• 「響け!ユーフォニアム2」第4話の感想

    2016-11-05 22:051

    このブロマガで、毎話ごとに感想を綴ってきたアニメ「響け!ユーフォニアム2」。今回は、第4話「めざめるオーボエ」について取り上げたいと思います。第5話がオンエアされる前に公開できればよかったのですが、投稿が遅れてしまい申し訳ありません。

    以下、ストーリーの「ネタバレ」を含みますので、ご承知おきください。



    <ストーリーのみどころ>

    ■傘木希美、久しい時を経て鎧塚みぞれに邂逅する

    合宿から帰還した北宇治高校吹奏楽部。関西大会まで、いよいよあと10日を切る中、当日の順番が決定します。北宇治高校は23組中、16番目。

    その他、目ぼしい強豪校は

    オオサカトウショウ:3番目

    シュウダイフゾク :12番目

    ミョウジョウコウカ:15番目

    とのことでした。

    ○ 吹奏楽に限らず、個人にせよチームにせよ、何かを発表する順番が気になるのは人情というもの。早過ぎず、遅過ぎずという順番に当たって喜びながらも、強豪校が直前に来ると知り一転して落胆するあたりの心理も、よく分かります。こういった順番が、演奏する側だけでなく審査する側の心理に影響する可能性もありそうです。関西大会は「強豪校ばかり」なのだから気にするなと特別コーチの橋本は言っていますが、半分は本心から、また半分は部員一同の士気を鼓舞する意図もあったのでしょう。

    さて、そんな状況の中、久美子の気にかかっていたのは、あすかから聞かされたオーボエのみぞれと部に復帰しようとしている希美との間の複雑な関係。みぞれの感情のこもっていない演奏に対し、木管指導のため特別コーチを引き受けていた新山は、「物足りないと思っていたけど、まだ高校生だからこれでいい、可能性の上限を決めつけていた」と謝ります。そして、今のみぞれの演奏は聞いていて苦しくなる、もっと楽しんでいいと語りかけました。

    ○ 第3話の合宿で、橋本がみぞれの演奏を「ロボット」のようで「つまらない」と評したとき、新山は滝と顔を見合わせて複雑な表情を浮かべていました。木管専門の新山は、おそらく橋本よりも早くそのことに気付いていて、滝にも相談したのでしょう。滝は、指導者特有の直感(?)で、みぞれの心理状態もなんとなく察しており、彼女の性格も踏まえ、あえて強く指摘してこなかったことを、新山にも伝えた。そこで、滝と新山のふたりの間ではみぞれに対するスタンスにある種の合意が形成されていたけれど、それを知らなかった橋本がズバリと言ってしまった、といったところでしょうか。
    橋本が衆目の前で指摘してしまった以上、そして関西大会というより高レベルな舞台では、ソロパートの演奏がますますカギを握ることになることも予想され、みぞれに「やればもっとできる」ということを、新山もマイルドな形で伝えておきたかったのでしょう。

    関西大会を控え、日々練習に明け暮れる中、希美は相変わらず部へ復帰するための「あすかの許可」を求めて朝早くから登校しています。久美子と出会った希美は、色々と気にかけてくれたことに感謝します。
    そして、教室からのオーボエの音を聞きつけた希美は、久しぶりにみぞれに会いに行こうとします。「希美がみぞれに接触する」ことの意味に気付き、久美子は必死に止めようと追いかけますが見失ってしまいます。しかし、希美はその途上で部長の晴香、それに香織と遭遇し、何となくばつが悪くなって引き下がったので、この時は事なきを得たのですが……

    ○ 希美とみぞれの温度差が伝わってくる場面。みぞれはかつて「感情爆発」な演奏ができていたことを引き合いに、現在のみぞれの演奏に感情がないことが、希美はまったく理解できない様子です。

    自らの復帰のための登校を、とりあえず関西大会の前は「今日で最後にするから」と、夏紀に伝える希美。ところが、そんな彼女が偶然にも廊下で練習をするみぞれを見かけてしまったことで、「事件」は起こります。



    「久しぶりだね」と気安く話しかける希美。



    みぞれに対するトラウマから、ショックを受けて逃げ出すみぞれ。



    そんな事態を見て「最悪」と舌打ちするあすか。



    「何もしてない。だから怒ってるの!」と、希美の「無知の罪」に腹を立てる優子。


    みぞれの希美に対するトラウマを知る久美子を見かけた優子は、逃げ出したみぞれを探してほしいと頼みます。

    ○ 普段は後輩に対しては呼び捨ての優子が、「黄前さん」と改めて呼びかけているところに、切迫感が伝わってきます。

    ■鎧塚みぞれ、心に秘めた真意を吐露する

    とある教室の片隅で、膝を抱えてうずくまっているみぞれを見つけ出した久美子。「希美先輩のことが嫌いなんですか?」と問う久美子に対し、みぞれはついにこれまで心の奥に秘めていた思いを語ります。

