのものです。

    つまり、本作の面白さは、「いま」のハリウッド大作映画として実際の映像にこだわったクオリティの高さは当然として、トム・クルーズの俳優人生がメタ的に反映されたお話としてよくできていたからなのでしょう。そして、トムクルがこの36年間ハリウッド・スターで居続けてきたが故に、ほとんどの観客がトムクル俳優人生のメタ的な反映に気づく――というスター主演映画でしか実現できないことが起こってしまうわけです。



    ●ラスト・ハリウッド・スター

    何十年間もスターで居続けた俳優が、自らの人生をメタ的に反映させた映画をつくる――これは、なにもトム・クルーズに限った話ではありません。

     
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