    もともと人が苦手だった自分を、吹奏楽の世界にいざなってくれた希美は「特別」な存在だったこと。けれど、希美にとっては「数多くの友達のひとり」に過ぎなかったこと。高校に入り、希美が一言の相談もなく吹奏楽部をある日突然辞めてしまい、自らが部にいる意味をも見失ってしまったこと……

    「なぜ音楽を続けているのですか?」と、さらに問いかける久美子に、みぞれは「楽器だけが、私と希美をつなぐものだから」と答えます。みぞれの希美に対する思いの深さに、当惑する久美子。



    ○ 本の似合う女の子というのは、やはり佳いものですね……w。という個人的な趣味はともかく、引っ込み思案だったみぞれに声をかけ、音楽の道へと引っ張っていく希美。
    この関係……、「けいおん!」に馴染みのある人ならば、澪と律を思い出すのではないでしょうか。律澪はほぼ一貫して相思相愛だったのに対し、のぞみぞ(?)の場合、ボタンの掛け違いによって思わぬ溝ができてしまったことが大きな違いですが。

    ■吉川優子、鎧塚みぞれを闇から光へと救い出す

    そんな状況の中、優子が駆けつけてきます。そして、自らの殻に閉じこもってしまったみぞれに対し、切々と訴えかけます。

    「私には希美しかいない」というみぞれ。それに対し、「みぞれにとって、私は何なの!?」と優子。

    かわいそうだからと、同情してくれたと思っていたみぞれに対し、優子はそれを強く否定します。「誰が好きこのんで嫌いなやつと行動するのよ!」と。

    さらに、本当に希美だけのためを思って部活を続けてきたのか、府大会を突破して関西大会出場が決まって嬉しくなかったのか、努力は報われる、「中学から引きずっていたものからやっと解放された」そんな風に思わなかったのかと、みぞれに思いをぶつけます。



    嬉しかったけど、辞めていった子に申し訳なくて、素直に喜んでいいのかなと思っていたと涙ながらに答えるみぞれの手を取って、「いいに決まってる! だから、笑って」と、闇から光へと引き上げる優子。




    そんな様子を聞いていた希美と夏紀。教室へ入っていき、みぞれと希美、ついにふたりはお互いに向き合うことになります。みぞれが置いてきたオーボエをあすかから託された希美。それをみぞれに渡すときが、やってきたのです。

    ○ 舌打ちまでしていたあすかの様子から、希美にビンタでもするのではないかと、実はヒヤヒヤしながら見ていましたw。でも、実際にはオーボエを託していたのですね。聡明なあすかのことですから、これまで希美のみぞれへの接触を極力妨げてきたけれど、事ここまで至ってしまったら仕方ないと判断し、「この落とし前はあんたがつけなさいよね」、そんな気持ちで希美にオーボエを渡したのかもしれません。


    部活を辞めるときに話してくれなかった理由を問うみぞれ。希美は、一生懸命に頑張っているみぞれの姿を見て、いっしょに辞めようと言えなかった、言う必要がなかったと答えています。そして、府大会を密かに見に行ったこと、みぞれのソロが良かったこと、中学の頃からみぞれのオーボエが好きだったこと。だから、みぞれのオーボエが聞きたいと語り掛けます。

    それに対し、みぞれも「聞いてほしい」と、希美を再び受け容れたのです。



    本来のみぞれの演奏に聞きほれる優子、夏紀、そして久美子。「希美には勝てないんだなあ」と自嘲気味な優子。「みぞれには、あんたがいて良かったと思うよ」とフォローする夏紀。


    一方、低音パートへ戻った久美子は、この一件に対してあすかが「みぞれもひとりになるのが怖いから希美に固執していた、優子は保険。人は打算的に動くもの」と所感を述べたのに対し「穿った見方をし過ぎ」と言っています。そんな冷たい一面を相変わらず覗かせた直後、真剣な表情で「全国行こうね」と語りかけるあすか。彼女の二面性を目の当たりにして、本音と建て前の境目が分からないと、当惑する久美子。


    その後、久美子は待ち構えていた麗奈といっしょに帰宅します。その際、みぞれを念頭に「誰かのために吹いている」かどうか、麗奈に問いかけています。それに対し麗奈は、「強いて言えば、自分のため」と答えたのでした。

    ○「滝先生のため」と答えるのかと思いましたが、「自分のため」でしたw。久美子は、第1話で麗奈とみぞれには似ているところがあると評していましたが、ここは大きく違う部分であると言えるでしょう。


    <補 足>


    ・注目の部員



    軍曹こと松本副顧問に、関西大会の他の高校の順番を尋ねる雑賀頼子






    後藤夫妻……ではなく、その後ろで北宇治の演奏の順番に一喜一憂する岩田慧菜。前回はその顔を拝むことができなかったので、嬉しいですw


    ・久美子の父親



    久美子の姉・麻美子と何らかの理由で言い争っていた父親。今まで母親は割と頻繁に登場しておりましたが、父親は声だけですが今回初登場。EDのテロップによると、黄前健太郎というそうです、それだけの情報ですがw


    <総 括>


    第4話は、2期でずっと懸案となっていた傘木希美の部への復帰問題と鎧塚みぞれの憂いが氷解し、同時にふたりを側面支援してきた中川夏紀と吉川優子もクローズアップされ、この2年生カルテットびいきな筆者としては、大満足のエピソードでした。

    前回まで、彼女らの背後関係を様々な形で聞いてきた久美子。もう少し何らかの形で活躍するのかなと思いきや、逃げ出したみぞれの第一発見者にこそなりましたが、彼女を闇から引き出す役割は、やはり優子でした。

    優子は、希美が退部してからもみぞれのことを「友達」として気にかけてきました。しかし、みぞれに見えていたのはずっと希美だけでした。優子はまた、トランペットパートの先輩として香織に憧れの気持ちを抱き続けますが、香織にとって特別な存在はあすかです。優子の思いは一方的なもので、報われないようにも見えますが、あすかの表現を借りれば「打算」を度外視した、彼女の無償の献身は非常に尊いものだと思いますし、香織のため、またみぞれのために涙を流せるその心は、純粋でまっすぐです。個人的には1期の頃から決して嫌いではありませんでしたが、特に前回あたりから、好感度がぐんぐん向上している優子先輩マジエンジェル!




    夏紀は、希美やみぞれと接し始めるのは高校に入ってからなので、中学時代のことはよく把握していませんでした。彼女にとって希美は憧れの存在だったので、部への復帰のために尽力しますが、希美にとっての「特別」はあすかであり、そういう意味では優子と同様、ある意味で一方的な献身だったわけですが、希美とみぞれの和解に瞳を潤ませ、希美がいない間の優子のみぞれに対する気遣いも決して無駄ではなかったとフォローしており、相変わらず性格の良さが際立っています。



    みぞれについては、その心理が理解できる人とそうでない人で評価が分かれそうです。筆者はどちらかというとみぞれの気持ちはよく分かるほうなので、感情移入して見ることができました。それが友情であれ愛情であれ、敬愛する人に対する思いの強さはともかく、言葉のちょっとした受け止め方によるすれ違い――自分がとても大切な意味を込めて言ったつもりのことでも、相手はあっさりと忘れていたり、逆に自分が何気ないつもりで言ったことでも、相手にとってはとても重要な意味を持っていたり――は、日常起こり得ることだと言えるのではないでしょうか。



    希美は、みぞれの想いの深さを完全に読み誤っていましたが、決して悪意があってのことではありませんでした。みぞれにとって吹奏楽を始めるきっかけを作り、また中学時代から夏紀に憧れの目で見られていたということで、彼女自身にもまた固有の魅力が備わっていることは間違いないでしょう。




    このように、今回は(麗奈でさえ最後に「私を忘れないでね」とばかりちらっと登場したほど)久美子ら北宇治カルテットを完全に食ってしまった2年生カルテット。
    ただ、エピソードもひと段落して、何となく今後は少しずつ出番が減っていきそうな予感もしますが、引き続き活躍の場があればいいなと思います。
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  • 映画「君の名は。」雑感

    2016-10-31 23:47
    • はじめに ~映画館に足を運ぶまで~

    興行収入200億円超えが確実視されるなどアニメ映画としては、否、映画作品全体の中でも異例の大ヒットとなっている「君の名は。」
    公開された頃は、何となく見に行くのがためらわれたのですが、最近ようやく重い腰を上げ、完全なミーハー気分で劇場へと足を運んできました。
    事前に知っていることといえば、「君の名は。」という作品のタイトルくらいなもの。監督の新海誠氏についてもプロフィールや実績等ほとんど何も知らなかった、以下はそんな筆者による雑感です。

    • 全体の印象 ~様々な要素を丁寧に積み上げた名作~

    まず「君の名は。」を見ていて感じたのは、作中で描かれる様々なモチーフが「どこかで見たことがあるなあ」ということです。

    男女が入れ替わるのは、言うまでもなく「とりかへばや」以来、数々の作品のテーマとされてきました。
    また、時間をさかのぼって悲運のヒロインを救う、という発想も多くの既成の作品で取り上げられてきたことでしょう。たとえば、同じようなテーマを扱った作品として、筆者はフリーゲームの名作「時の故郷(ふるさと)」を想起させられました。

    時間や空間という制約によって隔てられた若い男女が、運命的に結びつけられ、やがて互いを意識し合うようになり展開されていく瑞々しい恋愛。それを彩るSFミステリ的、あるいは伝奇的要素……。
    ひとつひとつの要素は、どこかで見た・聞いた・読んだことのあるようなものも多く、「君の名は。」というのはパッチワーク的な色合いを帯びた作品なのですが、ではまったくオリジナリティのない映画なのかというと、決してそうではないと思います。
    既成作で試みられてきた、様々な要素をうまく消化・吸収した上で、現代日本の首都「東京」と、歴史と伝統の連続の中で生きてきた「糸守町」を行きつ戻りつする、独自の世界観が展開されるストーリー。

    映画に限らず、およそ名作といわれる創作物でも、まったく斬新なものを打ち出してあっと唸らせるオリジナリティの高い作品と、既存の発想を織り交ぜつつも、それらを丁寧に積み上げていくことによってクオリティの高さを誇る作品とがあると思いますが、本作は後者のタイプなのかなと感じました。

    • キャラクター ~誰もが共感しやすい造形~

    次に、ストーリーを動かしていく登場人物(キャラクター)に目を向けてみましょう。

    ヒロインの宮水三葉。小さな田舎町の古くから続く神社の家系に生まれ、父は町長を務める。伝統やしがらみに束縛されがちな境遇に不満を抱き、東京での生活に憧れつつも、基本的には神社を守る祖母の言うことをよく聞く素直で良い子であり、女の子らしい細やかな気遣いもできます。

    もうひとりの主人公は、立花瀧。プロフィール以前の話になってしまいますが、彼の名前を見た時点で「もぶおん学」というか、「けいおん!!」3年2組クラスメイトに馴染みのある人なら、きっとあのキャラあのキャラを思い出さずにはいられないのではないでしょうかw(さすがに新海監督が意図してネーミングしたわけではないでしょうが)
    周りから「瀧くん」「瀧くん」と呼ばれていて、最初てっきり名字なのかなと思っていたのですが、ファーストネームだと知って、前情報なしで劇場に突入した者らしい驚きを経験しました。
    閑話休題。瀧は、東京都内に住むイケメン男子高校生。しかし異性に対しては意外に奥手で、バイト先の年上の女性に憧れのまなざしを向けるだけだったりします。また、画才があって、これが糸守発見に役立ったり、いざという時には胆力や行動力も発揮します。

    筆者はかねがね映画や小説の主人公は、ふたつの要素――「共感性」(感情移入できる魅力を備えているか)と「特殊性」(ストーリーの推進力たるカリスマがあるかどうか)――を基準として見ることが多いのですが、本作の主人公である三葉と瀧は、これらの要素をバランスよく満たしており、万人受けするキャラクターとして描かれているのも、大ヒットの要因ではないかと思いました。

    さらに、このふたりの主人公を取り巻く脇役に目を転じてみましょう。

    まずは、糸守町の三葉の同級生。テッシーこと勅使河原克彦。地元の建設会社の息子です。彼の父親は、町長である三葉の父親の支援者。そんな父のことを必ずしも肯定的に見ているわけではありませんが、家業はよく手伝っているようで、漠然とですが地元に残って後を継ぐ……というような将来像を描いています。オカルト趣味なところもあり、「月刊ムー」の愛読者だったりもしますw。

    もうひとり、三葉の友人として登場するのが、サヤちんこと名取早耶香。少し気弱なところもありますが、心優しい性格の持ち主です。姉は町内放送を担当しており、自身もまた高校の放送部に所属しています。

    このふたり、ストーリーも佳境に迫り、いよいよ糸守町にティアマト彗星が落下するその日、三葉(正確には、中身は糸守の運命を知っている瀧)の言葉を信じ、協力を惜しみません。小さな町で何かしてやろうという若者らしい冒険心も手伝って、という部分もあったでしょうが、ふたりが三葉を強く信頼しているのだと伺えるところが印象的です。実際、このふたりの協力があったからこそ、糸守の町民たちの運命も大きく変えられたのだと思います。

    一方、東京の瀧の友人は、藤井司と高木真太。野郎同士3人で、よくカフェ巡りをしているというのが何とも微笑ましいw。
    特に司は、瀧が三葉の住む町(糸守)を探しに行くと知ると、彼の憧れの女性――奥寺ミキにも密かに伝え、ふたりして瀧について行くことになります。友情に厚いメガネ男子ですw
    (「聲の形」はなぜか、メガネに恨みでもあるのかというほど、某小学校教諭とか、某ブリッ子委員長とか、アレなメガネキャラしかいなかったので、この点「君の名は。」は良かったですw)

    三葉にしろ瀧にしろ、こうした魅力的な友人たち――「いいやつ」が、ストーリーの盛り上げに一役買っていることは間違いないでしょう。

    そんな中、三葉の父親は、必ずしも良い印象を与える人物ではありません。(中身が瀧の)三葉が、町に隕石が落ちてくると言っても取り合おうとしません。視聴者は、瀧と同じく未来のことを知っていて、感情移入しているからひどいオヤジだと思ってしまいますが、客観的に見れば、当たり前といえば当たり前の反応ではあるわけです。
    ところが、ティアマト彗星がさらに近づき、落下のその時がいよいよ迫ってきて、(今度は正真正銘本物の)三葉が、父親に必死の訴えをしようとする――その後の詳細なやり取りは作中描かれることなく、町長により緊急避難訓練が発動され、糸守町民は奇跡的に難を逃れることができた、という結果のみが知らされます。

    町長を動かしたものは何だったのか? 当時の状況としては、爆発騒ぎやニセの町内放送が発生しており、どうもそこに娘の友人が関わっているらしいことは、おそらく把握していたでしょう。しかも、そのうちのひとり――勅使河原は、自らの有力支援者の息子ということもあり、明らかな違法行為も含まれる一連の騒ぎが大きく取り上げられれば、自身の失脚につながりかねない。それならば、公式に町として緊急避難訓練を本当に行うことにすれば、娘たちの起こした不祥事もうやむやにすることができる――そんな、政治的判断もあったかもしれません。
    もちろん、血の通った娘が、必死に訴えかけてくるその姿に感じるところがあったことも事実でしょう。もともと宮水家に婿入りする形で、神職を務めていた三葉の父。ところが、ふたりの娘を授かって間もなく、三葉の母は若くして亡くなってしまいます。妻を救えなかったことで神職であることに疑問を抱き、政治の世界へ。もともとお見合いだったのか恋愛だったのか定かではありませんが、彼の妻に対する愛情はたしかなものだったことでしょう。そして、三葉の目から見れば打算的な父親だったかもしれないが、彼は彼なりに娘たちを愛してきたはずです。

    そんなわけで、どこか男の苦悩と悲哀を感じさせる町長もまた、複雑な面もありますが、独特の存在感を放っていたと思います。

    • むすびに ~ふたつの喪失の先にあるもの~

    「君の名は。」は、首都・東京と田舎町・糸守――都市と地方――を行きつ戻りつする物語です。多くの人々を吸収し、絶えず変化を遂げていく東京と、変わらぬ歴史と伝統を継承しながらも少しずつ衰退し、彗星の直撃によって消滅に至る糸守。

    実際の日本をみても、周知のように人口減少時代に突入し、糸守のような地方は、たとえ隕石が落下してこないとしても、遠からぬ将来「消滅」してしまうのではないか、そんなことが現実問題としてささやかれています。
    しかし、パリのみがフランスでないように、ロンドンのみがイギリスでないように、東京のみが日本ではないはずです。たしかに首都・東京が安定的に繁栄することは、日本全体にとって大切なことですが、だからといって、それ以外の地域が衰退する一方では国の形としてはいびつです。全国津々浦々、脈々と受け継がれてきた風土に光を当て、そこに暮らす人々の生活を守っていくことは、これからますます重要な課題となっていくはずです。

    なんだか、政治演説じみてしまって恐縮ですが、子々孫々継承してきた神社を守り続けようとした三葉の祖母・一葉と、神職を擲って政治の世界から糸守町を盛り立てていこうとした三葉の父。この義母と婿は、お互いぶつかり合ってしまいましたが、心中目指していたものは必ずしも遠くかけ離れたものではなかったのではないかとも思います。

    糸守町民は、奇跡的に隕石落下の難を逃れましたが、故郷からの離散――ディアスポラを余儀なくされます。三葉もまた、熱望していた東京での生活が皮肉な形で叶うことになります。しかし、その表情に憂いが刻まれているのは、かつて運命的な出会いを果たした青年の名が記憶から失われてしまったためですが、故郷を失ってしまったディアスポラの哀しみもあるような気がします。
    さらに踏み込むと、かつて三葉は宮水神社の鳥居の下で、「東京のイケメン男子に生まれ変わりたい!」と、声に出して切望したのと同時に「こんな町いやや!」とも叫んでいました。特殊な血統のなせる業なのか、彼女の「言霊」は、瀧と入れ替わる形で実現しましたが、糸守に対する(決して本心からでなかったにせよ)呪詛の言葉もまた、隕石落下という形で実現してしまったのではないか……。

    瀧と三葉は、東京の街で再会を果たすことになります。大学を卒業した瀧は、建設会社への就職を志願しています。一方、建設会社の倅のテッシーとカヨちんも上京し、お互い将来を約束し合う間柄。果たして彼らは、このまま東京の片隅で、過ぎ去った糸守の記憶を心の奥に秘めつつ暮らしていくのか、はたまたいつの日にか糸守へと舞い戻り、故郷再建の礎となるのでしょうか……?
  • 「響け!ユーフォニアム2」第3話の感想

    2016-10-26 00:342

    アニメ第1期の頃より毎話、感想を綴ってきた「響け!ユーフォニアム」。
    第2期「響け!ユーフォニアム2」でも感想を引き続き書いておりますが、前回投稿した第2話「とまどいフルート」の感想が予想外の大反響で、嬉しいというよりは「とまどいmarty」ですw。

    「響け!ユーフォニアム2」第2話の感想

    しかし、いつまでも舞い上がっていても仕方ないので、また平常運転で第3話「なやめるノクターン」の感想を述べていきたいと思います。

    以下、ストーリーの「ネタバレ」を含みますので、ご承知おきください。




    <ストーリーのみどころ>


    ■鎧塚みぞれ、橋本真博に演奏を酷評される


    合宿2日目の朝。希美の部への復帰を頑なに拒んでいるその真意を探るべく、久美子はあすかに意を決して声をかけ、夕食後に話をする約束を取り付けます。

    日中は、当然のことながら猛練習。午後からは「10回通し」(課題曲と自由曲を10回、通しで演奏する)が行われます。

    「10回通し」というのは、いわゆる「吹部用語」なのでしょうか? 後半になればなるほど、体力も集中力も切れてきて、大変そうです。もっとも、交響曲には何時間もかかる演奏もありますし、あるレベル以上を目指すならそれくらいできて当然、といったところでしょうか。

    自由曲の「三日月の舞」には、久美子がどうしても吹けなかった箇所がありました(1期12話)。「上手くなりたい!」という心からの叫び、ユーフォニアムとの向き合い方に覚醒をもたらした印象的なエピソードでしたが、久美子はついに滝から認められ、あすかとともに演奏することができるようになりました。





    滝が招聘した助っ人、橋本の指導も熱を帯びてきます。専門のパーカッションに対する厳しい指摘はもちろんのこと(槍玉にあげられたのは、2年生の大野美代子。密かに注目している部員だったりしますw)、その他のパートへの指摘にも及び……。

    彼が問題にしたのは、オーボエのソロパート。みぞれの演奏を「つまらない」、「ロボットが吹いているようだ」と評し、音楽における「感情」の重要性を強調します。




    なあ滝くん、オーボエのソロあれでいいの?」と橋本から問いかけられたとき、滝は何とも困った表情を浮かべています。橋本が演奏を聞いて気付くことに、ずっと指導してきた滝が気付かないわけがありません。しかし、彼の様子をみるに、どうもこれまでみぞれに正面切って指摘した形跡はありません。滝がみぞれの心中をどこまで察しているのかは分かりません。しかし、彼女が部員の誰よりも朝早く練習していることはよく知っていますし、さすがの滝も攻めあぐねていたのかも。ズケズケものを言うタイプの橋本を呼んできたのも、実はその辺を期待してのことだったのかもしれません。



    厳しい練習も終わり、入浴タイム♨。昼間の一件で落ち込むみぞれを、優子が慰める一方……。



    麗奈は、滝に新山との関係を質すことを久美子に宣言します。2話の水着姿に続き、すっかりサービス要員になってしまったような……w 部員一同の入浴シーンがバッサリなのが残念!


    ■田中あすか、ついに真意を語る


    夕食後、久美子は約束通り、あすかに希美の復帰を認めないその真意を問い質します。
    あすかの口から語られたのは、みぞれは希美の「顔を見ただけで気持ち悪くなるくらいのトラウマ」があること、ところが当の希美にはまったくその自覚がないこと、そんな希美が戻ってきたらみぞれはオーボエを吹けなくなってしまう、関西大会という大舞台を控え、(いくら技量があってもメンバーなら大勢いるフルートの)希美と、たったひとりしかいないオーボエのみぞれを天秤にかければ、後者であるのは自明なこと……。


    あすかの真意については、1話や2話の感想でも色々検討はしましたが、彼女が意外とみぞれをよく見ていたところは盲点でした。久美子の推測「希美が上手いので、戻ってきたら部が混乱する」というのは、たしかに前段部分は不正解ですが、後段の「部全体が混乱する」という点に着目すれば、あながち間違ってもいないような気がします。
    なんとなれば、あすかの視点は「希美とみぞれの関係」を敷衍して、結局は「部全体」に向けられているからです。あすかにとっては畢竟、希美もみぞれも全体の中のパーツ――時折垣間見える、あすかの冷めた一面が伺われます。
    滝がみぞれにどこか遠慮がちな様子だったのも、「たったひとりのオーボエ」である彼女の扱い方を間違えれば、部全体にとって大きな影響が出かねない――そんな指導者としての観点によっていたのかもしれません。


    ■橋本真博、滝昇の過去を明かす


    さて、夜は花火大会。さすがに練習漬けの合宿とはいえ、多少の息抜きもあるようです。久美子に促され、宣言通り新山と付き合っているのかどうか、滝に尋ねに行く麗奈。そんなふたりの様子を見ていた橋本が、滝の意外な過去を久美子に打ち明けます。

    滝は5年前に妻を亡くしていること、ショックでそれ以来、音楽からずっと離れていたけれど、北宇治高校吹奏楽部の顧問に就任し、指導を手伝ってほしいと頼まれていたく感動したこと……



    そういえば、府大会の前後に滝は写真に向かって語りかけているシーンがありましたが、あれはおそらく亡き妻の遺影だったのですね。





    そして、OPで登場する例の後ろ姿の4人組は、滝、橋本、新山、そして残るひとりが滝の妻で、学生時代からの音楽仲間だったということでしょう。生徒には「青春の貴重な時間をドブに捨てて……」とかお説教しておきながら、自分はちゃっかりリア充ライフをエンジョイしてたのかよw

    しかしよく分からないのが、滝のキャリアパスです。仮に大学卒業後すぐに高校の音楽教員となり、それから結婚したとすると、妻が健在なうちは元気に部活動の指導も行っていたはずです。ところが、アニメ1期の秀一の噂話によれば、吹奏楽部の顧問となるのは北宇治高校が初めてとのことなので、辻褄が合いません。

    あるいは、大学院で音楽理論を研究しながら、その間に(学生?)結婚、さらに夫婦同じ楽団に所属して、将来を見据えた夢のある音楽活動をしていた。ところがそんな矢先に妻が亡くなる悲劇に見舞われ、失意のうちに高校教員の職は得たものの、吹奏楽部の指導は北宇治に赴任するまで断ってきた……?(いくら事情があるとはいえ、音楽の教員が吹奏楽部にノータッチでいるようなわがままが許されるのか?)

    まだまだ謎の多い滝の過去ですが、邪推はこのくらいにしておきましょう……。


    ■吉川優子、その胸中を久美子に語る

    さて、滝に新山との関係を聞き出した麗奈。どうも新山は既婚者だったようです(妙齢の美女にしかるべき相手がいるのは、自明の理というものw)。

    麗奈に滝の過去を話すべきか? また、希美にあすかの真意を伝えるべきか? 久美子の懊悩は深更に及びます。

    眠れぬ久美子が外に出てみると、夏紀と優子もまた、希美の部の復帰を巡って論争していました。希美の復帰を強く主張する夏紀と、それに反対する優子。そんなふたりの会話を立ち聞きしようとした久美子でしたが……






    ステルス機能ゼロの久美子w

    優子にいとも簡単に勘付かれた久美子は、そのまま呼び出しを食らって……

    香織と麗奈のオーディションの一件もあり、もともと優子に苦手意識のあった久美子は、例によって当人を前にしてそれを隠すこともできずにうろたえますが、優子は軽く受け流し、去年、希美のように退部しなかったのは香織のおかげであったことを話します。

    やがて話題は希美復帰の件に及び、久美子はあすかから希美とみぞれとの関係を聞いたことを優子に伝え、夏紀にも話してみたらどうかと提案します。しかし、優子はそれに反対します、「夏紀は純粋に希美のためを思って部に戻そうとしてるんだから。みぞれのことを聞いたら、どうしていいか分からなくなる。あいつの性格的に」と。

    久美子は昨夜、みぞれが問いかけてきた「コンクールは好きかどうか」という問いを、優子にもぶつけてみます。

    それに対して優子は語ります。苦杯を舐めた中学時代には、当然その結果に納得はできなかったし、現在のように金賞を獲れれば納得できる。必死に努力しても選曲等、演奏以前の問題で優劣をつけられるような理不尽な評価をされることもある……。

    それならば「コンクールはないほうがいいのか」という久美子のさらなる質問に対しては、昨年までの部の状況を挙げ、やはり頑張りが認められない環境は決して良いものではなかった、今年のように本気で全国を目指す以上、「うまい人」が吹いたほうが良い。




    結局、好き嫌いじゃなく、コンクールに出る以上は、『金』がいいってことなんじゃない?


    ここで久美子は初めて、優子と腹を割って話すことができました。中学時代から希美とみぞれのことを知る優子。そんな彼女だからこそ、希美退部騒動以降もみぞれに対しては特に何かと気遣ってきたのでしょう。
    一方、中学の頃は吹奏楽部に所属していなかった夏紀は、深い事情までは把握していません。優子は、そんな夏紀の立場をも思いやって、あえて希美の復帰に反対し、みぞれとの複雑な関係についても知らせようとしない。名前の通り「優しい子」です。

    また、久美子に対して冒頭、トランペットのソロは香織のほうが良かったと今でも思っていると冗談めかして言っていますが、「情」の部分ではおそらくそれが本音でしょう。しかし、コンクールに対する思いを語る中で、「上手い人=麗奈」が吹いたほうが良い、全国を目指すと決めた限りにおいて、その結果に納得していることを明らかにします。こうした会話展開ができる優子は、クレバーな子でもあるのだなと感じさせられました。
    優子こそまさに「マジエンジェル」でしたねw


    ■高坂麗奈、コンクールに対する思いを久美子に打ち明ける


    久美子が寝室に戻ると、「どこ行ってたの?」と麗奈。部屋を抜け出していた昨夜とまったく同じ展開ですね。そんな麗奈に「コンクールをどう思うか?」、優子にしたのと同じ質問をします。

    それに対して麗奈は、音楽は金・銀・銅では評価できないと言えるのは、勝者のみ。下手な人が言っても所詮、負け惜しみ。だから上手くなるしかないし、コンクールは多くの人に聞いてもらえる機会であると、ポジティブに捉えたい。だから「好き」であると答えます。


    みぞれ、優子、そして麗奈と、これまで3人の「コンクール観」を久美子は聞いてきました。審査員の恣意性を挙げて、はっきり「嫌い」と言い切るみぞれ。理不尽なこともあるけれど、出場する以上は「好き嫌いに関係なく」金を獲りたいと語る優子。上手ければ自ずと認められるし、多くの人に聞いてもらえるから「好き」と断言する麗奈。それぞれのこれまでの音楽経験が色濃く滲んだ三者三様の感想で、興味深いですね。

    演奏の意義を見失いかけているみぞれはともかく、オーディションで派手にやり合った優子と麗奈が「とにかく頑張って高みを目指す」という点で、見解の一致をみている点にも注目すべきでしょう。




    <補 足>






    ひとしきり音楽論をぶって、自らを「歩く名言集」などとのたまう橋本に対する前後の雑賀頼子の表情の変化に注目のこと!




    久美子とあすか?
    いえいえ、その後ろの可愛らしい眼鏡っ娘、松崎洋子にも注目しましょう!

    第1話の感想でも述べましたが、部員の中でもうひとり、2年生の岩田慧菜にも注目しているのですが、残念ながら3話では目立ったシーンはありませんでした……。



    <総 括>

    多くの関係者から事情を聴取し、複雑な人間関係を解き明かしていく……。第3話の久美子は、あたかもミステリものの探偵のようでした。ただし、ホームズのような天才型ではなく、靴底をすり減らして尋ねまわる努力型の刑事です(立ち聞きはすぐばれてしまいますがw)。

    しかし、迷探偵・久美子の怪我の功名(?)で、優子と腹を割って話す機会を得ることができました。そこから浮かび上がってきた優子の新たな魅力は、3話のひとつの大きなみどころでした。

    吹奏楽部の中で、おそらく誰よりもみぞれのことを気遣ってきたのが優子でしょう。希美とみぞれの複雑な関係、仮に夏紀がそれを知れば、このふたりの板挟みとなって傷つくことになってしまう……。優子はまた、普段は憎まれ口を叩き合っている夏紀のことをも慮ります。

    だから、希美の吹奏楽部への復帰は認められない。これは、あすかの下した結論と同じですが、彼女の場合、優子と比べるとみぞれへの見方――たったひとりのオーボエに壊れられては困る――は多分に功利的です。

    しかし、橋本によって指摘されたように、みぞれが「ロボット」のような感情のこもっていない演奏しかできないのは、希美が部を抜けてしまったことによって、おそらく音楽を続ける意義を見失ってしまったから。

    みぞれにとって、希美という存在はトラウマになってしまっているけれど、しかし、彼女と向き合わない限り、自他ともに納得できるような演奏をすることはできない――そこに、大きなジレンマがそびえ立っています。

    計らずも多くの事情を知ることになってしまった名探偵・久美子は、果たしてこの難題の解決に一役買うことができるのでしょうか? 次回を楽しみにしたいと思います。